小説(転載) 「雲の上にて」
近親相姦小説
掲載サイトは消滅。
題名 「雲の上にて」
「アテンションプリーズ、アテンションプリーズ。
間もなく20時30分発xx航空YY便の御搭乗手続きを
受付カウンターにて始めますので、ご利用の方は至急お集
まり願います。」
喧騒のJFK国際空港。
まさしく人種のるつぼ。様々な人達が行き交う。
次々と流される空港アナウンスに、ソファーに座って
待っていた人達は、一斉に立ち上がって我先にと手続
きを行なっているカウンターへと急ぐ。
「ふむ。そろそろだな。」
高級スーツを身に纏った初老の男性が、ネクタイを
きゅっと締め直して、ゆっくりと立ち上がった。
原孫義男57才。
総合商社に勤めて35年。
ここ15年程はアメリカ・ニューヨーク支社に在籍
していた。
本場国際ビジネス戦争の最前線に送り込まれた義男
は、いわば会社期待の人材だったのである。
当然、厳しい日々が続くのは目に見えていた。
義男は家族を残して1人、単身で乗り込んで行った。
文字通り粉骨砕身でコトに当たった。
以来15年、その成果は目に見えて大きく出た。
売上高、規模、関連企業買収等。その発展の早さは
尋常ではなかった。
そして安定期に入ったのを機に、本社は義男に呼び
戻しを命じた。
勿論、専務という椅子を用意して。
(もう15年か。早いもんだ。)
搭乗便を知らせるボードを眺めつつ、その歳月の流れを
懐かしんでいた。
「おとうさーん。」
その時、遠くから自分を呼ぶ声がした。
その声がする方向に目を移すと、1人の女性が、
手を振りながら、早足でこちらに向かって来た。
深い紺色で統一されたジャケットとスカート。
肩から下げたショルーダーバックも紺色。
首の横でかた結びされたブレーンのスカーフが、
いかにも、といった感じがした。
「さすがに時間通りだな。舞。」
「ここは私の職場よ。当然よ。」
「おお・・随分と生意気な事を言うようになったな。あはは・・」
舞が国際線のFA(フライト・アテンダント)になって6年。
今や制服もピタリと似合う程、堂に入っている。
爽やかな笑顔で義男の前に立った。
「お客様。本日は私どもXX航空をご利用頂きまして
誠にありがとうございます。当飛行機はここニューヨーク
を出まして、アラスカを経由しながら・・・」
流暢な英語で喋り始める舞。
「おいおい、何もココで仕事の真似事なんかするな。」
右手を左右に振りながらイヤイヤの表現。
周りを見渡すと結構見ている人、人、人・・・
「どう?これでも・・」
「ああ分かった分かった。生意気と言ったのは、
お父さんの失言だった。謝るからもう止めなさい。」
「分かればよろしい。あはは・・」
「ふふふ・・だが大したもんだな。舞。」
綺麗な立ち姿。
自分を大きく超える背丈。
見栄えは、欧米人と比べてもひけなど取らない。
義男はしみじみと感慨にふけった。
渡米前、あのつぶらな瞳に涙を一杯に溜めながら、
スーツの端を掴んで放さなかった子供が、長い年月
を経て、人々の関心を一身に受ける美しい女性へと
変貌を遂げた。
「私もトシを取るわけだな。」
義男は白くなったモノが多く混じった頭を1つ撫でた。
「お父さん、そのセリフは厳禁よ。あたしだって気にし
ているんだから・・もう。」
ため息交じりの笑顔で呟いた。
「何言ってるんだ。FAってのは今ぐらいが一番良いんだろ?」
「そうかも知れないけど、もうすぐ28を迎える女の子にとっては、
そうそう悠長に構えてはいられないのよね。」
その言葉に義男は呆れた顔になった。
「お前、このフライトの後に結婚するんだろ?何を今更。」
「あのね、それとこれとはまったく別なの。女にとって”若さ”
は永遠のテーマなのよ。このまましわくちゃの婆さんになっちゃう
なんて、考えただけでも身震いしちゃうわ。おお、いやいや・・」
両肩をすぼめながらしかめ顔の舞。
やれやれ、女ってのは随分と勝手な生き物だな。
義男は、今さながらに妻の苦労を思いやった。
父親不在で一人娘を育てるのは並大抵の苦労
ではなかったはずだ。
女同士いがみ合う事もあっただろう。
義男は妻に会うのを楽しみにしていた。
最後に会ったのは何時だったか?
1年、いや2年前か・・・
長年連れ添った愛妻。愚痴1つこぼさずに
尽くしてくれる。いつも笑顔を絶やさない
女性。 感謝の気持ちで一杯だ。
「お母さんの事考えてたでしょ?」
ふいにそのイタズラ顔を義男に近づけて、
冷やかしの一言。
「な、何だ急に。もうしょうが無い奴だ。」
あたふたと顔を赤らめて怒り出した。
「あはは・・なあんだ図星か。もうやんなっ
ちゃうわ。どうもごちそうさま。」
舞は道化のようにおどけて格好を崩した。
義男は父としての尊厳を守るかのように、
忙しく咳払いを1つ2つして体裁を取り繕った。
「今日はよろしく頼むぞ。」
「はい。分かりました。今日1日、安心と快適
な空の旅を、どうか存分に満喫して下さいませ。」
すっと背中を伸ばして、ビューティスマイル。
思わず”どっきり”と息を飲む義男。
舞は軽い会釈と共に雑踏の中に消えて行った。
呆然とした表情で、その後ろ姿を見送る義男。
すらりと長く伸びた二本の足が優雅に動いている。
それに伴ってツンと上に向いたお尻が揺れていた。
義男はそこから視線を外さずにいた。
いや、外せなかった・・・のである。
凄い・・・凄くイイ身体しているぞ。
義男の目は、娘思いの優しい父親のそれではなかった。
1人の男。メスの匂いに敏感な野性のオスだった。
美味しそうな肉だ。喉が鳴る。たまらん。
おっと、いかんいかん。
騒がしい雑踏の中、我に帰る。
何てことを考えるのだ。義男は恥じた。
実の娘に邪まな思いを持つなど、人として最低だぞ。
義男は何度も首を振って邪心を振り払う事に専念した。
明日の夜は久しぶりの我が家。
たっぷりと古女房を慈しもう。
そうすればこの邪気も消えよう。
暫く女っ気が無いままに居たのが拙かったのだ。
ただそれだけの事なのだ。
義男は気を取り直して急ぎ足で受付カウンター
へと向った。
「WAO!」
その時前を行く義男の右手から、これまた早足の
男性が突っ込んできた。
「わあああ。」
慌てた義男は、その突進を交わせずに勢い良くぶつ
かってしまった。
散乱する荷物。相手の男性も、手に持っていた荷物を
落としてしまった。
「Oh!Sorry!」
「It is OK. Please do not care.」
男性は右手を前に出して、慌てる義男を制した。
そして笑顔で散らばった荷物を次々と片付けていった。
勿論、義男も手伝う。自分の荷物もかなりあったから
当然か。
そしてそれらは直ぐに片付けられた。
恐縮しながら何度も詫びる義男。
男性はずっと笑顔を絶やさずにその対処を
し終えると、そのまま雑踏の中に消えて行った。
ふぅ~。
義男はやっと安堵した。
それは無理もなかった。
ニューヨークという街は、世界一の国際都市である反面、
世界一治安の悪い街でもあった。様々な人種の集う街で
ある以上、それだけでとかく”いざこざ”が簡単に起こ
ってしまうのである。
白人に黒人、スパニッシュにチャイニーズなどなど。
喧騒の街。たとえ肩が触合っただけでも、もし相手が決し
て認められない人種だったとしたら、それだけで騒動にな
る可能性が多々ある・・・そんな街ニューヨーク。
義男は何度か、そんな場面を見て来た。
自分は日本人。みんな金を持っていると邪心する。
どこで狙われているか分かったもんじゃない。
それでなくともいちゃもんをつける材料は、
そこら辺にうじゃうじゃと転がっていた。
イエローモンキー。繰り返し何度も耳にした蔑視の嵐。
タフなだけでは生きてはいけない。己を厳しく律した。
目立つな、怒らすな、そして無意味に笑うな。
そして仕事はきっちりとこなせ。
こうして地道にひたすら、人々から信頼される努力を
してきた。
以来15年。それは気を抜けない日々だった。
それも今日でお終い。開放される日が来たのだ。
危ない危ない。きっちりと日本の土を踏むまで気を抜いては
いけない。女にうつつを抜かすのは明日からでいいのだ。
気を引き締めて税関を通る。そして飛行機のタラップを昇る。
夜の空港。風が心地良かった。
入り口でFAたちの出迎えを受けた。
綺麗な日本娘たちが様々な笑顔で挨拶。
最後に舞が挨拶。やはり一番可愛かった。
そして豪華ファーストクラスの席に通された。
会社からのささやかなプレゼント。
ゆったりと大きなシート。座り心地抜群。
平日のせいか、客の入りはまばらだった。
まるで独占している気分。それも悪くはない。
自然と頬も緩む。嗚呼さらばニューヨーク。
”Say Goodbye To NewYork”
ビリージョエルの歌をもじって口ずさむ。
場所は違えど気持ちは一緒だった。
シートベルト着用のアナウンスが流れた。
暫くしてエンジン音が響く。
いよいよだ。かすかな振動に下っ腹が張った。
GOGOGO・・・TAKEOFF。
「皆様、本日は当XX航空をご利用頂きまして
誠にありがとうございます。当飛行機はアラスカ・
アンカレッジ経由で東京に向っております。
アンカレッジ到着はXX時、東京到着はYY時を
予定しております。到着まではかなりのお時間を
要しますが、それまで美しい空の旅を、存分にお
楽しみ下さいませ。」
聞き覚えのある声。舞の声だった。
日本語、英語、仏語。見事に使い分ける。
さすがだな。
義男は感心しきりだった。
語学留学で1年、ニューヨークで一緒に暮らした
のは 舞が18の時だったか。
あの頃は、まだ自分のモノにはなっていなかった。
だが相当の努力を重ねたのを知っている。
自分の仕事にかこつけて一緒に全米各地を巡った
事もあった。
あの頃は一生懸命な娘を応援していた。
勿論色気などまったく感じなかった。
可愛いとは思ったが、それ以上の気持ちは
これぽっちも有りはしなかった。
そして1年経つと、英語もかなりの上達を見て取れた。
誰とでも1人で気軽に会話が出来るまでになっていた。
そしてその成果を肌で感じると、あっさりと妻の待つ
日本へと帰って行った。
以来、年に1度、ほんの数日間だけ顔を見せるだけに
なった。そしてそれは年中行事化した。
勿論その時は母親と一緒。そして帰る時も一緒。
男親なんかなるもんじゃない。
いつも寂しさを噛締めるのが日課になってしまっていた。
愛しい娘に会えなくなるのもそうだが、やはり妻の温もり
を感じられなくなる事が一番辛かったのだった。
そして今年は、いつもの2人にプラス1人加わっていた。
彼氏だった。舞より5つ上で自分と同じ商社マンだった。
一層寂しさが募った。自分を抜きにして全てのコトが進行
していたからに他ならない。
おそらくかなり前からの付き合いだったのだろう。
今年、15年振りに日本に帰る事が決まってから急だった。
いきなり”恋人です。””結婚します。”だった為、父親
らしい抵抗など出来ようも無かった。
してやられた。ホゾを噛むばかりだった。
今では、なるようになれ、という心境だった。
わざわざ娘のスケジュールに合わしての帰国は彼の思いやり
からだったのは言うまでもなかった。
娘の仕事振りを見るのは初めてだった。
そしてこれが最後でもあった。
結婚と同時にこの仕事を辞めるというのを聞いていたからだ。
当然の如く舞の笑顔は一層映えた。
テキパキと仕事をこなす姿を見て嬉しく思い、そして、
凄く寂しくも感じたのであった。
様々な思いが交錯する中、ふと気晴らしをしようとカバンから
2,3冊の本を取り出した。
忙しい日々の中、ヒマを見つけては、ちょこちょこと読んでいた
が、なかなか読み切れずにいた。
だが、今日は到着まで、たっぷりと時間がある。
一気に読み飛ばそう。こんな過ごし方なんぞ滅多に無い事だ。
最初の1冊を開いた。
ひらり・・・
何かが落ちた。
足元を見ると一片の葉っぱがあった。
拾い上げるや義男は目を細めた。
形の良い葉が四枚も着いていた。
(これは四つ葉のクローバーだな。何と縁起の良い事だろう。)
だが何時これが入り込んだのだろう?
しばし考えた後、義男はハタと気付いた。
そう・・あの男とぶつかった時だ。
ばら撒かれた荷物を整理している内に紛れ込んだのだろう。
(こんなに立派な葉は見たこともない。これは貴重だぞ。)
凄く嬉しい気持ちになる義男だった。
その反面、落とした男性に対して凄く気の毒な事をしたと
思いやった。
幸せの四つ葉のクローバー。
願い事は必ず叶うとの言伝えがあった。
叶う願い事は1つだけ、強い気持ちさえあればOKだった。
義男には、そんな迷信を信じる気持ちなど無かった。
圧倒的なまでの厳しい現実に生きる身では無理も無い事だった。
それよりも生の植物の持ち込みが心配になった。
知らなかった事とはいえ、検閲を潜り抜けた事が問題だった。
どうしようか?捨てるか?でも何処に?
暫く腕組みで熟考。
「どうなさいました?お客様。」
ふいに後ろから声がした。振り向くと舞が立っていた。
優しげな営業スマイルではなく、あのイタズラっぽい笑み
を浮かべながら。
「あっああ・・その、なんだ。」
もどかしく歯切れの悪い口調。舞も思わず首を傾ける。
「どうしたの?お父さん。」
小さい声で囁く。さすがに公然と公私混同は気が引けた。
「実はこれなんだが・・・どうしようか?」
目の前にゆっくりとその葉っぱを差し出した。
「まあ、四つ葉のクローバー。どうしてこんな物がここにあるの?」
義男は、事故の顛末を説明した。
このままではマズイ。だが捨てられない以上隠すしかないのは明白
だった。
「でもこんなに小さい物だったら、そんなに目くじらを立てる必要
も無いんじゃない?」
「確かに本の中に挟んでおけば全然問題無いけどな。でもお父さん
ちょっと気が引けて嫌だなあ。」
「いいわ。だったら私が貰っていくわ。それなら良いでしょ?」
舞は一片の葉っぱを手にすると、大事そうに胸ポケットに仕舞い
込んだ。
「四つ葉のクローバーってのは、昔から願い事が叶うアイテムなんだ
そうだな。」
「そうよ。何でも一生懸命祈れば神様が1つだけ叶えてくださるって
確か何かの本に書いてあったわ。」
「お前は何を祈るつもりだい?」
「な~いしょ。これって思っている事を口にするとご利益が無くなる
って事だよ。だから内緒よ。」
「そうかいそうかい。じゃあ何でも祈ってな。どうせあいつの事だろう
けどな。」
やっかむような口ぶり。
やっぱり彼氏の事だろう。
しゃくにさわる。義男の唇がへの字になった。
それを見て、そそくさと退散。
そして暫くしてから、また戻って来た。
なにやら小さなグラスと赤い色のビンが一緒だった。
「お客様、ワインをお持ちいたしました。どうぞごゆっくりと
おくつろぎ下さいませ。」
父のワイン好きを知ってか、機嫌直しにと素早いタイミング
で持ってきたのだった。
(こんなもので俺の機嫌直しか。ったく、しょうがない奴だなあ。)
見えすぎた魂胆。誰が引っ掛かるか。
いつもいつも、物分りのいい父親なんかやってられるものか。
柄にも無く、意固地な父親を演じてみたものの、
1杯、2杯とグラスを重ねる度に、その思いは次第に緩んでいった。
所詮、父親は娘には勝てないようになっているのだ。
何時の間にか気分が良くなっていた。
そして舞の気の配り方に感心するまでに気持ちが
一変していた。
凄く良い気分になった。
もう1本追加して、それもカラになった。
そうしているうちに義男は気持ち良さそうに寝息を立てて、
寝てしまったのだった。
後ろの方から、絶えず優しげな笑みを浮かべながら見守っていた
舞は持っていた毛布を、そっと肩口から掛けた。
「おやすみ。お父さん。」
声は無かったが、小さな唇はそう動いていた。
何時間程経過したのだろうか・・・
ふいに背中に悪寒が走った。
義男は突然に、どうしようもない程に尿意をもようした。
(いかん、飲み過ぎたか。)
ふらつく足元。頭が重い。まだ酔いから醒めていなかった。
(なんて事だ。浮かれ過ぎてしまった。)
無様な事をしている。
ふらつく意識の中でも恥ずかしさの自覚はあった。
シャツは、はみ出ていてネクタイは曲がったまま。
こんな姿を娘に見られたら最悪だ。
いつもカチっと決めていたい・・それは娘を持つ
父親なら誰しも持つ気持ちだ。
だが、尿意は待ってくれない。急がねば・・
そのままの格好でトイレへと走った。
ドアを叩いた。反応が無い。
良かった・・直ぐに入る。
そして一斉放水。
嗚呼何と気持ち良いことだろう。
あっと言う間に肩の力が抜けた。
ほんの少しだけ酔いが醒めた。
だが、その時なぜかふわふわと宙に浮いた
感覚を覚えた。
これって何だろう?凄く心地良い気持ち。
よほど良いワインだったのだろう。
こんなに気持ちの良いワインは初めてだ。
よし、今度舞に聞いて購入してみよう。
義男は洗面台に写った自分の顔を眺めつつ、
そんな事を思っていた。
義男は、手を洗うと直ぐにドアノブに手を掛けて
外へと出た。
辺りが静まりかえっていたのをその時知った。
腕時計を見ると、短針が2の数字を指していた。
何と中途半端な時間だろう。
気持ちの良い酔いも、急激に醒めていった。
(仕方ない。もうひと眠りするか。)
自嘲気味に軽く頭を振った。
すると丁度その時、奥の通路から誰かがこちらに
向かって歩いて来た。
薄暗かったせいもあってか、少し見えにくかったの
だが、スーツ姿にエプロンをしているのが判った。
交代で夜中の身回りや各所点検をしていたFAの誰
かだろうというのが、その時理解できた。
足音が近づく、そして電灯の下に出てきた。
「舞・・・。」
「お父さん・・。」
義男は、彼女に前に立ち止まった。
舞も、立ち止まったままに義男を見ていた。
しばしの静寂の中、互いが黙ったままに対峙した。
舞は、その表情を変えずにつぶらな瞳で父を
見つめていた。
まるで何かを求めるような瞳だった。
義男は、その時再び宙に浮かぶような感覚を覚えた。
それらによって息が詰まった訳でもなく、それは
まるで何かから解放されたといった類の感覚だった。
義男はネクタイの紐を緩めた。
続いてワイシャツボタンを1つ2つと外す。
舞もエプロンを投げ捨てた。
そしてズボンのチャックを下ろすと、中から肉棒を
つまみ出して、それを解放させた。
舞は眉1つも動かさずに、黙ってそれら一連の行動
を見ていた。
義男は、先程閉めたばかりのトイレドアを開けた。
そして、すっと左手を差し出して、レディを招くポーズ。
舞は躊躇わずに左手を差し出して、その招きに応じた。
ぐいっと力強く引き寄せると、舞は少しバランスを崩されて
前につんのめった。
勢い、舞の顎が義男の額に当たった。
義男はすかさず、そのまま顔を上げて舞の唇を塞いだ。
そしてあっと言う間の流れで2人は、そのままトイレの中に入った。
閉まるドア、乾いた鍵の音。
互いに黙ったままに、激しく舌を奪い合った。
背中に回した互いの両腕にも力が入る。
きつくきつく抱締め合う父と娘。
義男の頭の中は真っ白だった。何も考えられない。
でも何かに突き動かされるように、舞の身体が欲しくなっていた。
少し息苦しくなって顔を離した。
すると互いの唇を繋ぐようにひとすじの糸が垂れていた。
もう1度重ねる唇。それから父は首すじに舌を這わせ始める。
娘の口から切ない吐息が漏れる。
そして甘えるようにもたれ掛る。
義男は両腕を手前に戻して、今度は舞の胸ボタンの取り外し
に取り掛かった。
その間中、舞は義男の耳に舌を這わせていた。
舐めたり、ちょっとだけ噛んだり、息を吹きかけたりもした。
ジャケットが開いた。
真っ白いブラが眩しかった。
見事な隆起。ほんのちょっとだけ手に余るぐらいのサイズ。
その肌はスベスベで滑らか。まさに今が盛りであった。
そして5本の指に力を入れた。
「ああん。」
舞の甘えた声が耳元で囁く。
義男の興奮は最高潮に達しようとしていた。
舞は、ゆっくりと両股を八の字に広げながら、
しゃがみ込んで行った。
捲りあがるスカート。膝の上までが露出された。
目の前にある半立ちの肉棒を、しげしげと見つめて、
亀頭の先を舌でひと舐め。そして一気に咥え込んだ。
「おおおう!」
生暖かい湿り気が全体を覆う。堪らずに声が出た。
舞の頭が前後に激しく揺れる。添えられた右手
で激しく扱かれながら、ねっとりとした舌が絡み
付くという2段攻撃に、義男は一気に達してしま
いそうになった。
部屋中に響く淫音。
タップリと唾液がまとわりつく音は実に卑猥だった。
義男は、下に視線を落とした。
一心不乱にしゃぶりたてている舞の顔があった。
更に下に眼を向けると、八の字に開いた股から黒
のパンストが、肉付きの良い太ももを覆っている
のが見えた。
勿論その上からは、定番の黒のガーターベルトが
見えていた。
舞は余った左手を、開いた股間の中に入れていた。
更に捲れ上がるスカート。
その時、義男は少なからず驚いてしまった。
左手の先には、黒々とした密林があった。
舞は下着を履いていなかった。
指は激しくクリトリスを弄くっていた。
「ああああんん。」
切ない声と切ない表情。
義男は、舞の頭を押さえつつ腰を前後に
動かした。何と気持ちのイイ事だろう。
何時までも味わっていたかった。
「硬くなったわ。」
舞はそう言うと、ゆっくりと立ち上がった。
見詰め合う2人。もう1度舞からキスをした。
何度も何度も舌が交差した。
そしてやっと舌が離れた。また見詰め合う。
舞は後ろを向いてドアに両手をつけた。
そして、ぐいっとお尻が義男の前に突き出された。
入れて欲しい仕草に義男の興奮は高まった。
これ以上ないぐらいに反り返った肉棒を持って、
それに狙いを定める。
唾液でベチャベチャの肉棒は、何の抵抗も無く、
するりと舞の中に入って行った。
「あうっ、くうううう・・・」
一気の快感が舞の全身に走る。必死に声を抑える。
「おうううう・・」
そのヌルリとした感触が更なる快感を引き出させた。
そして呻き声が漏れた。
禁断の結合が、今成された。
後ろから、激しく突上げる義男とドアに顔を押し当て
ながらも、それを受け止める舞。
「ア、ア、ア、はあああん~。」
声を出すまいと必死に堪える舞だったが、とても堪え
切れそうにも無かった。
一方義男の方は、年齢の割りに元気だった。
その証拠に腰の勢いは更に増してきた。
「あああ~ん。もうだめぇ~ん。」
とうとう大きな声が出てしまった。
慌てた義男は、直ぐに胸ポケットからハンカチを取り出
して、そのまま舞の口の中に押し込んでしまった。
そして肉棒を引き抜くと、今度は便座に腰を下ろした。
舞を正面に向けて、ちょうど抱っこをする形で義男の
股の上に腰を下ろさせた。
「おおおお。愛しているぞ舞。」
真っ白なブラをずらして、その綺麗な隆起物に舌を這わせた。
「うううん。うううん。」
舞もハンカチの下から、快度の声が漏れる。
器用に腰を動かす舞。ねっとりとした肉棒を締め付ける。
大きなお尻が、上下に動いていた。
義男も、何度も突上げた。
「おおお、た、堪らん。もうダメだあ。」
辛抱堪らずに、悲鳴に似た声が出た。
「うう、うううん。」
舞の首が、何度も何度も縦に揺れた。
「そ、そうかいいのか。中に出してもいいんだな?。」
懇願するような表情の義男。
舞は、にっこりと笑顔で、力強く首を縦に振った。
「くぉおおおおおお・・・・い、いいくううう!!」
激しく突上げる腰が、その時突っ張るようにして止まった。
ぶるぶるっと腰が震えた。そしてゆっくりと沈んで行った。
「ふぅ~。」
暫くして、義男は1つ大きく息を吐いた。
大きな快感の後の、ほんのひと時の安らぎ。
義男は自分の胸に顔を置いている舞を見た。
満足げな表情。口元には優しげな笑みを称え
ていた。
ゆっくりと優しく口の中に入れていたハンカチを取り出した。
すると舞は顔を上げて、義男の顔をまじまじと見つめた。
今度は頬に口づけ。
そしてにこやかな表情で立ち上がった。
ブラを直し、ボタンを嵌めて、素早く服装を正した。
そして何も言わずに、すっとドアを開けて出て行ってしまった。
その鮮やかな退場に1人下半身剥き出しのまま、ぽか~んと
佇んだままに見とれていた義男だった。
嵐は吹き荒れ、そして一瞬にして去って行った。
自分でも判らない一瞬の衝動だった。
まるで誰かに動かされたかのような不思議な感じがあった。
じっと股間を見る義男。
仕事を終えた肉棒は、ただ”だらん”と垂れていた。
今、確かに娘を抱いたのだ。
その手には、娘の柔らかい肌の感触が残っていた。
股間の痺れは、確かに温かいぬめりを残していた。
罪悪感はまったく感じなかった。
それよりも素晴らしい夢を見た感動があった。
もう1度、大きく息を吐いた。
義男も身支度を整えると、直ぐに自分の席へと戻って行った。
そして毛布を肩口まで掛けると、直ぐに眠ってしまったので
あった。
どれぐらい眠ったであろうか、女性の落ち着いたモーニング
コールアナウンスが耳元に入ってきた。
「うう~ん。」
大きく背伸びを1つした。相変わらず頭は重かった。
腕時計を見た。
(なんだ、たった4時間ほどか。)
小さく舌打ちをした。疲れが残っていたからだ。
「皆様、おはようございます。」
「Good Morning sir。」
その時、女性達の明るい声と共に、朝食のテーブルが
次々と運ばれて来た。
一瞬にして華やぐ客室。義男も気分が落ち着いた。
そして目の前を通るFAの後ろ姿を見た瞬間、
ほんの数時間前の出来事が脳裏を過ぎった。
突然に胸がドキリとした。
あってはならない出来事があった。
父と娘が1つになった。
誰にも言えない行為をした。
どうしよう?妻にも言えない。
1度きりの過ちで終えるか?・・・いや自信が無い。
昨日の感動などどこかに吹き飛んでしまっていた。
「お客様、大変お待たせ致しました。どうぞ。」
悩む義男の耳元に、爽やかな声が響いた。
舞だった。
差し出される朝食。普段通りに接する舞。
「ど、どうも・・」
義男は、動揺を隠せずにいた。
「どうぞごゆっくり・・・」
軽く会釈して、その場を去って行った。
とりあえず食事をする。だが味はしなかった。
まるで砂を噛むような感じがした。
何とか胃袋に収めた。
悩みは尽きない。沈む気持ち。
「わあああ!凄いなあぁ!」
客の一人が大きな声を上げた。
その方向に顔を向けると、窓の外から綺麗な朝日
が顔を出していた。漂う雲の上にそれが燦々と光り
輝やいでいた。
それは神秘な風景だった。高度何万M上空の別世界。
まさに神々が住む楽園であった。
義男は、ふと考えた。
ひょっとしてあれは全て夢だったのではと・・
舞の表情はいつもと変わりは無かった。
そうだ、そうに違いない。
ちょっと気持ちが軽くなったようだ。
そして、カップに残った紅茶をぐいっと、
ひと呑みした。
暫くして、テーブルを下げに再び舞がやって来た。
「如何でしたか?美味しかったでしょうか?」
笑顔で尋ねる舞。
「う、うん。美味しかったよ。うん。最高だった。」
「わあ。そうですか。ありがとうございます。」
更に優しそうな笑顔を振り撒く。
いつもと変わりの無い屈託の無い微笑だった。
・・・・・
やっぱりな。あれは夢だったんだ。
これは酒の飲みすぎだ。反省せねば。
何というバカな夢だったのだろうか。夢はその人の
潜在的欲求を示すものなのだと、誰かが言ってた。
と、すると俺は娘を一人の女として見ていたことになる。
バカな、俺には愛する妻がいるではないか。
今までそれで充分だったではないか。どうかしている。
それにもうすぐ日本だ。こんなバカな事は忘れてしまおう。
・・・・・・
こうして気持ちを整理して、何とか吹っ切ろうとした。
「それでは失礼致します。」
舞は、そう言うと静かにテーブルの取っ手に手を置いた。
さてと・・
義男は横に置いてあったカバンから本を取り出そうとした。
するとその時、綺麗な手が目の前を横切って、左手の甲に
置かれた。
(何だ?)
義男の視線が、その手に集中した。
ゆっくりと手が離れて行く・・連れて義男の目が大きく
見開いていく。
(こ、これは・・・)
手の甲には、綺麗な四葉のクローバーがあった。
はっと、舞の顔を見た。
何とも言えない慈愛に満ちた笑みが口元にあった。
「あのう。すみませんけど・・。」
「何か?」
「胃薬を持ってきてくれませんか?ちょっともたれる
気がしてしょうがないんですよ。」
「分かりました。直ぐにお持ちいたしますので、暫く
お待ちくださいませ。」
数分後、舞が薬と水の入ったコップを持って義男の席へと
やって来た。
「お待たせ致しました。お薬とお水でございます。」
「ありがとう。」
ゆっくりと3粒の錠剤を口に入れ、水を流し込む。
コップの水を飲み干すと、直ぐにそれを舞に手渡した。
「お大事に。」
舞は軽く会釈をすると身体を出口へと向けた。
「ちょっと待ちなさい。」
義男がゆっくりとした口調で呼び止めた。
「はい?」
再び義男の席の方に振り向く舞。
義男は、ゆっくりと膝に掛けてあった毛布を取った。
するとそこには膝までズボンとパンツをずらしていた姿が
現れた。
ちょうど、だらんと垂れた肉棒が、ゆっくりとその頭を持ち
上げつつあった。
「まあ。うふふふ・・」
優しい笑顔を浮かべた舞は直ぐに左手を、その肉棒に添えた。
そしてゆっくりと上下に動かした。
「おおおお。やっぱり本当だったんだな。」
昨日感じた柔らかい手の感触を思い起こした。
舞は素早くしゃがみ込むと、義男の両足の間に身体を入れた。
そして昨晩と同様の念入りなおしゃぶりを始めた。
まるで大事な宝物を慈しむ様に慈愛溢れる笑みで、それを口に
含んでいた。
「お前の願い事ってこれだったのか。」
「うん。」
「あの男はどうするのだ?結婚は止めるのか?」
「いいえ。ちゃんと結婚するわよ。」
「バレたら大変だぞ。」
「大丈夫よ。今度あの人イギリスに転勤なの。」
「でも母さんはどうするんだ?」
「外で会えば問題は無いわ。」
「外で?」
「そう。私ね、この仕事続ける事にしたの。そうすれば旦那様にも
会いに行けるし、仕事帰りのお父さんとも外で会えるし良いでしょ?」
舞は少し歯を立てた。
「痛っ!」
義男は思わず腰を浮かせた。
「うふふふ・・・」
イタズラっぽい笑顔で義男を見る。
「私には2人の旦那様がいるの。勿論お父さんにも2人の妻がいるのよ。」
「そういえばあの男、どことなく俺に似ていたなぁ。」
「私、お父さんの事、ずっと好きだったの。」
「そうか。」
「あの四つ葉のクローバーは私に幸せを与えてくれたわ。」
「私もそう思うぞ。」
義男と舞は互いの顔を見合わせると自然と笑みがこぼれた。
「一緒に住みましょ。いいでしょ?。」
「ああ大歓迎だ。だけどあの男が承知するかどうかだが・・」
「大丈夫よ。あの人私の言いなりだから。」
舞の手の動きが、速くなってきた。
義男は段々堪らなくなってきた。
「おおお。いいぞ舞。そろそろイキそうだ。もうちょっと
しゃぶっておくれ。」
「はい。お客様。」
舞の丁寧な舌使いが、とても気持ち良かった。
「それとねお父さん。」
「何だ?」
「あの人とお父さんとが似ている所が、もう1つあるのよ。」
「ほう。どこだい?」
「血液型よ。」
そう言うと舞は、一気に根元まで飲み込んだ。
堪らずに義男がうめいた。
「い、イク。」
爆発した溶岩は、ゆっくりと舞の喉元に流れ込んで行った。
その時、ふと外を見た。真っ白に雪化粧された富士山があった。
ああ日本だ。
やっと帰れたのだ。必然とこみ上げる喜び。
舞も顔を上げて、同じ様に外を見た。
そしてゆっくりと立ち上がった。
その時、アナウンスが流れてきた。
「皆様。間もなく当機は、着陸の準備へと入ります。
着陸の際には、大変危険を伴いますのでシートベルトを着用の上
静かにお待ち願います。今回は当飛行機をご利用頂きまして、誠に
ありがとうございました。またのご利用を心からお待ち申し上げて
おります。」
(おわり)
[2005/01/09]
題名 「雲の上にて」
「アテンションプリーズ、アテンションプリーズ。
間もなく20時30分発xx航空YY便の御搭乗手続きを
受付カウンターにて始めますので、ご利用の方は至急お集
まり願います。」
喧騒のJFK国際空港。
まさしく人種のるつぼ。様々な人達が行き交う。
次々と流される空港アナウンスに、ソファーに座って
待っていた人達は、一斉に立ち上がって我先にと手続
きを行なっているカウンターへと急ぐ。
「ふむ。そろそろだな。」
高級スーツを身に纏った初老の男性が、ネクタイを
きゅっと締め直して、ゆっくりと立ち上がった。
原孫義男57才。
総合商社に勤めて35年。
ここ15年程はアメリカ・ニューヨーク支社に在籍
していた。
本場国際ビジネス戦争の最前線に送り込まれた義男
は、いわば会社期待の人材だったのである。
当然、厳しい日々が続くのは目に見えていた。
義男は家族を残して1人、単身で乗り込んで行った。
文字通り粉骨砕身でコトに当たった。
以来15年、その成果は目に見えて大きく出た。
売上高、規模、関連企業買収等。その発展の早さは
尋常ではなかった。
そして安定期に入ったのを機に、本社は義男に呼び
戻しを命じた。
勿論、専務という椅子を用意して。
(もう15年か。早いもんだ。)
搭乗便を知らせるボードを眺めつつ、その歳月の流れを
懐かしんでいた。
「おとうさーん。」
その時、遠くから自分を呼ぶ声がした。
その声がする方向に目を移すと、1人の女性が、
手を振りながら、早足でこちらに向かって来た。
深い紺色で統一されたジャケットとスカート。
肩から下げたショルーダーバックも紺色。
首の横でかた結びされたブレーンのスカーフが、
いかにも、といった感じがした。
「さすがに時間通りだな。舞。」
「ここは私の職場よ。当然よ。」
「おお・・随分と生意気な事を言うようになったな。あはは・・」
舞が国際線のFA(フライト・アテンダント)になって6年。
今や制服もピタリと似合う程、堂に入っている。
爽やかな笑顔で義男の前に立った。
「お客様。本日は私どもXX航空をご利用頂きまして
誠にありがとうございます。当飛行機はここニューヨーク
を出まして、アラスカを経由しながら・・・」
流暢な英語で喋り始める舞。
「おいおい、何もココで仕事の真似事なんかするな。」
右手を左右に振りながらイヤイヤの表現。
周りを見渡すと結構見ている人、人、人・・・
「どう?これでも・・」
「ああ分かった分かった。生意気と言ったのは、
お父さんの失言だった。謝るからもう止めなさい。」
「分かればよろしい。あはは・・」
「ふふふ・・だが大したもんだな。舞。」
綺麗な立ち姿。
自分を大きく超える背丈。
見栄えは、欧米人と比べてもひけなど取らない。
義男はしみじみと感慨にふけった。
渡米前、あのつぶらな瞳に涙を一杯に溜めながら、
スーツの端を掴んで放さなかった子供が、長い年月
を経て、人々の関心を一身に受ける美しい女性へと
変貌を遂げた。
「私もトシを取るわけだな。」
義男は白くなったモノが多く混じった頭を1つ撫でた。
「お父さん、そのセリフは厳禁よ。あたしだって気にし
ているんだから・・もう。」
ため息交じりの笑顔で呟いた。
「何言ってるんだ。FAってのは今ぐらいが一番良いんだろ?」
「そうかも知れないけど、もうすぐ28を迎える女の子にとっては、
そうそう悠長に構えてはいられないのよね。」
その言葉に義男は呆れた顔になった。
「お前、このフライトの後に結婚するんだろ?何を今更。」
「あのね、それとこれとはまったく別なの。女にとって”若さ”
は永遠のテーマなのよ。このまましわくちゃの婆さんになっちゃう
なんて、考えただけでも身震いしちゃうわ。おお、いやいや・・」
両肩をすぼめながらしかめ顔の舞。
やれやれ、女ってのは随分と勝手な生き物だな。
義男は、今さながらに妻の苦労を思いやった。
父親不在で一人娘を育てるのは並大抵の苦労
ではなかったはずだ。
女同士いがみ合う事もあっただろう。
義男は妻に会うのを楽しみにしていた。
最後に会ったのは何時だったか?
1年、いや2年前か・・・
長年連れ添った愛妻。愚痴1つこぼさずに
尽くしてくれる。いつも笑顔を絶やさない
女性。 感謝の気持ちで一杯だ。
「お母さんの事考えてたでしょ?」
ふいにそのイタズラ顔を義男に近づけて、
冷やかしの一言。
「な、何だ急に。もうしょうが無い奴だ。」
あたふたと顔を赤らめて怒り出した。
「あはは・・なあんだ図星か。もうやんなっ
ちゃうわ。どうもごちそうさま。」
舞は道化のようにおどけて格好を崩した。
義男は父としての尊厳を守るかのように、
忙しく咳払いを1つ2つして体裁を取り繕った。
「今日はよろしく頼むぞ。」
「はい。分かりました。今日1日、安心と快適
な空の旅を、どうか存分に満喫して下さいませ。」
すっと背中を伸ばして、ビューティスマイル。
思わず”どっきり”と息を飲む義男。
舞は軽い会釈と共に雑踏の中に消えて行った。
呆然とした表情で、その後ろ姿を見送る義男。
すらりと長く伸びた二本の足が優雅に動いている。
それに伴ってツンと上に向いたお尻が揺れていた。
義男はそこから視線を外さずにいた。
いや、外せなかった・・・のである。
凄い・・・凄くイイ身体しているぞ。
義男の目は、娘思いの優しい父親のそれではなかった。
1人の男。メスの匂いに敏感な野性のオスだった。
美味しそうな肉だ。喉が鳴る。たまらん。
おっと、いかんいかん。
騒がしい雑踏の中、我に帰る。
何てことを考えるのだ。義男は恥じた。
実の娘に邪まな思いを持つなど、人として最低だぞ。
義男は何度も首を振って邪心を振り払う事に専念した。
明日の夜は久しぶりの我が家。
たっぷりと古女房を慈しもう。
そうすればこの邪気も消えよう。
暫く女っ気が無いままに居たのが拙かったのだ。
ただそれだけの事なのだ。
義男は気を取り直して急ぎ足で受付カウンター
へと向った。
「WAO!」
その時前を行く義男の右手から、これまた早足の
男性が突っ込んできた。
「わあああ。」
慌てた義男は、その突進を交わせずに勢い良くぶつ
かってしまった。
散乱する荷物。相手の男性も、手に持っていた荷物を
落としてしまった。
「Oh!Sorry!」
「It is OK. Please do not care.」
男性は右手を前に出して、慌てる義男を制した。
そして笑顔で散らばった荷物を次々と片付けていった。
勿論、義男も手伝う。自分の荷物もかなりあったから
当然か。
そしてそれらは直ぐに片付けられた。
恐縮しながら何度も詫びる義男。
男性はずっと笑顔を絶やさずにその対処を
し終えると、そのまま雑踏の中に消えて行った。
ふぅ~。
義男はやっと安堵した。
それは無理もなかった。
ニューヨークという街は、世界一の国際都市である反面、
世界一治安の悪い街でもあった。様々な人種の集う街で
ある以上、それだけでとかく”いざこざ”が簡単に起こ
ってしまうのである。
白人に黒人、スパニッシュにチャイニーズなどなど。
喧騒の街。たとえ肩が触合っただけでも、もし相手が決し
て認められない人種だったとしたら、それだけで騒動にな
る可能性が多々ある・・・そんな街ニューヨーク。
義男は何度か、そんな場面を見て来た。
自分は日本人。みんな金を持っていると邪心する。
どこで狙われているか分かったもんじゃない。
それでなくともいちゃもんをつける材料は、
そこら辺にうじゃうじゃと転がっていた。
イエローモンキー。繰り返し何度も耳にした蔑視の嵐。
タフなだけでは生きてはいけない。己を厳しく律した。
目立つな、怒らすな、そして無意味に笑うな。
そして仕事はきっちりとこなせ。
こうして地道にひたすら、人々から信頼される努力を
してきた。
以来15年。それは気を抜けない日々だった。
それも今日でお終い。開放される日が来たのだ。
危ない危ない。きっちりと日本の土を踏むまで気を抜いては
いけない。女にうつつを抜かすのは明日からでいいのだ。
気を引き締めて税関を通る。そして飛行機のタラップを昇る。
夜の空港。風が心地良かった。
入り口でFAたちの出迎えを受けた。
綺麗な日本娘たちが様々な笑顔で挨拶。
最後に舞が挨拶。やはり一番可愛かった。
そして豪華ファーストクラスの席に通された。
会社からのささやかなプレゼント。
ゆったりと大きなシート。座り心地抜群。
平日のせいか、客の入りはまばらだった。
まるで独占している気分。それも悪くはない。
自然と頬も緩む。嗚呼さらばニューヨーク。
”Say Goodbye To NewYork”
ビリージョエルの歌をもじって口ずさむ。
場所は違えど気持ちは一緒だった。
シートベルト着用のアナウンスが流れた。
暫くしてエンジン音が響く。
いよいよだ。かすかな振動に下っ腹が張った。
GOGOGO・・・TAKEOFF。
「皆様、本日は当XX航空をご利用頂きまして
誠にありがとうございます。当飛行機はアラスカ・
アンカレッジ経由で東京に向っております。
アンカレッジ到着はXX時、東京到着はYY時を
予定しております。到着まではかなりのお時間を
要しますが、それまで美しい空の旅を、存分にお
楽しみ下さいませ。」
聞き覚えのある声。舞の声だった。
日本語、英語、仏語。見事に使い分ける。
さすがだな。
義男は感心しきりだった。
語学留学で1年、ニューヨークで一緒に暮らした
のは 舞が18の時だったか。
あの頃は、まだ自分のモノにはなっていなかった。
だが相当の努力を重ねたのを知っている。
自分の仕事にかこつけて一緒に全米各地を巡った
事もあった。
あの頃は一生懸命な娘を応援していた。
勿論色気などまったく感じなかった。
可愛いとは思ったが、それ以上の気持ちは
これぽっちも有りはしなかった。
そして1年経つと、英語もかなりの上達を見て取れた。
誰とでも1人で気軽に会話が出来るまでになっていた。
そしてその成果を肌で感じると、あっさりと妻の待つ
日本へと帰って行った。
以来、年に1度、ほんの数日間だけ顔を見せるだけに
なった。そしてそれは年中行事化した。
勿論その時は母親と一緒。そして帰る時も一緒。
男親なんかなるもんじゃない。
いつも寂しさを噛締めるのが日課になってしまっていた。
愛しい娘に会えなくなるのもそうだが、やはり妻の温もり
を感じられなくなる事が一番辛かったのだった。
そして今年は、いつもの2人にプラス1人加わっていた。
彼氏だった。舞より5つ上で自分と同じ商社マンだった。
一層寂しさが募った。自分を抜きにして全てのコトが進行
していたからに他ならない。
おそらくかなり前からの付き合いだったのだろう。
今年、15年振りに日本に帰る事が決まってから急だった。
いきなり”恋人です。””結婚します。”だった為、父親
らしい抵抗など出来ようも無かった。
してやられた。ホゾを噛むばかりだった。
今では、なるようになれ、という心境だった。
わざわざ娘のスケジュールに合わしての帰国は彼の思いやり
からだったのは言うまでもなかった。
娘の仕事振りを見るのは初めてだった。
そしてこれが最後でもあった。
結婚と同時にこの仕事を辞めるというのを聞いていたからだ。
当然の如く舞の笑顔は一層映えた。
テキパキと仕事をこなす姿を見て嬉しく思い、そして、
凄く寂しくも感じたのであった。
様々な思いが交錯する中、ふと気晴らしをしようとカバンから
2,3冊の本を取り出した。
忙しい日々の中、ヒマを見つけては、ちょこちょこと読んでいた
が、なかなか読み切れずにいた。
だが、今日は到着まで、たっぷりと時間がある。
一気に読み飛ばそう。こんな過ごし方なんぞ滅多に無い事だ。
最初の1冊を開いた。
ひらり・・・
何かが落ちた。
足元を見ると一片の葉っぱがあった。
拾い上げるや義男は目を細めた。
形の良い葉が四枚も着いていた。
(これは四つ葉のクローバーだな。何と縁起の良い事だろう。)
だが何時これが入り込んだのだろう?
しばし考えた後、義男はハタと気付いた。
そう・・あの男とぶつかった時だ。
ばら撒かれた荷物を整理している内に紛れ込んだのだろう。
(こんなに立派な葉は見たこともない。これは貴重だぞ。)
凄く嬉しい気持ちになる義男だった。
その反面、落とした男性に対して凄く気の毒な事をしたと
思いやった。
幸せの四つ葉のクローバー。
願い事は必ず叶うとの言伝えがあった。
叶う願い事は1つだけ、強い気持ちさえあればOKだった。
義男には、そんな迷信を信じる気持ちなど無かった。
圧倒的なまでの厳しい現実に生きる身では無理も無い事だった。
それよりも生の植物の持ち込みが心配になった。
知らなかった事とはいえ、検閲を潜り抜けた事が問題だった。
どうしようか?捨てるか?でも何処に?
暫く腕組みで熟考。
「どうなさいました?お客様。」
ふいに後ろから声がした。振り向くと舞が立っていた。
優しげな営業スマイルではなく、あのイタズラっぽい笑み
を浮かべながら。
「あっああ・・その、なんだ。」
もどかしく歯切れの悪い口調。舞も思わず首を傾ける。
「どうしたの?お父さん。」
小さい声で囁く。さすがに公然と公私混同は気が引けた。
「実はこれなんだが・・・どうしようか?」
目の前にゆっくりとその葉っぱを差し出した。
「まあ、四つ葉のクローバー。どうしてこんな物がここにあるの?」
義男は、事故の顛末を説明した。
このままではマズイ。だが捨てられない以上隠すしかないのは明白
だった。
「でもこんなに小さい物だったら、そんなに目くじらを立てる必要
も無いんじゃない?」
「確かに本の中に挟んでおけば全然問題無いけどな。でもお父さん
ちょっと気が引けて嫌だなあ。」
「いいわ。だったら私が貰っていくわ。それなら良いでしょ?」
舞は一片の葉っぱを手にすると、大事そうに胸ポケットに仕舞い
込んだ。
「四つ葉のクローバーってのは、昔から願い事が叶うアイテムなんだ
そうだな。」
「そうよ。何でも一生懸命祈れば神様が1つだけ叶えてくださるって
確か何かの本に書いてあったわ。」
「お前は何を祈るつもりだい?」
「な~いしょ。これって思っている事を口にするとご利益が無くなる
って事だよ。だから内緒よ。」
「そうかいそうかい。じゃあ何でも祈ってな。どうせあいつの事だろう
けどな。」
やっかむような口ぶり。
やっぱり彼氏の事だろう。
しゃくにさわる。義男の唇がへの字になった。
それを見て、そそくさと退散。
そして暫くしてから、また戻って来た。
なにやら小さなグラスと赤い色のビンが一緒だった。
「お客様、ワインをお持ちいたしました。どうぞごゆっくりと
おくつろぎ下さいませ。」
父のワイン好きを知ってか、機嫌直しにと素早いタイミング
で持ってきたのだった。
(こんなもので俺の機嫌直しか。ったく、しょうがない奴だなあ。)
見えすぎた魂胆。誰が引っ掛かるか。
いつもいつも、物分りのいい父親なんかやってられるものか。
柄にも無く、意固地な父親を演じてみたものの、
1杯、2杯とグラスを重ねる度に、その思いは次第に緩んでいった。
所詮、父親は娘には勝てないようになっているのだ。
何時の間にか気分が良くなっていた。
そして舞の気の配り方に感心するまでに気持ちが
一変していた。
凄く良い気分になった。
もう1本追加して、それもカラになった。
そうしているうちに義男は気持ち良さそうに寝息を立てて、
寝てしまったのだった。
後ろの方から、絶えず優しげな笑みを浮かべながら見守っていた
舞は持っていた毛布を、そっと肩口から掛けた。
「おやすみ。お父さん。」
声は無かったが、小さな唇はそう動いていた。
何時間程経過したのだろうか・・・
ふいに背中に悪寒が走った。
義男は突然に、どうしようもない程に尿意をもようした。
(いかん、飲み過ぎたか。)
ふらつく足元。頭が重い。まだ酔いから醒めていなかった。
(なんて事だ。浮かれ過ぎてしまった。)
無様な事をしている。
ふらつく意識の中でも恥ずかしさの自覚はあった。
シャツは、はみ出ていてネクタイは曲がったまま。
こんな姿を娘に見られたら最悪だ。
いつもカチっと決めていたい・・それは娘を持つ
父親なら誰しも持つ気持ちだ。
だが、尿意は待ってくれない。急がねば・・
そのままの格好でトイレへと走った。
ドアを叩いた。反応が無い。
良かった・・直ぐに入る。
そして一斉放水。
嗚呼何と気持ち良いことだろう。
あっと言う間に肩の力が抜けた。
ほんの少しだけ酔いが醒めた。
だが、その時なぜかふわふわと宙に浮いた
感覚を覚えた。
これって何だろう?凄く心地良い気持ち。
よほど良いワインだったのだろう。
こんなに気持ちの良いワインは初めてだ。
よし、今度舞に聞いて購入してみよう。
義男は洗面台に写った自分の顔を眺めつつ、
そんな事を思っていた。
義男は、手を洗うと直ぐにドアノブに手を掛けて
外へと出た。
辺りが静まりかえっていたのをその時知った。
腕時計を見ると、短針が2の数字を指していた。
何と中途半端な時間だろう。
気持ちの良い酔いも、急激に醒めていった。
(仕方ない。もうひと眠りするか。)
自嘲気味に軽く頭を振った。
すると丁度その時、奥の通路から誰かがこちらに
向かって歩いて来た。
薄暗かったせいもあってか、少し見えにくかったの
だが、スーツ姿にエプロンをしているのが判った。
交代で夜中の身回りや各所点検をしていたFAの誰
かだろうというのが、その時理解できた。
足音が近づく、そして電灯の下に出てきた。
「舞・・・。」
「お父さん・・。」
義男は、彼女に前に立ち止まった。
舞も、立ち止まったままに義男を見ていた。
しばしの静寂の中、互いが黙ったままに対峙した。
舞は、その表情を変えずにつぶらな瞳で父を
見つめていた。
まるで何かを求めるような瞳だった。
義男は、その時再び宙に浮かぶような感覚を覚えた。
それらによって息が詰まった訳でもなく、それは
まるで何かから解放されたといった類の感覚だった。
義男はネクタイの紐を緩めた。
続いてワイシャツボタンを1つ2つと外す。
舞もエプロンを投げ捨てた。
そしてズボンのチャックを下ろすと、中から肉棒を
つまみ出して、それを解放させた。
舞は眉1つも動かさずに、黙ってそれら一連の行動
を見ていた。
義男は、先程閉めたばかりのトイレドアを開けた。
そして、すっと左手を差し出して、レディを招くポーズ。
舞は躊躇わずに左手を差し出して、その招きに応じた。
ぐいっと力強く引き寄せると、舞は少しバランスを崩されて
前につんのめった。
勢い、舞の顎が義男の額に当たった。
義男はすかさず、そのまま顔を上げて舞の唇を塞いだ。
そしてあっと言う間の流れで2人は、そのままトイレの中に入った。
閉まるドア、乾いた鍵の音。
互いに黙ったままに、激しく舌を奪い合った。
背中に回した互いの両腕にも力が入る。
きつくきつく抱締め合う父と娘。
義男の頭の中は真っ白だった。何も考えられない。
でも何かに突き動かされるように、舞の身体が欲しくなっていた。
少し息苦しくなって顔を離した。
すると互いの唇を繋ぐようにひとすじの糸が垂れていた。
もう1度重ねる唇。それから父は首すじに舌を這わせ始める。
娘の口から切ない吐息が漏れる。
そして甘えるようにもたれ掛る。
義男は両腕を手前に戻して、今度は舞の胸ボタンの取り外し
に取り掛かった。
その間中、舞は義男の耳に舌を這わせていた。
舐めたり、ちょっとだけ噛んだり、息を吹きかけたりもした。
ジャケットが開いた。
真っ白いブラが眩しかった。
見事な隆起。ほんのちょっとだけ手に余るぐらいのサイズ。
その肌はスベスベで滑らか。まさに今が盛りであった。
そして5本の指に力を入れた。
「ああん。」
舞の甘えた声が耳元で囁く。
義男の興奮は最高潮に達しようとしていた。
舞は、ゆっくりと両股を八の字に広げながら、
しゃがみ込んで行った。
捲りあがるスカート。膝の上までが露出された。
目の前にある半立ちの肉棒を、しげしげと見つめて、
亀頭の先を舌でひと舐め。そして一気に咥え込んだ。
「おおおう!」
生暖かい湿り気が全体を覆う。堪らずに声が出た。
舞の頭が前後に激しく揺れる。添えられた右手
で激しく扱かれながら、ねっとりとした舌が絡み
付くという2段攻撃に、義男は一気に達してしま
いそうになった。
部屋中に響く淫音。
タップリと唾液がまとわりつく音は実に卑猥だった。
義男は、下に視線を落とした。
一心不乱にしゃぶりたてている舞の顔があった。
更に下に眼を向けると、八の字に開いた股から黒
のパンストが、肉付きの良い太ももを覆っている
のが見えた。
勿論その上からは、定番の黒のガーターベルトが
見えていた。
舞は余った左手を、開いた股間の中に入れていた。
更に捲れ上がるスカート。
その時、義男は少なからず驚いてしまった。
左手の先には、黒々とした密林があった。
舞は下着を履いていなかった。
指は激しくクリトリスを弄くっていた。
「ああああんん。」
切ない声と切ない表情。
義男は、舞の頭を押さえつつ腰を前後に
動かした。何と気持ちのイイ事だろう。
何時までも味わっていたかった。
「硬くなったわ。」
舞はそう言うと、ゆっくりと立ち上がった。
見詰め合う2人。もう1度舞からキスをした。
何度も何度も舌が交差した。
そしてやっと舌が離れた。また見詰め合う。
舞は後ろを向いてドアに両手をつけた。
そして、ぐいっとお尻が義男の前に突き出された。
入れて欲しい仕草に義男の興奮は高まった。
これ以上ないぐらいに反り返った肉棒を持って、
それに狙いを定める。
唾液でベチャベチャの肉棒は、何の抵抗も無く、
するりと舞の中に入って行った。
「あうっ、くうううう・・・」
一気の快感が舞の全身に走る。必死に声を抑える。
「おうううう・・」
そのヌルリとした感触が更なる快感を引き出させた。
そして呻き声が漏れた。
禁断の結合が、今成された。
後ろから、激しく突上げる義男とドアに顔を押し当て
ながらも、それを受け止める舞。
「ア、ア、ア、はあああん~。」
声を出すまいと必死に堪える舞だったが、とても堪え
切れそうにも無かった。
一方義男の方は、年齢の割りに元気だった。
その証拠に腰の勢いは更に増してきた。
「あああ~ん。もうだめぇ~ん。」
とうとう大きな声が出てしまった。
慌てた義男は、直ぐに胸ポケットからハンカチを取り出
して、そのまま舞の口の中に押し込んでしまった。
そして肉棒を引き抜くと、今度は便座に腰を下ろした。
舞を正面に向けて、ちょうど抱っこをする形で義男の
股の上に腰を下ろさせた。
「おおおお。愛しているぞ舞。」
真っ白なブラをずらして、その綺麗な隆起物に舌を這わせた。
「うううん。うううん。」
舞もハンカチの下から、快度の声が漏れる。
器用に腰を動かす舞。ねっとりとした肉棒を締め付ける。
大きなお尻が、上下に動いていた。
義男も、何度も突上げた。
「おおお、た、堪らん。もうダメだあ。」
辛抱堪らずに、悲鳴に似た声が出た。
「うう、うううん。」
舞の首が、何度も何度も縦に揺れた。
「そ、そうかいいのか。中に出してもいいんだな?。」
懇願するような表情の義男。
舞は、にっこりと笑顔で、力強く首を縦に振った。
「くぉおおおおおお・・・・い、いいくううう!!」
激しく突上げる腰が、その時突っ張るようにして止まった。
ぶるぶるっと腰が震えた。そしてゆっくりと沈んで行った。
「ふぅ~。」
暫くして、義男は1つ大きく息を吐いた。
大きな快感の後の、ほんのひと時の安らぎ。
義男は自分の胸に顔を置いている舞を見た。
満足げな表情。口元には優しげな笑みを称え
ていた。
ゆっくりと優しく口の中に入れていたハンカチを取り出した。
すると舞は顔を上げて、義男の顔をまじまじと見つめた。
今度は頬に口づけ。
そしてにこやかな表情で立ち上がった。
ブラを直し、ボタンを嵌めて、素早く服装を正した。
そして何も言わずに、すっとドアを開けて出て行ってしまった。
その鮮やかな退場に1人下半身剥き出しのまま、ぽか~んと
佇んだままに見とれていた義男だった。
嵐は吹き荒れ、そして一瞬にして去って行った。
自分でも判らない一瞬の衝動だった。
まるで誰かに動かされたかのような不思議な感じがあった。
じっと股間を見る義男。
仕事を終えた肉棒は、ただ”だらん”と垂れていた。
今、確かに娘を抱いたのだ。
その手には、娘の柔らかい肌の感触が残っていた。
股間の痺れは、確かに温かいぬめりを残していた。
罪悪感はまったく感じなかった。
それよりも素晴らしい夢を見た感動があった。
もう1度、大きく息を吐いた。
義男も身支度を整えると、直ぐに自分の席へと戻って行った。
そして毛布を肩口まで掛けると、直ぐに眠ってしまったので
あった。
どれぐらい眠ったであろうか、女性の落ち着いたモーニング
コールアナウンスが耳元に入ってきた。
「うう~ん。」
大きく背伸びを1つした。相変わらず頭は重かった。
腕時計を見た。
(なんだ、たった4時間ほどか。)
小さく舌打ちをした。疲れが残っていたからだ。
「皆様、おはようございます。」
「Good Morning sir。」
その時、女性達の明るい声と共に、朝食のテーブルが
次々と運ばれて来た。
一瞬にして華やぐ客室。義男も気分が落ち着いた。
そして目の前を通るFAの後ろ姿を見た瞬間、
ほんの数時間前の出来事が脳裏を過ぎった。
突然に胸がドキリとした。
あってはならない出来事があった。
父と娘が1つになった。
誰にも言えない行為をした。
どうしよう?妻にも言えない。
1度きりの過ちで終えるか?・・・いや自信が無い。
昨日の感動などどこかに吹き飛んでしまっていた。
「お客様、大変お待たせ致しました。どうぞ。」
悩む義男の耳元に、爽やかな声が響いた。
舞だった。
差し出される朝食。普段通りに接する舞。
「ど、どうも・・」
義男は、動揺を隠せずにいた。
「どうぞごゆっくり・・・」
軽く会釈して、その場を去って行った。
とりあえず食事をする。だが味はしなかった。
まるで砂を噛むような感じがした。
何とか胃袋に収めた。
悩みは尽きない。沈む気持ち。
「わあああ!凄いなあぁ!」
客の一人が大きな声を上げた。
その方向に顔を向けると、窓の外から綺麗な朝日
が顔を出していた。漂う雲の上にそれが燦々と光り
輝やいでいた。
それは神秘な風景だった。高度何万M上空の別世界。
まさに神々が住む楽園であった。
義男は、ふと考えた。
ひょっとしてあれは全て夢だったのではと・・
舞の表情はいつもと変わりは無かった。
そうだ、そうに違いない。
ちょっと気持ちが軽くなったようだ。
そして、カップに残った紅茶をぐいっと、
ひと呑みした。
暫くして、テーブルを下げに再び舞がやって来た。
「如何でしたか?美味しかったでしょうか?」
笑顔で尋ねる舞。
「う、うん。美味しかったよ。うん。最高だった。」
「わあ。そうですか。ありがとうございます。」
更に優しそうな笑顔を振り撒く。
いつもと変わりの無い屈託の無い微笑だった。
・・・・・
やっぱりな。あれは夢だったんだ。
これは酒の飲みすぎだ。反省せねば。
何というバカな夢だったのだろうか。夢はその人の
潜在的欲求を示すものなのだと、誰かが言ってた。
と、すると俺は娘を一人の女として見ていたことになる。
バカな、俺には愛する妻がいるではないか。
今までそれで充分だったではないか。どうかしている。
それにもうすぐ日本だ。こんなバカな事は忘れてしまおう。
・・・・・・
こうして気持ちを整理して、何とか吹っ切ろうとした。
「それでは失礼致します。」
舞は、そう言うと静かにテーブルの取っ手に手を置いた。
さてと・・
義男は横に置いてあったカバンから本を取り出そうとした。
するとその時、綺麗な手が目の前を横切って、左手の甲に
置かれた。
(何だ?)
義男の視線が、その手に集中した。
ゆっくりと手が離れて行く・・連れて義男の目が大きく
見開いていく。
(こ、これは・・・)
手の甲には、綺麗な四葉のクローバーがあった。
はっと、舞の顔を見た。
何とも言えない慈愛に満ちた笑みが口元にあった。
「あのう。すみませんけど・・。」
「何か?」
「胃薬を持ってきてくれませんか?ちょっともたれる
気がしてしょうがないんですよ。」
「分かりました。直ぐにお持ちいたしますので、暫く
お待ちくださいませ。」
数分後、舞が薬と水の入ったコップを持って義男の席へと
やって来た。
「お待たせ致しました。お薬とお水でございます。」
「ありがとう。」
ゆっくりと3粒の錠剤を口に入れ、水を流し込む。
コップの水を飲み干すと、直ぐにそれを舞に手渡した。
「お大事に。」
舞は軽く会釈をすると身体を出口へと向けた。
「ちょっと待ちなさい。」
義男がゆっくりとした口調で呼び止めた。
「はい?」
再び義男の席の方に振り向く舞。
義男は、ゆっくりと膝に掛けてあった毛布を取った。
するとそこには膝までズボンとパンツをずらしていた姿が
現れた。
ちょうど、だらんと垂れた肉棒が、ゆっくりとその頭を持ち
上げつつあった。
「まあ。うふふふ・・」
優しい笑顔を浮かべた舞は直ぐに左手を、その肉棒に添えた。
そしてゆっくりと上下に動かした。
「おおおお。やっぱり本当だったんだな。」
昨日感じた柔らかい手の感触を思い起こした。
舞は素早くしゃがみ込むと、義男の両足の間に身体を入れた。
そして昨晩と同様の念入りなおしゃぶりを始めた。
まるで大事な宝物を慈しむ様に慈愛溢れる笑みで、それを口に
含んでいた。
「お前の願い事ってこれだったのか。」
「うん。」
「あの男はどうするのだ?結婚は止めるのか?」
「いいえ。ちゃんと結婚するわよ。」
「バレたら大変だぞ。」
「大丈夫よ。今度あの人イギリスに転勤なの。」
「でも母さんはどうするんだ?」
「外で会えば問題は無いわ。」
「外で?」
「そう。私ね、この仕事続ける事にしたの。そうすれば旦那様にも
会いに行けるし、仕事帰りのお父さんとも外で会えるし良いでしょ?」
舞は少し歯を立てた。
「痛っ!」
義男は思わず腰を浮かせた。
「うふふふ・・・」
イタズラっぽい笑顔で義男を見る。
「私には2人の旦那様がいるの。勿論お父さんにも2人の妻がいるのよ。」
「そういえばあの男、どことなく俺に似ていたなぁ。」
「私、お父さんの事、ずっと好きだったの。」
「そうか。」
「あの四つ葉のクローバーは私に幸せを与えてくれたわ。」
「私もそう思うぞ。」
義男と舞は互いの顔を見合わせると自然と笑みがこぼれた。
「一緒に住みましょ。いいでしょ?。」
「ああ大歓迎だ。だけどあの男が承知するかどうかだが・・」
「大丈夫よ。あの人私の言いなりだから。」
舞の手の動きが、速くなってきた。
義男は段々堪らなくなってきた。
「おおお。いいぞ舞。そろそろイキそうだ。もうちょっと
しゃぶっておくれ。」
「はい。お客様。」
舞の丁寧な舌使いが、とても気持ち良かった。
「それとねお父さん。」
「何だ?」
「あの人とお父さんとが似ている所が、もう1つあるのよ。」
「ほう。どこだい?」
「血液型よ。」
そう言うと舞は、一気に根元まで飲み込んだ。
堪らずに義男がうめいた。
「い、イク。」
爆発した溶岩は、ゆっくりと舞の喉元に流れ込んで行った。
その時、ふと外を見た。真っ白に雪化粧された富士山があった。
ああ日本だ。
やっと帰れたのだ。必然とこみ上げる喜び。
舞も顔を上げて、同じ様に外を見た。
そしてゆっくりと立ち上がった。
その時、アナウンスが流れてきた。
「皆様。間もなく当機は、着陸の準備へと入ります。
着陸の際には、大変危険を伴いますのでシートベルトを着用の上
静かにお待ち願います。今回は当飛行機をご利用頂きまして、誠に
ありがとうございました。またのご利用を心からお待ち申し上げて
おります。」
(おわり)
[2005/01/09]
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