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小説(転載)  Spring fine

近親相姦小説
03 /30 2019
Spring fine


登場人物:新堂 衛(しんどう まもる)、新堂 美薫(しんどう みか)


 日本の学校が四月から始まるというのは、本当に素敵な事だと思う。
 美しい桜の花が舞い散る中を、真新しい制服を着て入学する事ができるのだ。
 私も今年から高校へと進学する。
 後一週間もすれば新しい生活が始まり、クローゼットの前にかけられた制服を着て通学する毎日になるのだ。
 第一志望の高校には落ちてしまったが、こうして制服を眺めていると、それも悪い事ではなかったような気がする。
 第二志望だった高校の制服は、第一志望の物に比べてデザインも色も私の好みに合う。

「美薫、また制服を眺めてたのか?」

 半分程開いた扉から、兄の衛が部屋の中を覗き込む。
 地元を離れて東京の大学に通っているのだが、こうして休みになると実家に帰ってくる。
 両親は別に帰って来いとは言わないのだが、兄は何故か休みに入ると直に実家に戻っていた。

「…うん」

 まるで自分が遠足の前日にリュックの中身を確認している小学生のような気がして、私は少しだけ恥かしくなった。
 制服が届いたのは一週間前。それ以来、時間があれば制服を眺めているのだ。

「聖霊か…」
「…そうだよ」

 私が通うのは私立聖霊女子学園。
 名前の通り女子高で、地元では「お嬢様学校」として有名でもある。
 そして制服の可愛らしさでは、地元でも五本の指に入るだろう。
 
「可愛い制服だもんな。お前が眺めっぱなしなのも判るよ」
「…へへ」

 少しだけからかうような響きを含ませて笑うと、衛兄さんは自分の部屋へと戻って行った。
 兄は私がこの制服を着て通学する姿を見る事なく、私の入学式の前日には東京へと戻っていく予定だ。
 私が一番見せたかった相手に見せられないのは残念だが、せめて制服姿だけでも見せておきたい。
 私は兄の事が好きだ。

 幼い頃から兄は私に優しかった。
 大人しくてなかなか友達のできなかった私と、いつも一緒に遊んでくれていた。
 周りの友達にからかわれる事もあったみだいだけど、私にはそんな素振りすら見せなかった兄。
 兄が東京の大学へ行くと言った時、私は泣いた。
 一晩中、泣いて泣いて泣いて真っ赤になった目で、翌日私は「頑張ってね」と兄に言った。
 その時、私は気がついたのだ。兄の事が好きなのだと。

「…お兄ちゃん…」

 中学・高校とバスケットを続けていた兄は、背も高くて体格も良く、顔だって妹の私の贔屓目だとしても悪くはない。
 学校でも人気があったようだし、私のクラスメイト達も兄の噂話をしたりしていた。
 私にとって自慢の兄だった。

 そんな兄が私の元から離れていく。
 当時まだ中学校に入ったばかりの私は、兄が旅立っていくその日に間に合うようにとセーターを編んだ。

『お兄ちゃん……これ…』
『これ…美薫が編んだのか?』
『……うん』
『そっか………サンキューな』

 編目もバラバラで、けして出来の良いとは言えないセーター。
 でも兄は嬉しそうにそれを受け取り、「大切にするよ」と言ってくれたのだ。
 そして兄はそれを手に、一人東京へと旅立っていったのだ。
 兄は今でもそのセーターを大切にしてくれている。
 冬休みに帰って来る時には、必ずそれを着て家へと戻って来てくれるのだ。

 休み毎に兄が帰ってくる度に、私は駆け出しそうな自分の心を必死に押さえ込む。
 許される事ならば、兄にこの身の全てを任せてしまいたくなる。
 でも、それは決して許される事ではない。
 兄が家に居る間中、顔では兄に笑顔を浮かべて話しかけながら、行き場の無い気持ちを持て余していた。
 休みが終わって兄が東京に戻る時には、寂しさと一緒に安堵する。
 兄妹という関係を壊さずにいられた事を。

 今回の休みでも、私は絶対に気持ちを打ち明ける事は無いだろう。
 だからせめて、東京に戻ってしまう前に兄に見せておきたい。
 成長した自分の姿を。真新しい制服に身を包んだ自分を。

「……お兄ちゃん?」
「んー……美薫か?、どうした?」

 両親は既に寝静まっている。兄も寝てしまったかと心配したが、控えめな呼びかけに明確な返事が返ってきた。
 私はそっと扉を開けて、久しぶりに主を迎えた兄の部屋の中を覗う。
 兄はパイプベッドに腰を降ろし、父から譲り受けた型の古いビデオカメラを操作していた。

「それ、お父さんに貰ったんだ?」
「ああ……って、美薫…それ…」
「…お兄ちゃんに見せたくて……」

 私は初めて制服に袖を通し、兄の部屋を訪れたのだ。
 兄の視線が少しだけ恥かしくもあったが、やはりこの姿を見て欲しいという気持ちのが勝っている。
 私はゆっくりと部屋の中へと足を踏み入れ、後手に扉を閉めて兄を見つめた。

「どう……かな…?」

 期待と不安の緊張の一瞬。
 兄が口を開くまでの短い時間が、私にはとても長く感じられた。

「……似合ってるよ」

 照れくさそうに鼻の頭を掻きながら、眩しそうに目を細める兄。
 優しい兄ならばきっとそう言ってくれると思ってはいても、ちゃんと自分の耳で聞くまでは不安で一杯だった。
 そしてその不安は、兄の一言によってどこか遠くへ消え去ってしまう。
 改めて兄は私の頭からつま先までを眺め、ビデオカメラを手に少し残念そうに呟いた。

「本当は入学式を…こいつで俺が撮影してやりたかったんだけどな」

 私もそれを望んではいた。
 でも入学式の前日には戻らないと、大学に間に合わなくなると聞いて諦めたのだ。

「じゃあ…今…撮って…」

 ビデオテープに今の姿を焼きつけ、それを兄に持って行ってもらえれば、兄が東京に戻ってもずっと傍にいられそうな気がした。
 兄も私の意図を察してくれたのか、バッテリーの残量を確かめるとカメラを構えて私に向けた。
 赤い撮影ランプが灯り、ビデオテープが回り始める。

「美薫…ビデオなんだからさ…止まってないで」

 自分から言い出した事なのに、いざ現実にビデオが回り始めると緊張して私は直立してしまった。
 そんな私をレンズ越しに見つめながら、兄が笑いながら手を振った。

「う…うん…」

 兄に手を振り返し、私はその場で遠慮がちに回って見せた。
 折り目が強く付いたフレアースカートが、その動きに合わせて少しだけ広がる。

「ははっ…可愛いよ」

 大好きな兄にそう言われると、私は嬉しさと同時に恥かしくなってしまう。
 きっとレンズ越しの兄の目にも、私の頬が紅潮していくのが見えていただろう。
 即席だがカメラマン気分の兄に色々と指示を出され、私はレンズの前で控えめにポーズを取って見せる。
 次第に私の緊張もほぐれ、自然な笑顔をレンズに向ける事ができるようになっていた。
 そんな私を、兄はレンズの向こうでどんな顔をして見ているのだろうか。

 30分も撮影しただろうか、兄はレンズを向けたまま嬉しそうに呟く。

「いい土産ができたなぁ…これ、彼女にも見せていいか?」

 何気ない兄の呟き。
 でもその言葉は、私の動きを止めて表情を固めるには充分な効果を持っていた。
 兄はビデオカメラを構えたまま、怪訝そうな声で私の名を呼ぶ。

「…美薫?」
「………彼女…できたんだ?」

 必死に喉から声を振り絞り、少し擦れた声で私は辛うじて聞くことができた。
 きっと顔は蒼白になっているに違いない。
 カメラを構えていた手を降ろし、そんな私を兄は心配そうに見つめる。

「あ、あぁ………美薫は…どうなんだ?」

 何も知らない兄は話しを変えるかのように、逆に私に聞き返してきた。
 きっと私の気持ちを知っていたら、そんな事は絶対に聞けなかっただろう。
 でも兄は知らないのだ、私の気持ちを。
 私は胸の奥の苦しさを感じて、無意識のうちに制服の胸元を握り締めていた。
 
「……好きな…人は…いるよ…」

 搾り出すような声の私の言葉を、兄はどんなふうに受け取ったのだろう。
 少しだけ驚いたような表情を見せ、何度も小さく頷いた。

「そうか…そうか…」

 もう限界だ。
 これ以上、大好きな兄の前で自分を偽る事ができない。
 押さえ続けていた自分の想いの全てが、堰を切ったように一気に溢れ出していく。
 知らず知らずのうちに、頬には熱い物が伝っていた。

「み、美薫…」
「ずっと……ずっと……好きだったんだよ……お兄ちゃん…」
「…………」
「お兄ちゃんが好きなの……大好きなの……お兄ちゃんだけが好きなのっ…」

 そのまま嗚咽を漏らし始めてしまった私を、戸惑いながらも兄はそっと抱きしめてくれた。
 兄の温もりが伝わってきて、更に私の涙が溢れ出してしまう。
 きっと兄を困らせてしまっただろう。
 大好きな兄を困らせてしまった事が悲しかったが、それでも兄に抱きしめられて、私は嬉しかった。

「ごめんな…美薫…気付いてやれなくて……」

 私が勝手に好きになったのに、兄には何の責任も無いのに、兄は申し訳なさそうに呟く。
 そんな優しい兄が好きだったが、今はそんな優しさも私の胸を締め付ける。
 優しさが、きっと私を拒絶する事のない優しさが、私の中に眠る言葉を呼び覚ます。
 決して言ってはならない言葉。今の関係を壊してしまう言葉。
 今を逃せば、その言葉を兄に告げる機会は二度とやって来ないだろう。今しかないのだ。
 それが兄を困惑させ、更に苦しめると解っていても、私は自分自身を押さえる事ができなかった。

「……お兄ちゃんが……欲しい……」

 兄の胸の中で呟いた言葉は、長い沈黙によって包まれる。
 そして押し殺したような声で、兄は私の言葉を受け入れてくれた。

「……今日……だけだぞ…」
「………うん」

 兄と妹という線を越えてしまうのは怖くもあったが、それ以上に私は兄を求めていた。
 許されない想いならば、せめて一度だけでも結ばれたい。
 思い出へと昇華できる自信は無かったが、それでも愛された証を身体に刻み付けたかった。

「美薫…」

 名前を呼ばれ、零れる涙を拭おうと顔を上げた瞬間、兄の唇が私の唇を優しく奪う。
 私のファーストキス。驚きよりも嬉しさが上回った。
 兄の柔らかな唇の感触に、私の身体から力が抜けていく。
 私の長い髪をそっと撫でながら、唇を離した兄が照れたように呟く。

「ひょっとしたら……俺も美薫の事が好きだったのかも…しれない」
「…お兄ちゃん」
「そりゃ…最初は驚いたけどさ………今は…嬉しいよ」

 そんな兄に、私はもう言葉にならなかった。
 私の気持ちは兄を困らせるだけだと、一方的な想いでしかないと思っていた。
 自然に溢れてくる私の涙を、兄の指先が優しく拭い取る。

「今夜…一晩限りだけど、美薫が俺の恋人だ」
「お兄ちゃん……」

 もう一度、兄の唇が私の唇を塞ぐ。
 一度目よりも長く甘いキスに、私は自分の身も心も満たされていくのを感じていた。
 髪から背中へと滑る兄の手。
 そのまま唇を離し、兄は私をベッドへと誘った。
 隣同士に並んでパイプベッドに腰を降ろすと、これからの事を思って、多少緊張してしまう。
 その緊張をほぐすかのように、優しく私の髪を撫でてくれる兄。

「…制服…シワになっちゃうから脱ごうか」
「……うん」

 兄に促されて、私は立ち上がると制服へと手をかけた。
 見つめられたまま脱ぐのは恥かしかったが、兄の顔を見ないようにして上着から脱いでいく。
 スカートのホックも外し、シワにならないように綺麗に折りたたんで床に置く。
 飾り気の無い上下とも白い下着姿になり、改めて兄へと向き直る。
 こんな事なら、もっと可愛らしい下着を身に付けておけばと後悔するが、今更言っても遅い。

「……可愛いよ」

 下着姿で立った私に対する、それが兄の感想だった。
 
「…恥かしいよ……」

 兄の視線から逃れるように、私は慌てて兄の隣へと腰を降ろした。
 それでも見られている事には変わりが無く、恥かしさからどうしても兄の顔を直視する事ができない。

「美薫…」

 兄は隣に座った私を眩しそうに見つめ、そしてその手を私の胸へと伸ばした。
 一瞬、緊張で身体が強張ってしまう。
 成長途中と言うには小振り過ぎる、兄の大きな掌に収まってしまう私の胸。
 やはり兄も胸の大きな女の人が好きなのだろうかと、思わず問い掛けてしまった。

「そんな事ないよ…好きな女の子なら、大きさなんて関係ないさ……それに…」
「……それに…?」

 兄はベッドの上で座り直し、私の脇の下から両腕を滑り込ませ、二つの大きな掌で私の胸を包み込む。

「俺は…美薫ぐらいの大きさの…可愛いおっぱいが好きだよ」

 顔を近付けて耳元でそう囁くと、私が恥かしさに頬を染めて俯く間に、兄の掌は巧みに下着を押し上げてしまう。
 小振りな乳房が露になり、直に兄の掌が肌に触れた。
 その掌から兄の体温が伝わり、私の胸から高鳴る鼓動が伝わっていく。

「あ……ん……」

 ゆっくりと優しく、掌が私の胸を揉み始める。
 むず痒いような感覚と、痺れるような感覚とが胸から広がっていく。
 背後から囁きかける兄の吐息が耳朶をくすぐり、背筋を何かが駆け抜けていく。

「敏感だな…美薫はおっぱいが弱いのか?」
「やぁ……お兄ちゃんの……エッチ……んんっ…」
「エッチなのは…俺じゃなくて美薫…だろ」

 掌で乳房を完全に包み込んで優しく揉みながら、指先で摘むように胸の突起を弄ばれると、思わず私の口からは甘い溜息が漏れてしまう。
 兄は余程私の胸の感触が気に入ったのか、いつまでも揉み続けていた。
 敏感な胸を集中して愛撫され、気が付けば私の女の子の部分も潤み始め、無意識のうちに太股を擦り合わせていた。
 それに気がついたのか、兄の手が私の脚へと伸びて来る。
 触れるか触れないかの距離でゆっくりと太股を撫で、そして内側へと滑り込んでいく。

「あっ………はぅんっ……」

 兄の手は肝心な部分には直接触れる事なく、太股の内側を行き来する。
 まるで焦らすかのようなその手の動きに、私の声は切なさの度合いを増していった。
 私は恥かしさよりも、早く兄に触れて欲しいという気持ちが増していくのを感じていた。

「お…お兄ちゃん……」

 兄の手を掴んで訴えかける私に、兄は吐息を吹きかけるようにして耳元で囁く。
 その囁きと吐息に、私の睫毛が小さく震える。

「切ない…?」
「……うん……早く……触って…」

 今までの私なら、触って欲しいだなんて自分から言えるとは思えない。
 でも、まるで恋人のように扱ってくれる兄に、私は自然に甘える事ができた。
 多少、声には媚びるような音色が含まれていたかもしれない。
 そして兄は私の要求に応えるかのように、太股を撫でていた手をゆっくりと奥へと進めていった。

「はぁ……お兄ちゃんっ……」

 下着の上からそっと触れられただけで、私の全身を痺れるような快感が駆け抜けていく。
 私の反応を見た兄の手は、少しだけ積極的になって動き出す。
 少しだけ染みの広がったショーツの中心を、割れ目に沿って上下にゆっくりと擦り始める。
 静かな部屋の中に、微かな水音が響く。
 自分の身体の反応とは言え、その音の恥かしさに私は自分が耳まで真っ赤に染まっているのを感じていた。

「美薫…下着が汚れちゃうから……脱ごうか…」
「はぁ……はぁ………うん…」

 私が応える間も無く、兄の指がショーツの脇にかけられる。
 それを手伝うように私が腰を浮かせると、兄は太股の中程までショーツを降ろす。
 そこから先は私が自分で脱ぎ、中心に染みを広げたショーツを制服の上へと置いた。

「こっちにおいで…」

 その間に兄も衣服を脱ぎ捨て、下着姿になって私を待っていた。
 兄に導かれ、私はベッドの上に仰向けに横になる。
 その私の足元へと廻り込むと、兄は優しく微笑みながら囁いた。

「さぁ…美薫の大事な所…見せてごらん」
「……恥かしいから……あんまり…見ないでね…」

 兄の求めに応じて脚の力を抜くと、膝の裏に手を入れられて、そのまま両足一緒に持ち上げられてしまった。
 そうすると丁度、兄の目の前へと私の女の子の部分がやってくる。
 優しい愛撫に敏感に反応している部分を見られ、私は恥かしさに顔を両手で覆った。

「やぁんっ……恥かしいよぉ……」
「美薫のここ……とっても可愛いよ…」

 恥かしがる私などお構いなしに、兄はその部分へと手を伸ばしてくる。
 直に兄の指先が触れる感触。
 ピッタリと閉じられた二枚の唇を、兄の指先がゆっくりと開いていく。
 今まで誰にも見せた事のない部分が外気に触れ、熱い物が零れ落ちていくのが自分でも解る。

「あふぅ……ん………」

 兄の指先がその濡れた奥へと触れた瞬間、自分でも驚くような甘い声が漏れてしまった。
 そして身体の奥からは、もっと触れられたいという欲望が際限無く湧き上がってくる。

「ここが…女の子が一番感じる部分なんだよ…」

 経験の無い私に説明するかのように話しながら、指先で私が漏らした蜜をすくい取り、その上部にある突起へと塗りつける。
 その瞬間、痛みにも似た鋭い感覚が、私の脳まで一気に駆け上がってきた。

「ひゃぁんっ……!」

 私の声の大きさにも動じる事無く、部屋の明りに照らされて光るその突起を、兄の指先がゆっくりと弄び始めた。
 兄の優しい指使いに、自然に私の口からは甘い喘ぎが零れる。
 全身を包むような甘美な刺激に身を震わせながら、私は夢中でシーツを握り締めた。

「あっ……はぁっ……お…お兄…ちゃんっ…」
「…気持ちいいかい?」
「んっ……うん……気持ち…いいよぉ……っ」

 自分で慰めた経験んすら無い私にとって、その未体験の快感は我を忘れ去るのには充分過ぎるぐらいだった。
 次第に速度を増して激しくなっていく兄の指の動きに、私は翻弄されて乱れていく。
 そして、私の女の子の部分は自分でも解るぐらいに、熱く潤って思い人を待ち焦がれていた。

「ここも…可愛がってあげないとね」

 不意に兄の指先が小さな突起から離れ、その下の潤った泉へと滑り降りる。
 指先が私の身体の中へと侵入してくる感覚。
 微かな痛みの後、その指先は更なる甘美な刺激への扉を開いた。

「あぁんっ…!、お…お兄ちゃんっ……!」

 小さな秘腔へと浅く沈んだ指先は、その感触を確かめるかのように周囲を探る。
 身体の内部で感じる兄の指先の動きに、私は身体の奥から更に潤いが溢れていくのを感じていた。

「美薫のここ、もうトロトロだよ」
「はぁ……やぁん……そんな事…言わないでっ……きゃぅんっ…!」

 少しだけ意地悪な兄の口調に、悲しい訳でも無いのに私の瞳からは涙が零れていく。
 すると兄は慌てたように謝りながら、顔を近付けてそっと私の頬に唇を寄せた。

「お兄ちゃん……」
「美薫が可愛いから、ちょっと意地悪したくなったんだ…ごめん」
「……うん……いいの……」

 間近に見る兄の申し訳なさそうな表情。
 私は嬉しさと同時に、兄に対する愛しさが更に深まっていくのを感じた。
 三度目のキスは私から唇を重ねた。
 少しだけ驚いた表情を見せた兄だったが、すぐに私を抱きしめて受け入れてくれる。
 そして私の唇を割るようにして、兄の舌が大胆に潜り込んでくる。

「ん……んん………んふぅ………」

 初めての大人のキス。
 甘く甘美なその行為は、私の頭を蕩けさせていく。
 控えめな私の舌を誘うように刺激し、兄の舌先は私の口の中を確かめていくように動き回る。
 そしていつしか誘われるままに、私からも積極的に舌を絡めていた。
 
「……んん……はぁ……んっ……」

 永遠にも感じられる時間。唇が解放される頃には、私の呼吸は更に荒く乱れていた。
 薄く目を開けると、目の前で兄が私を見つめている。

「お兄……ちゃん……」
「美薫…そろそろ一つになろうか…」
「…うん……きて……お兄ちゃん…」

 長い間、夢に思っていた。永遠の夢のままで終わると思っていた。
 その瞬間が、現実のものとなって私の目の前に迫っている。
 喜びから溢れてくる涙を私は堪える事ができずに、兄の腕の中で頬を濡らしていた。

「美薫……」

 その涙を優しく指先で拭い取りながら、兄が私の両足の間へと身体を割り込ませる。
 私は瞼を閉じて、その瞬間へと身を委ねた。

「いくよ……力を抜いて……」

 その言葉に私が小さく頷いた瞬間、熱い塊が私の身体へと触れた。
 怖くて目を開く事ができなかったが、それが兄の男性自身なのだろう。
 その熱い塊は、私の濡れた唇を押し開くようにして、ゆっくりと泉へと進んでいった。

「んっ…………!」
「大丈夫か?」

 鋭い痛みが私の全身を駆け抜ける。
 だがその痛みも、兄と結ばれる証だと思えば気にはならなかった。
 私は苦痛を必死に堪えて、心配そうに見下ろしている兄へと微笑んでみせる。

「大丈夫だよ……だから……私をお兄ちゃんで…満たして…」
「……ああ、解った。…でも…無理はするなよ」
「……うん」

 再びゆっくりと、私を気遣いながら兄は腰を進め始める。
 その痛みに、私は無意識のうちに兄の背中へと爪を立てていた。
 ゆっくりと、ゆっくりと侵入してくる熱い塊。
 まるで全身を熱した鉄の棒で貫かれているような感覚に、私は思わず叫んでしまっていた。

「お…お兄ちゃんっ……!!」

 苦痛が長引くのを心配したのだろう、兄は残りの部分を一気に私の体内へと埋め込む。
 そして全てを埋没させると、そのままの態勢で私の身体を強く抱きしめた。

「美薫……」
「はぁ…はぁ……お兄ちゃんのが……入ってるんだね……」
「…ああ」
「……嬉しい………」

 それが偽らざる気持ちだった。
 破瓜の鋭い痛みよりも、愛しい兄と一つになれたという喜びの方が、大きく私を包み込んでいた。
 私の体内で脈打つ熱い塊。それは兄と結ばれた事を私に実感させる。
 結ばれた喜びと幸福感は、次第に身体から痛みを押しのけていき、兄の温もりだけを私に伝え始める。

「もう…大丈夫だから……動いて…お兄ちゃん…」
「…いいのか?」
「平気……だから…私を…いっぱい愛して…」

 私の表情から、その言葉が嘘ではないと感じたのだろう。
 兄は力強く頷き返すと、私の両足を持ち上げるように太股を抱え、改めて私を見下ろしながら見つめる。
 自然に絡み合う私と兄の視線。その優しい瞳の色に、私の中に安心感に似た思いが広がっていった。
 そしてゆっくりと、兄が動き始める。

「あっ……んんっ………」

 まだ微かに苦痛が残るものの、兄と繋がった部分から不思議な感覚が広がり始める。
 痺れるような、むず痒いような…。
 それが快感なのだと解るまでに、それほど時間は必要じゃなかった。
 間違いなく、私は兄に抱かれて身も心も快感を得ていた。

「ん……はぁ………あんっ………」

 堪えようの無い甘い声が、自然の私の口をついて漏れていく。
 そんな声を兄に聞かれるのは恥かしかったが、自分でも抑えようが無かった。
 口に手の甲を当てて声を抑えようとする私に、兄が顔を近づけて小さく囁く。

「もっと…可愛い声を聞かせてごらん」
「……だって……恥かしいよ……はぁっ……」
「大丈夫だよ…」

 そう言いながら、兄は動き続けながら唇を重ねてきた。
 私も大人のキスに慣れたのか、その唇を受け止めて舌を差し出す。
 甘いキスの甘美な刺激と、覚えたばかりの身体の快感とが交じり合い、私の頭を蕩けさせていく。
 兄の唇から開放された時には、自然に私の口から甘い叫びが漏れるようになっていた。

「あっ……あぁっ……はぁんっ……!」

 兄の動きも、より速く力強くなっていき、私を激しく貫いていく。
 全く初めての経験だというのに、私は大きな快感に包まれて乱れてしまう。
 それは私が兄を愛するが故と信じ、もう何も考えずに身を任せようと心に決めた。
 そう決めてしまうと、控えめだった声も自然にボリュームを増してしまう。
 階下で寝ている両親の事も忘れ、私は兄の背中に両手を廻して快感に酔っていった。

「お兄ちゃんっ…お兄ちゃんっ……!!」
「美薫……感じるかい?」
「うんっ……はぁ……あぁっ……凄いのっ……気持ちよくて……私……私っ……んんっ!!」

 私の言葉に安心したのか、兄は更に力強く動き始めた。
 その動きに合わせるかのように、私の小さな胸も激しく揺れる。
 もう何も考える事はできず、私はただ兄の名を叫びながら、全身を包み込む快感に震えるだけだった。

「あっ…あんっ…!、んっ…んふっ…はぁっ……お兄ちゃぁんっ……!」
「美薫っ……美薫っ……!」
「変なのっ………私……飛んでっちゃいそうっ……!!」

 身体が自分の物では無くなり、どこかへ飛んでいってしまいそうな感覚。
 私は意識の奥の方で、それが絶頂なのだと無意識のうちに悟っていた。
 その不思議な感覚に微かな恐怖心を覚えるが、肌に伝わる兄の体温がそれを打ち消す。

「…一緒に…な」

 呟くように言う兄の言葉は、どこまでも優しく、そして暖かい。

「はぁっ…ん……んんっ…!、お兄ちゃんっ…お兄ちゃんっ……もうっ…はぁっ……ふぁぁぁぁっ!!!」

 目の前でフラッシュが光ったかのように、頭の中が真っ白になる。
 そして次の瞬間、私は大きく仰け反るようにして達していた。
 兄も慌しく私の中から離れると、私のお腹の上に白い精を撒き散らす。

「はぁ……はぁ……はぁ………」
「美薫……」

 微かに額に汗を光らせた兄は、私の髪をそっと撫でながら見つめる。
 そのまま、自然に私と兄の唇が近づいていった。



 兄は私の制服姿を映したビデオを手に、東京へと戻っていった。

『夏にはまた帰ってくるよ』

 そう言葉を残して。
 私は新しい生活を始めながら兄を待ち続けるだろう。
 決して許されない想いを胸に抱き続けたまま…。

END

小説(転載)  イマジネーショん

官能小説
03 /30 2019
 六歳離れた妹・あずさが、高校生の兄・ひびきの部屋をたずねた、夜の九時。
「どうした?」
 ベッドに寝転んで漫画を読んでいたひびきは、来訪した妹にやさしく問い掛けた。
「風の音でも怖いか? 一緒に寝るか?」
「ち、違うよぉ。子供じゃないんだからー」
(いや、じゅーぶん子供だ)
「そうじゃなくて、あ、あのねー。お兄ちゃん」
 もじもじもじもじ。もじもじもじもじ。
「……なんだよぉ?」
「んと……、一緒に寝なくてもいいけど、一緒に部屋にいてほしいんだ……」
「は? なんだそりゃ?」
「止めてほしいの。あたしのひとりエッチを」
 ひびきは、ベッドの上でエビ反った。


イマジネーショん
~「ジェネレーショん」シリーズ・第3章~





「なぁ、あず。いないんだって普通。夜に兄貴の部屋に来て、ひとりエッチを止めてほしいから部屋に来てなんて言う妹は」
 ひびきは、机の引き出しからガムを取り出した(禁煙中なのだ)。
 あずさにも差しだすが、赤くなってる顔を横に振られて、自分だけが噛むことにする。
「クチャ……それにお前、今さらひとりでやる必要あるのか? しんごがいるだろーに」
 しんごとは、あずさと同い年の、あずさのボーイフレンド。イクところまでイッちゃってる関係だ。
 ついでに申し上げておくと、そんな妹の兄を務めるひびきには、残念ならが実経験はまったくない。
 それなのに、過去に二度も、あずさとしんごの仲を取り持つ役目を担ってきた。
 立派である。
「それともナニか? まぁた、しんごとうまくいってねーの? クチャ……俺、さすがにもーヤダぞ」
「う、ううん! しんごとは……仲いいよ。今日もデートしてきたし」
「寝ろ」
「ああ~ん、なんでぇ?!」
 イヤイヤをするあずさに、ひびきは漫画に目を戻しながら答えた。
「俺はこー見えても漫画読んだり横になったりまばたきしたり心臓動かしたりで忙しーんだ。ノロケなんぞ聞いてられるか!」
「…………」
「クチャ……クチャ……」
「……ぐすっ」
「わぁ!」
 ぐずり始めたあずさの元へ、ひびきはコンマ数秒で駆け寄り、小さな肩をつかんだ。
 さっきまで噛んでいたガムも、キッチリと紙に包まれてゴミ箱に入っているという、驚異のスピードだ。
「わかったわかった! ちゃんと事情を聞くから、ほら、な?」
「もういい……。お兄ちゃん、イジワルだよぉ……」
「悪かったって。かわいい妹の悩みだ。しっかり相談に乗るから!」
 これは、本心のセリフだ。じゃなければ、今頃はどっちかである。二度も苦労しないか、とっくに犯してるか。
「……デートはしたけどぉ、……デートしただけなの」
「んー、その辺がよくわからん。デートしたのに、それだけって何だ」
「だからあのね、学校帰りに商店街寄って、公園で遊んで、それじゃあねって……」
「…………」
「してないの!」
「おおう!」
 ようやく、ひびきはピンと来た。
 なんせ彼女がいたことない彼にとっては、デートが、深い仲になった男女のデートが、どんなセットで構成されているかなんて、想像できなかったのだ。
「あーそうかー。学校帰りのその前に体育用具室で、とかは?」
「してない」
「商店街で人目を盗んで、とかは?」
「してない」
「公園はどーだよ。いい茂みがあるだろー」
「してない! してないったらしてないの! って、何度も言わせないでよぉ!」
 赤ペンキでもブッかけられたみたいな真っ赤な顔で、あずさは力説した。
「だって、またちょっとマンネリ気味になったんだもん! だからって、またお兄ちゃんに相談したら、それこそ月まで届くくらいに怒鳴られちゃうし、だから前にお兄ちゃんが言ってた、『しばらくしない』ってのを実行してるんだよ!」
 ハア、ハア、ハア。
 あずさが呼吸を整える中、ひびきはポカーンとしていた。
 まだポカーンとしていた。
 ほら、まだポカーンとしてる。
 ああ、ようやく我に返ったらしい。
「そうか……がんばれよ」
「違ぁぁう!! ……ムグ!」
「何でもいいけど、声大き過ぎ」
 ひびきがあずさの口を手で押さえていると、じきに下の階から、母親の「近所迷惑よー」という声が聞こえてきた。
 (ちなみに、ひびきとあずさの部屋は二階である)


『いや悪い悪い。え? ケンカ? 違うって母さん。なんかあずが相談あるみたいでさ。それで、いきなり相談に乗るのも失礼だから、ちょっとからかってたら、やりすぎちゃって。え? 何の失礼もないから、すぐに相談に乗ってやれ? 無理なら母さんが相談に乗るから? いやいや、これはまぁ何つーか、兄じゃないと乗れない相談だと思うし、はは。ま、後は静かにやるから。じゃ、おやすみー』


「おーい、あずいるかー? 開けてくれー」
「うん。あ、ホットミルク?」
 両手に湯気を立てたマグカップを持ったひびきは、あずさにドアを開けてもらって、部屋に戻った。
「夜だから、砂糖ヌキな」
「うん。……あ、ちょうどいい温度。おいしー」
「だろー」
 ズズー。
「……てなわけで、しばらくしないはいーけれど、欲求不満がたまって、ひとりエッチしちゃうワケだな」
「コホッ、コホッ!」
 はげしくムセるあずさ。思いきりミルクが気管に入ったらしい。
「ひとりエッチしちゃう自分も恥ずかしいし、それで欲求を晴らしたら、しんごとする時の感動が薄れるし、だからやめたいんだけど、ベッドに入ると、ついムラムラとして、ムネやアソコをいじっちゃうワケだ」
「コホッ……う、うう~。その通りなんだけど、話早いし、露骨だしぃ……」
 真っ赤な顔で抗議するあずさだが、ひびきは耳のない顔でミルクをすすっている。
 抗議をあきらめたらしく、またショボンとなって、あずさは言った。
「……でも、うん、そうなんだぁ。だから、お兄ちゃんに助けてほしくて……」
「まかせろ!」
 いつになく、力強く請け負うひびき。
「お兄ちゃんが、簡単には解けないよう、あずをギッチリ縛り上げてやるから、それで寝ろ」
「ええ?!」
 こんなこともあろうかと、ひびきは亀甲ナントカと呼ばれる、特殊な人の縛り方をマスターしていたのだ。
 もっとも、練習相手は丸めた布団だったが。
「本当は荒縄なんだけど……ああ、洗濯ロープでいいか」
「ま、待ってよ、お兄ちゃん! あたし、縛られたままなんて眠れないよぉ!」
「嫌か」
「イヤだよ! だからさぁ……お兄ちゃん。あたしの部屋で、一緒に寝てよぅ」
 もじもじもじもじ。もじもじもじもじ。
「お前、俺が兄貴じゃなかったら、飛びかかってるぞ? なんて大胆なお誘いだよ」
「ち、違うからね? ちゃんと布団も持ち込んで、あたしのベッドの横で寝るんだからね?」
「でも……それ、ひとりエッチの解決になるのか?」
「だって、お兄ちゃんが横にいるのに……できないよ。恥ずかしくて」
「そーかぁ? 今まで散々見てるぞ? 触ったことも舐めたこともあるのに」
 またカァッとなるあずさの顔。
 だが、今度はわめきだしたりしなかった。
 うつむいて、小さな口をマグカップにくっつけて、モジモジしながら、こう言った。
「ひとりエッチは、別だよぉ……」


(かくして、間抜けな兄貴は、妹の部屋で寝ることになりましたトサ……)
 すでに電気を消したあずさの部屋。
 持ち込んだ布団に入って、ひびきは真っ暗な天井を眺めていた。
 隣のベッドでは、妹が、こちらに背中を向けて寝ている。
 月並みだが、甘酸っぱい香り、というヤツだった。
(……こりゃ、今度は俺がヤバいな……)
 ひとりエッチを止めに来ておいて、自分がおっぱじめた日には、立場はボロボロに砕け散るだろう。
 立場がボロボロ、ならまだいい。
 それで触発されたあずさが、ムラムラしてひとりエッチを始めたとしたら。
 ひとつの部屋で、それぞれの快感にふける兄と妹。
 日本一わけのわからない兄妹になってしまう。
(……避けよう)
 ひびきは、あずさから背いてゴロッと寝返りをうった。
「……寝たか、あず」
「ううん」
「……寝ろよ」
「うん……」
 声をかけておいて、寝ろと言うのも理不尽な話だが、あずさは気にしていなかった。
 眠れなかったからだ。
 それに、実はもう胸には、自らの小さな手が重なっていたのだ。
「……………………」
「……あず? 何か息がヘンだぞ? しちゃいないだろーな?」
「! してないよっ」
「ん……よしよし」
「……してないけどぉ……」
「…………」
「してないんだけどぉ……」
「…………?」
「したいよぉ……」
(おいおい)
 暗闇の中、布団の中のひびきの目が、バッチリと開いた。
「我慢しろ、な? お兄ちゃんが隣にいるんだぞ? 恥ずかしいだろ?」
「うん……。で、でもぉ……」
「…………」
「でもぉ……、お兄ちゃんには……もう見られてるし、その……触ったりナメたりされてるし……」
「い、いやだけどホラ、別なんだろ? ひとりで触ってひとりでアンアン言ってる姿を見られるのはさ?」
「…………アンアンなんて言わないでぇ……」
 消え入りそうな、相当ヤバい声の色だった。
「……お兄ちゃぁぁん……」
(うわあああ)
 たまらなくなって、ひびきはガバッと上半身を起こした。
 隣で寝てる少女に、甘ったるい声で「お兄ちゃぁぁん」と言われた日には、誰だってそうなる(断言)。
「あ、あず! こらえろ!」
「んん……」
(あうっ……)
「だ、だめぇ……。熱くて……はぁ……」
「お、おい。お前、何をモゾモゾと……」
「ほ……欲しいよぅ……」
「こ、こら。手! 手を出せ! 手を空にして布団から出せ!」
 拳銃を所持してる犯人への、刑事の警告じみてきた。
「………………」
「ほ、ほら。早く手を……」
「……あっ」
「あずーっ!」
 刹那、ひびきはベッド上のあずさに飛びかかった。
「きゃ!」
「あずっ!」
 しかし、飛びかかったのは、何も自分の欲望を力いっぱい晴らそうとしたからではない。
 その逆だ。
「ほら! 手を!」
「痛っ!」
 ひびきは、あずさの腕を強引に布団から引っ張り出した。
 これがホントの腕ずくだ。
(なんて言ってる場合か!)
 あずさの細腕は、二つ合わせてひびきの片手でつかめるほどだった。
「よせ、あずさ! 自分で決めたんだろ? 何のために俺がいるんだ!?」
「わ、わかってるよぉ。わかってるけど……うずくのぉ……手が勝手にぃ……」
「っ!」
 ひびきは、息を飲んだ。
 女の欲情の、そこまでの激しさに。
 男だって、女抱きてェって時は、いくらでもある。
 しかし、それが理性を越えることなど、まずない(絶対ではない。だから性犯罪が起こるのだから)。
 でもそれは、所詮男の欲情は、理性で抑えられる程度だからかもしれない。
 ひびきはそう考えた。
 押さえつけているあずさの手の指先から香る、かいだことのある淫臭。
 間違いなくコイツは、隣で兄が寝ているにも関わらず、自らの肉欲を求めたのだ。
 どこにでもいる、ちょっと進み過ぎってだけの、普通の少女なのに。
 生まれた時から知っている妹なのに。
「つらいんだよぉ……、せつないんだよぉ……、お兄ちゃぁぁん……」
 わずかな抵抗が、手を離せと語っている。
 暗くて表情はわからないが、きっと、激しく熱っぽい、潤んだ瞳になっているんだろう。
(……暗くて?)
 これしかない。
 ひびきは、空いている手で、ベッドの枕元にあるはずの、スイッチを探った。
 ほどなく、ダイヤル式のスイッチが指先に触れる。
「!」
 カチッと乾いた音がして、暗闇にあずさの顔が浮かんだ。
 枕元のスタンド。
 妹の顔は、想像通りだった。


「ま、まぶしい……」
「あずさ……」
 ひびきにとっても、暗闇から一転したスタンドの灯はまぶしかった。目が慣れれば、ボンヤリとした光なのだが。
「あず。俺の顔を見ろ」
「え……?」
 言われるまま、潤んだ瞳のまま、あずさはひびきを見つめた。
「ん……んぅ……」
 せつなそうに、鼻を鳴らしている。
「ほら、もっとよく見ろ」
「見てるよぉ……」
「俺は、お前の、何だ?」
「……お兄ちゃん」
「そうだ。お兄ちゃんだ。そのお兄ちゃんが、見てるんだぞ?」
「…………」
「目を反らすな。お前、兄が見てる前で、本当に、オナニーする気か?」
「…………」
「……ふん!」
 ひびきは、あずさの掛け布団を、一気にめくった。
「きゃ!」
 トマト柄のパジャマに包まれた幼くも女味を帯びた体が、白熱灯の弱々しい光にさらされる。
「確かに俺は、お前の体に触れたこともある。でも、今はその状況じゃない」
「…………」
「だから俺は、今はお前に触らない。じゃあ、あずはどうだ?」
「あたしは……」
「していいのか? しんごとの関わりも断って、俺に協力させて、それを無駄にするのか?」
「…………」
「お前の想いは、しんごへの想いは、所詮はエッチしたいから、ってことでしかないのか?」
「違うっ!」
「そうだな。だからこそ俺は、今まで協力してきたんだぞ」
「…………」
「……手を離すぞ。いいな、あず」
「……うん」
 ひびきの手が、あずさの手から離れる。
「…………」
「…………」
「……だめだ。俺から目を反らすな」
「…………」
「落ち着くんだよ。数学の方程式でも思い出すとか……」
「まだ算数だよ……」
「じゃあ、アルファベットをZから逆に思い出すとか……」
「えっと……Z……WX……Y、X、W……えと……えと……」
「んー……Vだ。Vで、Uで……」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
 両手を小さなバンザイをする位置に置いて、あずさはひびきを見つめつつ、懸命にこらえていた。
 しかし、体は時折ピクッ、ピクッと動いてしまう。
「うう……」
 まずその両手が、自分を抱きしめた。
「あずっ」
「ふぅ……んん……Uの……次……」
「次か? 次……OPQRSTUだから……Tだ。Tで、次がSで……」
 そこまでだった。
「も、もぉダメぇぇ!」
 あずさの両手が、一気にパジャマのズボンへ潜り込んだ。
「ああっ! い、いい! 気持ちっ……んん!」
「…………」
「あ! あん! ああっ……」
「…………」
 あずさのパジャマの股間が、妖しくうごめいている。
 それなのに、その目は、兄の顔を見つめっぱなしだ。
 けなげに言いつけを守るその姿が、たまらなかった。
 そう。ひびきは、たまらなくなって、思わず見とれてしまっていたのだ。
「あはっ! あ、あ、あ……」
「……ハ!? こ、こら!」
「あ!」
 我に返ったひびきは、今度は両手で、あずさの両腕を抑え込んだ。
「いやぁ! 離して! 離してぇ!」
「だめだ。何とか我慢するんだ」
「もういいよぉ! どうせあたし、エッチな女の子なんだもん!」
「あずっ……」
「ヘンタイなんだよぉ! だから! だからさせてっ…………」
「…………」
 両手が塞がった状態で、女の子を黙らせる方法は、ひとつだった。
 乱れていた空気が、嘘みたいに静まり返る。

 約五秒ほど。

 そして、ゆっくりと離れた。
「お、お兄ちゃ……、キ、キス……」
「……いいだろ、別に」
「…………」
 あずさは、もちろん、初めてのキスというわけではない。
 だが、兄とは初めてだった。
 ひびきに至っては、正真正銘の、ファースト・キスだった。
 それを、あずさは知らないが。
「……あずさ。俺は、お前がヘンだとは思わない」
「…………」
「大好きな妹なんだからな」
「お兄ちゃん……」
「だから、もう止めない。思う存分、望みを果たせばいい」
「え……? で、でもやっぱり……」
「ただし、想像でだ」
「え?」
「手は使うな。手は、やっぱり俺が抑えたままにするから、想像で、しんごに愛してもらえ」
「想像……?」
「そうだ。しんごにされてる時のことをリアルに思いだして、高めるんだ」
「…………」
「さぁ、目を閉じて」
「…………」
「もちろん、俺もアシストする」
「アシス……あ?!」
 あずさの疑問に答えるより先に、ひびきは、あずさの股間に、ヒザを押し付けた。
「ほら、思いだすんだ」
「あっ……んん……」
 決して単調にならぬよう、力の強弱を微妙につけて、あずさのもっとも熱くなっている部分を圧迫する。
「はぁぁ……お兄ちゃん……」
「俺じゃない。しんごだ、しんご」
「……しんごぉ」
 胸で感じる、しんごの手の平の温もり。
 おなかで感じる、しんごの重み。
 大事な部分で感じる、しんごの情熱。
 ひびきのヒザにアシストされて、あずさの脳裏に、その状況がリアルに浮かび上がる。
 ただひとつだけ。
 自分の手首をつかんでいる、大きな手の温もりは。
 別の角度から、あずさに快感を与えていた。
 自由の利かない体をくねらせて。
 積み重なるように荒くなっていく呼吸の中。
「イク……あ、あ、あ……」
 つぶやくように、あずさは言った。
 小さなケイレンが数秒ほど彼女の体を襲って。
 夜は、静けさを取り戻した。



 六歳離れた妹・あずさが、高校生の兄・ひびきの部屋を再びたずねた、翌日の夜の九時。
「よ。うまかったな、今日の赤飯は」
「…………」
 真っ赤な顔をうつむかせて、あずさは部屋のドアをパタンと閉じた。
「どうした? いやー、よもや赤飯だったとはなー。聞いたコトあるぞ。赤飯の前って、体がこう……」
「せっ、赤飯赤飯言わないで!」
「悪い悪い。ま、めでたいんだしさ」
「…………」
 あずさは黙って、ひびきが寝転んでいるベッドの端に座った。
「…………」
 もじもじもじもじ。もじもじもじもじ。
「ん? どうした? ……ソッチの方なら、俺より、母さんに相談しろよ?」
「ち、違うってば。あの……今日ね……その、したの。しんごと」
 ひびきの顔面に、読んでいた漫画がバサッと墜落した。
「……なんだって?」
「だ、だって、その、赤飯……だからって言ったんだけど、ガマンできないって……それで……」
「ま、まぁいいや。でも、これからはキッチリと避妊しろよ?」
「うん……。でもね? アレはアレで……ちょっと違った……アレがあってね?」
「アレ?」
「……昨日の」
「……………………」
 あずさは、手で頬を押さえながら、思いきって言った。
「また赤飯の前になったら……あたしを押さえつけてね♪」
 ひびきは、顔面の漫画を振りほどくと、ユラリと立ち上がった。
 そして……。

「さっさとひとりで寝ろー! このイロガキーッ!!」
 叫び声は、月にめりこんだ。


おしまい



【コメント】

うわ、もう3作目を書いちゃった(^^;)。
今回は、しんご不参加ですが、別にいませんよね? しんごのファンなんて(^^;)。

私も、つくづく好きですよね。まともにHをしない官能小説が。
今回のも、結局はパジャマ姿のままだし、キスとヒザだけだし。
前2作とは雰囲気の違う「~ショん」シリーズでしたが、でもひびきとあずさだからこそまとまったと思ってます。あずさ、赤飯おめでとー! ちょっと早い気もするけど(^^;)。

さて、今回のひびき、ちょっとカッコよかったでしょ?(^^)
正直、前回「フラストレーショん」では、ちょっとやりすぎたかな?って思ったので、彼本来の原動力である「妹想い」を強調したかったんですよね。これがあるから、あれほどキワドい状況におかれても、決してあずさ相手に最後の一線を越えないわけです(今回、キスしちゃったけど)。

とりあえず今回もお疲れさん、ひびき、あずさ。次回は出番があるといいねー、しんご。

念の為。「イマジネーショん」とゆータイトル、誤植じゃないですからね(^^)。

小説(転載)  フラストレーショん

官能小説
03 /30 2019
 六歳離れた妹・あずさの、同い年の彼氏・しんごが、あずさの高校生の兄・ひびきに電話した、夏の夜八時。
「どうした? あずじゃなくて、俺にって」
 親しげな口調のひびきだったが、電話のしんごは沈黙したままだった。
『……………………』
「……あずと、何かあったのか?」
『……………………』
 あいかわらずの沈黙に、ひびきは苦笑いをこぼす。
「仕方ないなぁ。話してみろよ。ん?」
『……………………』
 辛抱は、そこまでだった。
「くぉら、しんご! テメー、電話しといてその態度か!」
『す、すみません! あ、あの、その通りで……あずささんの……ことです』
「はいはい。あずがどーしたって?」
『最近、ダメなんです』
 ひびきの首がコケた。


フラストレーショん
~ジェネレーショん・続編~





「やれやれ……」
 あくる日。放課後に待ちあわせたひびきとしんごは、ファーストフード店のテーブルにトレーを置いた。
 電話じゃラチがあかないということで。
「お前らって、何でそーなるかな?」
「え?」
 フライドポテトをひと口食べてから、ひびきはボヤきを続けた。
「せっかくこないだまとまったかと思ったら、また俺に相談なんてよ」
「……すみません。でも、お兄さんしか頼りにできなくて……」
「むー」
 相変わらず、ひびきには彼女がいない。もう少し言うと、いたことがない。
 さらにツッコんで言うなら、女なしでは成しえない経験も、したことがない。
 六つも年下で、そりゃもう経験しまくりのカップルから相談されても、まかせておけと胸をはれない。
 したがって、「むー」という返事になるのである。
「まぁいい。んで、結局は、またマンネリになったってか?」
「……わかんないです。お兄さんのアドバイス通り、色んな……」
 と、そこまで言いかけたしんごは、周囲の目や耳を思いだし、ドリンクのストローをチューッと吸ってから、声をひそめて続けた。
「色んな体位にしたり、服を着たまましたり、満員電車の中でしてみたり……」
(そこまでのアドバイスはしてナイ)
「それでもダメなら、しばらくガマンして……とにかく変化をつけてきたつもりなんですが……」
「……お前は、どーなんだよ」
 ひびきは、ハンバーガーをパクッとやった。
「んぐ……。お前は、マンネリとか飽きたとか、そーゆーのはないのか?」
「はい。お兄さんのおかげで、それは間違いだとわかりましたから」
 グッと身を乗りだすしんご。
「本当に大事なのは快楽じゃない。お互いに触れ合い、求めあえる人がいるってことが、何よりも素晴らしいことだって。僕には好きな人がいる。その人も僕を大事に思ってくれる。そう思うだけで、いつだって新鮮でいられる。いつだって、初めて触れ合った時の喜びを感じることができます」
「……………………」
「それを、お兄さんが教えてくれました。ありがとうございます」
「はっはっは」
 身に余る光栄というより、身に覚えのない光栄だった。
 しかも、そんなことを、六つも年下のやつが語っている。
 輝く瞳で熱弁している。
 ひびきのことを、恋愛のプロフェッショナルとでも思っていそうな瞳だ。
 しんごの前じゃなければ、道に倒れて号泣していただろう。
「ま、なるほどな。お前さんの気持ちは、ジューッブンにわかった。で、あずはわかってないってコトだな」
「……何とも言えません。ただその、した後に……」
 した後に、である。
「スッと立ち上がって服を着る、あのどこか醒めた目が……こわくて」
「うぁ……」
 まるで映画や歌のワンシーンのようじゃないか。主演女優が妹じゃなければ。
「あずにも困ったモンだな」
「……お願いします。僕じゃ……僕じゃもう……」
 ひびきは思う。なんだか、マジでテレビか映画みたいになってきやがった、と。
「そーいやお前ら、付き合いだしたキッカケって、どーなんだ?」
「キッカケですか? その……僕があずささんに告白して、それで……」
「それで交際? そりゃまた、えらく単純だなー」
「そう……なんですか?」
「ああ。それでわかったよ。お前らに足りないものが」
「え!? なんですか?!」
 必死で答えを求めるしんごに、ひびきはニヤリと笑って言った。
「ドラマ、だよ」


 ちょうどよくと言うか何と言うか、近所の神社が夏祭りの時期だった。
 夜店の行列の中、浴衣と三つ編みのおさげが可愛らしいあずさは、しんごと手をつないでゴキゲンだ。
「おしかったねぇ、しんご。あの輪投げさぁ」
「うん。もうちょっとで、あずさの欲しがってた指輪が取れたのに」
「ううん。だってズルいよあのオジさん。ほとんどOKなのに、これじゃダメって」
 と、プゥッとしながら言いつつも、すぐにあずさの顔は笑顔になる。
「だから、しんごががんばってくれたのは、わかってるよ。ありがとう♪」
「へへっ……」
 オーラが出るほど幸せそうなカップルの少ーし後ろに、陰険なまなざしの男がつけ歩いている。
 人込みに紛れて見にくいが、あずさの兄である。
(いーなぁ……)
 さらに彼にとって災難なのは、あずさとしんご以外にも、カップルがわんさかいることだ。手をつなぎ、腕を組み、見つめあったくらいにして、ハートマークを飛び散らかす輩がウヨウヨしている。
 そんな中、ひとりぼっちで、しかも妹のためとはいえ、人の幸せのためにコソコソしている自分。
(俺だってよぅ、彼女と手をつないでよぅ、金魚すくいだの射的だのよぅ……)
 いもしない彼女との楽しいひとときを、うつろな目で思い浮かべるその姿は、人として目を背けたくなるほどだが、運命は容赦なかった。
 そのウヨウヨしてるカップルの一組が、ひびきの同級生だったのだ。
 思わず身を隠すひびき。暗がりで独り涙ぐむひびき。
(ど……どいつもこいつも……)
 ひびきが思いだすのは、少し先の話だった。
 あずさとしんごを見失った、ということを。


「そっち……お店ないんじゃないの? しんご」
「うん……。でも静かだし、ちょっとさ」
「……そうだね」
 空は、どちらかといえば夜かな、という暗さになっていた。
 祭り提灯の明かりが、届いているようないないような、雑草だらけの道である。先は川だ。
『まずは暗がりに誘い込むんだ』
 しんごの頭の中で、ひびきの策がリフレインする。
『そこであずさは、変質者に襲われる。夏だってのに、汚いコートに身をつつんだ男だ』
 空気を楽しみながら、のんびりと先へ進むあずさ。それに寄りそうしんご。
『男はまずお前を殴る。で、お前は気絶するんだ。その間に、男はあずさを犯そうとする』
 そう言った時のひびきの顔まで浮かんできた。ニヤッという笑いだ。
『で、復活したお前が男……つまり俺を撃退して、そしてあずさはお前にすがって泣く、と』
 そんなことして、あずさが傷つくんじゃないですか?と聞いたもんだ。
『だから、その傷をお前がなぐさめるんだよ。ドラマじゃないか』
 うつむくしんごの肩に、ポンッと置かれた、その時のひびきの手。
『大丈夫だって。まさか妹相手に本番はしないし、ましてちょっと飛びかかって、服を脱がすフリをする程度だ。だからお前、頼むぞ』
(頼むぞって……うまくいくかなぁ)
 あずさの見てないところで、しんごは首を傾けた。
 その時。
「ぐっ!?」
 しんごは、背後から思いきり頭を殴られた。
 意識が遠のくほどの力だ。
 クラクラッと沈み込むしんごの耳に、彼女の声が聞こえる。
「しんご! ……きゃ!」
 そして黒い影が、あずさの口を抑えながら、もつれるように茂みに飛び込む場面が、ブラックアウトする。
 本当に気を失ってしまったのだ。


「……! つぅ……」
 それは、ほんの数秒だった。
 痛む頭を震動させないようにゆっくりと立ち上がったしんごは、あずさが連れ込まれた茂みに向かった。
 まず目に入ったのは、薄汚いコートの背中だった。
(あ、お兄さん……)
 次に、浴衣のすそから白く細い足をむき出し、今まさに胸元をあらわにされた、仰向けのあずさだった。
「ん、んんう!」
(! ガ、ガムテープ?!)
 あずさの口は、茶色のガムテープで、しっかりと塞がれていた。
(用意周到だなぁ、お兄さん)
「んん! っんん!」
 覆いかぶさっている男の横顔も見えた。ねずみ色の髪と、ねずみ色でボウボウのヒゲという横顔。
(ふぅ……ん。ずいぶん凝った変装だな……)
 ここまでしんごは、余裕で見守っていた。後はタイミングを見計らって、助けに乱入するだけだ、と。
 しかし。
「んう! んうう~!」
 “男”は、あずさの手を無理矢理ほどき、そのわずかにふくらんだ両の胸を、ワシづかみした。
「んう! ん……んん!」
 あずさは懸命に男の手をつかみ、やめさせようとする。しかし腕力の差はあきらかだ。
 つかんでいる指の先が、さらにあずさの小さな乳首を刺激しはじめる。
 しんごの内心に、焦りが生まれた。
(そこまで……やるんですか?)
 ピクッ、ピクッと反応を見せるあずさ。その瞳からは、涙が止まらずにあふれている。
「んっ! ……んん、んん!」
「……………………」
 男の片手が、あずさの胸から離れる。
 あずさは両手で、残っている男の手を胸からひきはがそうとする。
 離れた男の手の行き先なんか考える余裕もなく。
「ん、んん……っ!! んん! んんう~っ!」
 浴衣のすそから潜り込んだ手が、大切なところを守る薄生地を撫でた瞬間、あずさの震えは弾けとなった。
「んんう! んっ……ん! んん!」
(ちょ、ちょっとお兄さん。それは……やりすぎじゃ……お兄さん? ちょっと、まさか……)
 しんごにとっては、最後の止めるチャンスだった。
 しかし、完全に逃してしまう。
「んっ! んんん~!」
 あずさの表情に。
(……うは…………)
 状況も何もかも忘れてしまうほど、色っぽい顔の上気と、体の反応。
 いや、状況が状況だからこそ、かもしれない。
 暗がりの茂み、乱れた浴衣、白い肌。そして、犯されているのに感じ始めている彼女。
 今、ショーツのポイントを、男の指がキュッと押し付けた。
「んんんっ!」
 そのまま、グリグリッと刺激する。
「ん! ん! ん!」
 男は、わかっているみたいに、一旦手を引いた。
 その通り、あずさは逃げなかった。
 しんごにもその理由がわかった。逃げられないのだ。すでに快感によって脱力してしまった体が。
 男の手が、ショーツをゆっくりと降ろし始めても。
「ん……んん……」
 むき出しにされた、少女の秘部。
 しんごの距離からは見えないが、ジンワリとした湿り気をおびている。
 失禁でも、汗でもない。
「……んう、んうぅ…………」
 首だけを力なく横に振るあずさ。
 その足が、左右に広げられ、男の顔が、その間に納まる。
「んぅ……ん! ん……んふ!」
 イヤらしい音が鳴った。男が、わざとそうしているからだ。
 ズルペチャ、ズビ、ブチュ。しんごの耳にも、ハッキリと。
(…………あずさ…………)
 しんごは、魅入っていた。
 自分がする以外で、これほどドキドキさせるあずさの表情や仕草が、しんごを狂わせたのだ。
「んっ! んん……んぅ! んむぅ! ん……」
 もう何もない。ただひたすら、彼女の艶姿を見つめるのみ。
 そして、塞がれたあずさの口から漏れでる声に、自分がしている時の、あの声が重なる。
『あっ! ああ……あぅ! そこぉ! あ……』
(あずさ……感じるかい、あずさ……)
『あ、ああ! はぁん! ん、や、やぁ……あん!』
 しんごの手が、思わず自分の股間に向く。
(あず……さ……)
 と。
 男は、顔をあげた。
「ん……、んん………………」
 あずさは、潤んだ瞳で、ボンヤリとその挙動を見ている。
「ん……う……」
「……………………」
 沈黙が続いた。
(…………?)
 沈黙は、男がズボンの金具を外す音で破られた。
(……………………)
 動かないしんご。動けないしんご。
 男のズボンが降りても、まだ動かない。
「ん……、んん!」
 男は、あずさの頭を抑えるみたいに、覆いかぶさった。
「んっ! んん!」
「……………………」
「っ……………………んあ!」
 声だ。こもっていない、あずさの声が。
「あ、あ……た、助けて」
 男が再び体を起こしたことで、あずさの顔が見える。
 ガムテープがはがれていた。
「助けて……、助けて……」
 力なく声をもらすあずさの下腹部で、男はパンツも降ろした。
(……………………)
「助けて……」
(……………………、え?)

「助けて……しんごぉ……」
(っ!!)

「や、やめろ! やめろぉ!」
 しんごは、男に飛びかかって、体当たりした。
(僕は! 僕は何をしていたんだ! 僕は何を!)
 普通なら、体格差があるから勝ち目はない。
 だが、男はまったくの無防備状態で、しかもバランスの悪い体勢だったから。
「っ!」
 もんどりうって倒れた。
 そして。
「ウオォオ! ウオォォオォッ!」
 獣のような奇声をあげて、駆け去ってしまった。
(あの声……や、やっぱりお兄さんじゃなかったのか……?!)
 駆け去る男を見ていたしんごの目が、スッとあずさに向けられる。
 かろうじて浴衣が引っ掛かっているというだけの、恥ずかしい姿だ。
 開かれた足を閉じもせず、ただぼう然としている。
(……それなのに、僕は……僕は…………)
「おーい、しんごぉ!」
 後ろから、今度は聞き覚えのある声がした。
 汗だくで駆けつける、ひびきの姿だ。
「お、お兄さん!」
「そこか、しんご! ……お、おい! あ、あずさ?!」
「お兄さん、ちょっと!」
 しんごは、あずさの姿に唖然としているひびきを茂みから押しだして、コソッと言った。
「お兄さん! お兄さんが……ですよね?」
「ま、待てよ。俺、途中でお前らを見失って、ずっと捜してて……何だよ、“ですよね?”って!」
「!! じゃあ……やっぱりアレは、お兄さんじゃなくて……」
「なんだって!? ちょっとお前、まさかあずさ……あずさが!?」
 どうしようもなく、コクリとうなずくしんご。
「バ、バカヤロォ。あず! 大丈夫か!?」
 ひびきは茂みに駆け込み、あずさの前に立った。立ち尽くした。
「あず……」
「……お兄ちゃん…………」
 まだ、足を開いたままだった。
「……だい……じょうぶだよ、お兄ちゃん。最後まで……され……なかったから……」
「最後までって……でも、その格好…………」
「あっ……」
 ようやくあずさは、足を閉じた。
 それが、きっかけとなったらしい。
「あ……ああ、あああ!」
 止まっていた涙が、また溢れ始めた。
「あ……うわああ! お兄ちゃん! お兄ちゃぁん!」
 ひびきにしがみつくあずさ。を、ひびきは優しく止めた。
「……違うだろ、相手が」
「え……?」
 あずさは、ひびきが後ろを向いてることに気づいた。
 そして、その先にいる男の子のことを。
「…………しんご…………」
「ぼ、僕…………」
「しんご……しんごぉ……」
「っ!!」
 駆け寄るしんご。何とか立ち上がるあずさ。
「しんごっ!」
「ごめんっ!」
 しんごは、つぶしてしまいそうなほど、あずさを抱きしめた。
「ごめん! ごめんよ、あずさ! あずさぁ!」
「しんごぉぉ~!」
 祭りの遠明かりに照らされて、しっかりと抱きあう二人。
 その側で、ひびきはタバコを取りだし、火を灯した。



 六歳離れた妹・あずさが、高校生の兄・ひびきの部屋をたずねた、その日の夜九時。
「……大変だったな」
 ひびきの言葉にコクンとうなずいて、あずさは床にペタンと座った。
「まったく、どうなることかと思ったぞ」
「……そうだね」
「しんごのヤツ、なかなか止めに入らねーしよぉ」
「うん……。どうしちゃったんだろう?」
「さぁな」
 そう言って、黙ってしまったひびきに、今度はあずさが言った。
「お兄ちゃんも……大変だったね」
「ん? ああ、まーな。見失った時には、ちょっと焦ったけど」
「でも間に合わせて、予定通りにして、すぐに着替えて、戻ってって。あのコート、お父さんの?」
「すっかり汚しちまったよ。クリーニング代、お前も持てよ?」
「うん。……ははっ。あの最後の奇声はスゴかったねー」
「ばか。ノドがイテーよ、まったく……」
 ひびきは、引き出しからタバコを出して、一服つけた。
「ま、これでしんごも、口先だけじゃなく、あずをしっかりと想ってくれるだろ? あずの醒めた態度は、あずのせいじゃないって」
「そうだといいんだけど……でもお兄ちゃん」
「ん?」
 あずさは、プゥッとふくれて、続けた。
「あそこまでする予定だったの?! あたしの……ナメるなんて!」
「そりゃお前……しんごだよ。ヤツがなかなか止めないから……」
「また胸に触るし……あたし、本当に最後までされるんじゃないかって、ヒヤヒヤしたんだから!」
「だからしんごに言えよ。ただ押さえつけるだけじゃ、間が持たねーじゃねーか」
 本当の理由は、言うわけにはいかない。
 しんごを本気で殴ったことも、あずさを本気で犯してしまいそうになったことも。
(ちょっと欲求不満だったしなー。俺的には、最初っからの予定でもあったし……)
「お兄ちゃん」
「! な、なんだ?」
 しかし振り返って見たあずさは、怒った顔ではなかった。
 どちらかと言えば……。
「やっぱりお兄ちゃんって、指使いが上手だよね。舌使いも……」
「え?」
「恥ずかしかったけど……その……」
「あず?」
 目がテンになってるひびきの前で、あずさは立ち上がり、そして今度はベッドに腰掛けた。
「えへへ。ねぇ、お兄ちゃん」
「はい?」
「最後までしないってコトでぇ……続き、しない?」
 上目遣いの、なんとも言えない表情をするあずさ。

 ひびきの声は、屋根を突き抜けて、星空に広がった。
「とっとと寝ろー! このクソガキー!!」


おしまい



【コメント】

わかりにくかったかなぁ?(^^;) ネタ作りの段階で二転三転して、私も混乱しかけましたモン(^^;)。

えー、この話は自分でも気に入ってる「ジェネレーショん」という、(2000年現在より)3年前に掲載した短編の続編なんですが、そっちを読んでなくてもわかるよーにはしたつもりです。
(もちろん、これを読んだ上で、前作を読んでみたいと思う衝動は、否定しません(^^;))
なんで3年も前の話の続編を書いたかと言えば、最近になって「みる」さんという方から、そのイメージイラストをいただいたことがキッカケなんです。
そう、キッカケ。実は、ずっと書こうと思ってはいたんですよ。と言っても、ストーリーそのものはなかったんですが、「~ん」というタイトルパターンで、色々考えていたんです(^^;)。
ありますよぉ。「コミュニケーショん」とか「グラデーショん」とか。そして、今回のタイトルにもなった「フラストレーショん」も。
それで、さっきも述べたキッカケで、今回のストーリーを練りだしたワケです。
ちなみにこの物語、亜裕美や澪みたいなドラマ的引きずり方をするつもりはありませんので。

前作は全体的にコミカル路線でしたが、今回は特にHシーンではギャグ抜きでした。とは言え、オチを知ってしまえば、その状況でのあずさやひびきの焦りを想像して、笑えるとは思うんですけど。
でもやっぱ、ちょっと凝りすぎかな?(^^;) お疲れさん、あずさ、ひびき、何よりしんご。

念の為。「フラストレーショん」とゆータイトル、誤植じゃないですからね(^^)。

小説(転載)  ジェネレーショん

官能小説
03 /30 2019
 六歳離れた妹・あずさが、高校生の兄・ひびきの部屋をたずねた、夜の九時。
「どうした?」
 やさしく問い掛けたひびきに、あずさははにかんだ。
「あ、あのねー。お兄ちゃん」
 もじもじもじもじ。もじもじもじもじ。
「……なんだよぉ?」
「どっしよーかな……? お母さん達にはナイショよ」
「へ?」
 もじもじもじもじ。もじもじもじもじ。
「……だ、だから何だってーの? なにがナイショだよ」
「あのねー。……しんご君の……ことなんだけど」
 あずさは、三つ編みをいじりながら、やっと用件を言い始めた。
「しんご君ね。そのー……」
「はいはい。ボーイフレンドのしんご君が、ほら、どうしたってさ」
「最近、ダメなの」
 ひびきは、軽くイスからコケた。


ジェネレーショん





「ダメなのって、え?」
「んんー。だからぁ! ……その、マンネリ、なのかなぁって」
「……なあ、あず」
 呼ばれたあずさは、ふと真顔に戻った。
「なに?」
「そのー……」
 ひびきは、懸命にセリフを選んだ。ストレートには、聞く気になれない。
「ひょっとして、キミの悩みって……体のこと?」
「からだ……」
 小首を傾げたあずさは、やがて頬を赤らめて、言ってのけた。
「まあ、胸がまだ小さいから、しんご君もつまらないと思うけど……」
 今度はひびき、しっかりコケた。
「お兄ちゃん?」
「い、いやいや。あ、あそー。もう、そんな関係だったんだー」
「え? だって、おつきあいしてるんだもん。……自然じゃない」
 ごく純粋な目だった。まだまだあどけない、澄んだ瞳だった。
 けっして、イキがって背伸びしている様子じゃない。
「……そーかぁー……」
 ひびきの声は、ひどく沈んでいた。
 大事な妹を傷モンにされた、からではない。比較して、自分が小学生だった頃を思い起こしたからだ。
(映画でシャワーシーンでもあれば、それでも刺激的すぎたってのに……)
「どーしたの? お兄ちゃん」
「べ、別に。でも、お前さー」
「なに?」
 早すぎるんじゃねーの? そう聞こうとして、妹の体をそれとなく見た。
 あと二、三年でおいつかれそうな身長、小さいとはいえしっかり形になっている胸、ミニスカートから伸びる、白くて細いしなやかな足。
 中身はおいといて、「側」は受け入れ体勢が整っている。
(自然、なのかもなー)
 ひびきは、引き出しからタバコを出して、くわえた。
「ま、いいや。でま、最近、彼が燃えてくれないと、こーゆーことだな?」
「うん……。いちおーするんだけど、なんかパッとやって、パッと終わっちゃうってゆーかぁ」
「おざなり?」
「あ、うん。なんか、義理?みたいな感じで。体位だって、ずっと同じだし……」
 理解しようとする一方、ジンワリとくる頭痛は抑えられなかった。
 よっぽど、このクソガキどもと怒鳴りつけてやろうかと、ひびきは思った。
 一番腹立たしい要素は、やはり、
(兄貴はこの年で、キスすらまだだっつーに……)
 これだろう。
「どぉしたらいいと思う? お兄ちゃん」
「……むーぅ」
 幸い、そういう方面の書籍、映像などは、何度も見ている。なんだったら、今すぐベッドの下あたりから、参考文献の一冊や二冊は取りだせる。
 ただ、実践中の妹を前にして、マニュアル本をひもとく兄の姿は、見せたくなかった。
「やっぱり……、気分転換じゃねーか?」
「気分転換?」
 あずさは、件のベッドに腰をおろした。
「そう。たとえば、場所を……。そういえば、お前ら、どこでやってんだ?」
「んとねー。一番多いのは、やっぱ、しんご君の部屋?かな」
「一番多いのは……。後は、だれもいない教室とか、体育倉庫とか、公園の茂みとかか?」
 やけくそ気味に並べ立てた兄の言葉に、あずさは目をパチクリとした。
「さすがお兄ちゃんね。どーしてわかるの?」
「わからいでか」
 いわゆる『パターン』というやつだ。
「でもね。他に、二人だけの秘密の場所があるんだー。えへへ」
「わかった。場所のセンは捨てよう」
 ひびきは、タバコをもみ消した。いつもより、執念深く。
「じゃあ、変わったプレイをしてみたらどーだよ。ちょっと変態っぽいのでも」
「そ、そんな。……変態っぽいのって?」
 まあ、例えばオシリを試すとか、オシッコでもしてみるとか。ひびきがそう言おうとした寸前。
「オシリも最初のうちだけだったし、オシッコには興味なさそうだったし……」
 頬を染めながらブツブツ言っているあずさの前で、ひびきはイスから落ちた。
 そして、その勢いで、妹につかみかかった。
「お前なー!」
「きゃ! な、何? そんなんじゃ、変態じゃない?」
「!…………」
 あくまでも、目は純粋。そんなあずさを見て、ひびきは必死に自分に言い聞かせた。
(年で考えるな。自分の時代で物事を考えるな。彼女は真剣なんだ。がんばれ、ひびき)
 そして、ポツリと提案した。
「SMは?」
「やだ。痛かったもん」
 過去形である。
「ふぅーむ……」
 ひびきは、あれこれ考えた。
 金がないから、ホテルもダメ、コスプレもダメ。
 オシッコがダメなら、脱糞はもっとダメだろう。
 変わった体位といっても、彼女たちのことだから、四十八種類なんてとっくにクリア済みだろう。
「……ねえ、お兄ちゃーん。なんかない?」
「むむぅ……」
「ねえ。終わりたくないの、こんなことで。だって、だって……」
 感情がたかぶってきたのだろう。彼女の瞳から、熱い涙がこぼれ始めた。
 ひびきの頭の中に、WANSの歌がリフレインした。「恋せよ乙女」だ。
「わかった。兄ちゃんが、なんとか考えよう! せっかく相談してくれた、妹のためだ!」
「ホント! お兄ちゃん!」
 ひびきは、あずさの頬から涙が一気に蒸発するのが見えた、気がした。
「ああ。でも、時間をくれ。それまでは、短気を起こすなよ」
「ん……」
「さ、もう寝ろ」
「んー……」
 あずさがトボトボと部屋を出ていったのをキッチリ見送ってから、彼はベッドの下をまさぐった。


 だが、打開策を思い付いたのは、翌日のあずさのほうだった。
 学生服を着たままのひびきは、しんごの勉強机の椅子に、うつろに座っていた。
 午後の光が、のんびりと彼を照らしていた。
 その向かいのベッドに、しんごと、愛すべき我が妹が、肩を並べて座っている。
「じゃあ……見ててね、お兄ちゃん」
「……なあ、あずさ。マジ?」
 と聞いたのは、ひびきではなく、しんごだ。
「もちろんよ。他人に見られるのはヤだけど、あたしのお兄ちゃんよ。まだ……がまんできるから」
「がまんしなくたって、いいじゃないかぁ」
「何言ってるのよ! しんご君のためじゃない」
(倦怠期の夫婦じゃないってんだ……)
 あいかわらず、死んだサバみたいな目付きで、ひびきはうつろに愚痴を浮かべた。
「……ほれ。わざわざ学校帰りに寄ったんだ。さっさとしろぃ!」
「ほらぁ、しんご君」
「わ、わかったよ。あの、すいませんです、お兄さん」
「いーから」
 実際、妹に手を出した男を目の当たりにすると、さすがにいい気分ではなかった。
 が、相手は子供。あずさも真剣なようだし、怒るわけにもいかないひびきであった。
「しんご君……」
「あずさ……」
 ファースト・ステップの、静かな甘いキスである。もちろん、ディープである。
(いーなぁ)
 ひびきの、素直な感想である。
 しんごは、唇から、鼻、頬、それから首筋へと、キスを降らせた。
「ん……」
 そして、チラッとひびきに目をやった後、片手をあずさの小さなふくらみに、Tシャツ越しに重ねた。
「あ……」
 ようやく発見した古代遺跡の土をほろう考古学者の様な手付きで、しんごの手は動いた。
「はぁ……」
 あずさの息に、甘みが増していく。ひびきが、思わず見とれるほどだ。
(パッパッ、と聞いてたけど……。やっぱ、兄が監督してるから、かな?)
 などと思っていると、しんごがまたひびきを盗み見た。そんな彼に、ひびきはイライラして言った。
「……あのなあ、しんご君」
「あ、はい!」
 それで手を止めたため、ウットリしていたあずさの顔が、スッと曇った。ひびきにも、それがわかった。
「止めるなよ。それと、いちいち俺を見るな」
「でも……。なんか、悪いことしてるみたいで……」
「悪かねーよ。真剣なんだろ?」
「もちろんです!」
 即答だった。
「なら、しっかり愛してやってくれ。それで責任とれだの言う気はねーから。お前ら、まだ若いんだから」
 心の中で「若すぎるわい!」と付けたしながら、ひびきはとっておきの笑顔をこしらえた。
「お兄さん……」
「お兄ちゃん……」
 二人の若いカップルは、素直に感動した。
「わかりました。じゃ、本格的にいくよ、あずさ」
「うん……」
 しんごは、あずさの服を、一枚一枚脱がせた。
 Tシャツ、スカート、スリップ。靴下を取らなかったのは、面倒だったからか忘れていたのか、わからない。
 そして……。
「あ……」
(う……)
 最後の一枚が放たれるのを、ひびきは固唾を飲んで見守った。
(ほんと……成長してたんだなぁ、あずさ……)
 靴下だけにされたあずさは、ベッドにコロンと横になった。
 しんごも、トランクスを残して裸になると、その上に手をついて覆いかぶさった。
「あずさ……。なんか今日は、すごくキレイだ……」
「しんご君……。うれしい……、あっ!」
 しんごの唇が、胸の小さな突起に触れた瞬間、あずさの体がビクンと波打った。
「敏感になってるね」
「ばか……」
 ひびきは、身を乗り出した。
 チュッ、チュッ、と、音が響いた。
「あ、あん! やん……」
 左右のつぼみを交互に吸った後、しんごはあずさの隣に沿って、横になった。ひそかに気をつかって、ひびきの視界をさえぎらないほうに。
 そして、あずさの髪をやさしくなでた。
「ホント、ずいぶん感じやすくなってるね。すっかりカチカチだよ」
「だって……、しんご君、やさしいんだもん……」
 自分をロバみたいに感じ始めていたひびきをよそに、二人は盛り上がっていた。
「でもさぁ……」
「あぅん!」
「……ほら。こっちだって、もうこんなに……」
 自分の秘部からすくい取られた粘液を見て、あずさは顔を覆った。
「み、見せないでよぉ」
 それから、ソッとひびきに向いた。
「……見ないで、お兄ちゃん」
 しんごも、忘れてた、みたいな顔で、ひびきを見た。
「あ、あの……お兄さん。もう……いいですから」
「やかーしい」
 ひびきは、つっけんどんに答えた。
「なに勝手言ってやがんだ。続けろよ。俺が最後まで、ジックリ、タップリ、すみからすみまで見てやる!」
 実際、これで帰ったら、本当にロバだ。
 椅子から立ち上がったひびきは、ベッドのかたすみ、彼女らの頭のほうにドカッと座った。
「ほれ。続けんかい。怒るぞ、しまいには」
「……そ、そんな……」
 躊躇(ちゅうちょ)しているしんごの首に、あずさが手をまわした。
「続けて、しんご君。あたし、大丈夫だから……」
 そして、ひびきを上目づかいに見て、言った。
「ごめんねお兄ちゃん。……しっかり見ててね」
「おう。たっぷり可愛がってもらえ」
「ん……」
 あずさが目をとじると、しんごも観念したらしく、再び彼女の無毛でなめらかな急丘に手を沈ませた。
「あ! はあ!」
 しんごの指が動くたび、あずさの体もビクンッとゆれた。
 濡れてきたそこから、イヤらしい音がこぼれ始めた。
「こんなに……、あずさ……」
「あ、あん! ううっ!」
「あずさ……」
 あずさの下腹部へ体をずらすしんご。その顔が、あずさの細い足と足の間に納まった。
「し、しんご君……、ああっ!」
 さらに激しいケイレンが、あずさをはね上げた。
「あ……あ! 感……じちゃう……、あ! ああ!」
 しんごの舌は、まず淵沿いにはいまわり、次に付け根をくすぐり、それから深みへと沈められた。
「はあ! 入ってくる! ああ! 動い……てる、あう! んんっ!」
 勝手に暴れようとする体を抑えようと、あずさの両手はシーツをしっかりと握り締めていた。
 そんな中で、無防備になっていた胸のふくらみを、別の手がつかんだ。
「きゃ! お、お兄ちゃん?!」
「ちょ、ちょっとお兄さん!」
 ひびきは、ジロッとしんごにニラみを効かせて、言った。
「いいじゃねーか。俺の妹だぞ」
 本当は、だからなおのことマズいのだが、しんごは引き下がるしかなかった。
「あん……。や、やめてぇ、お兄ちゃん……」
「ほらしんご! 口が留守だぞ!」
「はい……」
「んんぅ! だ、だめ……、しんご君……、お兄ちゃん……」
 上下を同時に責められて、あずさはふりほどくことも出来ず、快感の波におぼれた。
 しんごの舌が、キュウッとすぼんでいたつぼみに行く。
 ひびきの指が、両の突起を小刻みに弾く。
「あ! そ、そこは! んんぅ! お、お兄ちゃ、あ! 感じすぎ……! んんぅ! だめぇ! だめぇぇ!」
 あずさは、涙も唾液も垂れ流しだった。
(こんな顔するんだ、あずさ。ガキだと……思ってたけどな)
 いとおしく妹の顔を見つめてから、ひびきはしんごに言った。
「しんご。そろそろいいんじゃねーか?」
「あ、はい……」
 あずさの股間から顔を上げたしんごは、自分の腰をあずさの腰の位置にあわせた。
「じゃ、行きます」
「俺に言うな」
「は、はあ……」
 間抜けなやりとりを上に、あずさは肩で息をしていた。
「じゃ、行くよ。あずさ」
「ん……。んんっ!」
 年相応のしんごのものが、ゆっくりとあずさに進入していく。
「うぅ……、んああ!」
「くぅ……」
 一気にヌルッと入りきり、二人は一瞬にして来た甘美な感触にブルブル震えた。
(気持ちいーんだろーなぁ……)
 あいかわらず妹の胸をもみながら、ひびきは陰気にうらやましがった。
 そんなことは構わず、しんごは腰を前後に振った。
「あ! あ! あ! あ!」
 肌と肌がぶつかりあう音と、あずさのあえぎが同調している。
「す、すごいよあずさ。キツくなってる……」
「あ! いいの! いいのぉ! しんごくぅん……」
 徐々にテンポが上がっていき、二人の汗が弾け飛ぶ。
 あずさの両足が、足場を求めてシーツをかき乱した。
 その足を、ひびきがつかんで、持ち上げた。
「きゃう!」
「お兄さん、何を!」
「止めるな! 持てよ、ほら」
 しんごは、腰を使いながら、ひびきの言うとおりの体位をした。
「あ、あ! お、奥に当たって、あ!」
「あ、あずさぁ……」
 ひびきは、あずさの頭の上で、またも命令した。
「待てしんご。……あず、ほれ」
「え……? きゃ!」
 ひびきによって、あずさは無理やり四つんばいにされた。しんごのが入ったままで。
「うう……」
「ほれしんご。動けよ」
「はい……」
 あずさの尻に手をかけて、しんごは再び腰をゆらした。
「あ! あは! ん! んん!」
「そうそう。体位はマメに、な」
 と言いながら、今度はひびき、ベッドから降りて、二人の横にまわった。
「次はこう!」
「わっ!」
「きゃあ!」
 しんごを押し倒し、同時にあずさも起こして、あおむけに寝るしんごに、あずさが後ろ向きでまたがる状態にした。
「ほら、今度はあずが動け」
「うん……、ん!」
「う、あ……」
 しんごが、たまらずのけ反った。
「ん! ん! ん! し、しんご君、どお……!」
「いいよ。気持ちいいよ、あずさ……」
「時にはこうして、女にリードさせるんだ。なあ、あず」
「う、うん……ん! あ、あ! ああ!」
 あずさは、懸命にひびきに返事をした。
「よしよし。では、本日のスペシャル・ラーゲ!」
「あ、あ……。な、に……、あ!」
 けなげに動くあずさを、ひびきは正面からガップリと抱いた。
「よっと!」
「きゃう!」
 ひびきは、あずさを持ち上げた。そのひょうしで、しんごのものが抜け、その感触があずさを震わせた。
「重くなったな、あずさ」
「な、なにお兄ちゃん。途中なのに……」
「まあまあ」
 あずさを抱っこしたまま、ひびきはベッドに上がって、しんごの横に回り込んだ。
「お兄……さん?」
「よし、しんご。構えろ」
「え?」
「こいつを降ろすから。ちゃんと入るようにしろ」
「は、はい……」
 ひびきの腕の中で、あずさは、子供がオシッコをさせてもらうような体勢だった。
「はなしてお兄ちゃん。恥ずかしい!」
「何言ってんだ、いまさら」
 たしかに、正面を向かされたあずさの秘部が、しんごから丸見えの、そうとう恥ずかしい体勢である。
「降ろすぞ、しんご」
「は……い」
「いや! いやぁ!」
「よっと」
「うああっ! いやぁぁ……」
 ひびきのバランスと、しんごの調整によって、あずさのそこが、再びしんごで満たされた。
 だが、ひびきはまだ手を離していない。
「行くぞぉ」
「ああん!」
 そう。ひびきは、あずさを無理やり上下に動かしはじめたのだ。
「お、お兄さん! は、早い……っく!」
「やあ! あ! いやぁ! だめぇ!」
「遠慮、すんな……、はあ、はあ……」
 ありったけの体力を使って、妹を上下するひびき。はあはあ言っているのは、だが体力を使っているからだけではなく、自分の腕の中でせつなく甘い息をこぼす妹に興奮しているからでもあった。
(あずさ……。もっと感じろ!)
「ああ! すご、すごいの! ああ! あずさ、こわれちゃうよぉ!」
「お、おれもう……!」
「そろそろか? よーし!」
 ひびきは、上下の動きに、回転まで加えた。
「んあああああーっ! あう! あうぅ!」
「ちょ、う、ううっ!」
「い、いっちゃうぅ!」
「くはっ!」
「っっっっっ!」
 しんごは全身をつっぱらせ、腕の中のあずさはガクガクと震えた。
(イッたか……)
 ひびきは、ケイレンが弱まるのを待って、あずさを離した。
 彼女は、ゆっくりと、しんごに倒れこんだ。
「はあ、はあ……、しんごぉ……」
「あずさ……」
 激しい呼吸と、とめどない汗の中、二人は抱きしめあい、当分離れそうにないキスを交わした。
 満たされきった表情だった。
 そしてそれは、ひびきもだった。
(へへ。早い遅いなんて問題じゃねーな。幸せを求めて、何が悪い)
 ひびきは、そっと部屋を出て、タバコに火を灯した。


 六歳離れた妹・あずさが、高校生の兄・ひびきの部屋を再びたずねた、夜の九時。
「どうした?」
 やさしく問い掛けたひびきに、あずさははにかんだ。
「今日は、どもね」
「どってことねーよ。だけど、うちの親にも、しんごの両親にも、バレないよーにしろよ」
「う、うん。……でね?」
 もじもじもじもじ。もじもじもじもじ。
「な、なんだよ今度は」
「今度は、お兄ちゃんも一緒にしよ!」
 もうちょっとで、机をひっくり返すところだった。
(こ、こいつはぁ……)
「……だって、お兄ちゃんの手、気持ちよかったんだぁ。それに、あのスペシャルも、またして欲し……」
「…………………………」
「お兄ちゃん?」
 ようやく立ち直ったひびきは、あずさの両肩に手を乗せた。
「あず」
「なに?」
「たった今、マンネリを打ち破る、画期的な方法を発見した」
「え? なになに?」
 ひびきは、ありったけの大声で、怒鳴った。
「当分禁止だぁーっ!」


おしまい



【コメント】
本当は、すなおに兄妹の触れあい(!)を描こうかと思ったんですけどね。でも、あゆみで散々姉弟を描いた後でそれやっちゃ、何も考えてないみたいに思われそうなので、こーしちゃいました(^^;)。
これ書いてて思いだしたのが、私の小学生時代の1ページ。「さらば宇宙戦艦ヤマト」ってあったじゃないですか。あれのカードってのがあって、その中に、スリップ姿の森雪が、古代進と抱きあうシーンのがあったんですよ。それでみんなキャアキャア言って、誰かのカバンにコッソリそれを入れるなんて遊びがちょっとだけ流行ったことがありまして。
いいですねぇ。なんかこの、ちょっとしたことで大いに楽しめたあの頃って(^^)。

念の為。「ジェネレーショん」とゆータイトル、誤植じゃないですからね。

小説(転載)  ドア

官能小説
03 /30 2019
 たぶん、よくある話なんだと思う。
 女の子が、同じクラスの同性の親友に、ひとりエッチの“方法”を聞くというのは。

「な、なんだっ……ムグ!」
 手と、なぜか頭のてっぺんを押さえつけられて、辰美(たつみ)は目をシロクロさせた。
 辰美といっても男じゃない。ストレートのショートカットで、男に毛が生えた程度のボディラインだが、れっきとした少女である。
 かなり、大きなお世話な説明ではあるが。
「声が大きいよぉ!」
 辰美を押さえつけている、やや天パ気味の黒いロングヘアの少女。名前は穂乃香(ほのか)。
 名前と、「大きいよぉ」と小さな「ぉ」が付くしゃべり方が、性格を現わしている。
 同性からもかわいいと言われるその顔は、真っ赤っかだった。



ドア





「したことないの? 中学生にもなって」
「…………」
 帰り道。ちょうどバレンタインを過ぎた辺りで、陽の光にも微妙な温かさを感じる。
「だって、普通、思わない? ちょっと触ってみよっかなーとか、どんな感じかなーとか」
「…………」
「ふーん」
「……辰美は? したことあるの?」
「ま、この際だからちゃんと答えるけど、したこと、どころじゃないよ」
「え…………?」
 ヒソヒソヒソ。
「ええ~……。も、もう男の子と……」
「まーね。あ、ナイショだからな、これ」
「う、うん……。でも……ああ、私、やっぱり遅れてるんだぁ……」
「ま、私の場合は、ちと進みすぎだってわかってるけどさ」
(それも、たった二回だけだし)
「それにしても、確かに穂乃香は遅れてる。てゆーか、ヘン」
「ううう……。だって、わかんないんだもん……」
「でもさ。なんでまた、急に興味が?」
 真っ赤っか。
「……男子が……ね? その……男子の会話で……その……聞こえちゃって」

 女もするらしいな。そーゆーコト。

「まーなぁ。男の場合は、生理と同じだなんて、彼も言ってたし……」
「…………」
「でも、でもだぞ? 女だって、それに近いぞ? 私だって、小学生の頃にはもう……」
「だから……だから辰美にぃ……」
「おっけ、おっけ」
 頭ナデナデ。


 家の鍵を開けた穂乃香は、誰もいないの、と言った。
 二階にある彼女の部屋は、アリが入り込む隙間もないほど、女の子っぽさに満ちあふれていた。
 なんせ、同性の辰美が、照れて入室を躊躇するほどだから。
「えっと、じゃあ、お茶入れてくるねぇ」
「あー待った待った。いいから、本題に入ろ」
「……う、うん……」
 開きかけたドアをパタンと閉じて、そのドアを背にして、穂乃香は立ちすくんだ。
「本題、ね……」
「さて、本題って言っても……」
 では説明いたしましょう、って類いのモンじゃない。
 切り出すキッカケをつかめず、あれこれ考えてるうちに、辰美は、なぜこんなにもウブなコと、入学式で初めて会って以来の親友なんだろうかと、悩む始末だった。
「辰美?」
「むー。ま、いいか。じゃ、まず脱いじゃってよ」
「え?!」
「ま、実は脱がなくても出来るんだけどさ。でも、脱いだほうが、気分も盛り上がるし」
「ええー……。わかった。じゃ、脱ぐから……」
 穂乃香は、再びドアを押し開けた。
「なに」
「だからぁ……脱ぐから……部屋を出て」
「……忘れてるかもしれないけど、私、女だぞ?」
「わかってるよぉ。でも……恥ずかしいからぁ……」
「…………」
 だったら、ひとりエッチのやり方なんて、聞きなさんさ。
 そんなセリフをゴックリとひと飲みして、部屋を出る辰美。
「ま、リラックスしてやったほうがいいし……」
 なんて言いながら廊下に出て、背中でドアを閉めた。


「脱いだー?」
「もうちょっとぉ。んしょっと……」
「…………」
「いーい?」
「わぁ! だ、だめだよぉ、入っちゃ」
「あ、あのなぁ」
 辰美は、閉まったまんまのドアにもたれかかって、ウンザリした。
「じゃあナニ? ドアを閉めたまま、ドア越しに、あれこれ説明しろってかい?!」
「…………うん」
 もたれていた腕が、ズルッと滑った。
「まったくー……」
 呆れのドロ沼にズブズブとハマりそうになったその時、辰美に、小悪魔のツノが生えた(比喩)。
 こりゃ面白い、である。
「だけどさぁ。実際にあんたの裸を見ないと、教えるプランが立てられないよ?」
「……うううー……」
 予想通りの反応。辰美が声を殺して笑ってると、じきに、困り果てた末の穂乃香の声がした。
「じゃあ……チラッとね。チラッとだよぉ?」
「おっけ、おっけ」
 辰美は、ガサ入れの刑事みたいな勢いで、思いきりドアを開け放った。
「やああっ!」
 滑稽に思えるほどの悲鳴をあげて、中にいた穂乃香は、両手を目一杯使って、体を隠した。
「チ、チラッとだってばぁ! ドアの隙間からそ~っとぉ……」
「ノゾキか私は。いいからホレ、手をどけろって」
「うううー……」
「帰ろっかな」
「あ、待って! ……わかった。はい……」
 しおれる花のように、戸惑いながら穂乃香の腕が降りると、それは辰美のノドをゴクッと鳴らせる裸体だった。
 男なら、確実に鼻血を吹きだしているだろう。それも、致死量を遥かに越えて。
 それほどに、もはや魔力とも言えるほど、穂乃香のヌードは、美しく、そして艶やかだったのだ。
「ふーん……」
「ふ、ふーんって……やだぁ……」
(そーか。あっちの毛、まだなんだ……)
(それでいて、出るトコ出て……)
(引っ込むトコは、キュッと引っ込んでて……)
(こりゃイヤらしい)
(彼女がこれほどウブなのって、神様の配慮なのかもねー)
「ちょ、ちょっとぉ」
 耐えきれずに穂乃香がまた体を隠したので、辰美のひとり思いも寸断された。
「ま、わかった。じゃあ、そーだなー……、ん?」
「ん!」
「……おっけ、おっけ」
 真っ赤っかな穂乃香に後ろを指差されて、辰美はハイハイと部屋を出て、ドアを閉じた。
(……くそー。じゃあ、私のこの体つきも、“神様の配慮”なのかぁ?)


 ヤケクソ気味に、ドアの前にデンとあぐらで、辰美は座り込んだ。
 制服のスカートがシワになるとか、そんなコトに気の回る性格ではないのだ。
「じゃあ、まずー……ん?」
「んしょっと……」
 ドアの向こうで、それもドアのすぐ近く辺りで、穂乃香のオシリが、フローリングの床にペタンと鳴る音がした。
「なに、穂乃香。あんたも、ドアの前に座ったわけ?」
「うん……。だって、聞こえにくいから……」
 返事をしない辰美の顔は、ふーんと言っていた。
 ドア一枚へだてて、さっきのあのナイスバディが、恥ずかしそうに座ってるってワケか。
 妙な気分、である。
「……じゃあまず、胸を揉んでごらん」
「う、うん……! 痛!」
「あーコラコラ。強くやっちゃダメ。もっと微妙なタッチで、こう……」
「…………うん……」
「どお?」
「どぉって……揉んでるよ?」
「……それ、ただ真っ正面からつかんで、単純にモミモミしてるだけじゃないの?」
「ええ? だって、揉めって……」
「違うの。なんてーか、その……」
 言葉を選びそこねた辰美は、廊下に座ったままスゥッと腕をのばして、まるで背中から穂乃香の胸を揉むように、空中で手をワキワキさせた。
 それから、頭をバリボリと掻いた。
「あー、わからん。いいや、ちょっとドア開けるよー」
「だめぇ!」
 ドアノブがガチャガチャ鳴る。きっと向こうで、穂乃香が必死に開けられないようにしてるんだろう。
「待った待った。今度は少し開けるだけだから。私の手が入る程度にさ」
「手? 手を入れて……どうするの?」
「だからー。実際にこう揉むんだっての、説明するから」
「……! ちょちょ、ちょっとぉ! それって、私の胸で?」
「手を入れて空中でワキワキしたって、説明になんないだろーさ!」
「…………」
「じゃ、後はひとりで頑張って……」
「わかったからぁ! ううう~……」
 ツノどころか、今の辰美には、シッポまで生えていた(比喩)。


「きゃは! や、やぁん!」
 手探りだったため、最初は穂乃香のわき腹を探ってしまった辰美の手が、
「あ……!」
 どうにか、フニャラッとした感触を得ることに成功した。
(ええ乳や……)
 ドアにほっぺたを付けていた辰美は、思わず空いてる手で、自分の胸を触った。
(貧しい乳や……)
「ね、ねぇ?! それで、どう揉むのぉ?」
「お、おう。だから、こうして……」
 つかみ応えのある膨らみを、下からすくい上げるように、手の平で包み込む。
「ふぁ……っ!」
 指先ではなく、あくまでも手の平全体をすぼめるようにして、微妙に膨らみの形を変えてやる。
「んっ……」
 そして、それを繰り返す。
「んん……あ、はぁぁ……」
「……いい気持ちでしょぉー」
「うん……! わ、わかったから、あ、後は自分でやってみるから、ね?」
「……そっか。うん」
 エサを取りそこねたヘビみたいに、辰美の手がシュルシュルッと抜けると、ドアはパタリと閉じてしまった。
「えっと……下から……うん」
「…………」
「手の平で……あ、ああ……」
「…………」
 やってるんだろうなぁというドアの向こうの声を耳に、辰美は揉んでいた手を、ジッと見つめた。
(こりゃまた……)
 まだ、穂乃香の温もりが残っている。スベスベでヤワヤワな感触が、ジンワリと残っている。
「…………」
 思わず、本当に思わず、その手に鼻をよせて、クンクンする前に、我に返る。
(ア、アホか。匂い嗅いでどーするよ、匂い嗅いで)
「ん……んん……ふぁ……」
「…………」
 ドアの向こうの、元がかわいいだけに、ますます色っぽい声。
 辰美は、手の匂いを嗅いでいた。
 かすかに、穂乃香の体臭を感じた。緊張で、発汗していたのだろう。
「……穂乃香ぁ。どぉ?」
「うん……。なんか……ポォッとするぅ……」
「乳首、立ってない?」
「え……? あ、ホ、ホントだぁ……ええ……?!」
「いいのいいの、それで。触ってみた?」
「ううん……」
「触ってごらん?」
「…………きゃん!」

 ゴンッ!

「わっ!」
 辰美は驚いた。ドアの向こうから、何かがぶつかる音がしたからだ。
「ど、どーしたの、穂乃香!」
「……頭ぶつけたぁ……痛いよぉ……」
「…………プッ!」
 きっとそうだ。穂乃香のヤツ、ドアを背にして座ってて、あまりの衝撃にのけ反って、それで後頭部を。
 そう思うと、ちょっと気の毒だからおおっぴらには笑えないものの、辰美の震えは、なかなか止まらなかった。
「ううう~……笑ってるんでしょぉ、辰美ぃ。ひどいよぉ……」
「ごめんごめん。その状態の乳首って、すごく感じやすいから……ププッ……気をつけなよ……プッ」
「遅いもんっ……」


 それから気を持ち直したのか、穂乃香から、また艶っぽい声が出始めた。
「ふぅ……んっ、ぁあ……、うっ」
「…………」
 辰美は、ポーッとなっていた。
(私も……彼との時……こんな声出して……るんだろうなー)
「はぁ、ぁ、あぁ……」
(いや、こんなにかわいい声じゃないだろーけどさー)
 自然と、彼の下になっている自分の姿を想像してしまう。
 好き勝手に体をいじられて、それなのに拒絶どころか、悦びの声をあげて。
「……あんっ!」
「!!」
 ドアの向こうからした、甘ったるい悲鳴に、辰美はギクッとした。
 自分の想像と、オーバーラップしたからだ。
 ドキドキドキドキ……。
「穂乃香ぁ。気持ちいいかい?」
「え? う、うん……。とってもぉ……」
 いつもに増して、トロッと煮込まれたような、穂乃香の返事。
「頭の中がビリビリってしてぇ……甘酸っぱくてぇ……」
「ふーん……」
「あぁん……気持ちいいよぉ……」
「…………」
 いよいよ。
 辰美の背中に、コウモリみたいな羽が現れ、パタパタと羽ばたきだした(比喩)。
「もっと気持ちいい場所も、触ってごらん」
「え……?」
「そこに触ると、胸なんか全然およびじゃない、体中がシビれるほど、自分の体が浮いてしまいそうなほど、そりゃもう……何ていうか、もンのすごく気持ちよくなるんだなー」
「…………」
 コクンッと、穂乃香のノドが鳴ったのが、聞こえたような気がした。
「これ以上の? ……どこぉ?」
「アソコ」
「あそこって?」
 ヒソヒソヒソ。
「え? ええ? えええ~っ?!」
「いやホントに」
「だ、だって、だってぇ……汚いよ、そんな、オシッコ出るトコなんて……」
「ふーん」
「それに、大事なトコなんだよ? そんなコトしたら……」
 イジ悪い、小悪魔の笑顔で、辰美はドアの向こうに言った。
「後で手を洗えばいいじゃない。それに、なにもひっかき回せって言ってんじゃないんだし」
「でも……ダメだよぉ……」
「最高だよぉ。アソコを中心に、熱くてシビれる何かが、体中にジュワーッて広がる感じで……」
「…………」
「もうね、何も考えれなくなっちゃう。荒い波にもまれるみたいに、気が遠くなるほど……」
「そんなに……?」
 ためらう時間は、三秒で足りた。
「じゃあ……ちょっとだけ……」
「そうそう。イヤなら、やめればいーし」
「うん……」
 そして辰美は、ドアの向こうの声を待った。
 用足しの後で紙で拭く以外、触ったことがないであろう場所。
 そこを初めて触った、その瞬間の声を。

「………………うンッ!」

(うひゃあ……)
 想像以上の、かわいくてせつなくて、そこら中の物をブチ壊したくなるような声だった。
「す、すごいぃ……。こ、怖いよ辰美ぃ。こんなに……こんなにぃ?」
「でっしょー。大丈夫だから、もっと触って、こすってみな?」
「……あ! あぅっ! んっ! ふあっ!」
 ドアからは、そんな甘美な声に混じって、背中とドアの間でこすられている、穂乃香の黒髪の乾いた音が聞こえていた。
 もう、体の抑えが効かなくなっているのだろう。
「な? めちゃくちゃ気持ちいいだろ? もっとも、男に触られたら、さらに……」
「あん! あん! いい! いいのぉ!」
「……穂乃香」
「んうぅ! うっ! あ、あ、あ!」
 返事もできないほど、らしい。
(あの穂乃香が……イヤらしいなぁ……)
 そんな無責任なことを思いながら。
 辰美は膝立ちになって、そっとドアに耳を重ねた。
「あは……、んっ………………ひゃうっ!?」

 ゴンッ!

「うわぁ!」
 またも、ドアの向こうから、何かがぶつかる音がしたのだ。
 ノゾキがバレたみたいな気分で、少し慌てた辰美だが、じきにニヤッと笑みを浮かべる。
「穂乃香。あんた、クリトリスに触ったね?」
「…………栗とリス?」
「発音が違う。今あんたが触った、小豆くらいの大きさの、固い部分の名前だよ」
「あ、小豆? …………うあっ!」

 ゴンッ!

「あんたねぇ……」
 どうやら、小豆くらいの大きさという辰美の言葉を、触って確かめようとしたらしい。
「痛いよぉ……」
「最初のうちは、あんまりソコに触れないほうがいいぞ? 感度よすぎるから」
 彼に吸われた時なんて、失禁しかけた。そう言いかけた矢先、
「あ、あれぇ……私、オシッコなんて漏らしてないのにぃ……」
 困り果てたような穂乃香の声がした。またもギョッとしかけた辰美だったが、
「ああ、ソレ。心配ない。自動的に出てくるモンで、汚かないから」
 ニマーッと笑った。
「だってホレ、オシッコは、そんなにヌルヌルしないだろ?」
「うん…………わ、糸ひいてるぅ……」
「…………」
 辰美は、ポォーッとなる頭を二、三度振ってから、熱っぽい声で言った。
「続けなよ。なるべくクリトリスに触らないように、それから指が深く入らないように……」
「う、うん…………あっ! あはぁっ! あん! ああっ……!」


 それからしばらく、穂乃香の喘ぎ声は、休まず続いた。
 問題は、喘ぎの隙間から漏れ出ている言葉だ。
「あぅん……辰美ぃ……あ、あん! 辰美ぃぃ……」
 それは、あまりの快感故に怯える穂乃香が、親友にすがりつくような思いでの言葉だった。
 だが、当の辰美にとっては、たまったものではない。
 そりゃ穂乃香はかわいい。女の私だって、かわいいと思うし、そんな彼女と親友なのは嬉しい。
 しかし私は、すでに体を許しているほどの彼がいる。やや早熟だが、れっきとした女だ。
 いたってノーマルなのだ。
 間違っても、女同士の世界に憧れる、アブノーマルではない。
「辰美ぃ……あぁあ……」
 ついに、辰美の口から、キバが生えた(比喩)。
 ま、いいか。穂乃香、かわいいし。
「穂乃香ぁ。イク、って解る?」
「あっ! んふぅ……。ん! んん!」
 予想どおり、返事をする余裕なんてないらしい。
 構わず、辰美は言葉を続けた。
「イクって、気持ちよさがピークに達して、何もかもが真っ白になる瞬間なんだ」
「ふぁ! あ、あは……、あああ!」
「でもさー。ひとりでやって、ひとりでイクと、その後が何かさびしいんだよねー」
「あん! あ! あふ! んぅぅ!」
「だからさー……」
 ドアノブを、クイッと緩めるだけでよかった。
 それで、寄りかかっていた穂乃香の重みで、ドアはあっさりと全開になった。
「わ、きゃあ!」
 もちろん、そのはずみで、穂乃香も後ろ向きに倒れる。
 それを、辰美が受け止めた。
「た、辰美ぃ……やだぁ……」
 体に力が入らないのだろう。素っ裸の穂乃香は、足を開いたまま、そこに手を重ねたままだった。
 独特の淫臭にゾクゾクしながら、辰美は言った。
「だから、私がイカせてやる」
「だ、だからって、何?」
 素早かった。
 穂乃香の背中を、膝まくらに乗せて。
 邪魔な手を払うようにどかせて。
 一瞬にして、穂乃香のをポイントした。
「いやぁぁ!」
「ほら」
 辰美は、そのヌルヌルにまかせて、激しく穂乃香をこすった。
「あああっ! だ、だめ! あう! あうう!」
「胸もサービスだ」
「きゃい! つ、つまんじゃダメぇ! ああ、ああーっ!」
「ほら、ほら。イクっての、わからせてやる」
「ああ! イクって? イクって? あん、あん!」
「すぐ解る。ほら、ほら!」
「わかんない、あ、わかんないよ、あん!」
「早く、イク顔を見せな! 親友の私に、思いっきり恥ずかしい顔を!」
「やぁ! やだぁ! ああっ!」
 必死の思いで、片手で顔を隠す穂乃香。
「ほらほら~! もうスグだぞぉー!」
「いや、ああ、あ! ま、待って! 待ってぇ! おかしいの! 体がぁ!」
「来たなぁ! ほら! ほらぁ!」
「これなの?! これが、ああ! これがイクなのぉ?! あ、あ、あ……」

 そして、もうほとんど、金切り声になった。

「イクゥッ!」



 辰美は、穂乃香のヒクヒクしている場所を、ティッシュで優しく拭き取った。
 それから、スッと立ち上がると、何やらゴソゴソ始めた。
「……辰美? ……え?」
「穂乃香……」
 裸になった辰美が、穂乃香に覆いかぶさった。
「今度は、私の番……」
「……辰美も、イクになりたいの?」
「ああ。それも、彼にでもない。もちろん、ひとりでもない……」
「…………」
 熱い口づけの後、辰美は言った。
「穂乃香の手で、イクってなりたいんだ……」


 親友が高じ、想いのドアを開け放って、より深い仲となる。
 たぶん、よくある話なんだと思う。


おしまい



【後書き】

たしかに、よくある話だよなぁ(^^;)。ウブなコにオナニー教えて、それがレズに発展するって。
そりゃもう太古の昔から。ロリというジャンルが誕生した時から。

それでも構いません。題材の新鮮味は問いません。
あくまでも、「まげが書くとこうなる」というのを、表現してみたかったのですから。
その上で、楽しんでもらえる内容にしたつもりですから。

…とは言えなぁ(^^;)。直球すぎて、逆に恥ずかしいよ(^^;)。
何でしょうね。ふと、女の子のひとりエッチを書きたくて、しょうがなかったんですよ。
(イヤな衝動だな…)
女の子にとっては、情けないだけの、絶対見られたくない姿なんでしょうねぇ。
ま、それ故に、なんですが(^^)。

小説(転載)  遠くにありて

近親相姦小説
03 /30 2019
遠くにありて

「なーに? 純(ジュン)?」
 夕食どき。高校二年生の少女・亜裕美(アユミ)は、食卓をはさんだ向いに座っていた弟の視線に気づいて顔をあげ、首をキョトンと傾けた。
「なんかマズいオカズがあった?」
 両親が、急用で泊まりがけの外出をしているため、食事は亜裕美が作ったのだ。
「い、いや。うまいよ」
「そお?」
「うん。この肉ジャガなんか、味がしみてて、なかなか」
「どーぉも」
 ワザとていねいに頭を下げる姉に、中学二年生の純はニガ笑いした。
 彼が亜裕美を見つめていたのは、決してオカズに文句があるからではなかった。
『お前の姉さんって、すっげー美人だよなー!』
 昼間かわした、友人達との会話が、ふと純の頭によぎった。
『ほんとか、おい?』
『ああ。前にこいつン家遊びに行った時に見たんだ。なんていうか、柔らかい美人ってゆーのか? 美人なんだけどツンツンしてないし、かわいーんだ!』
『なんだよ、純。よくも隠してたな』
 純は再び姉を、今度はチラッと見ながら、その時の返事を思いだしていた。
『わざわざ言うことじゃねーだろー? それに、そんなに美人かねー』
「ふー、ごちそーさまっと」
 亜裕美が箸を置く音で、純は現実に戻った。
「ん? なに純、まだ食べてんの? めずらしいね」
 いつも私より十分は早く食べ終わるクセに、とつぶやきながら、亜裕美は食器を流し台に置いた。
「まあいーか。食べ終わったら、食器を流しに置いといてよ」
「んー」
「じゃー、私おフロに入るから」
「! ……」
 純は、思わず赤面してしまった。友人の発言が、彼をヘンに意識させていたのだ。
「……なあ、姉ちゃん」
「え?」
 またもキョトンとした顔で振り向いた姉は、確かに美人だった。
 友人が形容するように、清潔そうで、柔らかそうな。
「姉ちゃんって、モテるか?」
「はあ?!」
 何を突然、と顔に描き出しながら、亜裕美はやがて余裕っぽい笑みを浮かべた。
「かもね。純よりはマシな程度かなー」
「あーそーですかーだ」
 ふくれ面の純を後に、亜裕美はリビングを出ていった。


 深夜。
 姉の後に風呂に入ってから今まで、純の体は甘酸っぱくシビれたままだった。
 裸の姉がいた空間、裸の姉が座った風呂いす、裸の姉が入浴した湯舟……。
 一瞬でも油断すると、そんな気持ちが込み上げ、慌てて首を振ってまぎらわす。
 こうして自分の部屋で、机に向かってラジオを聞いていても、彼は心は全然落ち着いていなかった。
(姉ちゃん、か……)
『じゅんー?』
 ノックと同時の亜裕美の声に、純は危なくいすから落ちるところだった。
「あ、な、なに?!」
「入るよー」
 入ってきた姉は、赤が基本色のゆったりした、前ボタン式のパジャマ姿だった。
「!」
 普段から見慣れているはずの姿。それが今夜は、ヤケにかわいいと感じてしまう。
 思わず凝視しそうになる視線を無理矢理はずして、純は言った。
「なんだよ?」
「んー、別に、なんだけどさ……」
 亜裕美は純のベッドに腰掛けた。ベッドのきしむ音が、純にも聞こえた。
「……ねえ。純って、彼女いないの?」
「ぶ! な、なんだよー」
「あんたから聞いてきたことじゃない、先に」
「う……。い、いねーよ」
 バツの悪そうな弟の顔に、亜裕美はふわっと微笑んだ。
「まあ、まだ中学生だしね。焦ることないんじゃない?」
「別に焦ってねーって」
「ははっ。ごめんごめん」
 亜裕美はスッと立ち、部屋のドアを開けた。そして、ポツリとだけ残して去った。
「私もいないよ、彼」


 亜裕美がふいに入ってきたように、純が姉の部屋に入ったのは、それから間もなくだった。しかし、姉のようにノックはしなかった。
「ちょ、ちょっと! ノックくらいしなさいよ!」
 ベッドで仰向けになって漫画を読んでいた亜裕美は、ガバッと起き上がった。
 白熱球の電気スタンドがついていただけだったので、亜裕美からは純の表情、その血走った目が、逆光で見えなかった。
「……どうしたの? 純」
 呼吸も荒く、純は言った。
「もう、もう俺……」
 そして彼は、ズカズカと部屋を横断し、ベッド上の姉に突進した。
「な……、わっ!」
 力一杯抱きしめられた亜裕美は、それでもそこまでは、姉弟のじゃれ合い程度に思ったのか、大きな抵抗はしなかった。
 一方の純は、それを承諾ととらえてしまった。
 純の左手が、迷わず亜裕美の右のふくらみをつかんだ。
「きゃ! ちょ、ちょっと!」
 遅すぎる抵抗が、彼をさらに駆り立てた。
 胸の柔らかさを堪能しながら亜裕美の背後に回り込み、その首筋をなめた。
「んっ! こ…こら! だめ、だってば!」
「姉ちゃん……!」
 純の唇が、亜裕美の耳や首の付け根をむさぼる。そのたびに姉の体がビクンッと反応し、彼はさらにその反応を求めた。
 左手は、亜裕美のふくらみをつかんだまま離れていない。いくら姉が抵抗しようと、二、三の年齢差の男女なら、やはり男の力のほうが強いのだ。
 ついには両のふくらみを捕まえ、上下に動かすように揉みほぐした。
「やあっ! やあぁ! やめ、てっ!」
 姉がイヤがればイヤがるほど、純の性欲が膨らんでいった。
 もっとイヤがるところを。
 もっと体がビクンとなるところを。
 純は、もがくことに夢中で、無防備になっている亜裕美の股間に右手を伸ばした。
「ふあ! そ、そこは……!」
 パジャマのズボン越しに、指先でグイグイとこねると、望み通り、姉の体が、まるで電気でも流されたように反り返った。
「あぅん! だめぇ! やあぁ!」
 純はひたすら首筋をなめ、右乳房を揉み、そこをこねる動作を続けた。
「や……、はぁ……、ん……、だ、だめぇ……」
 姉の抵抗が、にわかに弱くなった。抑える手からも、力が抜けていく。
 すかさず、純は亜裕美をベッドに押し倒し、その顔に自分の顔を近付けた。
 鼻と鼻が接触した。
「やめ……な、さい……」
「姉ちゃん、処女なのか?」
 亜裕美はギュッと目を閉じて、横を向いた。
「……そうよぉ……。だからもうやめてよぉ……」
 純は、姉の顔をグイッと自分に向け、唇をねじ込むようなキスをした。
「む、むんんーっ!」
 亜裕美は純の肩に手をかけて押したが、意味のない抵抗にすぎなかった。
 そして彼女は、フッと両手の力を抜いて、広げるようにパタッと倒した。
 純が唇を離すと、亜裕美のその表情には、観念の色が浮かんでいた。
 そんな彼女をいじめるように、純はまたいきなり、彼女の秘部をまさぐった。
「ううぅっ!」
 ギュッと閉じている亜裕美の足のすきまに、純の右手が無理矢理入り込む。
 未体験の感触に、ひざをよじって、両手でシーツをつかんで、亜裕美は耐えた。
「……?」
 無抵抗の姉が不思議になり、純は手を止めた。もう二人とも、肩で息をしている。
 亜裕美は、真っ赤になった顔を横に向けている。涙が、うっすらとにじんでいた。
 その表情を見ながら、純は姉がはいているパジャマのズボンに手をかけた。
 そして、スルッと降ろした。
 白に近いピンクの生地に、片側にだけ赤く小さなリボンのイラストがプリントされたパンティと、透きとおるような白い肌の太ももが、そこに現れた。
 ひざまで降ろされた赤いパジャマとの対照が、たまらなくイヤらしかった。
 しかし姉は、まったく抵抗しなかった。細かく震えるだけだった。
「い、いいのかよ?」
 いまさらながらの罪悪感から、純はそう聞いた。
 答える亜裕美は、目を閉じ、横を向いたままだった。
「……愛してないなら……」
「!?」
 純は一気に混乱した。乱暴を認められたこと、認めた理由が愛のないこと。
 混乱が、白い肌の魔力を強め、純の心を抑えていた何かを弾き飛ばした。
 再び亜裕美の唇を、さらに胸の谷間を、純はメチャクチャにむさぼった。
「ん、んんっ!」
 今度は左手が、パンティ越しにその部分をいじり始めた。なぞるように、左右に広げるように。
「ああっ! はぅ、くぅん!」
 亜裕美の肩にアゴをのせていた純の耳に、姉の生々しい声が吐息まじりにかかる。
 中指と人差し指で強引に押し込むと、やがてパンティのそこが湿りはじめた。
 まだ脱がせていないパジャマの上着のすそから手を入れて、右の乳房を揉んだ。
「ふうぅ……っ!」
 左手の湿り気、右手のすべるような柔らかさに、純は恍惚となった。
 ガバッと亜裕美の下半身に行き、パンティをつかんで、脱ぎかけだったパジャマのズボンもろとも、一気に奪った。
「やぁぁ……」
 突然さらされた恥ずかしさに、亜裕美はまたひざをよじった。
 純は無情にも、その両ひざの裏を持って、左右に大きく開いた。愛撫によってかすかに開き、自らの湿り気で光るそれが、容赦なく弟に見られている。
「やだぁ……、やだよぅ……」
 幼い子がイヤイヤをするように、亜裕美は顔を手でかくして、首を振った。
「姉ちゃんの……」
 純は犬のように舌を出し、亜裕美の足と足の間に顔をうずめた。
「はぁあっ! やぁぁ……ぁ」
 そして犬が餌をむさぼるように、純は音をたてて姉のそれをなめ回した。イヤらしい音が響き、亜裕美のそこと耳を同時に責めたてた。
「だめぇぇ……。あ、ああ! んんっ!」
 独特の匂いと石けんの匂いが混じって、それは不思議な味だった。
 両頬には、汗に濡れたふとももの、しっとりした感触が貼り付いている。
 顔全体を動かすようにして、純はそれらを心から楽しみ、求め続けた。
「あん! あ、あ、あ!」
 ふり乱れた髪が亜裕美の顔にかかり、そのすきまから桃色の頬が見えていた。
「ああぁ……、あ、あぁん!」
 亜裕美の腰が、まるで自ら弟にそこを差しだすかのように、軽く浮いた。
 純は、ふいに口を離し、淫らに濡れたそこを見た。小刻みにけいれんしていた。
「あぁ……、はぁ……、……きゃ!」
 ビクッとする亜裕美の両ひざを閉じ、その裏を片腕で抑えながら、足を彼女の胸元に倒すと、オシメをとりかえる時のような格好になった。
 そこも、そこからこぼれた露で光る別の恥ずかしい部分も、丸見えになった。
 純の狙いは、その別のほう、だった。
「じゅ、純まさか……、ちょっと」
 戸惑う姉を無視して、純は人差し指でそこに触れた。新鮮な感触だった。
「いやあ! だめだめ! そ、そこは、そこはぁ!」
 亜裕美は哀願した。が、それは純をより興奮させる声にすぎなかった。
 それでも彼女は、手や足を激しく動かして抵抗したため、さすがに純も片手では抑えきれなくなった。両手で抑えては何も出来ない。
「くそ!」
 純は、亜裕美のパジャマの上着をすそからめくって、途中まで脱がせた。
 乳房から上がパジャマで覆われ、結果、彼女の両腕の自由を奪うことになった。
「や! ちょ、やだ! やだあぁ!」
 さらに暴れる足が、右足は純の左足で、右足は純の右脇の下で、完全に抑えられた。
 もう、亜裕美がいくら抵抗しようともビクともせず、そこが無防備のままだった。
「あぁ……、ゆるして、純、ねえぇぇ」
 パジャマにふさがれてこもる声に構わず、純は姉のイヤがった場所を責めた。
「んんー! だめぇっ! やぁぁ!」
 親指をグリグリ押しつけたり、人差し指と中指で広げたり、やり放題だ。
 その度に亜裕美が、せつなく、哀しく、それでいて艶のある声で鳴いた。
 と、姉の声が、急に切羽詰まったものになった。
「あ、ああ! は、はなして純! も、も……」
 が、純は姉をいじくることをやめない。
 人差し指で、前のそこの突起をめくりあげた。
「あうっ! う、も、もれちゃうぅ! お願いぃ!」
 亜裕美は、上半身を必死でゆらした。ふくらみが波をうった。
 純は、ピクピクと動くそこの壁を、なぞるようにもてあそんで、言った。
「ここからか?! ここからだろ! だせよ、だしちゃえよ!」
「そ、そんなっ、ああ! いや、いや、いやぁぁっ!」
 人差し指が、前と後ろの間の肌を、はうようにこすった。
 その動きと同調して、亜裕美の体がビクビクーッと震えた。
 さらに右へ左へと後ろのそこをいじると、姉の悲鳴が大きくなった。
「あああっ! ああっ! あ、あ、ああーん!」
「ほら、ほら、ほら!」
「ひぅ! いや! いやぁ!」
 あまりのもがきに、パジャマのボタンが外れ、亜裕美の両手が自由になった。
 が、純を抑えようとした時、彼は後ろのそこに、人差し指を深く押し込んだ。
「ほらぁ!」
「っ!!」
 その、ひどすぎる衝撃と感触に、彼女の全身はつっぱり、反り上がった。
 そして。
「あああぁぁぁ……」
 亜裕美から、音をたてて、きらめくものがこぼれだした。
 熱い液体は、ゆるやかなカーブを描いて、抑え込んでいた純にかかった。
 それは、完全に出つくすまで、出している彼女自身にも、どうにもならなかった。
「見ないでぇぇ……」
 亜裕美には、そう哀願するしか手がなかった。
 もちろん純は、最後の一滴まで見逃さなかった。
 それどころか、出し終わったそこに舌をねじ込み、まんべんなくなめた。
 もう亜裕美には、抵抗する力が残っていなかった。
 ただ純がやめてくれることを、涙を流して待つだけだった。
 やがて純はなめるのをやめ、ティッシュでそこをていねいにふいてあげた。
 それから姉を抱え上げ、濡れた布団をよけてから、もう一度姉を寝かせてあげた。
 パンティをはかせ、パジャマのズボンをはかせ、はだけた前を抑えてあげた。

「…………」
 後は黙り込むだけだった純に、亜裕美は、納まりきってない息の中で言った。
「も一度聞くけど、私を、姉を愛したわけじゃないんでしょ?」
「え……、あ、愛、は……」
「女を知りたくなっただけでしょ?」
「…………うん」
 事実を言えば、姉の様な美人のを、であったが。
「そうだと、思う……」
「ん。だったら……」
 亜裕美は、ちょっとモジモジしながら続けた。
「たまには……、いいんじゃない?」
「ね、姉ちゃん?!」
「最後までしなければ、実害? そーゆーのがないし、さ」
「……ありがとう、姉ちゃん」
「でも」
 ベッドから降りて、亜裕美は言った。
「次は、ちゃんとトイレに行かせてよね。後がたいへんだし」
「ご、ごめん」
「じゃ」
「?」
 枕を持って部屋を出ていく亜裕美に、純はキョトンとして声をかけた。
「どこ行くの?」
「あんたの部屋で寝るのよ。ここじゃ寝れなくなっちゃったし」
「……俺は?」
「掃除と洗濯。あんたのせいなんだからね」
 姉の姿が、ドアの向こうに消えた。
 布団と、自分のズボンとシャツについたシミを見つめて、純はつぶやいた。
「どんなに美人でも、しょせん姉は姉、だなぁ」

 ――美人とは 遠くにありて 想うもの


おしまい



【後書き】

 と、これで読み切りにするつもりだったんですよ。最初は(^^;)。
 まさか、この後三作までひっぱり、あまつさえ現在でも影響が残るとは。
 裏の代表作、とでも呼びましょうか(^^;)。

 どんなもんなんでしょうね? 姉弟とか兄妹とかって。(うちは兄弟だから)
 姉のいるやつに読ませたら、鼻で笑われたんですが(;;)。

eroerojiji

小さい頃からエロいことが好き。そのまま大人になってしまったエロジジイです。