小説(転載) 雨宿り -比呂と由紀-
官能小説
年上の女性には強い憧れがあるものだ。
比呂は学校が終わるといつもその古びた本屋にいた。
とくに何かの本を買うわけでもなく、マンガのコーナーや参考書のコーナーなどを
行ったり来たりしている。
比呂はクラスのなかでも背が低い方で、下手をすると小学校1,2年に間違われる
こともあり、それを理由によくいじめられた。
この本屋は嫌な学校から抜け出せる心のオアシスのようなところだった。
「ありがとうございました。」
透き通るような細い声で女性店員が会社帰りのサラリーマンに一礼した。
声だけでなく、顔も色白で背中まで伸びたロングヘアーが魅力的だった。
年の頃は18,9ぐらいで、物静かな印象を受けた。
女性の名は由紀という。
古びた本屋のため他には店員はなく、また前まで店番だったおばあさんが引退して
しまったので、由紀がひとりできりもりしている。
比呂の目的は由紀だということは言うまでもない。
何時間も狭い店内を行ったり来たり、しかもそれが毎日となると否応なく分かって
しまう。
でも小学4、5年生の少年だし、恐いことはなく、由紀は逆にそれがかわいくて内
心はおもしろがっていた。
「あ、あの、これ、おねがいします。」
震える声と手で比呂はまったく読む気がない参考書をレジに持ってきた。
「はい。1,500円になります。」
比呂は少しでも由紀に近づき、話をしたかった。
それが店員と客との事務的なやりとりでも、比呂には嬉しかった。
案の定、比呂の家には読む予定のない本が山積みになってはいたが。
ある雨の日、比呂は傘を忘れて帰り道を濡れながら帰っていた。
本屋に寄るのはどうしようかと迷っていたが、本屋で時間をつぶせばこの雨もやむ
だろうと思い、寄っていくことにした。
「あら、どうしたの?びしょぬれじゃない。傘は持ってなかったの?」
店に入るなり由紀が比呂を気遣い、レジから出て比呂に近寄って屈み、比呂の目線
で話した。
事務的以外の会話をしたことのない比呂は驚いて動揺していた。
「あ、いや、その……。雨がやむまでここで雨宿……くしゅん!」
事情を説明しようとした比呂だったが、予想以上に雨に濡れてしまい、くしゃみを
してしまった。
「このままじゃ風邪をひいちゃうね。バスタオル持ってくるから待っててね。」
そう言うと、由紀は店のシャッターをがらがらと音を立てて降ろした。
「この雨じゃお客さんもこないしね。」
「いいの?」
「だって、君お得意様だもん。」
由紀が比呂の鼻の頭をつんとついた。
住居になっている暖房のきいた2階で、比呂は上半身裸でバスタオルで体を拭きな
がら由紀と話していた。
さすがに半ズボンを脱いでブリーフ姿を由紀に見られるのは恥ずかしかった。
「そう、小学4年生で比呂君っていうのね。わたしは18才。高校を出て働いてるの。」
比呂は髪の毛をぐしゃぐしゃと拭いている。
「どうして比呂君は毎日うちにきてくれるの?」
それはもう由紀には分かりきった質問だった。
「えっと……、それは……。」
答えに戸惑っている比呂に由紀は近づき、バスタオルを手にとって比呂の頭を優し
く拭いてやった。
「ずばり、わたしに会いたいからでしょ。」
由紀は比呂の耳元で少し冗談交じりに言ったが、比呂はバスタオルのなかで固くな
っていた。
「やっぱりね。でもわたしも比呂君のこと好きだな。」
どきりとまわりに聞こえるぐらい比呂の心臓が鼓動を打った。
ふと由紀は比呂の体に触れた。
「やだ、こんなに冷たくなってるじゃない。」
由紀はそれが当たり前かのように服を脱ぎだし、あっという間に下着姿になった。
比呂はそれを直視できずうつむいてしまった。
「さ、比呂君も下着だけになって。」
いったい何が始まるのか分からない比呂は、どきどきしながら半ズボンを脱いだ。
それにしても体が寒い、自分で触れてみても体の冷たさが分かった。
「じゃあ、こっちに来て。」
由紀は、おそらく彼女のものであろうベットに比呂を誘った。
「うん……。」
すると比呂を先に寝かせ、由紀もあとから布団に入り、由紀は比呂を抱きしめた。
「あったかい。」
つい心境を口に出してしまう比呂。
由紀の体は柔らかくて暖かく、はっきりと女性であることが分かるぐらいだった。
由紀は比呂の背中を抱きしめるように包んでいるため、比呂はお母さんにでも抱か
れているような感じがした。
さらに由紀の右手は比呂の胸を弧を描いて撫でたので、比呂の体には電気が走った
ような感じがした。
由紀の左手は比呂の頭をかかえて、由紀は比呂に顔を近づけた。
ふわっとシャンプーの香りがして、比呂には大人のおねえさんって感じがした。
無論、これは冷えきった比呂の体温をあげるためだが、それに気が付くのに比呂に
は少し時間が掛かった。
この状況に驚いて口が半開きになっている比呂だった。
由紀は比呂に近づき、その半開きになった唇に自らの唇を重ねた。
次々と起こる出来事に頭の処理が追いついていない比呂だったが、ようやく自分と
憧れの由紀さんとキスをしていることに気が付き、耳たぶまで真っ赤になっていた。
「はい、おしまい。」
由紀がぽんと比呂の肩を叩くと、比呂の体はすっかりあったかくなっていた。
それでも比呂はしばらく放心状態のままだったが。
「そんなに赤くなっちゃって、もう、かわいい。」
由紀はもう一度比呂の頬に軽くキスをすると、自分はさっさと服を着て、濡れた服
を乾燥器で乾かすため浴室の方に歩いていった。
それからも比呂はその本屋を毎日訪れた。
比呂が由紀に目をやると、由紀はそれを笑顔で返した。
比呂は照れたように奥のコーナーに逃げてしまうのだが、それでもちらちらと由紀
を見ていた。
雨が降った日は必ず濡れて帰り、その本屋で雨宿りするのが比呂の「決まりごと」
になっていた。
おわり
比呂は学校が終わるといつもその古びた本屋にいた。
とくに何かの本を買うわけでもなく、マンガのコーナーや参考書のコーナーなどを
行ったり来たりしている。
比呂はクラスのなかでも背が低い方で、下手をすると小学校1,2年に間違われる
こともあり、それを理由によくいじめられた。
この本屋は嫌な学校から抜け出せる心のオアシスのようなところだった。
「ありがとうございました。」
透き通るような細い声で女性店員が会社帰りのサラリーマンに一礼した。
声だけでなく、顔も色白で背中まで伸びたロングヘアーが魅力的だった。
年の頃は18,9ぐらいで、物静かな印象を受けた。
女性の名は由紀という。
古びた本屋のため他には店員はなく、また前まで店番だったおばあさんが引退して
しまったので、由紀がひとりできりもりしている。
比呂の目的は由紀だということは言うまでもない。
何時間も狭い店内を行ったり来たり、しかもそれが毎日となると否応なく分かって
しまう。
でも小学4、5年生の少年だし、恐いことはなく、由紀は逆にそれがかわいくて内
心はおもしろがっていた。
「あ、あの、これ、おねがいします。」
震える声と手で比呂はまったく読む気がない参考書をレジに持ってきた。
「はい。1,500円になります。」
比呂は少しでも由紀に近づき、話をしたかった。
それが店員と客との事務的なやりとりでも、比呂には嬉しかった。
案の定、比呂の家には読む予定のない本が山積みになってはいたが。
ある雨の日、比呂は傘を忘れて帰り道を濡れながら帰っていた。
本屋に寄るのはどうしようかと迷っていたが、本屋で時間をつぶせばこの雨もやむ
だろうと思い、寄っていくことにした。
「あら、どうしたの?びしょぬれじゃない。傘は持ってなかったの?」
店に入るなり由紀が比呂を気遣い、レジから出て比呂に近寄って屈み、比呂の目線
で話した。
事務的以外の会話をしたことのない比呂は驚いて動揺していた。
「あ、いや、その……。雨がやむまでここで雨宿……くしゅん!」
事情を説明しようとした比呂だったが、予想以上に雨に濡れてしまい、くしゃみを
してしまった。
「このままじゃ風邪をひいちゃうね。バスタオル持ってくるから待っててね。」
そう言うと、由紀は店のシャッターをがらがらと音を立てて降ろした。
「この雨じゃお客さんもこないしね。」
「いいの?」
「だって、君お得意様だもん。」
由紀が比呂の鼻の頭をつんとついた。
住居になっている暖房のきいた2階で、比呂は上半身裸でバスタオルで体を拭きな
がら由紀と話していた。
さすがに半ズボンを脱いでブリーフ姿を由紀に見られるのは恥ずかしかった。
「そう、小学4年生で比呂君っていうのね。わたしは18才。高校を出て働いてるの。」
比呂は髪の毛をぐしゃぐしゃと拭いている。
「どうして比呂君は毎日うちにきてくれるの?」
それはもう由紀には分かりきった質問だった。
「えっと……、それは……。」
答えに戸惑っている比呂に由紀は近づき、バスタオルを手にとって比呂の頭を優し
く拭いてやった。
「ずばり、わたしに会いたいからでしょ。」
由紀は比呂の耳元で少し冗談交じりに言ったが、比呂はバスタオルのなかで固くな
っていた。
「やっぱりね。でもわたしも比呂君のこと好きだな。」
どきりとまわりに聞こえるぐらい比呂の心臓が鼓動を打った。
ふと由紀は比呂の体に触れた。
「やだ、こんなに冷たくなってるじゃない。」
由紀はそれが当たり前かのように服を脱ぎだし、あっという間に下着姿になった。
比呂はそれを直視できずうつむいてしまった。
「さ、比呂君も下着だけになって。」
いったい何が始まるのか分からない比呂は、どきどきしながら半ズボンを脱いだ。
それにしても体が寒い、自分で触れてみても体の冷たさが分かった。
「じゃあ、こっちに来て。」
由紀は、おそらく彼女のものであろうベットに比呂を誘った。
「うん……。」
すると比呂を先に寝かせ、由紀もあとから布団に入り、由紀は比呂を抱きしめた。
「あったかい。」
つい心境を口に出してしまう比呂。
由紀の体は柔らかくて暖かく、はっきりと女性であることが分かるぐらいだった。
由紀は比呂の背中を抱きしめるように包んでいるため、比呂はお母さんにでも抱か
れているような感じがした。
さらに由紀の右手は比呂の胸を弧を描いて撫でたので、比呂の体には電気が走った
ような感じがした。
由紀の左手は比呂の頭をかかえて、由紀は比呂に顔を近づけた。
ふわっとシャンプーの香りがして、比呂には大人のおねえさんって感じがした。
無論、これは冷えきった比呂の体温をあげるためだが、それに気が付くのに比呂に
は少し時間が掛かった。
この状況に驚いて口が半開きになっている比呂だった。
由紀は比呂に近づき、その半開きになった唇に自らの唇を重ねた。
次々と起こる出来事に頭の処理が追いついていない比呂だったが、ようやく自分と
憧れの由紀さんとキスをしていることに気が付き、耳たぶまで真っ赤になっていた。
「はい、おしまい。」
由紀がぽんと比呂の肩を叩くと、比呂の体はすっかりあったかくなっていた。
それでも比呂はしばらく放心状態のままだったが。
「そんなに赤くなっちゃって、もう、かわいい。」
由紀はもう一度比呂の頬に軽くキスをすると、自分はさっさと服を着て、濡れた服
を乾燥器で乾かすため浴室の方に歩いていった。
それからも比呂はその本屋を毎日訪れた。
比呂が由紀に目をやると、由紀はそれを笑顔で返した。
比呂は照れたように奥のコーナーに逃げてしまうのだが、それでもちらちらと由紀
を見ていた。
雨が降った日は必ず濡れて帰り、その本屋で雨宿りするのが比呂の「決まりごと」
になっていた。
おわり
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