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小説(転載) 綾香とぼく 5/10

官能小説
08 /23 2015
第5章 喪失

 次の日、またその公園に行ってみた。息を弾ませてぼくは公園の階段を上がると、
いつものベンチで彼女達を待った。
「またあした。」
そのことばを頼りにぼくは待った。

 どれぐらい待っただろう。1時間は待った。もう時刻は4時を過ぎている。彼女
達は来ない。
どうしたんだろう。不安に包まれる。昨日、ブランコで泣かせてしまったことを怒
っているのだろうか。親にそのことを話して、ぼくと会うのを止められているのだ
ろうか。しかし、考えたところでなにも始まらなかった。
 彼女の名字と住んでいるだいたいの地域から、エンジェルラインを使って彼女の
住所、電話番号は割り出した。事前に彼女の住所も確認済みだ。彼女の家に行こう
か。電話を掛けてみようか。いやだめだ。もしぼくのことを彼女が嫌がっていたら、
それは苦痛でしかない。
 その日はぐるぐると考えたあげく、おとなしく帰ることにした。

 次の日、どうしても綾香に会いたくて、自分を止められず彼女の家の近くに行っ
た。ひっそりとした住宅街。自分の足音が妙に大きく聞こえる。彼女の家だ。白い
二階建ての一戸建て住宅は明かりは消え、じっと黙り込んでいた。
 少し離れた駐車場で、学校からの彼女の帰りを待つ。自分の姿を想像してぞっと
した。
 30分ぐらいしたときだ。彼女の家に誰か来た。遠くからなのでよく分からない
が、自転車に乗ったその娘は綾香ではないように見えた。しばらくすると、彼女の
家からひとりの少女が現れた。綾香?彼女はすでに家に帰っていたのだ。
 ふたりがこちらに向かって歩き出す。ぼくは立ち上がってふたりに近づいていっ
た。
「あ、立花さんだ。」
綾香がぼくに気がついた。
「やあ。」
ぼくはしらじらしくも手をあげて挨拶する。
もうひとりの自転車を押している娘は春菜だった。
「ねぇ、今日ぼくと遊ばない?」
綾香と春菜が顔を見合わせた。
「……今日はだめ。」
綾香が言う。
「どうしても?」
「……うん。」
綾香の態度がぼくに不安感を与えた。まるで親に会うのをやめろと言われたように、
ぼくに対してなにかつきあいにくそうな態度を示している。
(ひょっとして、もうだめかな……。)
そんな感情がこみ上げてきた。
「じゃあ、しょうがないね。ぼくは帰るよ。」
ぼくはふたりに分かれを告げると自宅に向かって歩きだした。
彼女達を振り返ってみる。ふたりの少女がぼくを見つめて、手を振っている。ぼく
もそれに答えた。まるで、本当の分かれのように。

 その夜、ぼくは自宅で泣いた。

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eroerojiji

小さい頃からエロいことが好き。そのまま大人になってしまったエロジジイです。