小説(転載) 南風が吹き抜けるとき
官能小説
HDDを整理してして発見、保存(ダウンロード)したままになっていた。読みやすい短編の作品だ。
「福島三歳新馬戦も大詰め、残り二百メートル。先頭を行きますのは、五番、ダイヤモンドアロー。二番手、サザンウィンドとの差をもう五、いや六馬身差と広げていきます。これは強い……」
歓声にまじってかすかに聞こえる場内アナウンスの声。確かに相手は強敵だが、まだ勝負は決まっちゃいない!
「いくぞ、サザンウィンド!」
気合いの声を上げ、強く鞭を入れようとした瞬間、僕の脳裏に一人の少女の姿、声が不意に浮かぶ。
(お兄ちゃん。馬はね、乗ってる人の心がわかるの。だから、騎手も馬の気持ちがわからないとだめなんだよ……馬と騎手の心が一つになってはじめて、最高の走りができるんだから)
「風子……そうか、そうだよな」
俺は一人で戦ってるつもりだった。でも、それは違う……
「サザンウィンド、お前も負けたくないだろ! 俺とお前と二人、いや風子と三人で、この勝負、なにがなんでも勝ってみせるんだ!」
俺の言葉に、サザンウィンドも体を奮わせて答えてくれる。大丈夫、こいつも気持ちは俺と同じ、風子のために走ってるんだ……
俺は、もう必要無くなった右手の鞭を投げ捨てていた。
* * *
「あーあ、かったるいよなあ……」
俺は背伸びをしてこわばった体をほぐす。それもそのはず、しゃがんだ無理な格好のまま、一時間も馬の手入れをさせられていたのだから。
「全く、ちょっとさぼったぐらいでこんな罰掃除をさせやがって……」
ぶつぶつ悪態をついてはみるものの、自分のせいだから仕方がない。全部終わらないと夕飯も食べさせてもらえないのだから、さっさと終わらせようとまた仕事に戻ろうとしたその時……
「あれ、あの子は……?」
厩舎の入り口の、一人の女の子に目が止まった。夕日にはえる白いワンピース、そよ風におかっぱの髪がさらさら揺れる少女の可憐な姿に、思わず見入ってしまった自分に気づいて、あわてて目をそらす。
(でも、なんで女の子が、競馬学校にいるんだ? 近くの子なのかな……)
そう不思議に思っていると、その少女はタッタッと近づいてきて、
「おにいちゃん、なにしてるの?」
と首をちょっとかしげて問いかけてくる。俺は、内心気まずい思いを隠しながら答えた。
「えっ、ああ、ここは競馬学校だから、俺も騎手になるためのお勉強」
「嘘ばっかり~、罰で掃除されられてるんでしょ?」
(うっ、するどいなあ……やっぱりここに詳しいのかな)
ちょっと含み笑いの少女に苦笑しながら、俺は自己紹介した。
「俺は、見ての通りこの競馬学校の生徒で、沢崎望っていうんだ」
「わたしは、南風子」
「ふーん、風子ちゃんか。近くにすんでるの?」
僕の言葉に、風子はかわいらしくコクリとうなづく。
「ほらほら、そんなことより、早く仕事終わらせないとご飯抜きになっちゃうよ、おにいちゃん」
それもそうだ。口を動かしながらも手も動かさなきゃ……。横の馬に向き直って体を洗いはじめた。そんな俺の隣で、彼女も作業を手伝ってくれる。
「へ~、風子ちゃん、手慣れてるんだね」
「うん、家にもいっぱいいるからね、お馬さん」
そんなことを話しながら、二人でてきぱきと仕事をこなしていった。
「あ~、終わった、終わった。いや、風子ちゃんが手伝ってくれたおかげで、思ったよりずいぶん早かったよ。でも、付き合わせちゃって悪かったね」
体をコキコキほぐしながら、風子に向かって笑いかける。
「ううん、別にいいよ。でも、そうだ……もしよかったら、今度の休みに付き合ってくれるとうれしいな。どこか遊びにいくとか、ね?」
「そんなことなら、おやすいごようさ」
「じゃ、約束だからねっ!」
風子はそういうと、外に駆け出していった。
* * *
「うん、こんなもんかな……」
待ち合わせ場所の、駅前ロータリー。俺は、約束の時間の十分も前に着いて、自分の服装チェックに余念が無かった。それもそのはず、
(なんたって競馬学校に入ってからというもの、もう丸二年以上、女の子と縁の薄い所にいたからなあ……)
「……ごめん、待った、おにいちゃん?」
いきなりぽんっと肩を叩かれた俺は、驚いて後ろを振り返る。しまった、ぼーと考え事してたから風子が来たことに気づかなかったんだ。
俺のびっくりした顔にちょっと目を丸くしながら、少女はにこっと微笑み返してくれる。
「でも、おにいちゃんって、結構きっちりしてるんだね。絶対、風子のほうが早く着くって思ってたのにっ」
「そ、そっかなあ……たまたまだよ」
そんな言葉を上の空で返しながらも、俺の心臓の鼓動は一段高く跳ね上がる。
(か、かわいい……)
目の前の少女の姿に、思わず目が釘付けになってしまった。
まだ小学生か中学に入ったぐらいの小柄な体を包む、ピンクのブラウスとおそろいのスカートは、ふりふりのフリルがまた少女の愛らしさをかもし出している。それも、とびきりの美少女だからこそ……にっこり笑う彼女のさらさらの髪、ぱっちりした目、そして何もつけていないはずなのにつやつやなピンクの唇……全てが今はやりのチャイドルなんて目じゃないくらいに輝いて見えた。
「どうしたの、おにいちゃん? さっきからぼーっとして?」
「う、うん……な、なんでもない」
「さ、それじゃあ、早くどこかいこう? 時間がもったいないよ!」
少女の姿にしばし見とれていた俺は、その言葉に急にはっとする。そうだ、それを考えなきゃいけなかったんだ。まあ、セオリー通りなら遊園地とか。でも、日曜は混雑するし。
……って、日曜? そういえば……
「十月最後の日曜……今日は、天皇賞の日だ、って、今は関係ないかな」
ふと思いついた言葉が口にでる。まあ、デートの時に言い出すことでもないけど。
「それっ! ねっ、それ見にいこうよ、おにいちゃん」
しかし、風子の口からは思いがけない言葉が飛び出した。
俺は、ちょっと意表をつかれながらも、
「でも、ちょっと雰囲気違うんじゃない?」
「ううん、私ならいいよ。おにいちゃんも、生で見てみたいでしょ」
もちろん、それは願ったりかなったり。そうか、風子ちゃんも競争馬好きそうだったし、考えてみればそれも一風変わってていいかもな。
「うわあ、しかしめちゃめちゃ混んでるなあ……」
さすがに天皇賞……なんとか競馬場には入れたものの、周りを見ると人、人、人。それでも風子ちゃんを守りながら、かきわけかきわけ前に進んでいく。
「でも、ほんとにすごいね。風子、GⅠレース見るのは初めてだから、びっくりしちゃった」
「あれ、風子ちゃんって、競馬場なんて来たことあるの?」
「うん。家の馬がレースに出たときに、見に連れていってもらったことがあるから。こんな大きなレースじゃないけどねっ」
「じゃあ、風子ちゃんの家って、競争馬の牧場だったんだ?」
俺の納得したような声に、コクリとうなづく風子ちゃん。
「うん、それでね、いつかは風子の家の馬も、こんな大舞台に立てると信じてるんだ~」
「そっかぁ……あっ、レースがはじまるみたい!」
そしてわき上がる歓声……
「すごかったね、おにいちゃん?」
「うん……」
そして帰り道、もう暗くなってしまった街を肩を並べて歩く二人。
GⅠの凄さにあらためて圧倒されていた俺に、風子が話しかけてくる。
「でも、何年後かには俺もあの舞台に立ってるさ!」
「……その時には、風子の馬に乗ってるといいな」
ちょっと冗談めかした俺の言葉に、風子は一瞬真剣な瞳をしたかと思うと、にっこり笑いかける。
そんな少女の言葉にうなづいた俺は、ふと風子の体が小刻みに震えているのに気づいた。
(そうか、もう冬も近いもんな。こんな時間じゃだいぶ冷え込んでくる……俺って、自分のことばっかり考えてたのか)
反省しつつ、脱いだ上着を彼女の肩にそっとかけてあげる。
そんな俺の仕草にちょっと驚いた顔を向けた風子に、俺はぱたぱたと手を振って答える。
「寒いんだろ? いいの、いいの、俺は。あんなレースを見たあとじゃ、興奮で体が火照ってるから」
「……うん、ありがとっ」
「そのかわり、また今度会ってくれるかな?」
風子は、そんな俺の言葉に力強くうなづいてくれた。
* * *
それから、卒業までの約半年、俺と風子の間は順調だった。ま、といっても、競馬学校で忙しい身だし、そんなにいつも会えるわけじゃないのは残念だけど。そして三月、卒業の季節……
「ここ、ここっ、おにいちゃん!」
ぴょんぴょん飛び跳ねる風子の姿に、俺は少し吹き出しつつも手を振って答える。
「ごめん、ちょっと待たせちゃったかな?」
「ううん。それより、どうだったの?」
風子の問いかけに、俺はぴっと誇らしげに親指を立てて、
「もち、合格合格」
そう、今日は競馬学校の卒業の合格発表の日。これで、俺も晴れてプロの騎手ってわけだ。というわけで、風子とお祝いするための待ち合わせだったのだ。ま、もし落ちてたら、残念会という情けないことになってたけど。
「やったね! おめでとう、おにいちゃんっ」
風子も、満面の笑みで、
「さ、それじゃあ、お祝い、ぱっといかなくちゃね!」
ま、お祝いといっても未成年の二人。せいぜい、ちょっと洒落たレストランで食事するぐらい。それでも、ついつい話も弾み、ずいぶん夜もふけてくる。
レストランを出た俺は、すっかり夜の闇に包まれたあたりを見回した。
「もう、遅くなっちゃったね、風子ちゃん。そろそろ……」
帰ろうか、そんな僕の言葉を遮るように、風子がひしと俺の体にしがみついてくる。
うるんだ瞳で俺を見つめる風子。そしてかすかに震える少女のピンク色の唇に、俺は思わず自分の唇を重ね合わせていた。
一瞬、驚いた表情をする彼女、でもすぐに目をつぶって、積極的に唇を俺に預けてくる。
「風子ちゃん……」
長いような、でも一瞬の口づけ。わずかにとまどった声をもらした俺の体を、ぎゅっと抱きしめながら、風子が恥ずかしそうに言葉を続ける。
「あのねっ、おにいちゃんにプレゼントがあるの……風子を……風子をおにいちゃんにあげる……」
消え入りそうな少女の声。恥ずかしさに真っ赤に染まった顔を伏せる風子。
そんな彼女が愛おしくてたまらない、でも、
「ありがと……でも、風子ちゃん、まだ小さいしそんなことできないよ……」
「ううんっ、風子はおにいちゃんにしてほしいの……それとも、風子のこと嫌い?」
今にも泣き出しそうな少女の瞳。俺の胸板には、彼女の薄い胸が自然と押しつけられてくる。自分の腕の中に感じる風子のほっそりした、でも柔らかな肢体に、俺は自分の理性が次第に消え失せていくのを感じていた。
* * *
「いいの、ほんとうに?」
俺の言葉にコクリとうなづく風子を、俺はやさしく抱きしめる。
ラブホテルの一室に俺たち二人の姿はあった。最近は入り口が無人なので、あっさり入れてしまったのだ。
しかし、まさかこういうことになるなんて……興奮と期待と不安の入りまじったドキドキに自分の鼓動が早まっているのがわかる。
それは彼女も同じ。俺とぴったり触れあった風子の胸を通じて、彼女の鼓動がはっきり感じ取れる。
そんな少女の体を包む衣服をゆっくり剥ぎ取っていく……初めて会った時と同じ白いワンピースの背中のファスナーを、静かに下に降ろしていく。なめらかな肌をするりと滑り落ちた服が足下にくしゃくしゃっとまとまり、俺の目の前には、少女の冴え冴えとした半裸体があらわになる。
「うっ……」
「風子ちゃん、怖いの?」
俺の指が白い下着に触れた瞬間、風子の口から小さな吐息が漏れた。それでも俺の問いに、彼女はぷるぷると首を横に振って答える。
ぷちっという音とともに、小さなブラのホックをはずす。はらりと落ちた下着に隠れていた白い胸に自然と目が、そして手が引きつけられる。
「あんっ、だめ……そんなに強くしちゃっ……」
自分では感じなかったが、思わず力を入れすぎたみたい。少女の薄い乳房を揉みあげる手の力をいくぶん緩め、軽くぶるぶると震わせるように刺激した。
「うんっ……あ……あっ……」
そんな静かなバイブレーションでも、未体験の刺激に風子は体をよじらせて小さな吐息をもらす。
幼い乳房特有の芯のある揉み心地、まだ誰にも触れられたことのない清らかさをかもしだしている胸をいじくることに、俺は思わず夢中になってしまう。
そのうちに、ピンク色の小さな乳首が、少女の心の高鳴りを示すようにぷっくりとせり出してくる。白い山の頂点の、サクランボのような乳首を俺の指がコリコリと弄ぶ。小さいが感度良好のニプルをいじられる感触が、風子の体中に未知の快感を引きだしていく。
「あんっ……そんなこと……もうっ……」
全身の力が抜けたように、風子の体がくたりと崩れおちる。ぱさっという音とともに、ふわふわのベットに横たわった少女の体を、俺は視線を這わせるように見つめた。
「いやっ……おにいちゃんの目、なんかいやらしいよぅ……」
「それは、風子ちゃんの体がとっても魅力的だからだよ」
俺の言葉に、顔はもちろん体中を赤く染める風子ちゃん。
そんな彼女の体を、俺の視線が滑り降りていく。成長途上の幼いバスト、白く細い腰のラインを通り過ぎて、目は彼女のもっとも大事なとこ、薄い布地に包まれたデルタゾーンに釘付けになった。
うっすらと濡れて透けて見えそうなパンティを、恥ずかしげに隠そうとする風子。その手をそっと押しのけて、指でぴたりとアソコに触れる。
「や、やだっ……そんなとこ、はずかしいよぅ」
「だ~め。それに、こうすると、風子ちゃんも気持ちいいでしょ」
俺は、秘処を隠す薄いパンティを横にずらしてしまう。生まれて初めて目にした乙女の部分に、俺の興奮は最高潮に達する。
むき出しの秘所に、ふっと軽く息を吹きかける。そんな俺の仕草にも、鋭敏すぎる性感体は、少女の体中に快感を伝達してしまう。俺の息を感じるたびに、体をぴくぴく震わせて悶える風子。そんな彼女の淫らな姿態を見て、俺はさらに夢中になって彼女を感じさせようとする。
くちゅっ……
白くふっくらとした下腹部に刻まれた一本のスリット。少女の聖なる割れ目に指が触れると、湿った音とともにとろとろと透明な愛液が漏れ出す。
軽く指に力を加えて、細いスリットを左右に開いていく。指に感じる少しの抵抗感、そして、目の前で露わになっていくサーモンピンクの鮮やかな秘肉は、愛蜜に濡れてきらきら輝いている。その美しい眺めに、思わず俺は唇を近づけてキスしていた。
「あんっ、だめ、だめだよぅ……そんなとこ、きたないもんっ」
「ううん、風子ちゃんの体のなかで、きたないところなんて一つもないよ」
一旦、口を離してそんなことをささやいた俺は、再び少女の薄い隠唇にディープキスする。くちゅくちゅという淫音を立てながら、風子のアソコに舌を差し込んでいく。
「くっ……あっ……なんか入ってくるよぅ」
胎内に感じた初めての異物の感触に、風子は思わず声をあげる。でも、その中にいくらかの快感の喘ぎが混じっているのに気づいた。
(そうか、風子ちゃん、とっても気持ちいいんだ……)
そんな思いが、少女を愛撫する動きをエスカレートさせた。舌をさらに奥まで突き入れ、激しく出し入れする。まだ幼い風子の性器は、細い舌の挿入さえ辛そうにぎゅうぎゅう締め付けてくる。差し入れた舌を動かし、膣壁を舐めとるように丹念に愛撫していく。
自分のもっとも敏感なとこをいじられる感触に、風子は身をよじらせて腰を引こうとした。
俺は華奢な太股を抱え込むと、逃げようとする少女の体を引き寄せて、さらに舌をうごめかす。膣から引き抜いた舌先で、そのすぐ上にある小さなボタンを刺激した。包皮に包まれたクリトリスを、ちょんちょんっと弾き、舐めあげる……
まだ自分でいじくったことさえ無さそうな、小さな真珠の粒を弄ばれる悦楽に、少女は幼い体をぶるぶる震わせて、さらに体の中から愛液があふれ出す。
ぐしゅ、ぐしゅ……じゅるっ……
そんな風子の愛蜜を、俺は卑猥な音を立てて舐めとり吸い上げる。とろとろと透明な液が次から次へと漏れだし、俺の喉をうるおしていく。
「風子ちゃんのアソコ、もうぐしょぐしょだよっ」
「もう、おにいちゃん、いじわるなんだから……」
俺のちょっと意地悪な言葉に、風子は耳まで赤く染めながら非難の声を上げる。
「ね、こんなにべたべたしてたら気持ち悪いでしょ、脱がしてあげるよ」
「あん……そんなっ……はずかしいよぅ」
そんな少女の言葉を無視して、俺の手がもうぐしょぐしょのパンティを脱がし、いや剥がしていく。分泌した愛液に濡れたパンティを無理やり引き剥がすと、布地と割れ目の間を蜜が糸を引くように垂れていく。
目の前に完全に露わになった彼女のスリット……先ほどからの愛撫ですっかり充血しきった大隠唇をゆっくり開くと、愛蜜に濡れて光るピンク色の谷間、その真ん中の小さな膣口までが目に飛び込んでくる。そんな少女の清楚な割れ目をぺろりと舐めあげるたびに、風子の細い喉が耐えがたい悦楽の吐息を奏でていく。
「あっ!……うんっ、だめっ……あうぅぅ」
自分の口から漏れる恥ずかしい嬌声に、風子は真っ赤に染めた顔を背けてしまった。
そんな彼女の頬をやさしく撫でてあげながら、俺はさらなる高みへと風子を誘う。クリトリスをなぶる舌の動きをさらに速めながら、人差し指をゆっくりとぴくぴく震える膣口に押しあてた。
くちゅ、くちゃっ……
ちょっと指先に力を入れただけで、少女の胎内からは溢れた愛蜜が漏れだしてくる。透明なだけでなく、少し白濁した愛液まで分泌しながら悶える美少女。
そんな彼女が愛おしくてたまらない、もっと気持ちよくしてあげたい。そういう思いを抱きながら、指先をずぶずぶと潜り込ませる。
「あ……だめっ、なんか中にっ……あん!」
まだ未成熟の性器をえぐられる痛みと違和感に、風子はかすれた吐息をもらす。それでもすっかり濡れそぼった膣穴は、細い指ぐらいならそれほど抵抗無く飲み込んでいく。
湿った音をたてながら、俺は指を軽く前後にスライドさせる。締め付けのきつい風子のヴァギナの感触を楽しみながら、幼い膣壁を擦るように愛撫する。胎内から激しくわき上がる快楽の奔流に、風子は激しく体をよじらせて声をあげる。
「風子のからだ、なにかへんっ……へんだよぅ……でも、気持ちいい・・」
左右に身悶えする少女の体、その動きで突きこまれる指の角度が微妙に変わり、ますます彼女の性感を高めていく。
そろそろかなっ、そう感じた俺は、スライドさせる指の動きを速めながら、小さな真珠色のクリトリスをぎゅうっとつまみ上げた。
「あんっ……だめ、そこっ、いいのっ……あんぅ!」
とうとう甲高い悲鳴をあげた風子は、体をぴんっと弓反らせて絶頂を迎える。大きく肩で息をしながら、エクスタシーの余韻に体を震わせる少女の体に、俺はところかまわずキスの雨を降らせていった。
「かわいかったよ。風子ちゃん」
「やだ、もう、恥ずかしいな」
まだ体のところどころをぴくぴく痙攣させながらも、風子ははにかんだ笑みを漏らした。そんな彼女の瞳が、俺の体の一点に止まる。
「おにいちゃんだって、そんなにして! もう、エッチなんだから~」
「あ、こ、これは。だってね~」
そう、風子の視線はまっすぐ俺のアソコを見つめていたのだ。
先ほどまでの風子の乱れ具合は、俺の息子を元気にさせるのに十分だった。いきり立ったモノは、少女の視線を感じてさらに興奮を増していく。
「こんどは、風子が気持ちよくしてあげよっか?」
「えっ……でも、そんな……わるいよ」
「ううんっ、いいの。それに、わたしばっかりなんてずるいもんっ」
風子は、そんなことを言いながら、俺の下半身に小さな手を伸ばす。ズボンと下着を一緒に引き下ろた瞬間、ぴょんという感じに飛び出した肉棒に、彼女はちょっとびっくりした表情を浮かべた。
「はじめて見ておどろいたんでしょ、風子ちゃん?」
「ふんっ、お馬さんのモノならみたことあるもんっ……て、わたし、何言ってるんだろっ」
自分自身の恥ずかしい言葉にちょっとどぎまぎしながらも、風子はおずおずと両手で目の前のペニスに触れる。
しっとりとした少女の肌ざわりが、火照る肉棒を通して俺の全身に広がっていく。女の子に触ってもらうだけでもこんなに気持ちいいなんて……
俺の表情を上目遣いに見ながら、風子は小さな口を静かに近づけていく。ちょんちょんと亀頭に軽いバードキス。それだけでも十分なのに、風子ちゃんは、肉棒の先端にもう滲みでてきた液体をすくうように舌で舐め取ってくれる。少女のなめらかの舌の感触を感じて、俺の肉棒はますます激しくいきり立っていく。
「ね、きもちいいでしょ?」
俺の様子に満足げな笑みを浮かべながら、風子はぴくぴく震えるペニスをぱくりとくわえてしまう。ピンク色の唇で熱い肉棒を包み込みながら、少女は頭を上下させる。風子の口内の暖かさ、なめらかさに、俺の性感は頂点を目指して突っ走っていく。
「もう、もうだめだ~」
脊髄を駆け抜けた悦楽が、俺の分身からほとばしる。白濁した精液を風子の口の中に激しく注ぎ込む。
「う、うんっ、うんっ」
突然の暴発にちょっと目を見開いた風子ちゃんは、それでもごくごくと喉を鳴らして、口の中のねばねばする液体を飲み込んでゆく。
「ごほ、ごほぅ……ね、よかったでしょ」
唇の端から残りを下垂らせつつ、あどけなく微笑む風子ちゃん。そのアンバランスさが、一層、俺の体を高ぶらせる。そんな思いに後押しされるように、俺は彼女を押し倒していた。
「それじゃあ、いくよ。いいかな?」
俺の体の下で、風子は全身をピンク色に染めながらコクリとうなづく。俺は、手をゆっくり下腹部に伸ばしていく。さわさわとした薄いデルタゾーンの感触を楽しみながら、指は包皮から飛び出した真珠の粒に到達する。
「はんっ……いいよ、いいの、そこっ」
クリトリスをトントンと軽く叩くたび、風子は体を跳ね上げてよがる。少女のアソコが十分に濡れそぼっているのを確認すると、俺は静かに体を風子の股の間に滑り込ませた。
その瞬間が来たのを感じて、風子は軽く目を閉じる。その震えるまぶたに軽くキスしながら、俺は自分の肉棒を割れ目の入り口に押し当てた。
くちゃ、ぐしゅ……
ペニスの先端が、湿った音を立てながら少女の小さな膣口に沈んでいく。ヌメヌメした粘膜が肉棒にまとわりつくような感覚。そして、幼い少女のヴァギナは、挿入しつつある異物をきちきちと締め付けてくる。
「あ……ひゃふっ……」
狭い膣穴を無理やり引き裂かれていくのを、唇をぎゅっと噛みしめて耐える風子ちゃん。そんな彼女の頬をやさしく撫でながら、俺はさらに腰に力を込める。
ぷちっという軽い感触を肉棒の先端に感じた瞬間、風子は声にならない悲鳴をあげて目を見開いた。
「い、痛い? 風子ちゃん……」
処女膜を引き裂かれた痛みに、少女の瞳からぽろりと光る滴が流れ落ちた。その痛々しい表情に、俺は思わず動きを止める。
「だ、大丈夫っ、だから……」
それでも風子ちゃんは、健気な言葉を返してくれる。そんな彼女をいたわるように、やさしく、ゆっくりと肉棒をスライドさせる。
暖かくてしっとりした風子の内部……静かな動きがかえってそんな胎内の感触を伝えてくれる。柔らかく、でもきつく締め上げてくる少女の秘孔の中で、俺は限界がどんどん近づいてくるのを感じた。
「だ、だめっ……風子、もう、い、いっちゃうよぅ」
ひときわ奥まで突き入れた瞬間、高い悲鳴をあげた少女の細い体が、ぎゅんと緊張する。ぴくぴく痙攣する膣壁に包まれて、俺は全てを注ぎ込むように、少女の中にぶちまけていた。
朝、鳥のさえずりがどこからか聞こえてくるような爽やかな朝の街。
「ほんとに、よかったのかな?」
「うんっ。わたし、うれしかったよ、おにいちゃんと一つになれて」
少し後悔まじりの俺の言葉に、風子はまっすぐな瞳を返す。そんな少女の様子に、俺もようやく笑みをこぼした。
「あのね、おにいちゃん……ううん、いいの。それじゃあ、さよなら」
何か言いたげに揺れる瞳、しかし別れの言葉とともに、風子は振り向いて駆け出していく。角を曲がるとき、こっちにちょっと手を振る彼女、そしてその姿はすぐに見えなくなった。
(さよなら? まさか!)
体の中を走り抜ける悪い予感。あわてて後を追ったが、もう彼女の姿はどこにも見えない。そして、それが風子に会った最後だった……
* * *
競馬学校を卒業した俺は、がむしゃらに頑張った。その姿を見れば、風子が会いに来てくれるかもしれない、そう思ったからだ。
そんな願いは通じなかったものの、皮肉にもその頑張りのせいで、俺は見込みある新人騎手として注目されるようになっていた。乗馬の依頼も順調に舞い込み、順風満帆に見える中でも、俺は心のどこかにぽっかり空いたものを感じていた。
そんなある日、
「おい、そういえばこんな依頼も来ているけど、どうする?」
見ると、冬の福島新馬戦。寒いのは苦手だし、なにより遠い。これは敬遠するかな。
そう思った瞬間、ふとその馬の所属牧場の名前が目に入った。
「南牧場……まさかね」
それでも興味を引かれた俺は、馬の資料に目を通す。そしてその中の一枚の写真。
サザンウィンドという名の、その馬を中心にした何人かの人物。そして馬の隣で笑う一人の少女。見間違うはずのないその姿……
「風子!」
思わず高い声をあげてしまった。俺の驚いた声に、近くにいた同僚の調教師もびっくりした表情を見せる。
「突然どうしたんだ……その子か……」
「もしかして知ってるのか?」
「ああ、その牧場には何度か調教に行ったことがあるから。確かもう一年ぐらい前かな、交通事故だという話で、可哀想だったけど」
「死んだっていうのか! まさかそんな!」
「本当さ……その写真は確か、馬が二歳になったときの記念の写真だろ。その馬のこと、すごくかわいがってたからなあ、あの子。でも、そのあとしばらくして……」
(馬鹿な。俺が会ったのはちょうど一年前、その時にはもう亡くなってた……それじゃあ、風子は、俺の風子は幻だったっていうのか!)
写真の中の風子を見つめる俺の瞳から涙があふれ出す……そんな俺の脳裏に、あの別れの時に言えなかった彼女の声が響いたような気がした。
(おにいちゃん……サザンを守って……私の代わりに)
そうだ、泣いてなんかいられない。風子の願いに答えるために、俺にはやらなきゃいけないことがあるんだ!
「この乗馬依頼、受けるよ……必ず勝ってみせるさ」
涙をぬぐった俺は、そう強く宣言していた。
* * *
この一年間が、一瞬、走馬燈の様によぎった。俺の風子への思い、サザンの思い、そして風子の思い。全てを、この勝負にたくす!
鞭を投げ捨てた俺は、サザンの首根っこを掴むと、ぎゅっと前に押し出すように力を入れる。そう、俺の力で少しでもスピードをあげるために……
「こ、これはすごい! サザンウィンド、猛烈な追い上げです。さきほどまでの差がぐんぐん縮まっていく……しかし、残りは百メートル、果たして届くのか、沢崎騎手!」
ゴールまであと少し、もう前の馬なんて関係ない。一秒でも早くゴールに飛び込むために、全力を尽くすのみ。しびれた腕の力を振り絞って、サザンの体を思いっきり前に押してやる……
「さあ、並んだ、並んだぞ。ダイヤモンドアロー、サザンウィンド両者全く並んだ……どっちだ……今、ゴール~、わずかに外、サザンウィンド号か!」
わき上がる歓声。そして疲れ果てた俺の目に、電光掲示板が映る。
「やりました、サザンウィンド! 驚異の末足、人馬一体の走りで新馬戦を見事に勝利。この冬の福島に、鮮やかに南風が吹き抜けました……」
アナウンス、そして場内の歓声。ようやく、自分たちの勝利が実感できるようになる。
(風子! 勝ったよ。俺たち、勝ったんだ!)
ウィニングラン、そして俺は高々と拳を天に突き上げた……天国の風子にも届くように……
終わり
「福島三歳新馬戦も大詰め、残り二百メートル。先頭を行きますのは、五番、ダイヤモンドアロー。二番手、サザンウィンドとの差をもう五、いや六馬身差と広げていきます。これは強い……」
歓声にまじってかすかに聞こえる場内アナウンスの声。確かに相手は強敵だが、まだ勝負は決まっちゃいない!
「いくぞ、サザンウィンド!」
気合いの声を上げ、強く鞭を入れようとした瞬間、僕の脳裏に一人の少女の姿、声が不意に浮かぶ。
(お兄ちゃん。馬はね、乗ってる人の心がわかるの。だから、騎手も馬の気持ちがわからないとだめなんだよ……馬と騎手の心が一つになってはじめて、最高の走りができるんだから)
「風子……そうか、そうだよな」
俺は一人で戦ってるつもりだった。でも、それは違う……
「サザンウィンド、お前も負けたくないだろ! 俺とお前と二人、いや風子と三人で、この勝負、なにがなんでも勝ってみせるんだ!」
俺の言葉に、サザンウィンドも体を奮わせて答えてくれる。大丈夫、こいつも気持ちは俺と同じ、風子のために走ってるんだ……
俺は、もう必要無くなった右手の鞭を投げ捨てていた。
* * *
「あーあ、かったるいよなあ……」
俺は背伸びをしてこわばった体をほぐす。それもそのはず、しゃがんだ無理な格好のまま、一時間も馬の手入れをさせられていたのだから。
「全く、ちょっとさぼったぐらいでこんな罰掃除をさせやがって……」
ぶつぶつ悪態をついてはみるものの、自分のせいだから仕方がない。全部終わらないと夕飯も食べさせてもらえないのだから、さっさと終わらせようとまた仕事に戻ろうとしたその時……
「あれ、あの子は……?」
厩舎の入り口の、一人の女の子に目が止まった。夕日にはえる白いワンピース、そよ風におかっぱの髪がさらさら揺れる少女の可憐な姿に、思わず見入ってしまった自分に気づいて、あわてて目をそらす。
(でも、なんで女の子が、競馬学校にいるんだ? 近くの子なのかな……)
そう不思議に思っていると、その少女はタッタッと近づいてきて、
「おにいちゃん、なにしてるの?」
と首をちょっとかしげて問いかけてくる。俺は、内心気まずい思いを隠しながら答えた。
「えっ、ああ、ここは競馬学校だから、俺も騎手になるためのお勉強」
「嘘ばっかり~、罰で掃除されられてるんでしょ?」
(うっ、するどいなあ……やっぱりここに詳しいのかな)
ちょっと含み笑いの少女に苦笑しながら、俺は自己紹介した。
「俺は、見ての通りこの競馬学校の生徒で、沢崎望っていうんだ」
「わたしは、南風子」
「ふーん、風子ちゃんか。近くにすんでるの?」
僕の言葉に、風子はかわいらしくコクリとうなづく。
「ほらほら、そんなことより、早く仕事終わらせないとご飯抜きになっちゃうよ、おにいちゃん」
それもそうだ。口を動かしながらも手も動かさなきゃ……。横の馬に向き直って体を洗いはじめた。そんな俺の隣で、彼女も作業を手伝ってくれる。
「へ~、風子ちゃん、手慣れてるんだね」
「うん、家にもいっぱいいるからね、お馬さん」
そんなことを話しながら、二人でてきぱきと仕事をこなしていった。
「あ~、終わった、終わった。いや、風子ちゃんが手伝ってくれたおかげで、思ったよりずいぶん早かったよ。でも、付き合わせちゃって悪かったね」
体をコキコキほぐしながら、風子に向かって笑いかける。
「ううん、別にいいよ。でも、そうだ……もしよかったら、今度の休みに付き合ってくれるとうれしいな。どこか遊びにいくとか、ね?」
「そんなことなら、おやすいごようさ」
「じゃ、約束だからねっ!」
風子はそういうと、外に駆け出していった。
* * *
「うん、こんなもんかな……」
待ち合わせ場所の、駅前ロータリー。俺は、約束の時間の十分も前に着いて、自分の服装チェックに余念が無かった。それもそのはず、
(なんたって競馬学校に入ってからというもの、もう丸二年以上、女の子と縁の薄い所にいたからなあ……)
「……ごめん、待った、おにいちゃん?」
いきなりぽんっと肩を叩かれた俺は、驚いて後ろを振り返る。しまった、ぼーと考え事してたから風子が来たことに気づかなかったんだ。
俺のびっくりした顔にちょっと目を丸くしながら、少女はにこっと微笑み返してくれる。
「でも、おにいちゃんって、結構きっちりしてるんだね。絶対、風子のほうが早く着くって思ってたのにっ」
「そ、そっかなあ……たまたまだよ」
そんな言葉を上の空で返しながらも、俺の心臓の鼓動は一段高く跳ね上がる。
(か、かわいい……)
目の前の少女の姿に、思わず目が釘付けになってしまった。
まだ小学生か中学に入ったぐらいの小柄な体を包む、ピンクのブラウスとおそろいのスカートは、ふりふりのフリルがまた少女の愛らしさをかもし出している。それも、とびきりの美少女だからこそ……にっこり笑う彼女のさらさらの髪、ぱっちりした目、そして何もつけていないはずなのにつやつやなピンクの唇……全てが今はやりのチャイドルなんて目じゃないくらいに輝いて見えた。
「どうしたの、おにいちゃん? さっきからぼーっとして?」
「う、うん……な、なんでもない」
「さ、それじゃあ、早くどこかいこう? 時間がもったいないよ!」
少女の姿にしばし見とれていた俺は、その言葉に急にはっとする。そうだ、それを考えなきゃいけなかったんだ。まあ、セオリー通りなら遊園地とか。でも、日曜は混雑するし。
……って、日曜? そういえば……
「十月最後の日曜……今日は、天皇賞の日だ、って、今は関係ないかな」
ふと思いついた言葉が口にでる。まあ、デートの時に言い出すことでもないけど。
「それっ! ねっ、それ見にいこうよ、おにいちゃん」
しかし、風子の口からは思いがけない言葉が飛び出した。
俺は、ちょっと意表をつかれながらも、
「でも、ちょっと雰囲気違うんじゃない?」
「ううん、私ならいいよ。おにいちゃんも、生で見てみたいでしょ」
もちろん、それは願ったりかなったり。そうか、風子ちゃんも競争馬好きそうだったし、考えてみればそれも一風変わってていいかもな。
「うわあ、しかしめちゃめちゃ混んでるなあ……」
さすがに天皇賞……なんとか競馬場には入れたものの、周りを見ると人、人、人。それでも風子ちゃんを守りながら、かきわけかきわけ前に進んでいく。
「でも、ほんとにすごいね。風子、GⅠレース見るのは初めてだから、びっくりしちゃった」
「あれ、風子ちゃんって、競馬場なんて来たことあるの?」
「うん。家の馬がレースに出たときに、見に連れていってもらったことがあるから。こんな大きなレースじゃないけどねっ」
「じゃあ、風子ちゃんの家って、競争馬の牧場だったんだ?」
俺の納得したような声に、コクリとうなづく風子ちゃん。
「うん、それでね、いつかは風子の家の馬も、こんな大舞台に立てると信じてるんだ~」
「そっかぁ……あっ、レースがはじまるみたい!」
そしてわき上がる歓声……
「すごかったね、おにいちゃん?」
「うん……」
そして帰り道、もう暗くなってしまった街を肩を並べて歩く二人。
GⅠの凄さにあらためて圧倒されていた俺に、風子が話しかけてくる。
「でも、何年後かには俺もあの舞台に立ってるさ!」
「……その時には、風子の馬に乗ってるといいな」
ちょっと冗談めかした俺の言葉に、風子は一瞬真剣な瞳をしたかと思うと、にっこり笑いかける。
そんな少女の言葉にうなづいた俺は、ふと風子の体が小刻みに震えているのに気づいた。
(そうか、もう冬も近いもんな。こんな時間じゃだいぶ冷え込んでくる……俺って、自分のことばっかり考えてたのか)
反省しつつ、脱いだ上着を彼女の肩にそっとかけてあげる。
そんな俺の仕草にちょっと驚いた顔を向けた風子に、俺はぱたぱたと手を振って答える。
「寒いんだろ? いいの、いいの、俺は。あんなレースを見たあとじゃ、興奮で体が火照ってるから」
「……うん、ありがとっ」
「そのかわり、また今度会ってくれるかな?」
風子は、そんな俺の言葉に力強くうなづいてくれた。
* * *
それから、卒業までの約半年、俺と風子の間は順調だった。ま、といっても、競馬学校で忙しい身だし、そんなにいつも会えるわけじゃないのは残念だけど。そして三月、卒業の季節……
「ここ、ここっ、おにいちゃん!」
ぴょんぴょん飛び跳ねる風子の姿に、俺は少し吹き出しつつも手を振って答える。
「ごめん、ちょっと待たせちゃったかな?」
「ううん。それより、どうだったの?」
風子の問いかけに、俺はぴっと誇らしげに親指を立てて、
「もち、合格合格」
そう、今日は競馬学校の卒業の合格発表の日。これで、俺も晴れてプロの騎手ってわけだ。というわけで、風子とお祝いするための待ち合わせだったのだ。ま、もし落ちてたら、残念会という情けないことになってたけど。
「やったね! おめでとう、おにいちゃんっ」
風子も、満面の笑みで、
「さ、それじゃあ、お祝い、ぱっといかなくちゃね!」
ま、お祝いといっても未成年の二人。せいぜい、ちょっと洒落たレストランで食事するぐらい。それでも、ついつい話も弾み、ずいぶん夜もふけてくる。
レストランを出た俺は、すっかり夜の闇に包まれたあたりを見回した。
「もう、遅くなっちゃったね、風子ちゃん。そろそろ……」
帰ろうか、そんな僕の言葉を遮るように、風子がひしと俺の体にしがみついてくる。
うるんだ瞳で俺を見つめる風子。そしてかすかに震える少女のピンク色の唇に、俺は思わず自分の唇を重ね合わせていた。
一瞬、驚いた表情をする彼女、でもすぐに目をつぶって、積極的に唇を俺に預けてくる。
「風子ちゃん……」
長いような、でも一瞬の口づけ。わずかにとまどった声をもらした俺の体を、ぎゅっと抱きしめながら、風子が恥ずかしそうに言葉を続ける。
「あのねっ、おにいちゃんにプレゼントがあるの……風子を……風子をおにいちゃんにあげる……」
消え入りそうな少女の声。恥ずかしさに真っ赤に染まった顔を伏せる風子。
そんな彼女が愛おしくてたまらない、でも、
「ありがと……でも、風子ちゃん、まだ小さいしそんなことできないよ……」
「ううんっ、風子はおにいちゃんにしてほしいの……それとも、風子のこと嫌い?」
今にも泣き出しそうな少女の瞳。俺の胸板には、彼女の薄い胸が自然と押しつけられてくる。自分の腕の中に感じる風子のほっそりした、でも柔らかな肢体に、俺は自分の理性が次第に消え失せていくのを感じていた。
* * *
「いいの、ほんとうに?」
俺の言葉にコクリとうなづく風子を、俺はやさしく抱きしめる。
ラブホテルの一室に俺たち二人の姿はあった。最近は入り口が無人なので、あっさり入れてしまったのだ。
しかし、まさかこういうことになるなんて……興奮と期待と不安の入りまじったドキドキに自分の鼓動が早まっているのがわかる。
それは彼女も同じ。俺とぴったり触れあった風子の胸を通じて、彼女の鼓動がはっきり感じ取れる。
そんな少女の体を包む衣服をゆっくり剥ぎ取っていく……初めて会った時と同じ白いワンピースの背中のファスナーを、静かに下に降ろしていく。なめらかな肌をするりと滑り落ちた服が足下にくしゃくしゃっとまとまり、俺の目の前には、少女の冴え冴えとした半裸体があらわになる。
「うっ……」
「風子ちゃん、怖いの?」
俺の指が白い下着に触れた瞬間、風子の口から小さな吐息が漏れた。それでも俺の問いに、彼女はぷるぷると首を横に振って答える。
ぷちっという音とともに、小さなブラのホックをはずす。はらりと落ちた下着に隠れていた白い胸に自然と目が、そして手が引きつけられる。
「あんっ、だめ……そんなに強くしちゃっ……」
自分では感じなかったが、思わず力を入れすぎたみたい。少女の薄い乳房を揉みあげる手の力をいくぶん緩め、軽くぶるぶると震わせるように刺激した。
「うんっ……あ……あっ……」
そんな静かなバイブレーションでも、未体験の刺激に風子は体をよじらせて小さな吐息をもらす。
幼い乳房特有の芯のある揉み心地、まだ誰にも触れられたことのない清らかさをかもしだしている胸をいじくることに、俺は思わず夢中になってしまう。
そのうちに、ピンク色の小さな乳首が、少女の心の高鳴りを示すようにぷっくりとせり出してくる。白い山の頂点の、サクランボのような乳首を俺の指がコリコリと弄ぶ。小さいが感度良好のニプルをいじられる感触が、風子の体中に未知の快感を引きだしていく。
「あんっ……そんなこと……もうっ……」
全身の力が抜けたように、風子の体がくたりと崩れおちる。ぱさっという音とともに、ふわふわのベットに横たわった少女の体を、俺は視線を這わせるように見つめた。
「いやっ……おにいちゃんの目、なんかいやらしいよぅ……」
「それは、風子ちゃんの体がとっても魅力的だからだよ」
俺の言葉に、顔はもちろん体中を赤く染める風子ちゃん。
そんな彼女の体を、俺の視線が滑り降りていく。成長途上の幼いバスト、白く細い腰のラインを通り過ぎて、目は彼女のもっとも大事なとこ、薄い布地に包まれたデルタゾーンに釘付けになった。
うっすらと濡れて透けて見えそうなパンティを、恥ずかしげに隠そうとする風子。その手をそっと押しのけて、指でぴたりとアソコに触れる。
「や、やだっ……そんなとこ、はずかしいよぅ」
「だ~め。それに、こうすると、風子ちゃんも気持ちいいでしょ」
俺は、秘処を隠す薄いパンティを横にずらしてしまう。生まれて初めて目にした乙女の部分に、俺の興奮は最高潮に達する。
むき出しの秘所に、ふっと軽く息を吹きかける。そんな俺の仕草にも、鋭敏すぎる性感体は、少女の体中に快感を伝達してしまう。俺の息を感じるたびに、体をぴくぴく震わせて悶える風子。そんな彼女の淫らな姿態を見て、俺はさらに夢中になって彼女を感じさせようとする。
くちゅっ……
白くふっくらとした下腹部に刻まれた一本のスリット。少女の聖なる割れ目に指が触れると、湿った音とともにとろとろと透明な愛液が漏れ出す。
軽く指に力を加えて、細いスリットを左右に開いていく。指に感じる少しの抵抗感、そして、目の前で露わになっていくサーモンピンクの鮮やかな秘肉は、愛蜜に濡れてきらきら輝いている。その美しい眺めに、思わず俺は唇を近づけてキスしていた。
「あんっ、だめ、だめだよぅ……そんなとこ、きたないもんっ」
「ううん、風子ちゃんの体のなかで、きたないところなんて一つもないよ」
一旦、口を離してそんなことをささやいた俺は、再び少女の薄い隠唇にディープキスする。くちゅくちゅという淫音を立てながら、風子のアソコに舌を差し込んでいく。
「くっ……あっ……なんか入ってくるよぅ」
胎内に感じた初めての異物の感触に、風子は思わず声をあげる。でも、その中にいくらかの快感の喘ぎが混じっているのに気づいた。
(そうか、風子ちゃん、とっても気持ちいいんだ……)
そんな思いが、少女を愛撫する動きをエスカレートさせた。舌をさらに奥まで突き入れ、激しく出し入れする。まだ幼い風子の性器は、細い舌の挿入さえ辛そうにぎゅうぎゅう締め付けてくる。差し入れた舌を動かし、膣壁を舐めとるように丹念に愛撫していく。
自分のもっとも敏感なとこをいじられる感触に、風子は身をよじらせて腰を引こうとした。
俺は華奢な太股を抱え込むと、逃げようとする少女の体を引き寄せて、さらに舌をうごめかす。膣から引き抜いた舌先で、そのすぐ上にある小さなボタンを刺激した。包皮に包まれたクリトリスを、ちょんちょんっと弾き、舐めあげる……
まだ自分でいじくったことさえ無さそうな、小さな真珠の粒を弄ばれる悦楽に、少女は幼い体をぶるぶる震わせて、さらに体の中から愛液があふれ出す。
ぐしゅ、ぐしゅ……じゅるっ……
そんな風子の愛蜜を、俺は卑猥な音を立てて舐めとり吸い上げる。とろとろと透明な液が次から次へと漏れだし、俺の喉をうるおしていく。
「風子ちゃんのアソコ、もうぐしょぐしょだよっ」
「もう、おにいちゃん、いじわるなんだから……」
俺のちょっと意地悪な言葉に、風子は耳まで赤く染めながら非難の声を上げる。
「ね、こんなにべたべたしてたら気持ち悪いでしょ、脱がしてあげるよ」
「あん……そんなっ……はずかしいよぅ」
そんな少女の言葉を無視して、俺の手がもうぐしょぐしょのパンティを脱がし、いや剥がしていく。分泌した愛液に濡れたパンティを無理やり引き剥がすと、布地と割れ目の間を蜜が糸を引くように垂れていく。
目の前に完全に露わになった彼女のスリット……先ほどからの愛撫ですっかり充血しきった大隠唇をゆっくり開くと、愛蜜に濡れて光るピンク色の谷間、その真ん中の小さな膣口までが目に飛び込んでくる。そんな少女の清楚な割れ目をぺろりと舐めあげるたびに、風子の細い喉が耐えがたい悦楽の吐息を奏でていく。
「あっ!……うんっ、だめっ……あうぅぅ」
自分の口から漏れる恥ずかしい嬌声に、風子は真っ赤に染めた顔を背けてしまった。
そんな彼女の頬をやさしく撫でてあげながら、俺はさらなる高みへと風子を誘う。クリトリスをなぶる舌の動きをさらに速めながら、人差し指をゆっくりとぴくぴく震える膣口に押しあてた。
くちゅ、くちゃっ……
ちょっと指先に力を入れただけで、少女の胎内からは溢れた愛蜜が漏れだしてくる。透明なだけでなく、少し白濁した愛液まで分泌しながら悶える美少女。
そんな彼女が愛おしくてたまらない、もっと気持ちよくしてあげたい。そういう思いを抱きながら、指先をずぶずぶと潜り込ませる。
「あ……だめっ、なんか中にっ……あん!」
まだ未成熟の性器をえぐられる痛みと違和感に、風子はかすれた吐息をもらす。それでもすっかり濡れそぼった膣穴は、細い指ぐらいならそれほど抵抗無く飲み込んでいく。
湿った音をたてながら、俺は指を軽く前後にスライドさせる。締め付けのきつい風子のヴァギナの感触を楽しみながら、幼い膣壁を擦るように愛撫する。胎内から激しくわき上がる快楽の奔流に、風子は激しく体をよじらせて声をあげる。
「風子のからだ、なにかへんっ……へんだよぅ……でも、気持ちいい・・」
左右に身悶えする少女の体、その動きで突きこまれる指の角度が微妙に変わり、ますます彼女の性感を高めていく。
そろそろかなっ、そう感じた俺は、スライドさせる指の動きを速めながら、小さな真珠色のクリトリスをぎゅうっとつまみ上げた。
「あんっ……だめ、そこっ、いいのっ……あんぅ!」
とうとう甲高い悲鳴をあげた風子は、体をぴんっと弓反らせて絶頂を迎える。大きく肩で息をしながら、エクスタシーの余韻に体を震わせる少女の体に、俺はところかまわずキスの雨を降らせていった。
「かわいかったよ。風子ちゃん」
「やだ、もう、恥ずかしいな」
まだ体のところどころをぴくぴく痙攣させながらも、風子ははにかんだ笑みを漏らした。そんな彼女の瞳が、俺の体の一点に止まる。
「おにいちゃんだって、そんなにして! もう、エッチなんだから~」
「あ、こ、これは。だってね~」
そう、風子の視線はまっすぐ俺のアソコを見つめていたのだ。
先ほどまでの風子の乱れ具合は、俺の息子を元気にさせるのに十分だった。いきり立ったモノは、少女の視線を感じてさらに興奮を増していく。
「こんどは、風子が気持ちよくしてあげよっか?」
「えっ……でも、そんな……わるいよ」
「ううんっ、いいの。それに、わたしばっかりなんてずるいもんっ」
風子は、そんなことを言いながら、俺の下半身に小さな手を伸ばす。ズボンと下着を一緒に引き下ろた瞬間、ぴょんという感じに飛び出した肉棒に、彼女はちょっとびっくりした表情を浮かべた。
「はじめて見ておどろいたんでしょ、風子ちゃん?」
「ふんっ、お馬さんのモノならみたことあるもんっ……て、わたし、何言ってるんだろっ」
自分自身の恥ずかしい言葉にちょっとどぎまぎしながらも、風子はおずおずと両手で目の前のペニスに触れる。
しっとりとした少女の肌ざわりが、火照る肉棒を通して俺の全身に広がっていく。女の子に触ってもらうだけでもこんなに気持ちいいなんて……
俺の表情を上目遣いに見ながら、風子は小さな口を静かに近づけていく。ちょんちょんと亀頭に軽いバードキス。それだけでも十分なのに、風子ちゃんは、肉棒の先端にもう滲みでてきた液体をすくうように舌で舐め取ってくれる。少女のなめらかの舌の感触を感じて、俺の肉棒はますます激しくいきり立っていく。
「ね、きもちいいでしょ?」
俺の様子に満足げな笑みを浮かべながら、風子はぴくぴく震えるペニスをぱくりとくわえてしまう。ピンク色の唇で熱い肉棒を包み込みながら、少女は頭を上下させる。風子の口内の暖かさ、なめらかさに、俺の性感は頂点を目指して突っ走っていく。
「もう、もうだめだ~」
脊髄を駆け抜けた悦楽が、俺の分身からほとばしる。白濁した精液を風子の口の中に激しく注ぎ込む。
「う、うんっ、うんっ」
突然の暴発にちょっと目を見開いた風子ちゃんは、それでもごくごくと喉を鳴らして、口の中のねばねばする液体を飲み込んでゆく。
「ごほ、ごほぅ……ね、よかったでしょ」
唇の端から残りを下垂らせつつ、あどけなく微笑む風子ちゃん。そのアンバランスさが、一層、俺の体を高ぶらせる。そんな思いに後押しされるように、俺は彼女を押し倒していた。
「それじゃあ、いくよ。いいかな?」
俺の体の下で、風子は全身をピンク色に染めながらコクリとうなづく。俺は、手をゆっくり下腹部に伸ばしていく。さわさわとした薄いデルタゾーンの感触を楽しみながら、指は包皮から飛び出した真珠の粒に到達する。
「はんっ……いいよ、いいの、そこっ」
クリトリスをトントンと軽く叩くたび、風子は体を跳ね上げてよがる。少女のアソコが十分に濡れそぼっているのを確認すると、俺は静かに体を風子の股の間に滑り込ませた。
その瞬間が来たのを感じて、風子は軽く目を閉じる。その震えるまぶたに軽くキスしながら、俺は自分の肉棒を割れ目の入り口に押し当てた。
くちゃ、ぐしゅ……
ペニスの先端が、湿った音を立てながら少女の小さな膣口に沈んでいく。ヌメヌメした粘膜が肉棒にまとわりつくような感覚。そして、幼い少女のヴァギナは、挿入しつつある異物をきちきちと締め付けてくる。
「あ……ひゃふっ……」
狭い膣穴を無理やり引き裂かれていくのを、唇をぎゅっと噛みしめて耐える風子ちゃん。そんな彼女の頬をやさしく撫でながら、俺はさらに腰に力を込める。
ぷちっという軽い感触を肉棒の先端に感じた瞬間、風子は声にならない悲鳴をあげて目を見開いた。
「い、痛い? 風子ちゃん……」
処女膜を引き裂かれた痛みに、少女の瞳からぽろりと光る滴が流れ落ちた。その痛々しい表情に、俺は思わず動きを止める。
「だ、大丈夫っ、だから……」
それでも風子ちゃんは、健気な言葉を返してくれる。そんな彼女をいたわるように、やさしく、ゆっくりと肉棒をスライドさせる。
暖かくてしっとりした風子の内部……静かな動きがかえってそんな胎内の感触を伝えてくれる。柔らかく、でもきつく締め上げてくる少女の秘孔の中で、俺は限界がどんどん近づいてくるのを感じた。
「だ、だめっ……風子、もう、い、いっちゃうよぅ」
ひときわ奥まで突き入れた瞬間、高い悲鳴をあげた少女の細い体が、ぎゅんと緊張する。ぴくぴく痙攣する膣壁に包まれて、俺は全てを注ぎ込むように、少女の中にぶちまけていた。
朝、鳥のさえずりがどこからか聞こえてくるような爽やかな朝の街。
「ほんとに、よかったのかな?」
「うんっ。わたし、うれしかったよ、おにいちゃんと一つになれて」
少し後悔まじりの俺の言葉に、風子はまっすぐな瞳を返す。そんな少女の様子に、俺もようやく笑みをこぼした。
「あのね、おにいちゃん……ううん、いいの。それじゃあ、さよなら」
何か言いたげに揺れる瞳、しかし別れの言葉とともに、風子は振り向いて駆け出していく。角を曲がるとき、こっちにちょっと手を振る彼女、そしてその姿はすぐに見えなくなった。
(さよなら? まさか!)
体の中を走り抜ける悪い予感。あわてて後を追ったが、もう彼女の姿はどこにも見えない。そして、それが風子に会った最後だった……
* * *
競馬学校を卒業した俺は、がむしゃらに頑張った。その姿を見れば、風子が会いに来てくれるかもしれない、そう思ったからだ。
そんな願いは通じなかったものの、皮肉にもその頑張りのせいで、俺は見込みある新人騎手として注目されるようになっていた。乗馬の依頼も順調に舞い込み、順風満帆に見える中でも、俺は心のどこかにぽっかり空いたものを感じていた。
そんなある日、
「おい、そういえばこんな依頼も来ているけど、どうする?」
見ると、冬の福島新馬戦。寒いのは苦手だし、なにより遠い。これは敬遠するかな。
そう思った瞬間、ふとその馬の所属牧場の名前が目に入った。
「南牧場……まさかね」
それでも興味を引かれた俺は、馬の資料に目を通す。そしてその中の一枚の写真。
サザンウィンドという名の、その馬を中心にした何人かの人物。そして馬の隣で笑う一人の少女。見間違うはずのないその姿……
「風子!」
思わず高い声をあげてしまった。俺の驚いた声に、近くにいた同僚の調教師もびっくりした表情を見せる。
「突然どうしたんだ……その子か……」
「もしかして知ってるのか?」
「ああ、その牧場には何度か調教に行ったことがあるから。確かもう一年ぐらい前かな、交通事故だという話で、可哀想だったけど」
「死んだっていうのか! まさかそんな!」
「本当さ……その写真は確か、馬が二歳になったときの記念の写真だろ。その馬のこと、すごくかわいがってたからなあ、あの子。でも、そのあとしばらくして……」
(馬鹿な。俺が会ったのはちょうど一年前、その時にはもう亡くなってた……それじゃあ、風子は、俺の風子は幻だったっていうのか!)
写真の中の風子を見つめる俺の瞳から涙があふれ出す……そんな俺の脳裏に、あの別れの時に言えなかった彼女の声が響いたような気がした。
(おにいちゃん……サザンを守って……私の代わりに)
そうだ、泣いてなんかいられない。風子の願いに答えるために、俺にはやらなきゃいけないことがあるんだ!
「この乗馬依頼、受けるよ……必ず勝ってみせるさ」
涙をぬぐった俺は、そう強く宣言していた。
* * *
この一年間が、一瞬、走馬燈の様によぎった。俺の風子への思い、サザンの思い、そして風子の思い。全てを、この勝負にたくす!
鞭を投げ捨てた俺は、サザンの首根っこを掴むと、ぎゅっと前に押し出すように力を入れる。そう、俺の力で少しでもスピードをあげるために……
「こ、これはすごい! サザンウィンド、猛烈な追い上げです。さきほどまでの差がぐんぐん縮まっていく……しかし、残りは百メートル、果たして届くのか、沢崎騎手!」
ゴールまであと少し、もう前の馬なんて関係ない。一秒でも早くゴールに飛び込むために、全力を尽くすのみ。しびれた腕の力を振り絞って、サザンの体を思いっきり前に押してやる……
「さあ、並んだ、並んだぞ。ダイヤモンドアロー、サザンウィンド両者全く並んだ……どっちだ……今、ゴール~、わずかに外、サザンウィンド号か!」
わき上がる歓声。そして疲れ果てた俺の目に、電光掲示板が映る。
「やりました、サザンウィンド! 驚異の末足、人馬一体の走りで新馬戦を見事に勝利。この冬の福島に、鮮やかに南風が吹き抜けました……」
アナウンス、そして場内の歓声。ようやく、自分たちの勝利が実感できるようになる。
(風子! 勝ったよ。俺たち、勝ったんだ!)
ウィニングラン、そして俺は高々と拳を天に突き上げた……天国の風子にも届くように……
終わり
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