小説(転載) 盆休み1/6
官能小説
掲載サイトは消滅。前に「第1話目しか保存していないものもあった。」として作品を紹介していなかたが、その後探しだしたら見つかったものが数作品出てきた。話の展開がうまく出来ていて感心するばかりである。
盆休み
容赦なく照りつける夏の太陽に熱せられた黒いアスファルトは、透明な空気をゆらゆらと動かしている。けたたましく鳴き続ける蝉の声の中、一台の軽トラックが家の敷地内に入ってきた。
「あっつー。」
会社の盆休みに手伝わされた畑仕事で、汗だくになった圭介は、かぶっていた帽子で自分を扇ぎながら軽トラックから降りた。白いTシャツのそでを肩までたくし上げ、ジーパンのすそもひざの下あたりまであげている。
圭介は玄関脇の水道で、汚れた手や足をジャブジャブ洗い、最後に顔を洗うと、首にかけていたタオルで拭きながら、家の中に入っていった。
祖父の代で建てられたその家は、大きな日本家屋で、ひんやりとした空気が圭介の体を包む。
「あー、疲れたー。」
大きな声で言いながら、居間の前の縁側を通りかかったとき、愛子の後ろ姿が見えた。
「なんだよ。お前、帰ってたのかあ?」
圭介はいきなり愛子の首を後ろから羽交い締めにした。
「う、うわあ。」
愛子は驚いて圭介の腕を振り払うと、喉元をさすりながら、圭介の方に振り向いた。
「やめろ、バカ兄貴。お客さんいるんだよ。」
そう言われて、圭介は初めて愛子の斜め前の女性に気が付いた。ふすまの影で見えなかったのだ。
「あっ、失礼…しました。」
客がいたことに慌て、圭介はその女性に向かって頭を下げた。女性は静かに微笑みながら、おじゃましてます、と挨拶する。
「友達?」
愛子に尋ねると、愛子は紫織を圭介に紹介した。大阪の大学に通う愛子は、夏休み中に一週間だけ、友人の紫織を連れて家に戻ってきたのだ。
「うわあ、汗くさい。」
愛子は汗だくの圭介に、紫織に失礼だから早く着替えてきてよ、と叫んだ。圭介は背中を押され、言われるまま、居間から出ていった。
「ごめんねー、バカ兄貴で。」
居間からは、紫織に謝る愛子の声が聞こえた。
「仲がいいんだね。」
紫織の声もする。
圭介は新しいTシャツとジーパンに着替え、台所へ行った。冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出し、栓を開けたとき、愛子が居間のふすまから顔をだし、圭介を呼んでいる。
圭介が居間に行くと、愛子は圭介が昼間からビールを飲んでいることに呆れながら、
「とにかく、座って。」
と圭介のすねをたたいた。
「お兄ちゃんの会社って、いつまで休み?」
「17日の日曜日までだよ。」
圭介の返事を聞くと、愛子がニヤリと笑う。圭介は嫌な予感がした。
「あのね、私たち16日までいるんだよ。それでね…。」
圭介の予感は的中した。
「紫織を連れて、この辺まわりたいんだけどお…。運転手がいるんだなあ。」
にっこりと微笑む愛子の顔を見て、圭介はその場を逃げようとしたが、愛子につかまった。
「友達と麻雀の約束が…。」
圭介の抵抗は、愛子の笑みの前に破れ、圭介の盆休みは、畑仕事と愛子たちのお守りで消え去ることとなった。
「本当にいいの?」
その夜、近所の温泉施設の湯船につかりながら、紫織が愛子に尋ねた。
「ん、何が?」
愛子が振り向く。
「お兄さんのこと。せっかくの休みなのに…。なんか悪い気がして。」
「平気、平気。どうせ、ごろごろしてるだけなんだから。」
愛子はそう言って笑う。
「でも、ちょっとびっくりしちゃった。抱きついていたから。」
紫織は、圭介が愛子を羽交い締めしていた様子を思い出した。
「ああ、あれね。うーん、昔はしょっちゅうケンカしてたんだけど、兄貴が大学行ってからは、ケンカしなくなって…。」
愛子は、圭介が自分にちょっかいをかけてくることは普通だと思っていた。と言っても、頭をたたかれたり、軽く跳び蹴りなどもしてくるから、むかつくときもある。紫織は、妹しかいないので、兄と妹の関係が不思議なようだ。
「愛子のお兄さんって、かっこいいね。びっくりしちゃった。」
ぽつりとつぶやく紫織の言葉に、趣味が悪い、と愛子は笑った。
お風呂から上がり、ロビーに行くと、圭介がたばこを吸いながら待っていた。運転手として二人を送ってきたついでに自分もお風呂に入ったようだ。
「紫織がねえ、兄貴のこと、かっこいいって。」
「ちょっ……愛子ぉっ。」
帰りの車の中で、圭介に愛子が言うと、紫織は慌てて愛子の口を押さえようとする。ルームミラーで二人の様子を見ながら、圭介は笑った。
「うれしいねー。紫織ちゃん、俺と付き合うか?」
圭介の冗談に、紫織は真っ赤になっている。愛子はうつむく紫織の顔を見て、にやにやと笑った。
盆休み
容赦なく照りつける夏の太陽に熱せられた黒いアスファルトは、透明な空気をゆらゆらと動かしている。けたたましく鳴き続ける蝉の声の中、一台の軽トラックが家の敷地内に入ってきた。
「あっつー。」
会社の盆休みに手伝わされた畑仕事で、汗だくになった圭介は、かぶっていた帽子で自分を扇ぎながら軽トラックから降りた。白いTシャツのそでを肩までたくし上げ、ジーパンのすそもひざの下あたりまであげている。
圭介は玄関脇の水道で、汚れた手や足をジャブジャブ洗い、最後に顔を洗うと、首にかけていたタオルで拭きながら、家の中に入っていった。
祖父の代で建てられたその家は、大きな日本家屋で、ひんやりとした空気が圭介の体を包む。
「あー、疲れたー。」
大きな声で言いながら、居間の前の縁側を通りかかったとき、愛子の後ろ姿が見えた。
「なんだよ。お前、帰ってたのかあ?」
圭介はいきなり愛子の首を後ろから羽交い締めにした。
「う、うわあ。」
愛子は驚いて圭介の腕を振り払うと、喉元をさすりながら、圭介の方に振り向いた。
「やめろ、バカ兄貴。お客さんいるんだよ。」
そう言われて、圭介は初めて愛子の斜め前の女性に気が付いた。ふすまの影で見えなかったのだ。
「あっ、失礼…しました。」
客がいたことに慌て、圭介はその女性に向かって頭を下げた。女性は静かに微笑みながら、おじゃましてます、と挨拶する。
「友達?」
愛子に尋ねると、愛子は紫織を圭介に紹介した。大阪の大学に通う愛子は、夏休み中に一週間だけ、友人の紫織を連れて家に戻ってきたのだ。
「うわあ、汗くさい。」
愛子は汗だくの圭介に、紫織に失礼だから早く着替えてきてよ、と叫んだ。圭介は背中を押され、言われるまま、居間から出ていった。
「ごめんねー、バカ兄貴で。」
居間からは、紫織に謝る愛子の声が聞こえた。
「仲がいいんだね。」
紫織の声もする。
圭介は新しいTシャツとジーパンに着替え、台所へ行った。冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出し、栓を開けたとき、愛子が居間のふすまから顔をだし、圭介を呼んでいる。
圭介が居間に行くと、愛子は圭介が昼間からビールを飲んでいることに呆れながら、
「とにかく、座って。」
と圭介のすねをたたいた。
「お兄ちゃんの会社って、いつまで休み?」
「17日の日曜日までだよ。」
圭介の返事を聞くと、愛子がニヤリと笑う。圭介は嫌な予感がした。
「あのね、私たち16日までいるんだよ。それでね…。」
圭介の予感は的中した。
「紫織を連れて、この辺まわりたいんだけどお…。運転手がいるんだなあ。」
にっこりと微笑む愛子の顔を見て、圭介はその場を逃げようとしたが、愛子につかまった。
「友達と麻雀の約束が…。」
圭介の抵抗は、愛子の笑みの前に破れ、圭介の盆休みは、畑仕事と愛子たちのお守りで消え去ることとなった。
「本当にいいの?」
その夜、近所の温泉施設の湯船につかりながら、紫織が愛子に尋ねた。
「ん、何が?」
愛子が振り向く。
「お兄さんのこと。せっかくの休みなのに…。なんか悪い気がして。」
「平気、平気。どうせ、ごろごろしてるだけなんだから。」
愛子はそう言って笑う。
「でも、ちょっとびっくりしちゃった。抱きついていたから。」
紫織は、圭介が愛子を羽交い締めしていた様子を思い出した。
「ああ、あれね。うーん、昔はしょっちゅうケンカしてたんだけど、兄貴が大学行ってからは、ケンカしなくなって…。」
愛子は、圭介が自分にちょっかいをかけてくることは普通だと思っていた。と言っても、頭をたたかれたり、軽く跳び蹴りなどもしてくるから、むかつくときもある。紫織は、妹しかいないので、兄と妹の関係が不思議なようだ。
「愛子のお兄さんって、かっこいいね。びっくりしちゃった。」
ぽつりとつぶやく紫織の言葉に、趣味が悪い、と愛子は笑った。
お風呂から上がり、ロビーに行くと、圭介がたばこを吸いながら待っていた。運転手として二人を送ってきたついでに自分もお風呂に入ったようだ。
「紫織がねえ、兄貴のこと、かっこいいって。」
「ちょっ……愛子ぉっ。」
帰りの車の中で、圭介に愛子が言うと、紫織は慌てて愛子の口を押さえようとする。ルームミラーで二人の様子を見ながら、圭介は笑った。
「うれしいねー。紫織ちゃん、俺と付き合うか?」
圭介の冗談に、紫織は真っ赤になっている。愛子はうつむく紫織の顔を見て、にやにやと笑った。
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