小説(転載) わたしって、ワルい女?1/3
官能小説
誘われたらいくのが男だ。
第1話 真治さんのやわらかな唇が重ねられてくる
「ピン、ポーン!」
(あらっ、真治さんだわ、きっと)
わたしは、いそいそと玄関へ急ぎます。1時間半ほど前に、真治さんから主
人の本を届けてくれるって、電話があったんです。
「もしもし、K大の村木です」
「あらっ、久しぶりねぇ」
「あのぉ、僕、明日は、名古屋で学会がありまして」
「あした、わたし、大学へ本を取りに行く予定でしたのに。それに、あなたに
も…」
「ですから、今日、僕が、先生の本を、お宅にお届けしてもよろしいでしょう
か?」
「いいわよ、お待ちしているわ」
主人は、今、埼玉の国立療養所に入院しているんです、肺結核で。でも、主
人はベッドで寝ているのが退屈らしく、しょっちゅう電話してくるんです。大
学の研究室に置いてある、あの本が欲しいとか。 主人の愛弟子で、同じ歴史
学科の講師である真治さんが主人の研究室を空けてくれて、一緒に探してくれ
るんです。それに重い本ばかりだから、真治さんがエレベーターを使い、駐車
場に置いている、わたしの車まで運んでくれるんです。いつも真治さんには、
お世話になっているんだもの。是非、上がってもらって、おいしいコーヒーを
入れてあげなくっちゃ…。
「こんにちは、お邪魔します」
(真治さんったら、いつも、お行儀、いいんだから)
「いつも、すみませんね」
「お電話で頼まれていた本、この八冊です」
「ごめんなさい、主人ったら、読みもしないのよ。でも、ベッドのそばに本が
あると、安心するみたい。でも、こんな厚い本、たくさんで、重かったでしょ」
「いえ、大丈夫です。こうして、肩掛けのカバンに入れて持って来ましたから」
ちょっと、腰をひねった感じがセクシー。だって、真治さんは身長は175
センチくらい。でも体重は65キロしかないそうで、やせていて、ほっそりし
た腰回り、お尻も小さくて、つんと上がってて…。
「さぁ、上がって。お茶でも差し上げたいから…」
「いえ、僕はこれで失礼します。明日は名古屋ですから」
「準備でもあるの?」
「ええ、ちょっと、部会で発表を」
「真治さんなら、大丈夫よ。新幹線の中で、少し原稿、見ておいたら、それで
十分…」
「そんな…」
見ると、真治さんは、顔を赤らめていました。真治さんって女の人みたいに
色が白いから、すぐわかるんです。
「ねぇ、せっかく、マフィン・ケーキも焼いてるところだし…」
「でも…」
真治さんって、ウジウジして、いゃっー。こんなんだから、恋人もできない
んです。
わたしは、真治さんの腕をつかんじゃって、引っ張ってやったんです。
「あらら、靴が…」
「ごめんなさい、だって、あなたが、ぐずぐずしているからよ」
「すみません」
でも、見ると、真治さんは、運動靴を脱ぎ捨てようとしているんです。
「さぁ、あがって」
わたしは、応接室に案内をしました。
「今、コーヒーを入れるから、ちょっと待っていてね」
わたしは、コーヒーとマフィン・ケーキをテーブルの上に出しました。そし
て、テーブルをはさんで、真治さんの真向かいのソファに腰掛けました。
(まあっ、真治さんったら、お砂糖を二杯も、あらっ、ミルクも)
でも、何だか、スプーンを持って、カップをかき混ぜている手が震えている
みたい。
こうして見ると、真治さんって、結構、ハンサム。眉は黒くて濃いし、お鼻
も高い。唇も薄くって、色が白いから、紅をさしたように赤い。まぁ、なんて
長い指なんでしょう。爪もピンク色。
「先生のお具合は、よろしいのでしょうか?」
「えっ?!。ええ、でも、もう少し、かかりそうなの。何しろ、菌が完全にな
くなるまではね、なかなかおうちには帰してもらえそうもないみたい」
「ピン、ボーン!」
玄関のチャイムが鳴りました、私は立ち上がって、玄関の方へ。と、そのと
き、立ちくらみがしたんです。
気が付くと、私は、ソファの上で横になっていて、目の前に真治さんの顔が。
私は、驚いて、半身を起こそうとしたんです。
「わたし、どうしたの?」
「ああ、気がつかれてよかったです。しばらくそっとしておいてと思いまして。
僕、病院には電話しなかったのですが、よろしかったでしょうか?」
「大丈夫みたいよ。で、玄関には誰か?」
「ああ、さっきのは宅配便で、僕が代理で受け取っておきました」
(まぁっ、この人は、こういうことは、きちんとしてるんだから)
「では、僕は、これで失礼します」
「いいじゃない、もう少し。わたしも、こうして横になってしばらく休んでい
ないと」
「でも…」
「何か、お急ぎの用でもあるの?」
「いえ、もう、大学には帰らなくてもいいのですが」
「じゃ、もう少し、ここにいてちょうだい。わたしの看病って、つもりで」
「でも…」
真治さんったら、困ったような顔をしていました。なにか、照れたような、
でも、とっても優しそうなまなざしをして、わたしのことを見つめて。そんな
真治さんを見ていたら、わたし、安心してしまって、目を瞑って眠ってしまい
ました。
わたしが目を覚ますと、真治さんが…、目の前に。絨毯の上に膝を立てて中
腰になっているような。
「あっ、目を覚まされたんですね、よかった。なかなか、起きていただけない
ので、僕は、帰るに帰られず…」
わたしは、うれしかったのです。わたしは、ソファの上で半身を起こし、真
治さんの正面に向いて座りなおしました。そして、おずおずとながらも手を伸
ばしていました、そして、その手を真治さんの肩の上へ。
真治さんの顔が、膠着しているんです。その顔がかわいくて、思わず、中腰
になっている真治さんの肩の上に置いた手に力を入れてしまいました。真治さ
んの肩がかすかに震えているようなんです、しかも、真治さん顔を伏せてしま
って。まぁ、膝まで震えているよう。
わたしは、右手を肩からはずして、真治さんの顎の下へ。そして、顔を上げ
てもらったんです。
(まあー、うるんだ瞳、可愛いわ。それに、なに、真治さんのほっぺた、真っ
赤だわ)
わたしは、いとおしくなって、真治さんの肩に置いた手を少し手前に引いたの
です、そして、顔を近づけ、真治さんの紅を引いたような唇に、そっと、わた
しの唇を重ねていったのです。
「あっ、いけません」
真治さんは、振り切るように顔を下げ、後ろに身を引こうしたのです。
わたしは思わず、真治さんの首すじに、両手をかけていました。
「お願い、逃げないで!」
真治さんの目に、おびえが走ったような。でも、きれいな目だな思いました、
澄んでいて。と、そのとき真治さんの瞳がキラっと光ったような気がしました。
今度は、わたしがおびえてしまい、思わず目を瞑ってしまいました。
わたしは待っていました、長いこと。真治さんの首に回していたわたしの手
の指先が、なにやらぴくりと動いたような気がしました。そして、その時、わ
たしの唇のうえに、やわらかい唇が触れてきたのです。
(あーっ、やっと、真治さんが来てくれたんだわ)
わたしは、うれしくなって、真治さんの首に回した手に力を込めました。で
も真治さんったら、唇を閉じたまま、それをただわたしの唇に弱々しく重ねて
いるだけなんです。
(なにっ、もうーっ、そんなんじゃなくて、強くよ、もっと強くよ)
わたしは、心の中で叫んでいたんです。
つづく
第1話 真治さんのやわらかな唇が重ねられてくる
「ピン、ポーン!」
(あらっ、真治さんだわ、きっと)
わたしは、いそいそと玄関へ急ぎます。1時間半ほど前に、真治さんから主
人の本を届けてくれるって、電話があったんです。
「もしもし、K大の村木です」
「あらっ、久しぶりねぇ」
「あのぉ、僕、明日は、名古屋で学会がありまして」
「あした、わたし、大学へ本を取りに行く予定でしたのに。それに、あなたに
も…」
「ですから、今日、僕が、先生の本を、お宅にお届けしてもよろしいでしょう
か?」
「いいわよ、お待ちしているわ」
主人は、今、埼玉の国立療養所に入院しているんです、肺結核で。でも、主
人はベッドで寝ているのが退屈らしく、しょっちゅう電話してくるんです。大
学の研究室に置いてある、あの本が欲しいとか。 主人の愛弟子で、同じ歴史
学科の講師である真治さんが主人の研究室を空けてくれて、一緒に探してくれ
るんです。それに重い本ばかりだから、真治さんがエレベーターを使い、駐車
場に置いている、わたしの車まで運んでくれるんです。いつも真治さんには、
お世話になっているんだもの。是非、上がってもらって、おいしいコーヒーを
入れてあげなくっちゃ…。
「こんにちは、お邪魔します」
(真治さんったら、いつも、お行儀、いいんだから)
「いつも、すみませんね」
「お電話で頼まれていた本、この八冊です」
「ごめんなさい、主人ったら、読みもしないのよ。でも、ベッドのそばに本が
あると、安心するみたい。でも、こんな厚い本、たくさんで、重かったでしょ」
「いえ、大丈夫です。こうして、肩掛けのカバンに入れて持って来ましたから」
ちょっと、腰をひねった感じがセクシー。だって、真治さんは身長は175
センチくらい。でも体重は65キロしかないそうで、やせていて、ほっそりし
た腰回り、お尻も小さくて、つんと上がってて…。
「さぁ、上がって。お茶でも差し上げたいから…」
「いえ、僕はこれで失礼します。明日は名古屋ですから」
「準備でもあるの?」
「ええ、ちょっと、部会で発表を」
「真治さんなら、大丈夫よ。新幹線の中で、少し原稿、見ておいたら、それで
十分…」
「そんな…」
見ると、真治さんは、顔を赤らめていました。真治さんって女の人みたいに
色が白いから、すぐわかるんです。
「ねぇ、せっかく、マフィン・ケーキも焼いてるところだし…」
「でも…」
真治さんって、ウジウジして、いゃっー。こんなんだから、恋人もできない
んです。
わたしは、真治さんの腕をつかんじゃって、引っ張ってやったんです。
「あらら、靴が…」
「ごめんなさい、だって、あなたが、ぐずぐずしているからよ」
「すみません」
でも、見ると、真治さんは、運動靴を脱ぎ捨てようとしているんです。
「さぁ、あがって」
わたしは、応接室に案内をしました。
「今、コーヒーを入れるから、ちょっと待っていてね」
わたしは、コーヒーとマフィン・ケーキをテーブルの上に出しました。そし
て、テーブルをはさんで、真治さんの真向かいのソファに腰掛けました。
(まあっ、真治さんったら、お砂糖を二杯も、あらっ、ミルクも)
でも、何だか、スプーンを持って、カップをかき混ぜている手が震えている
みたい。
こうして見ると、真治さんって、結構、ハンサム。眉は黒くて濃いし、お鼻
も高い。唇も薄くって、色が白いから、紅をさしたように赤い。まぁ、なんて
長い指なんでしょう。爪もピンク色。
「先生のお具合は、よろしいのでしょうか?」
「えっ?!。ええ、でも、もう少し、かかりそうなの。何しろ、菌が完全にな
くなるまではね、なかなかおうちには帰してもらえそうもないみたい」
「ピン、ボーン!」
玄関のチャイムが鳴りました、私は立ち上がって、玄関の方へ。と、そのと
き、立ちくらみがしたんです。
気が付くと、私は、ソファの上で横になっていて、目の前に真治さんの顔が。
私は、驚いて、半身を起こそうとしたんです。
「わたし、どうしたの?」
「ああ、気がつかれてよかったです。しばらくそっとしておいてと思いまして。
僕、病院には電話しなかったのですが、よろしかったでしょうか?」
「大丈夫みたいよ。で、玄関には誰か?」
「ああ、さっきのは宅配便で、僕が代理で受け取っておきました」
(まぁっ、この人は、こういうことは、きちんとしてるんだから)
「では、僕は、これで失礼します」
「いいじゃない、もう少し。わたしも、こうして横になってしばらく休んでい
ないと」
「でも…」
「何か、お急ぎの用でもあるの?」
「いえ、もう、大学には帰らなくてもいいのですが」
「じゃ、もう少し、ここにいてちょうだい。わたしの看病って、つもりで」
「でも…」
真治さんったら、困ったような顔をしていました。なにか、照れたような、
でも、とっても優しそうなまなざしをして、わたしのことを見つめて。そんな
真治さんを見ていたら、わたし、安心してしまって、目を瞑って眠ってしまい
ました。
わたしが目を覚ますと、真治さんが…、目の前に。絨毯の上に膝を立てて中
腰になっているような。
「あっ、目を覚まされたんですね、よかった。なかなか、起きていただけない
ので、僕は、帰るに帰られず…」
わたしは、うれしかったのです。わたしは、ソファの上で半身を起こし、真
治さんの正面に向いて座りなおしました。そして、おずおずとながらも手を伸
ばしていました、そして、その手を真治さんの肩の上へ。
真治さんの顔が、膠着しているんです。その顔がかわいくて、思わず、中腰
になっている真治さんの肩の上に置いた手に力を入れてしまいました。真治さ
んの肩がかすかに震えているようなんです、しかも、真治さん顔を伏せてしま
って。まぁ、膝まで震えているよう。
わたしは、右手を肩からはずして、真治さんの顎の下へ。そして、顔を上げ
てもらったんです。
(まあー、うるんだ瞳、可愛いわ。それに、なに、真治さんのほっぺた、真っ
赤だわ)
わたしは、いとおしくなって、真治さんの肩に置いた手を少し手前に引いたの
です、そして、顔を近づけ、真治さんの紅を引いたような唇に、そっと、わた
しの唇を重ねていったのです。
「あっ、いけません」
真治さんは、振り切るように顔を下げ、後ろに身を引こうしたのです。
わたしは思わず、真治さんの首すじに、両手をかけていました。
「お願い、逃げないで!」
真治さんの目に、おびえが走ったような。でも、きれいな目だな思いました、
澄んでいて。と、そのとき真治さんの瞳がキラっと光ったような気がしました。
今度は、わたしがおびえてしまい、思わず目を瞑ってしまいました。
わたしは待っていました、長いこと。真治さんの首に回していたわたしの手
の指先が、なにやらぴくりと動いたような気がしました。そして、その時、わ
たしの唇のうえに、やわらかい唇が触れてきたのです。
(あーっ、やっと、真治さんが来てくれたんだわ)
わたしは、うれしくなって、真治さんの首に回した手に力を込めました。で
も真治さんったら、唇を閉じたまま、それをただわたしの唇に弱々しく重ねて
いるだけなんです。
(なにっ、もうーっ、そんなんじゃなくて、強くよ、もっと強くよ)
わたしは、心の中で叫んでいたんです。
つづく
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