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小説(転載) ADAM4/4

近親相姦小説
10 /08 2014
最終章

父「真紀おはよう」
気まずい重い空気の食卓
父さんはパンを僕はご飯を
粘土みたいに感じられるご飯を食べていた。
もう大分たつのに、父さんとの食事はいつも気まずい。
ときどき帰りが遅くなると心底ほっとする。
この気まずい空気に慣れることはまだない。
これからいつまで続くのだろう。
僕の犯した罪はいつぬぐうことができるのだろうか。
真紀「うん。おはよう。基樹もおはよう」
父「………」
基樹「ああ、おはよう姉さん」
父「基樹、話がある」
基樹「………」
僕はつかんでいた箸をとめ、
父さんの顔を見た。
よりいっそう重たい空気がながれる。
父「お前は高校を卒業したらここをでていけ」
基樹「………」
なんでとは聞けないな。あれだけのことをしたのだから
父「高校まではこの家にいさせてやる。だが、卒業したらすぐに真紀の前から消えろお前はもう家の人間ではない。
  私の息子でもない」
それはねがったりだな。
もしそうなれば
姉さんの弟ではなくなるわけだ。
だとしたら結婚だって戸籍上はできるのかもしれないから。
真紀「いやっ!!いやだよっ!!お父さん!!基樹を追い出さないで!」
姉さんが突然叫んだ。
皿を拭いていた、ふきんをぎゅっとつかんで
背中を向けている父さんの身体をじっとにらんでいる。
基樹「姉さん」
父「しかたがないだろう?お前は襲われたんだぞ?こいつに。大切なものを奪われたんだ。もう兄弟じゃない。他人でしかない」
だからそれがねがったりなんだよっ!!
僕は姉さんと一生添い遂げたいんだから
真紀「だめだよっ!!基樹と離れるなんていやっ!!基樹は基樹は」
父「わがままを言うんじゃないっ!!お前はもっと聞き分けのいいこだろう!!」
真紀「違うよ。真紀は聞き分けよくなんかないよっ!!ただそうすれば皆が受け入れてくれるから。そうしないと不安だから
  ただ父さんとかみんなの言うことをきいていただけだよっ!!でもそれじゃあいけないんだよっ!!ちゃんと自分の意志をもたないと!!
  基樹が教えてくれたんだよっ!!基樹が弟なのに年下なのに、姉の私に教えてくれたんだよっ!!」
父「だからそれがいけないといっているんだっ!!」
父さんがひときわ大きな声をあげる。
僕に対しては結構あったけど、姉さんに対して
こんな大声をあげているのは初めてみた。
きっと実際になかったことなんだろう。
今まで一度も。
父「なぁ?お願いだから、こいつのことは忘れてくれないか?そしてまた、私と一緒に二人で暮らそうそうすることが母さんの願いなんだから。」
母さんのことを出されると弱い。
最後まで死ぬ一瞬のときまで僕らをそして父さんを心配していた。
あの母さんにもはむかうような罪を犯してしまったのだから。
真紀「いやだっ!!絶対にいやだっ!!基樹とは離れないっ!!離れられないっ!!基樹が好きだから愛しているからっ!!」
父「大きな声をだすなっ!!」
結局父さんはどちらが大事なんだろう。
姉さんの身体?僕が陵辱した姉さんの身体?
それとも、世間体?
どっちもか。
父さんは普通のサラリーマンだし
こんなことがばれたら会社にいられなくなるかもしれない。
そうでなくても、会社の同僚に後ろ指をさされるに決まっている。
僕の犯した罪。
なんて重いものだったんだろう。
父「こいつを愛している?お前らは兄弟なんだぞ?なぁ?兄弟なんだ?誰も許してくれない血のつながった兄弟なんだよ」
父さんの力が抜けている。
僕はそれをじっと静かに見ていた。
真紀「私、基樹と寝たよ?基樹にあれから抱かれた」
父「ああ!?」
父さんの顔が驚愕にゆがむ
そうとしかいいようがないくらい
はげしくゆがむ。
真紀「基樹はやさしかったよ?なれていない私にもやさしかった。基樹がもっと好きになった」
父「馬鹿なっ!!なんてことをしたんだっ!!」
ばっちーんっ!!
僕は思わず席をたった。
姉さんが父さんに叩かれた。
姉さんにかけよろうとする。
父「お前は真紀にさわるな!!真紀がよごれるっ!!その汚い手で真紀にふれるなっ!!」
父さんの制止に僕は右手をぐっと握って
こらえた。姉さんが汚れるか
この姉さんが汚れてしまう。
それは耐えられない。
でも二人でなら、どこまでも落ちていける。
その自信はある。
確かに僕の胸にひそんでいる。
真紀「基樹は汚れてなんかいない!!基樹は私にいろんなことを教えてくれた。女の喜びとか快感とかいろんなことを」
父「馬鹿…やめてくれよ。お願いだからやめてくれ。お前達はお前達は兄弟なんだ。血がつながっているんだ」
父さんが脱力してとうとう、座り込んだ。
どさりと音がする。
父さんの大柄な身体が
力をうしなって、両手をぶらんと横にさげて
そして首を下にうなだれている。
真紀「基樹は…うっ!!」
基樹「姉さん?」
父「真紀?」
姉さんは突然、口を手でおおい、眉をしかめてから
洗面所に走っていった。
どうしたんだ?
突然?風邪がまだ完治していないとはいえ
吐き気が襲ってくるほど悪いのか?
だとしたら僕のせいだよな。
あんなことしたんだから。
僕は姉さんの後を追って、洗面所に向かった。
後ろから父さんもついてくる。
真紀「うっうげぇっ!!」
姉さんが洗面所の水を出しっぱなしにして、
うつむいて、吐いている。
基樹「姉さん?まだ風邪が…」
父「真紀…まさか…お前…」
父さんが呆然とした顔をして、どこを見るでもなく
目をさまよわせている。
信じられない事態になっているそんな感じだ。
真紀「うっうっ!!」
父「うそだろ?…お前…うそだろ?…」
基樹「姉さん?」
そこで僕も気がついた。
僕はわざと意識的に最初のころは違っていても
あの時はわざと、コンドーム、つまり避妊具をつけなかった。
たぶん意識的に。
それが僕の最大の罪だ。
つまり姉さんは僕の、実の弟の子供を赤ん坊を妊娠しているってことだ。
歓喜、衝撃、悲しさ、すべての感情が、僕の中をぐるぐると回っていた。
予想されていた事態。
のぞんでいたかもしれない事実。
父「おろしなさいっ!!今すぐおろしにいきなさいっ!!判子はもちろん押す。金だって出すからおろしにいきなさい!
  知り合いの信頼できる病院を知っているから、産婦人科を知っているから、おろしなさいっ!!」
真紀「………」
父「真紀!どうしたんだっ!!何を考えているお前まさかっ!!」
姉さんは少しうつむいていた考え込んでいた
顔を上にあげて、
なにか決心したような表情で父さんをみつめた。
めずらしい、姉さんの強い瞳
真紀「産むよ」
そうとだけつぶやいた。
僕の中にあった感情、歓喜、衝撃、悲しさ、罪悪感
その中の感情で、歓喜が一番まさった瞬間。
父「なにを…いっているんだ?」
真紀「私産むよ?基樹の子供を産むよ?兄弟だってかまわない。きっと幸せにするよ?してみせるよ?」
父「兄弟でできた子供が幸せになれるわけないだろうっ!!」
真紀「わからないじゃない?ねぇ?お父さんわからにでしょう?」
父「不幸になるに決まっている!!世間から指を指されて、嫌われるに決まっている!!」
真紀「そうかもしれない。でもそれでも、基樹と私の子ならかわいいから」
父「お前は狂っているよ。おかしくなっている」
真紀「かもしれないね。基樹によって狂わされたのかもしれない。でも後悔していない」
父「だからっ!!今なら間に合うからっ!!お願いだからおろしてくれ!!なぁおろしてくれよっ!!」
父さんが姉さんにしがみついて、ひざまずいて懇願している。
僕はひきょうかもしれないけど、その様子をじっとみつめていた。
心臓はばくばくなっていたし
目も大きく見開かれていたかもしれない
でも何もいえない。
真紀「だめだよ。私は、基樹の子を産むから」
父「やめてくれ!!そんなのろわれた子を産むのはやめてくれっ!!」
のろわれた子?
そうなのか?
誰からも祝福を受けられない。
のろわれた子を産んでしまうのか?
姉さんは。
産ませてしまうのか?
僕は。
父「だから。だから…」
真紀「ここを出て行くよ。父さんの前から消えるから。基樹と一緒に暮らすから二人で一緒に」
そう言って姉さんは、父さんのしがみついている腕を振り払い
僕の腕をつかんで呆然としている僕の腕をつかんで
そして二階に行った。
父「真紀っ!!」
父さんの叫び声が聞こえる。
それを無視して、僕らは自分の部屋に行った。




それからすぐに、荷物をできる限りの荷物を持って
家を出て行った。
僕が姉さんと僕自身の二人分の荷物を持って
姉さんの後をついていった。
姉さんは、泣いていた。
静かに
けれど激しく泣いていた。
肩をふるわせて
もし僕が、この重たいひどく重たい荷物を持っていなければ
すぐにでもかけよって
そして抱きしめてあげたかった。
震える小さな細い悲しい肩を。










そして、しばらくの時がたった。
僕はあれからすぐに学校をやめ
アルバイトをしている。
朝は、新聞配達
そして昼はガソリンスタンド
夜は、交通整理
急がしかった。
姉さんに、いいや、真紀に会える暇が
なくなってそれがすごく心配でそしてさびしかったけど
小さな僕らには自分自身しか頼れるものがないから
だから一生懸命汗を流した。
安いアパート、風呂もない
トイレは共同
そこで僕らは長い月日を過ごした。
幸せな日々、朝は姉さんの手で起こされ
姉さんの作った弁当を渡され
そしてバイトにあけくれる
海原とは、手紙のやりとりをしている。
今度いつか会うつもりだ。
手紙には、最後の手紙にはこう書かれてあった。

 くやしいけど、つらいけど、お前をあきらめる。
 まだ基樹と、真紀さんを二人を祝福する気には正直なれない。
 けど、お前達には幸せになってほしい
 それが俺のたった一つの願いだから。
 がんばってほしい。
 そして生まれてくる子供を大切に立派に強い人間に育てていってほしい
 』

 そこには黒いしみがついていた。
多分海原の涙の後だ。
僕はそれを何度も見返して
同じように、ただ同じだと感じられるぐらいに
せつない思いをした。
たった一人の僕の親友
陽気で明るい僕のうらやましいとも感じられる親友
彼に会いたい。
そう願った。
真紀の次に、そして生まれてくる赤ん坊の次に
大事な、大切なたった一人の親友に。
それから引っ越して、このアパートに移り住んですぐに
父さんから手紙が来た。
どうして僕らのアパートの住所を知ったのかわからない。
たぶん海原を問いただしたのだろう。
必要のない限りは、海原以外には僕らのアパートの住所を
知らせていなかったから。
そこにはただ一言

  お前達を許したわけじゃない。
  これでどうか、子供を下ろしてくれ


とだけ書かれていた。
父さんのちょっとクセのある。
無骨な文字で。
それと、中絶に必要なだけのお金だけが同封されていた。
僕はそれを送り返した。
『ごめんなさい』
そうとだけ書いた手紙と一緒に
僕は父さんや他の人間の手を借りずにただ僕自身の力だけで
それだけで、真紀と子供をやしなっていきたかったから
無理かもしれないけど
きっといつかそうして幸せになりたかったから
僕の自信を僕自身の自信を強く持ちたいと想っていたから。











真紀「うっはっんっはあっ!!」
姉さんが苦しそうに息を吐く
病院に行って入院するお金のない僕らは
たった二人で、アパートの畳に
布団をしいて
真紀をそこに寝かして
子供を抱きしめるつもりでいた。
真紀「うっはっんんっはあっんっ!くっ」
姉さんの汗を綺麗な水でできるだけ綺麗な水でぬぐって
僕は声をかけた
基樹「真紀苦しいだろうけど、すごく痛いだろうけどがんばって」
僕はふがいない。姉さんが苦しんでいるのに
なんの手助けもできない。
こういうとき男は無力だ。
ただ、見守ることしかできない。
たしか女性の妊婦の子供を産むときの痛みは
男がそれを経験すると、その痛みに耐え切れず
死んでしまうとか聞いたことがある。
大げさかもしれないけど
たぶんそれぐらい激しい痛みなんだろう。
真紀「うっんんっくっくうぅうっんっはぁっ!!」
基樹「真紀、頭がでてきたよっ!!俺と真紀の子供の頭だよっ!!」
姉さんの股の間から
粘膜に混じって子供の頭がでてくる
黒い毛が生えた
小さな頭が
真紀「んんっくっはぁっんんつくうぅつっ!!」
そしてやがて、
首、胸
腹、足
すべてが見えてくる。
ずるっ!
やっと出てきた。
僕はその赤ん坊を抱きかかえて真紀に見えるように
した。
基樹「真紀!僕らの子供だよっ!!赤ちゃんだよっ!!」
真紀「はぁはぁはぁ。男の子?女の子?」
基樹「男だよっ!!小さなおちんちんがついてるよっ!!」
僕は濡れた手で赤ん坊を抱きしめた。
真紀「そう。男の子か…」
姉さんは目をつぶり
静かに息を吐いてはすって吐いてはすっていた。
でもおかしい。
赤ん坊が産声をあげない。
真紀「ねえ?基樹、どうしてその子泣かないの?産声は?」
基樹「わ、わからない。どうしてだ?」
僕は動揺した。
どうして泣かないんだ?
おかしいぞ?
真紀「その、背中を叩いてみて?そしたら泣くかもしれないから」
基樹「ああ」
僕は赤ん坊の背中を叩いた。
何度か力強く
力を加減している余裕はない
一刻も早く
僕と真紀の赤ん坊を泣かせなくては
そうしないと赤ん坊は、泣いてはじめて
それから息をするんだ
だから、泣かせないと
ばんばんっ!!
真紀「やさしくしないとだめだよ?基樹力強いんだから。」
姉さんの忠告が聞こえる。
それでも僕は赤ん坊の背中をたたいた
早く泣いてくれっ!!
一番最初の長男になるお前が
ここで息もできずに死んでしまうなんて
つらすぎるっ!!
これから、苦しい思いをする
つらい思いをする
赤ん坊に酷なことだけど
それでも僕はこの赤ん坊が、
泣いて、そして息をしてくれることを
願った。
赤ん坊「うっ!!うぎゃあああっ!!ほんぎゃああっ!!」
泣いた!!
基樹「ほっ……」
真紀「良かった。ちゃんと息はしている?」
基樹「ああ、しているよ?ちゃんと元気だよ」
僕は赤ん坊の口元に手をあてた。
赤ん坊は小さな弱い息を吐いている。
サルみたいなしわくちゃな顔
この子がこれからどんな姿に成長していくのか
僕と真紀のどちらに似ていくのか
わからないけど
とにかく今は丈夫そうでよかった。
そして僕は、その赤ん坊を真紀の隣に寝かした。
真紀は赤ん坊を見ながら
微笑んでいる。
その小さな手をやさしく握り締めて
ほほえんでいる。
やっぱり女は強いな。
こんなに苦しんだ
あとでも、こんなにやさしく笑えるんだから。










それから僕は、赤ん坊を寝かして
座っている真紀を後ろから抱きしめながら
静かに目を細めていた。
赤ん坊はすやすやと眠っている。
その小さな、お腹が上下に少しだけ揺れているのが
ここからでもわかるぐらいに。
真紀「男の子でよかったね」
真紀がささややくような小さな声でつぶやく
だけど僕の耳にははっきりとそのつぶやきが聞こえた。
この部屋には、この狭いアパートの一室には
僕と真紀そして生まれたばかりの赤ん坊しかいないのだから。
基樹「ああ、そうだね」
真紀「きっと強い子にそだつよ?基樹と同じくらいに強い子に」
それについては自信がないな。
僕は果たして強い人間だといえるのだろうか
欲望を抑えきれずに姉である真紀を襲った僕が
陵辱した僕が強い人間だといえるだろうか。
真紀「なんで?そんな悲しい顔をするの?」
真紀が抱きしめている僕を振り返って
僕の頬を右手でやさしくなでた。
真紀「子供が生まれたんだよ?こういう日は笑っていなくちゃ、ね?」
そうして力弱く微笑んだ。
基樹「そうだね。笑っていなくてはかわいそうだね」
僕もぎこちなく笑った。
ちゃんと笑えているかどうかわからない
でもできるだけやさしく微笑んだ。
基樹「この子供は僕らの赤ん坊は、これからどんなつらい目にあうんだろうな」
真紀「わからないよ。でも普通の子よりはたくさんつらい目にあうのかもしれない」
基樹「ああ」
真紀「でもしかたがないよ。誰だって子供はかわいいものだもん。大抵の人はね。だからできるだけ私達ができるだけ
   この子を守っていこうよ、ね?」
基樹「そうだね。僕のできる限りの力で、真紀とそしてこの赤ん坊を守っていくよ」
真紀「赤ん坊の名前決めないとね」
基樹「ああ、そうだね。男の子だから」
真紀「力とかどうかな?りきって読むの。力強い子になってほしいって意味で」
基樹「力か。いかもしれない。」
真紀「そうだね。でもやさしさも欲しいなぁ」
基樹「力優だめだな。りきゆうなんて名前聞いたこともない」
真紀「うふふっ。そうだね。」
基樹「まぁ、それは後で決めるとして、真紀もう疲れただろう?今はやすみなよ。真紀が眠るまで僕は起きているから」
真紀「うん。そうだね。少し疲れたよ。おやすみ」
基樹「ああ、おやすみ」
真紀の手を相変わらず綺麗な指先を
握り締めながら
僕はしばらく一人でたった一人で、赤ん坊の寝顔を見ていた。
真紀の髪に顔をうずめながら
今はこの瞬間は少なくとも幸せだった。
そして僕は目を閉じた。
遠くで、僕らが一生聞くことのできない、祝福の鐘の音が、からんころんと聞こえた気がした。




終わり。



終わりの始まり。

あれから2年の月日がたった。
海原「よぉ!基樹に真紀さん」
海原は高校を卒業して、大学に進学しているらしい。
あの手紙があってからしばらくして
こちらからも手紙を出し
家にはなかった電話もやっとつなげることができて
海原を家によんだ。
基樹「ああ、海原よくきたな」
海原「まぁな」
真紀「いらっしゃい海原くん。元気にしてた?」
海原「ええ!相変わらずおちゃらけてますよ?今度新しい恋人できたんですよ?」
そう言って、胸元の定期入れから写真を取り出してきた。
その写真を受け取りじっとみる。
可愛い男の子だった。
海原「同い年なんですけど、甘えたで、かわいいんですよ?」
すごい笑顔で、笑いながら、はにかみながら、海原はそう告げた。
基樹「へぇ?なかなか美人じゃないか?」
真紀「…ちょっと基樹に似てる…」
海原「あはははっ。やっぱそう思います?俺こういう顔に弱いんですよね。な?基樹?」
基樹「俺に聞かれてもしらないが」
真紀「そうか。でも幸せそうでよかったよ」
海原「あれからすぐは俺のキャラに似合わず泣いたんですよ?」
海原は軽く右目だけウィンクしてよこした。
基樹「そうなのか?」
海原「まぁなぁ。情けない話だけどなぁ。男が失恋でなくなんてさぁ」
真紀「ううん。そんなことないよ?男の子だってつらいときは泣くよ?ね?基樹?」
基樹「俺に聞かれてもなぁ」
力「ほぎゃあほぎゃああっ!!」
真紀「あ、力くん。どうしたのかなぁ?」
海原「ああ、その子が力っていうんだ?」
海原は力の僕らの子供に近寄り
その小さなまだ小さな手を握ってふらふらと揺らしている。
顔も自然と笑みがあふれているようだ。
やさしい笑みだな。
あのころの海原がときおり見せていて、やさしい笑み。
懐かしい気がした。
とても、とてもだ。
真紀「ええとぉ、言いにくいんだけどぉ海原くん少し後ろ向いていてくれないかなぁ?」
なにかにぴんときた真紀は、海原の顔を見ずにとぼけた顔をして
上をみながらつぶやいた。
その言葉で僕もぴんとくる。
ああなるほどね。
基樹「海原悪いけどそうしてくれないか?」
海原「あ~?まぁいいけどなぁ」
そして海原は胡坐をかいたままくるりと後ろを向いた。
もちろん手を使ってだけど。
真紀は安心したのか、自分の服のボタンをはずし
片方の胸だけを出して力にあげている。
つまり授乳の時間ってことだ。
さすが母親、力の顔をみただけですぐにそれがわかったんだな。
力「(ちゅぱちゅぱちゅぱ)」
力が一生懸命真紀のおっぱいを吸っている。
とても幸せそうな顔で、目を細めて
こっちまで笑顔になるぐらいの幸せそうな顔で。
こいつは少し真紀に似ている。
少し色が黒いところも切れ長の目も。
性格も僕よりも真紀に似ているとうれしいな。
僕みたいに自分の欲求を抑えきれずに誰かを傷つけるような
奴じゃなくて、真紀のようにやさしい人間になって欲しい。
きっと…きっとそうなるさ。
基樹「あははっ。ちょっとうらやましいなぁ」
海原「んだぁ?お前だって真紀さんの乳首吸ってるんだろ?毎日さぁ?」
真紀「ま、毎日じゃないよっ!!それに乳首って…」
基樹「お前の乳首よりはマシさ」
海原「だぁほっ!!ちょっと想像してもうたやないかっ!!」
基樹「あははははっ」
真紀「………うふふ」
海原「ったく気になるなぁ。でもお前達が幸せそうで安心した」
海原は後ろを向きながらやや背中をそらし
僕らにそう言った。
基樹「ん?」
海原「俺もあんなことしたからな。ずっと気になっていたんだ」
基樹「ああ…」
海原「だからな。お前達にはずっとこのまま幸せになってほしい」
基樹「ああ」
真紀「海原君もしあわせになってね。あなたたちは私達と違って結婚できるんだから」
海原「…ええ。どこか外国にでも行ってその前に金もためて。でも真紀さんと基樹だって結婚式ぐらいは…」
真紀「うふふっ。それがね」
基樹「実はな」
僕と真紀は顔を見合わせた。
そして静かに頬笑みあう。
基樹「結婚式あげたんだよ」
海原「あ?」
真紀「教会の中には入らなかったけど、でも教会の前でね。二人だけで」
基樹「指輪、安いの用意してな。」
真紀「交換したんだよ?でも基樹ったら私のサイズ間違えてて」
基樹「少し大きめのやつになってたな」
そしてまた二人で笑いあう。
そのときはもちろん力もいて
力は、乳母車に載せられて
なぜだか笑っていた。
真紀に似て表情がくるくる変わる子だから
お日様に照らされたその顔がとてもかわいかった。
僕らは、僕らの命の結晶である、力に見守られて
そして確かに小さな結婚式をあげたのだ。
真紀「それ今でも持ってるよ?もちろんね」
基樹「ああ、俺だってもちろん持ってるよ」
海原「けっ。そうかよ。ああ、熱いねぇ」
真紀&基樹「「あはははっ」」
それから海原は僕らの家に2時間ほどいて
いろいろなことを話して言った。
海原、真紀、僕の順に話す時間が長かったかな。
海原はときどき大げさに笑い転げたり
照れたりしながら、それでも幸せそうに例の恋人のことを話していた。










海原「すっかり遅くなったな」
基樹「ああ、そうだな」
夕暮れ、それよりも少し過ぎた時間。
僕は海原を送るために彼と一緒に外にでた。
この時間帯は、豆腐売りなんかの笛の音が聞こえてくる時間帯だった。
海原「ふぅ。まぁあてられにきたようなものだな」
基樹「そうか?」
海原「ああ、あれから二年か…」
海原は、道端にある石ころを高く蹴り上げてからそう言った。
基樹「そうなるな」
海原「お前らの、父さんは許してくれているのか?」
父さん僕ら二人は結婚しているのに、確かに結婚しているのに
それでも同じ父をもつ。血のつながった父をもつ。
ときどき噂されている。203号室のあの二人の夫婦は
実は血がつながった兄弟なんだと。
噂好きな主婦達が、そう話しているのを耳にする。
基樹「まだ会っていないな。前に電話したときは会いたくないと言っていた」
海原「そう、か。溝が深いな」
基樹「そうかも、な」
僕は、空を見上げた。
悪くない空だ。
あとで、真紀と力を連れ出して散歩するのもいいかもしれないな。
僕らはよく外に出て散歩をする、なにかするでもなく
金がないから、なにかを買うでもなく。
ただ長々とぽつりぽつりと話をしながら
ときどきぐずる力をあやして
笑う真紀の目をみつめて
ムードが出ればキスなんかもして。
そのときは力の目を僕が手でおおって。
そんなことをしている。
海原「まぁ、これからもいろいろあるだろうけど、な」
基樹「ああ、がんばるよ。これから、力と真紀、そして俺」
海原「力をあわせてか」
基樹「ああ」
海原「がんばっていきまっしょいっ!!ってやつだな」
基樹「ああ?」
海原「いやなんとなくうかんできたフレーズ」
基樹「そうか…」
がんばっていきまっしょいか
本当にそうだな。
うん。
がんばっていきまっしょいっ!!!









本当に終わり。
多分。

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eroerojiji

小さい頃からエロいことが好き。そのまま大人になってしまったエロジジイです。