小説(転載) 『姉への想い』 2/2
近親相姦小説
小説『姉への想い』
(後)
夕陽の淡い赤い光が、陽炎のように町をおおい始めていた。住宅街の歩道の上に優しい風が吹いている。
慶吾がゲームセンターから帰って、家に入ろうと玄関の鍵を開けている時、舗道をゆっくりと歩いて来る美奈子が目に映った。ちょっと右肩を下げるようにしてうつむき加減に歩く。美奈子の癖だ。
玄関の前まで来て「あら」っと、ちょっと驚いたように慶吾を見た。
「お帰り」
「どこ行ってたの?今頃まで・・・」
「うん。ちょっとね」
「さてはゲームセンターでしょ。まったくしょうがないんだから・・・」
「おふくろは?」
「叔母さんのとこ。今日は泊まって来るって」
「姉貴は何で一緒に行かなかったの?」
「だって、あなたがいるでしょう」
そう言いながら、美奈子は慶吾の脇をすり抜けて家の中に入った。
「お腹空いたでしょう?晩御飯、何にしようかしら。慶吾、何が食べたい?」
「何でもいいよ。お腹ペコペコだ」
「じゃあ、買い物に行って来ようかな。慶吾、つき合ってよ」
「いやだよ。姉貴は荷物を僕に持たせるんだから。それより、どっかに食べに行こうよ。ファミリーレストランでいいからさ。たまにはごちそうしろよ」
「そう?どうしようかな。私も、何か疲れちゃった。そうしましょうか」
テーブルの上のサラダとスープがきれいになくなっているのが功を奏したのか、美奈子はあまり抵抗せずに受け入れてくれた。
ファミリーレストランはバス停留所二つほど先にある。ちょっと距離があるが、でもバスに乗るほどでもない。それに、暮れなずむ舗道には優しい風が吹いていて、散歩気分で歩きたい気持ちだった。美奈子と慶吾はどちらから言うでもなく、あらかじめ決められていたかのようにバス停を通り越してゆっくりと歩いて行った。
美奈子はハイヒールを履いている。さっき出かける時、今日履いていた底の低い靴を靴箱にしまって、替わりにハイヒールを出した。美奈子のお気に入りだった。
しばらく歩いた時だった。美奈子がポツリと言った。
「私ね、今度結婚するの」
「そう」
慶吾はゴクリと唾を飲み込んだ後で、さも感心なさそうに答えた。補助ライトを灯した車が二人の脇を走り抜けて行く。
「それだけ?」
「じゃぁ・・・、おめでとう」
「じゃぁって、何よ」
「だって・・・、何て言えばいいんだ?」
「何って・・・、相手は誰?とか、いつ?とか、いろいろ聞くことあるでしょう?」
「この前、家に来たやつだろう?いいんだ、そんなこと別に・・・」
「反対?」
「姉貴はどうなんだ」
「そうね。・・・。どうなのかしら。わからないわ」
「わからないって・・・」
「全部こうやって決まってしまうと、これでいいのかしらって・・・」
「だったら止めたらいいじゃないか。もうちょっと後に延ばすとか」
「・・・、そういう訳にはいかないわ」
美奈子は淋しそうに言った。
「あんな男、つまらないじゃないか。僕、あんな男を兄貴なんて呼べないよ」
「そんなこと言わないで・・・」
「姉貴には、もっといい人たくさんいるよ」
「・・・」
「・・・」
「・・・、慶吾みたいに?」
美奈子は慶吾を見て目で笑った。それから、
「そうね」
と言って腕に手を回した。
「よせよ。皆んな見てるだろ」
「いいじゃないの、何恥ずかしがってるのよ。こうしてると恋人同士に見えるかしら」
美奈子は慶吾の腕に手を回して、身体を寄せるようにした。ハイヒールを履いていても、美奈子は慶吾の肩までしかない。確かに似合いのカップルかもしれなかった。
誰か知ってるやつに会うんじゃないかと慶吾は周りを見回したが、でもちっともいやじゃなかった。慶吾は美奈子をエスコートするように歩幅を合わせながら、ゆっくりと舗道を歩いて行った。
微風が心地よかった。ゆっくりと歩く二人をまるで包み込むように、二人に親密な空間をつくりだしている。
ちょっと緊張して、照れて頭を掻いた時、美奈子が声を出して笑った。
ファミリーレストランで、美奈子がメニューをオーダーしたあと、つけ足すように、慶吾はビールを注文した。美奈子があわてて止めようとしたが、ウエイトレスは何事もなくそのまま去って行った。美奈子はにらむように慶吾を見たが、フーッとため息をつくと、やれやれという顔をした。
慶吾は美奈子にビールを注ぐ。
「慶吾は自分で注ぎなさいよ。あとでおかあさんに怒られちゃう」
自分のコップにビールを注いで、
「姉貴の結婚に・・・、乾杯!」
と、乾杯の仕草をすると、美奈子は笑ってそれに応えてくれた。
「慶吾は彼女いるの?」
「いないよ」
「この前、家に連れてきた子は?香織さんていったかしら」
「あゝ、あれとは何でもないよ」
「でも、かわいい子だったじゃない」
慶吾の高校のクラスメートで、慶吾を彼氏と勝手に思いこんでいる。でも、慶吾はさほどでもない。
「若い子はうるさくってね。僕は年上のしっとりした女性の方がいいな」
「なによ、生意気言って・・・。でも、そうね。ちょっと派手な感じね。慶吾には合わないかもしれないわ」
慶吾は香織とキッスをしたことはある。
それと、香織の家に行った時、家には誰もいなくて、その時、慶吾は香織を抱こうとした。でも、ほとんど凹凸のない胸が味気なく、それに花柄の模様の付いた子供じみたパンティが慶吾の気を削いだ。だから香織が抵抗をするのをいいことに、途中で止めた。
いや、正直なところ、初めて女を知るということが怖かったのかもしれない。
「姉貴は?あの男とはどこまで進んだの?」
「どこまでって、普通よ」
「もうセックスはしたんだろう?」
そばを通りかかったウエイトレスが、驚いたように慶吾を見た。
「馬鹿ね。そんなに大きな声で・・・」
美奈子がちょっと顔を赤らめて言った。
「でもね。あんまり本気になれなくって・・・」
「どういうこと?」
「う~ん。何て言ったらいいかな。もっと素敵な人がいるんじゃないかって・・・」
「それって、三年前の男のことかな?」
「え?」
「夜遅く、泣いて帰ってきたことあったじゃないか。僕しっかり覚えているよ」
「あゝ、あの時のこと?う~ん、ちょっと違うと思う。今でもいるのよ、会社に・・・。でも、何とも思わないもの」
「そう・・・」
「でも、よく覚えてるわね」
「そりゃそうさ。いや、どんな男かは知らないさ。でも、あの時の姉貴のヌードはしっかり覚えているさ」
「あら。いや・・・」
美奈子は顔を赤らめた。
「綺麗だった・・・」
「止めて!」
「本当に綺麗だった。おっぱいなんかこんなにあってさ」
慶吾は美奈子をからかっている。美奈子が顔を赤らめているのを面白そうに眺めていた。
でも、慶吾は嘘は言っていない。慶吾は正直に言ってるだけなのだ。
「今でもしっかり目に焼き付いている。僕は姉貴が結婚するまでに、もう一度だけ・・・」
「慶吾!」
美奈子が慶吾をたしなめようとした。
その時、食事が運ばれてこなかったら、慶吾はまだ夢のように言いつづけたかもしれない。
三枚目のステーキが運ばれてきた時、
「驚いた。よくそんなにお腹に入るわね」
美奈子があきれたように言った。
「食べ盛りだもんな」
「でも、お金足りるかしら・・・」
「え?」
「そんなに持って来なかったし・・・。困ったわね。慶吾を置いて先に帰っちゃおうかしら」
慶吾はステーキを口に入れたまま驚いたように美奈子を見た。美奈子は声を出して笑った。
「嘘よ。私のこと、からかった罰よ。安心して幾らでもお食べなさい」
美奈子はビールを口に運びながら言った。でも、ちょっと美奈子の飲むペースが早いな、と慶吾は思った。
元々、酒に弱い美奈子が酔ってしまうのは自然の成り行きだったかもしれない。ファミリーレストランを出た時、美奈子がよろけた。
「こんなに飲んだことなかったわ。慶吾のせいよ」
美奈子が陽気に言って笑った。
タクシーを捕まえて家に帰った時、夜はすでにとっぷりと更けていた。美奈子から財布を渡されて、タクシー代を払ったのは慶吾である。玄関に入って、入り口に座り込んだ美奈子の靴を脱がせたのも慶吾である。
よろけて、壁や柱に身体をぶつけながらリビングルームのソファーにグッタリと横になった。
慶吾が持って来たコップの水を、喉をゴクゴクいわせながら飲み干した後、美奈子は慶吾に戸締まりの指図をした。今夜は母は帰って来ない。戸締まりをしっかりして、カーテンを閉めて・・・・。
この家に、この空間に美奈子と二人だけでいるんだ、という思いが慶吾の胸に沸き起こった。こういうことは今までに何度となくあったはずなのに、その時、何かドラマが生まれる予感がした。
慶吾は、ちょっと考えてから、風呂の支度をした。
リビングルームに戻ると、美奈子は「ちょっと苦しい」と言った。
「大丈夫?」
慶吾は、いつもとは違って、ソファーの美奈子の脚元の空いているスペースに座った。苦しいのか、胸が上下している。
「風呂に入って、早く寝ろよ」
慶吾は言った。美奈子の身体は慶吾のすぐ手の届く位置にある。
美奈子がジーンズのホックを外そうとしている。でも、酔っているからだろうか、うまく外せない。美奈子の顔が青白い。
「苦しいの?しょうがないなぁ・・・」
そう言いながら、慶吾は美奈子のジーンズのホックを外した。美奈子の腹の柔らかさを手で感じた。そのままジッパーを下げた。展開するようにジーンズが開いて、美奈子の白いパンティが見えた。
慶吾はちょっと考えてから、思い切ってジーンズを脱がせることにした。パンティストッキングのせいだろうか、それはすんなりと美奈子の身体を滑った。
「いいから・・・、そんなことしなくって・・・」
美奈子が気だるそうに言った。でも、酔いのせいだろうか、決して咎めているようではなかった。
慶吾は答えない。黙って作業を続けていた。
カーデガンはすでに脱いでいる。ジーンズを脱がせた後、長袖のティーシャツを脱がせた。胸のボタンを外している時、
「どこまで脱がせる気?」
美奈子がちょっと恨めしそうに慶吾を見つめた。慶吾は視線を合わせないまま、黙ってティーシャツを抜き取ると、パンティストッキングに手をかけて一気に下ろした。
慶吾が放り投げるから、美奈子が脱いだ服がリビングルームに散乱している。
「ねえ、慶吾・・・。どこまで脱がせる気なの?」
「いいじゃないか。もう風呂が沸く頃さ。疲れてるんだろう。風呂に入ったらいい」
リビングルームの明るい照明の下で、レースのついた純白の下着姿の美奈子はまぶしかった。
美奈子の目が慶吾を見つめている。
慶吾の心の中に、これ以上進めていいか、迷いが生じたのはこの時である。でも、慶吾はそれをうち消して、美奈子のブラジャーのホックに手をかけた。
美奈子は慶吾の手を止めようとした。慶吾はその手を静かに押さえると、そのまま作業を続けていった。
「私のことをどうする気?」
「どうもしないさ。ただ、風呂に入れるように・・・」
「そんなこと、自分でやるからいいわ」ちょっと怒ったように言った。
慶吾は美奈子の言葉が聞こえないかのように作業を続けた。ブラジャーを外そうとした時、美奈子とちょっと揉み合いになった。
「やめて・・・」
慶吾は、でも止めなかった。純白のブラジャーが、二人の手で引っ張られて、いびつに伸びた。
慶吾は争うことを止め、手を離した。美奈子がブラジャーを元に戻そうと悪戦苦闘している。でも、慶吾の手はすでに美奈子のパンティにかかっていた。美奈子の腰にしがみつくようにして下半身を押さえつけると、パンティに手をかけた。
美奈子は抵抗して脚をバタバタとさせた。美奈子の膝が慶吾の頭に当たった。でも慶吾は気にしない。
所詮、力の差は歴然としていた。
慶吾は美奈子のパンティをサッと両脚から引き抜くと、そのままわざと遠くに放り投げた。
慶吾は立ち上がった。立ち上がって、全裸の美奈子を見下ろした。黙って、手を出す。ブラジャーをよこせと言うように・・・。
美奈子は、ブラジャーを胸の当たりでしっかり握り締めていた。
「なぜ?」
美奈子は力なく言った。青白い顔が一層青白く見えた。
「さっき言っただろう・・・。見たいんだ。今のうちにに見ておきたいんだ・・・」
慶吾は手を出し続けた。美奈子は、すでに自分が全裸にされていることに気づいていた。ここで抵抗してもどうしようもない。すべて、自分の全裸の身体は弟の目の前であからさまになっている。
美奈子はどうしようもないように、観念してブラジャーをソファーの脇に置いた。
慶吾はそれを拾い上げると、また放り投げた。
「ゴメンな、姉貴。僕、もう一度だけ、姉貴を見たかったんだ。だって、姉貴は僕の姉貴だもんな。今はまだ、僕だけの姉貴だもんな」
慶吾は言った。慶吾の目の前に、美奈子の全裸の身体があった。
美奈子は、凝視するように慶吾の目を見ていた。
慶吾は視線を逸らさなかった。
美奈子のたわわな乳房を凝視していた。秘部を覆うちょっと薄目のヘアーも凝視するように見ていた。慶吾の目の前で甘美な曲線を描く美奈子の身体を見ていた。
あらためて、美奈子はこんなに美しいのかと思った。
「僕、姉貴が好きだったんだ。今でもさ。結婚する前に、僕の目に焼き付けておきたいんだ。結婚したら、もうこんなことは出来ないだろう?」
美奈子はジッと慶吾の目を見ていた。その顔がちょっと笑顔に変わったのは気のせいだろうか。
「私もよ」
美奈子が言った。
「え?」
「私も、慶吾が好きだったわ。もちろん今でもよ。昔は慶吾と結婚してもいいと思っていたわ。本当よ。でも、それは出来ないことなの」
「本当?」
「本当。でも、今、はっきりわかったような気がする。私は慶吾が好きだったんだわ。だからなかなか結婚に踏み切れないでいたのかもしれない」
慶吾は黙って美奈子の目を見ていた。
「不思議だわ・・・。慶吾に私の身体を見られても、ちっとも嫌やに思わないもの」
「・・・」
「きっと、今日が最後かもしれないわね」
「もっと、姉貴の身体を見せてくれ」
「いいわ。でも今日だけよ。今日だけ・・・。それでいい?」
「わかった」
慶吾の視線は容赦なかった。いつもは衣服に覆われている美奈子の全裸の身体を、何ら躊躇することなく、本当に容赦なく観ていた。いや、観察していた。自分の目に焼き付けておきたかった。
美奈子は最初、慶吾の顔をジッと見ていたが、そのうち視線を反らせてボンヤリと天井を見ている。さっき争ったときに乱れた髪の毛を手で直している。
しばらくしてから美奈子がいった。
「どう?満足?」
「・・・う、うん」
「私からもお願いしていい?」
「え?何を?」
「私だけじゃなくて、慶吾のも見せて・・・」
「え?」
「私だけが裸なんて卑怯じゃない。慶吾も脱いで。私、慶吾の身体、しばらく見てないもの」
「うん。いいよ」
それもそうだな、と慶吾は思って服を脱いだ。美奈子がソファーに寝そべったまま顔だけ慶吾に向けてジッと見ている。美奈子の視線をハッキリ感じた。
慶吾のモノが飛び上がるように九十度以上の鋭角で現われた時、美奈子が驚いたように言った。
「慶吾って、ずいぶん毛深いのね」
「そうかな?」
「それに、立派よ」
「ちょっと恥かしいな」
「そんなことないわ。私だって裸なんだから・・・」
慶吾がすべてを脱ぎ去って、脱いだモノを勢いよくリビングルームに放り投げると、そのまま美奈子の脇に座った。
リビングルームに放り投げられている美奈子と慶吾の衣服を見ながら、ちょっと笑いながら美奈子が言った。
「お行儀悪いこと」
「たまにはいいさ」
「そうね。何かとっても開放的な気分。しばらくこのままでいようか?」
「そうだな」
「あゝ、いい気持ち・・・」
美奈子が大きく伸びをした。美奈子の手が慶吾の肩に触れた。
「私が知っている慶吾のおちんちんって、まだとっても可愛らしかったのに」
「姉貴だってこんなに綺麗になって・・・」
「そう?」
「もうすぐ、姉貴はあの男のモノになってしまうんだな」
「・・・」
「それでいいの?」
「そうよ。私はあの人と結婚するわ。結婚して、この身体でセックスをして・・・」
「この身体で?」
「そう、この身体で毎日のようにセックスをして、そして子供を産んでおばあちゃんになって行くの」
慶吾は美奈子の身体を見つめた。いづれ子供が生まれ出るであろう女の器官も見た。その赤ん坊が生きるために唇をつけるであろう女の器官も見た。
慶吾の視線は美奈子の秘部に止まっている。あの男のモノはこの中に入るんだな。
「慶吾だって、そのうち素敵な彼女を見つけて、そして結婚をして、この身体でセックスをして・・・」
「この身体で?」
「そう、この身体で毎日のようにセックスをして、あなたから命を授かって赤ん坊が生まれて、そして年老いて行くの。そういうものなのよ」
美奈子は慶吾の身体を見つめる。あきらかに慶吾のモノに目が止まっている。
二人は全裸のまま、お互いのモノを見つめながら、動かないでいた。
先に触れたのは美奈子の方だった。美奈子はゆっくりと身体を起こすと慶吾のモノに触れた。慶吾のモノがピクンとした。
慶吾はそうするのが礼儀のように、片手を伸ばして美奈子の乳房に触れた。美奈子は抵抗しなかった。いや、身体をちょっと慶吾の方に向けるようにして触れやすいようにした。豊かな弾力を感じた。
「昔、僕は姉貴のおっぱいを吸ったことがあるって、姉貴言ってたろ」
「え?ああ、そんなことあったわね」
「やっていいかい?」
「ダメ」
美奈子は言った。でも、その口調は決して咎めているようではない。慶吾はそう感じた。
だから、そのまま美奈子の身体を少し押すようにしながら、美奈子の乳首を口に含んだ。美奈子が
「くすぐったい」
と笑い声を立てた。
「吸っていい?」
慶吾は聞いた。
「ダメ!何言ってるの・・・」
美奈子ははぐらかすように答えた。でも、慶吾は舌で転がすようにしながら、美奈子の乳首を吸った。美奈子がちょっと声を漏らした。
美奈子の手は少し動いている。慶吾のモノの先端を包むように触れている。それは激しく慶吾のモノを刺戟した。
やっぱり美奈子の方が強い。慶吾の方が先に負けた。マスターベーションの快感とは違う。あきらかに自分以外の手によって慶吾は絶頂に導かれていた。
切ないような、たまらない気持ちになって、思わず顔を美奈子の胸に押し付けていた。美奈子の手が慶吾の頭を軽く押さえている。しびれるような快感が走って、そのまま飛び跳ねるように慶吾のモノから精液が溢れ出した。
それはドクドクと何回にも分けて床に飛び散った。そのまま、床の上に白い池をつくった。少し、美奈子の手にかかっている。それからソファーにも少しかかっている。
何故だかわからない。慶吾は「ゴメン!」と謝った。美奈子は溢れるような優しい笑みをこぼして、「慶吾も一人前だわね」と言った。
美奈子はソファーの汚れを拭こうとした。まだ酔いが残っているのか、少し身体をふらつかせながらティッシュペーパーを取りに行くと、それで自分の手の汚れと、ソファー、それからしゃがみ込んで床の汚れを拭いた。
慶吾は放心したように、ソファーにうなだれて座っていた。
美奈子は拭き終わると、さらに新しいティッシュを取り出して、慶吾のモノを包むようにして拭った。
「覚えてる?慶吾がまだ小さい頃、このおちんちんを自慢げに見せてくれたことがあったわね」
「そんなこと、あったかな」
「あの時、とっても可愛らしくって・・・。それがこんなになったのね。慶吾はもう立派な大人の男性なのね」
美奈子は楽しむように慶吾のモノを拭いている。美奈子の豊満な乳房が慶吾の目の前にあった。
慶吾は思っていた。何か美奈子にお礼をしなければならない。僕だけが満足してたんじゃ、きっといけないんだ。美奈子に失礼なんだ。
美奈子の手はまだ慶吾のモノを握っている。愛らしい玩具を弄ぶように・・・。慶吾のモノはすでに勃起している。いや、さっきから勃起しっぱなしだ。
「お姉ちゃん、いいかな?」
「いいって、何を?」
「僕、我慢できないよ」
「我慢できないって・・・、いいのよ、また出しても・・・」
「そうじゃなくって・・・。僕、お姉ちゃんと・・・」
そう言いながら、脇の下に両手を入れて美奈子を持ち上げると、ソファーの上の美奈子の身体を押し倒していった。
美奈子が慌てた。
「ダメよ!慶吾!それはダメなことなの。しちゃいけないことなの」
「そんなこと言ったって、僕はもう我慢できないよ」
慶吾はすでに美奈子の上に乗りかかっていた。美奈子はしっかりと脚を閉じている。
「やめて!慶吾!私を悲しませないで・・・」
慶吾は手を美奈子の脚に押し当てて、そして開かせようとした。堅く閉じている美奈子の脚を無理やり広げようとする。
慶吾は、思いっきり押さえつけた。それから、秘部を目で確認した。
前に高校の友人からエロ本を見せられたことがある。そこには女性の性器が露骨に写されていた。ちっとも美しくなかった。いやむしろグロテスクにさえ見えた。
しかし、今はそうではなかった。とっても可愛らしく、美しくさえ感じた。美奈子の秘部は美奈子の身体の一部、これも美奈子自身には違いない。
美奈子は身体を起こそうとした。逃げようとした。慶吾は全身の力を使って美奈子の身体を押さえつけようとする。その瞬間、慶吾の腰が美奈子の両脚の中に割り込まれた。
もう一度、その位置を目で確認する。モノを押し当てた。
「ここでいいのかな?」
「慶吾!やめて・・・!」
何回かやり直して、やっと奥行きのある位置を感じ取ると、そのまま、ゆっくりと挿入していった。
「ダメ!ダメなのよ」美奈子は喘ぐように叫んだ。
でも、すでに慶吾のモノはその先端が美奈子の中に納まっている。
その部分が濡れているのはわかっていた。でも、慶吾のモノは窮屈に圧迫を受けていた。
慶吾は性急に腰を動かした。
「痛い・・・!」
美奈子が逃げるように身体を上方向にずらそうとしている。顔が横向きになっている。
慶吾のモノがズッズッっと少しづつ美奈子の中に入っていくのがわかって、慶吾はさらに激しく腰を振った。
それがしっかり最後まで入った時、美奈子が泣くようなため息を漏らした。
「慶吾・・・!」
「お姉ちゃん!いくよ!」
慶吾は腰を激しく振った。ただ性急に腰を動かした。
「慶吾・・・、絶対にダメなことなのよ。どうしたらいいの・・・」
美奈子は声を喘がせながら言った。でも、何と言っても、すでに現実はそうなっていた。
「僕・・・、お姉ちゃんが好きなんだ。だから・・・、どうしようもないんだ」
「・・・、本当に・・・、これだけだからね・・・」
いつの間にか、美奈子の手は慶吾の背中に巻きついていた。美奈子のカモシカのような脚は、慶吾の腰に巻きついていた。
慶吾の顔は美奈子の髪の毛の中にある。そう、美奈子の匂いだ。それが慶吾を激しく刺戟している。
ソファーの上で、美奈子と慶吾の姉弟は激しくもつれ合っている。本当に一つになっていた。
それはすぐに訪れた。慶吾の中に、切ないような、悲しいような感情が沸き起こって、それから、身体がはじけるような感覚がして、そして、慶吾は絶頂を迎えていた。
ドクドクと、精液が美奈子の中に入っていくのがわかった。
「慶吾!ダメよ!」
美奈子の叫ぶような声がした。その理由は、慶吾にもわかった。やってはいけないことをしてしまったと思った。
ドクドクいわせながら、慶吾は美奈子から身体を離した。ドクドクと溢れ出ている精液は、止まらず、美奈子の腹から乳房に飛び散って、さらに、美奈子の顔と髪の毛にかかった。
美奈子はあわてて起き上がろうとした。その拍子に、慶吾の身体ともつれた。バランスを失って、そのまま、二人とももつれるように、ソファーから床に落ちた。
慶吾の膝が床に当たって、その直後、美奈子が頭から落ちて、頭が床に当たってゴツンという音を立てた。
美奈子はそのまましばらく動かない。慶吾も何かとっても悪いことをしてしまったような気がして、しょんぼりしていた。
どのくらい時間がたっただろう。
「まったく・・・、慶吾ったら」
怒ったように、頭を掻きながら美奈子が言った。
でも、その光景が無性におかしかった。先に笑い出したのは美奈子の方だ。つられて慶吾が笑った。そのまま二人は大笑いしていた。
「すぐお風呂に入りなさい」
美奈子は言った。その言葉は有無を言わせないものがあった。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
慶吾は心配だった。慶吾の精液は、間違いなく美奈子の中に入った。それは少量であっても、間違いなく入った。
「うん。大丈夫だと思う、今日は・・・」
「ほんと?」
「安心しなさい。いいから、そんなこと心配しないで、早くお風呂に入りなさい」
「お姉ちゃんは?」
「私もここかたずけたら、行くから・・・。どうせだから一緒に入ろう」
美奈子はそう言って笑った。
「慶吾はさっきまで私のこと姉貴なんて言ってたのに、今はお姉ちゃん?」
「そうだっけ?そうさ、僕のお姉ちゃんさ。大好きな、大好きな、僕だけのお姉ちゃんさ」
慶吾は、湯船の淵にひじをついて美奈子を見ながら言った。
子供の頃はともかく、大人の二人には一緒に浴槽に入るには狭すぎた。美奈子はシャワーを浴びながら髪の毛を洗っている。
慶吾の目は美奈子の全裸の身体を横から見ている。
「今日は頭は洗わない日なんだけど・・・、さっき慶吾のが付いちゃったでしょう?」
「酔いは覚めた?」
「あんなことされたら、酔いなんて飛んで行っちゃうわ」
「ゴメン」
「ううん。そんなことないの」美奈子は決して嫌がっているようには見えない。
シャンプーの泡が、美奈子の身体をなぞるように落ちている。
「そんなにジロジロ見ないでよ」
「いいじゃないか。でも、とっても綺麗だよ」
「いや~ね」
「お姉ちゃんて、スタイルいいな」
「そうかしら?」
慶吾は浴槽から勢いよく出た。
「背中、洗ってやるよ」
慶吾はスポンジに石鹸を染み込ませると、美奈子の後ろに立って、美奈子の背中を洗った。
美奈子は笑って、されるままになっている。
慶吾は片手で美奈子の背中を洗いながら、もう片方の手で美奈子の胸に触れた。そして、恐る恐る手を動かした。美奈子は怒るかと思った。でも美奈子は黙ってされるままになっている。
そのうち、慶吾はスポンジを放り出して、両手で美奈子の乳房に触れた。石鹸のせいで手が滑るように乳房をなぞった。
美奈子はまだ髪の毛を洗っている。でもその動作は、心なしかちょっとゆっくりになったようだ。
「慶吾・・・。キッスしようか?」
その時、美奈子が言った。背中を向けたまま、顔だけ慶吾の方に向ける。
「うん」
慶吾は美奈子の唇に口を付けていった。美奈子の唇を吸った。
「また元気になってるのね」
美奈子の手が慶吾のモノに触れている。
慶吾は、また美奈子と一つになりたくなった。でも、その位置は、美奈子のへそのあたりにあって、美奈子の秘部に届かない。
「お姉ちゃん。僕、また・・・」
シャワーのお湯が二人の身体にかかっている。まるで豪雨の中にいるようだ。
美奈子がちょっと顔を離して、こぼれるような笑みを浮かべながら慶吾の顔を見た。もう一度、今度は抱きつくように・・・。慶吾の口の中に美奈子の舌が入ってきた。慶吾の舌と絡まった。慶吾はむさぼるように美奈子の舌を吸った。
「お姉ちゃん。凄いな」
「ふふふ・・・」
慶吾は美奈子の大胆さに正直驚いていた。その時、突き放すように美奈子が離れた。すでに慶吾のモノには触れていない。
「そんなこといいから、早く出てよ。私も湯船に浸かりたいわ」
「よし」
シャワーのノブを持って美奈子の身体の石鹸を流してあげた後、美奈子はそのまま浴槽に浸かった。
慶吾は軽くシャワーを浴びると、そのまま浴室から出て、身体を拭いた。そのまま服を着るでもなく、美奈子の出てくるのを待った。
浴室のドアは大きく開かれている。
「もう寝なさい。夜も遅いんだから」美奈子は言った。
「いや、お姉ちゃんを待ってる」
「しょうがないわね」
「僕、今日のことは一生忘れないよ」
「そんなことダメよ。早く忘れるの。きっとすてきな彼女が出来たら、私のことなんかどうでもよくなるわ」
「そんなことない。絶対、そんなことないよ」
続いて湯舟から出た美奈子をバスタオルを広げて迎えた。美奈子は髪の毛を自分で拭きながら、でも身体は慶吾が拭くのに任せている。美奈子の肌がまぶしかった。水滴を弾くようにピチピチとしている。
その後、慶吾は全裸のまま、美奈子は一応バスタオルを巻いて、先に階段を上がった慶吾が、一応自分の部屋の前で立っていた時、美奈子が自分の部屋に入ろうとして慶吾の方を見た。慶吾のモノはすでに勃起している。いや、さっきからずっとそのままなのだ。まだずっと美奈子のそばにいたい、美奈子から離れたくない、そんな慶吾の気持ちは、表情に、いや身体にしっかり表れていたに違いない。
美奈子はちょっと笑みを浮かべ、それから、どうする?と言うように首を傾げて見せた。
「いいの?」
「ここまで来ちゃったら、どうってことない。一緒に寝よう」
慶吾は飛ぶように美奈子の部屋へ入った。美奈子は優しく慶吾を迎えた。
美奈子のベッドのカバーを乱暴に外し、全裸のまま寝っころがった慶吾に、美奈子は自分の髪の毛を乾かしながら言った。
「慶吾、初めてだったの?」
「うん」
「私が初めてでよかったのかしら?」
慶吾はそのまま黙って天井を見ていた。
「とっても素敵だった・・・、嬉しかった・・・」
「そう?」
「お姉ちゃん、もう一度見たい」
「もうちょっと待って・・・」美奈子は髪を乾かしている。
「そんなの、いいから・・・」
慶吾はちょっと起き上がるようにしながら、早く!と言った。
しょうがないわねぇ、というように、ベッドの脇に立って、慶吾のモノを見つめた。慶吾のモノは所在なくまっすぐ天井を向いている。
「もう一度だけ・・・」
「もう一回?元気なのね」
「ステーキの分はお返ししなくっちゃ」
「ステーキ?」
「さっき、レストランでステーキを三枚ご馳走になったからな」
「だから三回?」
「うん」
「何を言ってるやら」
でも、美奈子は笑いながら電気を消すと、バスタオルを外して慶吾の脇に寝た。
「どうしたらいいのかな?」慶吾が言った。
「もう一度、キッスしようか?」美奈子がいたずらっぽく言った。
慶吾は身体を起こすとそのまま美奈子の上にかぶさっていった。美奈子は両手を広げながら慶吾を迎えた。そのまま、重なるように、キッスをしながら美奈子の中に挿入していった。
美奈子の秘部は逆らわなかった。むしろ進んで慶吾のモノを受け入れた。
真上から美奈子の顔を覗き込んだ時、美奈子は真っ直ぐ慶吾を見返していた。慶吾が腰を振り始めた時、美奈子がちょっと声を漏らした。
「もうちょっと優しくね」
「もっとゆっくり?」
「そう・・・、女性には優しくするものよ」
慶吾のモノは今度は長持ちした。ピストン運動がどうしても性急になる。でも美奈子は、今度は痛いとは言わなかった。
いつの間にか、美奈子は目をつむっている。
美奈子の身体は仰け反るようにして、深く深く慶吾を向かえた。
慶吾が腰を振るたびに、応えるように美奈子が声を上げる。
その声が、だんだん泣くような声に変わっていって、それから喘ぐような声に変わっていった。
「お姉ちゃん。僕、いきそうだ」
慶吾は絶頂を迎えていた。
「・・・、もうちょっと待って・・・」
「我慢できないよ」
「男の子でしょ。もっと我慢するの」
慶吾はたまらなくなって、腰の動きを止めた。そうしなければ、すぐにでも爆発してしまいそうだった。
今度は、美奈子が明らかに腰を降り始めていた。
「慶吾。止めないで・・・」
「だって、僕・・・」
「いいわ、いってもいいから。だから止めないで・・・」
「お姉ちゃん・・・、僕、出そうだ」
美奈子が叫ぶような声を上げた。
「初めてよ、こんなの・・・」
そう叫ぶように言って、跳ねるように身体を痙攣させた。
慶吾は放出していた。ドクドクっと慶吾の精液は美奈子の中に入っていく。
「このままで・・・、いいのかな・・・」
「・・・いいわ」
「中に・・・、中に入っちゃっているよ」
「いいわ。もうこうなったら、どうでもいいわ」
美奈子は逃げようとしなかった。いや、むしろ慶吾が離れないように、堅く堅く慶吾を抱きしめていた。一適も漏らさず吸い取るように、腰を振って応えていた。
そのままどのくらい時間がたっただろう。
慶吾は放出した後も、美奈子に覆い被さるようにしていた。
「慶吾、知ってる?いま、私の中に入った慶吾のモノね」
「え?精液のこと?」
「そう、それ、ね、二年くらいは私の身体の中に残るものなのよ」
「え?」
「そういうものなの。女の身体って・・・」
「ふ~ん・・・」
「男の人って、終わったらそれでおしまい。でも、ね、女っていうのはその男のものを二年も自分の身体の中に大事にとっておくのよ」
「・・・・・・」
「だから、ね・・・」
それから、美奈子は黙った。しばらくして慶吾は聞いた。
「だから、何?」
「だからね。慶吾、私のこと、忘れないでね。ずっとずっと忘れないでね。私が結婚しても、慶吾が結婚しても、慶吾は私のたった一人の弟なんだもの。大好きな大好きな、たった一人の弟なんだもの・・・」
慶吾は幸せだった。世の中にこんなに素晴らしいことがあったのかと思った。
生まれて初めて、本当に美奈子と一緒になれたような気がした。僕は、本当に美奈子が好きなんだ、と思った。
それから・・・。美奈子の性(さが)を垣間見たような気がした。普段からは想像もつかない美奈子の乱れを見て、そして、それが慶吾自身によって導き出されたものであることがわかって、それが慶吾には嬉しかった。
「忘れるもんか」
慶吾は叫ぶように答えていた。美奈子がいとおしかった。慶吾の欲求、本当に無理な欲求に優しく応えてくれた美奈子が無性にいとおしかった。
そして、慶吾の力でこんなに輝いてくれた美奈子を哀しいほどせつなく感じた。
慶吾のモノが力を失って、ポロンと美奈子の秘部から外れた。
朝、ベットで目覚めた時、美奈子はすでにいなかった。自分が全裸でいることに気が付いて、慶吾は気恥ずかしい反面、昨日のことを鮮明に思い出した。
さっきまで姉はここに寝ていたんだ。ここに全裸で寝ていて、そう、僕とセックスしてたんだ。シーツの跡を手でなぞりながら、でも、なぜか遠い夢の中の出来事のような気がした。
服を着ようかどうしようか迷ったが、そのまま全裸で部屋を出た。姉がまだ全裸のままでいたら、僕だけ服を着て行ったら可哀想じゃないか、そう思った。
慶吾のモノが小さく縮こまっている。
リビングルームに下りていくと、美奈子はすでにスーツに着替えていて、エプロンをしながら朝食の準備をしていた。
「なによ、お行儀の悪いこと。学校に遅れるわよ。早く着替えてらっしゃい」
凛として慶吾を寄せ付けない毅然としたものを感じた。
まだ美奈子は全裸でいるのではないかと淡い望みを抱いていた慶吾は、普段と変わらぬ美奈子の様子にちょっとがっかりしたっていうか、安心したっていうか・・・。
「着がえる前にちゃんとシャワーを浴びるのよ」
でも、シャワーは浴びずに自分の部屋に引き上げると学生服を着た。慶吾の身体に美奈子の匂いが染み付いているような気がした。
朝食を食べている間も、美奈子はそのことに触れなかった。慶吾の朝食の準備をしながら、ちょっと鼻歌を歌っているようだ。
慶吾が新聞を見ながらパンを口に放り込んだ時、
「新聞を見ながら食べないの。まったく、いつまでも直らないんだから・・・」
いつに変わらぬ美奈子の口調だ。
「サラダもちゃんと食べるのよ」
慶吾は「はい、はい」と言って、口の中に放り込んだ。
二人一緒に玄関を出ようとした時、慶吾は美奈子の腰に手を回して、そしてキッスをしようとした。狙っていたタイミングだった。
「ダメよ!」
美奈子は身体をサッと反らして、諭すように慶吾を制した。
「いいじゃないか。キッスくらい」
「ダメよ。もうお終い。昨日のことは忘れるのよ」
「だって・・・」
美奈子は満面の笑みを浮かべて言った。
「慶吾にご馳走したのは、ステーキ三枚。そして慶吾は三度したわ。これでお終いなの。もうお忘れなさい」
「チェッ!」
慶吾は靴を履いて玄関を出た。そのあとを美奈子が続いた。美奈子が鍵を掛けている間、慶吾は美奈子の後ろ姿を見ながら考えていた。
「ちょっと待てよ、姉貴。いや、二回だ。ステーキは三枚でも、できたのは二回だ。一回は失敗だったものな」
最初の一回は、美奈子の手で触られただけで爆発してしまったのだ。「そうだよな?姉貴」
鍵を掛け終えて振り向いた美奈子は、笑みを浮かべながら指を唇に当ててシーッと言った。それから、ちょっと辺りを見回して、背伸びするように慶吾の唇の端に軽くキッスをすると、きょとんとしている慶吾に声を出して笑って、そのまま、慶吾にかまわず、舗道をまっすぐ歩いて行った。
慶吾は美奈子の後ろ姿を目で追いながら、思わず笑みを浮かべていた。もう一回チャンスがあるということだろうか。
でも、反面、もうこんなことは二度とないようにも思われた。あの潔癖な美奈子は二度とあんな隙は見せないだろう。いや、そういうことじゃなくって、僕がまた姉に挑むようなことがあれば、何よりも姉が悲しむだろうと思った。そんなことをしちゃ、もういけないんだ。姉を悲しませては絶対にいけない。
しかし・・・、と慶吾は考える。それでいいじゃないか。あんな至福の時を過ごせたんだ。昨晩のことは僕とお姉ちゃんだけの永遠の秘密だ。少なくとも、二人だけでそれを共有できたんだ。
美奈子はちょっと右肩を下げるようにしてうつむき加減に歩く。慶吾の自転車が美奈子の側をすり抜けて追い越した時、美奈子が爽やかに手を振った。
(後)
夕陽の淡い赤い光が、陽炎のように町をおおい始めていた。住宅街の歩道の上に優しい風が吹いている。
慶吾がゲームセンターから帰って、家に入ろうと玄関の鍵を開けている時、舗道をゆっくりと歩いて来る美奈子が目に映った。ちょっと右肩を下げるようにしてうつむき加減に歩く。美奈子の癖だ。
玄関の前まで来て「あら」っと、ちょっと驚いたように慶吾を見た。
「お帰り」
「どこ行ってたの?今頃まで・・・」
「うん。ちょっとね」
「さてはゲームセンターでしょ。まったくしょうがないんだから・・・」
「おふくろは?」
「叔母さんのとこ。今日は泊まって来るって」
「姉貴は何で一緒に行かなかったの?」
「だって、あなたがいるでしょう」
そう言いながら、美奈子は慶吾の脇をすり抜けて家の中に入った。
「お腹空いたでしょう?晩御飯、何にしようかしら。慶吾、何が食べたい?」
「何でもいいよ。お腹ペコペコだ」
「じゃあ、買い物に行って来ようかな。慶吾、つき合ってよ」
「いやだよ。姉貴は荷物を僕に持たせるんだから。それより、どっかに食べに行こうよ。ファミリーレストランでいいからさ。たまにはごちそうしろよ」
「そう?どうしようかな。私も、何か疲れちゃった。そうしましょうか」
テーブルの上のサラダとスープがきれいになくなっているのが功を奏したのか、美奈子はあまり抵抗せずに受け入れてくれた。
ファミリーレストランはバス停留所二つほど先にある。ちょっと距離があるが、でもバスに乗るほどでもない。それに、暮れなずむ舗道には優しい風が吹いていて、散歩気分で歩きたい気持ちだった。美奈子と慶吾はどちらから言うでもなく、あらかじめ決められていたかのようにバス停を通り越してゆっくりと歩いて行った。
美奈子はハイヒールを履いている。さっき出かける時、今日履いていた底の低い靴を靴箱にしまって、替わりにハイヒールを出した。美奈子のお気に入りだった。
しばらく歩いた時だった。美奈子がポツリと言った。
「私ね、今度結婚するの」
「そう」
慶吾はゴクリと唾を飲み込んだ後で、さも感心なさそうに答えた。補助ライトを灯した車が二人の脇を走り抜けて行く。
「それだけ?」
「じゃぁ・・・、おめでとう」
「じゃぁって、何よ」
「だって・・・、何て言えばいいんだ?」
「何って・・・、相手は誰?とか、いつ?とか、いろいろ聞くことあるでしょう?」
「この前、家に来たやつだろう?いいんだ、そんなこと別に・・・」
「反対?」
「姉貴はどうなんだ」
「そうね。・・・。どうなのかしら。わからないわ」
「わからないって・・・」
「全部こうやって決まってしまうと、これでいいのかしらって・・・」
「だったら止めたらいいじゃないか。もうちょっと後に延ばすとか」
「・・・、そういう訳にはいかないわ」
美奈子は淋しそうに言った。
「あんな男、つまらないじゃないか。僕、あんな男を兄貴なんて呼べないよ」
「そんなこと言わないで・・・」
「姉貴には、もっといい人たくさんいるよ」
「・・・」
「・・・」
「・・・、慶吾みたいに?」
美奈子は慶吾を見て目で笑った。それから、
「そうね」
と言って腕に手を回した。
「よせよ。皆んな見てるだろ」
「いいじゃないの、何恥ずかしがってるのよ。こうしてると恋人同士に見えるかしら」
美奈子は慶吾の腕に手を回して、身体を寄せるようにした。ハイヒールを履いていても、美奈子は慶吾の肩までしかない。確かに似合いのカップルかもしれなかった。
誰か知ってるやつに会うんじゃないかと慶吾は周りを見回したが、でもちっともいやじゃなかった。慶吾は美奈子をエスコートするように歩幅を合わせながら、ゆっくりと舗道を歩いて行った。
微風が心地よかった。ゆっくりと歩く二人をまるで包み込むように、二人に親密な空間をつくりだしている。
ちょっと緊張して、照れて頭を掻いた時、美奈子が声を出して笑った。
ファミリーレストランで、美奈子がメニューをオーダーしたあと、つけ足すように、慶吾はビールを注文した。美奈子があわてて止めようとしたが、ウエイトレスは何事もなくそのまま去って行った。美奈子はにらむように慶吾を見たが、フーッとため息をつくと、やれやれという顔をした。
慶吾は美奈子にビールを注ぐ。
「慶吾は自分で注ぎなさいよ。あとでおかあさんに怒られちゃう」
自分のコップにビールを注いで、
「姉貴の結婚に・・・、乾杯!」
と、乾杯の仕草をすると、美奈子は笑ってそれに応えてくれた。
「慶吾は彼女いるの?」
「いないよ」
「この前、家に連れてきた子は?香織さんていったかしら」
「あゝ、あれとは何でもないよ」
「でも、かわいい子だったじゃない」
慶吾の高校のクラスメートで、慶吾を彼氏と勝手に思いこんでいる。でも、慶吾はさほどでもない。
「若い子はうるさくってね。僕は年上のしっとりした女性の方がいいな」
「なによ、生意気言って・・・。でも、そうね。ちょっと派手な感じね。慶吾には合わないかもしれないわ」
慶吾は香織とキッスをしたことはある。
それと、香織の家に行った時、家には誰もいなくて、その時、慶吾は香織を抱こうとした。でも、ほとんど凹凸のない胸が味気なく、それに花柄の模様の付いた子供じみたパンティが慶吾の気を削いだ。だから香織が抵抗をするのをいいことに、途中で止めた。
いや、正直なところ、初めて女を知るということが怖かったのかもしれない。
「姉貴は?あの男とはどこまで進んだの?」
「どこまでって、普通よ」
「もうセックスはしたんだろう?」
そばを通りかかったウエイトレスが、驚いたように慶吾を見た。
「馬鹿ね。そんなに大きな声で・・・」
美奈子がちょっと顔を赤らめて言った。
「でもね。あんまり本気になれなくって・・・」
「どういうこと?」
「う~ん。何て言ったらいいかな。もっと素敵な人がいるんじゃないかって・・・」
「それって、三年前の男のことかな?」
「え?」
「夜遅く、泣いて帰ってきたことあったじゃないか。僕しっかり覚えているよ」
「あゝ、あの時のこと?う~ん、ちょっと違うと思う。今でもいるのよ、会社に・・・。でも、何とも思わないもの」
「そう・・・」
「でも、よく覚えてるわね」
「そりゃそうさ。いや、どんな男かは知らないさ。でも、あの時の姉貴のヌードはしっかり覚えているさ」
「あら。いや・・・」
美奈子は顔を赤らめた。
「綺麗だった・・・」
「止めて!」
「本当に綺麗だった。おっぱいなんかこんなにあってさ」
慶吾は美奈子をからかっている。美奈子が顔を赤らめているのを面白そうに眺めていた。
でも、慶吾は嘘は言っていない。慶吾は正直に言ってるだけなのだ。
「今でもしっかり目に焼き付いている。僕は姉貴が結婚するまでに、もう一度だけ・・・」
「慶吾!」
美奈子が慶吾をたしなめようとした。
その時、食事が運ばれてこなかったら、慶吾はまだ夢のように言いつづけたかもしれない。
三枚目のステーキが運ばれてきた時、
「驚いた。よくそんなにお腹に入るわね」
美奈子があきれたように言った。
「食べ盛りだもんな」
「でも、お金足りるかしら・・・」
「え?」
「そんなに持って来なかったし・・・。困ったわね。慶吾を置いて先に帰っちゃおうかしら」
慶吾はステーキを口に入れたまま驚いたように美奈子を見た。美奈子は声を出して笑った。
「嘘よ。私のこと、からかった罰よ。安心して幾らでもお食べなさい」
美奈子はビールを口に運びながら言った。でも、ちょっと美奈子の飲むペースが早いな、と慶吾は思った。
元々、酒に弱い美奈子が酔ってしまうのは自然の成り行きだったかもしれない。ファミリーレストランを出た時、美奈子がよろけた。
「こんなに飲んだことなかったわ。慶吾のせいよ」
美奈子が陽気に言って笑った。
タクシーを捕まえて家に帰った時、夜はすでにとっぷりと更けていた。美奈子から財布を渡されて、タクシー代を払ったのは慶吾である。玄関に入って、入り口に座り込んだ美奈子の靴を脱がせたのも慶吾である。
よろけて、壁や柱に身体をぶつけながらリビングルームのソファーにグッタリと横になった。
慶吾が持って来たコップの水を、喉をゴクゴクいわせながら飲み干した後、美奈子は慶吾に戸締まりの指図をした。今夜は母は帰って来ない。戸締まりをしっかりして、カーテンを閉めて・・・・。
この家に、この空間に美奈子と二人だけでいるんだ、という思いが慶吾の胸に沸き起こった。こういうことは今までに何度となくあったはずなのに、その時、何かドラマが生まれる予感がした。
慶吾は、ちょっと考えてから、風呂の支度をした。
リビングルームに戻ると、美奈子は「ちょっと苦しい」と言った。
「大丈夫?」
慶吾は、いつもとは違って、ソファーの美奈子の脚元の空いているスペースに座った。苦しいのか、胸が上下している。
「風呂に入って、早く寝ろよ」
慶吾は言った。美奈子の身体は慶吾のすぐ手の届く位置にある。
美奈子がジーンズのホックを外そうとしている。でも、酔っているからだろうか、うまく外せない。美奈子の顔が青白い。
「苦しいの?しょうがないなぁ・・・」
そう言いながら、慶吾は美奈子のジーンズのホックを外した。美奈子の腹の柔らかさを手で感じた。そのままジッパーを下げた。展開するようにジーンズが開いて、美奈子の白いパンティが見えた。
慶吾はちょっと考えてから、思い切ってジーンズを脱がせることにした。パンティストッキングのせいだろうか、それはすんなりと美奈子の身体を滑った。
「いいから・・・、そんなことしなくって・・・」
美奈子が気だるそうに言った。でも、酔いのせいだろうか、決して咎めているようではなかった。
慶吾は答えない。黙って作業を続けていた。
カーデガンはすでに脱いでいる。ジーンズを脱がせた後、長袖のティーシャツを脱がせた。胸のボタンを外している時、
「どこまで脱がせる気?」
美奈子がちょっと恨めしそうに慶吾を見つめた。慶吾は視線を合わせないまま、黙ってティーシャツを抜き取ると、パンティストッキングに手をかけて一気に下ろした。
慶吾が放り投げるから、美奈子が脱いだ服がリビングルームに散乱している。
「ねえ、慶吾・・・。どこまで脱がせる気なの?」
「いいじゃないか。もう風呂が沸く頃さ。疲れてるんだろう。風呂に入ったらいい」
リビングルームの明るい照明の下で、レースのついた純白の下着姿の美奈子はまぶしかった。
美奈子の目が慶吾を見つめている。
慶吾の心の中に、これ以上進めていいか、迷いが生じたのはこの時である。でも、慶吾はそれをうち消して、美奈子のブラジャーのホックに手をかけた。
美奈子は慶吾の手を止めようとした。慶吾はその手を静かに押さえると、そのまま作業を続けていった。
「私のことをどうする気?」
「どうもしないさ。ただ、風呂に入れるように・・・」
「そんなこと、自分でやるからいいわ」ちょっと怒ったように言った。
慶吾は美奈子の言葉が聞こえないかのように作業を続けた。ブラジャーを外そうとした時、美奈子とちょっと揉み合いになった。
「やめて・・・」
慶吾は、でも止めなかった。純白のブラジャーが、二人の手で引っ張られて、いびつに伸びた。
慶吾は争うことを止め、手を離した。美奈子がブラジャーを元に戻そうと悪戦苦闘している。でも、慶吾の手はすでに美奈子のパンティにかかっていた。美奈子の腰にしがみつくようにして下半身を押さえつけると、パンティに手をかけた。
美奈子は抵抗して脚をバタバタとさせた。美奈子の膝が慶吾の頭に当たった。でも慶吾は気にしない。
所詮、力の差は歴然としていた。
慶吾は美奈子のパンティをサッと両脚から引き抜くと、そのままわざと遠くに放り投げた。
慶吾は立ち上がった。立ち上がって、全裸の美奈子を見下ろした。黙って、手を出す。ブラジャーをよこせと言うように・・・。
美奈子は、ブラジャーを胸の当たりでしっかり握り締めていた。
「なぜ?」
美奈子は力なく言った。青白い顔が一層青白く見えた。
「さっき言っただろう・・・。見たいんだ。今のうちにに見ておきたいんだ・・・」
慶吾は手を出し続けた。美奈子は、すでに自分が全裸にされていることに気づいていた。ここで抵抗してもどうしようもない。すべて、自分の全裸の身体は弟の目の前であからさまになっている。
美奈子はどうしようもないように、観念してブラジャーをソファーの脇に置いた。
慶吾はそれを拾い上げると、また放り投げた。
「ゴメンな、姉貴。僕、もう一度だけ、姉貴を見たかったんだ。だって、姉貴は僕の姉貴だもんな。今はまだ、僕だけの姉貴だもんな」
慶吾は言った。慶吾の目の前に、美奈子の全裸の身体があった。
美奈子は、凝視するように慶吾の目を見ていた。
慶吾は視線を逸らさなかった。
美奈子のたわわな乳房を凝視していた。秘部を覆うちょっと薄目のヘアーも凝視するように見ていた。慶吾の目の前で甘美な曲線を描く美奈子の身体を見ていた。
あらためて、美奈子はこんなに美しいのかと思った。
「僕、姉貴が好きだったんだ。今でもさ。結婚する前に、僕の目に焼き付けておきたいんだ。結婚したら、もうこんなことは出来ないだろう?」
美奈子はジッと慶吾の目を見ていた。その顔がちょっと笑顔に変わったのは気のせいだろうか。
「私もよ」
美奈子が言った。
「え?」
「私も、慶吾が好きだったわ。もちろん今でもよ。昔は慶吾と結婚してもいいと思っていたわ。本当よ。でも、それは出来ないことなの」
「本当?」
「本当。でも、今、はっきりわかったような気がする。私は慶吾が好きだったんだわ。だからなかなか結婚に踏み切れないでいたのかもしれない」
慶吾は黙って美奈子の目を見ていた。
「不思議だわ・・・。慶吾に私の身体を見られても、ちっとも嫌やに思わないもの」
「・・・」
「きっと、今日が最後かもしれないわね」
「もっと、姉貴の身体を見せてくれ」
「いいわ。でも今日だけよ。今日だけ・・・。それでいい?」
「わかった」
慶吾の視線は容赦なかった。いつもは衣服に覆われている美奈子の全裸の身体を、何ら躊躇することなく、本当に容赦なく観ていた。いや、観察していた。自分の目に焼き付けておきたかった。
美奈子は最初、慶吾の顔をジッと見ていたが、そのうち視線を反らせてボンヤリと天井を見ている。さっき争ったときに乱れた髪の毛を手で直している。
しばらくしてから美奈子がいった。
「どう?満足?」
「・・・う、うん」
「私からもお願いしていい?」
「え?何を?」
「私だけじゃなくて、慶吾のも見せて・・・」
「え?」
「私だけが裸なんて卑怯じゃない。慶吾も脱いで。私、慶吾の身体、しばらく見てないもの」
「うん。いいよ」
それもそうだな、と慶吾は思って服を脱いだ。美奈子がソファーに寝そべったまま顔だけ慶吾に向けてジッと見ている。美奈子の視線をハッキリ感じた。
慶吾のモノが飛び上がるように九十度以上の鋭角で現われた時、美奈子が驚いたように言った。
「慶吾って、ずいぶん毛深いのね」
「そうかな?」
「それに、立派よ」
「ちょっと恥かしいな」
「そんなことないわ。私だって裸なんだから・・・」
慶吾がすべてを脱ぎ去って、脱いだモノを勢いよくリビングルームに放り投げると、そのまま美奈子の脇に座った。
リビングルームに放り投げられている美奈子と慶吾の衣服を見ながら、ちょっと笑いながら美奈子が言った。
「お行儀悪いこと」
「たまにはいいさ」
「そうね。何かとっても開放的な気分。しばらくこのままでいようか?」
「そうだな」
「あゝ、いい気持ち・・・」
美奈子が大きく伸びをした。美奈子の手が慶吾の肩に触れた。
「私が知っている慶吾のおちんちんって、まだとっても可愛らしかったのに」
「姉貴だってこんなに綺麗になって・・・」
「そう?」
「もうすぐ、姉貴はあの男のモノになってしまうんだな」
「・・・」
「それでいいの?」
「そうよ。私はあの人と結婚するわ。結婚して、この身体でセックスをして・・・」
「この身体で?」
「そう、この身体で毎日のようにセックスをして、そして子供を産んでおばあちゃんになって行くの」
慶吾は美奈子の身体を見つめた。いづれ子供が生まれ出るであろう女の器官も見た。その赤ん坊が生きるために唇をつけるであろう女の器官も見た。
慶吾の視線は美奈子の秘部に止まっている。あの男のモノはこの中に入るんだな。
「慶吾だって、そのうち素敵な彼女を見つけて、そして結婚をして、この身体でセックスをして・・・」
「この身体で?」
「そう、この身体で毎日のようにセックスをして、あなたから命を授かって赤ん坊が生まれて、そして年老いて行くの。そういうものなのよ」
美奈子は慶吾の身体を見つめる。あきらかに慶吾のモノに目が止まっている。
二人は全裸のまま、お互いのモノを見つめながら、動かないでいた。
先に触れたのは美奈子の方だった。美奈子はゆっくりと身体を起こすと慶吾のモノに触れた。慶吾のモノがピクンとした。
慶吾はそうするのが礼儀のように、片手を伸ばして美奈子の乳房に触れた。美奈子は抵抗しなかった。いや、身体をちょっと慶吾の方に向けるようにして触れやすいようにした。豊かな弾力を感じた。
「昔、僕は姉貴のおっぱいを吸ったことがあるって、姉貴言ってたろ」
「え?ああ、そんなことあったわね」
「やっていいかい?」
「ダメ」
美奈子は言った。でも、その口調は決して咎めているようではない。慶吾はそう感じた。
だから、そのまま美奈子の身体を少し押すようにしながら、美奈子の乳首を口に含んだ。美奈子が
「くすぐったい」
と笑い声を立てた。
「吸っていい?」
慶吾は聞いた。
「ダメ!何言ってるの・・・」
美奈子ははぐらかすように答えた。でも、慶吾は舌で転がすようにしながら、美奈子の乳首を吸った。美奈子がちょっと声を漏らした。
美奈子の手は少し動いている。慶吾のモノの先端を包むように触れている。それは激しく慶吾のモノを刺戟した。
やっぱり美奈子の方が強い。慶吾の方が先に負けた。マスターベーションの快感とは違う。あきらかに自分以外の手によって慶吾は絶頂に導かれていた。
切ないような、たまらない気持ちになって、思わず顔を美奈子の胸に押し付けていた。美奈子の手が慶吾の頭を軽く押さえている。しびれるような快感が走って、そのまま飛び跳ねるように慶吾のモノから精液が溢れ出した。
それはドクドクと何回にも分けて床に飛び散った。そのまま、床の上に白い池をつくった。少し、美奈子の手にかかっている。それからソファーにも少しかかっている。
何故だかわからない。慶吾は「ゴメン!」と謝った。美奈子は溢れるような優しい笑みをこぼして、「慶吾も一人前だわね」と言った。
美奈子はソファーの汚れを拭こうとした。まだ酔いが残っているのか、少し身体をふらつかせながらティッシュペーパーを取りに行くと、それで自分の手の汚れと、ソファー、それからしゃがみ込んで床の汚れを拭いた。
慶吾は放心したように、ソファーにうなだれて座っていた。
美奈子は拭き終わると、さらに新しいティッシュを取り出して、慶吾のモノを包むようにして拭った。
「覚えてる?慶吾がまだ小さい頃、このおちんちんを自慢げに見せてくれたことがあったわね」
「そんなこと、あったかな」
「あの時、とっても可愛らしくって・・・。それがこんなになったのね。慶吾はもう立派な大人の男性なのね」
美奈子は楽しむように慶吾のモノを拭いている。美奈子の豊満な乳房が慶吾の目の前にあった。
慶吾は思っていた。何か美奈子にお礼をしなければならない。僕だけが満足してたんじゃ、きっといけないんだ。美奈子に失礼なんだ。
美奈子の手はまだ慶吾のモノを握っている。愛らしい玩具を弄ぶように・・・。慶吾のモノはすでに勃起している。いや、さっきから勃起しっぱなしだ。
「お姉ちゃん、いいかな?」
「いいって、何を?」
「僕、我慢できないよ」
「我慢できないって・・・、いいのよ、また出しても・・・」
「そうじゃなくって・・・。僕、お姉ちゃんと・・・」
そう言いながら、脇の下に両手を入れて美奈子を持ち上げると、ソファーの上の美奈子の身体を押し倒していった。
美奈子が慌てた。
「ダメよ!慶吾!それはダメなことなの。しちゃいけないことなの」
「そんなこと言ったって、僕はもう我慢できないよ」
慶吾はすでに美奈子の上に乗りかかっていた。美奈子はしっかりと脚を閉じている。
「やめて!慶吾!私を悲しませないで・・・」
慶吾は手を美奈子の脚に押し当てて、そして開かせようとした。堅く閉じている美奈子の脚を無理やり広げようとする。
慶吾は、思いっきり押さえつけた。それから、秘部を目で確認した。
前に高校の友人からエロ本を見せられたことがある。そこには女性の性器が露骨に写されていた。ちっとも美しくなかった。いやむしろグロテスクにさえ見えた。
しかし、今はそうではなかった。とっても可愛らしく、美しくさえ感じた。美奈子の秘部は美奈子の身体の一部、これも美奈子自身には違いない。
美奈子は身体を起こそうとした。逃げようとした。慶吾は全身の力を使って美奈子の身体を押さえつけようとする。その瞬間、慶吾の腰が美奈子の両脚の中に割り込まれた。
もう一度、その位置を目で確認する。モノを押し当てた。
「ここでいいのかな?」
「慶吾!やめて・・・!」
何回かやり直して、やっと奥行きのある位置を感じ取ると、そのまま、ゆっくりと挿入していった。
「ダメ!ダメなのよ」美奈子は喘ぐように叫んだ。
でも、すでに慶吾のモノはその先端が美奈子の中に納まっている。
その部分が濡れているのはわかっていた。でも、慶吾のモノは窮屈に圧迫を受けていた。
慶吾は性急に腰を動かした。
「痛い・・・!」
美奈子が逃げるように身体を上方向にずらそうとしている。顔が横向きになっている。
慶吾のモノがズッズッっと少しづつ美奈子の中に入っていくのがわかって、慶吾はさらに激しく腰を振った。
それがしっかり最後まで入った時、美奈子が泣くようなため息を漏らした。
「慶吾・・・!」
「お姉ちゃん!いくよ!」
慶吾は腰を激しく振った。ただ性急に腰を動かした。
「慶吾・・・、絶対にダメなことなのよ。どうしたらいいの・・・」
美奈子は声を喘がせながら言った。でも、何と言っても、すでに現実はそうなっていた。
「僕・・・、お姉ちゃんが好きなんだ。だから・・・、どうしようもないんだ」
「・・・、本当に・・・、これだけだからね・・・」
いつの間にか、美奈子の手は慶吾の背中に巻きついていた。美奈子のカモシカのような脚は、慶吾の腰に巻きついていた。
慶吾の顔は美奈子の髪の毛の中にある。そう、美奈子の匂いだ。それが慶吾を激しく刺戟している。
ソファーの上で、美奈子と慶吾の姉弟は激しくもつれ合っている。本当に一つになっていた。
それはすぐに訪れた。慶吾の中に、切ないような、悲しいような感情が沸き起こって、それから、身体がはじけるような感覚がして、そして、慶吾は絶頂を迎えていた。
ドクドクと、精液が美奈子の中に入っていくのがわかった。
「慶吾!ダメよ!」
美奈子の叫ぶような声がした。その理由は、慶吾にもわかった。やってはいけないことをしてしまったと思った。
ドクドクいわせながら、慶吾は美奈子から身体を離した。ドクドクと溢れ出ている精液は、止まらず、美奈子の腹から乳房に飛び散って、さらに、美奈子の顔と髪の毛にかかった。
美奈子はあわてて起き上がろうとした。その拍子に、慶吾の身体ともつれた。バランスを失って、そのまま、二人とももつれるように、ソファーから床に落ちた。
慶吾の膝が床に当たって、その直後、美奈子が頭から落ちて、頭が床に当たってゴツンという音を立てた。
美奈子はそのまましばらく動かない。慶吾も何かとっても悪いことをしてしまったような気がして、しょんぼりしていた。
どのくらい時間がたっただろう。
「まったく・・・、慶吾ったら」
怒ったように、頭を掻きながら美奈子が言った。
でも、その光景が無性におかしかった。先に笑い出したのは美奈子の方だ。つられて慶吾が笑った。そのまま二人は大笑いしていた。
「すぐお風呂に入りなさい」
美奈子は言った。その言葉は有無を言わせないものがあった。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
慶吾は心配だった。慶吾の精液は、間違いなく美奈子の中に入った。それは少量であっても、間違いなく入った。
「うん。大丈夫だと思う、今日は・・・」
「ほんと?」
「安心しなさい。いいから、そんなこと心配しないで、早くお風呂に入りなさい」
「お姉ちゃんは?」
「私もここかたずけたら、行くから・・・。どうせだから一緒に入ろう」
美奈子はそう言って笑った。
「慶吾はさっきまで私のこと姉貴なんて言ってたのに、今はお姉ちゃん?」
「そうだっけ?そうさ、僕のお姉ちゃんさ。大好きな、大好きな、僕だけのお姉ちゃんさ」
慶吾は、湯船の淵にひじをついて美奈子を見ながら言った。
子供の頃はともかく、大人の二人には一緒に浴槽に入るには狭すぎた。美奈子はシャワーを浴びながら髪の毛を洗っている。
慶吾の目は美奈子の全裸の身体を横から見ている。
「今日は頭は洗わない日なんだけど・・・、さっき慶吾のが付いちゃったでしょう?」
「酔いは覚めた?」
「あんなことされたら、酔いなんて飛んで行っちゃうわ」
「ゴメン」
「ううん。そんなことないの」美奈子は決して嫌がっているようには見えない。
シャンプーの泡が、美奈子の身体をなぞるように落ちている。
「そんなにジロジロ見ないでよ」
「いいじゃないか。でも、とっても綺麗だよ」
「いや~ね」
「お姉ちゃんて、スタイルいいな」
「そうかしら?」
慶吾は浴槽から勢いよく出た。
「背中、洗ってやるよ」
慶吾はスポンジに石鹸を染み込ませると、美奈子の後ろに立って、美奈子の背中を洗った。
美奈子は笑って、されるままになっている。
慶吾は片手で美奈子の背中を洗いながら、もう片方の手で美奈子の胸に触れた。そして、恐る恐る手を動かした。美奈子は怒るかと思った。でも美奈子は黙ってされるままになっている。
そのうち、慶吾はスポンジを放り出して、両手で美奈子の乳房に触れた。石鹸のせいで手が滑るように乳房をなぞった。
美奈子はまだ髪の毛を洗っている。でもその動作は、心なしかちょっとゆっくりになったようだ。
「慶吾・・・。キッスしようか?」
その時、美奈子が言った。背中を向けたまま、顔だけ慶吾の方に向ける。
「うん」
慶吾は美奈子の唇に口を付けていった。美奈子の唇を吸った。
「また元気になってるのね」
美奈子の手が慶吾のモノに触れている。
慶吾は、また美奈子と一つになりたくなった。でも、その位置は、美奈子のへそのあたりにあって、美奈子の秘部に届かない。
「お姉ちゃん。僕、また・・・」
シャワーのお湯が二人の身体にかかっている。まるで豪雨の中にいるようだ。
美奈子がちょっと顔を離して、こぼれるような笑みを浮かべながら慶吾の顔を見た。もう一度、今度は抱きつくように・・・。慶吾の口の中に美奈子の舌が入ってきた。慶吾の舌と絡まった。慶吾はむさぼるように美奈子の舌を吸った。
「お姉ちゃん。凄いな」
「ふふふ・・・」
慶吾は美奈子の大胆さに正直驚いていた。その時、突き放すように美奈子が離れた。すでに慶吾のモノには触れていない。
「そんなこといいから、早く出てよ。私も湯船に浸かりたいわ」
「よし」
シャワーのノブを持って美奈子の身体の石鹸を流してあげた後、美奈子はそのまま浴槽に浸かった。
慶吾は軽くシャワーを浴びると、そのまま浴室から出て、身体を拭いた。そのまま服を着るでもなく、美奈子の出てくるのを待った。
浴室のドアは大きく開かれている。
「もう寝なさい。夜も遅いんだから」美奈子は言った。
「いや、お姉ちゃんを待ってる」
「しょうがないわね」
「僕、今日のことは一生忘れないよ」
「そんなことダメよ。早く忘れるの。きっとすてきな彼女が出来たら、私のことなんかどうでもよくなるわ」
「そんなことない。絶対、そんなことないよ」
続いて湯舟から出た美奈子をバスタオルを広げて迎えた。美奈子は髪の毛を自分で拭きながら、でも身体は慶吾が拭くのに任せている。美奈子の肌がまぶしかった。水滴を弾くようにピチピチとしている。
その後、慶吾は全裸のまま、美奈子は一応バスタオルを巻いて、先に階段を上がった慶吾が、一応自分の部屋の前で立っていた時、美奈子が自分の部屋に入ろうとして慶吾の方を見た。慶吾のモノはすでに勃起している。いや、さっきからずっとそのままなのだ。まだずっと美奈子のそばにいたい、美奈子から離れたくない、そんな慶吾の気持ちは、表情に、いや身体にしっかり表れていたに違いない。
美奈子はちょっと笑みを浮かべ、それから、どうする?と言うように首を傾げて見せた。
「いいの?」
「ここまで来ちゃったら、どうってことない。一緒に寝よう」
慶吾は飛ぶように美奈子の部屋へ入った。美奈子は優しく慶吾を迎えた。
美奈子のベッドのカバーを乱暴に外し、全裸のまま寝っころがった慶吾に、美奈子は自分の髪の毛を乾かしながら言った。
「慶吾、初めてだったの?」
「うん」
「私が初めてでよかったのかしら?」
慶吾はそのまま黙って天井を見ていた。
「とっても素敵だった・・・、嬉しかった・・・」
「そう?」
「お姉ちゃん、もう一度見たい」
「もうちょっと待って・・・」美奈子は髪を乾かしている。
「そんなの、いいから・・・」
慶吾はちょっと起き上がるようにしながら、早く!と言った。
しょうがないわねぇ、というように、ベッドの脇に立って、慶吾のモノを見つめた。慶吾のモノは所在なくまっすぐ天井を向いている。
「もう一度だけ・・・」
「もう一回?元気なのね」
「ステーキの分はお返ししなくっちゃ」
「ステーキ?」
「さっき、レストランでステーキを三枚ご馳走になったからな」
「だから三回?」
「うん」
「何を言ってるやら」
でも、美奈子は笑いながら電気を消すと、バスタオルを外して慶吾の脇に寝た。
「どうしたらいいのかな?」慶吾が言った。
「もう一度、キッスしようか?」美奈子がいたずらっぽく言った。
慶吾は身体を起こすとそのまま美奈子の上にかぶさっていった。美奈子は両手を広げながら慶吾を迎えた。そのまま、重なるように、キッスをしながら美奈子の中に挿入していった。
美奈子の秘部は逆らわなかった。むしろ進んで慶吾のモノを受け入れた。
真上から美奈子の顔を覗き込んだ時、美奈子は真っ直ぐ慶吾を見返していた。慶吾が腰を振り始めた時、美奈子がちょっと声を漏らした。
「もうちょっと優しくね」
「もっとゆっくり?」
「そう・・・、女性には優しくするものよ」
慶吾のモノは今度は長持ちした。ピストン運動がどうしても性急になる。でも美奈子は、今度は痛いとは言わなかった。
いつの間にか、美奈子は目をつむっている。
美奈子の身体は仰け反るようにして、深く深く慶吾を向かえた。
慶吾が腰を振るたびに、応えるように美奈子が声を上げる。
その声が、だんだん泣くような声に変わっていって、それから喘ぐような声に変わっていった。
「お姉ちゃん。僕、いきそうだ」
慶吾は絶頂を迎えていた。
「・・・、もうちょっと待って・・・」
「我慢できないよ」
「男の子でしょ。もっと我慢するの」
慶吾はたまらなくなって、腰の動きを止めた。そうしなければ、すぐにでも爆発してしまいそうだった。
今度は、美奈子が明らかに腰を降り始めていた。
「慶吾。止めないで・・・」
「だって、僕・・・」
「いいわ、いってもいいから。だから止めないで・・・」
「お姉ちゃん・・・、僕、出そうだ」
美奈子が叫ぶような声を上げた。
「初めてよ、こんなの・・・」
そう叫ぶように言って、跳ねるように身体を痙攣させた。
慶吾は放出していた。ドクドクっと慶吾の精液は美奈子の中に入っていく。
「このままで・・・、いいのかな・・・」
「・・・いいわ」
「中に・・・、中に入っちゃっているよ」
「いいわ。もうこうなったら、どうでもいいわ」
美奈子は逃げようとしなかった。いや、むしろ慶吾が離れないように、堅く堅く慶吾を抱きしめていた。一適も漏らさず吸い取るように、腰を振って応えていた。
そのままどのくらい時間がたっただろう。
慶吾は放出した後も、美奈子に覆い被さるようにしていた。
「慶吾、知ってる?いま、私の中に入った慶吾のモノね」
「え?精液のこと?」
「そう、それ、ね、二年くらいは私の身体の中に残るものなのよ」
「え?」
「そういうものなの。女の身体って・・・」
「ふ~ん・・・」
「男の人って、終わったらそれでおしまい。でも、ね、女っていうのはその男のものを二年も自分の身体の中に大事にとっておくのよ」
「・・・・・・」
「だから、ね・・・」
それから、美奈子は黙った。しばらくして慶吾は聞いた。
「だから、何?」
「だからね。慶吾、私のこと、忘れないでね。ずっとずっと忘れないでね。私が結婚しても、慶吾が結婚しても、慶吾は私のたった一人の弟なんだもの。大好きな大好きな、たった一人の弟なんだもの・・・」
慶吾は幸せだった。世の中にこんなに素晴らしいことがあったのかと思った。
生まれて初めて、本当に美奈子と一緒になれたような気がした。僕は、本当に美奈子が好きなんだ、と思った。
それから・・・。美奈子の性(さが)を垣間見たような気がした。普段からは想像もつかない美奈子の乱れを見て、そして、それが慶吾自身によって導き出されたものであることがわかって、それが慶吾には嬉しかった。
「忘れるもんか」
慶吾は叫ぶように答えていた。美奈子がいとおしかった。慶吾の欲求、本当に無理な欲求に優しく応えてくれた美奈子が無性にいとおしかった。
そして、慶吾の力でこんなに輝いてくれた美奈子を哀しいほどせつなく感じた。
慶吾のモノが力を失って、ポロンと美奈子の秘部から外れた。
朝、ベットで目覚めた時、美奈子はすでにいなかった。自分が全裸でいることに気が付いて、慶吾は気恥ずかしい反面、昨日のことを鮮明に思い出した。
さっきまで姉はここに寝ていたんだ。ここに全裸で寝ていて、そう、僕とセックスしてたんだ。シーツの跡を手でなぞりながら、でも、なぜか遠い夢の中の出来事のような気がした。
服を着ようかどうしようか迷ったが、そのまま全裸で部屋を出た。姉がまだ全裸のままでいたら、僕だけ服を着て行ったら可哀想じゃないか、そう思った。
慶吾のモノが小さく縮こまっている。
リビングルームに下りていくと、美奈子はすでにスーツに着替えていて、エプロンをしながら朝食の準備をしていた。
「なによ、お行儀の悪いこと。学校に遅れるわよ。早く着替えてらっしゃい」
凛として慶吾を寄せ付けない毅然としたものを感じた。
まだ美奈子は全裸でいるのではないかと淡い望みを抱いていた慶吾は、普段と変わらぬ美奈子の様子にちょっとがっかりしたっていうか、安心したっていうか・・・。
「着がえる前にちゃんとシャワーを浴びるのよ」
でも、シャワーは浴びずに自分の部屋に引き上げると学生服を着た。慶吾の身体に美奈子の匂いが染み付いているような気がした。
朝食を食べている間も、美奈子はそのことに触れなかった。慶吾の朝食の準備をしながら、ちょっと鼻歌を歌っているようだ。
慶吾が新聞を見ながらパンを口に放り込んだ時、
「新聞を見ながら食べないの。まったく、いつまでも直らないんだから・・・」
いつに変わらぬ美奈子の口調だ。
「サラダもちゃんと食べるのよ」
慶吾は「はい、はい」と言って、口の中に放り込んだ。
二人一緒に玄関を出ようとした時、慶吾は美奈子の腰に手を回して、そしてキッスをしようとした。狙っていたタイミングだった。
「ダメよ!」
美奈子は身体をサッと反らして、諭すように慶吾を制した。
「いいじゃないか。キッスくらい」
「ダメよ。もうお終い。昨日のことは忘れるのよ」
「だって・・・」
美奈子は満面の笑みを浮かべて言った。
「慶吾にご馳走したのは、ステーキ三枚。そして慶吾は三度したわ。これでお終いなの。もうお忘れなさい」
「チェッ!」
慶吾は靴を履いて玄関を出た。そのあとを美奈子が続いた。美奈子が鍵を掛けている間、慶吾は美奈子の後ろ姿を見ながら考えていた。
「ちょっと待てよ、姉貴。いや、二回だ。ステーキは三枚でも、できたのは二回だ。一回は失敗だったものな」
最初の一回は、美奈子の手で触られただけで爆発してしまったのだ。「そうだよな?姉貴」
鍵を掛け終えて振り向いた美奈子は、笑みを浮かべながら指を唇に当ててシーッと言った。それから、ちょっと辺りを見回して、背伸びするように慶吾の唇の端に軽くキッスをすると、きょとんとしている慶吾に声を出して笑って、そのまま、慶吾にかまわず、舗道をまっすぐ歩いて行った。
慶吾は美奈子の後ろ姿を目で追いながら、思わず笑みを浮かべていた。もう一回チャンスがあるということだろうか。
でも、反面、もうこんなことは二度とないようにも思われた。あの潔癖な美奈子は二度とあんな隙は見せないだろう。いや、そういうことじゃなくって、僕がまた姉に挑むようなことがあれば、何よりも姉が悲しむだろうと思った。そんなことをしちゃ、もういけないんだ。姉を悲しませては絶対にいけない。
しかし・・・、と慶吾は考える。それでいいじゃないか。あんな至福の時を過ごせたんだ。昨晩のことは僕とお姉ちゃんだけの永遠の秘密だ。少なくとも、二人だけでそれを共有できたんだ。
美奈子はちょっと右肩を下げるようにしてうつむき加減に歩く。慶吾の自転車が美奈子の側をすり抜けて追い越した時、美奈子が爽やかに手を振った。
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