小説(転載) 教育実習 5/5
官能小説
岡原が目を開けると、電気がついていた。停電が回復したらしい。隣では諒が眠っている。時計をみると4時を指していた。岡原は、灯りのスイッチを消した。雨は上がったらしく、外は静かになっている。
「う…ん。」
諒が少し寝返りをうった。
(いつから…だろう…?)
岡原は諒の長い髪を撫でながら、いつの間にか諒に惹かれていた自分に気づいた。先ほどのできごとは単なる衝動ではない。でなければ、横に眠る諒をこれほど愛しいとは思わないはずだ。
(でも…庄野は……)
諒が目を覚ましたとき、ここに自分がいたらどう思うのか、岡原は諒の顔を見つめた。諒は岡原を特に抵抗せず受け入れた。けれどもそれは、雰囲気に流されたのかもしれない。雷による停電に驚いて悲鳴をあげた諒の姿を思い出した。
そのとき、諒のまぶたが動き、諒がゆっくりと目をあけた。目の前に岡原の顔があることに気づいた諒は頬を紅潮させる。岡原も自分も服を着ていない。恥ずかしさでどういう行動をとればいいのか今の諒には分からなかった。
「庄野。」
呼ばれても返事ができずに毛布に顔を隠す諒に、
「すまない。」
と岡原がつぶやいた。
諒は岡原の言葉を一夜の戯れをわびる言葉として受け取り、
「気にしないでください。」
と答えた。諒の躰が震える。どうしようもなく切ない気持ちがわき上がっていた。岡原はトランクスをはき、ベッドから降りた。
「酒なんか、ないよな。」
諒は毛布に顔を隠したままシンクの下を指さした。そこにはまだ封の切られていないウイスキーの瓶があった。
「女の子でもウイスキーなんて飲むんだ。」
岡原が驚きながら、電気もつけず、ウイスキーの瓶を片手に、諒の寝ているベッドの脇に腰を下ろした。
「それはビンゴであたったんです。よかったら、差し上げます。」
諒が毛布の中から返事をする。岡原はウイスキーの封を切り、そのままぐいっと飲んだ。
「庄野……、僕は…、遊びじゃないんだ…。」
岡原の言葉に諒の躰がぴくりと動く。岡原は言葉を続けた。
「僕は、担当教師失格だ。実習生に惚れてしまうなんてな。はは…は…」
岡原は笑いながら、ウイスキーをまた飲んだ。
諒は毛布で胸元を隠しながら、ゆっくりと起きあがり岡原の後ろ姿を見つめた。
「先生…。」
諒が声を掛けると、先生と呼ばないでくれと岡原が言った。
「今は、先生と呼ばれるのがつらい。これでも理性はあったはずなのに。自分がこんなことをするなんて…。」
岡原の肩が少し震える。諒は毛布に躰を包んだまま、ベッドから滑り降り、岡原の横に座った。
「私もお酒、飲みます。」
諒に言われて岡原はウイスキーの瓶を渡すと、諒はぐいっと瓶を傾けた。
「おいおい、だいじょうぶか?」
ウイスキーにむせる諒の背中をさする岡原を、諒は涙目になりながら見つめた。
「私も……実習生失格…です。あのとき……先生に…抱かれたいと……思ったんです。だから……」
諒の予期せぬ言葉に、岡原は言葉を失い、諒の顔を見つめた。
「…グラス、持ってきましょうか?…氷ありますよ。」
諒が毛布を躰に巻き付け、立ちあがろうとしたとき、岡原に腕をつかまれた。
「いらない…」
「え?」
岡原はウイスキーの瓶を口につけ、口に含んだまま諒の唇に自分の唇を重ねた。諒の喉がかすかに動く。岡原はそのまま諒の唇を離さなかった。
ウイスキーの甘い香りが漂う中、二人は舌を絡め合い、ゆっくりとその場に倒れ込む。
「はぁっ…うっ……んっ……」
諒を覆う毛布を抜きとった岡原は、諒の乳房に手を這わせた。先ほどの慎重な岡原の動きはなく、情熱のありったけを諒の躰にぶつける。たまらず諒が躰をくねらせると、岡原は諒を後ろから抱きしめ、その力に諒の唇からは甘い悲鳴がもれる。
「あぁっ……や……そん…な……」
岡原の指が、諒の中に滑り込んだ。諒の愛液が岡原の指に絡みつく。
くちゅっ…ちゅくっ…ちゅくっ……
「はぅっ……だ……だめ……っ……」
岡原の指の動きが、濡れた音を立てている。諒は恥ずかしさと快感で、身をよじらせて岡原にしがみついた。
「名前…そうだ、庄野の名前だ……」
諒は、岡原のつぶやきを聞き返そうとするが、岡原の愛撫に言葉を奪われる。
(男だと思い込んでいた庄野を初めて見たときから、僕は参ってたんだ…。)
「諒……諒…」
名前を呼ばれ、諒の鼓動が高鳴る。岡原は再び諒の中へと入り込んだ。
「んっ…あぁぁぁっ…」
「諒…」
「あうっ…………はぁっ……はぁぁっ…」
諒は、自分の中で動く岡原に仰け反る。
岡原は、諒の躰の上に覆い被さると、腰を回すように動かし、諒の唇に舌を割り入れる。
「んっ……んんっ………」
岡原の動きが激しくなり、諒は岡原の背中にしがみつく。
「こ……このま…まで……はぁっ……うっ…」
岡原の唇が離れたすきに、諒がつぶやいた。黙り込んだ岡原の腰を、諒がつかむ。
「あぁっ……も…もう…………はぁっ……う…っく…」
諒の中が痙攣し始めていた。岡原は腰を離そうとしない諒の躰を抱きしめると、小さなうなり声をあげて激しく腰を動かしていく。
「諒…」
「ぁ…あぁぁぁぁっ……んっ…」
諒のその声は、決して大きくはなく、唇からこぼれるようだった。その少しあとに、諒は自分の中で何度も大きく脈打つ岡原を感じ取った。
土曜日の夜、岡原は自分の部屋に戻るとそのまま布団に潜り込んだ。諒の体温がまだ忘れられない。休みの日にはあれこれしようと考えていたのに、もうそれらをする気が起こらなかった。土・日の休みを布団の中でごろごろと過ごした岡原は、まもなく終わる実習期間のことを思った。
朝、いつものように学校へと向かう。しかし、気持ちはいつものようにとはいかなかった。学校へ行けば、他の教師たちの中で諒と顔を合わせるのだ。どんな顔をして諒が来るのだろうかと内心穏やかではなかった。
「おはようございます。」
諒が微笑む。いつもと変わりがない。
唯一変わったこととと言えば、岡原が諒を家まで送るようになったことだった。
「上がっていきませんか?」
諒が岡原に勧める。岡原は少し考えた後、首を振った。
「いや……やめとく。」
朝まで居そうだから、という言葉を岡原は飲み込んだ。けじめをつけようとする岡原の態度に、諒は微笑むが、どこか切ない気持ちも感じていた。
諒の最後の授業は、生徒たちの拍手で終わった。少し涙ぐむ諒に、岡原が微笑む。
「岡原ちゃーん、もう遠慮はいらないよーん。」
「なっ……?」
生徒たちに冷やかされ焦る岡原を見て、諒も生徒たちと一緒に笑った。
日が暮れ、仕事をする教師たちの姿も少なくなった。岡原も仕事を片づけ、ひとりで教室の施錠に出かけた。自分のクラスまで来ると、静まりかえった教室に諒が立っている。
「どうした?忘れ物か?」
岡原の声に諒が振り向いた。諒は笑って、
「大変でした。」
と答えた。実習が終わり、学生に戻っていく前に、この二週間のことを思い出していたのだろう。岡原は諒に教師になるのか、と尋ねた。諒は笑いながら首を振り、
「分かりません。実習生失格ですから。」
と言った。岡原は諒の言葉の意味が先日のことを指していることを悟り、照れくさそうに笑った。
「あっ、庄野。」
教室から出ていく諒を岡原が呼び止めた。振り向いた諒に岡原が
「帰りに、寄っていいかな。」
と小声で聞くと、諒はうれしそうに笑った。
「今晩も雷が鳴るといいですね。」
~終わり~
「う…ん。」
諒が少し寝返りをうった。
(いつから…だろう…?)
岡原は諒の長い髪を撫でながら、いつの間にか諒に惹かれていた自分に気づいた。先ほどのできごとは単なる衝動ではない。でなければ、横に眠る諒をこれほど愛しいとは思わないはずだ。
(でも…庄野は……)
諒が目を覚ましたとき、ここに自分がいたらどう思うのか、岡原は諒の顔を見つめた。諒は岡原を特に抵抗せず受け入れた。けれどもそれは、雰囲気に流されたのかもしれない。雷による停電に驚いて悲鳴をあげた諒の姿を思い出した。
そのとき、諒のまぶたが動き、諒がゆっくりと目をあけた。目の前に岡原の顔があることに気づいた諒は頬を紅潮させる。岡原も自分も服を着ていない。恥ずかしさでどういう行動をとればいいのか今の諒には分からなかった。
「庄野。」
呼ばれても返事ができずに毛布に顔を隠す諒に、
「すまない。」
と岡原がつぶやいた。
諒は岡原の言葉を一夜の戯れをわびる言葉として受け取り、
「気にしないでください。」
と答えた。諒の躰が震える。どうしようもなく切ない気持ちがわき上がっていた。岡原はトランクスをはき、ベッドから降りた。
「酒なんか、ないよな。」
諒は毛布に顔を隠したままシンクの下を指さした。そこにはまだ封の切られていないウイスキーの瓶があった。
「女の子でもウイスキーなんて飲むんだ。」
岡原が驚きながら、電気もつけず、ウイスキーの瓶を片手に、諒の寝ているベッドの脇に腰を下ろした。
「それはビンゴであたったんです。よかったら、差し上げます。」
諒が毛布の中から返事をする。岡原はウイスキーの封を切り、そのままぐいっと飲んだ。
「庄野……、僕は…、遊びじゃないんだ…。」
岡原の言葉に諒の躰がぴくりと動く。岡原は言葉を続けた。
「僕は、担当教師失格だ。実習生に惚れてしまうなんてな。はは…は…」
岡原は笑いながら、ウイスキーをまた飲んだ。
諒は毛布で胸元を隠しながら、ゆっくりと起きあがり岡原の後ろ姿を見つめた。
「先生…。」
諒が声を掛けると、先生と呼ばないでくれと岡原が言った。
「今は、先生と呼ばれるのがつらい。これでも理性はあったはずなのに。自分がこんなことをするなんて…。」
岡原の肩が少し震える。諒は毛布に躰を包んだまま、ベッドから滑り降り、岡原の横に座った。
「私もお酒、飲みます。」
諒に言われて岡原はウイスキーの瓶を渡すと、諒はぐいっと瓶を傾けた。
「おいおい、だいじょうぶか?」
ウイスキーにむせる諒の背中をさする岡原を、諒は涙目になりながら見つめた。
「私も……実習生失格…です。あのとき……先生に…抱かれたいと……思ったんです。だから……」
諒の予期せぬ言葉に、岡原は言葉を失い、諒の顔を見つめた。
「…グラス、持ってきましょうか?…氷ありますよ。」
諒が毛布を躰に巻き付け、立ちあがろうとしたとき、岡原に腕をつかまれた。
「いらない…」
「え?」
岡原はウイスキーの瓶を口につけ、口に含んだまま諒の唇に自分の唇を重ねた。諒の喉がかすかに動く。岡原はそのまま諒の唇を離さなかった。
ウイスキーの甘い香りが漂う中、二人は舌を絡め合い、ゆっくりとその場に倒れ込む。
「はぁっ…うっ……んっ……」
諒を覆う毛布を抜きとった岡原は、諒の乳房に手を這わせた。先ほどの慎重な岡原の動きはなく、情熱のありったけを諒の躰にぶつける。たまらず諒が躰をくねらせると、岡原は諒を後ろから抱きしめ、その力に諒の唇からは甘い悲鳴がもれる。
「あぁっ……や……そん…な……」
岡原の指が、諒の中に滑り込んだ。諒の愛液が岡原の指に絡みつく。
くちゅっ…ちゅくっ…ちゅくっ……
「はぅっ……だ……だめ……っ……」
岡原の指の動きが、濡れた音を立てている。諒は恥ずかしさと快感で、身をよじらせて岡原にしがみついた。
「名前…そうだ、庄野の名前だ……」
諒は、岡原のつぶやきを聞き返そうとするが、岡原の愛撫に言葉を奪われる。
(男だと思い込んでいた庄野を初めて見たときから、僕は参ってたんだ…。)
「諒……諒…」
名前を呼ばれ、諒の鼓動が高鳴る。岡原は再び諒の中へと入り込んだ。
「んっ…あぁぁぁっ…」
「諒…」
「あうっ…………はぁっ……はぁぁっ…」
諒は、自分の中で動く岡原に仰け反る。
岡原は、諒の躰の上に覆い被さると、腰を回すように動かし、諒の唇に舌を割り入れる。
「んっ……んんっ………」
岡原の動きが激しくなり、諒は岡原の背中にしがみつく。
「こ……このま…まで……はぁっ……うっ…」
岡原の唇が離れたすきに、諒がつぶやいた。黙り込んだ岡原の腰を、諒がつかむ。
「あぁっ……も…もう…………はぁっ……う…っく…」
諒の中が痙攣し始めていた。岡原は腰を離そうとしない諒の躰を抱きしめると、小さなうなり声をあげて激しく腰を動かしていく。
「諒…」
「ぁ…あぁぁぁぁっ……んっ…」
諒のその声は、決して大きくはなく、唇からこぼれるようだった。その少しあとに、諒は自分の中で何度も大きく脈打つ岡原を感じ取った。
土曜日の夜、岡原は自分の部屋に戻るとそのまま布団に潜り込んだ。諒の体温がまだ忘れられない。休みの日にはあれこれしようと考えていたのに、もうそれらをする気が起こらなかった。土・日の休みを布団の中でごろごろと過ごした岡原は、まもなく終わる実習期間のことを思った。
朝、いつものように学校へと向かう。しかし、気持ちはいつものようにとはいかなかった。学校へ行けば、他の教師たちの中で諒と顔を合わせるのだ。どんな顔をして諒が来るのだろうかと内心穏やかではなかった。
「おはようございます。」
諒が微笑む。いつもと変わりがない。
唯一変わったこととと言えば、岡原が諒を家まで送るようになったことだった。
「上がっていきませんか?」
諒が岡原に勧める。岡原は少し考えた後、首を振った。
「いや……やめとく。」
朝まで居そうだから、という言葉を岡原は飲み込んだ。けじめをつけようとする岡原の態度に、諒は微笑むが、どこか切ない気持ちも感じていた。
諒の最後の授業は、生徒たちの拍手で終わった。少し涙ぐむ諒に、岡原が微笑む。
「岡原ちゃーん、もう遠慮はいらないよーん。」
「なっ……?」
生徒たちに冷やかされ焦る岡原を見て、諒も生徒たちと一緒に笑った。
日が暮れ、仕事をする教師たちの姿も少なくなった。岡原も仕事を片づけ、ひとりで教室の施錠に出かけた。自分のクラスまで来ると、静まりかえった教室に諒が立っている。
「どうした?忘れ物か?」
岡原の声に諒が振り向いた。諒は笑って、
「大変でした。」
と答えた。実習が終わり、学生に戻っていく前に、この二週間のことを思い出していたのだろう。岡原は諒に教師になるのか、と尋ねた。諒は笑いながら首を振り、
「分かりません。実習生失格ですから。」
と言った。岡原は諒の言葉の意味が先日のことを指していることを悟り、照れくさそうに笑った。
「あっ、庄野。」
教室から出ていく諒を岡原が呼び止めた。振り向いた諒に岡原が
「帰りに、寄っていいかな。」
と小声で聞くと、諒はうれしそうに笑った。
「今晩も雷が鳴るといいですね。」
~終わり~
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