小説(転載) 『弱者の妖光』 第三部 3/12
官能小説
『弱者の妖光』 第三部 (3)
-罠に陥る夫人-
一
──七瀬を服従させてから数ヶ月
山田は、週に数回七瀬を会社で責めることもあったが、焦る気持ちを押える
ように心掛けていた。社長に知られてクビになっては何の意味もないからであ
る。
だが、それを控えていても山田を会社においておくことを世間が許さなかっ
た。失業率が上がる一方の御時世、彼が勤める会社も他人事ではないようだ。
噂によると、来春には少数であるが、リストラを決行せざるを得ないという。
この部署からも、一人ないし二人はリストラ対象になるだろう…
「や、やばいな…ここで、足手まといになっているのは、どう考えても僕しか
いない、って、事はやはり、この、僕がリストラ?!」
最近七瀬の配慮で、雑用が少なくなった山田は、逆に仕事が減りその対象に
成りつつある事を心配していた。
「こればかりは、課長にお願いしても無理な話しだよな…くそー、せっかく楽
しい毎日を過ごしているのに、何か対策を考えねば!!」
だが、いくら考えても彼の知恵でアイデアが浮かぶはずがない。
──或る日の水曜日。夕刻
毎週水曜日は、苦情処理に下請け業者を回るのが山田の業務である。しかし
それは、先輩から無理やり押付けられた仕事であった。
「くそっ! どうして僕が何時も叱られなければいけないいだよ!! 僕がリ
ストラになったら先輩が嫌と言うほど業者から叱られればいいんだ! ああ、
何てついていない日なんだよ…ぉ、、おっ? あれ? あ、あれは…」
山田は、腹立つ思いで車を走らせていた、すると、歩道を歩いている着物姿
の女性を追い越したのだ。山田は、その女性の顔を見た瞬間、思わずブレーキ
を掛けたのである。
バックミラーで女性を確認すると山田は確信したかのように扉を開けて女性に
会釈をした。
歩いていた女性も、山田が乗車していた車の会社名の看板を見て気が付いた。
「あら、貴方は会社の方ですか?」
「は、はい。あ、あの…こんな所で、止まって、えっとすみません。通り過ぎ
るのを見掛けて、止まってしまいました…あっ、ぼ、僕は営業課の、山田とい
います…」
「くすっ…山田さん、ですか。毎日お仕事御苦労様ですね」
軽く微笑み、会釈をする女性。名は磯貝瑠美子42歳、社長夫人である。
日本髪に、着物姿。瑠美子は茶道の帰りなのである。
事もあろうか山田は、直接面識も無い社長夫人に声を掛けてしまったのであ
る。その時の山田に意味があって言葉を掛けたわけでもなく、訳も分からぬま
ま気が付いたときには車を止めていたのであった。持って生れた彼の本能がそ
うさせたのである。 何かを期待させるかのように…
「よ、よ、よかったら、お家までお送り致します…」
「あら? くすっ、いいのよ山田さん。お仕事中でしょ、気になさらないで」
何ともいえない笑顔の瑠美子に山田は心を叩かれた。無理矢理でも送ってあ
げたい心境になる。が、通り道だと説明するとあっさり車に乗ってくれる夫人
であった。
改めて隣の座席に乗る瑠美子に興奮を憶える山田。甘い女の香水に日本女性
の上品さを醸し出す和服姿、そして何と言っても歳相応にない肌の張り具合で
ある。綺麗な顔はまるで舞妓さんだ…それが山田の率直な感想であった。
数日間、山田の頭には瑠美子の姿が存在して離れなかった。そして、一つの
接点を見出してしまったのである。それは、リストラを免れるには瑠美子に接
触することだと。…いや、接触する為にリストラを利用したいだけなのかも…
ニ
その日を割り出すのに、山田にとってそう難しいものではなかった。
残業時間、縄で縛り上げた七瀬の尻にアナルバイブを仕込ませ、張り型のバイ
ブで何度も突っ込み拷問させたのである。社長と嘘の出張日、その日の瑠美子
の行事、そして偶然にも娘の研修旅行が重なるその日を聞き出したのである。
──その日の夕刻
偶然にもその日は水曜日であった。今まで山田は、苦情の帰りに数回茶道の
帰り道の瑠美子を車で送っていた。この日の為に親近感を持たせていたのであ
る。
「あら、山田さん、今日も苦情の整理なの…御苦労様」
何時ものように笑顔を見せる瑠美子を、山田は車に乗車させると夫人宅へと
車を走らせた。道中、山田の手は震えが止まる事は無い、これから起きる出来
事を想像すると、不安と期待が込み上げてくるのであった。
今日はこのまま自宅へ帰りだと、山田は瑠美子に伝えると、計画通りお茶に
誘われたのである。何も知らない瑠美子は悪魔を自宅へと招きいれてしまった
のであった。
──20帖近い居間
二人はテーブルをはさんで紅茶を飲んでいた。瑠美子は和服から黒いシャツ
とお揃いのロングタイプのスカートへ着替え、長い黒髪を後ろでアップに結ん
でいる。その変化振りに興奮を隠せない山田。そんな彼は計画を進める為にタ
イミングを計らいながら落ち着かないのである。そして、そのタイミングが訪
れた…
玄関のチャイムが鳴る。
「あら、宅配便かしら。山田さん、暫く待っていてね」
そう言うと瑠美子は、テーブルを離れ玄関へと向かった。
「よ、よ、よし! い、今、今だ…えっと…どこだっけ……」
山田は、瑠美子が玄関へ向かうのを確認して立ち上がると、上着とズボンの
ポケットに手を挿しこんで何やら探し物をしている。
「あ、あ、あった…こ、これだ」
山田が手にしている物、それは小瓶に入ったドリンクタイプの媚薬である。
この日の為に購入しておいたのだ。悪事に使用するんじゃねえぞ…売人が意味
ありげに笑いながら手渡した代物、どんな女でも数分で男が欲しくなる、とい
う… 罪悪感と興奮が混ざり合う複雑な心境に今一つ気乗りがしない山田。だ
が、こころの隅で悪魔が再び目を覚ましたのである。リストラになってもいい
のか? …そうだ、やるしかない…
数分後、瑠美子が席へ戻ってきた。
「ごめんなさいね。宅配便の受取が長引いてしまって……」
宅配便との遣り取りを説明する瑠美子であったが、山田にはそれを聞く余裕
はなかった。媚薬入りの紅茶のカップを手にする瑠美子を、生唾を何度も飲み
込みながら昂ぶる気持ちを押えるので精一杯であったのだ。
「山田さん? どうしたの… …紅茶、冷めてるから入れ替えるわね…」
「は、はい…え? ええっ!! か、替えるのですか!」
「どうしたのそんなに驚いて…冷めた紅茶、美味しくないでしょ?」
「ぼ、ぼ、僕は冷めた紅茶が、す、好きですが…」
「あら、そう? それなら私だけ温かい紅茶に替えてくるけど…」
「そ、そんな! あっ…いえ… そうですか…ははっ…」
「さっきから驚いてばかりで、おかしな山田さん…」
「お、奥様! …あの、し、知ってますか? 冷めた紅茶が、あの、お、お肌
に良い事を…事務の女の子が言ってました… たぶん…」
「あら、そうなの? 初めて聞いたわ… 怪しいな、山田さん。そう言って私
を騙そうとしてるんじゃないの? …なあんてね、くすっ」
偶然にも企みを見事に当てられた山田。張り裂けそうな心臓、一気に寒気が
足元から頭へ駆け抜け、顔があおくなっていた。
「うふふっ、冗談よ、冗談。そんなに慌てておかしな山田さん。それじゃ、騙
されたと思って戴くわ」
何も知らず微笑掛ける瑠美子、本当に騙されているとも知らないで、カップ
を手にすると、唇へと近づけるのであった。
(4)へつづく・・・
-罠に陥る夫人-
一
──七瀬を服従させてから数ヶ月
山田は、週に数回七瀬を会社で責めることもあったが、焦る気持ちを押える
ように心掛けていた。社長に知られてクビになっては何の意味もないからであ
る。
だが、それを控えていても山田を会社においておくことを世間が許さなかっ
た。失業率が上がる一方の御時世、彼が勤める会社も他人事ではないようだ。
噂によると、来春には少数であるが、リストラを決行せざるを得ないという。
この部署からも、一人ないし二人はリストラ対象になるだろう…
「や、やばいな…ここで、足手まといになっているのは、どう考えても僕しか
いない、って、事はやはり、この、僕がリストラ?!」
最近七瀬の配慮で、雑用が少なくなった山田は、逆に仕事が減りその対象に
成りつつある事を心配していた。
「こればかりは、課長にお願いしても無理な話しだよな…くそー、せっかく楽
しい毎日を過ごしているのに、何か対策を考えねば!!」
だが、いくら考えても彼の知恵でアイデアが浮かぶはずがない。
──或る日の水曜日。夕刻
毎週水曜日は、苦情処理に下請け業者を回るのが山田の業務である。しかし
それは、先輩から無理やり押付けられた仕事であった。
「くそっ! どうして僕が何時も叱られなければいけないいだよ!! 僕がリ
ストラになったら先輩が嫌と言うほど業者から叱られればいいんだ! ああ、
何てついていない日なんだよ…ぉ、、おっ? あれ? あ、あれは…」
山田は、腹立つ思いで車を走らせていた、すると、歩道を歩いている着物姿
の女性を追い越したのだ。山田は、その女性の顔を見た瞬間、思わずブレーキ
を掛けたのである。
バックミラーで女性を確認すると山田は確信したかのように扉を開けて女性に
会釈をした。
歩いていた女性も、山田が乗車していた車の会社名の看板を見て気が付いた。
「あら、貴方は会社の方ですか?」
「は、はい。あ、あの…こんな所で、止まって、えっとすみません。通り過ぎ
るのを見掛けて、止まってしまいました…あっ、ぼ、僕は営業課の、山田とい
います…」
「くすっ…山田さん、ですか。毎日お仕事御苦労様ですね」
軽く微笑み、会釈をする女性。名は磯貝瑠美子42歳、社長夫人である。
日本髪に、着物姿。瑠美子は茶道の帰りなのである。
事もあろうか山田は、直接面識も無い社長夫人に声を掛けてしまったのであ
る。その時の山田に意味があって言葉を掛けたわけでもなく、訳も分からぬま
ま気が付いたときには車を止めていたのであった。持って生れた彼の本能がそ
うさせたのである。 何かを期待させるかのように…
「よ、よ、よかったら、お家までお送り致します…」
「あら? くすっ、いいのよ山田さん。お仕事中でしょ、気になさらないで」
何ともいえない笑顔の瑠美子に山田は心を叩かれた。無理矢理でも送ってあ
げたい心境になる。が、通り道だと説明するとあっさり車に乗ってくれる夫人
であった。
改めて隣の座席に乗る瑠美子に興奮を憶える山田。甘い女の香水に日本女性
の上品さを醸し出す和服姿、そして何と言っても歳相応にない肌の張り具合で
ある。綺麗な顔はまるで舞妓さんだ…それが山田の率直な感想であった。
数日間、山田の頭には瑠美子の姿が存在して離れなかった。そして、一つの
接点を見出してしまったのである。それは、リストラを免れるには瑠美子に接
触することだと。…いや、接触する為にリストラを利用したいだけなのかも…
ニ
その日を割り出すのに、山田にとってそう難しいものではなかった。
残業時間、縄で縛り上げた七瀬の尻にアナルバイブを仕込ませ、張り型のバイ
ブで何度も突っ込み拷問させたのである。社長と嘘の出張日、その日の瑠美子
の行事、そして偶然にも娘の研修旅行が重なるその日を聞き出したのである。
──その日の夕刻
偶然にもその日は水曜日であった。今まで山田は、苦情の帰りに数回茶道の
帰り道の瑠美子を車で送っていた。この日の為に親近感を持たせていたのであ
る。
「あら、山田さん、今日も苦情の整理なの…御苦労様」
何時ものように笑顔を見せる瑠美子を、山田は車に乗車させると夫人宅へと
車を走らせた。道中、山田の手は震えが止まる事は無い、これから起きる出来
事を想像すると、不安と期待が込み上げてくるのであった。
今日はこのまま自宅へ帰りだと、山田は瑠美子に伝えると、計画通りお茶に
誘われたのである。何も知らない瑠美子は悪魔を自宅へと招きいれてしまった
のであった。
──20帖近い居間
二人はテーブルをはさんで紅茶を飲んでいた。瑠美子は和服から黒いシャツ
とお揃いのロングタイプのスカートへ着替え、長い黒髪を後ろでアップに結ん
でいる。その変化振りに興奮を隠せない山田。そんな彼は計画を進める為にタ
イミングを計らいながら落ち着かないのである。そして、そのタイミングが訪
れた…
玄関のチャイムが鳴る。
「あら、宅配便かしら。山田さん、暫く待っていてね」
そう言うと瑠美子は、テーブルを離れ玄関へと向かった。
「よ、よ、よし! い、今、今だ…えっと…どこだっけ……」
山田は、瑠美子が玄関へ向かうのを確認して立ち上がると、上着とズボンの
ポケットに手を挿しこんで何やら探し物をしている。
「あ、あ、あった…こ、これだ」
山田が手にしている物、それは小瓶に入ったドリンクタイプの媚薬である。
この日の為に購入しておいたのだ。悪事に使用するんじゃねえぞ…売人が意味
ありげに笑いながら手渡した代物、どんな女でも数分で男が欲しくなる、とい
う… 罪悪感と興奮が混ざり合う複雑な心境に今一つ気乗りがしない山田。だ
が、こころの隅で悪魔が再び目を覚ましたのである。リストラになってもいい
のか? …そうだ、やるしかない…
数分後、瑠美子が席へ戻ってきた。
「ごめんなさいね。宅配便の受取が長引いてしまって……」
宅配便との遣り取りを説明する瑠美子であったが、山田にはそれを聞く余裕
はなかった。媚薬入りの紅茶のカップを手にする瑠美子を、生唾を何度も飲み
込みながら昂ぶる気持ちを押えるので精一杯であったのだ。
「山田さん? どうしたの… …紅茶、冷めてるから入れ替えるわね…」
「は、はい…え? ええっ!! か、替えるのですか!」
「どうしたのそんなに驚いて…冷めた紅茶、美味しくないでしょ?」
「ぼ、ぼ、僕は冷めた紅茶が、す、好きですが…」
「あら、そう? それなら私だけ温かい紅茶に替えてくるけど…」
「そ、そんな! あっ…いえ… そうですか…ははっ…」
「さっきから驚いてばかりで、おかしな山田さん…」
「お、奥様! …あの、し、知ってますか? 冷めた紅茶が、あの、お、お肌
に良い事を…事務の女の子が言ってました… たぶん…」
「あら、そうなの? 初めて聞いたわ… 怪しいな、山田さん。そう言って私
を騙そうとしてるんじゃないの? …なあんてね、くすっ」
偶然にも企みを見事に当てられた山田。張り裂けそうな心臓、一気に寒気が
足元から頭へ駆け抜け、顔があおくなっていた。
「うふふっ、冗談よ、冗談。そんなに慌てておかしな山田さん。それじゃ、騙
されたと思って戴くわ」
何も知らず微笑掛ける瑠美子、本当に騙されているとも知らないで、カップ
を手にすると、唇へと近づけるのであった。
(4)へつづく・・・
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