告白(転載) 【1283】Lovers【s.o.】
告白・体験
掲載サイト(友人の母親を犯す)は消滅。
2005年7月6日 10時52分54秒 - コピーぺ
まずテレビの電源を入れる。
次にビデオのスイッチを押し、自分しか判らないマークがつけられているビデオテープを差し込む。
ボリュームは小さく。音声は、いらない。
「‥‥‥よし。」
準備が整うと玲二はリモコンの再生ボタンを押した。
『‥‥‥!‥‥‥‥‥‥!』
モニターの中で繰り広げられるのは、幾度となく見たセックスシーン。
多少名前も知られているような女優の、ダビングにダビングを重ねた荒い画像だったが、玲二にとって、これが唯一の動くオナニーの道具だ。
「‥‥‥くそっ!モザイクなんてなけりゃ‥‥‥。」
拡大された粒子の広がる画面の裏を想像し玲二は舌打ちした。
画面の中の女優はしきりに何かを叫んでいる。男優の手さばきがそんなにすごいのだろうか?
しばらく画面を凝視して、リモコンの早送りボタンを押す。
「え~と、確か‥‥‥おっ、ちょっと行き過ぎ。」
修正して再生を押すと、女優の上に男優が乗っている場面が始まる。
このビデオの中で、玲二が一番セックスを疑似体験できるシーンだ。
当然、女優は知っている女性の顔に早変わりする。
「‥‥‥どうやって入れるんだろう。ホントに入るのかな!?」
ちらつくモザイクのあちらを推測しつつ、股間に添えられた手を素早くしごくと、まだ未熟なペ○スは敏感に反応した。
派手な攻めで女優を悶えさせる男優に自分を重ね合わせながら、手の動きはどんどんとヒートアップする。
「‥‥‥あぁ。セックス‥‥‥セックスしたいよぉ!」
男優の腰の動きが一段落し、次の体位へ移ろうとする頃、抜き取ったティッシュの上へ玲二は射精した。
ジュ、ジュ、ジュ‥‥‥
勢いある射撃に見舞われたティッシュをいそいそと片づけながら、玲二は気怠げな感覚の中、ビデオテープを取り出した。
「‥‥‥よし!」
朝。
身支度を整えて階下へ降りると、父の祐一が新聞を広げてテーブルに座っていた。
「おはよ。」
「‥‥‥おう。」
テーブルの上にはこんがりと焼けたトーストのお皿。いつも朝食は父が用意してくれる。
「いただきまーす。」
玲二はコップにミルクを注ぎながら、ちらっと父の顔をのぞいた。
‥‥‥やっぱり寂しいのかな。
結構厳つい顔をしている父が、いつからか頼りなく見えるようになった。
しかしそれは、母が家を出てから巨体を揺らして台所に立つ姿を見ているからそう思えるだけかも知れない。
「‥‥‥ふぅ。」
「ごちそうさまっ!」
新聞のページを開く音の中で聞こえた父のため息を掻き消すように、玲二は大きな声で席を立った。
「ん?早いな。」
「そっ!ちょっと今日は早く出るよ。」
「‥‥‥そうか。気をつけてな。」
半年前、玲二にははっきりと理由を告げずに突然別れた父と母。
どことなく、なんとなく、すれ違いという理由ともつかない理由で別れたのだろうと玲二は理解していたが、一緒が当たり前だと思っていた家族が壊れたことのショックは大きかった。
帰宅しても母の華やかな笑顔がない寂しさは、赤ん坊の頃から母に甘えきりだった自分の方が父よりも深い気がする。
「‥‥‥また雨、か。」
外へでると梅雨時期独特の湿った空気が体を包む。玲二は鬱陶しい気分になりながら傘を開いた。
‥‥‥母さん、早く帰ってきてよ。
復縁の望みはまだ捨てていない。
きっと、父と母もそれを望んでいるはずだ。
玲二が通う私立高校は上の下程の位置取りで、大学進学率がかなり高い。
三年生ともなると、クラス内には一種殺伐とした空気がこもるのを感じる。
「‥‥‥受験まで、あと‥‥‥何ヶ月ぐらいだろ。」
「やめろよ、数えんなよ?」
玲二は教室で級友のふみやと並んで座っていた。
ふみやとは高校になってから知り合い、玲二にとっては一番気の合う友達だった。
「憂鬱だなぁ。あぁ、憂鬱だなぁ‥‥‥。」
「で、どう?塾の方は。」
「ん‥‥‥そんなには‥‥‥まぁ、まだ行き始めだからさ。」
「そっか。」
「玲二もどっか行かないのかぁ?ヤバイぜ、塾か予備校くらい通っとかないと。」
「いいよ、たるいから。」
玲二がくすっと笑うと、ふみやもつられて笑う。
「ま、玲二なら大丈夫だろ。‥‥‥ところでさ。」
「ん?」
「なんかいいヤツ、どっかから手に入れてないか?」
「‥‥‥バカ言え。そんなん、ないに決まってんじゃん。」
「そっか。そうだよな‥‥‥。じゃあさ、まだアレ?」
アレ、とは玲二が使うアダルトビデオのことを指す。あのビデオはふみやがダビングしてくれたものなのだ。
「そ。ふみやは?」
「オレも。‥‥‥はぁ。借りに行ってみようかなぁ?」
「レンタル?‥‥‥そん時はまた頼むな。」
「アホ。行けるわけねーだろ。」
玲二もふみやも高校三年生の今まで、生の女体を見たことがなかった。
生まれて見たといえばビデオがあの一本と数冊のアダルト雑誌と、あと少々。
決して奥手という訳ではなかったのだが、男女関係に精通した友達がいなかったのと、店でアダルト物を買う勇気が振り絞れなかったのだ。
今まで見たビデオや雑誌にしても、さほど仲良くない知り合いから譲り受けた物だった。
「‥‥‥今度、さ。コンビニででもエロ本、買おうか?」
「う~~ん。それは、でもなぁ‥‥‥。」
「一体、裏ビデオ見たヤツとかなんて、どっから仕入れてんのかなぁ。」
「だよなぁ。」
モザイクに隠されていない生の女性の構造を見てみたい、それが二人の共通した願いだった。
玲二とふみやは同時に大きなため息をついた。
「‥‥‥そうだ。ちょっと話変わるけどさ。玲二、三組の永井って知ってるか?」
「永井?‥‥‥ああ。あのヤンキー?」
「見た目は結構まともで、そこまでヤンじゃないけどな。」
「でも悪い噂ばっかりじゃん。‥‥‥で?」
「いや、あいつが同じ塾にいて‥‥‥あ、ヤベ、チャイムだ。また後でな。」
あわてて自分の席へ駆け戻っていくふみや。
玲二は何のことなのかも大して気にならず、窓の外へ視線を移した。
鬱陶しい、グレイの空から舞い降りる雨。
こんな季節が終わって、はやく夏がくれば‥‥‥。
そうすれば全てがうまくいってる、きっとその頃には母だって明るく帰ってきてる。
そんな気がした。
休み時間。
玲二とふみやは廊下で壁にもたれ掛けて座っていた。
廊下をゆく女生徒たちが軽蔑がちに二人を見下ろしていくが、どうでも良かった。
「‥‥‥で、永井がどうしたって?」
「あ、そうそう。」
先ほどの時間のことなど忘れて別の話をしていたが、話題が尽きた頃ふと思い出し、玲二はふみやに尋ねてみた。
「‥‥‥いや、同じ塾にいるんだけどさ。色々とアイツの話聞いたんだよ。もちろん本人からじゃないけど。」
「ふ~ん?」
「そしたらさ、スゲェみたいだぜ。いろいろ、と。」
その言い方がちょっと引っかかり、玲二はふみやの方に向き直った。
永井といえば、この学校でも一番目立つほどの不良だ。
いろいろ?‥‥‥スケベなことか?
「‥‥‥なんか家が結構金持ちらしくて、ずっと一人暮らししてるらしい。それはいいんだけど、部屋に女連れ込んでセックスとかやりまくってるって。」
「‥‥‥へぇ。」
玲二は平静を装い、別に大したことはないというような相づちを打った。
セックス?やりまくり?
「ホントだぜ!?だって話聞いたヤツなんて、目の前でやってるの見たらしいし。」
「‥‥‥ふ、ふ~ん。」
玲二は心が激しく波打つのを感じていた。
同じ歳の人間が今の自分にはできない経験をしている。
それも、他の人間に見せながら‥‥‥。ということは、セックスなど別にどうとでもないと思っているということなのか。
それほど経験しているということなのか。
「相手は?」
「そりゃヤン女だよ。それ以外にもさ‥‥‥。」
ふみやは永井の多生徒とのトラブルや塾での傍若無人な振る舞いなどを紹介し始めたが、それらは玲二の耳にはさほど入ってこなかった。
‥‥‥セックス。
他人と交わる事。
それを簡単にできるヤツがいるなんて。
いや、もう高三にもなると当たり前なのかも知れないけど、でも‥‥‥。
玲二は永井の容姿を思い浮かべてみた。
艶光りする赤に染められたロングヘアと、これ見よがしに身につけたアクセサリー類。
それくらいしか印象にない。
まぁ、デカイし、結構カッコいいんだろうけど‥‥‥嫌いなヤツは絶対嫌いだろうな。オレもそうだ。
むちゃくちゃワガママっぽいし。
しかし、そんな嫌いなヤツがセックスなんて至上な事をしているのが許せない。
喧嘩の腕とかならともかく、多分みんな、あんな不良に自分は負けてないと思っていると思う。
「‥‥‥でさ、塾の先生とかには連れと野次りまくってエロい‥‥‥‥‥‥おい、聞いてる?」
「あ?う、うん。聞いてるよ。」
「‥‥‥ま、とにかくさ。ヤケクソ。‥‥‥オレたちとは違う世界の人間だよ。」
「だな。」
「でもなぁ。ヤンキーでもいいからやりたいなぁ。‥‥‥最近のヤンキーとかって結構綺麗だし。」
「だな‥‥‥や、や、いや。」
あっさりと同意しかけて、あわてて玲二は取り消した。
あんなアホっぽい女とかとなんて絶対イヤだ。そりゃあんな奴らとなら簡単に出来るのかも知れないけど‥‥‥。
オレなら、オレだったら、もっと普通の美人とじゃないと‥‥‥。
そう思ったところで、なぜか玲二の頭に母の顔が浮かんできた。
美人で、聡明で、スタイルが良くて、そしてとても優しくて‥‥‥。
確かに、年齢は全く違うがヤンキーたちとは対極にいる女性に違いない。
‥‥‥バ、バカっ!なに考えてんだっ!
母とのセックスシーンを思い浮かべそうになり、玲二はあわてて頭を振った。
「な、なに言ってんだよ、ふみや!ヤンキーとなんて、きちゃねぇ!」
「そうか?オレは出来るんなら誰でも構わねぇけどな。誰でも‥‥‥。」
「バ、バカ‥‥‥!」
「あっ!‥‥‥おい玲二、あれ‥‥‥永井じゃないか?」
ふみやが指さした方を向くと、廊下の向こうから制服の着こなしの違う連中が歩いてくるのが見えた。
真ん中を歩く、180前後の赤のロングヘア。‥‥‥永井だ。
「オレ、アイツあんまり学校で見ないよ。あんまり来てないんだろ。」
「‥‥‥だろうな。」
たまに見ても同級生とは思えない同級生。
セックスの経験者と知った今では、さらに異質な人間と感じる。
ふたりはそばを通り過ぎる永井の顔を、目を決して合わせないようにのぞき見た。
少し焼けた肌が精悍さを感じさせ、とても17歳とは思えないような大人びた雰囲気を醸し出している。
そしてその後、視線はセックスを体験済みという下腹部へ‥‥‥。
「‥‥‥はぁ。」
「‥‥‥はぁ。」
集団が通り過ぎてしばらくして、ふたりは同時にため息をついた。
「やっぱりオレたちとはなんか違う‥‥‥。違う世界の人間だよ。」
「だな。」
「いいじゃん、オレたちは別に遅くたって。ヤンキーはヤンキー同士仲良くやってくれれば。なぁ?ふみや。」
「‥‥‥。だな。」
ふみやの返事が遅いことが少々気になったが、玲二は永井のことはもう考えないことにした。
考えたってしょうがないし、あんな不良に経験で負けているのを思うとなんか腹立つし。
空を見上げてみると、少しだけ雲が薄くなってきているような気がした。
放課後玲二が帰ろうとすると、ちょうど雨が上がり始めていた。
「ラッキー。」
傘をしまいながら校門を出ていく。
空を見上げると、薄いスカイブルーものぞき始めてきているようだ。
「‥‥‥そうだ。何の予定もないし、ちょっとよってみようか?」
玲二は寄り道することを思い立ち、近くの公衆電話へ向かった。
メモ帳を取り出し、ひとつだけ名前の書かれていない番号をプッシュする。
「‥‥‥あ、母さん?」
受話器越しに聞こえてくるのは、間違いなく母の遼子の澄んだ声色だった。
「今から。‥‥‥うん、そう。‥‥‥いい?分かった、じゃあ行く。」
電話を切ると、玲二は駅へ向かっていった。
母は隣の市に住んでいる。出ていくときに、ちゃんと住所を教えていったのだ。
いつでも好きなときに寄ってと言われている。その事からも母が決して復縁を望んでいない訳ではないことを感じる。
玲二は電車に揺られながら、久しぶりに見る母の姿を想像した。
「‥‥‥着いた。え~と、ここから‥‥‥。」
駅から10分ほど歩くと、何度か訪れたことのある白塗りのアパートが見えてきた。
玲二は母の部屋の前に立ち、少し身を固くしながらインターフォンを押した。
「いらっ‥‥‥しゃい!」
「う、うん。」
微笑みながらドアを開けてくれた母に、なぜか玲二の心臓は高鳴った。
皺は確かに多いが丸顔で整った顔に、透きとおっているがどこか低音の利いたしっとりした大人の声。
「さ、入って。」
玲二はそんな母に導き入れられるという、どこか優越感めいた物を感じながら靴を脱いだ。
そうなのだ。
この笑顔は間違いなく家族の者にしか出さない笑顔なのだ。
「なにがいいかしら。お茶?ジュース?」
八畳ほどの部屋の中央にあるテーブルの前に座り、玲二はジュースをリクエストした。
「‥‥‥ジュースなんて買ってるんだ。」
「ふふ、玲二のためにね。」
以前なら気恥ずかしさを感じるような母の答えなのに、不思議とイヤな気はしない。
離れたせいか、そんな優しさも受け入れられるようになったのだろう。
玲二は部屋の中を見渡してみた。
年齢的なものか飾り気のある物は少ないが、きちんと整頓されている部屋だ。
全体的な白の壁紙が、よく入ってくる外からの光にさわやかに映る。
「‥‥‥あっちの部屋は‥‥‥寝るとこか。」
奥にある横開きの戸を見ながら、玲二は『寝るとこ』という単語に微妙に反応してしまった。
やはり今の玲二には、寝室といえば性的なことを連想する場所なのだ。
「はい、お待たせー。」
赤面していないか気にしていると、遼子がおぼんにコップとジュースを乗せてやってきた。
柔らかそうな生地の白いスカートを揺らせて絨毯に座ると、そこからフローラルの甘い香りが漂ってくる。
「ん‥‥‥!」
玲二はその女性的な香りに股間が反応してしまうのを意識した。
‥‥‥まったく。母親なのに、なんだか刺激が多いよ‥‥‥。
そういえば、母は会うたびに何となく女っぽさが増していっている気がする。
やはり、独身の一人暮らしなので女性としての身だしなみには気を遣うのだろうか?
「ふふ‥‥‥。どう?ちゃんとご飯は食べてる?」
正座のままコップにジュースを注ぎながら、遼子が聞いてきた。
「う、うん。‥‥‥いつも父さんが作ってくれる。」
「そう。」
ホッとしたように瞳を細めて見つめる母に、玲二はたまらない気持ちになった。
‥‥‥母さん、やっぱり帰ってきて!
しかしそれは口に出さず、ジュースをグイッと喉に流し込む。
「‥‥‥‥‥‥もう半年よね、あれから。」
「‥‥‥‥‥‥そうだね。」
「玲二にはホントに迷惑かけたけど‥‥‥。」
「‥‥‥いいよ。しょうがないんだもん。」
そう言って玲二は自分に腹が立った。
こんな物分かりが良いフリをしなくたって、素直に帰って来てと言うことが出来たならどんなに楽だろう。
「父さんは?元気にしてる?」
「うん。多分、大丈夫。」
「‥‥‥そう。」
そのときの俯いた微笑みは、家族の安否を心配していた母親そのものだった。
「‥‥‥話は変わるけど、玲二。ちゃんと勉強してる。」
「え?あ‥‥‥うん。ぼちぼち、かな。」
「ダメよぉ、ぼちぼちなんて。今年受験なの分かってるでしょ。」
「う、うん。」
「玲二はどんな大学を目指してるの?理系、文系‥‥‥。」
それからしばらくの会話はまさに教育ママそのもので、玲二は時折冷や汗を垂らしながら曖昧に受け答えし続けた。
「‥‥‥ふふ、そんなこと言って。結局は勉強したくないんでしょ?」
「そっ、そんなことないよっ!‥‥‥ないけど‥‥‥。」
「いいのよ。」
「‥‥‥?」
どこか母らしくない言葉を聞き返す前に遼子は立ち上がり、薄暗くなり始めた部屋のカーテンを閉めた。
明かりが灯ると、遮蔽された部屋は密室感がぐっと高まる。
「い、いいって、なにが?」
妙な気分を押さえ玲二が聞き返すと、遼子は足を伸ばし、ググッと伸びをしながら答えた。
「結局ね。勉強なんて本人がやる気にならないと絶対出来ない。‥‥‥最近そう感じるのよ。」
「ふ、ふぅん。」
なぜ遼子がそんなことを言うのかよく分からなかったが、勉強の話を蒸し返されると困るので玲二は黙っておくことにした。
「ね、それより。今日ご飯食べてく?」
玲二は空腹なのに気づき、辺りを見回して時計を探した。
‥‥‥7時前か。
「‥‥‥うぅん。帰る。」
その壁に掛けられた、上にインコの作り物が乗った可愛らしい丸時計を微笑ましく思いながら、玲二は答えた。
帰れば父が夕食を用意してくれているはずだ。それを食べないのは忍びない。
「‥‥‥そう。」
遼子はなにも聞かず、ただ、どこかやり場のない微笑みを浮かべた。
「ごめん。‥‥‥ねぇ母さん。また聞いちゃうけど。」
「なに?」
「母さんってどこで働いてるの?」
何度か聞いたが、今までは答えてくれなかったことだ。
でも、やはり息子として、母がどこで働いているのかはとても気になる。
「‥‥‥う、うん。それは言いたくないのよ。別に変なことをしてるってわけじゃないんだけど‥‥‥。」
「‥‥‥そう。」
「ごめんね。」
玲二はそれ以上は聞かないことにした。
確かに職場を教えてくれないとなるとやはりもう『昔の家族』なのかとも思うけど、きっと母にも色々事情があるのだ。
もしかして、そこへ自分や父が訪ねていって噂などを立てられてしまうのを恐れているのかも知れない。
「でもね、とにかく母さん、自立しなくちゃいけないから‥‥‥。」
「うん。それは分かってる。‥‥‥お金とか大丈夫なの?」
「ふふ、そんなこと聞いちゃダメよ。」
そう言ってくすっと笑い‥‥‥
「ホントはね、すごく苦しいの。はっきり言ってやっていけないくらい。‥‥‥あ~あ、こんな事ならやっぱり父さんから慰謝料貰っとくんだったわぁ。」
「今からだって言えば‥‥‥。」
「うぅん。迷惑は掛けたくないのよ‥‥‥。」
気がかりな玲二だったが、半年間母は自活して一人で生きてきた。
それを思うと、母ならきっとどうにかうまくやっていくのだろうという気もしていた。
‥‥‥ん?一人?
「‥‥‥‥‥‥。」
玲二は奥にある寝室とおぼしき部屋の扉に目を向けた。
母は今一人暮らし。独身だ。
もしかして、男とかがいても‥‥‥?
それ以上を想像しようとし、玲二はあわててストップをかけた。
「‥‥‥帰るよ。」
「そう‥‥‥。気をつけてね?」
玲二は大人らしくキチッとセットされた母のヘアスタイルの横をすり抜け、玄関へ歩いていった。
‥‥‥それは、ない。
男がいる気配など全くないし、母が父以外の男とくっつくなんて考えられない。
それに、母がどこか復縁を願っていることは、素振りや言動からよく分かっていた。
生まれた頃から知っている母親だから、間違いじゃない。
しかし、電車に乗って揺られる帰り道、玲二は遼子の性についてずっと考えていた。
‥‥‥母もセックスをするのか?
‥‥‥知らない男とでも肉体的に可能なのか?
‥‥‥母は、オンナ、なのか?あのビデオの女のように悶えるのか?
答えはすぐに出るのだが、納得はしたくないし、出来ない。
「ただいま。」
「おう。」
家に帰ると、いつものように父が夕食を用意してテレビを見ていた。
どこか薄暗く感じる雰囲気。やはり母がいるのといないのとでは華やかさが違う。
玲二はテーブルに座ると、あまり良くできたとは言えない食事に手をつけた。
「‥‥‥ねぇ、父さん。」
「あん?」
「‥‥‥母さんと‥‥‥仲直りは出来ないの?」
「ああ‥‥‥そうなれば一番いいんだろうけどな‥‥‥。」
そう答える父はやはりどこか寂しく見えた。
どうして二人ともそう思ってるのにうまくいかないんだろう。
しかし、一度別れた二人が即よりを戻すと、色々と障害がある事も何となくだが理解できる。
人付き合いや近所付き合い。大人だと、そういうことを考えたりするのだろう。
「ご馳走様。」
「お?‥‥‥あ、ああ。」
巨体に似合わず頼りない声を聞きながら、玲二は自分の部屋へ引きこもった。
「ふぅ。」
部屋のベッドに寝そべった玲二は、母のことを思い返していた。
自分よりも頭ひとつ小さな背丈。結構肉付きはいいみたいで、てことは、ちゃんとご飯は食べてるんだ。
良かった。
‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥肉付き‥‥‥胸の思い出はあるんだけど。
またなぜか母の裸を想像しそうになりあわてて頭を振る。しかし‥‥‥。
「‥‥‥いけないことだよな。」
そう言いながら下半身を露わにする。
「‥‥‥ビデオを見ながらにしよう。」
ビデオをセットすると、早速現れるいつもの見慣れたシーン。
しかし、身体はそのままに、首より上は頭の中で修正される。
‥‥‥ショートカットで、少しパーマが入ってる‥‥‥。
‥‥‥皺はやっぱりあるけど、この女優なんかよりもきっと若い頃は美人だった‥‥‥。
‥‥‥それにこんな女なんかと違って、中身がぎっしり詰まってるんだ‥‥‥。
股間に添えた手を素早く上下動させる玲二。
どこかで必死に抑制しようとする理性から逃れる背徳感は、とても甘美で危険な感覚をもたらす。
‥‥‥母さんがセックスなんかしないことは判ってる。
‥‥‥父さん以外の男、いや、もう40過ぎだから父さんともしないかも知れない。
だからこそ自分だけのピュアな存在である気がするのだ。
モニターの中のモデルが足を開くと、母は絶対にそんな真似はしない、出来ないと知りながらも、姿を重ね合わせていく。
母のあのスカートは、絶対に捲れ上がったりはしないんだ。そこらの女たちのスカートとは違うんだ。
だって、オレの母親、なんだから。
他の男が出来るとすれば、無理矢理のレイプだけ‥‥‥!
モザイクの奥に伺える色素の違う肌が映しだされると、そこが玲二の限界だった。
ジュ、ジュ、ジュ、ジュ、ジュ‥‥‥
激しくティッシュに叩き付けられる精液。
それを真っ白になる頭で見つめながら、玲二は母のことを強く想った。
‥‥‥あっああ‥‥‥母さん、母さん‥‥‥。
‥‥‥早く帰ってきてよ‥‥‥。
‥‥‥ああ‥‥‥もっといいビデオがあれば‥‥‥もっと気持ちいいのにな‥‥‥。
続く
2005年7月6日 10時52分54秒 - コピーぺ
まずテレビの電源を入れる。
次にビデオのスイッチを押し、自分しか判らないマークがつけられているビデオテープを差し込む。
ボリュームは小さく。音声は、いらない。
「‥‥‥よし。」
準備が整うと玲二はリモコンの再生ボタンを押した。
『‥‥‥!‥‥‥‥‥‥!』
モニターの中で繰り広げられるのは、幾度となく見たセックスシーン。
多少名前も知られているような女優の、ダビングにダビングを重ねた荒い画像だったが、玲二にとって、これが唯一の動くオナニーの道具だ。
「‥‥‥くそっ!モザイクなんてなけりゃ‥‥‥。」
拡大された粒子の広がる画面の裏を想像し玲二は舌打ちした。
画面の中の女優はしきりに何かを叫んでいる。男優の手さばきがそんなにすごいのだろうか?
しばらく画面を凝視して、リモコンの早送りボタンを押す。
「え~と、確か‥‥‥おっ、ちょっと行き過ぎ。」
修正して再生を押すと、女優の上に男優が乗っている場面が始まる。
このビデオの中で、玲二が一番セックスを疑似体験できるシーンだ。
当然、女優は知っている女性の顔に早変わりする。
「‥‥‥どうやって入れるんだろう。ホントに入るのかな!?」
ちらつくモザイクのあちらを推測しつつ、股間に添えられた手を素早くしごくと、まだ未熟なペ○スは敏感に反応した。
派手な攻めで女優を悶えさせる男優に自分を重ね合わせながら、手の動きはどんどんとヒートアップする。
「‥‥‥あぁ。セックス‥‥‥セックスしたいよぉ!」
男優の腰の動きが一段落し、次の体位へ移ろうとする頃、抜き取ったティッシュの上へ玲二は射精した。
ジュ、ジュ、ジュ‥‥‥
勢いある射撃に見舞われたティッシュをいそいそと片づけながら、玲二は気怠げな感覚の中、ビデオテープを取り出した。
「‥‥‥よし!」
朝。
身支度を整えて階下へ降りると、父の祐一が新聞を広げてテーブルに座っていた。
「おはよ。」
「‥‥‥おう。」
テーブルの上にはこんがりと焼けたトーストのお皿。いつも朝食は父が用意してくれる。
「いただきまーす。」
玲二はコップにミルクを注ぎながら、ちらっと父の顔をのぞいた。
‥‥‥やっぱり寂しいのかな。
結構厳つい顔をしている父が、いつからか頼りなく見えるようになった。
しかしそれは、母が家を出てから巨体を揺らして台所に立つ姿を見ているからそう思えるだけかも知れない。
「‥‥‥ふぅ。」
「ごちそうさまっ!」
新聞のページを開く音の中で聞こえた父のため息を掻き消すように、玲二は大きな声で席を立った。
「ん?早いな。」
「そっ!ちょっと今日は早く出るよ。」
「‥‥‥そうか。気をつけてな。」
半年前、玲二にははっきりと理由を告げずに突然別れた父と母。
どことなく、なんとなく、すれ違いという理由ともつかない理由で別れたのだろうと玲二は理解していたが、一緒が当たり前だと思っていた家族が壊れたことのショックは大きかった。
帰宅しても母の華やかな笑顔がない寂しさは、赤ん坊の頃から母に甘えきりだった自分の方が父よりも深い気がする。
「‥‥‥また雨、か。」
外へでると梅雨時期独特の湿った空気が体を包む。玲二は鬱陶しい気分になりながら傘を開いた。
‥‥‥母さん、早く帰ってきてよ。
復縁の望みはまだ捨てていない。
きっと、父と母もそれを望んでいるはずだ。
玲二が通う私立高校は上の下程の位置取りで、大学進学率がかなり高い。
三年生ともなると、クラス内には一種殺伐とした空気がこもるのを感じる。
「‥‥‥受験まで、あと‥‥‥何ヶ月ぐらいだろ。」
「やめろよ、数えんなよ?」
玲二は教室で級友のふみやと並んで座っていた。
ふみやとは高校になってから知り合い、玲二にとっては一番気の合う友達だった。
「憂鬱だなぁ。あぁ、憂鬱だなぁ‥‥‥。」
「で、どう?塾の方は。」
「ん‥‥‥そんなには‥‥‥まぁ、まだ行き始めだからさ。」
「そっか。」
「玲二もどっか行かないのかぁ?ヤバイぜ、塾か予備校くらい通っとかないと。」
「いいよ、たるいから。」
玲二がくすっと笑うと、ふみやもつられて笑う。
「ま、玲二なら大丈夫だろ。‥‥‥ところでさ。」
「ん?」
「なんかいいヤツ、どっかから手に入れてないか?」
「‥‥‥バカ言え。そんなん、ないに決まってんじゃん。」
「そっか。そうだよな‥‥‥。じゃあさ、まだアレ?」
アレ、とは玲二が使うアダルトビデオのことを指す。あのビデオはふみやがダビングしてくれたものなのだ。
「そ。ふみやは?」
「オレも。‥‥‥はぁ。借りに行ってみようかなぁ?」
「レンタル?‥‥‥そん時はまた頼むな。」
「アホ。行けるわけねーだろ。」
玲二もふみやも高校三年生の今まで、生の女体を見たことがなかった。
生まれて見たといえばビデオがあの一本と数冊のアダルト雑誌と、あと少々。
決して奥手という訳ではなかったのだが、男女関係に精通した友達がいなかったのと、店でアダルト物を買う勇気が振り絞れなかったのだ。
今まで見たビデオや雑誌にしても、さほど仲良くない知り合いから譲り受けた物だった。
「‥‥‥今度、さ。コンビニででもエロ本、買おうか?」
「う~~ん。それは、でもなぁ‥‥‥。」
「一体、裏ビデオ見たヤツとかなんて、どっから仕入れてんのかなぁ。」
「だよなぁ。」
モザイクに隠されていない生の女性の構造を見てみたい、それが二人の共通した願いだった。
玲二とふみやは同時に大きなため息をついた。
「‥‥‥そうだ。ちょっと話変わるけどさ。玲二、三組の永井って知ってるか?」
「永井?‥‥‥ああ。あのヤンキー?」
「見た目は結構まともで、そこまでヤンじゃないけどな。」
「でも悪い噂ばっかりじゃん。‥‥‥で?」
「いや、あいつが同じ塾にいて‥‥‥あ、ヤベ、チャイムだ。また後でな。」
あわてて自分の席へ駆け戻っていくふみや。
玲二は何のことなのかも大して気にならず、窓の外へ視線を移した。
鬱陶しい、グレイの空から舞い降りる雨。
こんな季節が終わって、はやく夏がくれば‥‥‥。
そうすれば全てがうまくいってる、きっとその頃には母だって明るく帰ってきてる。
そんな気がした。
休み時間。
玲二とふみやは廊下で壁にもたれ掛けて座っていた。
廊下をゆく女生徒たちが軽蔑がちに二人を見下ろしていくが、どうでも良かった。
「‥‥‥で、永井がどうしたって?」
「あ、そうそう。」
先ほどの時間のことなど忘れて別の話をしていたが、話題が尽きた頃ふと思い出し、玲二はふみやに尋ねてみた。
「‥‥‥いや、同じ塾にいるんだけどさ。色々とアイツの話聞いたんだよ。もちろん本人からじゃないけど。」
「ふ~ん?」
「そしたらさ、スゲェみたいだぜ。いろいろ、と。」
その言い方がちょっと引っかかり、玲二はふみやの方に向き直った。
永井といえば、この学校でも一番目立つほどの不良だ。
いろいろ?‥‥‥スケベなことか?
「‥‥‥なんか家が結構金持ちらしくて、ずっと一人暮らししてるらしい。それはいいんだけど、部屋に女連れ込んでセックスとかやりまくってるって。」
「‥‥‥へぇ。」
玲二は平静を装い、別に大したことはないというような相づちを打った。
セックス?やりまくり?
「ホントだぜ!?だって話聞いたヤツなんて、目の前でやってるの見たらしいし。」
「‥‥‥ふ、ふ~ん。」
玲二は心が激しく波打つのを感じていた。
同じ歳の人間が今の自分にはできない経験をしている。
それも、他の人間に見せながら‥‥‥。ということは、セックスなど別にどうとでもないと思っているということなのか。
それほど経験しているということなのか。
「相手は?」
「そりゃヤン女だよ。それ以外にもさ‥‥‥。」
ふみやは永井の多生徒とのトラブルや塾での傍若無人な振る舞いなどを紹介し始めたが、それらは玲二の耳にはさほど入ってこなかった。
‥‥‥セックス。
他人と交わる事。
それを簡単にできるヤツがいるなんて。
いや、もう高三にもなると当たり前なのかも知れないけど、でも‥‥‥。
玲二は永井の容姿を思い浮かべてみた。
艶光りする赤に染められたロングヘアと、これ見よがしに身につけたアクセサリー類。
それくらいしか印象にない。
まぁ、デカイし、結構カッコいいんだろうけど‥‥‥嫌いなヤツは絶対嫌いだろうな。オレもそうだ。
むちゃくちゃワガママっぽいし。
しかし、そんな嫌いなヤツがセックスなんて至上な事をしているのが許せない。
喧嘩の腕とかならともかく、多分みんな、あんな不良に自分は負けてないと思っていると思う。
「‥‥‥でさ、塾の先生とかには連れと野次りまくってエロい‥‥‥‥‥‥おい、聞いてる?」
「あ?う、うん。聞いてるよ。」
「‥‥‥ま、とにかくさ。ヤケクソ。‥‥‥オレたちとは違う世界の人間だよ。」
「だな。」
「でもなぁ。ヤンキーでもいいからやりたいなぁ。‥‥‥最近のヤンキーとかって結構綺麗だし。」
「だな‥‥‥や、や、いや。」
あっさりと同意しかけて、あわてて玲二は取り消した。
あんなアホっぽい女とかとなんて絶対イヤだ。そりゃあんな奴らとなら簡単に出来るのかも知れないけど‥‥‥。
オレなら、オレだったら、もっと普通の美人とじゃないと‥‥‥。
そう思ったところで、なぜか玲二の頭に母の顔が浮かんできた。
美人で、聡明で、スタイルが良くて、そしてとても優しくて‥‥‥。
確かに、年齢は全く違うがヤンキーたちとは対極にいる女性に違いない。
‥‥‥バ、バカっ!なに考えてんだっ!
母とのセックスシーンを思い浮かべそうになり、玲二はあわてて頭を振った。
「な、なに言ってんだよ、ふみや!ヤンキーとなんて、きちゃねぇ!」
「そうか?オレは出来るんなら誰でも構わねぇけどな。誰でも‥‥‥。」
「バ、バカ‥‥‥!」
「あっ!‥‥‥おい玲二、あれ‥‥‥永井じゃないか?」
ふみやが指さした方を向くと、廊下の向こうから制服の着こなしの違う連中が歩いてくるのが見えた。
真ん中を歩く、180前後の赤のロングヘア。‥‥‥永井だ。
「オレ、アイツあんまり学校で見ないよ。あんまり来てないんだろ。」
「‥‥‥だろうな。」
たまに見ても同級生とは思えない同級生。
セックスの経験者と知った今では、さらに異質な人間と感じる。
ふたりはそばを通り過ぎる永井の顔を、目を決して合わせないようにのぞき見た。
少し焼けた肌が精悍さを感じさせ、とても17歳とは思えないような大人びた雰囲気を醸し出している。
そしてその後、視線はセックスを体験済みという下腹部へ‥‥‥。
「‥‥‥はぁ。」
「‥‥‥はぁ。」
集団が通り過ぎてしばらくして、ふたりは同時にため息をついた。
「やっぱりオレたちとはなんか違う‥‥‥。違う世界の人間だよ。」
「だな。」
「いいじゃん、オレたちは別に遅くたって。ヤンキーはヤンキー同士仲良くやってくれれば。なぁ?ふみや。」
「‥‥‥。だな。」
ふみやの返事が遅いことが少々気になったが、玲二は永井のことはもう考えないことにした。
考えたってしょうがないし、あんな不良に経験で負けているのを思うとなんか腹立つし。
空を見上げてみると、少しだけ雲が薄くなってきているような気がした。
放課後玲二が帰ろうとすると、ちょうど雨が上がり始めていた。
「ラッキー。」
傘をしまいながら校門を出ていく。
空を見上げると、薄いスカイブルーものぞき始めてきているようだ。
「‥‥‥そうだ。何の予定もないし、ちょっとよってみようか?」
玲二は寄り道することを思い立ち、近くの公衆電話へ向かった。
メモ帳を取り出し、ひとつだけ名前の書かれていない番号をプッシュする。
「‥‥‥あ、母さん?」
受話器越しに聞こえてくるのは、間違いなく母の遼子の澄んだ声色だった。
「今から。‥‥‥うん、そう。‥‥‥いい?分かった、じゃあ行く。」
電話を切ると、玲二は駅へ向かっていった。
母は隣の市に住んでいる。出ていくときに、ちゃんと住所を教えていったのだ。
いつでも好きなときに寄ってと言われている。その事からも母が決して復縁を望んでいない訳ではないことを感じる。
玲二は電車に揺られながら、久しぶりに見る母の姿を想像した。
「‥‥‥着いた。え~と、ここから‥‥‥。」
駅から10分ほど歩くと、何度か訪れたことのある白塗りのアパートが見えてきた。
玲二は母の部屋の前に立ち、少し身を固くしながらインターフォンを押した。
「いらっ‥‥‥しゃい!」
「う、うん。」
微笑みながらドアを開けてくれた母に、なぜか玲二の心臓は高鳴った。
皺は確かに多いが丸顔で整った顔に、透きとおっているがどこか低音の利いたしっとりした大人の声。
「さ、入って。」
玲二はそんな母に導き入れられるという、どこか優越感めいた物を感じながら靴を脱いだ。
そうなのだ。
この笑顔は間違いなく家族の者にしか出さない笑顔なのだ。
「なにがいいかしら。お茶?ジュース?」
八畳ほどの部屋の中央にあるテーブルの前に座り、玲二はジュースをリクエストした。
「‥‥‥ジュースなんて買ってるんだ。」
「ふふ、玲二のためにね。」
以前なら気恥ずかしさを感じるような母の答えなのに、不思議とイヤな気はしない。
離れたせいか、そんな優しさも受け入れられるようになったのだろう。
玲二は部屋の中を見渡してみた。
年齢的なものか飾り気のある物は少ないが、きちんと整頓されている部屋だ。
全体的な白の壁紙が、よく入ってくる外からの光にさわやかに映る。
「‥‥‥あっちの部屋は‥‥‥寝るとこか。」
奥にある横開きの戸を見ながら、玲二は『寝るとこ』という単語に微妙に反応してしまった。
やはり今の玲二には、寝室といえば性的なことを連想する場所なのだ。
「はい、お待たせー。」
赤面していないか気にしていると、遼子がおぼんにコップとジュースを乗せてやってきた。
柔らかそうな生地の白いスカートを揺らせて絨毯に座ると、そこからフローラルの甘い香りが漂ってくる。
「ん‥‥‥!」
玲二はその女性的な香りに股間が反応してしまうのを意識した。
‥‥‥まったく。母親なのに、なんだか刺激が多いよ‥‥‥。
そういえば、母は会うたびに何となく女っぽさが増していっている気がする。
やはり、独身の一人暮らしなので女性としての身だしなみには気を遣うのだろうか?
「ふふ‥‥‥。どう?ちゃんとご飯は食べてる?」
正座のままコップにジュースを注ぎながら、遼子が聞いてきた。
「う、うん。‥‥‥いつも父さんが作ってくれる。」
「そう。」
ホッとしたように瞳を細めて見つめる母に、玲二はたまらない気持ちになった。
‥‥‥母さん、やっぱり帰ってきて!
しかしそれは口に出さず、ジュースをグイッと喉に流し込む。
「‥‥‥‥‥‥もう半年よね、あれから。」
「‥‥‥‥‥‥そうだね。」
「玲二にはホントに迷惑かけたけど‥‥‥。」
「‥‥‥いいよ。しょうがないんだもん。」
そう言って玲二は自分に腹が立った。
こんな物分かりが良いフリをしなくたって、素直に帰って来てと言うことが出来たならどんなに楽だろう。
「父さんは?元気にしてる?」
「うん。多分、大丈夫。」
「‥‥‥そう。」
そのときの俯いた微笑みは、家族の安否を心配していた母親そのものだった。
「‥‥‥話は変わるけど、玲二。ちゃんと勉強してる。」
「え?あ‥‥‥うん。ぼちぼち、かな。」
「ダメよぉ、ぼちぼちなんて。今年受験なの分かってるでしょ。」
「う、うん。」
「玲二はどんな大学を目指してるの?理系、文系‥‥‥。」
それからしばらくの会話はまさに教育ママそのもので、玲二は時折冷や汗を垂らしながら曖昧に受け答えし続けた。
「‥‥‥ふふ、そんなこと言って。結局は勉強したくないんでしょ?」
「そっ、そんなことないよっ!‥‥‥ないけど‥‥‥。」
「いいのよ。」
「‥‥‥?」
どこか母らしくない言葉を聞き返す前に遼子は立ち上がり、薄暗くなり始めた部屋のカーテンを閉めた。
明かりが灯ると、遮蔽された部屋は密室感がぐっと高まる。
「い、いいって、なにが?」
妙な気分を押さえ玲二が聞き返すと、遼子は足を伸ばし、ググッと伸びをしながら答えた。
「結局ね。勉強なんて本人がやる気にならないと絶対出来ない。‥‥‥最近そう感じるのよ。」
「ふ、ふぅん。」
なぜ遼子がそんなことを言うのかよく分からなかったが、勉強の話を蒸し返されると困るので玲二は黙っておくことにした。
「ね、それより。今日ご飯食べてく?」
玲二は空腹なのに気づき、辺りを見回して時計を探した。
‥‥‥7時前か。
「‥‥‥うぅん。帰る。」
その壁に掛けられた、上にインコの作り物が乗った可愛らしい丸時計を微笑ましく思いながら、玲二は答えた。
帰れば父が夕食を用意してくれているはずだ。それを食べないのは忍びない。
「‥‥‥そう。」
遼子はなにも聞かず、ただ、どこかやり場のない微笑みを浮かべた。
「ごめん。‥‥‥ねぇ母さん。また聞いちゃうけど。」
「なに?」
「母さんってどこで働いてるの?」
何度か聞いたが、今までは答えてくれなかったことだ。
でも、やはり息子として、母がどこで働いているのかはとても気になる。
「‥‥‥う、うん。それは言いたくないのよ。別に変なことをしてるってわけじゃないんだけど‥‥‥。」
「‥‥‥そう。」
「ごめんね。」
玲二はそれ以上は聞かないことにした。
確かに職場を教えてくれないとなるとやはりもう『昔の家族』なのかとも思うけど、きっと母にも色々事情があるのだ。
もしかして、そこへ自分や父が訪ねていって噂などを立てられてしまうのを恐れているのかも知れない。
「でもね、とにかく母さん、自立しなくちゃいけないから‥‥‥。」
「うん。それは分かってる。‥‥‥お金とか大丈夫なの?」
「ふふ、そんなこと聞いちゃダメよ。」
そう言ってくすっと笑い‥‥‥
「ホントはね、すごく苦しいの。はっきり言ってやっていけないくらい。‥‥‥あ~あ、こんな事ならやっぱり父さんから慰謝料貰っとくんだったわぁ。」
「今からだって言えば‥‥‥。」
「うぅん。迷惑は掛けたくないのよ‥‥‥。」
気がかりな玲二だったが、半年間母は自活して一人で生きてきた。
それを思うと、母ならきっとどうにかうまくやっていくのだろうという気もしていた。
‥‥‥ん?一人?
「‥‥‥‥‥‥。」
玲二は奥にある寝室とおぼしき部屋の扉に目を向けた。
母は今一人暮らし。独身だ。
もしかして、男とかがいても‥‥‥?
それ以上を想像しようとし、玲二はあわててストップをかけた。
「‥‥‥帰るよ。」
「そう‥‥‥。気をつけてね?」
玲二は大人らしくキチッとセットされた母のヘアスタイルの横をすり抜け、玄関へ歩いていった。
‥‥‥それは、ない。
男がいる気配など全くないし、母が父以外の男とくっつくなんて考えられない。
それに、母がどこか復縁を願っていることは、素振りや言動からよく分かっていた。
生まれた頃から知っている母親だから、間違いじゃない。
しかし、電車に乗って揺られる帰り道、玲二は遼子の性についてずっと考えていた。
‥‥‥母もセックスをするのか?
‥‥‥知らない男とでも肉体的に可能なのか?
‥‥‥母は、オンナ、なのか?あのビデオの女のように悶えるのか?
答えはすぐに出るのだが、納得はしたくないし、出来ない。
「ただいま。」
「おう。」
家に帰ると、いつものように父が夕食を用意してテレビを見ていた。
どこか薄暗く感じる雰囲気。やはり母がいるのといないのとでは華やかさが違う。
玲二はテーブルに座ると、あまり良くできたとは言えない食事に手をつけた。
「‥‥‥ねぇ、父さん。」
「あん?」
「‥‥‥母さんと‥‥‥仲直りは出来ないの?」
「ああ‥‥‥そうなれば一番いいんだろうけどな‥‥‥。」
そう答える父はやはりどこか寂しく見えた。
どうして二人ともそう思ってるのにうまくいかないんだろう。
しかし、一度別れた二人が即よりを戻すと、色々と障害がある事も何となくだが理解できる。
人付き合いや近所付き合い。大人だと、そういうことを考えたりするのだろう。
「ご馳走様。」
「お?‥‥‥あ、ああ。」
巨体に似合わず頼りない声を聞きながら、玲二は自分の部屋へ引きこもった。
「ふぅ。」
部屋のベッドに寝そべった玲二は、母のことを思い返していた。
自分よりも頭ひとつ小さな背丈。結構肉付きはいいみたいで、てことは、ちゃんとご飯は食べてるんだ。
良かった。
‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥肉付き‥‥‥胸の思い出はあるんだけど。
またなぜか母の裸を想像しそうになりあわてて頭を振る。しかし‥‥‥。
「‥‥‥いけないことだよな。」
そう言いながら下半身を露わにする。
「‥‥‥ビデオを見ながらにしよう。」
ビデオをセットすると、早速現れるいつもの見慣れたシーン。
しかし、身体はそのままに、首より上は頭の中で修正される。
‥‥‥ショートカットで、少しパーマが入ってる‥‥‥。
‥‥‥皺はやっぱりあるけど、この女優なんかよりもきっと若い頃は美人だった‥‥‥。
‥‥‥それにこんな女なんかと違って、中身がぎっしり詰まってるんだ‥‥‥。
股間に添えた手を素早く上下動させる玲二。
どこかで必死に抑制しようとする理性から逃れる背徳感は、とても甘美で危険な感覚をもたらす。
‥‥‥母さんがセックスなんかしないことは判ってる。
‥‥‥父さん以外の男、いや、もう40過ぎだから父さんともしないかも知れない。
だからこそ自分だけのピュアな存在である気がするのだ。
モニターの中のモデルが足を開くと、母は絶対にそんな真似はしない、出来ないと知りながらも、姿を重ね合わせていく。
母のあのスカートは、絶対に捲れ上がったりはしないんだ。そこらの女たちのスカートとは違うんだ。
だって、オレの母親、なんだから。
他の男が出来るとすれば、無理矢理のレイプだけ‥‥‥!
モザイクの奥に伺える色素の違う肌が映しだされると、そこが玲二の限界だった。
ジュ、ジュ、ジュ、ジュ、ジュ‥‥‥
激しくティッシュに叩き付けられる精液。
それを真っ白になる頭で見つめながら、玲二は母のことを強く想った。
‥‥‥あっああ‥‥‥母さん、母さん‥‥‥。
‥‥‥早く帰ってきてよ‥‥‥。
‥‥‥ああ‥‥‥もっといいビデオがあれば‥‥‥もっと気持ちいいのにな‥‥‥。
続く
【1285】Re:Lovers【s.o.】
2005年7月6日 12時15分3秒 - 名無しさん
あのさ、他のサイトの作品を断りもなしにコピペするのはよくないことだよ。
↓のほうで管理人さんに削除されてるでしょ
【1297】Re:Lovers【s.o.】
2005年7月13日 20時33分35秒 - コピーぺ
「おはよ。」
「おう。」
玲二は新聞を開いている父に挨拶をしてテーブルに座った。テーブルの上にはこんがりと焼けたトースト。それを一枚取り、バターをたっぷりと塗る。
「‥‥‥昨日の野球は?」
「ん‥‥‥負けたよ。2対1。」
「そっか。」
味気ないパンを素早く腹に入れ、玲二はミルクのパックに手を伸ばしてコップに注ぐと、一気に飲み干した。
「よし。行って来るよ。」
「おお。気をつけてな。」
「うん。ご馳走さま。」
玲 二はカバンを手に取り、席を立った。ちょっと前まではこの簡素な朝食は寂しかったが、今ではもう大分慣れた。不器用な父が作ってくれるというだけでも感謝 しなくてはいけないとも思っている。しかし‥‥‥。‥‥‥あ~あ、母さんがいてくれたら‥‥‥。健康のことを考えたもっと手の込んだ物を作ってくれて、そ う、あの目玉焼きがおいしくて‥‥。そして家族にしか見せないあの笑顔で送り出してくれる。
『いってらっしゃい。‥‥‥あ、玲二。傘、傘!』
ほんの少し前までは当たり前だったのに‥‥‥。
「‥‥‥また、か。‥‥‥母さん、早く帰ってきてよ。」
終わらない雨の日。玲二は、2週間ほど前に会ってからというもの思い浮かべるようになった、母の裸身を打ち消しながらため息をついた。
「‥‥‥オレさ、あの塾やめようかなって思ってんだ。」
昼休み、玲二とふみやは裏門近くの校舎の壁にもたれかかっていた。雨はやんでいる。しかし、またいつ降り出すか分からない、薄暗い空。
「なんで?」
玲二が尋ねると、ふみやは困ったような笑みを浮かべた。
「ん‥‥‥。なんて言うか‥‥‥。無茶苦茶だし。勉強するところじゃないよ。」
「そういえばそう言ってたっけ。それで永井の話を聞いたんだ。」
玲二は同級生の不良のことを思い浮かべた。一人暮らしで、ヘラヘラしてて、セックスやりまくれて。‥‥‥くそっ。
「だって授業中野次りまくりだぜ?スケベなこととか、さぁ。よく言えるよなって事をさぁ。」
「先生とか怒んないのか?」
「そりゃ怒ったりするときもあるけど‥‥‥。だいたいの先生は無視してる。」
「ふ~ん‥‥‥。野次るって、具体的にどんなこと言ってんだ?」
「おっちゃんだったら生徒に手出してんだろ、とか、まだ奥さんとやってんのとか。」
「‥‥‥よく怒んないな。」
「若い女の先生いるんだけど、散々野次られて怒ったら犯すぞって本気で脅されたってさ。それ以来大人しくなったって。そのほかにも色々あるみたいだけどなぁ‥‥‥。」
「無茶苦茶だな。」
「だろ?この前だって先生辞めちゃったみたいでさ。‥‥‥連れが多いからって調子に乗ってんだよな。」
「だろな。」
でも入ってすぐにはやめられないよなぁ、というふみやの嘆きを聞きながら、玲二はまた母のことを考えていた。‥‥‥犯すぞ。もしそう脅されて母が誰かに犯されてしまったら。
無理矢理にフローラルの香りのするスカートを脱がされ、チンポを銜えさせられたりしてしまったら。想像しただけで胸が張り裂けそうになる。‥‥‥でも心配しなくても、そんなことはあり得ないよなぁ‥‥‥。
「‥‥‥まぁとにかく受験も近いし。どうにか気にしないようにして行くしかないか。」
「そうだな。」
「あ~あ、スゲェビデオか本でも見てスッキリしたいなぁ!」
「ハハ、そうだな。」
「頼むぜ、玲二。いいの入ったら絶対教えてくれよ。‥‥‥あっ、チャイムだ。」
「ふみやもな!」
ふたりはゆっくりと校舎に向けて歩き出した。もし、もっと凄いビデオが手に入ったら‥‥‥もっと母さんのこと強く想像できるのに‥‥‥。いけないことだとは思いつつ、玲二はチンポに刺激が走るのを感じていた。翌日。玲二が学校へ行くと、ふみやが深刻な顔で近寄ってきた。
「どうした?」
「玲二‥‥‥。昨日、ちょっとさ‥‥‥。」
親友のこんな表情を見るのは初めてな玲二は、とりあえず人気のない場所へ移動することにした。今日も相変わらずの雨。もう少しで始業のチャイムが鳴りそうな時刻だが、ふたりは使われていない廊下端の教室の前に座った。
「‥‥‥昨日な、ヤバイもん借りちゃったんだよ。」
「へぇ?」
「無理矢理さぁ。何となく話してたら、そういう話になって‥‥‥。」
「待てよ。なんだか分かんないけど?」
ふみやは相当興奮しているらしかった。ここには玲二しかいないのに、まるで他の誰かにでも聞かせているように視線を泳がせている。とにかく誰かに聞いてもらいたい話なのだろう。
「分かるように言ってくれよ。」
「あ、ああ、悪い。‥‥‥あのさ‥‥‥。」
昨日ふみやは通っている塾へ行った。すると、また教室に永井、それと二人の連れが一番後ろの席でふんぞり返っていた。ふみやは、
『勉強する気がないのに、どうしてこいつらここに来てるんだ?』
と思いつつ、無視して勉強していたらしい。そして数時間の授業が終わり帰ろうとすると、永井がふみやを呼び止めたそうだ。その同い年のくせにやけに低く響く声にふみやが恐々立ち止まると、永井はにやつきながらふみやの事を聞き始めた。
「‥‥‥連れが見てるし、無視も出来なくてさ。同じ学校だ、とか、知ってるヤツのこととかしばらく話したんだ。そしたらさ‥‥‥。」
永井がふみやに聞いた。
「オマエ、童貞?」
永井の連れがくすくす笑い出すのにふみやは怒り出しそうになったが、何も言わず我慢した。すると永井は続けた。
「スゲェビデオあるんだ。買わないか?」
その『スゲェビデオ』という単語に、ふみやは興味を惹かれた。永井に持つイメージと様々な噂から、裏ビデオの事を言っている、と。にやついた永井に遊ばれている感じもしたがそれを恐る恐る聞いてみると、その通り、無修正ビデオだという。
「‥‥‥ヤベェとは思ったんだ。思ったんだけど‥‥‥なんか話してみると、思ったよりイヤな奴に感じなくてさ‥‥‥。」
ふみやが興味を示すと、永井は連れに何かを囁いた。するとその連れは少し驚き、そして大笑いし始めた‥‥‥。
「‥‥‥それで?」
「うん‥‥‥。それからコンビニの前で待ち合わせして、そしたら永井が一人で来て‥‥‥。ちょっと変なやつだけど、モロはモロだぜって言ってさ。」
「買ったのか!?」
「‥‥‥ああ。」
「いくらで?」
「五千。」
玲二はとてつもなく鼓動が速くなるのを感じた。
裏‥‥‥?ビデオ‥‥‥?そのまま映ってるってことか‥‥‥!?
「で!?どうだった!?」
チャイムが鳴り始めているのも構わず、玲二はふみやの間近に顔を近づけて聞いた。
「ああ‥‥‥。モロ。モロもいいとこだよ‥‥‥。」
なぜふみやがそんな冷静に答えるのか分からず、玲二はふみやの肩を掴んで揺すってみる。経路はともかく、いままでずっと憧れて欲していたものが手に入ったというのだ。
「どんなだった!?すげかった!?」
「そ、それがさぁ。‥‥‥すごいことはすごいんだけど、さ。」
歯切れの悪いふみやの言葉に、もどかしさが込み上げる。
「なんなんだよっ!?」
「いや‥‥‥洒落になんないぞ?あのビデオ。」
「どういう風に?」
「レイプ物みたいなんだけど‥‥‥。なんて言うか‥‥‥マジっぽくって。」
「マジ‥‥‥?」
「うん。撮り方とかが本物を横で撮ったって感じでさぁ。すげぇ短いし‥‥‥。そういう演出なんだろうけど。」
「映るには映ってんだ?」
「そりゃあもう‥‥‥。ただ、顔とか映んないんだよ。マンコとかばっかで。」
玲二は訳の分からない焦りが込み上げてくるのを感じた。永井はもちろんだが、自分がまったく知らない物を親友のふみやまで見て知っている。女生徒にも、教師にも、そして母親の遼子にもある女性器を‥‥‥。
「ふみや‥‥‥!」
「分かってる。持ってきてるから貸してやるよ。」
「い、いいのか!?ダビングは?」
「‥‥‥とりあえず見てみろよ。でも、絶対ヤベェ感じするよ。」
玲二は小躍りして喜んだ。レイプだとか、内容などどうでもいい。ただ、女性の局部が映っていればいいのだ。とにかくそこを見て女を知り、そうして、それに母を重ねたりすれば‥‥‥。あたりが見えなくなるくらいの興奮が玲二を襲う。
「‥‥‥でも、なんでふみや、そんなに落ち込んでんだ?」
玲二はふと、自分に近寄ってきたときのふみやの表情を思い出して聞いてみた。
「う~~ん‥‥‥。あんな奴らと関係持ったら危ないよなって‥‥‥。」
「‥‥‥そっか。」
確かになれなれしく友達面されて、厄介なことになるかも知れない。
「‥‥‥まっ、昨日夜2発と今日朝1発抜いたからってのもあるけど!」
「な、なんだ。そっか‥‥‥!」
「でもすげぇぜ、マンコって。こう‥‥‥‥‥‥ヤッベェ、もう授業始まってるじゃん!!」
ふ たりは時刻にようやく気付き大急ぎで駆けだした。静かな校舎内をバタバタと大きな足音が響いていく。‥‥‥やった、やった!とうとうマンコが見れるん だっ!!ふみやから手渡されたビデオをカバンの奥に忍ばせ、玲二は校門を出た。アスファルトはまだ濡れているが、雨はやんでいる。このまますぐ家に帰りた いところだったが、寄り道をしていくことにした。
「‥‥‥母さん、いるかな。」
玲二は近くの電話ボックスに歩きながら、ラベルも貼られていない、重大な情報が記録されているはずのビデオテープを思い起こして身悶えた。
「えっと番号は。携帯やっぱ買うかなぁ‥‥‥。ん?」
番号をプッシュしようとして玲二は手を止めた。校門の方から歩いてくる4~5人の集団。その中にふみやの姿を見つけたのだ。
「なんだアイツ。もう帰ったと思って‥‥‥。」
玲 二はふみやを囲うようにして歩く他の面々を見た。一目でふみやとは釣り合わない、ワイルドを気取った連中。その中に、一際目立つ永井の姿があるのを見つけ た。玲二の胸を何かモヤモヤした感覚がよぎる。ふみや‥‥‥大丈夫か?永井は赤毛の長髪をふみやに当たるくらいに近づけ、なにやら喋りかけている。ふみや は困った様子で受け答えし、しばらくしてその集団から離れていった。
「‥‥‥ビデオのこととか聞かれてたんだろうな。」
玲二は電話ボック スの横を通り過ぎていく永井の姿を見た。一八〇ほどの体つきと赤毛にアクセサリー類。しかし玲二はそんな見た目よりも、自分とは明らかにある中身の差、経 験の差が悔しかった。同い年で、同じだけ育ってきた身体なのに‥‥‥。そう思うと自分が哀れに思え、永井から回ってきたビデオの入ったカバンをギュッと掴 む。
「‥‥‥。電話はしなくていいや。もう、そのまま行こう。」
玲二は電話ボックスを出ると、母の優しい笑顔を想像して駅に向かった。二 週間ぶりの母のアパート。自分だけの母、そしてその淑やかな姿を想像し、玲二は全身が熱くなるのを感じた。インターフォンのボタンを押す。しばらくすると ドアを開け、母さんは驚いて、そして喜んで迎え入れてくれる‥‥‥。当たり前のことだが、その幸せを感じずにはいられなかった。
「‥‥‥は~い!」
透き通った母の声が聞こえてくる。‥‥‥良かった、居てくれた!しばらくしてドアが開かれると、フローラルの香りとともに、満面の母の笑顔が飛び込んできた。
「あ‥‥‥れ、玲二?」
「うん。来ちゃった‥‥‥いい?」
不自然に歪んでいく母の表情。‥‥‥あれ?どうしたんだろ‥‥‥。しかしすぐにまた笑顔を浮かべ、遼子はドアを開け放った。
「い、いいわよ。もちろん。‥‥‥さぁ、どうぞ。」
「れ、連絡した方が良かった?」
し かし母はそれに答えず、ドアを閉めると玲二より先に部屋に上がった。玲二の胸を釈然としない思いがよぎる。‥‥‥仕事とか、用事でもあったのかな‥‥‥。 部屋に上がって中央のテーブルに座ると、遼子は台所でコップにジュースを注いでいた。暑くなってきたせいか、半袖の白のブラウスと紺のタイトなスカートの 出で立ち。家ではあまり見せなかった膝から下が剥き出しの姿に、違和感とともに新たな魅力を感じた。仕事の服かな?‥‥‥ん‥‥‥母さんの脚、白くて結構 綺麗‥‥‥。
「‥‥‥はい、オレンジジュース。冷たいから、頭痛くならないように飲むのよ。」
「う、うん、ありがと。」
にこっと微笑む遼子は子供の頃から知る母の笑顔そのもので、先ほどの表情は何だったのか疑わせる。
「ごめん。ちゃんと電話すれば良かった。」
「うぅん、いいのよ。‥‥‥あっ、そうだ。ケーキがあるから食べる?」
そう言ってまた台所へ立つ遼子。玲二はとりあえず母を怒らせていないことに安堵した。
‥‥‥別に用事ってわけでもなさそうだな。しかし、それからしばらく母と取り留めのない話題を交わした玲二は、どこか母の様子が普段と違うことを感じた。
「もうすぐ中間テストでさ。」
「ふぅん、頑張らないとね。あっ、ジュースまだいる?」
‥‥‥あれ、勉強のこと小うるさく聞いてくると思ったのに。
「父さんが作るご飯って魚が多いんだ。この前なんか‥‥‥。」
「そうなの。でも、そろそろ玲二も自炊とか覚えないと。一人暮らしすることになったら苦労するから。」
ど こか自分には関係のない話題、とでもとらえているような受け答え。決して機嫌が悪そうなのではない。いや、それどころか上機嫌なようにも見える。なにか楽 しいことでもあって、そのせいで他のことなどに気がまわっていない。そんな感じだ。‥‥‥でも、母さんだったらどんなときでもオレたちの心配してくれるは ずなのにな‥‥‥。玲二は女っぽさを増した母の顔と、ブラウス越しに透けるブラジャーを見ながら、胸がざわめくのを感じた。
「‥‥‥玲二。玲二!」
「え?‥‥‥あ、ごめん。ボーッとしてた。」
「ふふ。‥‥‥ねぇ、まだ帰らなくていいの?」
玲二は窓から外を見た。曇り空ながらまだ十分に明るい空。壁に掛かったインコの作り物が乗った時計を見ると、5時を指している。‥‥‥まだ早くないか?そう思ったが、母の様子にどことなく追い立てられるような気分を覚えて帰ることにした。
「気をつけてね。」
玄関でかけられる優しさのこもったしっとりとした声色にも、どこか味気なさを感じる。
‥‥‥なんだろう、こんな母さん初めてだ‥‥‥。玲二は母が、自分の知らないどこかへ行ってしまうのではないかと不安になり、ずっと想っていた言葉を口にしようとした。‥‥‥母さん、帰ってきて!!しかし、心のどこかから聞こえてくる別の声に口に出すのを思いとどまった。
「‥‥‥‥‥‥。」
「どうしたの、玲二。」
「う、うん。何でもない‥‥‥じゃあ。」
‥‥‥違うだろ、やらせてくれ、だろ。遼子の脚を包むスカートの中を想像して、頭から離れない。家に帰ると父の祐一が寝そべってテレビを見ていた。テーブルの上には弁当らしき包みが置いてある。
「いただきまーす。」
「おう。」
覇気の感じられない父の声に、玲二は本気で心配になった。‥‥‥父さんがもっとしっかりしてくれないと本当に母さん帰ってこない。‥‥‥父さんは母さんが必要じゃないのか!?そんなはずはないと否定しつつ、玲二はフゥとため息をつき、弁当を半分ほど残して包みを閉じた。
「‥‥‥ごちそうさま。」
「ああ。」
巨体なのにどこか小さく見える肩。‥‥‥父さん、野球のことなんてどうでもいいだろに。
玲二はモヤモヤとした気分を吹き飛ばすべく、ビデオが入ったカバンを抱えて階段を上った。まずテレビの電源をいれる。次にビデオのスイッチを押し、ふみやに借りたテープをデッキへ差し込む。ボリュームは小さく。でも、ちゃんと聞こえるように‥‥‥。
「‥‥‥よ、よし。」
玲二はとうとう目の当たりにするその部分を想像し、顔を引きつらせた。まだあまり慣れない、性的な物に触れるときの独特な刺激と感覚が体中を巡っていく。そっとリモコンを掴む。そして震える手で再生ボタンを押した。
『‥‥‥な‥‥‥や、やめ‥‥‥っ!‥‥‥イ‥‥‥ぁっ!!!』
まず最初に飛び込んできたのはかすれ気味の音声。しばらくして部屋らしき映像が映り、一瞬で全体が真っ白な画面に切り替わる。
『‥‥‥へへ‥‥‥やって‥‥‥だまら‥‥‥。』
途 切れ途切れな音声がノイズを伴ってスピーカーから流れてくるが、何を言っているのかよく分からない。ただ、断続的に甲高い悲鳴のような声がまじっている。 白だけの画面が切り替わり、今度は少し黄色がかった色がモニターを覆う。激しくぶれる画面の端に部屋の一部が写り、その色が人肌だとようやく分かった。カ メラが少し離れる。すると、男に抑えられているらしい女性の剥き出しの脚とベージュ色の下着が一瞬だが確認できた。また画面は切り替わり、いつの間にか脱 がされていた女性の下腹部を大写しにすると、太股とお腹の間に密集する陰毛がどぎつい色合いで画面を覆った。まったく突起を感じさせない、雌の器官。
『‥‥‥あぁぁ‥‥‥だ‥‥‥イヤ‥‥‥!!』
女性は激しく抵抗をしているようだった。カメラがぶれる以上に足をばたつかせている。
映 像は下半身ばかりをアップで写し、上半身へは上げようとしない。また画像は切り替わる。画面の中央を真っ二つに割る不可思議なライン。そのラインを少し黒 い色合いが囲み、そこには縮れ毛のような物が数本確認できる。画面の両端は白の単色。不可思議なラインはうねりながら、中央付近が花びらのように横に開い ている。それが性器だと分かるのには時間がかかった。
『‥‥‥うう‥‥‥やめ‥‥‥。』
女性のすすり泣くような声が聞こえる。しかし男に 脚を掴まれているのか、股間はこれ以上ないくらいに開ききられている。色合いや肌の具合から想像するにあまり若くはないようだ。しばらくして画面が切り替 わると、今度は背後からのアングルになった。丸々と突き出された尻の真ん中に女性器が大写しになる。その身体の入り口となる数センチのクレヴァスの上部に は、大きな黒褐色の輪に覆われた皺の穴もくっきりと映しだされた。
『‥‥‥ぐふ‥‥‥ハハ‥‥‥。』
男達の笑い声のようなものが漏れてくる。丸々と張ったヒップは、そのまま2~3分映され続けた。画面がブラックアウトする。しばらく待つと、定期的な呻きのような声が聞こえてきた。
『う‥‥‥う‥‥‥うう‥‥‥うう‥‥‥う‥‥‥。』
画 面はまた背後からの女性器を映し出す。しかし、先ほどよりも下からのアングルになり、女性の太股の後ろには別の浅黒い太股が重なっていた。画面中央。陰毛 の生えた部分から続く割れ目が大きく拡がり、薄ピンクの内部をさらけ出したその上に、巨大な肉棒がくい込んでいる。その肉棒が前進すると割れ目の周囲は縮 んで一緒に内部へ入り込もうとし、男の精巣によって女性器は隠れる。その肉棒が引かれると、まるで内臓が引きずり出されるようにピンクの粘膜が男根にまと わりついて出てくる。しばらくそのまま結合は続き、また画面がブラックアウトして戻ると、男の動きは繋がったまま停止し、笑い声だけがスピーカーから流れ てきた。そしてタイムカウントは止まった。
「す、すげぇ‥‥‥。」
玲二はこれ以上ないほど興奮し、身体の震えを止めることが出来なかっ た。喉がカラカラに渇いて、うまく唾を飲み込むことが出来ない。初めて見た女性器、初めて見た性交。それが、まさかこんなどぎついものだとは思わなかっ た。決して綺麗とは言えない、はっきりと言えば気持ち悪ささえも感じる映像だ。しかしそれだからこそ、何も隠さない、とてつもないリアリティを童貞の少年 に感じさせる。知ってはいけないこと‥‥‥。玲二の頭をそんな思いがよぎった。
「男と女って‥‥‥こんなことするのか‥‥‥。」
とてもまわりの美しい女性がするとは想像できないが、これが人間であり、現実なのだ。
あんな風に身体に侵入されてしまえば、女性のプライドは全て打ち砕かれてしまうように思う。‥‥‥母さんも同じメスであって‥‥‥。‥‥‥母さんもこんな風に父さんに入れられて‥‥‥それでオレが‥‥‥。玲二はリモコンの巻き戻しボタンを押した。
「‥‥‥もう一度‥‥‥。今度は母さんを‥‥‥。」
何度でも、永遠にでも大写しになった女性器を眺めていたい。しかしもう我慢が続きそうになかった。ようやく巻き戻し終わると、すぐに再生ボタンを押す。それと同時に大急ぎで服を脱ぎ捨てた。
「‥‥‥編集してるみたいだ。ふみやが言ってた危ないっての分かるな‥‥‥。」
気 ばかりが焦り、早送りして女性器のシーンで止める。その性器はあまりにも露骨に女性の個人性を暴露しているようで、それをテープに撮られたこの女性のこと が気の毒に思えた。‥‥‥でも、だからこそ、オレらみたいなのがオナニーに使えるんだ。画面は性交シーンへと移っていく。雄の優位性を知らしめるように突 き入れる男。その長大なチンポの大きさに愕然としつつ、玲二は自らを重ねる。‥‥‥母さん、オレもあんな風に母さんに入っていきたい!!手の摩擦ですぐに 訪れようとする絶頂を、玲二は必死になって抑えた。
「‥‥‥もう一度、もう一度最初っから‥‥‥!!」
焦る手つきでテープを巻き戻して再生する。そこは女性の脚と下着が映っているシーンだった。
「‥‥‥もうちょい先‥‥‥‥‥‥ん?待て‥‥‥!?」
一瞬のアングル。しかし、その一瞬になにか強く引っかかるものがあった。もう一度巻き戻してみる。
「‥‥‥ちょ、ちょっと‥‥‥これって‥‥‥!!!?」
玲二は震える手で一時停止ボタンを押した。女性の下半身が撮されるシーン。このビデオの中で唯一アップでないその場面に写る壁‥‥‥そこに掛けられている丸時計。
「イ、インコが乗ってる‥‥‥母さんの部屋で見た時計と一緒‥‥‥!?」
そんな馬鹿なと思いつつ、映像を凝視する。形、位置、そして壁の様子。全てが今日訪れた遼子の部屋そのものだった。そうとしか思えなかった。
「どう、ゆうこと!!?‥‥‥‥‥‥ああっ!?」
その時いきなり襲った奔流に玲二は抗うことが出来ず、何も受け止める物のない空中へ精を放ち始めた。
「か、母さん!?」
ジュ、 ジュ、ジュ、ジュ、ジュ、ジュ‥‥‥‥‥‥母さんはオレだけの物‥‥‥母さんは誰とも交わらないんだ‥‥‥!何度もテープ巻き戻す。切れ切れの甲高い悲 鳴、下着姿の下半身、大写しになる性器と完全にひとつになった雄と雌―――。この女性が母であるという身体的証拠はない。しかし、今日母の部屋で見たのと 同じ掛け時計が写っているという事実。
「‥‥‥ドアップで中身が写ってる‥‥‥。」
背後から写された女性は、最も秘密であるべき身体の内部をすべてさらけ出されている。
陰毛の一本一本、割れ目の一筋一筋の皺までくっきりと。すべての男性にとってこの映像は異性のいい教科書になるだろう、そう玲二に思わせる画像だった。
「‥‥‥実際、オレとふみやはこのビデオでマンコを知った‥‥‥。」
そ して大迫力の性交場面。見るからに繊細な肉の女性器は、他人からの侵入を柔軟に受け止めていく。‥‥‥違うよね、違うよね、母さん。母さんこんな事される わけないよね‥‥‥。男が自らの強さを見せしめるように突き立てると、ノイズの音声から定期的な呻きが聞こえる。身動きも出来ず、今、この女性は侵略され ているのだ。セックスってこんなモノなのか!?男が女を虐めるモノなのか!!?玲二が呆然とする間に男の動きは止まり、気に障るノイズ混じりの笑い声が漏 れてくる。今この女性の内部では何が起こっているのか。このビデオを見る男達の目の前で、この女性の体内で何が起こっているのか。何を男に起こされたの か‥‥‥。
「‥‥‥違う‥‥‥違うよ、母さんじゃない‥‥‥。」
玲二は震える手でビデオテープを撮りだした。喉がカラカラに渇き、体内の 全ての血が逆流している感じがする。母さんはもう四十過ぎのおばさんで、なんでそんな女をビデオに撮ったりするんだ‥‥‥。それに今日の母さんはとてもレ イプされたようには見えなかった。もしレイプだとしてもそれは犯罪で、そんな犯罪テープをなぜふみやに‥‥‥なぜ永井が‥‥‥?常識的に考えて、ビデオの 女性を母と結びつけるのには無理がある気がする。
「母さんのことばっかり考えてるから‥‥‥。なんでも母さんだと疑っちゃう‥‥‥。」
そう思いながらも、その日玲二は眠れない夜を過ごした。
「どうだった!?」
「‥‥‥‥‥‥。」
翌日学校に行くと、ふみやが早速ビデオのことを聞いてきた。
「なぁ、凄くなかったか?」
「ああ‥‥‥。」
「なんだよ。見たんだろ?」
ふたりは廊下端の人気のない場所へ移動して話すことにした。
「‥‥‥でさ、マンコってグロテスクな感じだったろ。」
「ああ。」
「オレさ、肛門があんなに近くにあるなんて知らなかった。隣り合ってんだな、穴が。」
「そうだ、な。」
「なんだよ玲二。良くなかったか?」
「イヤ、そんな訳じゃなくて‥‥‥。」
玲二の頭からいくら否定してもあの女性が母であるという疑いが消えてくれない。なので、その局部についてふみやと議論したくはなかった。
「なぁ、ふみや。あのビデオってさ、どこから手に入れたんだろ。」
「永井がか?‥‥‥さぁ、それは知らないけど。」
「‥‥‥絶対ヤバイよな。」
「ああ。ヤバ過ぎだよ。マジレイプだろ、あれ‥‥‥。」
レイプ。母の遼子が唯一父以外と性交するかもしれない手段だ。
「‥‥‥‥‥‥。」
「どうしたんだよ、玲二。そんなにショックが大きかった?マンコ見てさ。でも、気持ちは分かるなぁ‥‥‥。」
ふみやは情景を思い起こすように頷く。それが玲二には母の性器を思い起こされているようで辛かった。
「な、なぁふみや。オレも永井に会わせてくれないか‥‥‥?」
「なんで?」
「い、いや、オレもビデオ売ってもらおうかと思って。」
「な。‥‥‥やめとけって。あぶないよ、アイツに絡んだら。」
「‥‥‥そっか。」
玲二はふみやから目をそらして薄曇りの空を見た。今日は雨は降っていない。しかしジメジメとした空気が心身共に不快にさせる。
「‥‥‥じゃあさ、ふみや。あのビデオのことで永井になんか言われた?」
「え?ああ、昨日さ、ちょっと帰りに捕まって。いろいろ感想とか聞かれた。汚かったろ?とかさ‥‥‥。そんなこと言われても分からないよな、オレ達には。」
「‥‥‥‥‥‥。」
玲 二の心に様々な疑念が浮かんでくる。あの女は誰なのか。あの男は誰なのか。どこで撮られたのか。本当にレイプなのか、それともわざとそう撮られたモノなの か。判っているのは、ビデオの出所が永井で、母の部屋にあった時計と似た掛け時計が映っていたということ。永井と母さんに関連が‥‥‥?そんなバカ な‥‥‥。玲二はどこか違っていた昨日の母を思い浮かべた。
「‥‥‥母さん、違うよね。母さんはうちの母親で、知らない男にハメられる、そんな女じゃないよね‥‥‥。」
ふ みやに聞こえないようにつぶやいても、この空と同じように玲二の胸は晴れない。その日、玲二は学校内で幾度か永井の姿を見かけた。その度に視線は永井の下 腹部の方へ向いてしまう。ビデオで見たような性交を何度も経験した同級生。いくら違う世界の人間とは思っても、嫉妬が次々こみ上げてくる。それに、永井は あのビデオをふみやに売りつけた張本人だ。あのビデオについて何か知っている可能性は高い。それを思うと、さらに自分の知らない秘密を知っているようで悔 しくなる。永井はそんな玲二の視線など気付きもせず、連れと馬鹿話を繰り広げていた。‥‥‥なんなんだよ。いったいオレの知らないところで何してるんだ よ‥‥‥。
「‥‥‥。母さんのところ、寄っていこうか。」
放課後、玲二は校門前で空を見上げて考えた。どうしても昨日の態度は気にかかる。ビデオのこともあり、様子を確かめたかった。雨は降りだしそうにない。時間にも余裕がある。
「‥‥‥でも、やめとこう。」
玲二はおとなしく家に帰ることにした。用事でもあれば別だが、昨日訪ねたばかりで今日も、という訳にはいかない。血の繋がった親なのにと思うと、歯痒くてたまらなかった。
家に着くと、早めに帰宅していたらしい父の祐一が車を洗っていた。
「ただいま。」
「おう。」
体格に似合わない張りのない返事。玲二は胸の中で溜まっているものが吹き出してしまいそうになるのを感じた。
「‥‥‥父さん!」
「ん?」
「父さんは母さんと復縁するつもりはないのか!?もう母さんが帰ってこなくてもいいのか!?」
少し激高した玲二に祐一は驚いた様子でホースを降ろした。
「‥‥‥なんだ、いきなり。」
「会って話したりしないのかよ。このままでいいのか!?」
「‥‥‥簡単に仲直りできるなら離婚までしなかっただろうよ。」
悟ったように言う祐一に、玲二は握り拳を作って堪えた。‥‥‥そんなこと言ってる間に、そんなこと言ってる間に母さんは‥‥‥。玲二の脳裏に化粧をして身だしなみを整える母の姿が浮かぶ。その行為は家族の体面を保つためではなく、自分を引き立てるために行われているのだ。
『母さんは社会的にフリーな女性』
最近まで意識しなかったその思いが玲二の胸を締め付ける。
「とにかくな、玲二。この話は‥‥‥お、おい‥‥‥。」
玲二は玄関を駆け上がり、自分の部屋に引きこもった。汗で張り付く学生服を脱ぎ捨てると、セットされたままのビデオテープを再生する。ウィーンという機械音の後にモニターを覆う、人間の生の姿。
「‥‥‥違う。絶対母さんなんかじゃない!‥‥‥くそっ、何で当たり前のことなのにこんな気になるんだよっ!」
玲二は悲しいくらい勃起する自らを露出させると、母の優しさを想い、摩擦を始める。‥‥‥とにかく母さんを信じるしかない‥‥‥。それから一週間が過ぎた7月。日中の平均温度はどんどん上がってきて本格的な夏の訪れを待つばかりなのに、ジメジメとした雨は降り続いていた。
「‥‥‥憂鬱‥‥‥。」
玲二は早く着いた教室で一人座り、窓の外を眺めていた。あれ以来父とは顔を合わせづらくなった。今日も手早く朝食を済ませると、大した挨拶もせず家を出た。
「よっ、玲二。」
「‥‥‥ああ。」
呼びかけられて後ろを向くと、カバンを肩に掛けたふみやが明るい顔で立っていた。
「頼まれてたダビング。出来たぜ。」
玲二はふみやの差し出すビデオテープを受け取った。とても淫靡で猥褻で興奮的で、そして切なくなるビデオテープ。それが自分の物になったのだ。
「‥‥‥嬉しくないのか?」
「イヤ、そんなことないよ。」
玲二はビデオテープをすぐに自分のカバンへしまった。ふみやは隣にあった椅子を引き出して玲二の横に座る。
「‥‥‥なぁ、玲二。」
「ん?」
「あのさ、オレ‥‥‥ちょっとさ‥‥‥。」
そこまで言いかけてふみやは口を閉じた。熱でもあるかのようにふみやの顔は紅潮し、どこか鼻息も荒く感じる。
「どうした?」
「なぁ、玲二。あんまり怒んないで聞いてくれるか?」
「なにを。」
「あのさ、オレ‥‥‥永井と約束したんだ。」
永井――その名前が出ると、玲二は身体の血が駆けめぐるのを感じる。
「約束?」
「ああ、したんだ。させてやるって。」
「‥‥‥なにを?」
「セックスさ。」
玲二は驚いて目を見開いた。‥‥‥ふみやがセックス‥‥‥させてやる‥‥‥!?
「どういうことだよ!?」
玲二が気色ばんで尋ねると、ふみやは得意げな顔をして教室の天井に目を向けた。
「させてくれるって言うんだよ。サセ女を紹介してやるって。‥‥‥永井がさ。」
「そんっ、なっ、マジなのか!?」
「ああ。昨日塾で会って約束した。‥‥‥マジだよ。」
ふみやは上気した顔のまま言い切った。とても信じられる話ではないが、ふみやは嘘を言う男ではない。玲二の頭に永井のニヤニヤした笑い顔が浮かんだ。
「‥‥‥騙されてんだろ。」
「そんなことないさ。相手の女のことだって聞いたんだぜ!‥‥‥熟女だって。」
熟女、玲二はその単語に胸がざわついた。
「熟女って‥‥‥おばさんのこと、か?」
「だろうさ。‥‥こんな事言うのアレだけど、オレ、やれるんなら誰でも良くって‥‥‥。」
「で、でも、何で永井が熟女なんかと!」
「それは知らないけど‥‥‥。とにかくさせてくれるらしい。オレ、もう嬉しくて‥‥‥。」
ふ みやは少し申し訳なさそうな顔を玲二に向けた。自分だけ先に経験してしまうであろうことを申し訳なく思ったのだ。玲二は激しく心臓が高鳴るのを感じ た。‥‥‥永井に熟女‥‥。‥‥ふみやが熟女とセックスする‥‥‥?‥‥‥誰?知らない子供と簡単にセックスする熟女って、誰?玲二は、永井が女性のこと を熟女などと形容したことも気になった。
「じゅ、熟女ってさ、そんな変な言い方して、物凄いおばさんだったらどうするんだよ?それになんでふみやに‥‥‥!」
「‥‥‥永井は結構美人だって言ってた。熟女、熟女って笑ってたけど。オレにってのは、オレが童貞だって言ったら何となく話が進んでさ。」
ふみやは意に介さない風に答えた。熟女を単なる年上の女性と捉えているのかもしれない。
しかし玲二は違う。今の玲二の頭では、性的な意味の熟女といえば母の遼子になってしまうのだ。‥‥‥ふみやと母さんがセックスする?‥‥‥いや、なに考えてんだっ!
「正直言ってさ、永井とつき合っちゃ危ないって気はするんだよ。でもさ、アイツに任せてればセックスなんて簡単に出来そうで‥‥‥。」
「いつ‥‥‥なんだ?」
「明後日の夜。携帯番号も教えてもらった。‥‥‥悪いな、玲二。」
そ う謝る親友の瞳に玲二の事は映っていないように思える。玲二は、自分の知らないところで取り返しのつかない事実が積み重なっていくような怖さを感じた。心 の中の永井の存在が、どんどん大きくなっていく。翌日。玲二は放課後になると、遼子の家へ電話して訪問してもいいか尋ねた。
「‥‥‥どうぞ。いらっしゃいよ。」
アパートに着くと、母はいつもの優しい微笑みで部屋に迎え入れてくれた。薄くメイクされた表情は、以前よりも明るくなっているように見える。‥‥‥こんな母さんがビデオの女だなんて‥‥‥そんなはずある訳ない。玲二は母の姿を一目見て、そう確信した。
「はい、麦茶。暑くなったわね。」
玲二はテーブルに差し出されたコップを手に取ると、グイッと飲み干した。部屋を眺めると、光が良く入ってくるレイアウトの中にインコの乗った掛け時計が見える。
「‥‥‥‥‥‥。」
玲二はそれから目を離し、奥にある寝室の扉に目を向けた。
「ふふ、なにキョロキョロしてるの。」
遼子がやんわりとたしなめるように言う。
「い、いや、別に‥‥‥。」
玲二は母の方に視線を戻すと、コップをテーブルの上に置いた。
「勉強はしてる?玲二。」
「‥‥‥いいや。」
「そう。頑張らないとね。」
遼子は空になったコップを持って台所に向かった。玲二の目に悩ましく揺れるヒップが映る。デニムのスカート越しにでも判る逞しさは、成熟した女性の迫力を感じさせる。‥‥‥熟女‥‥‥。玲二の頭にふみやが言っていた単語が浮かんだ。
「はい。今ホットケーキ作ってあげてるから、ちょっと待ってね。」
「うん。」
母がテーブルに座ると、玲二は身の回りのことを色々と話し始めた。とにかく母と会話がしたかったのだ。たわいのない話題が多かったが、遼子は相づちを打ってちゃんと聞いてくれていた。
「‥‥‥で、父さんがさ。」
「父さん?‥‥‥あっ、ホットケーキ忘れてた。」
遼子は立ち上がり慌てて台所に向かう。そのときに甘いフローラルの香りが玲二を包んだ。
「はい、熱いから気をつけてね。」
「うん。」
遼子が出来立てのホットケーキをテーブルの上に置く。玲二はまだ話を続けたかったが、遼子にそれ以上聞く気がないように思えてフォークを手に取った。一切れ口に運んでみる。
「‥‥‥うまい。」
「そう。よく言われるのよ。」
母は嬉しそうに目を細めた。
‥‥‥よく、って誰にだろう?玲二は家で母の作るホットケーキなど食べたことはなく少し疑問に思ったが、聞かないことにした。
「ごちそうさま。」
「うん。」
「あぁおいしかった。‥‥‥あ、あれ?もうこんな時間。」
「そうね。そろそろ帰る?」
玲二は後片付けを母に任せ、カバンを持って立ち上がった。‥‥‥ホントはもう少し居たいけど‥‥‥心が晴れたからいいや‥‥‥。母に連れられて玄関に向かい靴を履くと、玲二は母の方に向き直った。
「母さん。また‥‥‥来ていいかな。」
「そりゃいいわよぉ。母さんの子供じゃないの。」
そ う優しく笑う母の顔はとても魅力的で、玲二の胸は激しく揺れ動く。‥‥‥母さん、早く帰ってきてよ‥‥‥。いつか玲二の視線は、母のデニムのスカートに包 まれた下腹部に向いてしまっていた。‥‥‥母さんも女性で、母さんのあそこも女性で‥‥‥。‥‥‥あのビデオみたいに、男に硬いモノを挿まれるようになっ てる‥‥‥。
「玲二、気をつけて帰ってね。」
「うん。ありがと。」
玲二は心残りながらドアを開いて外に出た。そして薄暗くなりか けの道を駅に向けて歩いていく。‥‥‥やっぱり母さんは優しい。大人って感じがする‥‥‥。‥‥‥ふみやがやらせてもらうっていう『熟女』もあんな感じな のかな‥‥‥。込み上げてくる嫉妬に空を見上げると、小さな雨がポツポツと降り始めていた。
「玲二‥‥‥じゃあ。」
「ああ。」
次 の日の放課後、ふみやはいつもとは違う方向へ歩いていった。見知らぬ熟女と知らない世界を体験しに行くのだ。悔しい、玲二はそう思うが、それを口に出して しまうのはプライドが許さない。どうせシワシワのババァさと貶してみるが、それでも羨ましさは消えなかった。‥‥‥セックス、オレもしたいよ‥‥‥。母さ んみたいな女と‥‥‥。
「帰ろう。帰ってあのビデオを見て‥‥‥。」
玲二はトボトボといつもの道を歩き始めた。すると、すぐ先にあるコンビニの駐車場に見覚えのある生徒がいるのが見えた。
「‥‥‥あれは‥‥‥確か、永井とよく一緒にいる‥‥‥。」
その玲二の同級生と思われる男は、しゃがみ込んで携帯電話に何かを打ち込んでいる。まわりに連れらしき人影はない。
「‥‥‥永井の連れ‥‥‥。」
玲二はふみやがビデオを入手した時の話を思い出した。‥‥‥ふみやは永井にビデオを売ってもらった。永井の連れだったら裏ビデオの一本や二本持っていそうな気がする‥‥‥。
新しいビデオを手に入れたいと、その男に話しかけようとする衝動が働く。見ず知らずの人間にいきなり話しかけるのは勇気がいるが、ふみやのビデオのことを持ち出すことで何とかなりそうな気がした。
「よし。ふみやだって永井と知り合いになったから、セックス出来るようになったんだから‥‥‥。」
玲二はその男の方に向けて歩き出した。とにかく何でもいいから性欲を満たしたかった。
「はぁ~あ?ビデオぉ?」
その男は熊田と言った。玲二が言葉に詰まりながらふみやのビデオのことを話すと、熊田は怪訝な顔で思い出すような素振りをした。‥‥‥やっぱりいきなり話し掛けて変な奴と思われたか?
「‥‥‥あぁ。あのビデオか‥‥‥。」
熊田はしばらくして大きく頷き、玲二の体を足下から舐めるように眺めた。
「で?それがどうした?‥‥‥あ?」
しゃがんだまま眉に皺を寄せて玲二に尋ねる。玲二は心の中でバカにしながらも、熊田を怒らせないように自分もビデオが欲しいことを告げた。当然金を払う気があることも。
「あぁ、要するに裏ビデ売ってくれってことか。なぁ?」
「うん‥‥‥。見せてもらったビデオが良くってさ‥‥‥。」
「あれがぁ?あのレイプがかぁ?‥‥‥ヘヘ。」
熊田は玲二を見ながら、バカにしたように笑った。玲二はムカッとしたが、笑われたことで熊田に少し近づけたようでホッとした。
「だ、だってさ、ホントのレイプみたいじゃん?」
「あぁ?‥‥‥まぁ、そりゃあなぁ。‥‥‥でさ、オメェ。なんでオレにそんなこと?」
「イヤ、永井‥‥‥永井くんと友達なら持ってるだろうなぁって。」
「ほぉ?」
熊田が改めて玲二を眺めると、値踏みされているような緊張が玲二を襲う。しかし、玲二は努めて平静を装った。
「‥‥‥よく分かんねぇな。オレ、ビデオなんて持ってねぇよ。」
「そ、そうなんだ‥‥‥。」
「‥‥‥ん?そう言えばないこともないけど、アレはなぁ‥‥‥。」
「ね、何それ!売ってよ、これだけなら出すからさ。」
玲二は人差し指を熊田の前に突き立てた。途端に熊田の表情が変わる。
「万!?ホ、ホントかよ?‥‥‥あぁ、でも賢ちゃんから貰ったもんだしな。あれはヤバイ‥‥‥でも万か‥‥‥。」
賢ちゃん、永井はそう呼ばれているらしい。しばらくの間熊田は下を向いて独り言をつぶやいた。
「‥‥‥オメェ、絶対言わねぇって約束するか?」
「も、もちろん。」
玲二はビデオを手に入れたい一心で頷いた。熊田が言う
『あれはヤバイ』
という言葉に、余計に興味をそそられる。
「まぁ、オメェ賢ちゃん知らねぇんだろ。じゃあいいか‥‥‥。」
「売ってくれる!?」
「まぁ売ってやるけど‥‥‥イイもんじゃないぜ。キショいぞ?」
とにかくなんでもいい。なんでもいいから裏ビデオを手に入れたい。ふみやのビデオだって、作りはとても良いものではなかったのだ。
「まぁ、モロ映ってることは映ってるけど。よくやんなぁ、って言うかな。‥‥‥へへ、いいさ。オレあんなのいらねぇし、金になんなら。」
熊田はまたバカにした笑いを漏らすと、玲二についてくるよう言った。そして、しばらく進んだマンションの前で待っているよう指示する。
「‥‥‥ほら、これだ。」
玲二は差し出されたビデオと交換に一万円札を熊田に渡した。そのビデオテープの背を見ると、ラベルなどは張られていない。
「言っとくけどな。絶対にそのビデオは誰にでも見せるな。」
「う、うん。分かった。」
玲二は震える声で頷く。
「そのレイプビデオの奴にはいいけど、絶対に守れよ、いいな!?」
玲二はその見下ろした念の押し方に少し腹が立ったが、おとなしく黙っておいた。今は完全に熊田の方が立場が上なのだ。
「賢ちゃんにも‥‥‥まぁオメェが賢ちゃんと話すことねぇか。」
玲二は礼を言い、カバンにテープを入れて去ろうとした。すると、熊田が思いだしたように呼び止める。
「そうだ。そのビデオの中に出てくる人‥‥‥絶対にそれも言うな。分かったな?」
どういうことだろう。玲二が不思議そうな顔をすると、熊田は含みのある笑みを漏らして言った。
「見れば分かるさ。絶対驚くぜ。‥‥‥いいな、誰にも言うなよ!!」
「‥‥‥ただいま。」
「おう、玲二。遅かったな。」
玲二が帰宅して玄関をあがると、祐一が居間から顔をのぞかせた。
「‥‥‥うん。友達のところに寄ってた。」
別に遅いって時間でもないだろに‥‥‥そう思いながらも玲二は父の顔を見て返事をした。
この前喧嘩してから久しぶりに言葉を交わした気がする。
「なぁ、ちょっとこっち来いよ。話があるから。」
「なに?」
玲二が居間に入りテーブルの前にあぐらをかくと、父も巨体を屈めて向かいに座った。心なしか父の顔が喜んでいるように見える。
「あのな、玲二。‥‥‥今日父さんな、母さんと話したんだ。」
「え?母さんと!?」
「ああ。この前お前に言われてな、それで‥‥‥。会ってくれるって言った。お前と一緒に。」
玲二は胸が躍った。家族が揃って会う、それは父と母が縒りを戻す事にとってとても画期的なことだ。玲二の頭に母の優しい微笑みが浮かぶ。
「詳しい日時は決めなかったが‥‥‥。何か食べながらでもゆっくりと、な。」
「う、うん。」
‥‥‥や、やった。これで母さんが帰ってくることになるかもしれないっ‥‥‥!そう思うと、なぜか不思議と下半身が盛り上がってくる。
「よし、音量は小さくして‥‥‥。」
玲二は部屋に入ると、カーテンを閉めてビデオテープをセットした。暗くなった部屋が臨場感を盛り上げていく。
「今度はどんなビデオなんだろう‥‥‥。」
テ レビの前に座り、震えた手でワクワクしながら再生ボタンを押す。すると現れるブルーの画面。その中に、にやつく永井と熊田の顔が浮かんだ気がした。‥‥‥ そりゃオレはこんなビデオ売ってもらってオナニーするしかない男だよ。必死に頭を振って二人を消そうとすると、今度はふみやの顔が浮かんでくる。‥‥‥今 頃知らない女にセックスを教えてもらってるんだろうか‥‥‥。
「いいさ、オレはオレだもん。」
いらない事を考えないようにモニターを見つめると、ブルーバックの画面が一瞬だけ映像を映して揺れた。玲二は何が映ったのか気になり、巻き戻しボタンを押す。
「なんだか分からなかったけど‥‥‥ゆっくり、じっくりと見ていこう。」
喉が渇くのを意識しながら、しばらく巻き戻して再生した。そして画面が変わった一瞬で一時停止ボタンを押す。
「な、なんだこりゃ‥‥‥!?」
ノ イズに荒れたその画面には、女性の股間と思われる場所がアップで映っていた。しかし、ただ股間だけが映っているのではない。脚は左右真横に開き、その中心 部に人間の手が差し込まれているのだ。その差し込まれた部所はまるで大きな唇のようにパックリと4本の指を飲み込み、陰毛がない為その様子が如実に確認で きる。
「そ、剃られたのか‥‥‥?なんでいきなりこんな場面が‥‥‥。」
玲二は激しく興奮し、また再生ボタンを押した。するとテレビ画面はしばらくの間、延々とブルーバックの画像を流し続ける。‥‥‥予告編みたいなのかな?‥‥‥それはないか‥‥‥。タイムカウントが5分を過ぎた頃、ようやくまともな映像が映し出され始めた。
画面中央にあるベッド。その中程に洋服を着た女性が座っている。
『‥‥‥‥‥‥んだろ?』
『‥‥‥‥‥‥よ。でも‥‥‥。』
カメラのすぐ側にいるのか、間近な男の声と、しっとりとした女性の声が聞こえた。音量が小さいせいもあるが、内容は良く聞き取れない。
「‥‥‥おばさん?なんとなく老けてるような‥‥‥。声だって。」
玲二の頭に熟女という単語が浮かんだ。母のような女性であったなら、そう期待してしまう。その時画面は突然変わり、その女性を間近から映した映像になった。その瞬間、玲二の心臓は口から飛び出しそうになった。
「!!?」
テレビ内に映された、戸惑う女性の顔。それは、今そうであって欲しいと期待した顔そのものだったのだ。
「か、母さん!!!!?」
テ レビに映ると多少印象が変わるが、それは紛れもなく、母の遼子の顔だった。‥‥‥なっ!?な‥‥‥ど、どうして!?どうなってるんだっ!!!?心の隅に追 いやった最悪のシチュエーションがよみがえってゆく。デッキのタイムカウントは進み続けた。心臓がオーバーヒートしそうなほど高鳴るのが分かる。胃の奥か ら何かが込み上げてきて、胸で蠢き始める感覚。画面の中の母は薄い微笑みを時折浮かべ、映像を撮られていることに困惑しているようだった。
「‥‥‥か、か、母さ‥‥‥。」
なぜ母がこんなビデオテープに映っているのか。それもベッドに一人で座っている姿を。
「母さん‥‥‥間違いない‥‥‥。」
信 じたくはないが、そこに映る女性は玲二の母、遼子に違いなかった。ショートカットで綺麗なパーマが入ったヘアスタイルに、少し華奢に感じる肩とチェック柄 の入った丸首のブラウス、下半身をピッタリと包んだストレートジーンズ‥‥‥。あまり印象にないジーンズ姿を除いて、どこをどう見ても自分の母なのだ。
『ヘヘヘ。』
カ メラのすぐ側で誰かの笑う声がした。映像は品定めするようにずっと母の全身を映し続ける。‥‥‥そ、そん、な‥‥‥。‥‥‥エロ、ビデオだろ、こ れ‥‥‥?胸とか、裸が映ってるってことか‥‥‥母さんの‥‥‥!?玲二の視線は混乱する意識の中、母の胸のふくらみに吸い付けられた。ブラウスの生地は 確かに丸く盛り上がり、身体の形状が女性であることを意識させる。‥‥‥胸だけならともかく、もっと、もっとヤバイとこだって‥‥‥!?絶望感とともに、 全身を激しく血液が駆けめぐって、玲二は味わったことのない昂揚も覚えた。熊田は裏ビデオだと言って売ってくれたのだ。生殖器をそのまま撮していないと裏 とは言えない。
「そ、そんな‥‥‥嘘だろぉ‥‥‥?」
カラカラになった喉で玲二は呟いた。‥‥‥母さんの裸‥‥‥。子供のオレだって見た くてたまらない裸が‥‥‥。‥‥‥嘘‥‥‥でも‥‥‥やっぱり、こういうことだったのか‥‥‥。やっぱりの言葉が重く玲二にのし掛かる。レイプビデオのこ とが頭に浮かんで、その映像が脳裏を駆けめぐった。‥‥‥まさか、母さんのエッチするシーンまで‥‥‥。
しかし、それはないだろうとも思った。いくらなんでも、こんなに顔を出しての性交を母が許すはずがないのだ。だが、母親が裸を撮されるというだけでも信じられない事だ。
『おばちゃん、綺麗だね。』
カメラを持っているらしい男が母に語りかけた。その声はとても若く、予想していた永井であることは容易に想像できた。‥‥‥やっぱり‥‥‥。画面には映らなくても、にやついた同級生の顔が浮かぶ。
『いま何歳だっけ?』
『‥‥‥四〇過ぎてるわ。』
『結婚してるんだよな。』
『うぅん、別れたから‥‥‥。』
しっとりとした大人の声で母は少年に答える。
『でも、そんなに歳には見えねぇよ。すげぇ美人。』
『そんな。』
『ホントホント。マジ熟女って感じで。へへヘへ。』
母は戸惑いの表情で笑った。玲二には熟女の部分は馬鹿にしているようにしか聞こえなかったが、母は永井の言葉に少し顔を紅潮させた。‥何言われてんだよ、母さん!怒れよっ!
玲二には撮されている母の意図が全く分からない。手に持っているせいか時折ぶれながら、カメラは母の方に一歩近づいた。
『おばちゃん、いま男は?』
『いないわよぉ。』
『‥‥‥じゃあさぁ、オレの女になれよ。』
『おんな?』
少し首を傾げて遼子は聞き直す。
『オレの女。彼女にさ。』
『彼女って‥‥‥。こんなおばさんに?』
遼子は口に手を当て、ほほほと笑った。
『歳なんかいいじゃん、関係ねーよ。な?付き合えって。』
玲二は永井が一体何を言おうとしているのかよく分からなかった。ビデオを撮しながら、いきなり馬鹿らしく大人を口説いて、どうしようと言うのか。
『付き合うって言ってもねぇ。そんな簡単には‥‥‥ふふ。』
しかし、母は永井の言葉を真面目に受け取るかのように応対した。‥‥‥な、なに言ってんだよ。セリフか?相手は高校生で‥‥‥か、母さんは‥‥‥。その時、いきなりビデオの音声がノイズ混じりになった。
『へ‥、いい‥ゃ‥か。もうや‥ち‥‥‥‥‥しさ‥。』
『う、‥ん‥‥‥。でも、歳が離‥‥‥‥‥でしょ、恥ず‥‥‥‥。』
遼子はベッドに座ったまま身体をモジモジさせている。困っているのではなく、照れているような素振りに見える。玲二はその歳不相応の滑稽な様子に子供として恥ずかしさを覚えると同時に、胸の蠢きが騒いでしようがなかった。
『な、‥‥よ、オ‥‥女‥。い‥‥?』
『じゃ‥‥‥。』
遼子がこくんと頷くと、しばらく続いたノイズが収まった。‥‥‥えっ?なんで頷くの‥‥‥?
『へへっ。じゃとりあえず、脱いでくれよ下。‥‥‥撮ろうぜ。』
『早速なの?‥‥‥ふふふ、もぅ。』
信じられない言葉を永井が吐くと、遼子はカメラに向かって笑いながら頷き、ブラウスを上げてベルトに手をかけた。
「ちょちょ、ちょっと母さん‥‥‥そんな簡単にっ!?」
画面の中の遼子は躊躇なくスルスルとジーンズを降ろしていく。カメラはその下から現れる、艶のあるストッキングに包まれた脚を追った。
「ホ、ホントに脱いで‥‥‥。」
絶望感に襲われながらも、玲二は母の女らしい脚に見入ってしまった。色は白く、とにかく柔らかそうで、薄いパンティーストッキングにぴっちりと包まれている。それだけでもたまらないのに、パンスト越しには水色の小さなショーツが映っているのだ。
『へへへ。』
永井が下卑た声で笑い、母の足下にカメラを寄せていく。そしてしばらく脚のラインだけを撮すと、閉じられた足の付け根に近づき、三角ゾーンをアップにした。
『もぅ‥‥‥。』
抗 議するような母の声と、永井の荒くなった息づかいが聞こえる。水色のショーツは面積が小さく母の股間にぴったりと張り付いて、左右のレースの部分からは腰 回りの肌が覗けた。‥‥‥パンツをこんな近くで撮されるなんて‥‥‥!玲二は自分の裸を見られるよりもずっと恥ずかしく、悔しくて、泣き出してしまいそう になる。‥‥‥でも、この下には母さんのマンコが‥‥‥。知らない女じゃなくて、母さんのが‥‥‥。母の足がゆっくりと開いた。太股の裏側に日に焼けた男 の手が差し込まれている。カメラは脚の間に入り、母のその部分を大写しにした。
『いやだわ‥‥‥。』
何よりも女性であることを象徴する部所。そこにレンズを近づけられ、困惑した様子で遼子が小さく笑う。こんな時にでも優しい母を思い、玲二はやるせなくてたまらなかった。
‥‥‥ このまんまじゃ本当に「裏」が‥‥‥!永井がカメラ越しに手を伸ばし、遼子の股間に触れた。‥‥‥あぁ‥‥‥。簡単にそこに触れられてしまった悔しさと一 緒に、まるで自分が手を伸ばしているような錯覚も覚える。無骨な手は、まず手のひらで起伏を確かめるように撫で、そして次に強く指を押しつけた。そうする と、張り切ったパンストとショーツが伸び縮みし、とても卑猥に見える。
『ん‥‥‥。』
遼子の小さな喘ぎが聞こえる中、永井はしばらくそれ を繰り返し、今度は人差し指を立てて母の中心線をなぞった。クロッチ部分の真ん中を、一本の指で縦に何度も。玲二はその行為が母の女を侮蔑しているように 思えて、唇を噛みしめた。‥‥‥おばさんでも、そこの下に割れ目があるって事示して笑ってやがるのかっ!?遼子は永井の行為に反応せず、じっとしている。
『‥‥‥全部脱げよ。』
永井は股間から手を離して遼子の脚の間から退くと、息の荒くなった声で命じた。全部という言葉に玲二は絶望的な響きを感じると同時に、自分の中に見たくてたまらない衝動が起こっていることにも気付いていた。
「‥‥‥でもダメだ。永井なんかに見せたら‥‥‥。」
ズ ボンの中でいきり立ったチンポがキリキリと痛む。そんな複雑な息子の心境をよそに、遼子はストッキングを丁寧な手つきで足首から抜き取り、ショーツに手を かけた。‥‥‥ダメだ母さん、それは‥‥‥!ブラウスを纏ったままなのに、下半身を剥き出そうとする母。その手つきにはさほど躊躇がないように見えた。
「ああ‥‥‥!」
とうとうショーツは遼子の身体から離れた。何も隠すものがなくなった母の下半身。付け根に生える陰毛があまりにも浮き立ち、生えきっていて、玲二には母の象徴と強く感じた。
自分も生えているが、子供の頃間近で見たそれは、大人の証のように思えたのだ。
『拡げな。マンコだせよ。』
「なっ!?」
‥‥‥もういきなり、か!?見せられてしまうのだろうという諦めはどこかついてはいたが、母にマンコなどという単語を使われるのは許せない。しかし、開いてはいけないという玲二の願いも虚しく、母はカメラに見下ろされたままゆっくりと足を開いていった。
「あっ、ダメだっ!見えるっ‥‥‥ああぁ‥‥‥。」
カメラは素早い動きで拡げられた脚の間に入った。画面全体に映し出される、ナチュラルな体内への入り口。玲二の心にアパートでホットケーキを焼いてくれた美しい母の姿が浮かんで、消えた。
『へへっ‥‥‥。』
幾 分震えた永井の笑い声がする。ベッドに腰掛けたままなので足はあまり開かないが、明らかに男とは異なる器官がそこにあった。‥‥‥マンコ‥‥‥。絶対に母 相手には使いたくなかった卑猥語が脳を占拠し、激しい息づかいで画面に吸い寄せられる。母の股間は性器周辺が少し黒ずみ、太股との色合いの差が大きかっ た。割れ目の中央付近からは花びらのように左右に薄い肉がはみだしており、崩れた印象が母親の経験の豊富さを物語っている。‥‥‥あのレイプビデオのマン コとよく似てる‥‥‥。じゃあ、やっぱり‥‥‥。
『あまり撮されると恥ずかしいわ‥‥‥。』
うわずった声でささやく遼子。画面をじっと凝視する玲二も同じ気持ちだった。この性器を同級生の男に見られ、撮影されることは、なによりも自分の恥のように思えるのだ。
『おばちゃんにしては綺麗だって。‥‥‥中見せな。』
永井は手を伸ばし、二つの指で母の性器を横に拡げた。ゴムのように容易に拡がる肉片。
す ると、中に広がる薄ピンク色の襞と、巧妙な造りの小さな穴類が画面に捉えられた。‥‥‥あぁ‥‥‥中まで全部撮された‥‥‥。陰毛の一本一本から、性器内 の微妙な肉の構造まで、全てが映っている。自分だけの母の秘密を全て見られた喪失感が、玲二の全身へ麻酔のように行き渡った。
「‥‥‥母さん‥‥‥。」
全 開にされた母の性器を見ながら、玲二は震える声でつぶやいた。‥‥‥でも、セックスは‥‥‥セックスは絶対にないよね?永井となんて‥‥‥それだけはない よね?もうそれを信じるしかなかった。意図は分からないが、撮されたのはしょうがない。だが同い年の少年の性器を挿入されるのだけは‥‥‥。‥‥‥これ以 上女にならないでっ‥‥‥!玲二は朦朧とする意識の中で強く祈った。
『おばちゃん、ガキいんの。』
『子供?‥‥‥いるわよ、男の子。』
性器を拡げられながら、遼子はなおもしっとりとした声で答えた。
『何歳?』
『あなたと‥‥‥同じくらい。』
‥‥‥オレのことに触れるなぁっ!自分のことを話題に上げられ、玲二は頭に血が上った。
永井は玲二が同じ学校にいることを知っているのだろうか。母は玲二の事を喋ってしまったのだろうか。もしそうならば、もう永井や母の顔は見られなくなる。
『オレらと一緒か‥‥‥。なぁ、聞きたいんだけどさ、どうやってガキ作った?』
『ど、どうやってって‥‥‥。それは、普通に‥‥‥。』
性器を撮されながらいきなり微妙なことを聞かれ、遼子はどもりながら答えた。
『教えろよ。親だし、経験者なんだからさ‥‥‥へへ。』
『し、知ってるでしょう。それは追い追い、ね‥‥‥。』
遼子が言葉を選ぶように答えた、その時だった。画面が激しく揺れたかと思うと、物音を伴って遼子の局部が画面から消えた。揺れはしばらく続き、関係のない部屋の中などを映す。そしてそれが収まり画面が安定すると、テレビはその部屋のドアをじっと撮した映像で止まった。
「な、なんだ?どうしたんだ!?」
母 の姿が突然消えて狼狽える玲二。カメラのそばでカチャカチャと金属音が鳴っている。‥‥‥ど、どうしたっ!?何してるんだよっ!!映像は変わらない。しか し、タイムカウントは流れ続けている。間もなくしてカメラが持ち上げられると、母は座ったまま足首をベッドの上に上げて大きく開き、ブラウスだけを着た不 自然な格好で局部を晒しながら、ジッとレンズを見つめていた。いつもの優しい顔とは違い、上目づかいの真剣な眼差し。
カメラを見ているのではない、永井を見つめているのだ。そんな遼子を永井は見下ろしたまましばらく撮した。遼子は少年に晒した股間を閉じる気配もなく、視線も動かさない。
玲二はどこか動物的な、母のそんな表情を今まで見たことがなかった。
「ど、どうしたの?母さん‥‥‥。」
いきなりの母の変化にそうつぶやくと同時に画面が動き、映像は撮影者の身体を上部から映し出した。そこには―――服を着ていたはずの永井の、違和感があるほど勃起したチンポが剥き出されていたのだ!
「あ、え?‥‥‥な!?」
その迫力に圧倒され、言葉にならない声が玲二の口から漏れる。永井の存在を知らなければ、これが高校生のチンポだと思う者はいないだろう。
『へへへ‥‥‥。』
自らを撮しながら永井は照れたように笑った。‥‥‥ま、まさか‥‥‥そんな‥‥‥!永井のチンポの表面には何かの液体が付着し、光に反射しているように見えた。カメラがまた遼子の方を撮すと、ようやく母は一息ついて、伏し目がちに開いていた足を閉じた。
『‥‥‥若いのね。』
少し呆れたように言う母の声は、いつも聞いていた母の声とはどこか異質に聞こえた。
『まあな。すげぇだろ。』
‥‥‥ う、嘘‥‥‥。‥‥‥あんな一瞬で母さん、入れら‥‥チンポ入れられたのか‥‥?少年はカメラを置くと、すぐさまズボンを脱いで剥き出された熟女に挿入し た。我慢できなかったのか、それとも遼子を威圧するつもりだったのか。‥‥‥射精はしてないみたいだけど、ナマのまま、簡単に‥‥‥!信じていたことを簡 単に裏切られた絶望感と、いつの間にかなくなっていた胸の蠢き。玲二の中で母を女と思うことへの違和感が消えていた。
遼子がブラウスを脱いでいく。その下から少し厚みのある生地の白いブラジャーが現れる。
し かし玲二はそのブラジャーが取られるのを待たず、早送りのボタンを押した。母と永井が重なる映像があるのか、そして結果はどうなのかを早く知りたかったの だ。これ以上見てはいけないという気もする。見てしまったら、狂ってしまうのではないかという恐怖も現実的に感じる。しかし、無視するわけにはいかない し、自分の母がどうなるのかを最後まで確かめなければならない。そして、玲二の中で本能的な性欲が高まっているのも事実だったのだ。早送りの映像の中、母 が自らの乳房を出したのが見えた。そのふくらみは色褪せた乳首の色と大きさが印象的で、垂れ気味の形だが十分なボリュームを保っていた。
これで遼 子は全裸になったことになる。‥‥‥くそぉっ‥‥‥。玲二は一度ビデオを停止し、再度汗ばむ手で早送りボタンを押した。ブルーな画面が反射した自分の姿を 映し、高速な回転音が始まる。‥‥‥ふられたときの気持ちに似てる‥‥‥。いや、そんなのとは比べもんにならない‥‥‥。テレビの向こうで母が奪われてし まった。そして、今からその証拠たる場面を確認しようというのだ。‥‥‥なのに、なのに‥‥‥。なんでこんな興奮して、チンポこんなに立ってんだ よ‥‥‥。玲二はしばらくして再生ボタンを押した。
耳障りな回転音が止み、モニターは母の頭部らしい映像を映し出す。遼子が永井のそばにひざまずいて、股間のものを口に含んでいる場面だった。
『スリュ‥‥‥ズリズリ‥‥‥クチャ、チュクチュク‥‥‥ジュパッ。』
母 は精一杯少年のチンポを口に挿み、そこから肉の刷れる音と卑猥な液体音が響く。玲二は母がそんな行為を出来ることに愕然とした。‥‥‥母さんが‥‥‥エロ ビデオの女達みたいに‥‥‥!遼子は一度永井のチンポを口から抜き、犬のように舌を長く出して表面を舐めあげた。永井のチンポは遼子の唾液で根本近くまで ネットリと濡れて、光にキラキラと反射した。‥‥‥し、信じられない‥‥‥。そんな奴のを、そんなにベロ出してっ!玲二は、もしかして母が若い永井に合わ せて無理をしてしているのではないかと疑った。しかしそれよりも、あの優しい母がフェラチオの知識を持っていたことの方がショックだった。微動だにしない 永井の身体がさらに悔しさを増し、玲二はまた停止ボタンを押して早送りにする。‥‥‥母さん、ダメだよぉ‥‥‥。しちゃいけないことってあるだろ‥‥‥。
いまや玲二のプライドは、愛する母の行為によってズタズタに切り裂かれていた。
「やられるの、母さん?このままやられて、それも撮られてるの?」
そのシーンを見てみたいとどこかで思う自分に失望しながら、玲二はまた再生ボタンを押した。‥‥‥それはないよね‥‥‥?しばらく間を置き、流れ出す映像。そこはベッドを足下の方から撮しているシーンで、そのベッドの上には、二つの尻が並んで重なっていた。
「あぁ!」
玲二は短い悲鳴を上げた。少し距離は離れているが、クッキリと映っている。下の白い尻が皮膚が破れそうなほど左右に開き、その中央に真ん丸の巨大な男が突き刺さっているのだ。
「‥‥‥やっちゃった‥‥‥。」
あまりにも呆気なく裏切られ、玲二はゴールに辿り着いたかのような感覚で肩を落とした。
永井のチンポは母の腹の容量では足りなさそうなほどに逞しく、太股を圧迫するほどに柔肉を拡げ、深く侵入している。その性器のすぐ下では一緒に肛門も開ききらされ、母の白い肌には不釣り合いなくらい黒ずんだ色合いが、不思議なアクセントを醸し出していた。
永井が引くと、母の内部からピンクの襞が一緒に引きずり出される。永井が突くと、尻の割れ目がなくなるほど足は開き、太股が衝撃で震える。初めて見る、知った人間同士の性交。玲二は、いくら着飾っても変わらない、原色の人間の姿を見たような気がした。
『当たってるだろ、ほら‥‥‥オラ。』
『ぁあ‥‥‥あああっ‥‥‥!』
ス ピーカーから母の悲鳴にも似た声が流れてくる。繋がっているところを視認しているのか、まるで足下のカメラにぶつけられるような声の迫力だった。チンポに 避妊具は被せられていない。玲二はたえられず早送りボタンを押した。すると、まるで喜劇のように永井の腰が早回しで動き、母を責め立てるのだ。‥‥‥こん な奴に‥‥‥。‥‥‥こんなヤンキーなんかにっ‥‥‥!!玲二は無意識にズボンをおろすと、いきり立った性器を露わにした。それをゆっくりと摩擦し出すの と同時くらいに永井は腰を動かすのを止め、遼子から離れてカメラに近寄り、それを持ち上げた。性交中の同級生の顔が、画面を一杯に覆う。
(部屋に女連れ込んでセックスとかやりまくってるって)
頭の中を色々な人の言葉が飛び交って、弾けた。永井は素早い動作でカメラをベッドの横側に移し、取り残されていた遼子に立つよう促した。遼子は最初戸惑い、しかしすぐに理解して少年に尻を向けて膝をつく。その格好は、息子から見てこれ以上ないくらいに屈辱的な体勢だった。
(でもなぁ。ヤンキーでもいいからやりたいなぁ)
(あ~あ、こんな事ならやっぱり父さんから慰謝料貰っとくんだったわぁ)
永 井が母の尻と背中を見下ろしながら下腹を近づけた。その合体の様子は、全身が真横からのアングルで撮されてゆく。玲二は少々の摩擦ですぐ絶頂を迎えそうに なり、我慢して二人の行為を見守った。‥‥‥どこに、出すのか。出して良いところと悪いところがある。それは絶対に確かめねばならないと思った。
(でもすげぇぜ、マンコって。こう‥‥‥)
(まだ帰らなくていいの?)
母は全身、特に垂れ下がった乳房を激しく揺らせながら少年の責めに堪えた。永井は全身の力でバコッ、バコッと暴力的な打ち込みを続ける。何よりも大切でデリケートな母が他人の少年に壊されてしまうようで、玲二は身体を震わせた。
(簡単に仲直りできるなら離婚までしなかっただろうよ)
(オレ、やれるんなら誰でも良くって)
(そりゃいいわよぉ。母さんの子供じゃないの)
自分はいつでも母の一番近くの存在だと思っていた。しかし、他人にとって母は女性、自分にとっては母親。このビデオを見た今、母と子の関係がとても遠くにある事を感じてしまった。
(イイもんじゃないぜ。キショいぞ?)
(じゃあさぁ、オレの女になれよ)
‥‥‥ みんな、勝手なことばっかり言いやがって‥‥‥!!その時、さらに永井が激しく腰を動かしたかと思うと、母から怒張を引き抜いて尻の上へ射精を始めた。 ジュ、ジュ、ジュ、ジュ、ジュ、ジュ、ジュ、ジュ、ジュ‥‥‥激しく母の肌にぶち当てられる真っ白な体液。玲二は、体内にぶちまけられなかったことに安堵 しつつ、自分も激しくチンポを摩擦してテレビに近寄った。
「‥‥‥くそぉっ!母さんっ‥‥‥!!」
ジュ、ジュ、ジュ、ジュ、ジュ‥‥‥ 真っ白に染まって二人を隠していく画面。遠くなる意識の中、家族がどうなってしまうのかを思った。玲二は何度もビデオを見返した。何度見ても映っているの は、はにかむような母の笑顔と、それが同級生によって蹂躙されていく姿。母の尻の上に射出される精液が、その白さとは正反対に汚されてしまった象徴のよう に思えた。他人の肌の上に射精する‥‥‥排泄物を浴びせかけるのと何が違うのかと玲二は思う。そしてそれは、母が自ら映像の中で望んで得た結果なの だ。‥‥‥体内に射精されなくて良かった‥‥‥けど‥‥‥。玲二の心をむなしさが通り過ぎてゆく。なぜ母はこんなビデオを撮られたのか。なぜ、息子と同い 年の永井との性交に同意したのか。いくら考えても結論など出てこない。‥‥‥とにかく、このビデオがすべてなのか‥‥‥。性を放った後の脱力感とともに、 無力感が玲二の身体を包む。しかし、自分を産んで育てた母が他人のものになってしまった、その嫉妬は消えるわけではない。母を簡単に汚した永井への殺意ま でわき上がってくる。
「でも、レイプじゃない‥‥‥。母さんも望んで‥‥‥。」
玲二はテレビを消してベッドに倒れ込むと、微睡みの中に溶け込んでいった。翌日、玲二は珍しく寝坊をした。
「おう、どうしたんだ?今日は遅いな。」
以前より大きくなった父の声が頭に響き渡って不快だ。
「‥‥‥‥‥‥。」
「ほら。パン焼けてるぞ、早く食って学校行けよ。」
「‥‥‥うん。」
父の言葉は普段より浮かれているように聞こえる。近いうちに母との対面がかなうからなのだろう。ビデオの交合シーンが頭に浮かび、それを知らない目の前の父がとても哀れに見えた。
「ねぇ父さん‥‥‥。母さんとはいつ会うの?」
「そうだな。出来れば早いうちに、と思ってるんだが‥‥‥。玲二はどうなんだ?」
‥‥‥母さんは、母さんは自分の子供ほどの男とヤッちゃって、それをビデオに撮られてるんだよ‥‥‥!父さんの身体だったんだろ!しかし、押し寄せる激情を抑えて玲二は引きつった笑顔を浮かべた。
「‥‥‥いつでもいいよ。父さん達に任せる。」
正 直に言って母とは会いたくない。永井達、いや、すべての同級生の姿も見たくない。しかし朝起きて一番に感じたのは、絶対に断ち切れない母への思い。それな らば会うことを躊躇してはいけないような気がした。父と一緒に会って母を確かめなければならない気がした。玲二はパンを素早く胃に押し込むと、無理矢理大 きな声を出して玄関に向かう。
「‥‥‥行って来ます!」
「おぅ。気をつけてな。」
‥‥‥雨は‥‥‥まだ降っている‥‥‥。‥‥‥いや、ずっと降ってくれればいいんだ‥‥‥。ずっと雨のままで‥‥‥。学校に到着し、雨に濡れた傘を玄関先ではたいているとき、玲二はどこかから感じた視線に振り向いた。
「‥‥‥ふみや‥‥‥。」
靴箱から少し離れた踊り場から友人は玲二を見つめている。‥‥‥『熟女』と体験したはずの‥‥‥ふみや‥‥‥。ふみやはしばらく玲二が上がってくるのを待っていたが、なかなか上がってこないのを見て靴箱に近寄ってきた。
「玲二、なにしてんだよ?」
玲二は親友の瞳を見つめる。自分を蔑んでいないか、嘲笑ってはいないか。もしそんな様子がちょっとでも分かれば、自分を抑える自信はなかった。
「‥‥‥おい、どうした?‥‥‥オレどっかおかしい?」
少し動揺した顔でふみやは自分の身体や顔をパンパンとたたく。その素振りに不自然な部分は感じられない。
「いや、どこも‥‥‥。」
玲二はふみやの横をすり抜け校舎に向かった。慌ててふみやが後を駆けてくる。
「ま、待てよっ。‥‥‥なぁ玲二。聞いてくれよ、昨日の話!」
持 ち出されるべき話題を早速持ち出され、玲二はきつく唇をかんだ。永井、母、ビデオの存在‥‥‥。そして永井に紹介された『熟女』‥‥‥。いくら覚悟してい ても、その結果を親友自らの口で聞いたら堪えられるかどうか分からない。とても身近な存在だからこそ、その体験談は胸をえぐるに決まっている。
「‥‥‥‥‥‥。」
「ど、どうしたんだよ玲二。どっか調子悪いのか‥‥‥?」
心配げな表情で顔を覗き込んでくるふみや。その悪気のない言い方に少し傷つき、しかし話を聞いてみる覚悟をした。‥‥‥知らないままでいれるわけないじゃないか‥‥‥。玲二とふみやは階段をのぼり、使われていない教室前の廊下に座った。
「大丈夫か?玲二‥‥‥。」
目を合わせようとしない玲二を心配してか、ふみやは真面目な口調で聞く。しかし玲二は返事をする気にはなれず、昨日の出来事を話すよう促した。
「あ、あぁ‥‥‥。じゃあ、最初からゆっくりな‥‥‥。」
ふ みやは永井から指定された待ち合わせ場所に赴き、相手を待った。早く来たせいかなかなか相手は現れず、騙されたのではないかという不安でいっぱいだったそ うである。やがて女性は現れた。身長は高低を意識しない標準的な高さ。少し幅のある黒のパンツをはき、ベージュのブラウスを身に着けた格好だった。一目見 て驚いたのは、女性がかなりの美女だったことだ。醸し出す穏やかな大人の雰囲気は、永井が言う『熟女』のイメージにちょうど合う感じで、しばらくの間その 女性に見とれてしまった。
「正直、こんな女の人が!?って感じさ。言い方悪いけどオバサンで、でも全然スケベそうでもなくって‥‥‥知的な感じでさ。」
「‥‥‥‥‥‥。」
ふ みやは続ける。女性はふみやを確認すると、ニコッと微笑んで会釈した。その様子がとても上品で、ふみやは思わずたじろいでしまったという。それから少々の 話をしてホテルに向かうまでの間、ふみやは常にその女性の女たる部分から目が離せなかったそうだ。ブラウスから透けるブラジャーや、背筋からなだらかに続 くヒップライン、その前面の下腹部‥‥‥。この身体を自由に出来るのかと思うと、疑問が沸き上がるとともに、今にも射精してしまいそうだった。
「それでホテルに着いたんだ。なんか呆気なくって言うか、さ‥‥‥。」
「‥‥‥名前とかは‥‥‥?何か話さなかったのか?」
玲二は自分の声が震えているのが分かりながら聞く。ふみやとは高校に入ってから知り合い、家庭のことなどをあまり話したことはなかった。両親が離婚してからはそのことを含めて尚更だ。
「そりゃ色々話したさ。でも良く覚えてなくて‥‥‥。名前聞いたらさ、オバサンでいいって。」
オ バサンはホテルに入ると、やや不慣れな手つきで一室を選んだ。大人の威厳を保とうとするのか、常にふみやはエスコートされる形だったそうだ。そして部屋に 入り、一通り部屋の構造を確かめてシャワーを順番に浴びた。一緒に入ろうというのをふみやは断ってのことだ。未熟な男を見られるのが恥ずかしかったのだ。 バスタオルを巻いただけのオバサンに緊張しながらシャワーを浴び、ふみやはそこを丁寧に洗った。頭に血が上って気絶してしまいそうになりながら。タオルを 巻いてシャワーを出るとオバサンは笑顔で待っていてくれた。その少し皺の目立つ顔は母親のように優しく、それだけで不安や疑いは消えていった。
「それで‥‥‥?」
「ああ。‥‥‥ヤッた。オレ、ヤッたよ。童貞捨てた。」
「‥‥‥‥‥‥。」
玲二の胸に母親のような優しい笑顔が浮かんで張り裂けそうになる。
「それもさ、すごいんだ。ただやらせてくれたんじゃなくって、ナマでやらせてくれたんだぜ!?」
「ナ‥‥‥ナマ‥‥‥?」
「そう。着けなくていいって言われてさ。マズイんじゃないかって思ったけど、『初めて』もらうんだからって。」
「だ、出したのか?」
「もちろんさ。もう何がなんだか分からなくなって、気付いたら出てたよ。‥‥‥オバサンだから大丈夫っても言ってたけど、出されたら歳なんて関係ないんじゃないか?マズイよな。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」
「でもさ、オレびっくりしたよ。ホントにズボズボって入っていくんだ、チ○ポ。それまでやっぱ歳が離れすぎてるから色々ぎこちなかったけど、もぅ感動って言うか、なんて言う‥‥‥。」
「‥‥‥もぅ、やめてくれぇっ!!!」
玲二の叫びは、朝の校舎中に響き渡った。
「‥‥‥な、なんだよ、玲二。オレ、なんか変な事言ったか!?」
「うるさいっ!もうそれ以上喋るなっ!!」
「なっ‥‥‥!!」
玲二の頭は嫉妬と怒りで溢れかえりそうだった。‥‥‥なにが熟女だっ、なにがナマだっ!!お前らのやってること、分かってんのかっ!?自分の母親にそんな事されて見ろと思うと、さらに自分の哀れさが浮き彫りになっていく。
「ど‥‥‥どうしたんだよ玲二‥‥‥。」
力の抜けた声でふみやはつぶやくが、玲二には聞こえなかった。‥‥‥あぁ‥‥‥何でこんな事に‥‥‥。いつから、どうして‥‥‥。どれくらい時間がたっただろうか。朝の喧騒に包まれていた校舎は静まりかえり、降りしきる雨の音だけが反響していた。
「‥‥‥玲二?」
「‥‥‥‥‥‥。」
ふみやが心配そうな表情で覗き込んでくる。
「悪かったよ。オレ、お前のこと何も考えないで、自慢してさ‥‥‥。」
沈痛な面もちに、悪気のない親友の心中を察した。‥‥ふみやは‥‥‥永井達は‥‥‥その女がオレの親だって事知らないのか‥‥?玲二はまだ震える唇を開いてふみやに聞いた。
「‥‥‥なぁ‥‥‥。その女、どこの誰なのか知ってるのか?」
「えっ?‥‥‥いや‥‥‥全然知らない。」
「ホントか?知ってるんだろ!?」
「いいや!なんにも知らないよ。」
ふみやの真剣な表情には嘘がないことは分かった。ふみやが嘘をつけない性格であることは誰よりも玲二が知っている。
「そっか‥‥‥。」
「なぁ、玲二。いったいどうしたんだ?言ってくれよ。なんならさ、オレが頼んで玲二にもさせてもらうように‥‥‥。」
「違うんだよっ!!」
少し躊躇したが、これ以上胸の奥に溜めておくことが出来ないと感じた玲二は、すべてを話すことにした。しかしそれは、ふみやが自分の母親と経験したことを自ら明かしてしまうことになる。それでももう黙っておけなかった。
「‥‥‥その女な‥‥‥オレの母親なんだ。」
「は?な、何って?」
「その『熟女』!‥‥‥オレの母親なんだよっ!!」
玲 二の言葉に驚愕したふみやは、それから話した事のあらすじを目を見開いたまま聞いていた。相づちもなにもなく独り言を語っているようだったが、真情を吐露 できるならそれで十分だった。家庭のこと、レイプビデオのこと、そして熊田から得たビデオのこと‥‥‥。すべてを話し終わると、一段と雨の音が大きくなっ た気がした。
「‥‥‥そ、そんな‥‥‥嘘だよ、な?」
ふみやが玲二の反応を気遣った、複雑な声色で尋ねる。
「‥‥‥嘘言うわけないだろ‥‥‥。」
「そ、そんな‥‥‥!」
いきなり立ち上がったふみやが激しく玲二の肩を掴んだ。
「オ、オレやっちゃったよ!?出しちゃったぞっ!?」
「お、おい‥‥‥。」
「なぁ、どうしよう?‥‥‥なぁ!!」
玲二はふみやの手を掴んで落ち着くよう諭すと、ふみやは脅えたような視線を玲二に投げかけて体を離した。その動揺した様子に玲二の心は逆に冷静になっていく。ふみやがこの事実を異常と捉えてくれたことが、些細でも救いだった。
「‥‥‥いまさらもう遅い‥‥‥。でも!」
「な、なぁ。あのオバサンが玲二のお母さんだってのは確かなのか?もしかしたら違う人だってことも‥‥‥。」
「そう、思うか?」
「ん‥‥‥いや‥‥‥。」
ふみやは遼子のことを知らない。しかしこれだけ状況証拠がそろっていると何も言い返せない。
「な、なぁ‥‥‥オレどうすれば‥‥‥。」
「どうにも出来ないよ。出しちゃったんだろ、中に‥‥‥。」
玲二は大きなため息をついてどんよりとした雲を見た。すべてを吐き出してホッとした気分と後悔の感情が交錯して胸が込み上げてくる。この母と永井達、それにふみやに対する激しい嫉妬はどうすればおさまるのだろう。暴力的衝動を起こすには、自分はあまりにも無力な気がした。
「なぁ、ふみや。それでもオレ、母さんと永井達が付き合ってるってのは絶対にイヤだ。」
「あ、ああ。そりゃそうだ、遊ばれてるようなもん‥‥‥。」
そこまで言いかけて、ふみやは慌てて口をつぐんだ。そして、何かを思いだしたように玲二の顔色を窺い始める。
「‥‥‥なに?なんかあるのか?」
「その‥‥‥玲二の親だって知る前は後から話そうと思ってたんだけど‥‥‥。」
そこで一度間を置き、何度か呼吸のタイミングを合わせてふみやは言った。
「‥‥‥なかったんだよ、アソコの毛が‥‥‥。ツルツルだった。」
「えっ!?」
「おばさんなのにすごい不自然でさ。毛がないから形とかがはっきり見えて。あれって、もしかしてさ‥‥‥。」
「毛が‥‥‥ない‥‥‥。」
ビデオの中の母にはちゃんと陰毛は生えていた。その黒々とした茂みの深さは、今でも鮮明に思い起こすことが出来る。小さい頃見た母の象徴とも思えるヘアを、少年達に剃り込まれたというのだろうか。
「そこ、まで‥‥‥。」
「い、いや、分かんないぞ?まだ、オレが会ったのがおばさんだって決まった訳じゃないしさ‥‥‥。」
「‥‥‥‥‥‥。」
玲二は無意識のうちにふみやの股間に目がいった。無毛の母と性交したという局部。そこはこんな緊迫した会話の途中にも関わらず、突き上げるように勃起しているのが分かる。
しかし玲二は何も言えなかった。自分も激しく勃起してしょうがなかったのだから。
「と、とにかくさ、玲二。とにかく訳を聞いてみようか。実は‥‥‥オレさ、次の次の日曜にまた会うことにしてんだ。その‥‥‥おばさん、とさ。」
「!?」
「い、 いや‥‥‥この際だからもう言うけど、オレあまりにも良くって、また会ってくれるよう頼んだんだ。ベッドで土下座して‥‥‥。そしたら『いいわよ』って、 『二度目ももらってあげる』って‥‥‥。玲二の話聞いて絶対に行けないと思ったけど、でも行って色々事情聞いてやる。絶対にセックスはしないからさ!」
ふ みやの真剣な眼差しに不誠実さはないように思えた。確かに母に色々と事情を聞いてもらいたいという気持ちはある。これ以上母が遊ばれていくのを見過ごした くはない。しかし、母とふみやをまた会わせることにも抵抗があった。‥‥‥どうする‥‥‥?母の優しい笑顔が玲二の頭に浮かび、それを捨てられないと悟っ た玲二は、ふみやに託すことにした。
「‥‥‥オレの名前は出さないで欲しい。」
「そりゃあもちろんさ!そんな事したら最悪なことになるだろ。それに、まだおばさんだって決まった訳じゃないんだ。」
「じゃあ‥‥‥。」
「ああ。遠回しに聞いてみる。でも‥‥‥どういう答えでも、オレ玲二にはっきり言うからな?」
「ああ、頼むよ。」
母と簡単に経験した憎き男に頼み事をするのは気が引ける気がした。だが、ふみやの友情を感じたことも事実だった。玲二はふみやに母の名前や特徴を話し、のっそりと立ち上がる。
「改めて言うけど‥‥‥ごめんな、玲二。」
「‥‥‥ああ。」
激しくなる雨。校舎のどこかではねる水の音が、性交時の音に似ていることに気付いた。
結局、雨は放課後になっても止まなかった。湿っぽい空気の中を玲二は校門を抜けて歩き出した。‥‥‥母さんは今何してるんだろう。どこで、なにを‥‥‥。それを考えると頭は混乱して、他になにも考えられなくなる。
「遠くから見るだけ。ただ、それだけ‥‥‥。」
玲二は駅に向かい、隣の市行きの電車に乗った。かなり激しい雨のせいで、窓から見える景色はすべて灰色に見える。自分の曇った心がそう見せているのではないかと疑ったほどだ。
「すごい雨だな。よく前が見えないよ。」
駅 に着き、母のアパートの方へ向かう。会いに行くのではない、ただ近くに行ってみたいだけなのに、身体の奥底から昂揚が沸き上がってくる。‥‥‥なんだ ろ‥‥‥なにを期待してるんだろ‥‥‥。傘を差していても容赦なく雨は学生服に飛び散ってきた。少し立ち止まってズボンの裾を折り曲げようとしたとき、そ こに見た光景が玲二に不思議な感覚を与えた。
「‥‥‥母さん?」
何十メートルか先から歩いてくる二つの影。背の高い緑の傘は遼子のようだ が、もう一つの小さな赤色の傘は誰だか分からない。玲二はその光景をどこかで見たことがあるような気がした。‥‥‥既視感、ってやつ?‥‥‥いや、これ は‥‥‥。二人が近くに寄ってくる。数メートルほど近寄ったところで、緑の傘から顔を上げた遼子が玲二に気付いた。
「あっ‥‥‥玲二‥‥‥。」
雨の中に消えていきそうな母の声。玲二はどういう反応をして良いか分からず、ただ呆然とした表情で答えた。
「ど、どうしたの?こんなところで‥‥‥。」
遼子は濡れそぼった玲二のズボンに視線を走らせながら聞いてきた。
「いや、別に‥‥‥。」
曖昧な返事をして、赤の傘に目を移す。遼子より頭ひとつ小さいくらいの身長。背の低い女性か、小学生か中学生になったばかりの人間に思える。
「あ、この子?この子はね‥‥‥。」
「なんだよ、お前。」
少し高い声が聞こえ、赤の傘が上を向いた。
「あっ、せいくん‥‥‥!」
視線を逸らさず玲二を睨み付けてくる少年。その視線はどこかで見たことがあるような気がした。‥‥‥なんだこのガキは‥‥‥?誰かに似てる‥‥‥。
「お前なんだって聞いてるだろ。」
「‥‥‥誰、これ。」
玲二は少年を無視して母に聞いた。
「あっ、いや、近所の子。ちょっと今遊び相手になってあげてるのよ。」
「違うだろ。」
少年が唇をとがらせて遼子を見上げるのを、遼子は優しくなだめにかかる。その様子は言うことを聞かない息子を母親が諭すようにしか見えず、玲二は軽い嫉妬を覚えた。‥‥‥なんなんだ、コイツは。ホントに近所の子か?
「ね、玲二。今日は何か用なの?」
「いや。」
「じゃ、ごめん。今日はちょっと用事があるのよ。‥‥‥帰って?」
‥‥‥誰も寄るって言ってないじゃないか。玲二が母から視線を外して少年の方を見ると、少年も玲二を見返してくる。イキがりたい年頃なのか、身体は小さいがなかなか堂々とした態度だ。
「見んなよ、お前。」
「せ、せいくん、ごめん。そんな言わないで、ね?」
言われているのは玲二なのに、遼子はせいくんという少年に腰を屈めて謝った。
「母さん‥‥‥。」
「ごめんね、玲二。じゃあ行くから‥‥‥。」
二 人は玲二をその場に残し、アパートの方へ向けて歩き出した。チラチラと振り返っていた赤の傘も次第に見えなくなり、激しい雨の音だけがあたりに響 く。‥‥‥そうだ‥‥‥あれは‥‥‥オレと母さん‥‥‥。それに似てたんだ‥‥‥。玲二は少年に激しい嫉妬を覚えながらしばらくその場に佇み、アパートの 方を見つめていた。一週間が過ぎた。長かった梅雨時期はようやく終わり、照りつける太陽が夏を肌で感じさせる。玲二はこの一週間、テストや何だかんだで、 忙しい日々を過ごした。
「もうすぐ夏休みだな。」
「ああ。」
玲二とふみやは日差しを避けるのに苦労しながら校門に向かい、そこで 別れた。‥‥‥あいつは初体験済ませて、オレはまだ童貞‥‥‥。その事実が頭をよぎると嫉妬で胸がつぶれそうになるが、考えてもどうしようもないことは分 かっていた。玲二は熊田から買ったビデオを手に入れてから、毎晩のようにそれを見てオナニーしている。自分が哀れで悔しいのは分かっているが、それを遙か に越える母の痴態に魅入られていたのだ。永井が膣外射精をする瞬間、玲二も同じように性を放つ。家族を裏切った母に浴びせるように。
「お‥‥‥おーい!」
コンビニの近くを通ったとき誰かから呼び止められて、玲二は振り返った。
「あ‥‥‥熊田‥‥‥。」
一瞬殺意にも似た激情が走るが、玲二はコンビニの駐車場を横切ってゴミ箱の横に座っていた熊田に近寄った。‥‥‥こいつは母さんのマンコを‥‥‥動物みたいなあのシーンをビデオで見てる‥‥‥。しかし、それを顔には出さずに何か用かと聞いた。
「この前のビデオどうだった。あぁ?」
「あ、あぁ‥‥‥。良かったよ。」
玲二は感情を抑えながら返事した。
「良かったぁ?あれがか?‥‥‥変わってんな、オマエ。」
熊田は玲二の身体を舐めるような視線で見上げ、含み笑いを漏らした。
「でもそりゃいいや。実はな、また新しいビデオが手に入ったんだ。オマエ、またそれ買わねぇ?」
「ビデオ?‥‥‥新しいの?」
玲二の中でなにかが激しく渦巻くのが感じられた。‥ビデオ‥また母さんのビデオ‥‥!?
「今度のもまたすげぇぜ。『愛のきせき』って名前つけてんだけど、これって歴史に残るんちゃう?って感じ。」
「歴史?‥‥‥どういうこと、それ!」
「へへ。犯罪じゃねーのかっ?てもんだな。‥‥‥どうする?」
どういう意味だろう。あまり賢そうではない熊田だけに、言うことに疑問だけがふくらんだ。
「そ、それって‥‥‥またあのオバサン、出てるの?」
「あぁ。あのオバン、いい歳して良くやるよな。恥ずかしくねーのかよ、へへ。」
下品に笑う熊田に感情が爆発しそうになるが、必死で我慢する。
「く、熊田くんってさ‥‥‥。あのオバサン、誰か知ってんの?」
「いいや。オレ最近あんまり賢ちゃんらと遊んでねーからな。でも、色々やられてるみてーだぜ。オバンも。」
「い、色々?」
「ああ。実験とか言って、色々な。まぁ、ババァ相手ならなにやってもいいし、賢ちゃんに惚れちゃったらしいからな、ババァが。」
‥‥‥ 惚れた?母さんが!!?‥‥‥そんなの嘘だ!!顔を歪める玲二を熊田は笑うと、ビデオを買うかどうかをまた尋ねた。買わないわけにはいかない、そう玲二が 返事すると、またマンションに連れて行かれてしばらく待たされた。‥‥‥実験‥‥‥。‥‥‥色々やられてる‥‥‥。ババァ相手だから‥‥‥。‥‥‥そうだ よ、オレ達の年代にとって、母さん達の存在なんてそんなもんだよ‥‥‥。それ分かってるの?母さん!もどかしさに身を焦がしながらしばらく待っていると、 熊田がケース入りのビデオテープを持って現れた。
「ホラ、これ。‥‥‥一応言っとくけど、絶対に誰にも言うなよ。分かったな。」
玲二は頷きながらテープの帯の部分を見る。そこには、
『愛のきせき』
と、手書きで書かれていた。帯の縁にはハートマークがそこかしこに描かれていて、よく見ると、タイトルの前に何か小さく書かれているのも見えた。‥‥‥s.o.‥‥‥?なんだ、このアルファベットは‥‥‥。
「へへ、このビデオ二本しか作ってねーんだってよ。まっ、オレはいらねーからさ。」
おそらく母のすべてが撮されているビデオを簡単にいらないと言われ、玲二は唇を噛む。
「念押すけど、絶対誰にもバラすなよ。いいな!」
‥‥‥人の母親の秘密を、なに自分の秘密みたいに言ってるんだ‥‥‥!だが、玲二はただ黙って堪えるしかなかった。沸き上がる昂揚と不安とに身を震わせながら家に帰ると、居間からテレビの音が聞こえた。
「ただいま。」
「おう。」
玲二が居間に入ると、父の祐一が巨体をソファーに埋め込むようにして寝そべっている。
「どうしたの?今日は早いね‥‥‥。」
どこか陽気な雰囲気を感じ、玲二は胸が痛くなるのを感じながら聞いた。‥‥‥父さん‥‥‥母さんはオレの友達ともヤッちゃったみたいなのに‥‥‥。それを父が知ったときの気持ちを考えて以来、父の姿を正視することが出来ない。
「ああ、ちょっとな。それより玲二、来週の水曜は空けておけよ。」
「‥‥‥なんで?」
「会うんだろ。」
あまり多くを語りたくないと言う素振りで、父は照れたような表情で言った。
「会う‥‥‥母さんと?」
「ああ。」
「あ‥‥‥そう。」
‥‥‥そうか、とうとう会うのか‥‥‥。
『なぜ?』
つ い、そう尋ねようとしてしまい、玲二はギリギリで思いとどまった。‥‥‥母さんに会って‥‥‥父さんと一緒に母さんと会って、本心を確かめるんだ な‥‥‥。ビデオの映像が様々な角度で交錯する中、優しい母の笑顔が浮かんで消えなかった。テレビの電源を入れる。ビデオのスイッチを押し、『愛のきせ き』と書かれたビデオテープを差し込む。音声は外に漏れないよう、必要最小限に抑えた。
「‥‥‥よし‥‥‥。」
玲二は目を瞑り、なにが映っていても堪えられるように気合いを入れるとともに、こんなビデオを見なければならない現実を呪う。‥‥‥こんな息子なんて‥‥‥たぶん世の中に一人だよな‥‥‥。震える手でリモコンを掴み、ゆっくりと再生ボタンに指を近づけた。
そしてそれを押そうとした、その時―――。
「玲二ー、電話ー!」
玲二は驚いて飛び跳ねるように後ろへ下がり、あたりをキョロキョロと見回した。‥‥‥で、電話?誰からだ‥‥‥。階段をおりて父から子機を受け取り、引き返しながら受話ボタンを押す。
「‥‥‥玲二?」
電話の相手はふみやだった。
「ちょっと、言っておきたいことがあって‥‥‥。」
「なに?」
部屋に入ってドアを閉め、ベッドの上に座る。
「‥‥‥。オレさ、今日聞いたんだ。」
「なにを?」
「帰り道で永井達に捕まって‥‥‥。それで、聞いたんだ。」
「だから、なにを。」
「いや‥‥‥。」
「なんだよって!」
ゆっくりとした口調でなかなか切り出さないふみやに、玲二は少し怒気のこもった声を返した。
「‥‥‥永井達のグループがさ、ジュニアを作ってみたいって言ってて‥‥‥。『ジュニア計画』とか言って、今頑張ってるんだぜって‥‥‥。」
「ジュニア?‥‥‥中学生達のか?」
「‥‥‥オバサンだから別に構わないし、本当にデキるのか試したいって‥‥‥。男だったらそう思うよなって‥‥‥。」
「え‥‥‥?」
「何でも言うこと聞くし、面白そうだろって言うんだ。すげぇ実験だぜって‥‥‥。物凄い事やってるなんて全然思ってないんだよ、あいつら‥‥‥。」
ツーツーツーツーツーツー‥‥‥‥‥‥。通話が終わっているのに、玲二はいつまでも受話器を離せないでいた。再生ボタンを押す。薄い青の画面に少しノイズが走り、テープが回転する音が聞こえ始めた。
「‥‥‥妊娠させるだって?な、何言ってんだ‥‥‥。セックスしてるんだから当たり前、じゃないのか?」
‥‥‥ ふみやにだって出させたらしいし、誰とだって構わず‥‥‥。焦点の定まらない目を画面に向ける。何度か画面がフラッシュして、その部屋の輪郭が映し出され た。‥‥‥誰とだって構わず‥‥‥セックスして、出されてる‥‥‥。ベッドの上にふたりが座っている。一人が遼子なのはすぐに判った。母が目的でビデオを 手に入れたのだから別に驚きはない。しかし、その母と隣り合ったひとまわり小さな身体が気になった。‥‥‥出されてる‥‥‥あんな汚いモノを‥‥‥中に? 身体の中にか?‥‥‥へぇ‥‥‥。遼子が隣を向き、見下ろしながら何事かを話し掛けた。その表情はとても優しくて慈愛がこもっていて、玲二は何か懐かしい ものを感じた。‥‥‥服を着てたら全然‥‥‥全然そんなこと判らないのにな‥‥‥。遼子はカメラの方に視線を走らせ、また隣を優しく見下ろした。子供であ ることには間違いない。母の問い掛けにも無愛想な表情が、雨の日に出会った少年の姿をよみがえらせた。玲二は画面中央、ベッドに座った母の身体を見つめ る。オレンジ色のブラウスをブラウンのソフトな生地のスカートに挟み込み、ウエストがキュッと締まって、ヒップは横にせり出して見える。足首までを隠すス カートの長さが母の慎ましさを感じさせるようでもあり、違和感も覚えた。この普段着の姿から剥き出されるであろう肢体を想像すると、全身の血液が下腹部に 流れていくようだ。
『‥‥‥せいくんは今何年生?』
今まで置かれているものだと思っていたカメラが動き、ふたりのそばへ寄った。‥‥‥永井か?それとも‥‥‥別の誰かか‥‥‥?
『4年。』
『そっか、4年生ね。』
『‥‥‥知ってるだろ。』
生 意気な少年の返答に、遼子は持て余し気味にカメラの方を向いて笑った。どうやら心の通じた人間がカメラを抱えているらしい。せいくんと呼ばれた少年は勝ち 気そうな表情は崩さないが、高度に緊張していることは判る。玲二はなぜこんな少年と母が撮されているのかを疑問に思った。
『4年生って言えば、そろそろ女の子とかにも興味出てきたんじゃないかしら?』
『え‥‥‥?』
遼子が少年の心を見透かすようなしっとりとした声で尋ねると、少年はカメラと母の方を交互に見て返答に困った後、コクンと頷いた。‥‥‥言わされてる。少年の不自然な動作がそれを如実に物語って見える。
『そう、ちっちゃくても男の子だもんね。』
遼子は少年が頷くのを確かめると、少年にではなくカメラの方に向けてホホホと笑った。
その様子はまるで夫婦が自分の子供の反応を面白がるようで、玲二の全身に激しい嫉妬が走った。
『気になる子とか、いるの?』
『べ、べつに‥‥‥いない。』
少年が口を尖らせてそっぽを向くのを遼子は小首を傾げて面白がる。‥‥‥何やってんだよ。そんなガキからかってどうするつもりだよ。セックスビデオだろ‥‥‥?玲二はそう思ったところで、このビデオを売った熊田の言葉を思い出した。
「犯罪じゃねーのか?」
犯罪とはどういう意味だろうと思っていたが、熊田などの言葉を本気で受け取っていたわけでもない。しかし、今になって異様な考えが頭をよぎっていく。
『ふふ、好きな子いないの?』
遼子は意味ありげな笑みを少年に向け、身体をさらに密着させた。柔らかそうなスカートが引っ張られ、丸みのあるヒップラインが浮き出される。まだ初期の成長段階にある少年と比べるとその充実度の違いが目をひいた。
『おばさんはね、せいくんの事好きよ。せいくんみたいな可愛い子と結婚できたらなー‥‥‥なんて思ってるわ。』
遼子はそう言った後、自分を恥ずかしがるように視線をカメラへ向けた。‥‥‥な、何言ってんだよ、母さん‥‥‥。
『せいくんはおばさんのこと好き、嫌い?』
『え‥‥‥。』
『同級生の女の子より、年上の方がずっといいわよ。色々教えてもらえるから。ちょっと歳が離れすぎてる気もするけど‥‥‥ふふ。』
遼子は少年の顔に胸を近づけて動揺する少年を笑った。その様子は何も知らない初々しい子供を遊んでいるようにしか見えず、会話とともにまったくかみ合っていない。少年はそんな状況にも勝ち気な表情を崩さず、カメラの向こうを睨み付けるような仕草をした。
『ねぇ、せいくんはおばさんのこと好き?』
『‥‥‥す、好きだと思うけど‥‥‥。』
『結婚してくれるくらい好き?』
『‥‥‥た、多分な。』
少年は返事をする度にいちいちカメラの方を窺う。玲二にとって言わされている会話内容などどうでも良かったが、このビデオの主役が誰なのかがとにかく気になった。‥‥‥もしかして‥‥‥母さんじゃなくて‥‥‥だとすると‥‥‥。
『わぁ、嬉しい。じゃあおばさんとせいくん、愛し合ってるってことね?』
『え?‥‥‥まぁ‥‥‥。』
『ね。』
無理矢理言いくるめた感の母がカメラの方を向き、少し頷いたように見えた。
『じゃあね、せいくん。人間が愛し合ったらどうするか、っていうのをね、おばさんが教えてあげようか。』
『どうするか‥‥‥?』
『そう、大人しか知ったらいけないことなんだけど、せいくんのこと好きだから特別に、ね。』
『ふん?』
『ふふ、オスとメスの違いとかすごいことをね‥‥‥メスのおばさんが教えてあげる。』
遼子はそこまで言うと、確認するかのような視線をカメラに向け、小さく微笑んだ。考えていたセリフを言い終えて、安心したようにも見える。少年は知識を与えられていないのか、ポカンとした表情で遼子を見上げ、そして一瞬だけ遼子の下腹部に目を向けてつぶやいた。
『難しいのか?』
『ふふっ!そんなことないよ、簡単。』
余程少年の無知さが可愛いく思えたのか、遼子は少年の短く刈り込まれた髪をくしゃくしゃに撫で、胸に引き寄せて押し付ける。玲二の背筋を得体の知れない悪寒が駆け抜けた。
‥‥‥ そんな!!予期せぬ展開だった。また永井と交わると思っていた母が、こんな未熟な少年相手に性を教えようというのだ。あまりにもかけ離れた年齢を超えて。 もし本当にそんなことになれば、玲二はこんな小学生にも劣等感を抱かなくてはならなくなる。‥‥‥どこまで?いったいどこまで「教える」気だ‥‥‥?あま りにも不釣り合いなふたりの身体を見て、嫉妬とともに深い羨望をも感じた。‥‥‥こんなガキ相手に!無理だし、モラルってもんがあるだ‥‥‥‥‥‥で も‥‥‥。激しい嫉妬が込み上げる中、しかし玲二は、心の奥底に芽生えつつあるある感情にも気付いた。
『じゃあ、せいくん。お風呂入りましょうか。おばさんが身体洗ってあげるわ。』
遼 子に誘導されて少年が出ていく姿をカメラは追う。開いたドアを閉めるとき白々しく中を確認する母のスカート姿を見て、どこまで本気なのだろうと玲二は思っ た。舞台は変わって二畳ほどのバスルームが映された。裸になるのが当然の場所だと思うと、玲二はそれだけでも激しい昂揚に包まれていく。押し出されるよう に少年が全裸の姿で飛び込んできた。少年といえどその肌の色合いには心臓が高鳴る。股間についているチンポは性器と呼ぶにはあまりにも未熟な器官で、亀頭 はほとんど厚い皮に覆われ、勃起もしていないようだ。少年がカメラを意識してソワソワする中、しばらくして母の姿が映し出された。豊満なヒップを揺するよ うにして少年のそばに歩み寄る後ろ姿と、ヒップの中央を走る深い割れ目が、明確な大人を感じさせた。‥‥母さん‥‥‥簡単に裸になっちゃったんだ‥‥‥。
少 年が母の下腹部に目を向けるのが分かった。当然そこを見られると悔しいが、少年の高まりを想像すると異様な興奮も覚える。遼子は少年の前でしゃがみ込む と、少年を下から見上げる姿勢で膝をついた。斜め後ろから撮される母の背中はとても色っぽく、しゃがんだことによって強調される尻肉が少年の身体とのアン バランスさをさらに浮き彫りにした。
『ふふ、可愛いわね。』
普段と変わらない声で遼子は少年の未熟なチンポに手を伸ばし、愛しむように そっと撫でた。緊張のためか少年は大した反応も見せない。そんな少年を楽しむように、遼子は顔色を窺いながらチンポをゆっくりとしごき始めた。そして時折 チンポの形状を確認して、包皮の状態を探っているようにも見えた。‥‥‥コイツ‥‥‥母さんに弄ってもらいやがって‥‥‥。どこまで本気か判らないが、チ ンポに手を伸ばすことが本物のセックスの香りを感じさせ、玲二は胸が痛む。バスルームの黄色のライトに照らされる、まとめられた母のヘアスタイルが悩まし い。‥‥‥でも、母さんに任せてたら‥‥‥任せてたら安心だろうな‥‥‥。しばらくチンポをしごいて遼子は立ち上がり、シャワーに手を伸ばした。引力に逆 らおうと半立ちの少年のチンポが母の行為のせいだと思うと、不思議な感慨がよぎる。
『ちょっと最初は冷たいかな。我慢してね。』
何度か自 分の手にお湯を出した後、少年の胸へシャワーをあてた。少年は不機嫌そうな顔で母やカメラの方を気にする素振りをする。遼子の体勢が少し変わり、身体の正 面が斜め横から撮されるアングルになった。太股によって作られたVゾーンが無防備に画面に映り、玲二はそこに視線を奪われる。‥ホントだ‥毛が‥なくなっ てる‥。そこだけを見るとまるで少女のように、前回のビデオでは黒々と繁っていたはずの陰毛が剃り込まれていた。なだらかに盛り上がった下腹部には少し開 き気味の陰裂が見え隠れしている。腰の位置はかけ離れているし、横幅などの逞しさが全然違うが、性器付近だけは不思議に少年とつり合って見えた。母はその 部分を別に気にする風でもなく自分や小さな少年にシャワーを浴びせ、水泡に輝く肌がとても卑猥に映った。‥永井に剃られたのか‥股大開にして‥‥。
『目に入らなかった?』
シャ ワーを止めるとスピーカーから鳴り響いていたバシャバシャという音が消え、急に静かになる。母はもう一度少年の前にしゃがみ、片方の膝だけを床につけた体 勢で棒立ちの少年の目をこすった。そしてまた幼いチンポに手を伸ばし、根元の方をほぐすようにしごき始める。カメラはその様子をアップにして撮した。ホン トに、どう見ても子供なのに‥。
少年のチンポは無毛でサイズも小さく、完全に勃起もしていない。それを母は大人の手つきで摘むようにしごき続ける。
『どう、興奮しない?』
母が囁くような声で少年に聞いた。少年は何をされているのかも判らないのだろう、返事はない。
『ふふ‥‥‥。』
カ メラが少し引くと同時に遼子はついていた膝を立て、かかとを浮かせた。そして少年の方へ向けて膝をゆっくりと開き、少年の顔を見上げた。映像には映らない が、少年の目からは母のなだらかな下腹部が確認できるはずだった。母は反応を楽しむように少年の視線の行方を追う。少年は本能的なものなのか、口を尖らせ たままそこをジッと見つめた。
『ふふ、やっぱり男の子ねぇ。』
母が掴んだままのチンポを見ると、先ほどまでの中途半端な状態ではなく、頼 りないながらも天を突く角度になっていた。先端からは亀頭が顔を覗かせ、脱皮が近いことも感じさせる。玲二は母の身体が少年を奮い立たせたことを思い、嫉 妬と誇らしげな気分の交ざり合った、不思議な感覚に包まれた。‥‥‥悔しいけど‥‥‥やっぱり母さんは女なんだ。こんなガキでも立たせちゃうんだか ら‥‥‥。皮の状態を確かめるためかチンポの根元を強く押し込んだ後、遼子は立ち上がって少年の頭をクシャクシャと撫でた。少年はそれを鬱陶しそうに払 う。股間で鋭角に勃起したチンポの先には、無防備な遼子の股間があった。
‥‥‥でも入れるのは無理だ‥‥‥。複雑な気持ちの中、玲二は思う。身体 の成熟度の違いもそうだが、母と少年とでは決定的な中身の違いがある気がした。‥‥‥セックスって言うのは、中身が繋がって合わさることで‥‥‥このガキ と母さんとでは同レベルでは結びつかない、内臓の種類が違ってるっていうのか‥‥でも‥‥。性交を絶対に否定したい気持ちと、心の奥底から沸き上がってく る別の想い。玲二は内面のせめぎ合いに混乱した。
『もういいわね、出ましょ。‥‥‥出たらベッドで可愛がってあげるわね。』
遼子はそう言 うとカメラの方を振り向いて笑った。その言葉は少年にではなく、カメラを持つ男に聞かせて笑いたかったのだろうか。少年は無視されたように感じたのか母の 方を睨み付けた。玲二にはその少年の気持ちが少し分かる気がした。待ち合わせ場所に現れた母の美しい姿に玲二は感嘆した。紺のシックな色合いでまとめられ たスーツに、小脇には黒のハンドバッグを抱えている。何より惹き付けられたのは、キュッと締まったウエストから続く張り出したヒップラインと、膝上十五 cmほどの短い丈のスカートだ。若い女性と違い、逞しく寄り合った太股が母の成熟と母性を示すようで、安易な内部への妄想は断ち切られるようだった。透き 通るような白い肌の奥にあのような器官があるとは、ビデオで見た玲二でもとても信じられない。
「久しぶり、だな。」
父の祐一がはにかみながら声をかけると、母は昔と変わらない優しい笑顔を浮かべた。
「ええ、久しぶり。玲二も。」
玲 二は少しだけ頷き、ふたりに連れられてファミリーレストランの扉をくぐっていく。スカートから浮き出る堂々とした母のヒップと、膝裏から太股にかけての白 い肌がとても刺激的だった。席に案内されると、祐一と玲二が同列に座り、遼子は正面へ座った。改めて母の顔を見ると深紅の口紅が引き立っていて、やはりと ても美しく見える。小さな頃よりも、家を出た頃よりもずっと。ウェイトレスにありきたりのものを頼み、ふぅとため息をつくと、父がまず口を開いた。
「会ってくれてありがとうな。」
「いいのよ、そんな。」
大 したこともないと微笑む母に、父は必要以上の照れを示した。玲二は巨体の割に不甲斐ない父にため息をつきながら、スーツから覗ける母の白いブラウスに目を 向けた。二つほどボタンが外されたそのブラウスは薄い生地で出来ているようで、遠目からでも地肌が透けているように見える。身に着けている母の下着を想像 しラインを探った。が、ブラジャーらしい形は透けて見えてこない。
「今日は、その‥‥‥なんだ。家族のこととか話そうと思ってる。」
「家族‥‥‥。」
「これからのこと、オレ達のこと‥‥‥。」
その時バイトのボーイが玲二の頼んだコーンスープを持ってテーブルにやってきた。遼子が気を利かせてボーイの手から皿を受け取り、それを玲二の前に差し出す。
「ごゆっくりどうぞ。」
席を離れるときにボーイが遼子の太股に視線を走らせるのを玲二は見逃さなかった。しばらくテーブルを沈黙が包み、真情を吐露するように祐一が語り始めた。
「‥‥‥正直、おまえにはすまなかったと思ってる。構ってもやれなくて、きつい言葉を言ったり、手を出したり‥‥‥。」
「それはいいの。もう気にしてないから‥‥‥。」
「あの時は!‥‥オレもちょっと色々悩んでてな‥‥‥。本当にすまなかったと思ってる。」
「‥‥‥‥‥‥。」
母は深刻な空気に耐えられないのか、座席に置いてあったバッグをゴソゴソといじり始めた。少し前屈みになったせいでブラウスの襟元から中が見えそうになり、だが見えない。
玲 二は母の胸元だけではなく、かなり捲れ上がっているだろう母のスカートの方にも意識を奪われていた。‥‥‥母さんの太股の太さなら、かなりスカートがズリ 上がってるはず‥‥‥。どんなパンツはいてるんだろうな‥‥‥。椅子から滑り降り、それを確認してみたい衝動に駆られる。
「本当にいいのよ、もうすんだことなんだから。」
バッグから取り出したハンカチをテーブルに置き、遼子は微笑みを浮かべた。父はその笑みにホッとしたように肩を下げ、全身にこもっていた力を抜いたようだった。しばらくすると順々に料理が運ばれて、それに手をつけ出すと、父は段々口数を増やし始めた。
「今まで聞かなかったが‥‥‥生活の方はどうなんだ?」
「うまくやってるわよ。」
「どこで働いてるんだ。」
「それは‥‥‥ね。」
答えをしばらく待ったが出てこないと知り、父は話題を変えた。
「病気とかは大丈夫だったか。」
「大丈夫。‥‥‥あなたはどうだった?」
口元に運んでいたスパゲッティがフォークから滑り落ち、遼子は玲二の方を向いて笑った。
しかし玲二は笑い返す気にはならなかった。「モノ」が母の唇に吸い込まれていく様子をじっと観察していたからだ。両親はしばらく身の回りのことなどを話し、半分ほど料理がなくなった頃に本題へ入った。
「どうだ、家に帰ってくる気はないか。」
「‥‥‥それは。」
母はフォークを皿に置き、一呼吸ついてから顔を上げて答えた。
「無理よ。」
玲二には判っていた答えだが、やはりズシンと胸にくる。
「なんでだ?そりゃすぐには無理だろうが、しばらく時期をおいてでも‥‥‥。」
「家を出てからもうかなり経ったわよね。その間色々あったし、私、今の生活から離れられないわ。」
「‥‥‥まさか‥‥‥男?‥‥‥いや。」
「女が一人で放り出されたんだから‥‥‥。夫の手から離れて自立するのは大変だったけど、もう‥‥‥ね。」
父 はその返答の意味がすぐには理解できないようだった。顔は見る見る間に青ざめ、体は小刻みに震え始める。‥‥‥自立?‥‥‥それは違うだろ、母さ ん‥‥‥。その時スーツの胸元が大きく開き、胸周辺のブラウスすべてが視界に入った。ブラウスを盛り上げる二つの乳房―――その先端には、繊維を突き破る かのような乳首がくっきりと浮き出ていた。
‥‥‥母さん、ノーブラ‥‥‥。母に性を意識してから初めてみる女体的部分に、玲二の胸は破れそうなほど高鳴る。
「玲二、水頼んであげようか?」
父から目を背けるように、遼子は空になったコップを手に取った。
「‥‥‥いいよ。」
「そう。」
コップを元の場所に戻すと、傷つけまいとする優しげな笑顔をふたりに向けた。
「身勝手なのかも知れないけどもうちょっとふたりには素直になってもらいたかったわ。」
食べかけの食器を綺麗に直し、続ける。
「何かをして欲しかったらしてって、遠慮なく。もっと希望を口にして欲しかった。素直に。」
「今したじゃないか!」
「‥‥‥そんなのじゃないのよ。‥‥‥さぁ、少し早いけどもう出ましょう。」
別 れたときのことを言っているのだろうか、玲二が帰ってきて欲しいと口にしなかったことを言っているのだろうか。遼子は具体的なことには触れず、席を立っ た。‥‥‥あいつは‥‥‥永井は‥‥‥なんでもしろって口にするんだろうな‥‥‥。父はすがるような目つきで母の身体を追う。しかしその身体は、息子の同 級生永井と少年達に弄ばれている身体なのだ。放心して席を立とうとしない父を置いて、玲二は母を追いかけてゆく。‥‥‥母さん‥‥‥オレの優しい母さ ん‥‥‥。玲二の脳裏にビデオのことが浮かんでくる‥‥‥。バスルームから出ると、カメラはまたベッドを撮した。そこに全裸のままの遼子と少年が入ってく る。一目見てやはり特徴的なのは体格の差だった。どこから見ても大人の女性と、骨格から肉付きまでどう見ても小学生の、性区別もつかないような少 年。‥‥‥どういうフィニッシュで終わるのだろう‥‥‥。玲二は結合を果たせそうにないふたりの展開を予想した。‥‥‥出すのだってきっと無理だ。でも、 それも母さんの優しさがどうにかするのか‥‥‥?
『せいくんは射精したことあるの?』
ベッドに腰掛け、遼子は横に座った少年に尋ねた。
『射精って何だ?』
『その、赤ちゃんのタネ出すこと。チンチンからピュッピュッって。』
『あるよ。白いのだろ。兄ちゃんの友達に‥‥‥。』
少年はそこまで言うと、マズイという表情をカメラに向けて口ごもった。母はそんな少年に肩を寄せ、同じようにカメラの方を向いて優しく責めるような視線を投げかけた。
『ふぅん、悪いお兄さんね。まだこんな子供なのにそんなこと教えるなんて‥‥‥。痛くなかった?』
玲二はカメラに向ける母の視線に戸惑った。たわいもない悪戯がバレてしまったときのような、半分笑みのこもった挑発的な表情。きっと母とカメラを持っている男の間では、視線で卑猥な会話が交わされているに違いない。
『別に痛くないけど‥‥‥。変な感じした。』
『変な感じってどんな感じ。気持ちよかった?』
『うん、まぁ‥‥‥。』
少 年はその時のことを思い出すように曖昧に返事した。股間から鋭角にそそり立つチンポは、変わらずに少年なりの硬度を保っているようだ。未成熟な他人のチン ポの勃起を見る不思議さと、そうしたのが横に座る母の肉体なのかと思うと、玲二は人間の本能的な淫靡を感じる。閉じられた膝の根元に見える無毛の下腹部 と、それを狙うような幼性器が並ぶだけでも、熊田が言っていた言葉の意味がよく分かった。四〇数年生きてきた我が母体に少年は立ち向かえるのだろうか。そ の結果に対する興味がどんどん大きくなっていく。もちろん母の身体を大切に思う気持ちも強くあり、複雑な思いが下腹部に集中した。
『ふふ‥‥‥。』
遼 子は少年のチンポに手を伸ばし、上品な手つきで上下にさすった。少年は特別の反応を示すわけでもなく、バスルームの時と同じように身を任せる。母の手つき が根元を主にまさぐり、亀頭を被う皮をどうにかしようとしていることが玲二には分かった。しばらくそれを続け、段々少年の顔が上気してきた頃に母は上半身 を倒して、少年の股ぐらへ唇を近づけ、それを口に含んだ。カメラは急いでそばにより、母の頭全体が映らないくらいにアップで撮し始める。
『チュパ‥‥‥チュパ‥‥‥。』
母の口から漏れてくる液体の音がすぐ間近から聞こえてくるようだった。アップにされたせいで母の顔の皺が少々目立ち、少年のみずみずしい肌との違いが際立って見える。女性らしさを感じさせる唇は少年のチンポを優しく包み、刺激を与え過ぎないように注意を払っているようだ。
『おばさん、き、汚ねーな。なにしてんだ?』
フェ ラチオの意を知らない少年がもっともなことを聞いた。汚いというのは、自分のチンポが舐められて汚される事を言っているのだろう。しかし遼子は気にせず顔 全体を股に近づけ、少年のチンポすべてを口内に埋めていく。玲二はそんな母に女の哀れみを感じるとともに、口内にすべて入ったチンポの断面図を想像し、血 がさらに上っていくのを感じた。
母の揃えられた髪が揺れるとチンポが隠れ、唾液に濡れそぼってまた出てくる。
『気持ちいい?良くない?』
『ん‥‥‥まぁ、なんか変な感じ。』
その返事を聞いた遼子は悪戯っぽい笑みをカメラに向け、またチンポをしゃぶり始めた。
デッ キのタイムカウントがどんどん進んでいき、気がつくと5分ほども少年は母の責めに耐え続けていた。‥‥‥まだそんなに目覚めてるわけじゃないのか‥‥‥。 どんどん高鳴っていく鼓動に、玲二の方はもう爆発寸前にまで高まっていた。‥‥‥でもこんなガキに負けるわけには‥‥‥。年齢的プライドだけを頼りに玲二 のチンポは噴出を抑える。そんなものがまだ自分にあったとは驚きだった。
『すごいわ、せいくん。こんなに我慢できるなんて‥‥‥おばさん、本気で惚れちゃう。』
『‥‥‥?そっ、そっか。』
カメラが少し離れてベッド全体を撮すと、上半身を倒したため横に張り出した母のヒップがとても強調的に映った。玲二が憧れ、焦がれた遼子の尻だ。息子である自分の物と思っていたその身体が、いま見知らぬ少年の前にある。
『せいくん、それじゃあおばさんのアソコ、見てくれるかな。』
少年の横にまた座り直し、遼子が少年に聞いた。少年も玲二も当然視線は母の下腹部、太股によって隠された三角地帯へと向く。
『あ、ああ。』
少 年がカメラの方を気にする素振りを見せながら頷くと、遼子は少し嬉しがって膝を引き離し始めた。‥‥‥とうとう開いていく‥‥‥ガキの前で開いてい く‥‥‥。全開に開けるようにとベッドに浅く座り直して、遼子の脚はどんどん開かれていく。そして現れたそこに、横に座る少年も、玲二も、カメラもが引き 寄せられた。‥‥‥マンコ‥‥‥。玲二の頭にその一言だけが浮かんだ。丁寧に剃毛されたその部分にはパックリと割れた陰裂しか存在せず、老けようが歳をと ろうが変わらない原点の女を意識させた。
『女の子みたいでしょ、おばさんの。』
恥ずかしさを隠すように母は明るく笑った。母のそこは少女のように一本の縦筋が通っているというわけではないが、内部から少しはみ出た肉片がまるで誘っているようで、とても卑猥に見える。玲二は無くなってしまった母性的な陰毛を思い出し、胸がチクチクと痛んだ。
『どう?‥‥‥って聞いていいのかな。ふふ。』
誰に言ったのか、幾分声が高くなった母が聞いた。
『き、きもい‥‥‥。』
『きもい?気持ち悪い?‥‥‥ふふ。』
カメラはアップのまま、しばらく母の性器を撮し続けた。少年もおそらく母の横から覗き込んでいるのだろう。玲二は無毛に変えられてしまった母の性器を見て、その構造から受ける直接的なアピールに爆発してしまいそうだった。‥‥ここからオレは生まれた‥‥‥。
玲二は呼吸に合わせて微妙に動く母の性器を、様々な思いの中見つめた。
『もういい?』
ふ たりに向けて言ったのか、カメラがそこから離れると、遼子は満足したか尋ねるように少年とカメラを見つめた。おそらく初めてそこを見た少年は、呆然とした 表情で半開きの口を閉じようとしない。そんな少年が可愛くてたまらないという風に、母は優しく自分の胸へ顔を押し付けた。
『ん‥‥‥。』
少年はいやがる素振りを見せず、母の弾力に身を任せる。母に促されるまま乳首を口に含む姿を見ると、本当の親子のようにしか見えなかった。
『おっぱいも、もういい?』
『あ、ああ。』
『そう、ふふ。』
力強く乳首を吸い続けた少年が離れると、遼子はカメラの方を向いて可愛くてたまらないといった感じで笑った。
『じゃあせいくん。おばさんと愛し合いましょうか。』
『どうすんだ?』
『ふふ‥‥‥。おばさんとね、合体するの。それで身体の中で愛し合うのよ。』
少年は母の言っている意味が判らなく、キョトンとした表情をしている。母との度重なる接触がリラックスさせたのか、勝ち気な瞳は幾分和らいで見えた。
『わからない?そりゃそうよね。‥‥でもね、早くしといたら、みんなに自慢できるわよ。』
『?』
『ふふっ。』
遼子は恥ずかしいことを言ってしまった自分を嘲るようにまたカメラの方を向いた。
『さぁおいで。おばさんがうまくしてあげるから。』
遼子は枕元に移動し、その目の前に少年はあぐらをかいた。
未だ主役の存在だと気づいていないのだろうか、少年はチンポを無防備にさらしたままだ。
『ほら‥‥‥あっ、ごめん。中は見せてなかったわね。』
少年とカメラの男両方に謝って母は膝を立て直し、自分の手で性器を開いた。カメラが見えやすい場所に移動し、少し離れてはいるが鮮やかな母の内部が画面中央に広がる。
『ほら、中身はこうなっててね、穴がこことここに‥‥‥ね?女性にはね、穴がいっぱいあるのよ。』
女性器のすぐ下にあるアナルもさらし、遼子は大したことでもないといった振る舞いで少年に説明した。膣を解らせるために少年の指をそこに挿入させた時には、ベトベトに濡れた指の処理に困る少年が滑稽だった。‥‥ホ、ホントに、ホントにするつもりなのか‥‥?
玲二には信じることが出来なくても、もう本番は目の前に迫っている。
『この穴にね、チンチンを突っ込めば‥‥‥愛し合うことになるの。すごいでしょう?』
『チ、チンポ?なんでそんなことすんだ?』
『ふふ、それはね‥‥‥まだ知らなくてもいいの!』
遼子は少年のおでこをつつき、クスッと笑った。やはりどこか少年とのセックスを本気に受け取っていないように見える。
『なんかスゲー事?』
『そう、すごい事。身体の中にチンチン入れて、赤ちゃんのタネ出したらね‥‥‥大人ではね、愛し合った事になるのよ。』
遼子は少しだけ恥ずかしがった素振りで足を閉じ、少年の顔を覗き込んだ。そして一呼吸置いてから口を開く。
『じゃあ、せいくん。おばさんに入れてみましょうか。』
『うん。おばさんの中に出せばいいのか?白いの。』
『そうね。‥‥‥う、うん。』
重 大さが解らず無邪気な少年に、母は少し戸惑った表情で返事をした。‥‥‥母さん、ホントにこんなガキと‥‥‥?でも無理だよ‥‥‥いくら母さんほど大らか でも‥‥‥。モニターのふたりに見入っていた玲二は、とうとう来たその瞬間に下を向いた。少年よりも遙かに成熟したチンポはズボンの中で息づき、爆発を 待っている。‥‥‥オレよりも‥‥‥こんなガキの方が早く‥‥‥チャレンジする‥‥‥。殺意にも似た激しい嫉妬の中、しかし別の感情が心の奥底から激しく 込み上げ、玲二の意識をすべて覆った。ヒロインの息子としては許し難い感情だが、そうあって欲しいと願い始めた。画面の中の母はベッドに寝そべり、蛙のよ うに脚を開いて少年を自らへ誘っているところだった。
『いらっしゃい。多分、もしかしたらチンチンが痛いかも知れないけど、中に入れたら動かさなくていいからね。』
母 のそこにコントロールしようとする少年のチンポには、まだしっかりと皮が被さっている。いくら母の柔らかな体でも、挿入時に皮が捲れ上がってセックスは不 可能だと玲二は予想した。‥‥‥でも‥‥‥でも‥‥‥!十cm、五cm、三cm‥‥‥。突起のない母の股間へ突起のある少年が近づいていく。腰回りは遼子 よりも遙かに細く、全開にされた股間との迫力の違いがこれ以上ないくらい不自然に見えた。
『痛っ!』
玲二の予想通り少年の最初の突入は失敗に終わった。柔らかそうな性器に触れたが侵入は果たせず、少し陰唇を開いただけだった。遼子は少年を思いやるような素振りを見せたが、そのままの姿勢でさらなる少年の行動を待つ。
『ゆっくりでいいからね、せいくん‥‥‥。』
カメラがさらにふたりのそばへ寄り、下腹部をアップにする。負けん気が強いのか、少年は先ほどよりも力のこもった腰使いでまた母に挑んだ。‥‥‥あっ‥‥‥!!!
『にゅる』
そんな音が画面から聞こえてきたわけではない。ただ、玲二の頭で表現するならそのような感じだった。少年の鉛筆のように細いチンポは母の陰唇を開き、膣をえぐり、周りの肉を引き連れるように母の胎内へと消えた。
『いい?おばさん、これでいいか?』
『‥‥‥うん、いいわ。うまくできたね。』
何 かに耐えるような声で少年が母に聞くと、母は慈愛のこもった声で応える。カメラが少し引いてふたりの全身を映すと、母は自分の膝の側面を持ち、横へさらに 大きく脚を開いていた。その為にあまり圧力を受けずに少年は挿入できたのかと思うと、玲二は不思議に満たされた気がした。‥‥‥そうだ‥‥‥母さんはそう やって優しく‥‥‥なんでも受け止めてくれて‥‥。少年は腰の律動を始めない。遼子も脚を開いたままぴくりともしない。カメラの方を意識したりお互いを意 識したりと視線は動きながらも、少年と母はひとつになっていた。カメラがふたりが繋がる下半身に移動し、その部分を後ろからアップで撮す。
真ん丸 な尻の中央に少し輪郭が飛び出した肛門があり、その上部には肉の丸い輪郭とともに、それに包まれる少年のチンポがあった。玲二は前のビデオとは少し変形し たように見えるアナルに注目したが、母のプライドを思い、あまり意識しないようにした。‥‥‥変な感じだけど‥‥‥そこは関係ない‥‥‥。長い間ふたりは そのままの体勢を保ち、カメラが横に戻ったのを確認してから母が少年に何事かを囁いた。少し渋った後少年が女体から離れ、遼子は紅潮した顔で少年に向かっ て四つん這いになり、尻を向けた。
『次はこっちから、ね?』
『さっきと同じでいいのか?』
『ええ。いらっしゃい。』
カメ ラがまるで玲二の意識を汲み取ったように遼子の尻に斜めから近づき、それに健気にも立ち向かおうとする少年の姿を同時に撮す。画面の中央には母の秘密の部 分がすべて映り、中央周辺が盛り上がって強調されるアナルの下に、唇のような母の性器があった。少年は震える手つきでそこに向け、自らの照準を合わせてい く。
『お尻と間違えたら大変ね‥‥‥。』
母が心配げに誰かに尋ねる声が聞こえたが、少年は自分の手つきに集中し、そして母の入り口を見事 に捉えた。細く短いペニスは見る見る間に母の肉に埋まり、そして、またふたりの時間は止まった。母の尻には小さすぎる手のひらがしっかりと添えられ、カメ ラが離れた真横から繋がっている姿を映すと、貧弱な少年の身体に遼子が強く尻を押し付けているのが分かる。‥‥‥心配性で、でもちゃんと人を立ててくれ て、誰でも平等に扱ってくれて‥‥‥。尻を少年に与える母の姿に、家にいた頃の清楚な面影はないように見える。
『あっ!』
しばらくして突然、少年が下を向いて叫んだ。その切羽詰まった声に母は身体を引こうともせず、膝の角度を変えてさらに尻を押し付ける。
『あ、ああっ!!』
断 続的な少年の声が響いた。母には何が起こったかが分かっているのか、少年の腰をしばらく見つめ、そしてホッとしたような笑みをカメラに向けた。その微笑み は、究極の繋がり合いの中にしてはとても母性に満ちあふれていて、玲二は唇を噛んだ。‥‥‥無理でも、きっと母さんならセックスさせてやれると思っ た‥‥‥。少年が腰が抜けたように母から離れると、カメラはその場所に向かって素早く移動した。ベッドが軋み、真後ろにいた少年がカメラによって引き離さ れると、少年に挿入されたままの姿勢で母の性器が大写しになる。花びらのような陰唇、少し黒ずんでいる性器周辺、挿入を受け止めた穴。しばらくして少し開 いた膣から白濁とした液が大量に流れ落ち、性器を濡らしながらベッドに流れ落ちた。糸を引くようなドロッとした垂れ流れ方が、その液体の密度の濃さを物 語っているようだった。チンポが幼くても残滓を見ると完全な体液レベルの結合で、年齢など関係ないその光景はさすがに玲二の胸にズシッと響く。
『‥‥‥うわっおばさん、きちゃねっ‥‥‥。それオレ出した?』
『‥‥‥そうよ。たっぷり出して‥‥‥ねぇ。』
『スゲ。』
‥‥‥ このガキを‥‥‥ホントに男にしてやったんだね、母さん‥‥‥。この少年の人生において、母の責任はとても重い気がする。しかし、それが母の優しさなのだ と思ったとき、いつの間にか玲二のズボンの中でも射精が始まっていた。‥‥‥変わってないよね、母さん‥‥‥変わったように見えても、何も変わってないん だよね‥‥‥ね?涙で画面が見えなくなっていき、そしてタイムカウントは止まった。‥‥‥きせきってのは軌跡、奇跡って意味で、s.o.ってのは‥‥‥小 学生とオバサン、少年とオバサン、だろうか‥‥‥。遼子はカウンターに立ち、ボーイに向かって精算しているところだった。
「あ、玲二。いいのよ、母さんが払うから。」
ボー イは目の前の女性が駆け寄ってくる玲二の母親と知り、驚いたようだった。今まで露骨に身体を見つめていた目つきが遠慮がちなものに変わる。玲二は母の後ろ に立ち、そのプロポーションにしばらく見とれた。立ち上がったとき、しゃがんだとき、椅子に座ったとき。誰かに見られるかも知れないタイトスカートの内部 はどうなっているのだろう。
「出ましょう。お父さんは‥‥‥来ないのね。」
遼子がカウンターを離れて出口に近づいたとき、玲二は確信しながら手に持った小銭を床にばらまいた。
「ご、ごめん。」
「もぅ、しょうがないのねぇ。」
と ても優しい微笑みを浮かべながら母がカウンター向きにしゃがみ、片膝をついた姿勢で上品に小銭を拾い始める。ちょっとした弾みに、豊満な尻の張力でずり上 がったスカートの隙間から内部が覗けた。玲二と若いボーイの視線はそこに注がれる。太股と下腹が寄り合って深く掘られた筋がはっきりと見え、目をつくよう な色合いの布は見えてこない。‥‥やっぱり母さん‥‥そうやって行けって言われたの?‥‥‥それでその通りに来たの?
母は大してスカートのことを 気にしていないようで、繊細な指先で小銭を拾い集めてくれる。目の前のボーイや息子の視線には気付いていないのだろうか。‥‥‥そんな姿で前の家族と会 えって‥‥‥挑発しろって‥‥?両股によってつくられる三角の肉筋は、下着によって隠されてはいなかった。遼子の出入り口であるその部分には、なにも身に 着けられていなかったのだ。Vゾーンの中央部分にまるで少女のように一本の縦筋が走り、母が女であることを誰の目にも明らかにした。‥‥本当に母さん、永 井のジュニアつくってるの‥‥‥?ボーイは目を見開き、信じられないものを見たような顔で硬直している。それを知ってか知らずか、すべてを拾い終わった遼 子はスッと立ち上がり、小銭を玲二に渡した。
「すいません。」
一度ボーイに会釈してから、遼子と玲二は出口に向かう。今、この男は母に激しく欲情しているはずと思うと、息子の自分の存在がとても屈辱的で、微妙に思えた。‥‥オレにじゃないけど‥‥‥そんな優しい母さんだから‥‥オレ‥‥‥オレ‥‥‥好きなのか‥‥‥。
「玲二‥‥‥ごめんね?今日は‥‥‥。」
母が歩道を歩きながら綺麗な横顔を向けると、玲二は改めて美しくなった母を認識した。先ほど見た縦筋が顔の上にだぶっていく。
「色々事情もあるし‥‥‥また戻るとなると‥‥‥ね?」
「‥‥‥母さん。」
「なに?」
「母さんは‥‥‥オレの母さんだよね。いつでも‥‥‥。」
「‥‥‥何言ってんの、当たり前じゃない。‥‥‥またいらっしゃいね。ホットケーキつくってあげるわ。」
息 子にとって、母の身体を味わわれる事は自分までもが凌辱されているに等しいということを、母は考えたことがあるのだろうか。しかし、そっと肩に手を回され るとそれだけで玲二は幸せを感じた。‥‥‥オレが好きになったのは、セックスをあいつらとし始めて綺麗になった母さん?‥‥‥でも、どんなことになったっ て、母さんはオレの母さんだ‥‥‥。母が去り一人残された玲二は、また止まらない涙があふれてくるのを感じていた。雨の日が過ぎ夏の空気が流れ初めてきて も、海山家に母の姿は戻らなかった。
「おはよ。」
「‥‥‥おお。」
高校が祝日の月曜日、玲二は眠い目をこすりながら食パンをトースターに放り込むと、父の横顔を見た。威圧的だった巨体がとても小さく見え、祐一の容貌は一気に老け込んだかのようだ。
「‥‥‥父さん。父さんは母さんと寄りを戻す気、まだある?」
「何度も言ったろ。母さんだからな。」
「そうか。‥‥‥うん、分かった。」
玲二は飛び出してきたパンにマーガリンを塗りたくり、一口に頬張った。‥‥‥今頃の母さんは、何をしているんだろう‥‥‥。ビデオを通じて母の生活の一端を知っている玲二は大きな溜め息をつく。
「‥‥‥ね、父さん。今日友達来るから。」
「ああ。あまり騒ぐなよ。」
「分かってる。」
祐一は興味なく聞き流し、テレビをぼんやりと見つめた。そんな父の姿が哀れで堪らない。
‥‥‥友達って言っても、事情を知ったらきっと許せない奴だろうに‥‥‥。玲二はもう一度父の横顔を見た。生命力と欲望に満ちあふれたアイツらと今の父さんを比べて、母さんはどちらを選ぶのだろう。
「おじゃまします‥‥‥。」
上目づかいで挨拶をしたふみやが靴を脱ぎ家に上がった。たまたま外出しようと玄関に向かっていた祐一に向かって発せられた言葉だ。
「お、おお。いらっしゃい。」
父はぼんやりとした表情で巨体を揺らし、階段に向かう廊下を空けてやる。そんなふたりを階段の上から眺めていた玲二は、父が譲る様子をとても印象的に感じた。
「さ、こっち。」
「ああ。」
ふ みやは一瞬祐一のことを振り返る素振りを見せた後、階段を登った。‥‥‥父さん‥‥‥コイツ知らなかったとはいえ、母さんとセックスしたんだよ‥‥‥。祐 一はふたりを振り返りもせず、玄関を出ていく。‥‥‥父さんがぼんやりしてるから‥‥‥優しい母さんにチンポを‥‥‥。この級友は父のことをどういう気持 ちで見たのだろう。玲二はやるせない気持ちでふみやを部屋に通すと、ベッドに座るよう言った。
「‥‥‥で、どうだった。」
「ん‥‥‥会ってきたよ。」
遠 慮がちにベッドの端に腰掛けたふみやは、部屋の中をキョロキョロと眺める。ふみやは昨日、遼子と二度目の対面を果たす日だったのだ。セックスはしない、永 井達となぜ付き合っているのかを聞き出すと約束したふみやを、玲二は家に招いた。母と級友が二人きりになってしまう不安に、激しく性器が刺激されていくの に気付きながら。
「‥‥‥じゃあ聞かせてくれよ。」
「あ、ああ‥‥‥。」
「言っとくけど、嘘はつかないで欲しい。騙されてて実は‥‥‥ってのは一番辛いからさ。オレのことは構わなくていいから。」
「そ、そうか。」
「‥‥‥大丈夫。もう母さんのマンコは見てんだから。ハッキリと全部喋ってくれ。」
「‥‥‥分かった。じゃあ、正直に話させてもらうから。」
毎 日のように再生する母のビデオのことが頭に浮かんだ。ときには映像の中の男になりきり、ときにはやるせなさに身を焦がしながら体験する、裏の現実。ふみや が母との時間を、その中で交わした会話を詳しく話し始めると、玲二の頭の中では客観的であるかのような映像が流れていく。ふみやが待ち合わせ場所に着く と、そこに一際引き立った女性が立っていた。ノースリーブのセーターに黒の薄いカーディガンを羽織った出で立ちは、紛れもなく『初めての女性である』遼子 だ。手を振って近づく熟女を見て、ふみやの視線は前会ったときのような黒のパンツに包まれた下半身に向いた。玲二には悪いと思うが、男としてしょうがな い。会ってくれてありがとうございます、とふみやが言うと、遼子はなんでもないといった感じに笑った。
「さぁ、行きましょう。」
少し戸惑 いを感じる動作で遼子はふみやの手を掴み、その場を離れた。行き着く先はホテル。その時点での時間は夜7時で、まだ周りは明るい。触れ合う遼子の身体が気 になりつつ、誘導されるままホテルに辿り着いたふみやは、話を聞くためにと小さなテーブルへ腰掛けた。そうしないとすぐにでもホテルの雰囲気に呑まれて、 行為が始まってしまいそうな気がしたのだ。
「ふふ。時間はたくさんあるから焦らずいきましょうね。」
微笑んで向かいのテーブルに座る遼子がとても魅力的に見える。それはそうだ、初めて関係を持った女性なのだから。
「あの、あの‥‥‥おばさん、ちょっと聞いていいですか。」
緊張しながらふみやが尋ねると、遼子は首を傾けて質問を促すポーズを取った。ふみやは何から尋ねて良いか考えがまとまらず、とりあえずなぜ自分とセックスしてくれたのかを聞いてみた。
「それは‥‥‥永井くんに頼まれたから。」
「じゃあなんで、永井なんか‥‥‥永井くんのことなんか知ってたんですか?」
「それは、ねぇ‥‥‥。」
遼子はその問いにはすぐ答えず、困った表情で俯いた。場所が場所だけにあまりマズイ雰囲気を作りたくなかったふみやは、すぐに話題を変える。
「あの‥‥‥じゃあ、オバサンは結婚してるんですか?」
「うぅん、別れたの。バツイチね。」
「子供、とかは‥‥‥。」
「いるわよー。あなた達と同じくらいのが。」
戯けたように語尾をゆっくりと言う言い方に、ふみやはようやく遼子が玲二の母親であることを確信した。それまでは正直なところ信じることは出来なかったのだ。遼子の脚が組まれていくのを、ふみやは不思議な感慨を抱きながら眺める。
『オレは玲二の母親とセックスしてしまった‥‥‥この身体でオトコに‥‥‥。』
そんな思いが頭をよぎっていく、もちろん玲二には悪いと思いながら。
「おかしいって思ってるんでしょう。子供と同じくらいの子とこんな事するなんて。」
ふみやは正直に頷いた。
「でもふみやくんは分かってくれたわよね?オバサンだってちゃんとした女だって。」
オホホホと笑う遼子にふみやは照れた。初めての時の性器に突っ込まれた自分のチンポが頭に浮かんで、目の前の女性と重なる。
「じ、じゃあ、オバサンは永井と‥‥‥永井くんの彼女なんですか?」
「オバサンと永井くんが?‥‥‥ふふ、何でそんなことばかり聞くの?」
「い、いや‥‥‥。」
ふみやは返事に窮し、曖昧に笑った。玲二の事は絶対に出すわけにはいかない、出せるわけがない。その時遼子が立ち上がり、ふみやの椅子の横でひざまずいた。
年輪を感じさせるが美しい顔が自分の脚のすぐそばに寄り、ふみやの顔をジッと見つめる。
「ねぇ、じゃあそろそろエッチしましょう。」
「え、いや‥‥‥。」
ふみやの頭に玲二の顔が浮かんだ。絶対に、絶対にそれは出来ない。玲二の母親だと分かってて出来るわけがない。
「あの、いや、今日は‥‥‥。」
「え?今日はどうしたの?」
恥をかかすわけにもいかないのでどう言い訳しようか悩むふみやに、遼子は立ち上がって微笑みの顔を向けた。
「‥‥‥そりゃあね、永井くんとはそういう関係だし、それなりの感情もあるわ。でも今日は永井くんとは関係ないから‥‥‥ね?」
遼 子は髪をかきあげ、ふみやの目の前でクルリと一回転した。普段女体のことしか頭にない高校生にとって、すぐ触れられる場所にある女性の誘惑は堪らないもの がある。玲二には申し訳ないが、一度経験した女性という言い訳も頭に浮かんでは消えていく。それでもふみやは椅子から動かなかった。セックスをするわけに はいかないからだ。すると遼子は少し眉を下げ、まるで機嫌を取るかのようにふみやの前へ人差し指を向けた。
「ね、それじゃあこうしましょうよ。‥‥‥オバサンの今日のパンツ、どんなのだか当ててみて?」
「え、ええっ!?」
驚くふみやに遼子は悪戯っぽい笑みを浮かべて続けた。
「もし当てられたら‥‥‥この場ですぐにセックスさせてあげる。もちろん『そのまま』でね。」
唖 然とするふみや。『そのまま』とは‥‥その意味は、何も着けずにナマでという事ではないのか。ふみやの頭に性交の本質のようなものが渦巻いていき、ふみや はそれに抵抗しようと激しく首を振った。しかし目の前には黒のパンツに包まれた重量感のある大人の腰。壮絶な本能との闘いが始まっていく。
「‥‥‥ヒントあげるわね。」
動揺するふみやを面白がるかのように遼子は後ろ向きになり、ヒップを顔の方に向けた。
「ライン浮いてこないかしら?ものすごくエッチなのよ。」
こ の状況を何とかしないといけないと思ったふみやだが、スケベと言うよりも、どうにか気を引こうとする遼子の健気な気持ちも感じ身動きできなかった。親友の 母親である女性に恥をかかすわけにもいかないのだ。目の前に張り出されたヒップを見ても、下着らしきラインは浮き出ていない。
「どう?分かる。大体でいいから。」
「い、いや‥‥‥。」
「じゃ、もうちょっとヒントあげるわね。‥‥‥ふふ、もしスカートだったら大変なことになっちゃう。これでどう?」
覗き込む遼子の視線に堪えられず、ふみやは適当に答えた。
「黒、ですか?」
「うぅん‥‥‥、ま・ち・が・い。でも、もう一回チャンスあげるわね。」
オバサンは本当に『ナマで』セックスさせてくれる気だろうか。そうとしか、誘導しているようにしかふみやには思えない。まるで、コミュニケーションを図る最善の方法であるかのように。
「着けてるとは限らないのよ。もしかしたらエッチな子のためにオバサン‥‥‥すぐ出来るようにって、準備してたかも。」
「ノ、ノーパンですか!?」
「そうよ、当たり!‥‥‥ふふ、じゃあ約束通りすぐさせてあげるわね。」
驚 愕の表情を浮かべるふみやの前で、遼子は腰を振りながらパンツに手をかけ、づり降ろした。すると目の前で皮を剥いたように現れる、真っ白で大きく、深いク レヴァスが走ったヒップ。歳が離れていようが、友人の母親であろうが、それは紛れもなくひとりの女の肉体だとふみやは思った。
「‥‥‥で?」
汗ばんだ両手を握りしめ、玲二は静かに尋ねた。頭の中にはふたりの情景が現実であるかのように映し出されている。きっとふみやが抱いているであろう感情もそのままに。
「‥‥‥おばさん、ズボン全部脱いでからケツ向けて四つん這いになるんだ。‥‥‥目の前でさ。」
淑やかだった母が頭の中で尻を向け、友人の前でひざまずいていく。
「全部見えてんだぜ!?マンコも、ケツの穴だって!そんな真似されて‥‥‥。」
‥‥‥完全に侵略を受け入れる姿勢じゃないか、母さん‥‥‥。
「ケツだって死ぬほど大きくて‥‥‥『早く』って、目見られてさ‥‥‥。」
「やったのか?」
「‥‥‥‥‥‥悪い。いけないとは思ったんだ!‥‥‥でも‥‥‥でも‥‥‥。」
「‥‥‥どうな風に?隠さずに言ってくれよ‥‥‥。」
「すぐズボン脱いで‥‥チンポど真ん中に合わせて‥‥。そしたらニュルって感じで‥‥。」
「すぐイッたのか?」
「‥‥‥ナマはさすがにマズイって思ったんだ!ホントだぜ!?‥‥‥でも‥‥‥。」
ふみやはずっと俯いたまま話した。
「ただ女のケツって幅があるんだなってのと‥‥‥絨毯で膝が痛いってのと‥‥‥肌触りや中が生暖かかったってのしか‥‥‥覚えてない。」
二人は押し黙り、部屋に静寂が流れていく。
‥‥‥同級生のコイツのチンポは母さんを知ってて‥‥‥息子のオレは知らない‥‥‥。
ふみやのジーパンを見ると、明らかに勃起を示している。
「‥‥‥それからのこと、話してくれよ。まだあるんだろ?」
「‥‥‥玲二‥‥‥。」
「いいんだ。‥‥‥本当はぶん殴ってやりたいけど、もうだいぶ慣れたから。」
交 わったことを告白して幾分楽になったのか、ふみやは多少歯切れの良くなった口調で続きを話し始めた。事が終わり、順番にシャワーに入って全裸になった二人 は、一緒にベッドへ寝そべった。まだチェックアウトまでの時間は十分ある。性交を達成して芽生えた連帯感と玲二に対する罪悪感から、ふみやはまた遼子に尋 ねた。
「その‥‥‥なんで永井なんかと知り合ったのか教えてくれませんか。」
遼子は剥き出しの裸を少し気にしつつ、気を許してくれたのか口を開いてくれた。
「最初はね、無理矢理で‥‥‥。」
「無理矢理って‥‥‥レイプですか?」
「そう‥‥‥。少しだけ塾の講師してたときがあって、その時の生徒に永井くんたちがいたのね。彼らには気にくわない先生だったみたい。」
やはりそうか、と思ったふみやだが、それならなぜ今のような関係になったのだろう。脅されているのか。
「うぅん。そりゃ初めは嫌いだったけど、関係していくうちに‥‥‥愛情が芽生えちゃったって言うのか。」
遼子はふみやの方を向いて笑った。少し頬が赤くなっているように見える。
「変でしょう?こんなオバサンがねぇ。」
「い、いえ、オバサンなんて‥‥‥。」
満足させてもらった身体を蔑んで欲しくないとふみやは思う。
「でも永井はこんな事させてんですよね。他人とヤラせたり‥‥‥。」
「そうね。悪い子だわ!‥‥‥ふふ。」
「なんか他にされたりしましたか?ムチャクチャな事とか‥‥‥。」
遼子は少し困った表情をして眉を下げた。
「うん、そりゃあ色々‥‥‥。でもね、あの子達素直なだけなのよ。ふみやくんもそうだけど、求められるとしてあげたくなるの。それに‥‥‥色々援助もしてくれるから。」
ふみやは『あの子達』という表現や『援助』という言葉が気になったが、あえて聞かなかった。受けた色々な行為とはどんなことか、具体的に尋ねてみる。遼子がこうなってしまった経緯や、玲二に知らせるべき情報が聞けるかも知れないからだ。
「そうねぇ、例えば近いところで。この前、温水プールに行ったのよ。永井くん達3人と私で。」
「ええ。」
「プールって言うか、半分お風呂みたいな所なんだけど。‥‥‥でね、水着は用意してるからって言うのね。女物のよ?」
聞きたい話とはちょっと違うと思いながらも、ふみやは話を合わせる。
「ああ、この前出来た所ですか。色々な風呂やプールがあるっていう‥‥‥。」
「そうそう。それでその水着を見てみたんだけど‥‥‥分かってはいたんだけど凄くて。」
遼子は思い出したのか顔を振って照れた。
「どういう風に‥‥‥ですか?」
「ほら、私‥‥‥毛がないでしょ?」
「‥‥‥はい。」
視線を下腹部へ向けた。そこには大人の女としてはあまりに不自然な、無毛のまま脚の間に消えていくなだらかなラインがある。
「だからハイレグは覚悟してたんだけど‥‥‥そうじゃなくて、紐みたいなのね。」
「紐‥‥‥ですか?」
「そう。って言っても、股の部分や胸はどうにか隠してくれるんだけど、身体に回す紐が複雑に交わってるの。こんな風に。」
遼子は自分の身体を指でなぞった。要するに、胴体部分を網目のように紐でくるみ、それに重要な部分を隠す布を結びつけるタイプらしい。
「色は黒なんだけど、露出は多いし目立っちゃうしで、恥ずかしくて‥‥‥。」
オバサンと高校生3人という組み合わせに違和感はなくても、そのオバサンが身に着けた水着が露出度の高いものだったら。やはり遼子が歩くと、周りの客からの視線が突き刺さったらしい。
「でも、それだけならまだいいんだけど。しばらくお風呂入ったりしてたらね‥‥‥イタズラするようになっちゃって。」
「いたずら‥‥‥。」
「お湯の中で水着を解いてきたり、触ったり。裸になったらいけないところなのに‥‥‥ねぇ?」
遼子は明るく笑った。そこまで嫌な出来事だったというわけではないらしい。そんな行為に慣れているのか。
「触ったりもされたんですか?」
「そりゃあもう‥‥‥。胸なんか触り放題よ。」
ふみやは、今まであまり意識していなかった遼子の胸を眺めた。寝ているのでそれほどボリュームは感じないが、大きめの乳首と色合いがとても印象的だ。
「一番びっくりしたのがねぇ‥‥‥。水の中で水着を解かれても、いつも気付いて直してたんだけど、前の方だけそっと結び目を解かれてて。」
「前‥‥‥ですか?」
「下の水着は前とお尻とで別々に紐に結ぶのね?その前の部分だけを‥‥‥。」
「じゃあ‥‥‥?」
「そう。全然気がつかなくて、お風呂から上がったら嫌に子供達が私を見るなぁって思ってたら、前だけペローンって。すぐに結んだけど、手が巧く動かなくて困ったわぁ。ホホホ。」
笑えるようなことではないと思うが、遼子は口に手を当てて笑った。どこか大人の上品さを感じるその仕草に、ふみやのチンポは腹を突くほどに起き上がる。しかし、それが自然な姿に思えたので隠そうとはしなかった。
「他には、水着を取ってそのまま上がってこいだとか、水着奪ってどっか行っちゃったりとか、もお‥‥‥。あの時は毛がないってことが本当に恥ずかしかったわぁ。」
「‥‥‥オバサン。毛がないってのは剃ってるんですよね。」
「そうよ。‥‥‥変よね、こんなオバサンに毛がないのって。」
「永井に剃られたんですか?」
「‥‥‥ええ。すぐ生えるだろって。でも、剃ってからはずっとツルツルにしとけって言うのよ?」
ふみやは永井の気持ちが分かる気がした。きっと永井はこの熟女が自分の女であることを証したいのだ。他の男にも、遼子自身にも。
「‥‥‥プールではしたんですか?」
「なにを?」
「セックス。」
「‥‥‥ええ、まぁ。水着取らないでって言ったらオレに逆らったなって、端っこの方で‥‥‥。冗談ぽくよ。」
「永井と、ですか。」
照れ笑いを浮かべる遼子を見て、ふみやの頭にその時の情景が浮かんでいくようだった。
仲間が囲む中央で白く柔らかな尻を向け身体への入り口をさらけ出すと、後ろから当然のように永井の浅黒くて硬質な肉体が繋がっていく。ヒップを隠す背面の水着をほどくだけで、すぐに結合できただろう。そして当然フィニッシュは、無防備な体内へ‥‥‥。
「‥‥‥あの‥‥‥オバサン。こんなこと聞いちゃいけないのかも知れないけど‥‥‥。」
「なに?」
遼子は首を横に傾け、ふみやの顔を覗き込んだ。
「その、ナマでセックスしたら子供が出来るんですよね。」
「‥‥‥受精したらね。」
少し間を置いただけで、何ともないように級友の母親は言う。
「‥‥‥オバサンは大丈夫なんですか?さっきのオレとのだって‥‥‥。」
「ふふ、どうかしらねぇ。おばさんもう歳だし、うまく受精するかなぁ‥‥‥。永井くんは作るって言ってるんだけど。」
「分から‥‥‥ないんですか?」
遼子は小さく笑い、身を乗り出してふみやのペニスを掴んだ。
「分からないって‥‥‥?」
玲二は手の震えが止まらない状態でふみやに尋ねた。母の気持ちがどれほどのものなのか、この答えで分かる気がする。
「いや‥‥‥。『避妊無しにしてる事には違いないんだから、若い子の元気のいい精子だったらもしかしたらね』って。‥‥‥それで。」
「それで‥‥‥?」
「フェラしてくれた。‥‥‥悪い、玲二‥‥‥。でも、冗談ぽく言ってたか本気じゃないさ。」
玲 二は唾が喉に詰まって窒息してしまいそうだった。‥‥‥本気じゃない?そんなこと、妊娠する訳じゃないオマエに何で分かるんだ‥‥‥?無責任な男の身勝手 さというものにやるせなくなってくる。‥‥‥母さん‥‥‥母さんは本当に妊娠しても構わないってくらい身を任せきってるの‥‥‥?激しくチンポが律動し絶 頂を間近に示した。ふみやを見ると、玲二の顔を見られないのか俯いたままだ。‥‥‥そんな母さんにオレと父さんは会った‥‥‥。レストランで家族みたいに 食事をした‥‥‥。玲二はそこで見た母の割れ目を思い出し、何かが弾けた気がした。次の瞬間、全身を瞬く間に襲う、嫉妬と快楽が入り交じった激しい絶頂。 きっとこの世の誰にも分かることのない、激しすぎる射精がズボンの中で巻き起こっていく。
「玲二‥‥‥?」
「ハハ。」
ジュ ウ‥‥‥ジュウ‥‥‥ジュ‥‥‥ジュウ‥‥‥‥‥‥‥‥‥優しいだろ母さんは。そんな最後まで性体験させてくれる女なんて‥‥‥他にはいないぞ‥‥‥。絶 頂の最中いつの間にか流れ落ちた涙が、ジーパンの上へシミを作っていく。遼子を大事に思う気持ちと優しさを享受したい気持ちが、玲二の胸をいっぱいにさせ た。‥‥‥お願いだ母さん‥‥。その優しさをオレにも‥‥‥。それからの記憶は無かった。初夏が訪れて学校は休みに入り、玲二はふみやや永井と顔を合わす ことが無くなった。母と関係した憎い男達を見なくなって心が安まるかと思いきや、そうなると逆に今までよりも強い焦燥感が募ってくる。母は今何をしている のか、何をされているのか。顔が見えている間は、どこかまだ繋がっている気がしていたのだ。今は全く情報も入ってこず、母は違う時間を生きている。‥‥‥ 会いに行きたい‥‥‥。そう思っても、もし永井達や『せいくん』と呼ばれていたあの少年と出くわしてしまったらと思うと、それもままならない。母と関係し た奴らには男として負けているという感覚が身について離れないのだ。‥‥‥オレの存在はバレているのだろうか。好き勝手してる女の息子のことは‥‥‥。そ んな中でも父の祐一は、遼子のことを諦める素振りを見せず頻繁に電話で連絡を取っているようだった。もちろん、今の母の生活は知らない。そして悶々とした 夏休みは明け、2学期が始まった。もう永井達と付き合うのをやめたというふみやや、すれ違うだけの永井を見る度に思い起こされるのは、母の痴態。‥‥‥会 いに行きたい‥‥‥でも怖い‥‥‥。そうこうしているうちに受験シーズンも始まり、毎日に追われて母に会うこともないまま年は過ぎて、1月―――。一日た りとも母のことを忘れていない玲二に、満面の笑みを浮かべた祐一がある知らせを持ってきた。
「母さんが会ってくれるそうだ。‥‥‥仲直りを前提として、な。」
当然玲二は喜んだ。毎日夢に見ている遼子に久しぶりに会えるのだ。親子にも関わらず、まったく共有しない時間が流れていることに玲二は堪えられない日々を送っていた。聞くと父は執拗に母の居場所を突き止め、強引に母を連れ帰ろうとしたこともあったそうだ。
‥‥‥永井とのこととかなんて、もうどうでもいい。母さんと会えるならそれで‥‥‥!
「久しぶりだから、会えば色々驚くこともあると思うが‥‥‥。それでも父さんは母さんとやり直すつもりだ。」
そう言い切る父の姿は、永井達に比べても生命力に満ちあふれているように感じた。それから3人で会うと約束したその日まで、玲二は暇が有ればセックスビデオを見て過ごした。
無避妊に少年を受け入れ、大らかさを見せつける母の姿を。どんなに卑猥な映像であろうとも、それが母の真実であり優しさなのだ。そして母と会える日。寒空の中を現れた遼子は、以前会ったときよりもビデオで見るよりも、ずっと成熟した大人の美しさを感じさせた。
「久しぶりね、玲二。」
皺は多いが端正な顔に見とれながら胸に差し出された手に身を任せると、どこからか漂ってくるフローラルの香り。その匂いにつられるようにゆったりとしたスカートに目を向けると、母の下腹部がほんの少し丸くふくらんでいるのに気付き、息を呑んだ。
「‥‥‥!」
「玲二。」
「‥‥‥玲二。母さんも一人じゃ生きられなかったんだ。」
なだめるように言う父の声は耳に入ってこない。永井達との関係を知ってからもっとも顕著な母の肉体的変化と、別々で過ごした時間の重さが胸を圧迫していく。
「‥‥‥そっか。」
玲 二は両親に聞こえない声でつぶやいた。‥‥‥悔しいけど‥‥‥ムチャクチャ悔しいけど‥‥‥母さん、とうとう誰かと究極的に結びついちゃったんだ‥‥‥。 永井とはどうしたのか。捨てられたのか。父の気持ちは。様々な思いが頭を駆け巡って、遼子の腹を見つめた玲二の感情を奪っていく。そんな息子を見る、以前 と比べて色気を増した遼子の微笑みには、戸惑いの色は見えなかった。海山家に母の姿が戻った。朝起きると台所にはゆったりとした服をまとって食事の準備を している母がいる。玲二にとってその光景は、幸せと微妙な辛さを同時に感じさせるものだった。母のお腹には子供がいる。誰のだか分からないが、しかし、 きっと知っている男の子供が。
「玲二、はい。ご飯よ。」
「ああ‥‥‥。」
玲二はぶっきらぼうに母から茶碗を受け取った。息子とし て、身重の母とどう接して良いのか分からないのだ。それは、あんなに母を求めていた自分の態度とは信じられなかった。あんなに優しさを享受したいと思って いたのに。遼子はそんな息子の葛藤を察してか、事あるごとに母親としての優しさで玲二に触れ合おうとする。それがまた辛い。‥‥‥母さんはオレが母さんの 生活を知ってること、知ってるのかな‥‥‥。何度も考えた疑問だ。
母とも父ともまだ子供のことについては詳しく話していない。問い詰めようともせずやけに物分かりの良い息子を、二人はどう思っているのだろう。もし子供のことを話すとしたら、どう説明する気だろう。‥‥‥いや、いいんだ。いいんだ‥‥‥。
「え、玲二。もうご飯いいの?」
「ああ。勉強するから‥‥‥。」
「そ、そう。頑張ってね。」
遼子はテーブルに手をついて一緒に立ち上がる素振りを見せ、心配そうに玲二を見送った。
そ んな二人を見て、父の祐一は溜め息をつきながら新聞を眺める。その溜め息が家族の間にあるわだかまりを現しているようで、玲二の心に残った。‥‥‥要する に、どうしようもないってことなんだよな。部屋に入った玲二はテレビの電源を入れ、その下に置いてあるビデオのスイッチも入れた。そして本棚の裏に隠して あるビデオテープを一本取りだし、慣れた手つきでデッキに差し込む。リモコンの再生ボタンを押すと、機械音とともに映し出される肌色の映像。そこに映る、 他人のすべてを受け入れる全裸の女性の姿こそが、母のすべてだった。玲二はパンツを脱ぎ降ろすと、先程見た母の姿が頭を過ぎるのを意識しながら、テレビを 流れる映像に見入った。出来るだけ肌を隠そうとする家での母と違い、息子と同年代の少年にすべてを晒し、素の女として対峙する母。衰えを知らない少年の身 体と熟女の素肌とでは向き合うだけで異質さを感じさせ、しかし、これ以上なくデリケートな肉に無邪気なチンポが侵入する映像の前では、年齢差を消し飛ばし てしまう。この少年は、母によって快楽を得ているのだ。‥‥‥ああ、母さん、母さん‥‥‥。映像の中で少年の身体が弾けた。痙攣のような動きが止み、自分 の一部であるかの様に繋がっていた母と少年が離れると、母の胎内からは白濁した男液が漏れ出す。その流れ出る液体を見ながら、玲二は己のチンポを爆発させ た。
「ああ、ああっ‥‥‥。」
激しい快感の中、おびただしい量でティッシュの上へ撃ち出される精液を見て、玲二はぼんやりと思う。‥‥‥ みんなからこんな風に中へ発射されて、母さんは妊娠したんだ‥‥‥。身も心も大人の母さんが、未熟なヤツらと対等になって‥‥‥。玲二はティッシュをゴミ 箱の中へ押し入れると、テープを元あった本棚の裏へ隠した。心には、母をオナニーの道具に使った罪悪感が残らない事はない。しかし―――。‥‥‥でも、妊 娠するって事は母さんは女だって事で‥‥‥。女性って事で‥‥‥。玲二にとって母が映るビデオは、母の優しさやぬくもりを感じるための手段になっていたの だ。冷え込みが厳しい二月のある日。取り立てて行きたい大学も見つからず、何気なしに続けていた受験勉強を一段落させ、玲二は外出することにした。学校は すでに自主勉強に切り替わっていて、用事のある場合を除いて大部分は予備校などに勉強の場を移している。玲二が厚着をして二階から降りてくると、首を傾げ た遼子が玲二の前に立った。
「どこか行くの?」
「うん、ちょっとね‥‥‥。」
黒のマタニティードレスに包まれた膨らんだ腹で立たれると、二人分の迫力を感じるようだ。
「寒いからもっと着ないと。‥‥‥そうだ、何か食べてく?」
父の祐一は仕事で出ている。急ぐ用事でもなく断るのも不自然と思った玲二は、ためらいながらも頷いた。
「そう。じゃ、ホットケーキ焼いてあげるわね。」
小走りに台所へ走っていく母の姿を、玲二は複雑な気持ちで眺めた。‥‥‥母さん変わらないな‥‥‥。十数分後、焼き上がったホットケーキと母を前に、玲二はフォークとナイフを掴んだ。
「どお。」
「まぁ‥‥‥おいしいよ。」
わざわざ作ってくれた人間を前にしてはこう答えるしかない。玲二は居心地の悪さから早く抜け出したくて、手早くホットケーキを口に運んだ。そんな玲二を見て、遼子がポツリとつぶやく。
「‥‥‥玲二、聞かないのね。母さんのお腹のこと‥‥‥。」
フォークとナイフを掴む手が止まった。持ち出されたくない話題に玲二の顔は強張る。
「怒ってる?」
「‥‥‥‥‥‥。怒ったってしょうがないじゃんか。」
偽りではなくそうつぶやくと、遼子は困ったように眉を下げた。
「そりゃ怒るのは当然よね‥‥‥。こんな歳で子供産むなんて。」
「‥‥‥‥‥‥相手のことは、言えるの。」
踏み込んだ質問であることは判っていつつ、下を向いたまま玲二は尋ねた。‥‥‥別にそんなこと聞かなくていいのに‥‥‥。少ない母の言葉でも、一言一言がまるで針のように胸へ突き刺さってくる。
「それは。」
遼 子は露骨に困った表情を浮かべて口ごもった。答えられないことを判っている玲二だったが、具体名が出てこないと母が誰かをかばっているのかのような印象を 受けてしまいそうになる。‥‥‥母さんだって誰の子か判らないんだろう‥‥‥でも‥‥‥。それからしばらく二人は無言で、湯気を立てていたホットケーキは いつしか冷え切っていた。‥‥‥目の前にいるのに、ビデオの中よりも遠く感じるような気がする‥‥‥。おかしいよ。玲二は母との間にある壁を再認識しなけ ればならなかった。
「‥‥‥色々思うことあるわよね‥‥‥。でもね、玲二。これだけは判って欲しいんだけど‥‥‥母さんは玲二の母さんだから。」
女らしさが増した感のするしっとりとした声で、遼子は玲二に言った。‥‥‥そんなこと‥‥‥分かってるよ。玲二が視線を上げると、不安げな面もちで自分を見つめる端正な顔と、以前よりも丸みを増した胸が目に入る。
「母さん‥‥‥。」
「なあに?」
「オレ‥‥‥。」
自分が何を言いたいか判らず言葉が続かない玲二を、母は優しい表情で見守る。その表情には、息子の疑念を打ち破ろうとする母親としての覚悟があるように思えた。
「‥‥‥もう行くよ。」
「‥‥‥そう。気を付けてね。」
玄 関まで見送りに出てくれる母の腰回りを玲二は見つめた。逞しく張ったヒップと、以前は引き締まっていた大きなウエスト、美しくないスタイルだが女性らしさ を思わせる。もしかして女が一番女らしい姿だからかも知れない。マタニティドレスに隠された下半身を見つめると、きちんと閉められた足首と太股が変わらな い母の清楚さをにじませているようだ。‥‥‥そういえば母さん、剃られたアソコは今どうなってるんだろう。今もツルツルなのかな‥‥‥。もちろん、うかが い知れるはずがない。目の前の母からはとても連想出来ない剥き出しの性器を思い浮かべながら、玲二はドアを開けた。
「玲二、勉強頑張ってね。解らない所があればいつでも聞いてくれれば‥‥‥。」
玲二はそれには答えずに家を出た。今は全身を包むこの寒さをどうにかしたかった。上着の襟を立て外から戻ってくると、台所からスリッパの音を立てて母が来るのが見えた。冷え切る外気とは裏腹に、今の玲二の身体は熱く火照っている。それを悟られぬよう小さく「ただいま」
と言い、玲二は足早に玄関を上がった。
「おかえりなさい、寒かったでしょ。‥‥‥玲二、今日は父さん帰りが遅いのよ。だから二人でご飯、フフ。」
「‥‥‥そう。」
微笑んだ母から目をそらす玲二。美人で少し皺の目立つ顔を見ると、それだけでさらに体が火照ってきそうだ。その経験の深さを現しているような皺は、自分はもちろん、今しがた会ってきたふみやにもないものだ。
『‥‥‥安心するんだ。やっぱ、こう‥‥‥責任って部分でさ。オレ達とは違うじゃんか。』
頭の中にふみやから聞いた言葉が思い出される。
「じゃ、また後で呼ぶから。」
玲 二は母の姿を盗み見ながら階段を上がった。部屋に戻るとベッドにもたれて大きな息を吐く。それでも身体の火照りと興奮した下半身は抑えられない。家を出た 玲二は疎遠になっていたふみやに電話をかけ、ふみやの家に出向いた。母に関する話を聞きたかったのだが、それには触れずに。初めて訪れる級友の家に着く と、ふみやと一緒にふみやの母親が玄関先へ出てきた。眼鏡をかけた割と美人な人で、外見上遼子と同じくらい貞淑さを醸し出す母親を恥ずかしがるような態度 で、ふみやは玲二を部屋へ通した。実際この女性は、現役の性からは卒業しているのだろう。肌を隠すように着込まれた小綺麗な服装からは、隠された身体は想 像できない。‥‥‥当たり前だ、高校生の母親なんだから。六畳ほどの部屋に入った玲二は、ふみやに促されるままコタツへ脚を通した。ふみやは突然玲二が家 へ来たことにやはり戸惑っている様子だった。誤魔化してもしょうがないと思った玲二は、単刀直入に母の知っている事がないかふみやに聞いた。実際の所、夏 以降ふみやとは母の話をしていない。‥‥‥ふみやは母さんが妊娠させられて、家に帰ってきたってこと知ってるのか‥‥‥。最初は露骨に顔をしかめたふみや だったが、しばらくして玲二の顔色を窺いながら口を開き始めた。
「玲二、何してるの‥‥‥電気点けないと真っ暗じゃない。」
「あ?うん、いや‥‥‥ちょっと考え事してたから。」
「‥‥‥そう。ご飯出来たから食べましょ。」
玲 二は気怠い身体を起こすと、母が点けてくれた階段の灯りに急かされるように部屋を出た。下の階からは香ばしい匂いとテレビから流れるざわめきが聞こえる。 ゆっくりと階段を下りて居間に入ると、遼子は台所から料理の載ったお皿を次々に持って来ているところだった。玲二はそんな母の後ろ姿を見た。軽いパーマが かかって纏められたショートヘアは、華やかさを包み隠した大人の色合いだ。
「そこ座ってて、すぐ持ってくるから。」
言われた通りテーブルの前に座った。今日の料理は肉じゃがが主のようで、二人で食べきれるか不安なほどの量がある。
「お待たせ。はい、ご飯。」
「うん‥‥‥ありがと。」
玲二が消え入るような声でそう言うと、遼子は満足げな顔をして微笑んだ。
『‥‥実はさオレ、あれからもずっとアイツらのこと避けてんだ。玲二に悪いから‥‥さ。』
箸を伸ばしてイモを一つ摘むと口に運ぶ。店で頼んだりするのとは違う、家庭的な味がする。
「‥‥‥おいしい?」
小さな声で遠慮がちに聞く母の声を玲二は無視した。どうしても、気を使って歩み寄る気になれない。
『だからあんまり知らないんだ。その玲二のおばさんがどんなことしてるのかってこと。』
玲二はおかずを食べながら、そっと隣へ視線を向けた。母はテレビを見つつ、熱い湯気を出している肉じゃがを冷ましながら食べている。その時の顔はまるでキスをするかのようだ。
「どうしたの?」
「‥‥‥いや。」
玲二が見た所母はいたって家庭的で、膝を閉じたまま斜めに座わった姿勢や丁寧な箸使いなど、裏の生活を微塵も感じさせない。本当に母はアイツらを相手にしていたのだろうか?
『本当だって。オレ、隠し事はしないさ。ほ、ほとんど玲二に告白したじゃないか。‥‥‥‥‥‥え?やったのは?‥‥‥それはだから‥‥‥三回‥‥‥ん。』
玲二は少し大きめの肉片を取って口に入れた。何か固い芯でも入っていたのか歯切れが悪く、何度噛んでも噛み切れないので、仕方なく一気に飲み込む。
『え、その、会ったのは‥‥‥二回。‥‥‥いや‥‥‥あれからもう一度だけ‥‥‥。でもその時はやってない!永井達とも関係ないしさ!』
しばらくして大半を食べ終えた玲二は箸を置き深呼吸した。出してくれたお茶に遠慮がちに手を伸ばすと、ひとくちすすってテレビを眺める。ごちそうさまは言わなかった。
『やってないから‥‥‥だから言わないでいいと思ったし‥‥‥。言えなかったし‥‥‥。』
母はゆっくり食べているせいか肉じゃがにまだ手を伸ばしていた。玲二はテレビから目を離し、口紅の付いていない、しかし女らしい唇へモノが入り込む様子をジッと見つめた。
「フフ、いっぱい食べたわぁ。」
それを最後に遼子も箸を置いた。二人ともが動作を止めるとテーブルに微妙な空気が流れて、居心地の悪さを醸し出し始める。それは母も同じようだった。
「じゃ、オレは‥‥‥。」
「え?う、うん。」
たくさん置かれた食器が母の苦労を物語っていると感じつつ、玲二はテーブルを離れようとした。振り返って遼子を見ると、端正な顔が少し曇っている。
「なに?」
「うぅん‥‥‥玲二、あんまり母さんと喋ってくれないから。」
それはそうだろうと思いつつ、自分の母への想いも知っている玲二は、少し考えて口を開く。
「‥‥‥じゃあさ‥‥‥勉強教えてよ。解んないと思うけど。」
「あ‥‥‥う、うん、いいわよ!でもちょっと待って、片付けてくるから。」
嬉しそうに立ち上がる遼子に玲二は苦笑した。別に勉強をしようと思っていたわけではない。が、それも悪くないと思った。側にいてくれた方が身体が火照るかも知れないし‥‥。
『二回目の時、こう‥‥‥色々話をしててさ‥‥‥。ちょっと改めて話を聞いてくれない?っておばさんに言われて‥‥‥。』
食 器を片付ける母の後ろ姿を見ると、丸くボリュームがあるヒップが揺れている。この服の下には本当にビデオで見る恥辱的な、肉感溢れる色合いの尻があるの か、どうしても連想出来なかった。‥‥‥距離が‥‥‥近すぎるのかな‥‥‥。膨らんだ下腹部も含め、どこから見ても家庭的な遼子を見て玲二は溜め息をつい た。家庭を守る母親的な存在の大きさは、今も昔も変わらない。オーラで守られているかのような経験深き大人相手に、同年代のヤツらはどうやって挑んだの か、玲二は不思議に思う。数学の参考書を机に開くと、遼子は身を乗り出して内容を把握し始めた。首元にほんのりと体温が伝わると、清潔感溢れるフローラル の香りが鼻腔を満たしていく。今まで気が付かなかった、懐かしい母の香りだ。
「なるほど、今ここら辺をやってるのね。」
「そ。解らないだろ?」
「うぅん、そんな事無いわよ。ちゃんと教えてあげるから心配しないの。」
遼子は得意げに笑った。すべてを任せっきりに出来るような、包容感のある微笑み。‥‥‥ふみやもこんな風に任せっきりで‥‥‥教えてもらったんだろうな‥‥‥。そのふみやの口から聞いた、母と三回目のデートの話は―――。
『今度は海に行くって永井に水着を何着か買ってもらったから、それがおかしくないか見て欲しいってさ‥‥‥。こんなオバサンだし、オレにだと安心して頼めるからって言われたら、そりゃ‥‥‥。』
玲二の顔色を窺いながら喋る友人の声は、言い訳がましくもあり、誇らしげにも聞こえた。
「玲二は一度これ解いてみたの?」
「‥‥‥まあね。」
「じゃあやってみて。母さんが見ててあげるから。」
息子の実力を見極めたいのか、遼子は机に手を付いて玲二の行動を待った。突き放した感じでもない、優しくサポートしてくれるといった態度だ。玲二は鉛筆を手に取り、答えをノートに書き込み始めた。
『二回目の後、わりとすぐに会った。そ‥‥‥二人で会うってったらラブホテルしかなかったしさ‥‥‥。で、おばさんの水着姿見ていったんだ。でも、着替えるところは見てないから‥‥‥。』
顔を下に向けそっと横に目を向けると、黒のマタニティドレスに包まれた母の丸いお腹が見える。物心がついてから今まで、この女性の水着姿など見た覚えはないし、想像も出来ない。
『永井が買ったのだから判ると思うけどさ‥‥‥。それなりの、水着だった。多分前にプールに行った時も、そんな感じだったんじゃないかな‥‥‥。』
玲二の鉛筆を動かす手が止まった。頭の中で再度問題を組み立てるが、うまく集中出来ない。
「もう解らなくなった?」
少し面白がったような口調で母が顔を近づけてくる。貞淑さを感じさせるようなしっとりとした声色に、淫乱な雰囲気は感じない。‥‥‥母さんが水着姿なんて‥‥‥。オレが恥ずかしいよ‥‥‥。玲二は鉛筆を握り直し、とにかく数式を書き殴った。
『普通オバサンの水着姿なんて見ないし、やっぱりきわどいのばっかだったから‥‥‥。似合ってないけどムチャクチャ興奮はしたよ。こう‥‥‥肉付きが違うんだ。』
17歳の少年を興奮させるような母の姿とは、どんなものだろう。もちろん、今は当たり前のように隠されている脚は、太股まですべて見せていたはずだ。
「あぁ玲二、そこはそうじゃなくって‥‥‥。」
放っておけない様子で掛けてくる母の声に、玲二は消しゴムを取ってもう一度計算し直した。
『ヒモとか超ハイレグとか、ほとんど裸みたいなのもあって。それをおばさんがだろ‥‥‥?スゲー生々しくってさ。‥‥‥え?イヤ、オレもパンツ姿で‥‥‥。なんでって‥‥。』
玲二はまた母の身体を見た。身体を自慢出来るような歳じゃないから、生々しさというのは良く分かる。市販ビデオで見る女優の身体より、母の身体や肌の色は人間の事実を教えてくれるようだった。
「‥‥‥これでいいかな‥‥‥。」
手を休め鉛筆をノートの横に置く。とりあえず問題を解いたことを誉めてくれる遼子は、友人から聞くのとは違う、とても知的な顔をしている。
「いい?玲二。ここはね‥‥‥。」
机 を照らすライトの上から母は問題を解き始めた。出来るだけ判りやすく、時折玲二の表情を確かめて確認しながら、ゆっくりと。‥‥‥まるで家庭教師みたい だ‥‥‥。問題を差す指先は細くしなやかで、とても女性らしく華奢な感じがする。しかし少し皺っぽくもあり、隣にある自分の手と比べると年齢的な差が明確 だった。‥‥‥だからガキと結びつけるとは思わなかったんだ‥‥‥。
「玲二、これは解る?この公式。」
「‥‥‥うん。なんとなく‥‥‥。」
「フフ、なんとなく?頼りないわねぇ。これはぁ‥‥‥。」
公式の意味を説く母の声はとても優しく、それにどこか楽しそうだ。‥‥‥母さんはサービス精神旺盛なのかな。‥‥‥そうだよな。玲二は問題を簡単に解き明かしていく母の指先を追いかける。
『‥‥‥わ、分かった、言うよ。そのさ、おばさんも遊びでさ。水着姿でポーズ取ってくれたりしたんだ。オレも調子に乗ってリクエストしたり‥‥‥で‥‥‥。』
‥‥‥ポーズ?どんなポーズだろう。それに、どんな水着なんだろう‥‥‥。
『毛剃ってるからって、こんなハイレグだろ?ちょっとだけ我慢出来なくなって、水着の上からならいいのかなってこう‥‥‥触ったりしたら、おばさんもズボン脱げばって言ってくれてさ‥‥‥。ほら、二人っきりだから‥‥‥。』
‥‥‥そう、二人っきりの部屋で、男と女が‥‥‥。
『そ れで、だんだん調子に乗ってチ○ポとかも押し付けたりして‥‥‥悪い、やってるみたいにさ‥‥‥。そしたらおばさんも脚開いてくれたりケツ向けてくれたり して、そしたら水着がピチピチに張ってさ、それにパンパンって腰ぶつけると破けれそうで‥‥‥。Tバックとかもおばさんの身体には似合わないけど、穴と か‥‥‥イヤ、その、ほとんど股間見えててさ、もっと興奮‥‥‥。』
‥‥‥破れそうなくらい水着が引っ張られて‥‥‥。母さんのお尻ならそうだろうな‥‥‥。
『イ、イヤ、ホントやってないんだ!おばさんも笑ってたし、パンツ穿いたままだからケツの方に押し付けたら、アブノーマルなのねぇ、って冗談言ってたし‥‥‥。も、もちろんそんな気ないしさ。な、なぁ?』
「玲二?」
ふと気付くと、遼子が心配そうに顔を覗き込んでいた。
「どうしたの?いきなりボーっとして‥‥‥。」
「‥‥‥。」
母の問いには答えずにノートに目を向けると、いつの間にか自分とは違う字で数式が書き込まれている。薄く繊細な字体だ。
「なあに、何か違う事考えてたの。」
「‥‥‥違うよ。」
見透かしたような言い方に、つい玲二は語気を強めてしまう。
「‥‥‥ちょっと待ってて、何か飲み物持ってくるわね。」
「ううん、いいよ、何でもないから。ちょっとボケてただけ。」
語尾をわざと強めて言っても遼子は部屋から出て行こうとする。母親らしく気遣いするその姿が、なぜか玲二には棘のように感じられた。
「そう‥‥‥。」
遼子は曖昧に頷いて振り返り、また机の側に寄った。その時机の角が腹に当たりそうになり、少し驚いたようにして身体をかばう。
「あ、フフ。」
そ の動作を恥ずかしがるように笑う母の身体から、玲二は目をそらした。‥‥‥母さん、やっぱり大事なの?その子が‥‥‥。別に大したことではないはずなの に、心の底からジェラシーが沸き上がってきて、噴出してしまいそうになった。我慢しようと押し黙る玲二の肩に、いきなり母の手が触れる。その意外と力がこ もった手に玲二は振り返った。
「玲二‥‥‥玲二!ちゃんと思った事言ってくれないと母さん解らない!」
「え‥‥‥。」
「そりゃ母さんの事怒ってるのは分かるけど、言いたい事があるならちゃんと言って!‥‥‥ね?お願いだから。」
最後はすがるような口調で言われ、玲二は戸惑った。しかし何も言わないわけにもいかず、震えた声でつぶやく。
「‥‥‥う、産むの。それ‥‥‥。」
「ん‥‥‥ええ。今更堕ろせないし、どうなるか分からないけど産む気よ。」
「‥‥‥セックス‥‥‥して出来たんだよね。」
「ぅ‥‥‥うん、そうね。」
誰 の子を?母にそう聞いてしまおうとして玲二は思いとどまった。‥‥‥もしかしたら母さんには自覚があるかも知れない。永井か、あのビデオのガキか、それと もふみや、それとも他のヤツ‥‥‥。聞いたら答えてくれそうな気がした。実は言いたがっていて、男との繋がりすべてを明かしてくれそうな気がした。それど ころか。‥‥‥想いをぶちまけてしまえば‥‥‥もしかしたら、オレも‥‥‥オレも同じように母さんと‥‥‥?セックスさせてくれるのではないか。セックス してしまえば自分の物に出来るのではないか。誰よりも想っていた母を自分の物に。しかし、心のどこかから、求めている事とは違うという違和感が押し寄せて きているのを、玲二は自覚していた。
「ごめんなさい‥。こんな事、玲二と父さんへの裏切りだってことは分かってる。けど‥。」
「‥‥‥。」
「けど‥‥‥うぅん、言い訳したって無駄よね。でも謝るしか‥‥‥。」
遼子はうつむく。‥‥‥母さんはオレの事を大事に思ってくれてる。それは間違いない。それに‥‥‥産む意志も固いみたいだ。‥‥ホントはセックスして思い切り腹を突き上げてやりたい気持ちもある、けど‥‥。玲二は顔を上げると、皺の目立つ母の顔を見据えた。
「ね。じゃ母さん、聞かせてよ。」
「‥‥‥ええ。なに?」
「相手の事。相手の男は、おっさん?それとも若い奴?」
「え‥‥‥。」
玲二は口ごもる母を真っ直ぐに見つめる。
「若い‥‥‥人ね。‥‥‥ごめんなさい。」
「すごく?」
「ん‥‥‥。」
頷いたのか、相づちを打ったのか。目の前の息子を意識してかよく判らない母の態度をよそに、玲二はもう一つ聞いた。
「母さんにとって、オレは特別?」
「え‥‥‥?それはもちろん‥‥‥。」
「最高に特別?」
「も、もちろんよ。子供じゃない!」
玲 二は大きな息を吐いて、背もたれに身を預けた。‥‥ならいいんだ。特別なのに同じ事やったら‥‥。息子なのにアイツらと同じ事やって、同列になれたっ て‥‥‥。悲しいが、目の前の母はもう昔の母ではない。もしセックスをしたとしても、他の少年達と一緒か、それ以下にしかならない。それでは自分の特別な 立場を放棄してしまう事になる‥‥‥。
「ありがと母さん。じゃ、もうちょっと勉強教えてくれる?」
「え、ええ!‥‥‥あ、ちょっと待ってて。携帯鳴ってるみたい。」
わ だかまりを吹き飛ばすかのように微笑んで階下に降りていく母を、玲二は遠い目で見つめた。‥‥‥もしかしたら妊娠って、周りが思うほど重大なものじゃ無い のかも知れない‥‥‥。‥‥‥雨の日には体が濡れる、みたいな、すっと受け入れられる気持ちが本人にはあるのかも‥‥‥。そう、梅雨の時みたいに。机の上 に拡がったノートに目を向ける。
丁寧に、常に気を使って、決して置いてけぼりにせずに進めていく勉強は、母の優しさを現しているように思 う。‥‥‥優しいよね、母さん。‥‥‥でも、それよりもっと優しい母さんを、オレ知ってるから‥‥‥。玲二は、しっとりとして色気を帯びた声を出す唇の動 きを思い浮かべた。‥‥‥そんな大人っぽい声を出す場所をチ○ポで突かれてたんだ。だからかな、前よりも色っぽく聞こえる‥‥‥。
『そのうちオレ、マジになっちゃって、パンツの中でさ‥‥‥。すごいんだ、見た目普通の白のワンピースなんだけど、スケてて丸見えで、なんか風船着てるみたいで‥‥‥。だから余計破いてやろうって気になっちゃってさ‥‥‥。』
『結局、水着はそれにするって。オレがイッたの尊重するって‥‥‥。その後‥‥‥その後は‥‥‥オレのパンツ汚れちまったから、おばさん自分のパンツ渡してくれて‥‥‥変な感じだろうけどって‥‥‥。それ穿いて帰った。』
『なんかこう‥‥‥安心するんだ。エッチな事してても甘えてるみたいにさ。玲二のおばさんなのに自然に話せるし‥‥‥。くれたパンツも暖かくって、玲二には悪いのは分かってても‥‥‥オレ‥‥‥。』
‥‥安心する‥‥その気持ちは良く分かるよ‥‥‥。その後、滑り止めの大学に受かった玲二だったが、行くほどの学校ではないと浪人を選択した。遼子も父の祐一も反対はせず
「焦らず行けばいい」
「玲二ならもっといい学校行けるわ」
と 納得してくれた。一緒に暮らす事で前より距離が近くなったような家族だが、母の日に日に大きくなっていく腹を見る度、壁の存在を意識してしまう。まるで、 ヤツらに注ぎ込まれたザーメンが母の腹一杯にたまって膨らましているかのようだ。そんな母を見ながら、玲二は毎日のように母のセックスビデオを見 た。‥‥‥これがオレの母さん‥‥‥優しい母さんなんだ‥‥‥。そして、高校の卒業式を迎えた。
「終わったな。」
堅苦しいセレモニーが終わり、校内が卒業する生徒達の喧騒に包まれると、玲二はふみやと二人で騒がしくない場所へと移動した。
「なんか三年生はあっという間だった。」
「あ、ああ。そうだよな。」
言葉の意味を読んだのか、ふみやの返事はどこか緊張気味だ。あんな事があってもまだ友人関係を続けていけてる自分たちは凄いと思う。
「‥‥‥永井達はどこ居んのかな。」
「さ、さぁ。あっちで騒いでるだろ。バカ同士。」
聞いたところによると、永井は金を出せば入れるという大学に進むらしい。しかしそれでも大学生には違いないわけで、浪人になる自分と更に差をつけられるようで悔しかった。
‥‥‥ムチャクチャにしておいて、自分は何事もなくか‥‥‥。玲二は永井の特徴である浅黒い肌と長身、それと、にやついた顔を思い浮かべた。
「オレ達浪人か。」
「だな。いいじゃないか、のんびり行こうぜ。」
「‥‥‥ふみや。」
「なんだ?」
「オレの母さんさ、うちに帰ってきたんだ。」
「え‥‥‥!?」
「今一緒に暮らしてる。前と一緒みたいに‥‥‥。」
驚 くふみやの顔を見ると、やはりその事を知らなかったようだ。きっと今ふみやの頭の中では、セックスをさせてくれた熟女が家事をしている姿などが思い浮かん でいるのだろうと思う。‥‥‥でも想像出来ないだろうな、母さんのそんな姿見た事無いんだから。それに‥‥‥。その時、何を告げるでもないチャイムの音が 校舎に鳴り響いた。
「うちの親父がもう一度やり直すって連れ戻したんだ。」
「そ、うなのか‥‥‥。で、おばさん言ったのか?永井とか、色んなこと‥‥‥。」
「いや。でも、親密な男がいたってのは言わなくてもすぐ分かるよ。」
玲二の言葉の意味が判らず、ふみやは瞳を何度も瞬かせ動揺を示した。
「‥‥‥あ、でも、オレは‥‥‥その‥‥‥。」
‥‥‥きっと母さんの口からセックスを告白されたか不安なんだろ‥‥‥。それか、遼子が単なる母親に戻った事で、自分のした事の大きさが押し寄せてきたのかも知れない。今となっては、そんな友人の態度も気にならなくなった。
「でも寂しいんだよな。」
「‥‥‥え?な、なに?」
「母さん帰ってきても、なんか違うんだ。」
「な、なんかって、うまくいかないって事か?そりゃあ‥‥‥。」
そうだろ、と言いかけてふみやは口をつぐんだ。
「そういうんじゃなくてさ‥‥‥。」
そ れから先を玲二は口にしなかった。この屈折した母への想いを告白したところで、分かってもらえるはずがない。‥‥‥それにコイツは母さんのマンコ見て、 おっぱい揉んで、ハメて、中出ししまくってる‥‥‥。口には出さないが、玲二はふみやから威圧めいたものを感じていた。父親から感じる、それだ。母の今の 容姿が頭に浮かぶ。
「‥‥‥なぁ、永井達のとこ行かないか。」
「な、なに?」
「なんとなく会っときたいんだ。さあ。」
「お、おい。いきなりなんでだよ!」
引き留めようと急いで立ち上がる友人の下腹部を玲二は見つめる。柔らかい制服生地に包まれたそこは、きっと母と交わった時と同じくらいの起立を示していた。
「あ、オメェ‥‥‥。」
玲 二とふみやがその集団に近づいて顔を眺めていると、そのうちの一人が気が付いて顔を向けた。体育館と校舎を結ぶ渡り廊下の一角。排他的な集団といった訳で はなく、色んなタイプの男女が多数寄り集まり、楽しければ良いといったように大声で談笑している。その中央に、一際目立つ赤毛の永井は居た。
「久しぶりだな。どうした?」
声を掛けてきた生徒は割と感じの良い態度でふみやに話し掛けてくる。中肉中背の、あまり特徴のない男だ。コイツも母さんとやったのか‥‥?玲二は自然にその男子の股間へ目が向いた。それだけではない、そこにいる男子達全員の学生服をひととおり眺めてしまう。
「オメ、電話くんねぇからさ。忘れてたじゃん。」
「あ、そ、そう。ごめん。」
他の生徒は玲二達に目もくれず、思い思いに喋りまくっている。近くの話に耳を傾けると、聞かれてはまずいような話も交じっているように思えた。
「あれから何か楽しい事あったか?」
「あ、あれからって?」
「‥‥‥何言ってんだって。あん時からだよ。」
動揺するふみやの態度を見て、母絡みの話題であることは分かった。その男子は、横に立つ玲二の事など気に留めず続ける。
「熟女とやっただろ、あん時からだよ。」
「あ、ああ。」
「クク、オマエあれムチャクチャ良かったって言ってたよな。あれからこっちも色々あったぞ。」
噛み殺すような声で笑うその男に、近くの女子が不快な顔を向けた。玲二とふみやにすぐ気付いた事といい、あまり仲間内に入れないタイプなのだろうか。玲二はどこか得意げなその男子の、すすけたズボンを見つめた。
「あのオバハンであれからも遊びまくってさ、それでクク‥‥‥。」
「ちょ、ちょっと‥‥‥!」
「おー!!」
そ の時、離れた場所から聞こえてきた低い声に振り向くと、長髪の赤毛がこちらに顔を向けていた。‥‥‥永井‥‥‥!その男は確かに玲二とふみやに視線を向け ている。玲二にとって、ビデオ以外では初めて見る正面からの顔だ。知らないのに知っているという、超有名人に会った時のような感覚が玲二の心に押し寄せ る。
「オマエ!元気だった?」
呆然とする玲二をよそに、永井はふみやに向かって声を掛けた。先程の男と違い、周りの男女は永井の視線を追って二人に目を向ける。
「あ、賢ちゃんコイツ‥‥‥。」
「久しぶりだな、どうしたよぉ。」
永 井は男子生徒には目もくれずふみやに手を振った。浅黒い肌で長身。だらけて着ている制服に隠された、生命力を迸らせるような身体を玲二は知ってい る。‥‥‥裸だって、立ってるチンポだって‥‥‥射精してるとこだって見た事あるんだ‥‥‥。同級生とは思えないような巨根で母親をえぐり、溢れるほどの 精液を体内外構わず吐きかけた男。玲二は、すべての元凶であるこの少年の、一撃一撃放出される射精シーンを思い浮かべた。粗暴な少年が、もっとも無防備に なるであろうその瞬間を。
「えー、これ誰ぇ?」
近くに居た下級生と思われる少女が口を尖らせ隣の永井に聞いた。
「連れだよ、連れ。」
「兄弟じゃねーの。賢ちゃん。」
「お、そーかそーかブラザーだよな。へへへ!」
永井が笑うと周りにいる男達が声をそろえて笑う。
「えー、なにー、それぇ!」
「兄弟だよ、兄弟!」
何を言っているのかが分かった玲二は下を向き、笑い声が収まるを待つしかない。
「‥‥‥ん、ソイツは?」
「え?あ‥‥‥。」
永井の視線が向いて背筋に戦慄が走るのを意識しながら、玲二はふみやの肘を突いて促した。
「と、友達だよ。」
「へぇ。」
ふ みやの答えをどう捉えたのか、永井はにやけながら玲二の顔や身体を観察する。上から見下ろした、値踏みするような目つきで。‥コ、コイツ、もしかして‥オ レが母さんの息子だってこと知ってるのか‥?‥それはない‥母さんが言うはずない‥。‥いや、でも‥‥‥コイツらが聞かないはずがないし、セックスした相 手に言わないなんて‥‥‥。疑心暗鬼で永井の視線に目を向けると、その視線はとても同級生を眺める目つきには見えなかった。玲二が目をそらすと、なぜか心 の中には威厳溢れる父の姿が浮かぶ。
「あ‥‥‥オメェ、覚えてんぞ。」
「熊田?知ってんのか。」
「おぉ、オレがビデオ売った奴だよ。な?」
声の方に目を向けると、そこにはあのビデオを売ってもらった熊田がいた。
「ビデオぉ?」
「お‥‥‥おお、そう。」
「なんのビデオだ?」
「あ、いや‥‥‥ちょっとな。」
「なんだよ、言えよ。‥‥‥へへ、もしかしてオレがやったビデオじゃねぇんだろ?」
「ち、違う、違う。‥‥‥あ、いや‥‥‥悪ぃ、賢ちゃん。」
「‥‥‥マジか?あんなビデオ売ったのかよ。バカか、オメェ。」
冗談か本気か、そう熊田に言い捨てて永井はまた玲二に顔を向けた。その見下げるような視線は、物好きな同級生を見る目なのか、それとも付き合った女の息子を見る目なのか。
永井の視線を避けるように体を離すふみやに玲二は気付いた。
「ねぇ、なにー?そのビデオって。」
「あ?ビデオったらビデオだよ。ちょっとヤバめの。」
意味ありげに笑う永井を見て、周りの男女は興味を駆り立てられたようだ。玲二の喉はカラカラに渇き、全身が押し潰されるような圧力を感じ始める。
「なになに、教えてよー。」
「へへへ。」
今 やそこにいる全員の視線は永井と玲二に集まっていた。ふみやも玲二から距離を取り、玲二はまるで被告席に立たされているかのような心境になった。‥‥‥恥 ずかしい‥‥‥でも‥‥‥。にやけ顔の男の全身を見ると、自然に母の姿が浮かび、重なる。まったく釣り合いの取れていない、異質な遺伝子を持つかのような 同級生。
「じゃ教えてやろーか。‥‥‥裏だよ、裏。」
「えー!ウラ?‥‥‥裏ビデオー!?」
「そう、オマ○コばこばこの、モロ。エヘヘヘヘ。」
その言葉に男子は笑い、女子は恥ずかしがりつつ興味をそそられたような表情を浮かべた。
顔をしかめる者はいない。
「‥‥‥どんなのか知りてぇ?」
永井は玲二の顔を見下ろしてから、周りの女子に尋ねた。事情を知っているふみやの視線が痛い。
「えー‥‥‥。どうする?」
「それってスゴイ?」
「ハハ、スゲェよ。だって賢ちゃんの彼女出てんだもんな。なぁ?」
「彼女ぉ!?」
「そ。賢ちゃんの彼女マ○コ出しまくり。アハハハハ。」
「えー、永井くん彼女いたんだー?どんなどんな。」
玲二は無邪気に聞く女子達の姿と、『永井の彼女』という言葉に胸が痛んだ。‥‥‥でも母さん、確かに永井の女になったんだから‥‥‥ビデオの中でそう言ってた‥‥‥。永井はどこか誇らしげな表情で皆からの視線を浴びている。
「どんなだと思う?」
「んー‥‥‥ここの学校?他の学校?」
「違う違う。な、オマエ。オマエ知ってるよな。ビデオ見たんならさぁ。」
勝ち誇ったかのような永井に言葉を掛けられた玲二に視線が集まる。
「‥‥‥知ってる‥‥‥。」
玲二は屈辱感にまみれる中そう答えた。‥‥‥ああ、きっと誰よりも知ってるよ。
「えー。どんな人?ねぇねぇ。」
「‥‥‥。」
「ねえ。永井くんの彼女可愛い?それがビデオ映ってるんだ?」
「‥‥‥お母さんだよ。」
「え?」
玲二の言葉に、その場にいた人間の動きが止まる。
「そ、マダム。オレらと同じくらいのガキがいる熟女だよ。」
「うそー!?」
「ホントだって、な、賢ちゃん?オバサンマンコ拡げて、入れさせたよな。」
最初玲二とふみやに話し掛けてきた男子が得意げに語ると、永井は笑いながら頷いた。周りにいる女子や、その事実を知らないと思われる男子達の間から失笑が漏れる。淫語の連発にもここにいる女子達はさほど気にしていないようだった。
「ウソー、永井くんそんなオバサンと付き合ってたんだ。」
「まあな。」
「でも子供いるんでしょ。その子は?」
「さぁ。離婚した女だからな。オレらと同級ってのは知ってるけど、どんなヤツかは知らねー‥‥‥よ。」
そう言うと同時に、永井は玲二の顔を舐めるように眺めた。玲二はその視線から逃れる事が出来ない。
「それじゃ、そのおばちゃんとビデオ撮って‥‥‥?ウソー!ヤダよー。」
「ウソじゃねぇよ。ちゃんとやってんだぞ。ジュポジュポ~ってさ。」
「そりゃ彼女だもん、やるよな。‥‥‥ククク。」
「ま、たまーにみんなの彼女にもなってたけどなぁ。」
そ の永井の言葉の意味が判らず、何人かはキョトンとした顔をする。数人の男子が顔を見合わせて笑ったのに玲二は気付き、その男子達を確認した。不良まがいの 男子や一般的な生徒、よく見ればまだあどけない下級生も混じっているようだ。どの男も肉体的には玲二とあまり変わらなく見える。しかし、精神的な威圧感を 身体から感じる。
「えー、なんかエグそう‥‥‥。」
「私らのお母さんと同じでしょ?お母さんがやってるとこなんて‥‥‥わっ、気持ち悪っ。」
「でも、美人は美人なんだぞ。上品マダムって感じで。な、賢ちゃん。」
「当たり前だろ、だから女にしたんだ。熟女だけあってテクあるし、なんでもするしな。‥‥‥そりゃスゲエぞぉ。」
「でもぉ。」
母 をおもちゃ扱いする男子と、気持ち悪がる女子。そのどちらもが玲二にはとても痛く映る。同じ人間なのに、皆同じとは思ってないみたいだ。‥‥‥母さんだっ て歳取ってるだけで、れっきとした一人の人間なのに‥‥‥。もっとも、遼子を同じ人間とは思えないのは、息子の玲二が一番かも知れない。
「でもなんでそんなビデオ撮ったんだ?」
遼子の事を知らないらしい男子が尋ねた。
「そりゃ面白ぇからだろ。ハハハ。」
永井のあまりに軽いその言葉が、玲二の胸に重く響いた。
「えー、でも子供可哀想ー!」
「何言ってんだ、関係ねーよ。離婚してんだし、オバサンだって愛し合えばセックスだってするさ、なぁ?」
永 井は玲二を見下ろして言った。三月だというのに捲り上げたシャツからのぞく腕は、母の柔らかそうな肉付きとは異質の、筋肉質なものだ。‥‥‥コイツの遺伝 子と母さんの遺伝子が結びついてたら、どんな感じになるんだろ‥‥‥。玲二の頭で二人の姿が重なるが、どうしても組み合わせる事が出来ない。‥‥ホントに 子供なんて出来たんだろうか‥‥‥?
それは永井だけではない、周りでニヤついている男子達をモデルにしても同じだ。‥‥‥誰の子だ?オレの弟か妹の父親は‥‥‥誰だ?母を射止めたのはいったい‥‥‥。
「オバサン自分で脚開いてさ、ファックしてぇ、って言うんだ。そりゃしてやらなきゃしょうがねえだろ。‥‥‥ナマでなぁ。」
嘘っぽく言う永井に、周りの男子から笑いが漏れる。
「ウッソォ。ナマぁ?」
「そりゃもちろん。熟女だぜ。」
「じ、熟女って、だったらなおさら‥‥‥ねー。」
女子達は無言で顔を見合わせた。受け身の女性側だから、その重大さが分かるのだろう。
しかし深刻な顔つきになるわけでもなく、興味深そうな眼差しを永井に向ける。永井は今やここにいる人間から見て、最も強く男を感じさせる人間と言えた。
「‥‥‥オバサン、出していいって言ったんですか?」
少し離れた場所から、眼鏡をかけた大人しい感じの生徒が尋ねた。頬は赤らみ、瞳は少し潤んでいるように見える。玲二はこの生徒が、母を心配して言っているのではなく、興味本位で聞いているのが分かった。
「へへ、最初は拒否してたけど、何回かしたらOKだしまくりだよ。出してぇお願い‥‥‥ってさ。」
冗談めかしてそう言い、永井は玲二に見せつけるように笑う。玲二には冗談かそうでないかの区別が付かない。
「そっか、オバサンもう妊娠しないから‥‥‥。」
「バーカ。ババァだって女は女だろーが。交尾すりゃ妊娠もするだろ、じゃねーと人間じゃねーじゃんか。」
事も無げに言って、永井は続ける。
「生理はあるんだし、それに熟女が構わないって言うんだしさぁ?じゃ遠慮なく、だろ。‥‥‥嫌って言われても出すけどな。へへ。」
「えー‥‥‥ウソォ‥‥‥。」
女 子も男子も、事情を知っているとおぼしき人間も含めて口をつぐんだ。きっと自分の母が、同年代の男とそんな事をした恐さを感じたのだろう。‥‥‥母さ ん‥‥‥。玲二の頭の中に、家事をする母の姿が浮かんだ。‥‥‥ずっと普通の母親だった母さん‥‥‥。‥‥‥知的で、優しくて、綺麗な母さん‥‥‥。
「そりゃー頑張る頑張る。中で出し始めてもあっちからケツ押し付けてくるんだから。男としたらなぁ。」
永井は言葉の句切り近くになると、必ず玲二の顔を見る。まるで玲二にだけ聞かせるかのように。玲二の目は、いつの間にか虚ろなものに変わっていた。‥‥‥母さんはセックスなんてしないと思ってた。出来ないと思ってた‥‥‥。
「それに相手は熟女だろ?若いオレが負けてたまる‥ってのあるし、現役高校生としちゃ、絶対‥娠させてやらねぇとプライドが‥。」
‥‥‥もう『女』じゃないし、もししたとしても父さんぐらいだと‥‥‥。
『それで‥の熟女がオ‥‥惚れてさぁ。オレが‥‥言ったら、や‥方とか丁寧‥教えてくれた‥‥るんだ、人妻‥経験からって‥ぁ。前の家族ど‥すんだ‥。』
‥‥‥でも家族以外から見たら、一人の女なんだよね。永井が言う通り、若いか若くないかってだけで‥‥‥。
『今の子‥こうや‥て、とかって聞‥‥みろよ?死ぬほど興‥‥るから。‥れこそ本番‥‥って‥!もう‥レら完‥夫婦状‥‥った‥。』
‥‥‥いや、離婚して一人になったんだ。母さん自身も自分はフリーの女だって思ってたかも知れない‥‥‥。
『‥‥‥局?‥‥‥孕まし‥‥ったよ。マジで。みんなで協力プ‥イ‥‥たけどなぁ。エヘ‥‥。』
‥‥‥で、結局好きになった奴がコイツ。最初はレイプでも、好きになっちゃった‥‥‥。で、大人的に尽くした。そうしないとしようがなかったのかも知れない。
『でも‥‥感動した‥な。ガキ作‥‥‥ゆー実験成功だ‥。ま、相‥‥熟‥だし、もう子供産‥‥んだし‥。どうでもい‥‥。ハ‥ハ!』
‥‥‥でもオレはそんな母さんでも好きだ。前と一緒‥‥‥いや、前よりも‥‥‥。
「なぁ、オメェ。」
気付くと永井は玲二を見つめていた。周りの生徒達もふみやも、玲二を見つめている。
「そう思うだろ?」
「‥‥‥え?」
「思うよな?」
「‥‥‥。そうだね。」
玲二は何を問われたのかも分からず頷いた。永井を見ていると、そうしなければならないような圧力を感じるのだ。不良っぽい女生徒の一人が、聞かずには居られないといった様子で永井に尋ねた。
「今そのオバサン、どうしてんの。」
「さあなぁ。知らねえなぁ。」
「なによ、それ。」
「だって妊娠したらやれねーし、産んで責任取らされたらどうするんだよ、なぁ?」
永 井が惚け顔でそう言うと、周りの生徒達は苦笑して頷いた。‥‥‥責任なんて言ったって、誰も本気で受け取るヤツはいないよ‥‥‥。永井にしてもその他の男 にしても、自分たちがした事の重大さを分かっているとはうかがい知れない。そんなヤツらを見ながら玲二は母の姿を浮かべ、ここに来た理由を思い出した。そ して意を決して永井を見つめる。
「ね、永井‥‥‥くんは、そのおばさん好きだった?」
「はぁ?」
「だって彼女だって‥‥‥。」
「‥‥‥そりゃ嫌いじゃなかったけどな。一応オレのオンナだったし。なんでそんな事聞くんだ。ん?」
「いや‥‥‥。」
長髪をはね上げながら、永井は玲二をジッと見つめた。‥‥‥永井は知ってる?オレが母さんの息子だって事‥‥‥。同級生なのに貫禄を帯びた瞳は、好き勝手した女と似ている部分を探しているように見える。‥‥‥でもいいんだ、そんなことどうでも‥‥‥。
「賢ちゃん、そのオバサンの子供可哀想ー!」
女生徒の一人が声を上げた。
「知るかそんな事。」
「ひどい賢ちゃん。ねぇみんなー!」
「ひどいひどい!」
「バーカ、オレだけじゃなくってコイツらにも言えよ。オレらみんながパパなんだからさぁ。」
「なによぉ、それ!」
「アハハハハ!」
永井が大声で笑うと、周りはまた喧騒に包まれた。ここにいる生徒達にとっては、年代の離れた女の事など話題の一つでしかないのだろう。玲二は周りの生徒に押されながら、永井の下腹部を見つめた。この薄い生地の向こうには、ビデオで散々見せられた硬質で巨大な男性器がある。
「‥‥‥‥‥‥。」
「お、おい玲二!」
「ふみや‥‥‥。」
「妊娠って‥‥‥マジなのか!?」
「ああ。」
「じゃおばさん、堕ろして‥‥‥。」
「いいや。生まれるよ。」
玲二はふみやのズボンも見た。友人のそこは、ここに来る前と同じように出っ張っていた。
「‥‥‥う、うそ‥‥‥嘘だろ?じゃ永井の子をおばさん‥‥‥。」
「いや、オマエかも知れないだろ。それか、他の男かもな。とにかく、オレの遺伝子とはだいぶ変わる事は間違いないよ‥‥‥。」
「‥‥‥そんな‥‥‥。そんな事一言も‥‥‥。」
ショッ クを隠せない顔をしてうなだれるふみやから、玲二は目をそらした。‥‥‥高校生の母親をあんな風にしたヤツらはこんな態度で‥‥‥。ふみやだって‥‥‥。 永井は頭髪の形を気にしながら、周りの女生徒達と楽しそうに話している。‥‥‥遊び。‥‥‥背負わされるのは結局母さんだけ。そうとしか思えない。しか し、それが大人の責任であって母の優しの結果なんだと思ったとき、元凶である永井の前で玲二は何かが納得出来た気がした。‥‥‥母さんは寂しかったんだ。 オレも父さんも何も言わないから‥‥‥。だからきっと、求められると嬉しくなって‥‥‥。‥‥‥女子高生を差し置いて、保護者が永井みたいな生徒を好きに させたんだぞ。すごいじゃん‥‥‥。玲二は喧騒から離れ、校庭の方を見た。サクラが学校の敷地を囲うように乱立し、鮮やかに咲き誇っている。もう一度永井 達に視線を戻すと、集団に入りきれないでいる男子生徒の姿が見えた。ここに来て最初に声を掛けてきた生徒だ。玲二はその男に近寄り、期待を込めた声で話し 掛けた。
「ねぇ、ちょっと。さっきの熟女のことだけど‥‥‥。ビデオとかってもう無いのかな。」
「‥‥‥あぁ?」
「ビデオ。モロが映ってるやつ。」
「熟女?ビデオ?‥‥‥あー、今の話のか‥‥‥。一応オレ一本持ってるけどな。スッゲーエグいの。」
「ホント?それ売ってよ!」
「‥‥‥なに。ホントにあんなのに興味あるのかオメェ。」
「まぁ、ね。」
「そりゃいいけどな。でも実物は良くてもオバハンだぜ?それに内容エグエグ‥‥‥。んー、高いぞ。」
そ の時、平日であれば授業の始まりを告げるチャイムが校舎に鳴り響いた。そして玲二の卒業式は終わった。その日は同級生とのつき合いなどで帰りが遅くなり、 玲二が家に着いた頃辺りは真っ暗になっていた。家の車庫に車がないので、まだ父の祐一は帰っていないようだ。ドアを開けて家に入ると、普段はすぐに出てき てくれる母の姿も無い。
「あれ、携帯が鳴ってる‥‥‥。」
玲二はその電子音がどこから鳴っているのか耳を澄ました。しかし探し出す前に音は途切れてしまった。
「母さんの携帯の音だ。」
遼子は家に戻ってきた時から自分の携帯電話を持っていた。誰からかは分からないが、時折電話がかかってきている事も知っている。気になって携帯の履歴を調べた事があるが、ただ誰かの携帯番号が表示されるだけだった。
「ご飯の用意はしてある。じゃあ‥‥‥。」
玲二は母の居場所を確信して洗面所に入った。するとやはり、風呂場の電気が灯っている。遼子は今入浴中なのだ。
「そっか‥‥‥。」
すぐに出ていこうと思った玲二だったが、洗濯かごの上に乗っている母の衣類を見て立ち止まった。そこには、母が先程まで身に着けていたと思われる下着が乗っていた。ショートパンツの様な、その周辺をすべて覆い隠すような形状のグレー。玲二は恐る恐るその布に手を伸ばした。
「‥‥‥。」
レースに彩られて、見た目よりとても薄いその生地に、玲二はゆっくりと鼻を近づけてみる。だがフローラルの香りは漂って来ない。
「ふみやのヤツ、こんなパンツ穿いたのかな‥‥‥。」
男が穿くとすれば小さく見えるそれの、裏面をめくって眺める。生地は判らないがとても滑らかな肌触りで、生暖かさがさらに心地よさを感じさせた。
「大人の‥‥‥パンツって感じだ。」
そうつぶやいてそろそろ下着をかごに戻そうとした時、いきなりドアが開いたので手に持った下着を後ろへ隠した。
「あら?どうしたの。」
全裸でバスルームから出てきた母に玲二は慌てる。
「あ、いや、母さん居なかったから‥‥‥。」
「うん、ごめんなさい。玲二遅いからお風呂入ってたのよ。」
謝 る事無いのにと思いつつ、玲二は母の身体を無遠慮に眺めた。性的な目では初めて見る、リアルな母の肉体。男とも若い女とも違う、異質の迫力で満ちあふれて いる。そしてなんと言っても、膨らんだ腹、肥大化している乳首周辺など、ビデオの母からも大きく変貌しているのは一目瞭然だった。それとは別に腕などの肌 を見ると、やはり重ねた年齢の多さを感じてしまう。認めたくないが、少年達の実験体としては相応しいのではないかと玲二は思ってしまった。そしてその結果 としてこれ程の変化をもたらされたのだと思うと、他人の恐ろしさを感じずにはいられない。丸く盛り上がった腹の下に目を向けると、黒々と陰毛が密生してい るのが見えた。
「じゃご飯にしましょうか。ちょっと待っててね。‥‥‥‥‥‥な、なに?」
遼子はバスタオルで髪を拭きながら、身体を見つめる息子に尋ねた。しかし露骨に身体を隠そうとはしない。
「‥‥‥あ、うん。なんか違うなって。」
下腹部に注がれる視線を意識しながら、母が後ろに回した手を見たのが判った。もしかして下着を隠し持っているのを気付かれたかも知れない。
「違うって‥‥‥。あ、お腹の事?そりゃあ、ねぇ。」
自分の腹に視線を落とし、そして恥じらいからかそこをバスタオルで覆う母。その当たり前の動作が、かえってその場所の秘密性を強く印象づけた。
「ね、ねぇ。どうしたの玲二。」
「ん‥‥‥。」
「なにかあったの。」
バスタオルで身体を隠しながら、遼子は覗き込むようにして玲二に尋ねた。迫力あるバストに迫られ、玲二は後ろに隠した下着を見られぬよう腰を反らしていく。
「ね、玲二。」
「ううん、何でもないよ。ごめん。」
「もしかして、何か話とかあるんじゃない?」
心理を読みとったかのようなその言葉に、玲二は戸惑う。母の肌の色が鮮烈に目に焼き付いていくのが判る。
「ね、だったら言って。」
「‥‥‥ううん、ごめん。」
しかし玲二はそう言い残してドアを開いた。ここで希望を言えば、もしかしたら母による秘密のレッスンが行われ、未熟な自分でも子宮の中の子供を虐めてやれるかも知れない。
し かしそんな直接的な事をしなくても、もっともっと母の優しさを享受する方法があるのだ。その子が産まれたのは憂鬱な六月のある日だった。両親の配慮から出 産までの細かい経緯は知らされなかったため、産んで数日後に玲二は母と対面した。子供の性別は男で、その子を抱く母は気の抜けたような顔をしていた。四十 過ぎた女性の出産だからよっぽど負担があったのだろう、と玲二は思う。部屋の外ですれ違った他の妊婦達と母とでは、肉体的な年代の差が見て取れた。‥‥‥ 当たり前だ、高校出た息子がいるんだから‥‥‥。でも‥‥‥。眠っているその子は、うっすらとした産毛や柔らかそうな肌、どこを見ても作り物ではない、正 真正銘の赤ん坊だ。すやすやと小さな呼吸をするその様を見ていると、人間の生命の神秘を感じずにはいられない。‥‥‥人間って凄い事をしているん だ‥‥‥。
玲二は改めて思う。男から女の体内に放たれる真っ白な液体によって、自分と同じ人間が作れるなんて。当たり前の事ではあるのだが、素朴と言っていい少年達の疑問を母の身で実証させられてしまった。
「‥‥‥名前は?」
玲 二が尋ねると父は複雑な表情で、まだ決めてないと答えた。‥‥‥父さんはこの子の父親‥‥‥の事は知っているんだろうか?おそらく母は喋ってはいないと玲 二は思う。が、離婚していたとはいえ自分の妻が他人に妊娠させられた事には違いない。この赤ん坊に対してこれからどうやって接していくのだろう。‥‥‥母 さんだって‥‥‥。そんな事を思うと自分の弟となるこの子もほんの少し、可哀想に思えた。
「母さん。」
「なに?」
「‥‥‥。いや、何でもない。」
し ばらくぶりに聞く遼子の声は、前と変わらずしっとりとして艶っぽい。しかし、その落ち着いた雰囲気が隣にいる赤ん坊と、どうしても不釣り合いに見えた。歳 が離れすぎているのだ。よくこんなおばさんをアイツら、妊娠させることが出来たな。玲二は改めて驚嘆してしまい、思わず父の祐一の方を見た。‥生命力‥な のかな、やっぱり。母と性行為をした永井やその他の人間と父とでは、年齢的なそれの違いが有るように思える。息子と同年代かそれ以下の少年達と交わる母の 身体は、あふれ出る若い生命力に反応し、この年齢にして受け止めた。優しく抱く赤ん坊の存在は、まるでそれを誇っているかのようにも見える。
「オレの弟、なんだよね。」
‥‥‥母さん、簡単に中で出させちゃうから‥‥‥。‥‥‥でも、それが熟女の自分に出来るサービスだと思ったのかも‥‥‥そうじゃないと‥‥‥だからこそ‥‥‥。
「う、ん‥‥‥。ごめんね、玲二‥‥‥。」
夫である祐一の方も気にしながらつぶやく母を、玲二は見つめた。‥‥‥その子の半分は、誰の血? やっぱり母さんが好きだったって言う永井の‥‥‥?
「‥‥‥とにかく、名前早く決めないと。」
抑揚無く言う息子の股間が激しく勃起しているのに、両親は気づいていない。玲二は母から目を逸らして、もう帰ると告げた。
「そ、そうか‥‥‥。」
「いいよ、父さんは。オレ電車で帰る。寄っていきたいとこあるから。」
「‥‥‥気をつけてね。」
ド アを出ようとしていた玲二は、そのしっとりした声に誘われるように振り返った。するとちょうどその時、眠っていた赤ん坊が目を閉じたまま、母の胸の上でデ タラメに手を動かすのが見えた。玲二にはその素振りが、まるで自分の存在を主張しているかのように感じた。‥‥‥あの子は母さんのマンコから産まれてき て‥‥‥そこはみんながチンポを突っ込みまくって‥‥‥。‥‥‥誰かと母さんの遺伝子を合体して出来た子‥‥‥それはそうなんだけど、やったヤツらがその まま母さんから出てきた、そんな気もする‥‥‥。
『ジュニア』
永井達が言っていたという、その言葉が強く浮かんだ。少年達は母の身体を ジャックして、自分たちの分身そのものを作ったのか。‥‥‥もちろん大らかな母さんも協力してあげて‥‥‥。ファミレスで会った母さんはすごく綺麗だっ た‥‥‥。玲二は聞こえないくらいの声でつぶやき、部屋を出た。突っ張った股間を気にしながら廊下の窓を見ると、鬱陶しい梅雨の雨が降り始めてきている。
「‥‥‥この液体は何に生まれ変わるんだろ?」
雨 を見てそんな事を思う自分は絶対におかしい、と玲二は笑った。玲二が通う予備校は駅前にある。この地方では数少ない予備校という事もあり、現役の高校生や 一目で強者と分かる浪人生など、多くの生徒が在籍していた。入校した当時には精神状態などもあり、知り合いも増えなかった玲二だが、夏の時期になるとポツ ポツ見知った顔も出来てきた。現役の高校生、湯浅もその一人だ。
「海山さん、今日ひとりですか。」
その湯浅が鞄をおろしながら隣の席に着 くと、玲二は教科書から目を離して頷いた。まだ幼い顔つきと真っ直ぐに立てた短髪が特徴的で、本人に聞くと、似合わないのを承知でそうしているらしい。玲 二は湯浅を最初見たとき『男には好かれるが女にはもてない』タイプの男じゃないかと感じた。
「フー、最近全然勉強はかどらないんですよねぇ。えーと、今日は数学、物理‥‥‥うぇ、英語もかよぉ。」
「学校でも予備校でも勉強って、スゴイよな。」
「でしょお? 頭がおかしくなるっちゅーねん、ですよ。‥‥‥はぁ。」
湯浅が筆記用具を机に出すと同時に始業のベルが鳴り、ぞろぞろと生徒が教室になだれ込んできた。広い教室の酸素が一気に薄くなっていく感じだ。大人しめな生徒も多いが、やる気のない不良じみた連中も少なからずおり、玲二はその面々に永井達の姿を重ねてしまう。
「あ~あ、オレも彼女欲しいなぁ。」
「‥‥‥え?」
「彼女欲しくないですか、海山さん。こう、一緒にスタディするような女が。もちろん色んな事お勉強するんですけど‥‥‥エヘヘヘヘ。」
「‥‥‥そうだな。」
まだ講師は姿を現さない。湯浅は身を乗り出して玲二に顔を近づけた。
「オレ聞いたんですよ! オレのクラスのヤツなんだけど、家庭教師の女子大生とやって彼女にしたってヤツが居て。」
「やった?」
玲二も湯浅に顔を近づけて聞き返すと、湯浅は鼻息を荒くして頷いた。
「やっちゃったんですよ。それでそれ以来付き合ってるらしくて、この前オナニーの話してたら『オレ最近やってばっかりだからなぁ』とか言うんですよ、ムカツクぅ~!」
湯浅はまくし立て、本当に悔しそうに言った。
「それでオレも女欲しいなぁ、と。そいつだけじゃないんですよね、他のヤツからもセックスした話とか良く聞くし‥‥‥。気持ちいいんだろうなぁ。」
「へぇ‥‥‥。」
そ の時前方のドアから講師が入ってきたため会話は中断された。‥‥‥やりたいか‥‥‥。やっぱりみんな考えてるんだろうな‥‥‥。段差がついた机から教壇を 見下ろすと、自然と他の生徒達の頭も目に入る。その顔の見えない生徒達も湯浅も、先程見た半ヤンキー連中もすべてがその事ばかり考えている。そう思うと、 子供をあやしている熟女の姿が突き刺さるように浮かんだ。授業が終わり、辺りはまたざわついた雰囲気に戻る。
「あ~、彼女彼女彼女‥‥‥じょのかじょのかじょの彼女‥‥‥。」
「‥‥‥‥‥‥。」
「ねぇ~海山さん、誰か女紹介してくださいよ、お願いしますよぉ。」
「いねーよ、紹介できる女なんて。学校に女いっぱいいるだろ。」
「いませんよぉ。オレ、可愛い子じゃないとダメなんですよぉ~。」
玲二は苦笑いを漏らし、かつて自分にもこんな時期があった事を思い出した。‥‥‥たしか高二ぐらいの時オレも彼女欲しい時あって、ふみやと色々言ってたっけ‥‥‥。その時の直接的な理由も、誰かが話す色恋話に触発されての事だったと思う。
「二人とも、お疲れ。」
「あ、木口さん。今からですか?」
「おう。‥‥‥何話してた?」
二人に声をかけながら、長髪の男が玲二の隣の椅子に腰掛け、鞄をドサッと椅子の上に置いた。この木口とは湯浅と同じく予備校に入ってから知り合い、ふみやなどと一緒に良く会話を交わす仲だ。二浪の身なので、玲二よりひとつ年上という事になる。
「海山さんに女紹介してもらおうと思ったんですけど、海山さんダメだって言うんです。」
「いないんだからしょうがないだろ。」
「ハハ、紹介するような女いたら自分の彼女にしてるよな。」
木口は軽く笑い、長身を折り曲げるようにして教科書を鞄から取り出した。
「でもオレやりたいんです。」
「ソープ行けよ。」
「何が悲しゅうて商売女と‥‥‥。」
「そんな事言ってるのも今のうちだけだって。なあ? 海山。」
「‥‥‥ハハ‥‥‥。」
玲二があまりに力無く笑ったので、二人は顔を見合わせて口を閉じた。やはり玲二には他人の純粋な欲望が凶器のように思える。その凶器で家族が一人増えた。まだ赤ん坊とはいえ、その存在はあまりにも大きい。
「海山、今日ふみやは?」
「‥‥‥来てないみたい。」
「アイツ大丈夫かぁ?」
その時、少し前で談笑していた集団から大きな笑い声が上がった。断片的な内容から、こちらと同じく男女関係の噂を話しているらしい。誰のどんな事を話しているんだろ。自然と母の顔が浮かぶ。いつも何処かで誰かが母の噂をしているような気がするのだ。
「‥‥‥だから彼女ですよ、木口さん。ちょうど良かった、オレ年上好きなんです。」
「‥‥‥ああ? 同い年の右手で我慢しろ。たまには左手使えよ。」
木口がクックと笑うと湯浅は上半身を後ろに引き、ふてた顔をした。
「ずるいですよ、二人とも! どうせオレがチェリーだからって!」
そ う言った自分の声があまりに大きかったのに気づき、あわてて湯浅は口をふさいだ。直後聞こえてきた笑い声は、湯浅に向けられたものだ。‥‥‥今頃母さん、 何してるだろ‥‥‥。弟にミルクでもやってんだろうか‥‥‥。玲二は恥ずかしがる湯浅を後目に、端正な熟女の顔を思い浮かべていた。産まれてきた赤ん坊は 康浩と名付けられ海山家の一員となった。家族の誰の名前とも関連性のないところが、逆に玲二の邪念をかき立てる所だ。
もしかして母が関係した、その中でも特に印象深い誰かの名前から取ったものかも知れない‥‥‥。きっと、こんな妄想は一生拭い去れないのだろう。
「どうせ二人は色んなエッチしてんでしょ。ね、ね、なんかスゴイエロ話とかないんです?」
「最近は聞かねーなぁ。高校ん時は周りも色々あったりしたけどな。」
「海山さんは?」
「おい、どーしてオマエそんなに聞きたがるよ。」
「いやぁ、なんとなく‥‥‥。でも、そんな話って聞きたいじゃないですか。」
「エロ話ね‥‥‥。」
湯 浅に聞かれた玲二は口ごもった。‥‥‥この二人に、母さんの事を話したらどうだろう。どんな顔するだろう‥‥‥。遼子のたっぷりとしたヒップとバストが頭 に浮かび、自然反射的に玲二のチンポは勃起する。妊娠する前と後で母の態度はさほど変わらないのに、体つきは当然目に見えて変わった。ヤツらに変えられて しまったのだ。
「‥‥‥オマエさっき年上好きって言ってたよな。かなり上でもいいのか?」
「え? かなりって言っても。」
「例えば熟女みたいなのでもさ‥‥‥。」
玲二は独り言のように聞いた。
「熟女、ですか。‥‥‥い、いいっすよ、美人なら。エヘ、セックス凄そうだし‥‥‥半分冗談ですけどね。」
「半分かよ!」
「エヘヘヘヘ。でも、モロOK! ってな感じで良くないです?」
湯 浅は笑った後、なぜそんな事を聞くのかといった顔を玲二に向けた。‥‥‥そんなイメージ持たれてる熟女って存在が、自分の家にも居る事知ってるの か‥‥‥?邪気のない湯浅の表情が玲二には眩しい。‥‥‥熟女でもいい‥‥‥美人なら誰でも良い‥‥‥。昔聞いたよな‥‥‥。湯浅から顔を背けてフッと笑 うと、また他の生徒達が教室に戻ってきた。
玲二はその中にふみやの顔がないかを探した。
「お帰りなさい。」
玲二が予備校から家に戻ると、玄関先で遼子の笑顔に迎えられた。前と変わらない、いや、淑やかさを増したような大人の声色。足首まである薄い生地のスカートと、前よりも長く纏められた黒髪が、玄関から入ってきた微風に揺らめく。
「どう、勉強うまくいってる?」
玄関を上がりながら曖昧に頷いた玲二は、母の身体をかすめるようにして、すぐ横にあるドアに入った。その部屋は四畳半の洋室になっていて、中央には小さな木造のベッドが置かれてあり、そこには小さな赤ん坊が一人寝息を立てていた。
「さっき寝たばかりなのよ。」
玲二について部屋に入ってきた遼子が、繊細な手つきでシーツの乱れを直してやる。
「ミルクあげた?」
「そう、あげてから。」
そ の子に母乳を与えてはいない事を知っているのに、玲二は母のバストに目を向けた。丸々と張った乳房がカーディガンの下に息づいているのが分かる。胸の部分 もそうだが、母は出産を終えてから以前よりも大きく見える気がしていた。小さな赤ん坊と対比して見る事が多いからだろう。
「‥‥‥産まれて1ヶ月だっけ。ちょっと大きくなったよね?」
「ん‥‥‥そんなすぐには大きくならないわよぉ、フフ。」
母は曖昧な笑顔で笑った。玲二が弟―――康浩の話題を口にすると、いつもそうだ。
「オムツは替えた?」
「うぅん、まだ濡れてないから。」
「そう‥‥‥。」
弟 は生きているのか死んでいるのか判らないくらい静かに寝入っている。玲二はごく自然な流れで、この子の母親である遼子の身体を眺めた。半袖のカーディガン に白のロングスカートといった出で立ちは、家でよく見る組み合わせ。薄く風通し良く作られたスカートは、それなりにヒップの形を浮き上がらせはするが、以 前よりも何処かアピールに欠けている気もする。全体的にも最近の母は、出来るだけ露出を抑えたような清楚なファッションが目についた。ビデオによって身体 のすべて、秘部の奥まで知っている玲二にとっては、あんなに想像しやすかった母の裸が、今はうまく思い浮かばないのが不思議だ。今の母さんの身体はどう なってるのだろう。母乳は出るのだろうか? あんな大きなモノを排出して、させられて、アソコはどうなった?生地面積の大きい服と同時にミステリアスさを まとった分、様々な妄想が頭をよぎっていく。らしくない、と玲二は思った。
「‥‥‥今日学校でさ。」
「うん。」
「母さんのこと話したよ。」
「え?‥‥‥母さんのこと?」
玲二の突然の言葉に遼子は少し目を開いて振り返った。
「なに、どんなことを?」
「ん‥‥‥ご飯がおいしいとか、そんなこと。」
「そ、そう。‥‥‥フフフフ、ご飯ね。」
拍子抜けしたように遼子は長く笑った。わざわざ言うようなことでもないのに、なぜか玲二は言ってみたかった。無邪気な子供を見るように微笑ましく笑う母の姿は、ビデオの中でもよく見た覚えがある。そんな少年の踏み台になった熟女に、見下ろされる自分‥‥‥。
「‥‥‥そいつら、家に連れてきていい。」
「いいわよ、連れてきなさいよ。」
「じゃ近いうちに。」
玲 二が頷いたその時、今まで静かに眠っていた康浩が突然泣き始めた。その大きな声が、まるで自分と母が話すのを邪魔しているみたいだ、と玲二は苦笑してし まった。母は慣れた手つきで康浩のオムツをまさぐり、近くに置いてあった新しいオムツを取り出して、康浩をベッドから抱き上げた。
「やっぱ慣れてるよね。」
「え? ‥‥‥そ、そりゃそうよ。玲二のもおんなじように替えてたのよ。」
遼子は戸惑いの表情を浮かべながら、わざと玲二を強調するように言った。その母の胸で顔を崩して泣きわめく康浩の姿に、玲二はこみ上げてくるようなジェラシーを感じる。
「オレに替えさせてみてよ。」
「なにを?」
「オムツ。」
「‥‥‥オムツ? 玲二が? いいわよぉ、母さんやるから。」
やんわり拒む遼子を強引に押し切り、玲二は床に寝かされた康浩の前に座った。そして、細かく指示してくれるのに従い、弾力のある肌からオムツを剥がしていく。弾かれたように目の前に現れる排泄器官。弟のそれを間近で見るのはこれが初めてだった。
「こ‥‥‥。」
こ れが、と言おうとして玲二は口をつぐんだ。今改めてこの子が人間であることを再認識する、それぐらいそれは象徴的に見えた。形状的には幼いのに、身体と比 べてとても大きく感じられ、そこだけには永井達に見た野性味が溢れているようだ。これは誰のコピー‥‥‥?ジッと見つめてそう思ってしまうと同時に、この 子を作った母の本能もそこに見え隠れしている気がした。思ったよりも簡単にオムツを替え終わり康浩から離れると、遼子は大事そうに康浩を抱え上げ、また寝 かしつけた。その優しげな目つきに玲二は、やはり康浩は母の一部なのだと実感してしまう。
「簡単でしょう。」
「まぁね‥‥‥。」
「フフ、これからは玲二にも育児手伝ってもらおうかしら。」
「え?」
イ ヤだ、玲二は素直にそう思った。毎日弟のチンポを見せられるなんて冗談じゃない。自分が犯されるみたいだ。母さんはどうなのだろう? 康浩のそこを見ても 何も感じないのだろうか?母さんから見たら幼いモノだってのは、相手したヤツらだって一緒だろうに。やっぱり母親だとそんなこと考えられないのだろうか。 赤ん坊を前に、こんなことを考える自分がやはり異常なのだろうか。母親らしさという点では、母は前にも増しているはず。
「‥‥‥やっぱり物足りないよ。」
「え? なに?」
「うぅん、なんでもない。さ、勉強しないと。」
「う、うん。まだするのね。頑張って。」
女 らしい淑やかな声が頭の中でぐるぐる回る。勉強のことではなく、なにか別のことを応援されているみたいだ。今の季節は夏。無意味な程照り付ける太陽は、様 々なプレッシャーを背負う浪人生には、さらにきつく感じられる。たまには気分転換を、と予備校で玲二に誘われた湯浅と木口は、その玲二の家の玄関に足を踏 み入れていた。
「あらぁ、いらっしゃい。」
出迎えてくれる玲二の母に挨拶する二人。先程まであれほど騒いでいたのに、母親を前にしてかしこまる姿は見ていて可笑しい。
「母さん、あとでコーヒーでも持ってきてよ。」
「ええ、皆さんコーヒーでいいのかしら?」
「あ、出来ればジュースなんかが‥‥‥。」
目を泳がせながら湯浅が言うと、遼子は
「はいはい」
と言いながら台所へ消えた。
「‥‥‥若いお母さんですね。」
「そっか? そんなに若くないぞ。」
三人は階段を上がって玲二の部屋へ入り、適当な場所へ腰掛けた。そしてしばらく部屋のレイアウトの話などをしていると、親のことなどすぐに忘れて話は盛り上がっていく。
「ところで、ふみやさん後で来るんですよね。」
「おぉ、ふみや。アイツ最近予備校来てんのか?」
「‥‥‥来るよ。だいぶ遅れるらしいけど。」
玲 二は部屋の西側に取り付けられてあるテレビの方を見ながら答えた。何も映っていない画面には三人の学生の姿が反射している。ぼんやりとした感じが、浪人生 という存在の希薄さを現しているようだ。‥‥‥母さんはクッキリ過ぎるくらいクッキリ映ってたのにな‥‥‥。玲二の家に皆を呼ぶという話は、ふみやがいる ときに持ち出した。当然、二人きりになってから散々反対され問い質されたが、玲二は聞き入れず
「意識する必要ない」
と強引にふみやを家に呼びつけたのだった。‥‥‥母さんも‥‥‥ふみやも、いったいどんな顔して会うんだろうか‥‥‥。そんなことを考えると、全身の血が頭を駆けめぐっていくのを感じる。
「‥‥‥やっぱり女なんですよねー。女がいりゃ‥‥‥‥‥‥くんくん、くんくん‥‥‥海山さん、この部屋女の匂いゼロですね。」
「女女うるせーなぁ。ナンパでもすりゃいいだろ。」
「出来ますかナンパなんか。そこまで男捨ててませんもん、オレ。木口さんはどうなんです? 部屋の押し入れからは幼女の泣き声が、とか‥‥‥。」
「‥‥‥お、どれどれ。」
木口は露骨に無視すると、テレビの横に積み上げられていたビデオを物色し始めた。
「ほう‥‥‥海山君。なんだね、このビデオテープは。」
「エロビデオ。」
玲二は少し笑いながら躊躇無く答えた。
「ふぅむ‥‥‥。結構持ってるねぇ。これはイカン、上映するべきだよねぇ、湯浅君。」
「当たり前じゃないですか! ほらほら、早く早く‥‥‥。」
「止めといた方がいい。気持ち悪いから。」
勝手にテープをセットしようとする木口を、玲二はやんわりと止めた。
木口は長髪を揺らしながら玲二を振り返る。
「気持ち悪いって?」
「だって熟女物だもん、それ。すっげぇオバサンが色々してんだけど。観たい?」
「‥‥‥ハイ、止め止め。」
木口は大きく溜め息をつき、ビデオテープを乱暴に元あった場所へ戻した。
「オ、オバサンですか‥‥‥。それはキツイっすね。」
「だろ?」
それでも何処か興味ありげな湯浅を見て、玲二は小さく笑った。‥‥‥オバサンオバサンって、実際裸で目の前に立たれたら圧倒されると思うけどな‥‥‥。その時、ドアを数回ノックする音が聞こえ、コーヒーとジュースを持った母が部屋に入ってきた。
「はい、どうぞ。」
しっ とりとした優しい声が部屋に響き、腰をかがめてカップをテーブルに置く母のスカートから、ほんのりとフローラルの香りがまき散らされる。母はいつも通り、 ロングスカートと身体にフィットしたグリーンのカーディガン姿。玲二はそのカーディガンに丸く吸い付いたような乳房や、たっぷりとスカートを盛り上げる ヒップを、どこか誇らしげに眺めた。
「あ、ありがとうございます。」
「それにしても暑いわねぇ。玲二、エアコンつけたら?」
「うん。‥‥‥母さん、康浩何してる?」
「え? あ、うん。さっきから寝てるけど‥‥‥。」
「そう。」
少し笑みを浮かべて首を傾げた母は
「ゆっくりしていってね」
と 言って部屋を出た。途端に部屋の中がまた一段と暑くなったように感じる。‥‥‥やっぱり母さんにはどっか華やかさみたいなものがある‥‥‥。女なら誰でも 持ってるのかも知れないけど‥‥‥。湯浅と木口を見ると、何かを言いたそうにドアの方を見ていたが、すぐに他の話題を持ち出して盛り上がっていった。やは り家族の話をするのは失礼だとの、二人なりの配慮だろう。玲二も二人の話に付き合っていき、しばらくするとまた当然のように女性の話題が持ち出された。
「‥‥‥うざいんすよね、オレの友達が。付き合ってるからって‥‥‥。」
「自慢すんのか。」
「そうじゃないんですよ。何も言わないんだけど、なーんかオレ達を虫ケラのように見てるって言うか、裏で笑ってるっていうか‥‥‥。」
「ひがみって言うんだよ、それ。」
カップを手にとって湯浅を笑った木口だったが、コーヒーを一口すすった後、大きな溜め息をついた。
「‥‥‥って言ってるオレも、近頃はなんもイイコトしてねーからなぁ‥‥‥。海山は?」
「オレなんか、もぅずっと。」
「あーぁ、やらせてくれる女でもいたらなぁ‥‥‥!」
湯浅の本心から出たような言葉を聞きながら玲二は壁に掛かっている時計を見た。窓から見える太陽は高く、まだふみやが来たような様子はない。テレビの横に積まれているビデオに目を移すと、自然と身体が熱くなってくるのが分かった。
「‥‥‥熟女でもか?」
「え? なんです?」
「やらせてくれる女って、すげぇオバサンでもいいのか?」
「‥‥‥海山さん、もしかして熟女好きなんです?」
湯浅は少し声のトーンを落として聞いた。木口もなぜ玲二が熟女にこだわるのか気になるようだ。
「そういう訳じゃないけど‥‥‥。高校の頃、スゲェ熟女の話聞いたからさ。」
「スゲェ熟女?」
二人ではなく、ドアの方を気にしながら話す玲二に視線が集まる。
「‥‥‥どうスゴイんです。」
「オレらに色々させてくれるっていう‥‥‥。」
「マ、マジですか!」
「ほー‥‥‥!」
わざと『オレら』という表現を使った玲二を、二人は目を開けて見つめた。かなり興味を惹いたようだ。湯浅がビデオテープに一瞬視線を走らせるのが判った。
「ど、どんなどんな‥‥‥詳しく聞かせてくださいよ。」
玲二は一息つき、コーヒーカップに手を伸ばした。効き始めたクーラーの冷気が玲二の喉を渇かし、部屋のすみずみに行き渡ろうとしている。この冷気が、まだ部屋に残るフローラルの香りを消し去る前にと、玲二はこれから話す『優しい』母の姿を強く思い浮かべた。
「オレも聞いただけなんだけど‥‥‥。」
玲二はわざと勿体ぶって、コーヒーを一口すすった。
「なんか、四〇くらいの熟女がオレの同級とできたらしくて。」
「できた?」
「できちゃったらしい。」
「へぇ。変わったオバサンですね。風俗の女とか‥‥‥?」
「いいや。普通の主婦って感じ。そっち系じゃない。」
そう強く言って二人を見ると、思い付いた顔をした湯浅が一度頷いて口を開いた。
「援助ですか。」
「いや、金とかは‥‥‥よく知らないけど、まぁとにかく結構マジだったらしくて。とくに主婦の方が。」
「‥‥‥主婦がねぇ。」
「で、そのオバサンは当然その同級のヤツとやりまくったらしいよ。」
「やりまくり! ですか。」
湯浅が羨ましいといった様子で目を大きく開いた。
「そう‥‥‥そりゃやりまくるだろうな。それしかないだろ。相手は主婦だからってそいつ、ナマで遠慮無く‥‥‥してたらしい。」
「ナマ!」
二人が驚くのに頷いてから玲二は続ける。
「主婦も馬鹿なのか知らないけど、無防備にやらせてたんだって。高校生相手にさ。」
「ム、ムチャしますね。」
「聞いたらそのオバサン、高校生の息子がいるんだってよ。」
「‥‥‥おいおいおい、マジかよ? それでナマー!?」
二人が更に驚くのを見て、玲二はなぜか誇らしげな気分に包まれた。その凄いオバサンが自分の母親であることが、くすぐるような優越感を運んでくるのだ。
「で、そのうち、その同級が他のヤツにもマワしたらしくって、そのオバサンみんなにやられまくり。」
「や、やられまくり‥‥‥っスか。」
「何も言わないのか、そのオバサンは。」
「その好きにさせたヤツが言えば、ほとんどの事は聞くらしくて‥‥‥。そいつ中坊とかにも試させてたみたいでさ。オバサン、そりゃあ優しくやらせてあげるんだって。」
「‥‥‥‥‥‥。」
「惚れるのが悪いんだよな‥‥‥。」
自分に聞かせるように言って二人を見ると、二人とも玲二から目を逸らして複雑な表情をしている。玲二はテーブルの上のコーヒーカップを手に取って、母が煎れてくれたコーヒーに自分を映した。
「‥‥‥羨ましいですねぇ。」
「‥‥‥でも、ナマだろ、いいのかぁ?」
「オバサンだし構わないでしょ。」
「バカ! オバサンだからヤベェんじゃねーか。出来たらどうすんだ。」
「中高生孕ますよりいいじゃないですか。」
長髪を振り乱しながら湯浅に言い聞かせようとする木口の言葉を、玲二は少し離れた世界から聞いていた。ぬるくなったコーヒーなのに、不思議と美味く感じる。家の近くに留まったセミが、元気良く鳴き始めるのが聞こえた。
「‥‥‥そのオバサンって、見た目どんななんだ? キショいんじゃないのか?」
「そんなに悪くないと思う‥‥‥。オレらよりも下のヤツがヤレてるんだし。」
「でも、ちょっとヘンタイ的な感じしますよね。中学生でも誰でもって、それじゃ‥‥‥。」
「いや、いるじゃん。頼まれたら断れない優しい女って! 多分それなんだよ。」
変態的と言われたのに少し腹が立って、玲二は気色ばんで湯浅に反論した。その様子があまりに本気に思えたのか、湯浅は一気に縮こまってうつむいた。
「み、海山さん、その熟女知ってるんです?」
「あ‥‥‥ん、知ってるって言うか、まぁ‥‥‥。」
「見たことあんのか?」
「ん‥‥‥まぁ。」
玲二は曖昧に頷き、持っていたカップをテーブルに戻した。
「結構美人なんだよ。普通のおばさんって感じで、綺麗な‥‥‥。」
「‥‥‥へぇ。なんでそんなオバサンが高校生に惚れちゃったんだろうな。」
「そりゃオスとメスには違いないから。やっちゃったらそうなるんじゃ‥‥‥。」
「‥‥‥。クソォ、そんなの知ってたらオレだって‥‥‥。」
小 さく溜め息をつく湯浅を見て、玲二は気付かれないように笑った。ベージュのハーフパンツの股間部は少し盛り上がり、中の男は勃起しているように見える。そ れは木口も同じようだった。‥‥‥2人とも今、どんな熟女想像してるんだろう‥‥‥。もしかして母さんみたいなのをイメージしてる‥‥‥?テーブルの周り にほんの少し残っていたフローラルの香りが、玲二の鼻腔へ舞い込んで心をくすぐった。玲二にとってはとても母性的な香り、だが、他の男達にとってはどうな のだろう。
「‥‥‥それで、今その熟女どうなってんだ? 海山。」
「あ、さ、さぁ‥‥‥。でも、色んな話は聞いた。」
「どんな?」
「4,5人と乱交したとか‥‥‥色々。あと、これはオレのよーく知ってるヤツから聞いた話なんだけど‥‥‥。」
玲二は言いながらテレビの横に積まれてあるビデオテープを見た。その中には、美しい母のあられもない姿が記録されている。‥‥‥ふみや‥‥‥まだ来ないのか‥‥‥?時計を見ると、まだそれほど時間は経っていない。
「‥‥‥アナルセックスもOKらしいんだよな。」
玲 二はこの話を親友に聞かせてやれない事を残念に思った。ビデオテープが回る音が始まると、画面には形の良い尻が真上から映し出された。腰から太股にかけて 女性らしく張り出したラインを描き、部分的にではあるが垂れ始めた肉が持ち主の年齢を感じさせた。膝を立て、四つん這いになっている床には適当にあしらわ れたようなシーツが敷かれ、画面の端にはフローリングの冷たい床が見える。女性の腰部分には捲り上げられた薄地のスカートが絡んでいた。長さもデザインも 一般的で清楚な物だ。
「‥‥‥途中からだけどいいよな。」
玲二は後ろを振り返らず聞いた。
「こ、これ、ホントにその熟女なんですか!?四〇越えてるっていう‥‥‥。」
「ああ。なんかちょっと違うだろ? ケツの形も。」
「確かに‥‥‥。あまり若くはなさそうだな。」
湯浅と木口は身を乗り出し、テレビに近寄った。しばらく上部からの尻を映した画面に、筋骨ばった肌黒の手が伸び、その尻の上に添えられる。それと同時にアングルは下がり始め、股の間に隠されていた器官が画面中央に現れた。モザイクも何も付いていない、そのままの女性器だ。
「わっ、ホントだ‥‥‥! モロですね‥‥‥!」
少 し突きだし気味に拡げられた尻のため、性器だけではなく肛門もはっきりと映し出され、映像の悪さからくるどぎつさを増幅させた。その性器は少しだけ湿った 様子が見て取れ、長い亀裂はあるべき陰毛によって隠されていない。亀裂に寄り添うアヌスは窪みもなく、濃い褐色の輪と皺の中でひっそりとしていた。ビラビ ラが左右にめくれ複雑な肉の構造も、アヌスの輪の濃さも、使い込まれた年月の多さを見る者に印象づけるようだ。トップシークレットであるべき、女性の秘密 の箇所。そこに男の中指が伸び無遠慮に亀裂をなぞると、内部のナマナマしい壁が覗けた。
「高校生の子供がいるって言ってたよな、確か‥‥‥。」
「そう。」
この部分から産まれた事を意識したのだろうか。木口の唾を飲む音が聞こえた。
「い、いいんですか、こんなにモロ見せて‥‥‥。毛もないし‥‥‥。」
男 の中指がだんだんと性器の上へ移動し、肛門に蓋をするように触れると、絞ったスピーカーから小さい女性の声が聞こえた。恥ずかしがるようなその喘ぎに、画 面を見つめる男2人も敏感な部分に触れられたように体を震わす。男の指がこねるように動き始めると女性は開いた脚を閉じようとし、それでも指の動きが止ま ないと、諦めたように尻を全開にした。男の指が肛門への進入を目指している事は明らかだった。しかし、ゆっくりとした動きでも、なかなか内部に進入しな い。まだこの器官で男を受け入れた事がないのだ。
「マジでこのビデオ‥‥‥そっち系なんですか?」
「だよ。この熟女の始めてのアナルセックス。それだけだけど‥‥‥。」
「相手は‥‥‥?」
「その高校生。」
玲二がそう答えた時にカメラは尻から離れ、身体を真後ろから写した。衣服をまとったまま上体を下げ尻をかかげる熟女の黒髪と、だらしなく学生服を着た少年の姿が画面に映し出される。
「おいおい、マジ高校生じゃねぇか!」
「だからそうだって。」
「それに、熟女もホントに熟女‥‥‥!」
聞 いてはいても、永井の姿や遼子の着た服がテレビに映されると、二人は更に衝撃を受けたようだった。遼子の先には流し台があり、フローリングの床には脱ぎ捨 てられた下着が落ちている。ビデオの前半、流しの前で家事をする遼子を高校生2人で襲い脱がした、色気のあまりない主婦的なショーツだ。玲二は一度ビデオ を止め、早送りボタンを押した。
「あっ、何で‥‥‥!」
「ずっと同じシーンで面白くないから。」
本当は母の表情が鮮明に写されるシーンが多々あるからだが、玲二は覚えている時間まで早送りして、再生ボタンを押した。画面には先程と同じく後ろからの尻のアップが写り、アヌス周辺はヌメっとした液体で艶光りしている。
「ローションか、あれ‥‥‥。」
「‥‥‥もうちょっとでヤリますよ。」
「も、もうするんですか‥‥‥。」
遼子の閉ざされていた秘孔は今やだらしなく緩まされ、少年の指を根元まで差し込まれていた。画面には指が出入りする様子がはっきりと映り、スピーカーから小さく「アナル」などの単語が聞こえてくる。
「海山さん、マンコはしないんですか。」
「‥‥‥ああ。アナルだけ。」
「で、でも、入るんですか? 指でもギュッて締め付けてる感じするけど‥‥‥!」
「そりゃ入るだろ。‥‥‥熟女だから。」
「うんこする穴ですよ。そこにチンポを‥‥‥? 本当に‥‥‥?」
完 全に指を受け入れるようになった肛門から指が離れると、カメラは数メートル後ろへ離れた。すぐにきつく口を閉じようとする母のアヌスと、それに間に合わす ように急いでズボンを脱ぎおろす永井。本気なのか窺うように、四つん這いの遼子がカメラの方と永井を交互に振り返った。その姿と、家事をこなす家庭的な母 の姿が玲二の胸で交差する。スカートだけを捲り上げられた姿といい、排泄器官をさらけ出された姿といい、哀れさを感じずにはいられない。その母の肩口に は、まだ幼い顔つきの高校生が目をキョロキョロさせ、事態を見守っていた。そして画面に勃起した永井のペンスが映る。
「うわっ、でけぇっ!!」
そ れを見た湯浅は思わず後ろへ反り返った。エラの張った亀頭や太い血管から、圧倒的な『男性』が伝わってくる。少年はそのチンポを何度かしごくと、ローショ ンを亀頭から根元にかけて塗りたくった。そして熟女の尻を前に中腰になる。画面越しでもクッキリと見える太く浮き出た血管には、同年代の息子を持つ女性に 対する遠慮は感じられない。
「やる気‥‥‥ですね。」
遼子の白く柔らかそうなヒップを永井の手が掴むと、その様子を横から撮していたカメラが一瞬、遼子の背中の方も撮した。不安げな表情で振り向き、背後の少年の様子を窺う母の姿。永井は遼子の女性器に肉棒を擦り付けた後、当然のように亀頭を肛門の輪に密着させた。
「ホントにコイツ入れる気ですよ!マンコじゃなくて!」
「マジかよぉ‥‥‥。」
「うわ、うわ、入ってく‥‥‥!」
亀頭の先端でえぐるように、小さな穴への進出を開始する男根。母の肛門はゆがみ、圧されながらも、物理的に無理だというように押し返す。しかし、そんな事はお構いなしに腰を押す永井の前に、尻の皮膚は引っ張られ、そして、観念したように亀頭を含んでいった。
「入る、入る‥‥‥! やばい、全部入る、入ってく‥‥‥!」
3 人が見守る中、ゆっくりと排泄器官へ埋没していく若い肉。スピーカーから漏れる母のか細い呻きの中、すべてが呑み込まれるまでにそれほど時間は掛からな かった。‥‥‥初めて‥‥‥。どんな気持ちなんだろ、母さん‥‥。カメラが動き、挿入を果たした永井の顔を撮すと、永井はカメラを意識するように笑った。 そしてゆっくりと腰の律動を始める。
「うわっ、痛そっ‥‥‥! 摩擦が‥‥‥。」
「あんな奥まで入れるかよ‥‥‥。」
スピーカー から遼子の低い呻き声が漏れる。大人の女性らしく受け止めたノーマルセックスの時とは違った、全く余裕のない声だ。カメラが二人の背後に移動すると、股の 中央に走る淫裂、そしてその上部にはキッチリと食い込む男が映った。永井が引くと尻肉は大きくゆがみ、突くと尻肉全体が窪んでいく。体内への暴力。母に泣 き声のような呻きを出させる仕打ちを前にして、玲二はそう思った。‥‥‥いつ見ても凄い‥‥‥。でも、母さんはコイツの女なんだから‥‥‥。躍動感溢れる 永井の一突き一突きは、まるで母自身の年齢を母に教え込んでいるかのようだ。母の呻きに重なって、おどけながらソコの感触を話す永井の声が聞こえる。
「このオバサン、これ初体験なんだろ?」
「エグいっすねぇ‥‥‥。痛くないんですかね。」
「痛い‥‥‥だろ。いくら熟女でも、あんなデカいの入れられちゃ‥‥‥。」
自 分達の母親と変わらない熟女の逸脱した行為を、食い入るように見つめる二人。陰毛を剃られ唇を拡げる母の女陰が、今はアナルセックスを示す目印になってし まっていた。‥‥‥いくらレイプされたからって‥‥‥こんなヤツを好きになるなんて‥‥。玲二は今階下にいる遼子と、その遼子が産まされた子供の事を思い 浮かべる。‥‥‥おばさんなんて遊ばれるだけなのに‥‥‥。実験台とか言って‥‥‥。奴らにとって、他人の母親などその程度の扱いでしかないのだ。ポッカ リと開けられた肛門がそれを物語っている。しかし、そう思うと逆に激しい興奮が玲二を襲った。
「あ‥‥‥ホントだ。結構美人じゃないですか!」
「だな‥‥‥?」
カ メラが動いて永井の斜め後ろから行為を撮すと、上体をうつ伏せながら振り返る遼子の顔が映った。逆方向なのではっきりとは映らないが、苦しそうに眉根を寄 せ、自分を深く突く若い愛人を見上げようとしている。後ろを向けと命令された訳ではなくても、そうしてしまうのだろう。‥‥‥いじられてる時顔撮された ら、恥ずかしがってすぐカメラから目逸らしてたのに‥‥‥。永井が全身の力で突くと母の尻肉は波打ち、内部からの衝撃に「ん、ん」
と絞り出される ような声を漏らす。排泄器官でひとつになった熟女の真剣な反応が、永井の腰の動きに力を与えるのだろう。母の肛門の皺は伸びきり、逞しい永井の亀頭を何度 も何度も呑み込んだ。その映像にまた、日常での母の姿が重なっていく。‥‥‥オレの‥‥‥オレの母さん‥‥‥だよね?そんな玲二を嘲笑うかのように、永井 は腰の動きを速めて母の尻をきつく掴んだ。そして、スピーカーから響く叫び声。何度もビデオを見返した玲二には、永井の体内と母の体内が太いパイプで結ば れたような感覚を受ける瞬間だった。
「‥‥‥こ、こいつ、もしかして‥‥‥イッたんじゃないんです?」
「だろか‥‥‥。」
長い長い沈黙。
しばらくして、湯浅と木口がジッと見つめる中、永井のチンポは母のアヌスから抜かれた。
半立ちになったそれは、深く挿入していた事を示すかのようにぬめり、湯気が出そうな体液を多量に付着させていた。
「‥‥‥うわっ、開いてる‥‥‥。」
性交を終えたアヌスはだらしなく口を開け、しばらくして変色した精液を垂れ流し始める。
そ の映像に、母の悲鳴のような溜め息と永井達の喚声が重なった。やっぱりやっぱり母さんは女だよ。ほら、この2人も母さんの身体見てこんなに興奮してる。 ジュ、ジュ、ジュ、ジュ、ジュ、ジュこうじゃないと、こうじゃないと。誇らしげな気分の中、射精を始める玲二。画面には、精液を垂れ流す母の股間が大写し にされていた。
「‥‥‥中に出した精子ってどうなるんですかね?」
微妙な空気が流れる玲二の部屋。カーテン越しに見える太陽はまだ高い。玲二は
「これで終わり」
とビデオテープをデッキから取り出すと、乱雑なテープの山へ重ねた。本当はこの後、騎乗位で連れの高校生に初体験させる母に、永井がもう一度肛門へ挑んで失敗するシーンへと続くのだが、顔がハッキリと映るので見せる訳にはいかなかった。
「‥‥‥どうなるって?」
2人の声は毒気を抜かれたかのように小さくなっている。
「身体の中に出すわけじゃないですかぁ。どうなるのかな、って‥‥‥。」
「そりゃ、そうしなきゃガキ出来ねぇだろ。」
「でもあんなに一杯出すわけでしょ。腹に溜まってくっていうか、生き物みたいなもんだし‥‥‥。あれって自分のが手に付いただけでも嫌なのに。」
「それ言っちゃ始まらないが‥‥‥。そうだな、それを熟女のケツの中にか‥‥‥。」
「どうするんでしょうね‥‥‥。」
2人は揃ってビデオテープを見つめた。
「‥‥‥なあ海山。その熟女な、中出しOKだったんだろ?」
「OKかどうかは知らないけど‥‥‥。」
「妊娠しなかったんですか?」
‥‥‥ さあ‥‥‥。玲二は母の煎れてくれたコーヒーをゆっくりとすすった。今は寝ているはずの弟の、小さな手や顔が頭に浮かんでいく。‥‥‥実は避妊してたん じゃねーのか? 手術とかしてさ‥‥‥‥‥‥だいたい、四〇過ぎて妊娠しますかね?‥‥‥‥‥‥相手は高校生だしな?‥‥‥‥‥‥いや、オッサンよりオレ らの方が向いてるかも。量だって‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「‥‥‥ねぇ、海山さん?」
「‥‥‥ん、ああ。何?」
「やっぱり、熟女とか人妻は色々ヤバイですよね。」
「‥‥‥かもな。」
玲二は射精の疲れからかハッキリとしない頭を掻いて、もう一口コーヒーをすすった。まだほんの少しだけ、母の匂いと味が残っている。時計を見ると、この部屋に入ってから2時間近くが経とうとしていた。
「ふみやさん来ないですね。」
「‥‥‥。」
「そうだな。」
「そうそう、ふみやさんと言えば‥‥‥。凄いんですよ。」
「何が?」
「‥‥‥チンコのでかさ。この前、トイレで見ちゃったんですよね。」
「ハハハ、アホだなお前。」
「‥‥‥‥‥‥。」
‥‥‥ふみやの‥‥‥でかいのか‥‥‥。じゃ、それを母さんは知ってるんだな‥‥‥。
玲二は母とふみやが絡み合っているシーンを想像した。ふみやからは『その時』の詳しい話を聞いたが、きっとお互いしか知らない事実も多くあるはずだ。それを思うとまた嫉妬が入り交じった興奮が全身を巡っていく。
「なあ腹減らないか?」
「そういえば、ちょっと。」
「‥‥‥なんか親に頼もうか?」
「いや、それは悪いからどこか食いに行こう。」
「でも、ふみやさんは?」
「もう来ないよ。なあ? 海山。」
「‥‥‥そうですね。」
‥‥‥ バカだな、ふみや。母さんのビデオ見れたのに‥‥‥。‥‥‥でも、そっちも母さんとしてたりしてな‥‥‥。3人が部屋を出て階段を下りると、居間の方から 小さな話し声が聞こえてきた。玲二が居間のドアを開けると、スリッパを履いて立ったまま携帯電話を手にした遼子が、ちょうどこちらを振り向くところだっ た。
今見たビデオの主役だ。
「あら玲二。どこか行くの?」
そんな事を知らない母は、いつもの声で玲二に聞いた。
「‥‥‥うん、なんか食べに行こうかと思って。」
「お邪魔しましたー。」
「いいえ。」
遼子はとても爽やかな笑顔を湯浅と木口に見せる。玲二はその2人が側にいるのも構わず、母の清潔なスカートをジッと見つめた。予備校生の母親らしく淑やかさに包まれた外見からでは、アナルセックスの痕など微塵も感じられない。だが、服の下の現実は違うのだ。
「すぐ帰ってくる?」
「‥‥‥どうだろ。分からない。」
ス カートから目を離して側の2人を窺うと、2人も同じように母の身体を見ていた。‥‥‥熟女はヤバイとか言ってたクセに‥‥‥。先程のビデオで性欲が刺激さ れているのだろう。横に息子がいるのにも関わらず、目はぎらついている。玲二の斜め後ろに立つ湯浅が、小刻みに腰を数度突き出したのが目に入った。‥‥‥ 湯浅、本気で母さんに欲情してる‥‥‥。でも、さっきのビデオが母さんだって気付くだろうか‥‥‥?ゆっくりとドアを閉めると、そのドアの表面に妊婦だっ た母の姿が浮かびあがる。
「‥‥‥若いお母さんですね。」
「‥‥‥確かに若いかもな。最近子供産んだくらいだから。」
「こ、子供ですか!?」
「そう。オレの弟。」
「へ、へぇ。凄いな。海山とかなり歳離れてるじゃないか。」
湯 浅と木口は唖然とし、玲二の横で顔を見合わせた。2人とも先程のビデオのように、精液を注がれる女体を想像しているのかも知れない。‥‥‥凄いだろ? オ レの母さんは。こんな大きな子供がいるのに、水着着たりしてたんだってさ‥‥‥ふふ‥‥‥。先程射精したばかりのチンポが、またも固く勃起を始める。遼子 が他の少年達に女として意識されたり、優しさを与えたりするのを見ると、何よりも母性を感じた。いくら親子関係がぎこちなくても、誰が父親か判らない赤ん 坊を弟と言われても、玲二はそれで満足できた。‥‥‥オレにはビデオがある。母さんの優しさが詰まったビデオが‥‥‥。そしてその母は弟がいる限り、どこ へも行かないのだ。‥‥‥直接的な優しさはいらない。もう普通の母子じゃないから‥‥‥。麻酔がかかったような気怠い頭を振り、靴を履いて表へ出ると、 真っ白な熱光線が降り注いでくる。もう梅雨の時期は過ぎた。
「ただいま。」
玲二がいつものように予備校から帰ると、パタパタとスリッパの音をさせて遼子がやってくる。
「お帰りなさい。」
「‥‥‥うん。」
玲二は母から目を逸らすようにして玄関を上がった。また一緒に暮らすようになってかなりの時間が経つのに、まだ真っ直ぐに目を見て話す事が出来ない。
「玲二、勉強はどう? うまく進んでる?」
「‥‥‥まあまあ、かな。康浩は?」
「え? あ、うん。今起きたばかりよ。」
「そ。父さんは休みじゃ‥‥‥そっか、今日から出張だっけ。」
玲二は母を無視するように横を通り過ぎると、階段を上りながら父、祐一の事を思った。
最初は康浩との接し方に戸惑いがあったらしい祐一も、最近は暇を見ては可愛がるようになっていた。そんな父の巨体を見るたびに玲二は哀れさを思う。誰だかも知らない男の、大きな責任を負わされたのだから。
「‥‥‥母さん。」
「なに?」
玲二は階段の途中で立ち止まり、ジーパン姿の母を呼び止めた。
「シャワー入るよ。汗かいて身体ベチョベチョになったから。」
「あ、そうなの? じゃ、バスタオル用意しとくわね。」
「いい。自分でするから。」
「そ、そう‥‥‥。」
遼 子のしっとりとした大人の声に悲しさがこもったのを意識しながら、玲二は階段を上った。‥‥‥もう少し素直になってもいいか‥‥‥? いや、いいん だ‥‥‥。部屋のドアを開けると、窓から入ってくる真夏の風と、テレビの横に積まれたビデオテープに目がいく。その黒い長方形に、ジーンズに詰まって揺れ る母のヒップが重なった。普通にはまず見る事の出来ないその主婦の身体を、このビデオテープは見せてくれるのだ。窓から日射しが差し込む風呂場に入った玲 二は、まず全身にシャワーを当てた後、タイルに座り込んだ。外の湿気に負けないくらいの熱湯がシャワーから噴出されてくる。玲二は風呂につかるよりも、こ うしてシャワーを浴びるだけの方が好きだった。
「‥‥‥勉強、か‥‥‥。」
玲二はシャワーに当たりながら呟いた。
「まあまあ‥‥‥ホントそんな感じだな。それなりに‥‥‥無理もせず‥‥‥。」
今 日は予備校を途中で切り上げ、木口に湯浅、そしてふみやと一緒に繁華街を歩いた。みんなでエロ話に盛り上がった時の、ふみやの浮いた笑いが耳に残ってい る。‥‥‥アイツ、母さんのあんなビデオをオレが持ってた事知って、ちょっと驚いてたっけ‥‥‥。ふみやは玲二の家に来なかった理由を言わなかったし、玲 二もあえて聞かなかった。そんな状態でもお互い友人関係を保っていけてるのは不思議だと思う。玲二はシャワーの飛沫を、己のシンボルへと向けた。皮は剥け ていても女を知らないチンポ‥‥‥。‥‥‥同じ童貞だったふみやは、もう何度も経験してるのにな‥‥‥。陰部に当たって跳ね返る熱湯を見ながら、玲二は親 友の童貞を奪った母の裸を思い浮かべた。幾分張りの無くなった白い肌に、垂れ始めた肉、様々な経験を写したような性器‥‥‥。
「ずるいよ。子供のオレが一番味わえてもいいはずなのに。」
少し笑って本心からではなくそう呟いた時、背後でドアが開くような音がした。気のせいだと思った玲二は振り返らず、シャワーのお湯に反応を示すチンポへと手を伸ばした‥‥‥その時。
「玲二‥‥‥。」
「‥‥‥え?」
真後ろから小さく聞こえた声に驚いて振り返ると、玲二のすぐ後ろに遼子が立っていた。
今まさに本気で思い出そうとした、全裸の姿で。
「‥‥‥‥‥‥え?」
‥‥‥ あれ?‥‥‥夢か?‥‥‥妄想?玲二は訳も分からず目の前の肉体を眺めた。全身を覆う物は何一つ無く、乳房もへそも、毛穴までもが窓から入る日射しによっ て露わになっている。そして、座っている玲二の正面の位置には、大人を象徴するような黒々とした陰毛が茂っていた。唖然として顔を見上げる玲二。
「ねえ、一緒に入りましょ。」
「か、母さん!?」
‥‥‥ な、なんで‥‥‥!? どうして!?少し恥ずかしがって言う母に玲二は驚き、その顔と身体を見比べた。いつも想像していた裸、ビデオで細部まで見た身体、 それらの印象が全て吹き飛ばされるような圧倒的リアル感。太股に透けた血管や肉の微妙な動きが、生命の息遣いを感じさせるようだ。加えて、崩れた乳首や全 身のスタイルが、完熟した雰囲気と年齢を如実に感じさせる。‥‥‥間違いない、母さん‥‥‥。でも、ビデオで見るのと全然違うみたいだ!そのまま母の身体 に目を奪われた玲二だが、しばらくして我に返り背中を向けて縮こまった。‥‥‥な、なんで? オレも素っ裸なのに‥‥‥!身体を動かす音が狭い浴室に響 き、遼子もタイルへ座ったのが判った。入ってくる以前から半立ち状態にあったチンポは反り返り、今や両手に余る程になっている。小さなモニターの向こうで しか知らない『本物の母』との対面に、玲二は混乱と興奮で頭の中が真っ白になっていくようだった。玲二はピクリとも身動き出来なかった。真後ろから聞こえ る、一糸纏わぬ母の息遣い‥‥‥。ビデオでは決して味わえぬ肌の温もりまでもがビリビリ伝わってくるようだ。
「ど、どうして?」
玲二は震える声で呟いた。しかし遼子は何も言わず、玲二の腰を挟み込むようにした両膝が視界に入ってくるだけだ。‥‥‥母さん‥‥‥真後ろで股開いてる‥‥‥!?動く事が出来ない玲二の耳元に、しっとりとした声が囁きかける。
「恥ずかしがらなくてもいいじゃない。母さんの事色々知ってるのに。」
「え!?」
「‥‥‥そうなんでしょう。」
驚いて振り向いた玲二のすぐ後ろに母の顔はあった。笑みの中に真剣さをにじませた表情で、息子の様子を窺っている。そんな表情を見るのは初めてだ。
「ねえ‥‥‥母さんのどんな事知ってるの?」
玲二は意識が遠くなるような気がした。‥‥‥母、さん‥‥‥オレがビデオで見てたの‥‥‥知ってる‥‥‥?
「ねえ、玲二。」
問い質すような声にも玲二は何も言えなかった。親子関係が崩れてしまうかもしれないと思えば、言えるはずがなかった。‥‥‥怒ってるのか?‥‥‥分からない‥‥‥。
「‥‥‥母さん、誰とどんなセックスしたか知られちゃってるのかしら。」
遼子がそう呟いた次の瞬間、チンポを隠す手に何かが触れ、全身に雷のような電気が走った。驚いて下を見ると、後ろから回された遼子の手が玲二の手をかき分け、チンポに触れている。
「なっ‥‥‥!!」
「悪い子ね。」
耳元に聞こえる、しっとりと女らしい声。繊細な指は身動き出来ない玲二の勃起をしばらく撫でた後、ゆっくりと上下にしごいた。とてもソフトに、かつ刺激的に。その皺の目立つ指が、自分に勉強を教えてくれた時に鉛筆を握っていた指と同じ物だとは信じられない。
「や、やめて、母さん‥‥‥。」
為すすべもなく手の動きを見つめる玲二。手をどかそうにも、金縛りにあったかのように身体が動かない。背中へは、マシュマロのように柔らかい乳房が押し付けられてくる。
「‥‥‥ごめんなさい玲二。でも、こうでもしないと‥‥‥。」
‥‥‥ これは‥‥‥母さんの意志なの?‥‥‥それとも、また永井とかに命令されて‥‥‥!?遼子の指の動きはどんどん速くなる。実の母にそこの形状を知られるば かりか、射精にまで導かれようとしている。宙に向いた尿道口がピクピクと動き、己の絶頂が近づいているのを、玲二は客観的に悟った。
「素直になってくれないから。」
遼子は寂しげに呟いた。玲二の心に、いつか聞いた
『もっと希望を口にして欲しかった』
という言葉がよみがえる。息子に素直になってもらおうと、母はこんな事をするのか。
「‥‥‥や、やめ‥‥‥母さん。」
「いいの、母さんに全部任せて‥‥‥。」
「もう、もう‥‥‥‥‥‥やめてくれぇっっっっっ!!!」
何もかも吹き飛ぶくらいの大声で玲二は叫んだ。狭い浴室にその叫び声が木霊し、遼子の手の動きはようやく止まる。
「‥‥‥‥‥‥ごめん、母さん。分かったから‥‥‥だから‥‥‥。」
母の手が驚いたようにチンポから離れると、玲二はいきり立ったままのそれをしばらく眺めた。‥‥‥オレのこれは‥‥‥いつも、いつも‥‥‥母さんを向いてた‥‥‥‥‥‥だけど‥‥‥。
「玲二‥‥‥。」
息子を気遣う、心配げな母の声。今は乳房だけではなく、下腹のヘアの感触までもが背中から伝わってくる。玲二はようやく、ずっと観客だった自分が今、舞台の上にいるんだという事を意識した。
「‥‥‥母さん、オレ‥‥‥。母さんとセックスしたいよ。」
窓からの日射しが照らす浴室。しばらく目を瞑っていた玲二は、静かに、そして驚くほど素直に自分の欲求を口にした。
「セックス? ‥‥‥ええ、玲二がしたいならいいわ。しましょう。」
予想していたとはいえ、あまりにも簡単に同意する遼子。その声色には、意固地と言ってもいいような意志の強さが感じられた。
「‥‥‥でも、それは出来ないよ。だってオレ、母さんの息子じゃないか。」
「うぅん、それはそうだけど‥‥‥。構わないから、ね?」
乳 房を押し付けるようにして、母は玲二の首に手を回してくる。その仕草に、自分が産んだ子供を相手にしているという躊躇は感じられない。母の肌の温もりや柔 らかさ、それにチンポを触った指の感触が、玲二の動物的な本能を否応なく刺激していった。‥‥‥違う違う‥‥‥! オレは母さんの息子なんだ。なのにヤツ らと一緒の事をしたって‥‥‥。それに、どうして‥‥‥。自分も半分意固地になっているのに気付きながら、玲二は母の腕をほどいた。
「ホントにオレ、母さんとしたいよ。‥‥‥したかった。いけない事だけど。」
「そう‥‥‥。うぅん、いいの、確かにいけない事だけど‥‥‥。しましょう? 玲二。」
「いや、出来ない。それにどうして? いきなりこんな‥‥‥。」
「それは‥‥‥。こうすれば玲二、素直になって接してくれるんじゃないかしらって、母さん‥‥‥。」
「じゃ、『色々知ってるのに』ってのは? オレが何を知ってるって?」
「それは‥‥‥。」
遼子は口籠もり、そして、胸のつっかえをゆっくりと吐き出すように言った。
「玲二の部屋のビデオ。」
「‥‥‥うん。」
「あれ、母さん写ってるんでしょ?」
玲二はその母の言葉に驚くとともに、どう答えていいか迷った。しかし今更隠してもしょうがないと、後ろの遼子に分かるように首をコクンと振った。
「‥‥‥見たの?」
「うぅん、母さんも最初分からなかったのよ。でもね、見た事のあるラベルが貼ってあって‥‥‥。」
‥‥‥『愛のきせき』か‥‥‥。そっか、やっぱり判ったんだ‥‥‥。玲二は無造作に重ねておいたビデオテープの山を思い浮かべた。
「まさかとは思ったんだけど‥‥‥。そうよね? あれ、母さんのなんでしょう?」
「‥‥‥うん。」
「‥‥‥。そりゃあ、あんなビデオ撮られてたら許せないわよね‥‥‥。どこで‥‥‥もらったの?」
玲 二が答えられずにいると、そのまま2人は沈黙した。流れ続けるシャワーの音だけが浴室に響いていく。‥‥‥自分のセックスビデオをオレの部屋で見つけた母 さんの気持ちって‥‥‥。しかし、そんな事実にも、遼子は変わりなく玲二と接し続けた。勉強を教えてくれた時には、もう知っていたのだろうか?‥‥‥いい じゃないか‥‥‥。もうここまで知られたんだ。やらしてもらおう‥‥‥。玲二のチンポは自分を主張するように一段と大きくなって腹を叩く。今この場で振り 向くだけで、憧れていた女性と性行為に及ぶ事が出来るのだ。‥‥やれるだけじゃない。くわえさせたり、飲ませたり、ケツでだって‥‥‥。
『熟女だけあってテクあるし、なんでもするしな』
『ただやらせてくれたんじゃなくって、ナマでやらせてくれたんだぜ!?』
『モロOK! ってな感じで良くないです?』
周りの少年達の言葉が頭の中を回っていく。‥‥‥熟女なんだから‥‥‥おばさんなんだから‥‥‥‥‥‥。構わない。オレも母さんにぶち込んでやる。そう思った時、心の奥底からそれは違うという叫びがわき起こり、玲二の全身を震わした。
「母さん‥‥‥。」
「なに?」
「母さんは、オレと同じくらいの奴とかとセックスしたよね。」
「‥‥‥ええ。ビデオに映ってたんでしょう。」
遼子の声には諦めの感情がこもっている。
「どんな感じだった?」
「どんな感じって?」
「子供相手にセックスするって、どんな感じ?」
「‥‥‥子供って言っても男には違いないから、いざ始まっちゃえば‥‥‥。もちろん違和感はあるわよ? でも‥‥‥。」
「そう‥‥‥。」
「だから玲二とだって、ね? それとも‥‥‥こんな母さんとじゃ嫌?」
玲 二はそれには答えず、胡座をかいている自分の尻を挟み込む、母の膝を見た。‥‥‥結局‥‥‥母さんは、オレを他のガキと一緒に見てるからそんな事が言える んだ‥‥。息子だと思ってない。思っていたら、セックスしようなんて思わないはず‥‥‥。玲二はそう感じ、唇を噛みしめた。‥‥‥全てを見せてヤッちゃえ ば、歳なんか関係なく解り合える‥‥‥?玲二の心の中、いくら母が乱れる姿を見てもずっと保てていた見えない糸が、今まさに切れていくような気がした。ど れ程悔しくても、羨ましくても、特別だという思いがあったから耐えられたのに。‥‥‥あいつらと一緒に‥‥‥あいつらのひとりに‥‥‥オレが? ‥‥‥そ んな‥‥‥違う‥‥‥イヤだ‥‥。玲二は利き腕を力一杯握りしめた。
「‥‥‥じ、じゃあ母さんは、康浩が素直じゃなくなったら、セックスしようとするんだ。」
「え?」
「違うよね。出来ない、自分の子供と出来るわけがないって‥‥‥言ってよ。‥‥‥言ってくれよ!」
玲二は髪を振り乱しながら叫んだ。プライドを抱きしめ、目と鼻の先にある肉欲を振り切るかのように。その叫びに、玲二の両脇にあった遼子の膝は驚いたように引っ込み、
「玲二」
と心配げに呟くしっとりとした声が耳元で聞こえた。
「‥‥ごめんなさい‥‥‥。そうよね、玲二は私の子供だもの。セックスしちゃ駄目よね。」
「‥‥‥そうだよ‥‥‥。」
「ごめんなさい、玲二。‥‥‥母さん、玲二とうまくやっていけないのが辛くて‥‥‥それで‥‥‥。」
‥‥‥そんなの‥‥‥そんなの、自分勝手の‥‥独りよがりじゃないか‥‥‥。黙る玲二の背後で、遼子が立ち上がったのが分かった。そして玲二の背中から温かさが抜けていく。
「待って! 待ってよ‥‥‥。」
母 が浴室から出ていこうとしているのを悟った玲二は、沸き上がる焦燥感に急き立てられ、母を呼び止めた。そうしないと、ドアを抜けた母は二度と玲二へと戻っ てこないような気がしたのだ。振り向かない玲二の後ろで遼子が「ええ」と返事をしたのが聞こえ、玲二は安堵しながら、少しだけ素直になってみようと思っ た。
「なに? 玲二。」
「‥‥‥座ってよ。」
「でも、それは。」
「オレ、母さんにお願いがあるんだ。」
『お願い』という言葉に惹かれるように、遼子は再び玲二の背後へ座った。
「なに、いいわよ、何でも言って?」
耳 元から聞こえる遼子の声は、とても優しく、しっとりとして色っぽい。何もかも任せられるような大人の声色。‥‥‥セックスは出来ないけど‥‥‥母さんなら きっと‥‥‥聞いてくれる‥‥‥。玲二は猛りきったペ○スに目を落とし、それから真正面のタイルを向いて、はっきりとした口調で言った。
「母さんがどんな事してきたかを聞きたい。どんなヤツと何をしたか‥‥‥。」
「‥‥‥え‥‥‥?」
ほんの一言からでも母の動揺が伝わってくるようだ。
「ど、どんな事したかって‥‥‥何を?」
「そりゃもちろん‥‥‥どんなエッチな事したか。」
「そ、そんな‥‥‥。そんな事言えないわ、よ‥‥‥。」
遼子は戸惑いの声で玲二の肩を掴んだ。それはそうだと玲二は思う。言えば絶対に息子が傷ついてしまうような事をわざと言えというのだから。しかし‥‥‥。
「でも聞きたいんだ。‥‥‥大丈夫、母さん言ったようにオレ、色々知ってんだから。」
「でも‥‥‥。」
「隠されるとオレ、余計辛いよ‥‥‥。」
「ン‥‥‥。」
遼子は鼻を鳴らすような声を出した。
「やれなくても、それでいいんだ。それで‥‥‥それで母さんを感じられるんだから。」
そ れは玲二の本音だった。直接的な優しさを受けるよりも、他人へ優しく接する様を聞く方が、母を感じる事が出来る。母の『女』を感じる事が出来る。それ以上 は求めてはいけない。自分は特別なのだから‥‥‥。心臓の高鳴りが抑えられない中、シャワーの音だけが浴室に流れる。母は聞いてくれるだろうか。自分の恥 を晒すような事を息子に喋る事を。
しばらくして遼子のしっとりとした声が耳元に響いた。
「分かったわ。それで玲二が満足してくれるなら。どんな事から話せばいい?」
‥‥‥やった‥‥‥初めて母さんの口から聞ける‥‥‥。奴らとのセックスを‥‥‥!玲二の身体は興奮に震えだし、全身の血液が頭と下腹に集まってくるのが判った。母の性体験。それは、今ベビーベッドにいる弟へと明確に繋がっている。
「じゃ誰と付き合ってたか、から教えてよ。すごく若いヤツだって言ってたけど‥‥‥。」
「‥‥‥ええ、そうよ。」
開き直ったのか、勉強を教えてくれた時と同じような歯切れの良い返事をして、遼子は玲二の背中を撫でた。今の二人には出しっぱなしのシャワーなど、眼中に入ってはいなかった。
「準備できた?」
「うん。」
「じゃあ、行きましょうか。」
九 月を迎え、受験勉強も佳境に差し掛かりつつある日曜日、玲二は母と一緒に買い物へ出かけることにした。最近、ファッションに気にかけない玲二のためにと母 が提案してくれたのだ。そのことを父の祐一に話すと祐一はことのほか喜び、康浩の世話を買って出てくれた。難しすぎる母子関係を常に案じていたのだろう。 ヤツらの子を抱きながらあやす巨体が玲二には痛い。‥息子と同年代のガキどもがいっちょ前にセックスして、それでデキた子供なのに‥‥。その赤ん坊は父の 手の中で無邪気に手を動かし、自分を主張している。
「いい服選んでもらってこいよ。」
「‥‥‥分かった。」
「フフ。」
玄 関先で父に見送られながら、玲二と遼子は微笑み合った。遼子の服装はクリーム色の薄いセーターと柔軟なデニムのパンツといった、余所行きには似つかわしく ないごくカジュアルな組み合わせ。しかし、生地が身体にフィットし、バランスの良さ、熟女的な肉感を如実に浮かび上がらせる。そして肩には、少し大きな バッグ。玲二の目は自然と、セーターを膨らます胸と、パンツを伸ばす腰回りに向いた。
「さあ、玲二。」
「うん‥‥‥OK。」
「じゃあ、行ってきます。康浩をお願い。」
母が父に手を挙げ玄関を出るとき、抱かれた康浩が少し笑ったように見えた。何に笑ったのか、誰に笑ったのか分からないその笑みに、ヤツらの下卑た笑いが重なった気がした。
‥‥‥笑ったんだよ‥‥‥ヤツらは母さんの上で。‥‥‥今だって‥‥‥。しかし、そんな思いも、遼子の優しい微笑みで打ち消されていく。
「母さん、今日は‥‥‥。」
「フフフ、着替え、ちゃんと持ってきてるわよ。」
「やった。」
玲二は子供のような声を出しながら、改めて運転席に乗る母のジーンズに目を落とした。
この熟女は今、どんな下着を穿いているのだろう。そして、その下は‥‥。遼子の運転する車は国道を通り抜け隣の市に入り、そこからさらに郊外へと向かった。行き着いた先は県下でも有名な大型ショッピングセンター。その広大な駐車場の一角へと乗用車を止める。
「日曜だから人多いわね。」
「うん。」
「じゃあまず‥‥‥トイレにでも行きましょうか。」
遼 子は笑って言って後部座席に載せたバッグを取り、父の匂いが残る車を降りた。背筋を伸ばした、どこか品を感じさせる後ろ姿を見て、玲二は本当にこの母が少 年達とセックスしたのかと思う。周りの人が二人を見れば間違いなく遼子は貞淑な母親と映るはず。その母親が、男とも呼べないような子供達に肉体を晒し、生 身で交わったなどと誰が思うだろう。‥‥‥今さらだけど‥‥‥信じられないよ‥‥‥。前を歩く母のジーンズは左右に重く揺れ玲二の心を惑わす。息子にとっ ては、何よりも特別な身体だ。‥‥‥母さんの‥‥‥こんなおばさんのケツをヤツらは‥‥‥剥いて‥‥‥。玲二の頭の中を、激しいジェラシーと共に、無修正 のビデオの映像が流れていく。そして母自身から聞いた、少年達との行為も。‥‥‥いや、だけど‥‥‥違う。もう母さんは‥‥‥。玲二はほんの少し前まで、 赤の他人である不良や少年達が遼子の優しさを享受するシーンを見て、母を感じていた。
息子の自分では絶対無理な最大限の寛容さを知ってしまえば、 そうじゃないと感じられなくなっていたのだ。‥‥‥そう‥‥‥ちょっと前まではオレ、母さんを自慢に思ってたっけ‥‥‥。しかし、そんな気持ちがあの日の 浴室で変わった。いや、必死で忘れようとしていた気持ちを思い出したのだ。‥‥‥自慢なのは変わりない。‥‥‥だけど‥‥。駐車場をしばらく歩いた頃、前 を歩く遼子の足が止まり、熱い視線を送る息子を振り返った。
「どうしたの? 一緒に歩きましょうよ。」
「‥‥‥うん。だね。」
玲 二が遼子の隣まで早歩きで行くと、遼子は嬉しそうに微笑む。化粧のおかげで一段と映えた、何事も任せられるような年齢の厚みを感じさせる微笑み。玲二はそ んな母の下腹部を、遠慮のない視線で見つめる。‥‥‥ここは‥‥‥もう‥‥‥。‥‥‥誰も、誰も‥‥‥。‥‥‥‥‥‥もう‥‥‥‥‥‥。
「そう‥‥‥母さんが付き合ってたのは若い人。」
日射しが差し込む浴室に母のしっとりとした声が響いた。
「若いって、どれくらいの?」
水に濡れた背中を向けた玲二が聞き直すと、遼子は少し躊躇した後、はっきりとした口調で返す。
「玲二と同じくらい。」
「‥‥‥オレと同じ‥‥‥じゃ、高校生。」
「‥‥‥ええ。」
もちろん、とうの昔に知っていた事だ。しかし、聞き慣れた母の口から聞くと、重い衝撃を伴って玲二の心に響く。
「‥‥‥じゃあ母さんは、息子と同じくらいの男と付き合ってたんだ。」
玲二は違和感をそのまま口にした。
「‥‥‥そうね。」
遼子の言い方は隠し事をしないようにとの配慮か、微妙に歯切れがよい。
「で、そいつと付き合って‥‥‥セックスをした。」
「ええ。」
「四〇過ぎた母さんが、高校生と‥‥‥。」
「‥‥‥やっぱり男女が付き合えばそうなるわ。もちろん、玲二と同じ年頃の人って意識はあったけど‥‥‥。」
永井との始まりレイプの筈だが、遼子はそれには触れないようだった。玲二は狭い浴室の中、背中に伝わる母の吐息を意識しながら続ける。
「でも母さん、他の男ともやったんだろ。ビデオのガキとか‥‥‥。」
「うん‥‥‥。」
母は少し沈んだ声で答えた。
「その付き合ってた人がちょっと悪い人でね、頼まれたりして、母さん‥‥‥。」
「何人ぐらいと?」
「何人、かしら‥‥‥。」
急に歯切れが悪くなったのを聞いて、裸の玲二の身体をジェラシーが襲う。判らないぐらい多いのだろうか。
「どんなヤツら? やっぱり高校生?」
「え、ええ‥‥‥。あと中学生とか‥‥‥玲二が見たあの子とか。」
‥‥‥中学生‥‥‥。玲二の頭に、生意気で反抗的な後輩達の姿が浮かんだ。予想はしていたが、成長途上にある中学生もが母の身体を堪能し、汚したのだ。
「ごめんなさい、玲二‥‥‥。でもね、母さんから見ればみんな幼い子でしょ?だから頼まれると‥‥‥。」
「‥‥‥セックスって、相手のチンポを母さんのあそこに突っ込む事だよね。」
「‥‥‥ええ。」
少しの間の後、遼子はハッキリと返事した。
「みんな、中に射精させたの?」
「え‥‥‥?」
「ビデオのガキは思いっ切り母さんに出してたし、例えばその中学生とかも‥‥‥。」
玲二の脳裏に、グロテスクな肉の構造から垂れ流れる白い精液の映像が浮かんだ。単なる快楽を越えた、生殖の行為。口籠もる母に、もう一度玲二は
「ねえ」
と返事を促す。
「みんなって言うか‥‥‥ほら、こんなおばさんが子供相手に『着けて』だなんて言い難いでしょう? ‥‥‥その、意識してるみたいで。」
同意を求めるように肩に置かれた手のひらから、母の体温が伝わった。
「だから、だいたいの子はそのまま‥‥‥ええ。」
二 人だけの浴室に響く遼子の声は、しっとりとして落ち着きに満ちていて、人生経験の深さを感じさせる。幼子を包み込むようなその声色に、さほど重大さは感じ られない。しかし、異種交配のような母と十代の少年の交わりを見ている玲二は、悔しいが母の無防備さが分からなくもなかった。親友のふみやが言っていた
『もう歳だから受精しない』
と いう言葉も甦ってくる。‥‥‥母さんはヤツらが言ってた『ジュニア計画』とか知ってるんだろうか‥‥‥。知ってて任せたのだろうか‥‥。玲二は自分のいき り立ったチンポを見つめ、震える指で先端から染み出ている体液をすくった。‥‥‥ヤツらはこんな汚い‥‥‥チンポから出るようなものを‥‥‥おばさんだか らって‥‥‥。母の腹に射精されるという事は、息子である自分の顔面に射精されるようなものだ。
「‥‥‥それで子供が出来ちゃったんだよね。オレの弟が‥‥‥。」
「‥‥‥ええ‥‥‥そうね。」
素直に同意する母の声には、こんな歳で妊娠してしまった自分を恥ずかしがる気持ちも透けて見えた。
「‥‥‥ねえ、母さん。」
「なに?」
「その何人かの中、ひとりでいいから、どんなエッチしたか聞かせてよ。」
「え?」
「一番印象に残ってるヤツでいいから。最初に言ったけど、オレ、聞きたいんだ。」
玲二は俯いたまま、一つ一つ単語を区切りながらそう言った。脳裏には父があやす弟の姿が浮かび、その姿に色々な男達の顔が重なっていく。
「‥‥‥でも、そんな事言われても誰の‥‥‥?」
「じゃあ、さっき言ってた中学生の事でいいよ。詳しくじゃなくてもいいから。」
「‥‥‥ホントにそんなこと聞きたいの、玲二。」
「うん。隠されると辛いし‥‥‥オレ、母さんの声で聞きたいから。」
意志のこもった玲二の言葉を聞いて、遼子は両手を肩の上に添えた。
「‥‥‥分かったわ。じゃ、こっち向いて。向いたら話してあげる。」
そ う言われた玲二は、勃起したチンポも構わず、自分でも驚くほど素直に母の正面を向いた。間近で向かい合った遼子の潤んだ瞳は、まず息子の瞳をしっかりと見 据え、そして固く勃起したチンポへと向く。玲二の視線も同じように母の性を強調するバスト、そしてデルタゾーンへと向いた。
「‥‥‥。」
シャワーの流れる音だけが響く浴室で、二人はしばらくの間、お互いの裸を見つめ合う。
‥‥‥母さん‥‥‥。真正面から見る母のフルヌードは、ビデオで見るのとは全く違う迫力、重量感、そしてリアルな年齢を伝えてくる。それをジッと見つめていると、いつしか玲二の全身には、ずっと昔に忘れた感覚が甦ってきていた。ずっとずっと封印してきた感情‥‥‥。
「‥‥‥玲二?」
「あ、うん‥‥‥。」
玲二は慌てて頭を振り、遼子の顔を見た。風呂の熱気で少し汗ばんだ肌に端正な顔立ち。その顔は紛れもなく、小さい頃からずっと見ていた、自分『だけ』を育ててくれた母親の顔だった。‥‥‥そうだ‥‥‥そうだよ‥‥‥。
「いい? 大丈夫?」
「‥‥‥うん、話して。でも、もし途中でイッて母さんにかけちゃったらごめん‥‥‥。」
「ふふ、そんなこと。」
‥‥‥ やっぱり‥‥‥そうだよ‥‥‥そうなんだ‥‥‥。‥‥‥そうじゃなきゃ‥‥‥当たり前だろ‥‥‥。駐車場のトイレから出てきた遼子を見て、玲二は素直に感 動した。トイレに入る前はセーターにジーンズとくつろいだ格好だった母が、今はキャミソールにカーディガン、それに膝が完全に覗けるスカートへと替わって いる。キャミソールとカーディガンの色はパープル、スカートの色は薄いグレー。落ち着いた色合いの中から放たれる女性らしさと、大きく開いた襟元が悩まし い。
「どう‥‥‥かしら。」
遼子はどこか不自然なところがないか確認しながら息子に聞いた。露出性の高い服だが、丁寧に纏められた髪と母の落ち着いた雰囲気が、下品なわいせつさを薄めている。
「うん、いいよ。色っぽい。」
「フフ、そう?」
心 のどこかでは母親がこんな格好をするのは恥ずかしい気持ちもあるのだが、玲二は興奮するままに答えた。皺が目立たない七分袖のカーディガンは、母のバスト の形をなだらかな斜面で表現する。その頂点部にツンと浮かび上がった突起を見つけた玲二は、母にノーブラなのか尋ねてみた。
「ええ。分かる?」
「うん。でも、よく見ないと大丈夫だと思うよ。ミルクは出ないの?」
「大丈夫だと思うわ。」
そ う言って笑い合った二人は、着替えが入った荷物を置くために一度車に戻り、そしてまたショッピングセンターへと向かった。母のヒールの音に誘導されるよう に歩を進める玲二は、後ろから見た母のスタイルの良さに改めて気付かされる。決してグラマーではないが、女性らしく広くない肩に、スラッとしたウエスト、 タイトなスカートに苦しそうなヴォリュームのある尻。同じような格好の若者と比べても、ナマナマしさと謎めいた雰囲気では全く負けていない。そんな母の後 ろ姿を、玲二は誇らしげに見つめた。‥‥‥ファミレスの時と同じような短いスカート‥‥‥。あの時はノーパンだったけど‥‥‥。今は‥‥‥?綺麗に流れる ふくらはぎは、ノンストッキングのように見える。
「母さん。下も、もしかして‥‥‥?」
「下? うぅん、そこまでは‥‥‥。ちゃんと穿いてるわよ。」
「‥‥‥そっか。」
玲二は少し拍子抜けした自分を笑いながら頷いた。‥‥‥そうだよな、康浩産んだんだ。簡単に見せられないよな‥‥‥。母の身体を見る度、人間の性の意味や身体の意味を殊更に意識するのは、その生まれたばかりの弟の存在が大きい。
「玲二が見られてもいいって言うなら脱いでもいいけど。」
「いいよ。パンチラで我慢しとく。」
「なあに、それ。」
笑い合う二人の近くを、買い物袋を持った若いカップルが通りかかった。何も気にならない風情の女性とは対照的に、男の方は終始遼子の身体に視線を配らせて通り過ぎていく。
玲 二はそんな男の視線が嬉しくて楽しくてしようがなかった。‥‥‥どうだよ、オレの母さんは‥‥‥。美人だろ‥‥‥?いくら同級生の彼女になってたからっ て、セックスされまくって子供まで作らされたからって、それはもう昔の事。母さんはオレの母さんなんだ。みんなに自慢できる、素敵な母親なんだ。今は子供 の事を一番に考えてくれて、すごく大事に思ってくれる。‥‥‥股を開いたヤツら‥‥‥永井よりも、せいって子供よりも、ふみやよりも、その他の男‥‥‥母 をマワした、中学生よりも‥‥‥。玲二は遼子の姿を追いながら、浴室で聞いた母の話を思い出す。
「ん‥‥‥どこから話せばいいかしら。」
「いいよ、どこからでも。‥‥‥どんな中学生?」
「それが一人じゃないの‥‥‥。玲二も知ってる通り母さん、その付き合ってた人に言われて、別の子達とも逢ったりしてたのね。」
「‥‥‥うん。」
「その時は断れなくて‥‥‥。でも、相手は童貞の子とかばっかりだったから浮気って気持ちはなかったし、付き合ってた人もこんなおばさんだからレッスンにはちょうどいいって思ったんでしょうね。」
自嘲気味に笑って説明する遼子に、玲二は唇を噛む。母は惚れた高校生に捨てられないために、年齢のハンディを越えて尽くさなければならなかったのだろう。尊敬の対象である母親が同級生である永井の命令を聞く姿を想像し、玲二の心は悲しく痛む。
「それでその中学生達を紹介されたの。遊んでやってくれって。」
待ち合わせの場所に行くと、見るからに不良の中学生といった少年が三人、遼子を待っていた。当初相手は一人だと思っていた母は少し驚いたという。
「いくら中学生でも三人相手なんて、ねえ。でも、その子達やる気満々で、しょうがなく母さん、ホテルへ連れて行ったのよ。」
「‥‥‥どんなヤツら?」
「見るからに怖い子も‥‥‥居た。でも中学生だし、玲二よりもずっと幼い子供。」
中学生などと比べられるのに嫌悪感を覚えつつ、脂肪が詰まった乳房に視線を走らせながら玲二は先を促す。
「それで部屋に入ったらその子達、すぐにでもさせろって感じで押し付けてきたりして。」
「押し付ける‥‥‥。」
「その時母さんジーパン穿いてたんだけど、後ろから抱きついてきてお尻に‥‥‥。みんな童貞のくせにね。」
そ う言ってホホホと笑う全裸の遼子を見て、玲二は全身を針で刺されたかのような痛みを感じた。経験深いは母は中学生のそんな行為など余裕で受け止めてしまう のだ。ほんの少し前までは、そんな母の大らかさに母性と快感を感じていたのだが‥‥‥。そんな玲二の表情を気にしてか笑うのを止め、遼子は続ける。
「でも、すぐになんて‥‥‥相手は三人でしょう。だから母さん、困っちゃって。」
「‥‥‥どうしたの?」
「取り敢えずシャワーを浴びて順番にと思ったんだけど、その子達聞く耳持たなくって、すぐに始めるって‥‥‥。もう、すごいのよ。口の利き方も乱暴だし‥‥‥。」
三人はなだめようとする母に露骨なスキンシップを求め、服の上から局部などをまさぐった後、勢いに任せてベッドに押し倒したという。
「それで母さん、押さえ付けられてる間にズボンもパンツも脱がされちゃって‥‥‥。」
「無理矢理? 中学生に?」
「ええ。ストッキングも穿いてたけど全部ね。それで、三人の中で一番乱暴そうな子がズボン脱いで‥‥‥。」
「‥‥‥やられたの。」
「止めたんだけど‥‥‥。」
玲二は己のシンボルの目の前に位置する母の下腹部を見た。今はへその下には黒々とした陰毛が生え揃っている。が、その時には綺麗に剃り込まれ、中学生の目には女性器の形状そのものが飛び込んできた事だろう。
「‥‥‥そいつ、上手かった‥‥‥?」
「うぅん、全然。場所も解らないような子供だもの。声と勢いだけはあったけど。」
「でも、ちゃんと終わらせたんだ。」
遼子はコクリと頷いた。玲二の頭に、自分の母親よりも年上かも知れない熟女を押し倒して性交する、邪悪な中学生の姿が浮かんだ。傍らで見る二人の中学生は、目の前で二人の人間が交わり始めるのを見て、歓声を上げた事だろう。
「その後はもう、母さんヘトヘトになるまで相手して‥‥‥。とにかく、生意気な子達だったわねぇ。」
「‥‥‥何度も?」
「‥‥‥ええ。誰か一人が始めれば、じゃあオレもまた、って。元気な盛りだから、もう大変。」
そういって口に手を当てて笑う母の顔を、玲二は眩しく見つめた。自分の息子より年下の子に見下ろされ、体内に侵入され笑われて、母は何も思わないのだろうか。‥‥‥やっぱりすごいよ、母さんは‥‥‥。何するか分からないような中学生三人に囲まれて‥‥‥。
少年達は、高校生の子がいて崩れ始めている熟女の身体など、さぞや乱暴に扱った事だろう。
「‥‥‥命令とかされた? そいつらに。」
「ええ。その‥‥‥チンポしゃぶって、とか言うんだけど、言い方が命令口調なのよ。そりゃあ舐めるのはいいけど、ねぇ。」
少年の乱暴さに同意を求めるように言って、遼子は水に濡れている玲二のチンポに視線を配らせた。ずっと隠していた嫉妬に震えるシンボルは今、遼子の腹へ向け起立している。
『舐めるのはいいけど』
な んて‥‥‥。母さん‥‥‥。知的な言葉を話す母の唇がそんな使われ方をするなんて、ビデオを見なければ一生信じられなかっただろう。しかし、他人から見れ ば違うのだ。玲二は包み隠さず話してくれた母への思いを再確認しつつ、以前から気になっていた事も聞いてみる事にした。
「‥‥‥ねえ、母さん。そいつらと何度もやってて‥‥‥気持ちよかった?」
「え?」
「イかされたりとかした‥‥‥?」
「ん‥‥‥。」
遼子は少し逡巡した後、嘘はつけないというようにゆっくりと頷いた。
「‥‥‥ええ、何度かは。続けてやってると、ね。」
「やっぱりイク時とかは口に出したりする?」
「う、ん‥‥‥。多分言ってると思う。‥‥‥『イクわ』とかって。」
絶頂を口にする熟女を見て驚く中学生達の表情が浮かぶようだ。俗物的な母の反応を聞かされると、やはり辛い。
「そっか‥‥‥。」
「ごめんなさい。こんな事まで話して‥‥‥。」
「ううん。オレが話してって言ったんだよ。すごく嬉しい。‥‥メチャクチャ悔しいけど。」
玲 二は素直な気持ちを口にして、目の前の母の裸体を眺めた。少しパーマのかかった短めの髪、出産によって張った乳房と広がった乳輪、体毛の少ない脚や腕。ビ デオでは分からない、母の神秘的な肉体を物語る全てへの嫉妬が増幅され津波のように押し寄せて、まだ女を知らない玲二の身体を襲う。こんな‥こんな女性と 簡単にセックスして‥‥‥いや、しちゃいけないだろ‥‥‥!!そして玲二の双眸は、太股に挟まれた母の股間へと向く。
「ねえ母さん。もしまた高校生や中学生がセックスさせろって来たら‥‥‥する?」
「え?」
「もしも、だよ。」
「‥‥‥うぅん。もう母さんも歳だし‥‥‥ね。」
「また妊娠するから?」
「フフ‥‥‥。そうね、もう子供は産めないわ。母さん、若い子の元気の良さにはかなわないし。ホホホホホ。」
やや疲れた笑い方に、遼子の歩んできた道が透けて見える。さすがに康浩の出産は堪えたようだ。いくら非現実的なほど歳が離れていても、男の精子を受け入れるという事の重大さは変わらないのだ。
「母さん‥‥‥康浩は、誰の子?」
「それは‥‥‥。」
「‥‥‥いや、いい‥‥‥答えなくて。」
これでいい、これでいいんだ。永井に捨てられたからとはいえ、母さんは帰ってきたんだから。もう母さんは、ヤツらのおもちゃでも実験台でもない。
「ねぇ、玲二。もし母さんが許せないって言うなら、やっぱり‥‥‥。玲二だったら母さん、構わないから。」
遼子は、猛りきった息子のチンポを迎え入れるように脚を開こうとした。
「ううん、それは出来ないよ。だから。」
「う、うん。そうよね。ごめんなさい。」
「‥‥‥でも、お願いがあるんだ。」
玲 二は夏の日射しに照らされる母の陰毛の一本一本を見つめた。玲二にとっては、それこそが母の象徴と言っても過言ではなかった。‥‥‥汚されてもオレの母さ んなんだよ‥‥‥オレの身体なんだ‥‥‥。‥‥‥今までのオレはどうかしてたんだ‥‥‥。ショッピングセンターの中は、休日のためか大勢の人で賑わってい た。時折肩が触れてしまいそうなほど混雑した中を横切っていくと、男達の視線が次々、横にいる母に注がれていくのが分かる。中年から彼女連れ、両親に連れ られた子供まで。視線の意味がどんなものかはともかく、玲二は心地よい優越感の中にいた。
「みんなオレの‥‥‥母さんを見てる。」
「そうね、若作りしすぎたかしらね。」
二人は微笑み合い、二階にある男性服専門店へと向かった。途中、エスカレーターに乗るとき、玲二はわざと母から何段か遅れて乗り込む。
「‥‥‥玲二?」
訝 しむ母から少し距離を置き、下から見上げると、母の服装にはあまりにも隙が多いのが判った。太ももは半ばまで完全に露出され、パープルのカーディガン越し には形まではっきりと分かる乳房と乳首。‥‥‥もう少しでパンツ見えそうだよ‥‥‥。そんな息子の視線に気がついた遼子は、悪戯っ子を優しく咎めるような 目で見る。
「母さん、見える。」
「‥‥‥フフ。こんなおばさんが見せちゃダメよねぇ。」
そう言ってさり気なくスカートの裾を押さ える母の声は、あくまでも落ち着いた色気に満ちていて、玲二の心は癒されていく。専門店で服を数着買い揃えた二人は、さらにショッピングを楽しもうと ショッピングセンター内を巡った。そしてふと通り掛かったオモチャ売り場の前で、備え付けのテレビゲームに興じている一人の少年の姿に吸い寄せられた。
年頃は小学三、四年。周りに保護者らしき人物も友達も見えない。玲二はその少年の孤独な姿に激しく自尊心をくすぐられ、傍らの母の袖を引っ張る。
「ねえ、母さん。あそこにいるあの子‥‥‥あの子で遊ぼうよ。」
「遊ぶ?」
「ちょっと挑発してやろう。」
「‥‥‥フフ、いいわよ。」
玲二と遼子は手を取り合うようにして、オモチャ売り場に近寄った。少年の身長は遼子の肩に届くぐらいで、テレビ画面を見つめる目は細く、どことなく気の弱さを窺わせている。
「なあ、オマエ。ちょっと。」
玲二が呼びかけても、少年はなかなか振り返ろうとしない。‥‥‥コイツ、快感なんてまだ知らないんだろうな‥‥‥。玲二が再び呼びかけると、少年は振り返ってハッと驚き、すぐさまどこかへ去ろうとした。それを押し止め、耳元で囁く。
「なあ、オマエ‥‥‥あんな難しそうなゲームよりさ、もっと簡単ですごい事、しないか?」
いきなりの玲二の言葉を理解できず戸惑う少年の横で、遼子は口に手の甲を当てて微笑した。
「なあ。」
玲二が問いかけても少年は体を固くして俯き、身動きひとつしない。そんな少年を見かねた遼子が膝に手を当て上体を屈め、
「怖がらなくていいのよ、別に変な事しないから」
と囁く。その笑顔に安心したのか、少年は玲二の顔を見上げた。
「オマエ、このおばさんどう思う?」
唐突な質問に困惑する少年は、しかし何かを答えないといけないと思ったのか、長い沈黙の後
「おばさん」
とだけ答えた。おばさん‥‥‥玲二はそれが素直な少年の感想だと思う。
「凄い事ってのはさ‥‥‥このおばさんの腹の中にションベンするんだよ。オマエが。」
玲二の言葉に小さく驚く少年。
「そしたら、ムチャクチャ気持ちいいし、おばさんもヒィヒィ喜ぶんだ。‥‥‥な、ゲームより簡単だろ。」
自分でも馬鹿らしい事を言っていると思いながら、玲二は何も知らない少年の顔を見つめた。
「それで凄いってのが、ションベンしたらこのおばさん‥‥‥ママになるんだぜ。」
口が止まらない息子の腕を、
「ちょっと、もう」
と笑いながら遼子が叩く。しかし玲二は、母を見せびらかしたい、自慢したいという衝動が抑えきれない。
「‥‥‥してみないか? このおばさん、させてくれるぞ。」
細い目を更に細め、何も言わない少年。よく見ると細かく震えている腕に、玲二は過去の自分を重ねる。‥‥‥前の自分はこのガキみたいに蚊帳の外にいたんだ‥‥‥。見せつけられるだけで‥‥‥。そんな玲二の横に遼子はしゃがみ、少年の顔を下から見上げた。
「ごめんね、ボク。お兄ちゃん、何言ってるか分からないよね。」
母の優しい笑顔と隙の多い服装に、少年の視線は細かく動き動揺する。遼子はそんな少年の反応を面白がるように、スカートの捲れ上がった太ももを色っぽく動かした。
「ねえ、ボク。本当におしっこしてみる? おばさんはいいよぉ。」
そう言った後、遼子は視線を玲二に向け、
「‥‥‥でも、凄い事にならないように、お尻の穴へお願いしようかしら。」
そこで可笑しさを我慢できなくなったように、
「ホホホホホ」
と 大きく笑う。玲二もそんな母につられて笑った。‥‥‥でも、こんなガキでも本当に精液を出してしまえば、母さんは‥‥‥。玲二は小さな恐怖感を覚えなが ら、短髪の少年と美しく纏められた髪の熟女を見比べた。あまりにも不釣り合いな二人の身体に、いつの間にか、何度も抱いた康浩の小さな身体が重なってい く。結局それから一言も言葉を発しなくなった少年を置いて、玲二と遼子はそこを離れる事にした。離れる間際、遼子が
「これはお詫びね」
と言って、周りを気にしながら少年へ向けスカートをたくし上げた。おそらくしゃがんだ時に見えていたであろう母の下着は、サイドと前面にレースが施された白のハイレグショーツ。目をつくような大人の世界とフローラルの香りの前に、少年の細い瞳は目一杯開かれる。
「‥‥‥あれぐらいはいいわよね?」
少年から離れてしばらくの後、遼子は玲二の顔色を窺うように囁いた。
「もちろん。ハハ、アイツ、母さんのジッと見てたよ?」
「フフ。母さん、本当にノーパンしちゃおうかしら。」
「いいね。」
遼子はそう言ってまた微笑んだ。きっと玲二が言えば、遼子は本当に下着を脱ぐだろう。
‥‥‥ 永井も‥‥‥ヤツらも‥‥‥同じような事させただろうか‥‥‥。こんな母を身近な少年達は、どうせ他人の母親という意識、それに何もかも許してくれそうな 年の差に安心して、快楽の道具にした。母もそんな少年達の素直な欲求が嬉しくて、それに応えてやった。‥‥‥でも‥‥‥そんな事はもう‥‥‥無い。無いん だ‥‥‥。‥‥‥母さんはもう誰ともセックスしないし、オレだけの望みを聞いてくれるんだから‥‥‥。服装を考慮に入れなければ、下品さも卑猥さも微塵と 感じさせない、美しく母性に溢れた母。‥‥‥この微笑みはオレだけの物‥‥‥。そう思いながら、先程の小さな出来事は少なからず少年の人格に影響を及ぼす だろうと考えると、玲二の心は満たされていくのだった。風呂場での一件から玲二の内面は一変した。母親がそばにいて支えてくれれば、怖い物や不安など無く なっていく気がした。母は素直に望みを口にすれば、どんな事でも聞いてくれる。叶えようとしてくれる。今までの孤独感が嘘のような、心の底に募らせていた 想いが溶けて具現化していくような日々だった。もう、あんなジメジメとした梅雨は来ないのだ。
「そっか、うまくやってんだな。」
秋も深まったある日、玲二はふみやを家に招いた。以前誘った時は結局来なかったふみやだったが、最近の玲二の様子を見て、来る気になったようだった。
『久しぶりにおばさんに挨拶したいしさ』
と 言うふみやの言葉は、あながち冗談には聞こえなかったが、玲二としてはそんな親友を家に招く事によって判らせておきたかった。もう母はオマエ達とは関係な いんだぞ、という事を。そして、母との関係を自慢したかった。ふみやが玄関先に立った時の遼子の微妙な微笑みが、部屋に入って数分が経った今でも心から離 れない。
「良かったよな、玲二。」
ふみやは天井を見上げながらそう言った。高校時代に比べ、幾分か大人びた容姿なのはお互いともだろう。
「ああ。色々あったけど‥‥‥もういいんだ。過去の事だから。」
「過去の事‥‥‥かぁ‥‥‥。」
気のない返事して、ふみやはテレビ台の方へ視線を向けた。そこには母が綺麗に整頓してくれたビデオテープが何本か並んでいる。
「‥‥‥おばさんのはあるのか? 玲二。」
「あ、ああ。一応な。」
触れられるのが嫌な事柄に触れられ、玲二は苦笑した。
「そんなのも別に何とも思わないんだ。」
「そっか。」
遼子の裏ビデオを見るふみやは、いつもとはどことなく様子が違う。
やはり、冗談などを言っていても、遼子との再会はショックだったのだろう。
「とにかくさ、もう母さんは‥‥‥。」
「なあ、玲二。」
「ん?」
「おばさん、子供産んだんだろ。」
「‥‥‥ああ。」
「オレ達の同級か、もしかしたら下のヤツらの‥‥‥だろ?」
「そう‥‥‥だけど、いいんだよ。母さんだってその時はフリーだったんだし、オレの弟である事には違いないんだしさ。」
玲二は意志のこもった瞳で、弟を作るのに加担した親友を見つめた。
「それにちょっと前、母さん言ってくれたんだ。もうセックスはしないって。出来ないって。‥‥‥だから、もういいんだ。」
玲 二がはっきりとした口調で言い終えると、ふみやは何も言わず目をそらした。そんな親友の態度に釈然としない物を感じた玲二は、母とどれ程仲が良くなったか も話してやる事にした。とにかく、母はもう過去と決別したんだという事を判らせ、区切りをつけたい。ふみやにも、自分にも。裸を見せ合った事から始まり、 露出行為を何度かした事、ビデオを一緒に見た事‥‥‥。話の途中から自慢したい気持ちを抑えきれなくなった玲二の声は、一階まで届くかというくらい大きな ものに変わっていた。
「だからもう母さんは、永井達とも、オマエとも関係ない。全部忘れたんだよ。」
「‥‥‥‥‥‥。」
「もうセックスはしないんだ。親父とだって!」
「‥‥‥どうかな。」
玲二が得意げに言い終わると、それまでずっと黙っていたふみやが一言呟いた。いつの間にかふみやの顔は赤みを帯び、眉を少し寄せた挑発的な視線で玲二を見ている。それは今まで見た事のないような親友の表情だった。
「おばさんスケベだからさ。」
「なっ‥‥‥!?」
そのセリフに玲二はショックを受けた。まるでふみやの反応は、自慢された相手に張り合って憎まれ口を叩く子供のようだ。
「な、なんでそんな事言うんだよ!」
玲二の声は、瞬間的な怒気にさらされ上ずる。
「そりゃあエッチじゃないとは言わないけど‥‥‥。だからって、オマエに言われたくない! 母さんを馬鹿にするなよな!」
「‥‥‥じゃ、言わせてもらうけどさ、玲二。」
ふみやは思い詰めた感情を隠すような笑みを浮かべ、ビデオテープの棚を見ながら言った。
「今まで言わなかったけど‥‥‥。オレ三度目の時、我慢できなくて言ったんだぜ。オレは玲二の友達で、実はおばさんが玲二の母親って知ってたってさ。」
「え‥‥‥?」
それは玲二の知らない事実だった。ふみやは今まで、玲二との関係は遼子に話していないと言っていたのだ。
「もちろん、おばさんと会ってる事玲二は知らないって言ったけど‥‥‥。で、それバラした後、おばさん何言ったと思う?」
「な、何言ったって‥‥‥オマエ、そんな事何も言わなかったじゃ‥‥‥。」
何故今さらそんな話を持ち出すのか理由が分からず、玲二は動揺する。
「最初は驚いて『内緒にして』って言ってたんだけど、その後でさ‥‥‥オレをアナルセックスに誘ったんだぜ。『してみる?』って言ってさ。友達だってバラした後なのに。」
玲二は一気に興奮して爆発してしまいそうになった頭を、必死で冷静に戻そうとした。‥‥‥コイツ‥‥‥そんな事‥‥‥!!
「や、やったのか、ふみや!!」
「‥‥‥いいや。まあおばさんも、オレが秘密を言った替わりに誘ってくれたって感じだったけどさ。」
玲二は煮えたぎる怒りと嫉妬の中、遼子の行動の意味を考えた。きっと母は、照れくささや恥ずかしさを隠すために、開き直ってそんな事を言ったのではないか‥‥‥。
「おばさんも乗り気だったし、やっても良かったんだけどな。‥‥‥それからもオレとおばさん、携帯でよく話してたんだ。オレにだけには新しい番号教えてくれて。‥‥‥子供の事は教えてくれなかったけどさ。」
ふみやは挑発的な笑みを浮かべたまま、自慢げに玲二の顔を見た。‥‥‥クソッ‥‥‥何で今頃そんな事を‥‥‥コイツ‥‥‥!!しかし玲二は、心を覆うどす黒い嫉妬の雲に負けてはいけないと、ふみやの顔を見返して言った。
「‥‥‥そんな事があったとしても、全部昔の事だろ。とにかく、もう母さんはお前達とは関係ないよ。」
「‥‥‥どうかな。」
「ふみや、オマエ‥‥‥!!」
‥‥‥なんでコイツは‥‥‥折角良くなったオレと母さんの関係を侮辱しやがるんだ‥‥‥!!玲二は殴りかかってやりたい衝動を必死で抑える。
「じゃオマエ、母さんと会ったりしてたのかよ!?」
「‥‥‥いや。」
「じゃ、判ったような事言うなよな!」
「‥‥‥玲二だって‥‥‥。」
そう呟いて強気の視線を返してくるふみやに、玲二は悲しくなった。なぜ先程まで
「良かったな」
と 言ってくれていた親友と、こんな口論をしなくてはいけないのだろう。いくら過去に関係したとはいえ、それはあくまでも偶然で、ふみやは部外者のはずなの に。遼子は家族のもの。他のヤツらのものではないし、母自身昔の事は忘れている。康浩にしても、あくまで『海山家の次男』として育てられているのだ。玲二 は、それを認めようとしてくれない親友に、裏切られたような思いを抱いた。
「‥‥‥母さんは復縁して女は卒業したんだよ。」
「じゃ、試してみるか、玲二。」
「‥‥‥試す?」
「オレとおばさんが‥‥‥セックスできるかどうかをさ。」
ふみやは挑戦的な表情を崩さないまま、そう言い放った。よく見れば、ふみやの右手は血管が浮き出るほど強く握りしめられている。
「母さんがするわけないだろ。バカな事言うな‥‥‥。」
「‥‥‥どうかな。」
「オマエ!」
「だから試してみようって言ってるんだよ。今、おじさんはいないんだろ?」
玲 二は挑戦的な表情を崩さないふみやを憤りの視線で睨み付けた。この男は友人を前にして、その母親とセックスをする自信があると宣言しているのだ。‥‥‥な んでコイツは‥‥‥母さんがスケベだって貶めたいんだ‥‥‥?玲二は、盛り上がったふみやの股間を憎々しげに見つめる。‥‥‥何も判ってないクセに‥‥‥ 許せない‥‥‥!!過去と関わりを絶った母には悪いという気持ちもあった。しかし、過去を理由に他人の家へ土足で上がり込むような友人の挑発は許せない。
「ああ、分かったよ、ふみや。試してみろよ。」
「‥‥‥いいのか? 玲二。」
「いいさ。無理に決まってんだから。‥‥‥まさかオマエ、無理矢理なんてのは‥‥‥!」
「そんな事しないさ。しなくたっておばさんなら‥‥‥。」
握りしめたままのふみやの右手は細かく震えている。根拠のない自信が揺らいでいるのを感じ、玲二は少し身体の力を抜いた。何がふみやをこんな言動に走らせるのだろう。
「行ってみろよ。バカ。」
「‥‥‥子供の前でヤってきてやるよ、玲二。」
「笑われて、あしらわれるだけさ。」
ふみやは立ち上がり際、もう一度玲二に挑戦的な笑みを向け、一言呟いた。
「‥‥‥知らないからな。」
そ して部屋を出て行く。階段を下る音が聞こえなくなるのを、玲二は煮え立つ怒りの中で聞いていた。‥‥‥アイツ、変わった‥‥‥。少し前まで気持ちを分かっ てくれていた友人が、まるで突然永井達と同類になったかのようだ。母は今下で何をしているだろう。くつろいでるか、康浩の世話をしているか、掃除をしてい るのか。そんな家庭の主婦を前にして、ふみやは何をどう言うのだろう。そして、母はなんと返すのだろう。‥‥‥まさか母さん‥‥‥ふみやと‥‥‥。二人っ きりにさせてしまった不安が今になって少し過ぎり、玲二は何度も激しく頭を振った。そんな事は絶対にあり得ない。遼子は今、妻であり母親であり、許す筈が ないのだ。‥‥‥それに‥‥‥母さんにとっての主役はオレ‥‥‥。母さんはマンコに約束したんだ‥‥‥。玲二は母に申し訳ない気分になりながらも、諭され てすぐに帰ってくる親友の姿を想像し、小さな笑みを漏らした。窓から秋めいた風が入ってきてカーテンを揺らしていく。ふみやが下に降りて行ってから、どれ くらい経っただろう。玲二の部屋には喋る声も物音も聞こえてこない。‥‥‥アイツ今頃、母さんと何喋ってるんだ‥‥‥。少し遅い気がする。‥‥‥まさ か‥‥‥無理矢理襲って‥‥‥。心配になった玲二だったが、それならば物音の一つでも聞こえてくるはずだ。絶対の自信を持った賭けでも、何が起こっている か見えないと不安は募っていく。玲二はそんな不安を慌てて掻き消した。‥‥‥早く戻ってこい、ふみや‥‥‥。そして、変わった母さんを認めろ。
ふ みやが帰ったら、ふみやを煽った事を母に謝らなくてはいけない。その後、ふみやとの今までの関係を聞こう。それからまた十分程が過ぎた。しかし一向にふみ やは戻ってこない。いくらなんでも長すぎると玲二は不安になった。部屋を出た以上簡単には退けず、遼子に諭され続けているのだろうか。‥‥‥バカ‥‥‥ア イツ‥‥‥。やらせてくれるはずがないだろ‥‥‥。二階にオレがいて‥‥‥。しかし、そうは思っていても、不安と焦りは徐々に大きくなっていく。ふみやは 体良く断られても、もしかしたら、ふみやの言動で壊れる関係があるかも知れない。それが恐い。‥‥‥母さん‥‥‥ごめん‥‥‥。居ても立ってもいられなく なった玲二は、様子を見に行く事にした。心の隅の方で、遼子と親友が交わっている妄想が広がってきている事を、玲二は認めたくなかった。足音が響かないよ うに静かに階段を下りると、一階はシンとした静けさに包まれていた。どこからか入ってくるそよかな風が玲二の肌を伝っていく。‥‥‥ふみや‥‥‥まさか、 帰ったんじゃ‥‥‥。半分そうであって欲しいという気持ちで玄関を覗くと、親友の靴は置かれたままだった。‥‥‥じゃあ‥‥‥どこに‥‥‥。静けさが逆に 気になり、心臓はどんどん鼓動を速めていく。玲二は居間のドアの前に立ち、中の様子を窺ってみた。‥‥‥居る? 居ない? ‥‥‥‥‥‥居ないみたいだ。 次に台所の方へ回ってみる。壁の前で立ち止まって中を覗き見るが、そこにも二人が居る様子はない。‥‥‥どこだ? どこで‥‥‥何してる‥‥‥。まさか、 という思いが胸に込み上げ、吐き気に似た嫌悪感に変わる。しかし母の微笑みを思い浮かべると有り得ない話だった。‥‥‥でも‥‥‥じゃあ、何をこんな長い 時間‥‥‥。玲二は不安に突き動かされるように、浴室へ向かった。しかし、こんな場所にいるはずはないという玲二の願い通り、そこにも二人の姿は見えな い。‥‥‥母さん‥‥‥どこに‥‥‥。増すばかりの焦りの中、玲二は二人が居そうな場所を考えた。思い当たるのは両親の寝室と、康浩が眠る部屋ぐらい。玲 二は
『子供の前でヤってやる』
というふみやの言葉を思い出し、高鳴る心臓に急かされるように、玄関脇にあるドアへと向かう。‥‥‥康浩の 前で‥‥‥ふみやと会っちゃダメだろ‥‥‥母さん‥‥‥!まだ一歳に満たない海山家の次男の誕生には、ふみやも深く関わっている。家庭を考えるなら、そん な人物を軽々しく会わせてはいけないはずだ。しかし、子供部屋のドアから漏れてくるのは、玲二の疑念を実証するような小さな話し声だった。‥‥‥居 た‥‥‥。ふたり‥‥‥この部屋で何してる‥‥‥!?ふみやの見下したような表情が心の中でどんどん大きくなり、玲二を支配していく。‥‥‥いや、母さん は大丈夫‥‥‥大丈夫‥‥‥。力を抜けば痙攣を始めてしまいそうな膝を曲げ、玲二はドアに近づき聞き耳を立てた。そこから小さく聞こえてきたのは、しっと りとして艶っぽい母の声だった。
『‥‥‥ちょっと前までは寝付きが悪かったけど、最近はそんな事もなくて‥‥‥。』
その内容から察するに、母は康浩の様子を語っているようだ。そのすぐ後には、部屋にいた時よりも低く聞こえるふみやの声が続いた。
『‥‥‥おばさんが産んだんだよね‥‥‥。』
『‥‥‥そう、おかしい‥‥‥?』
『‥‥‥ちょっとだけ不思議な感じがする‥‥‥。』
‥‥‥ なんてこと話してるんだよっ‥‥‥!母親と息子の友達が交わすにはあまりにも危なっかしい会話に、玲二の肌は粟立つ。ふみやはこの十数分の間この部屋に入 り込み、康浩を前にして何を喋っていたのだろう。‥‥‥会わせちゃダメだって、母さん‥‥‥。そいつ、母さん狙ってるのに‥‥‥!ドアの隙間からは、ため 息と笑い声が混じったような母の吐息が漏れてくる。
『‥‥‥あの子、すぐ寝たの‥‥‥?』
『‥‥‥うん、すぐ‥‥‥。』
『‥‥‥もう、ホホ、友達連れてきといて‥‥‥。』
そ の言葉を聞いて、玲二はさらに危機感を覚えた。ふみやは、玲二は部屋で寝たと母に言っているらしい。あってはならない事の予感が明確な足音を伴って、どん どんと大きくなっていく。もちろん遼子の事は信じているし、そんな事は有り得ないと思う。しかし、こんな会話まで許される雰囲気にあっては‥‥‥。‥‥‥ 母さんは‥‥‥もうセックスはしない‥‥‥出来ないんだ‥‥‥。でも‥‥‥。ふみやに対し負い目のような感情を持っている遼子は、許してしまうかも知れな い。康浩がいるこの部屋で。それは、いくら秘められた行為であっても、海山家に対して瀕死のダメージを加えられる事になる。‥‥‥それはイヤ だ‥‥‥。‥‥‥イヤだよ、母さん‥‥‥。‥‥‥オレ、見たくないよ‥‥‥。玲二は止めなければいけないと思った。きっと母は、ふみやの意図をまだ知らな いのだろう。
恥やプライドなんてどうでもいい。息子の友達の誘いに、ズルズルと母が流されてしまう前に‥‥‥!玲二は汗ばんだ手でドアノブを掴む と、ゆっくり右方向に回した。脳裏には、エプロンをつけて料理を作っている、ごく家庭的な母の姿が映っていた。ドアを開けて、一番最初に目に入ってきたの は、部屋の中央に置かれた背の高い乳児用ベッド。そして次に気が付いたのが、どこかで聞いた事のあるようなくぐもった音。檻のような囲いがしてあるベッド の中では、康浩がうつ伏せの状態になり向こう側を覗いている。‥‥‥母さん‥‥‥ふみや‥‥‥?なぜだかしばらく康浩の姿に目を奪われていた玲二は、その 視線の先にある光景に気付いた刹那、愕然として目を見開いた。そして次の瞬間、倒れ込むように、隠れるように、その場に身を屈める。‥‥‥うそ! ‥‥‥ そんな‥‥‥。‥‥‥うそ‥‥‥だろ‥‥‥。ベッドを支える四本の脚の隙間からダイレクトに伝わってくる、母と親友の声。
「‥‥‥玲二は誘わないの、おばさん‥‥‥。」
「‥‥‥何度か誘ったわよ‥‥‥。」
康浩を遊ばせるために敷かれたマットの上。玲二の瞳に映るのは、母親とは思えないような恰好で開かれた遼子の股間と、そこに埋まる親友の巨根だった。
「‥‥‥ダメだ、もう誘わないで。」
ふ みやは身勝手な気持ちを母へ押し付けるかの如く、柔らかな粘膜に包まれたチンポを何度も激しく母の腹へ打ち付ける。それを迎え入れる遼子の孔は、チンポの 形に沿って丸い輪を作り、粘っこい体液を滴らせる。二人が交わる場所のすぐ下には、褐色の肌の中で哀れに変形した肛門が、内側からの衝撃に細かく揺れてい る。初めてナマで見る、母と他人のセックスだった。
「‥‥‥ふみやくん‥‥‥。」
止まらない腰の動きの中、ため息と一緒に絞り出されたよ うな遼子の声が聞こえた。‥‥‥そんな‥‥‥そんな‥‥‥そんな‥‥‥。玲二は奈落の底へ転落していくような感覚に陥りながら、すがるような思いで、チン ポの間から見える遼子の下腹部を見た。そこに密生しているはずの黒々とした陰毛の姿は、無い。誰にも触れさせない『約束』として、玲二自らが剃った象 徴‥‥‥。
『玲二がそれが良いって言うなら、ずっと剃っておいてもいいわよ、母さん。』
その時の母の従順な仕草や、ビデオでは確認できな かった毛穴の一本一本が、蜃気楼のように玲二の頭に浮かんで消える。‥‥‥母さん‥‥‥。ふみやを上にして重なり合う二人の顔は、玲二の位置からでは窺い 知る事が出来ない。破裂させそうな勢いで母の身体をえぐるチンポは、当然の事ながら剥き出しのままだ。蛙のように太ももを開いた恰好には歳も若いも無く、 取り返しのつかない事態になる恐怖が、玲二の血液を巡って全身に流れていく。手前にあるベッドの上には、その結果生まれてきた子供の姿‥‥‥。‥‥‥やめ てくれ、ふみや‥‥‥。やめ‥‥‥出さないで‥‥‥。目の前の交わりを止めようとも止められるとも思わず、金縛りにあった玲二は、ふみやの濡れた巨根に 願った。その時だった。
易々と受け入れているように思えた遼子がいきなり断続的な喘ぎを漏らし、ふみやにしがみついた。
「ん‥‥‥あ‥‥‥フフ、フフ‥‥‥‥‥‥ふみやくん、私イク‥‥‥イクわぁ‥‥‥イクわぁ!!」
恥 じらいを含んだか細い裏声が、だんだんと地声を響かせた泣き声のような叫びに変わり、子供部屋へと木霊した。その本能的な叫びに気を良くしたように、開き きった熟女の股間へ身体をぶつけるふみやの腰使いは、更に乱暴なものへと変わった。同い年とは思えないほど太い男が動くたび、母の身体は雨水を跳ねたよう な音を発し、呼吸を荒くした母は細かい喘ぎを繰り返す。‥‥‥‥‥‥。‥‥‥‥‥‥そっか‥‥‥‥‥‥そうか‥‥‥‥‥‥。‥‥‥‥‥‥。そんな二人の光 景を目の当たりにして、玲二は悟ったのだった。実の母子では決して到達し得ない関係があるという事を。
「おばさん、好きだ。おばさんはオレの‥‥‥!」
ふ みやはそれを玲二に分からせ、そして自慢したかったのだ。玲二が母子関係を自慢するのと同じように、遼子との間に築いた男女関係を。玲二は、陰毛を剃った 時の遼子の表情を思い出していた。あの時の凛とした表情は、少年達と交わった性器をどこかで誇らしく思っていた証拠かも知れない‥‥‥。‥‥‥母さんは変 わったんだ‥‥‥変えられたんだ‥‥‥。玲二は今まさに、離婚していた間に創られた、消せない母の歴史を見せつけられているのだ。ふみやの腰の律動が速く なり、荒らされたアヌスが更に激しく歪む。
「中出し、いい? おばさん!」
「ええ、ええ‥‥‥!」
感極まった声で確かに母は同意した。ベッドの上では、そんな男女の交わりを見つめる赤ん坊の姿。その直後、ふみやの体内から母の胎内へ飛び散った精液は、梅雨時期の雨のように海山家へ降りそそぐのだった。
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