小説(転載) とらぶるTWIN 2/3
近親相姦小説
第2章 そして、触れ合う心
1.
「はあ・・・。」
放課後の校庭を校舎の四階の窓から見下ろしながら、一葉は声に出してため息をついた。
補習がだるいというのは確かにあったが、それより何より、家の雰囲気が気分を滅入らせていた。
・・・悪い思い付きじゃないと思ったんだけどなあ。
あの日の自分の行動を思い返す。
激しい雨の降ったあの日以来、姉弟三人の間はどうもしっくりいっていなかった。朝食も夕食も大概別々だし、たまたま顔を合わせれば会話はほとんどなし。思い付きでギャグをかましてみても、まったく反応がなく、自分が寒くなってしまうほどだ。
椅子に腰掛けて見下ろした校庭では、陸上部とサッカー部が練習を続けていた。
また、跳びたいよなあ。
スカートからすんなり伸び出した足首を見つめる。
一葉は、本来は陸上部の所属で、専門は高跳びだった。ほんとうは今ごろ、競技会に向けて練習の日々に明け暮れていなければならない所だったのだが・・・。
「ウィッス!」
背中の声に振り向くと、背の低い頭の両側をひっつめてお下げ風にしたいたずらっぽい顔があった。
「ナナか。」
プリッとした唇が印象的なコケティッシュな表情の菜奈は一年からの親友だった。
「なにブルーなってんの?らしくもない。」
「ああ、ちょっとな。」
菜奈は一葉の横に椅子を並べると、同じように背もたれ側に肘をかけるように座って校庭を見下ろした。割合背の高い一葉と小さな菜奈が窓際に二つ並んで座ると、どこかユーモラスに見える。
「もしかして、部のことかい?」
「いいや。それはナナも知ってるだろ。」
「だよねえ。あんた、そういうことじゃ落ち込まんものね。」
「まあね・・・。」
お、マコトだ。練習もう上がるんかな。
サッカー部のやっていたミニゲームが終わったようで、向こう側のゴールの方から真らしき人影がゆっくりと歩いてくるのが見える。
「ま、姉としての悩みって奴かねえ。」
「ふうん。」
菜奈も組んだ腕の上に顎をのせると、同じように校庭を見下ろした。
「真君?それとも二葉ちゃん?」
一葉はふーっと息を吐いた。
「・・・両方。」
あれ、マコトの奴、随分長くマネージャーと話しこんでるなあ。
「姉ちゃんはつらいねえ。」
ポンポンと肩を叩くと、菜奈はごそごそと持っていたポーチの中を探った。
「ホイ、どうぞ。」
差し出した手には、小さな双眼鏡が握られていた。
「何、これ?」
「校庭観察用のシークレットアイテム。50倍だよ。」
「なんでこんなもんもってるの、あんたは。」
「へへ、島村君観察用さ。」
「島村って、『南高のナカタ』って、あいつか?」
「そうだよん。」
「物好きな奴。」
「ほらほらそんなことはどうでもいいから、早く見ないと、真君行っちゃうよ。」
「お、おお。」
どれ。
一葉が小さな双眼鏡の接眼レンズに目を当てると、緑色の巨大な物体が飛び込んでくる。
「なんだ、こりゃ。ああ、木の葉か。」
「だめだよ、一葉。倍率落として、全体の状況を確かめながら対象に合わせないと。」
「ほいほい。」
お、見えた見えた。なんか、マコトの奴、冷たいそぶりだな。あさっての方を向いてマネージャーの話聞いてるじゃないか。ん?
一葉の頭の中で何かが引っかかった。
マネージャー、マネージャー・・・、そうだ、江東萌実とかいう二年の子だ。ここのところ、マコトと話すとたまに出てくるサッカー大好き少女。ああ、そうか。
レンズには、マコトの方を見上げて真剣に話し掛けている風のポニーテールの女の子と、半分背中を向けてうつむき加減の真が映っていた。
あ、行っちゃうじゃないか。
真は一瞥もせずに早足で歩み去っていく。取り残された萌実は、しばし呆然とその背中を見送っていた。
ふうん・・・。そういうことか。
双眼鏡から目を離すと、一葉は心の中でうなずいた。
最近マコトが不安定になってたのは、あの娘のせいか。・・・それにしても、なんて遅い春。あいつは、ほんとに今どきのオトコか。
「なんか見えた?」
「うん、まあね。これ、ありがと。役に立つわ。」
「でしょ?」
双眼鏡を受け取ると、菜奈は得意顔で笑った。
それにしても、これはわたしがどうこう心配するような事か?イマイチよくわからないなあ。
「あ、またなんか考えてる。」
「お、ごめ。」
菜奈は、立ち上がってポーチを持つと、即座に言った。
「ね、一葉。今日はカラオケでも行かん?」
「うーん。」
どうしよっかな。ま、いいか。どうせ二葉は遅くなるって言ってたし、マコトには電話して出前でも取ってもらうか。
「わかった。行こう。」
「やりっ!つまんなかったんだよね。一葉、ここんとこ付き合い悪いし。」
「すまん。今日は、一葉さんのビューチフル・ボイス、ノンストップモードで聞かしちゃる。」
「ラッキー。で、かっこいいオトコ、ゲットじゃ。」
う。それはいい。
「いや、それはいい。オトコはお前にまかせる。」
「えーっ、つまんないよ、それじゃあ。一葉、ノリわるいー。」
菜奈は二の句を継ごうとして、何かに気付いたように言葉を飲み込んだ。
「・・・ま、いいか。今日はオンナの花園で行こう!」
はは、やっぱりこいつ、いい奴だな。
「悪いな、菜奈。気遣わせて。」
「なんの事?ささ、決まったなら行こう、行こう。」
「玲子と美知も呼ぶか!?」
「オッケー、オッケー、カムカムエブリバディーじゃ。」
「お前、いつの人間だ?」
ちっと今日は羽目を外すとすっか。
一葉はスポーツバックを肩にかけると、菜奈と共に教室を後にした。
少し飲みすぎたかな・・・。
アルコールの回った身体で玄関の戸を開けると、家の中は電気一つ付いていない暗闇だった。
はあ、よく歌った。いったい、今何時だろ?
腕時計を見ると、時間はもう10時近くになっていた。
それにしても、なんでこんな暗いんだろ。二人とも、もう寝ちゃったってことか?いくらなんでも、早いんじゃ・・・。
途中で着替えた制服をバッグから出して洗濯カゴに入れ、台所と居間を覗いたが、やはり誰もいない。千鳥足で階段に戻り、ゆっくりと上っていく。
やっぱ飲みすぎだ。まったく、菜奈のからみ酒のせいだぞ。
一葉は、二階の廊下の真ん中にある自分の部屋の扉に手をかけた。
え!?
部屋に入って壁の電気スイッチを入れた瞬間、予想外の眺めに言葉を失った。
「マコト!そこで何やってんの?」
奥に置かれたミントグリーンのタンスの一番下の引き出しを開けて、何かを手に持った真がしゃがみこんでいた。
「あ、あ、これは・・・。」
手に持っているのは、明らかにわたしの下着。まったく、中学生でも卒業していそうなことを・・・。
「わたしのショーツとブラでしょ。」
「そ、そうだけど、戻そうと思って・・・。」
「バレばれの嘘はいいから、マコト、ちょっとそこに座りなさい。」
おびえたようにタンスの前で小さくなっていた真は、おとなしく一葉の言葉に従うと、ベッドに腰掛けた。
最近ちっとは男らしい感じになったと思ったのに、こうやってうつむいてると、まだまだ子どもに見える・・・。
父親ゆずりの細く切れ長の目を床に落とし、スポーツ刈りのつむじを一葉の方に向けて真は座っていた。
さて、何て言ってやればいいか・・・。あれ?
その時、一葉の鋭敏な感覚は、廊下で何かが動く気配を察していた。その気配は、なぜかこの部屋の入り口で静まった。それでも、わずかな衣服のこすれる音で、そこにとどまっていることがわかる。
二葉だ・・・。さっきでかい声出しちゃったからな。
はあ・・・、まったくわたしってば、こんな役回りばっかか・・・。
心の中で大きなため息をつくと、神妙な顔で一葉の言葉を待っている真の前に立つ。
「マコト、トランクス脱ぎな。」
「え?」
顔を上げると、真はまじまじと一葉を見つめた。
「下を脱ぐんだって。何度も恥ずかしいこと言わせないの。」
それでも、酔ってなければこんな事言えないかもな・・・。
「で、でも、カズ姉・・・。」
「ああっ、男らしくない。自分で脱がないと無理矢理やるよ!」
「わ、わかったよ。」
観念したようにダークグリーンのトランクスを脱いだ。力なく縮こまったペニスが、再び座った太い足の間に、ふにゃっと乗っかっている。
え、お、大きいじゃんか・・・。
人並み以上のサイズのそれに、ビクッっと腰の奥で何かが反応する。
お、おい。わたしの目的はそういうんじゃないだろ?
努めて冷静になろうとした。けれど、次に出た言葉には少なからず自分自身の欲望がにじんでしまった、一葉は自らそう考えずにはいられなかった。
「溜まってるんでしょ?わたしが気持ちよくさせてあげる。」
そして、真の足の間にしゃがみこんだ。
2.
「鳴瀬!何やってる。左サイドがらあきだぞ!!」
激しいコーチの声が真に飛んだ。このミニゲームでもう何回目なのかわからなかった。
「守備意識!」
わかってる。わかってるんだ。でも、気持ちがついてこない。
ピーッ!
試合終了の笛が鳴った。
終わった・・・。
全身から汗を流しながら歩いてくる真の背中に、腕を組んでベンチに腰掛けた、いかつい体型の監督から声がかかる。
「鳴瀬。」
「はい。」
立ち止まったが、そのまま振り向かずに返事だけを返した。
「お前のポジション、どこかわかってるな。」
「左ウィングっす。」
「わかってるならよし。中学の時はどうかしらんが、今お前はTOPじゃあない。」
「・・・もっと後ろに気を使え、すよね。」
「そうだ。」
わかってるんだ。
もう一度心の中でつぶやいた。水道の所までくると、他の部員と並んで水道の蛇口に口をあてる。少し水を含んだ後、夏の日差しですっかり熱くなった頭に、上から水をかける。
「ふぅーっ。」
息をついて真夏の太陽を仰ぎ見ながら部室の方に歩きかけると、背中に投げつけられるタオル。
「鳴瀬君。」
振り向くと、マネージャーの萌実が白い半袖のトレーナーと、ライトブルーにロゴの入ったひざ上までのショートパンツ姿で立っていた。夏練ならではのフリーな服装に真は目を逸らした。
「どうしたの?ここのところ、なんか集中できてないみたいだけど。」
「そんなことないっすよ。」
「だめだよ、見ればわたしにだってわかるんだから。」
混じりけのない心配が浮かぶ瞳が胸を射た。今、萌実と話すのは真には苦行に近い状況なのだ。
「何か悩み?わたしで助けになるなら、話聞くよ。」
「大丈夫っす。」
「でも、最近、シュート練習もしてないみたいだし・・・。」
やめてくれ。だいたい、こんなに集中できないのは、萌実さんのせいでもあるんだから!
「ねえ、こういう時に力になるのが、わたしの役目なんだし。」
結局、それか。どうせ、この人はサッカーのことしか考えていない。
「鳴瀬、君?」
黙ったままの真に萌実が一歩近づいた瞬間、何かが気持ちの中で切れた。
「・・・放っといてくれ。あんたには関係ないことだ!」
考えていたより遥かに刺のある言葉になってしまう。萌実の表情が凍り付き、真は歩み去った。
「おーっ、夫婦喧嘩かー?」
「いいねえ。」
少し離れた場所から声がかかる。萌実は我に返ると、周りを見まわしながら大声で言った。
「もう、みんな仲間でしょ。ちょっとは心配してあげたら。」
「いいの、いいの。」
一番背の高い、部のキャプテンの市ノ瀬が萌実の方に歩み寄りながら言った。
「熱き青少年の血潮って奴さ。ほっときゃその内収まるよ。」
「熱きオトコのたかまりの間違いじゃないのか、キャプテン。」
「そーかもな。」
「もう、やめなさいよ。」
萌実はうんざりしたように言い放つと、早くも部室から荷物を抱えて出て行く真の背中を心配げに見送っていた。
夜。
部屋の電気もつけないままで、真はベッドに横になっていた。一葉からは「遅くなる」と夕方に連絡があったし、二葉も出前のピザを食べている間、ほとんどうわの空で、会話らしきものは何もなかった。
心の中のもやもやが収まらない。自分一人が置いてきぼりにされたように感じる。何もしていないのに汗が吹き出してくるような感覚がして、身体中をかきむしりたくなる。
いったい、どうしたっていうんだ。
真には自分の心と身体の変調が理解できなかった。
こうしてまんじりと暗がりの中で目を開いていると、身体の中心に意識と血液が集まっていくのがわかる。
軽くペニスを握ると、すでに立ち上がりかけたそれは、強烈に自己主張を始めていた。
いくら奥手の真でも、オナニーを時折はしていないわけではなかった。でもそれは、夢精では収まらない時、機械的にペニスを摩擦して出すだけの単調なものだった。
『おまえ、それマジで言ってるのか?』
一度だけ友達に話した時、即座に返ってきた答えは、「ネタは使わんの?」という言葉だった。
あの時は、そんなもの俺はいらん、と思ったけれど・・・。
この一週間で溜まりきった欲求のはずなのに、ただ触っても反応が乏しい。確かに昨日の夜に夢精したばかりだった。それでも、射精の強い快感を味わいたいという気持ちは増すばかりで止まることを知らなかった。
『おまえだって、姉ちゃんの下着くらい、あさってみたくなったことあるだろ?』
あの時笑い飛ばした言葉が、頭の中で鮮明に蘇る。
で、でも、そんなことは・・・。
先週見た二人の姉の肢体が意識をよぎる。張りのある一葉の乳房と、ほのかに浮き出た乳首、そして、白い二葉の足と腰・・・。
手に握られたペニスがぐっと硬さを増した。
そして、浮かんだ妄想は意志の制御を離れて拡大していく。いつの間にか、二人の姉の身体は萌実のものに置き換わっていた。今日着ていた白いトレーナーをたくし上げると、妖しく微笑む萌実。
『ほら、見て・・・。』
グリーンのスポーツブラが現われ、妄想の中の萌実は、身体を見せ付けるように両手を高く差し上げる。そして、ブラがたくし上げられ、形のよい乳房が・・・。
ダメだ!
強い罪悪感が込み上げてきて、真は股間から手を離した。
自分のイライラにまかせて、あんな言葉を投げつけてしまった上に、こんな事に萌実さんを使うなんて。ったく、どうすればいいって言うんだ。
それでもまったく股間の昂まりは収まらない。それどころか、トランクスの端から狂暴な先を覗かせるほどに反り返って勃起している。
・・・カズ姉なら、許してくれる、よな。
唐突に一葉の顔が思い浮かぶ。
きっとカズ姉なら、下着を見るくらいのこと、分かってくれる。
熱情にまかせた思い付きに身を委ね、暗闇の中で真は立ち上がると、窓からの月明かりだけで光る廊下に出た。Tシャツとトランクス一枚の格好で隣の一葉の部屋のドアを開ける。ほどよく片づけられた部屋には、そこはかとなくミントの香りがした。
ドックン、ドックン、ドックン・・・。
胸ははちきれそうに鼓動していた。奥の窓際に置かれたタンスの引き出しを開ける。
下から一段目、スポーツウエアやTシャツ、靴下が入っている。
二段目、ブラウスやスカート、ポロシャツがきれいに畳まれて入っている。
・・・三段目。
あった。
色とりどりの下着が並んでいた。よく見かけるすっきりしたスポーツタイプのもの。かわいらしい柄入りのもの。そして、手触りがよさそうな綿生地に、花柄のレース・・・・。
真は震える手に一枚のショーツを取った。うす紫に、細かい蝶模様のレースがあしらわれた布地の少ないタイプのものだった。
トランクスの中で限界近くまで怒張するペニス。右手でさわろうとした瞬間、何か小さな声が聞こえた。
「ぁ・・・。」
カズ姉!?
部屋の入り口を振り返ったが、誰もいない。
「あ、あぁ・・・。」
今度ははっきり聞こえた。
隣の部屋。ふーちゃんだ。
少し悩ましげな声に引かれるように、真は一葉の下着を手にしたままで、再び廊下に出た。
「い、あ・・・。」
二葉の部屋の前に立つと、苦しげなうめきのようなものが聞こえる。真の背中を、直感がよぎる。再び高鳴ってくる心臓の鼓動。静かにドアに触れると、閉まり方の甘かった扉は、少しだけ開いて中の様子を垣間見させた。
ふーちゃん!
真にも、二葉が何をしているかわかった。ベッドに横になった二葉は、ベージュのパジャマの胸元と足の間には手を差し込み、身体をくねらせながら言葉にならないうめきを上げている。
ふ、ふーちゃんがオナニー?
真は鈍器で殴られたようなショックを頭に感じた。まさか、いつも清楚で純情なふーちゃんが・・・。
気持ちとは裏腹に、二葉の肢体に最大限の反応をする怒張。息が荒くなって、尿道の奥がジンジンとするのがわかった。
しかし、次の瞬間、二葉のつぶやいた言葉に、真は心と身体が一気に硬直するのを感じた。
「ま、マコくうん・・・。」
え・・・?
耳の錯覚かと思った。しかし、
「い、イイ。マコくん。」
はっきりと呼ばれたそれは、間違いなく自分の名前だった。
ふーちゃんが、俺を・・・?
嵐のように押し寄せる混乱。何をもとに判断すればいいのかわからない。どうして、姉が自分を?
今まで身体を支配していた興奮が急速に冷やされていく。真は、木偶のように廊下に立ち、一葉の下着を握りしめている自分に気付いた。
・・・何やってんだ、俺は。
ふらふらと一葉の部屋に戻る。
でも、何処かでわかってなかったか?ふーちゃんが俺を好きだって・・・。
まとまらぬ思いのまま、手にしたショーツを元に戻そうと、一葉のタンスを開ける。そうする間にも、昔からのことが走馬灯のように意識を過ぎていった。
幼稚園の時、ふーちゃんと結婚しようと約束したこと。二葉をいじめた3年生に年の差もものともせず、けんかで勝ったこと。中学2年になって久しぶりに会った時の驚き。なんてきれいになったんだろう・・・と。
「マコト!そこで何やってんの?」
だから、唐突に電気が点けられ、部屋の入り口で大声が聞こえた時、真には何が起こったかまったく把握できなかった。
「あ、あ、これは・・・。」
今、戻そうと思ってたんだ。
「わたしのショーツとブラでしょ。」
部屋の入り口で腰に手を当てて睨み付けているカズ姉。
「そ、そうだけど、戻そうと思って・・・。」
「バレばれの嘘はいいから、マコト、ちょっとそこに座りなさい。」
嘘じゃあない。だって、今、ふーちゃんが・・・。
「マコト、トランクス脱ぎな。」
「え?」
いったい、何を言ってるんだ?でも、このカズ姉の口調は有無を言わせぬものだ。
「下を脱ぐんだって。何度も恥ずかしいこと言わせないの。」
「で、でも、カズ姉・・・。」
「ああっ、男らしくない。自分で脱がないと無理矢理やるよ!」
「わ、わかったよ。」
確かに、どう怒られてもしょうがないシチュエーションだ。おとなしく従おう。
冷静さの戻ってきた頭で判断すると、おとなしくトランクスを脱いでベッドに座った。
「溜まってるんでしょ?わたしが気持ちよくさせてあげる。」
え?
一葉の口から出た言葉は、予想外のものだった。
「で、でも・・・。」
反論するより先に、力を失っていたペニスが、一葉の柔らかい右手に捕らえられていた。すかさず左手が袋の下を支え、右手がゆるりと上下する。
やぱい、さっきまで・・・。
既にかなりの刺激で限界近くまで勃起していたペニスは、初めて他人に触られる快感で、一気に元のサイズまで膨らんだ。
「・・・カズ姉、まずいよ・・・。」
ベッドの縁で膝をついている一葉は、真の方を見上げた。
「え?もう、出そうなの?」
少し驚いたように一葉は言った。けれど、真には読み取れない微笑みを浮かべると、囁いた。
「いいよ、出して・・・。」
言うと、手の動きを早め、陰嚢を揉みほぐす。大きく露出した頭の先からは、透明な液が漏れて・・・。
一葉の親指がその膨れ上がった亀頭の裏をなぞった瞬間、真は暴発した。
カズ姉の顔にかかっちゃう!
ビュクッ、ビュクッと震えるペニスの先から白い液体が飛び散る。その一部は、一葉の頬のあたりにかかって、トロリと流れ落ちた。
突然の放出感に、真は力をうしなってベッドに倒れた。
「ど、どうしてカズ姉、こんなこと・・・。」
問う間もなく、倒れ込んだ真の足をベッドに乗せると、身体の上にまたがる様になって、一葉は着ていたペイズリー柄のシャツとスカートを素早く脱いだ。服の下から現れた黒い下着が刺激的で、収まる間もなく反応する真の股間。
「も、もういいよ。」
「こっちはそう言ってないみたいだけど。それに、こっちも。」
ペニスを見下ろし、頬に付いた真の精液を指にとると、舌で舐めとる。その表情があまりに扇情的で、真は混乱した。
ほんとに、カズ姉なのか?この人?こんなエッチで・・・、まるで映画の中に出てくる女優みたいだ。
「わたし、はっきりしないのは嫌いなんだ。マコトも、もう大人になる時期だよ。」
ロングボブの髪をかき上げると、腰を折って身体を屈めた。
ま、まさか・・・。
一葉の言葉の意味を考えようとした瞬間、再び硬さを増しつつあった怒張は、生暖かい感覚に包まれた。
そ、そんなことを。
知識としてしか知らなかった状況が、自分のペニスを包み込んでいる。
根元を押さえられ、膨れ上がった先っぽを、舌が舐め上げる。そして、唇が捉えると、ゆるゆると上下する。髪の毛が太股にかかり、やわらかな刺激を与えている。
俺、カズ姉にフェラ、チオされてるのか・・・?
考えた瞬間、暖かい感覚が根元近くまでを支配した。一葉の唇が大きく開いて奥深くまでペニスを飲み込んでいた。そして、唾液の潤滑する音と共に、激しく上下に頭が律動し出す。
気が付くと、真の足をはさむように一葉の二本の白い足がからみつき、ショーツを擦り付けるように動いている。
カズ姉も感じてる・・・?
そんな疑問を差し挟む暇もなかった。やがて根元で止まっていた右手も上下動を始め、左手が再び袋に刺激を与える。また、ペニスの奥から震えるような快感が生じて、到底我慢できそうになかった。
「だめだ、出そうだよ!」
それでも一葉は咥えた剛直を離さない。それどころか、より深く飲み込んでいく。
そして、膨れ上がった先が喉の奥に突き当たった瞬間、二度目の爆発が起きた。今度は、さっきよりずっと長く、腰全体が痺れるように・・・。
真の頭はあまりに強く、そして初めての快感に真っ白になっていた。ただ、解き放たれた精が、一葉の喉の中へ流れ込んでいくのだけがわかった。
「ふぅ。」
波が通り過ぎた後、唇を離した一葉が小さな息をつくのが聞こえた。そして、すっと立ち上がると、なんの前置きもなく、部屋の扉を開けた。
「二葉。そんなとこで何してんの?盗み聞きはよくないんじゃない。」
えっ!?
「か、一葉。なんで・・・。」
下半身をはだけたまま、身体を起こすと、ベージュのパジャマを着た二葉が、胸の前で手を合わせて、呆然と下着姿の一葉を見つめている。
「ぼやぼやしてると、わたしがマコトを取っちゃうからね。」
思いもかけない言葉が一葉の口から発された。
真は呆然として二人の姉の会話の成り行きを見守るしかなかった。
3.
「い、イイ。マコくん。」
ショーツの中で、指先がクリトリスをこすり上げた瞬間、背中に電気が走って、二葉は身体を硬直させた。
・・・また、しちゃった。
潮が引いていくと、けだるさに包まれながら思う。一葉にお風呂で感じさせられて以来、何処かで心のネジが飛んでしまったようだった。一人でぼんやりしていると、身体がなんとなく火照ってくる。そして、お決まりのように自慰行為に耽ってしまうのだ。
わたし、こんなにエッチなはずじゃなかったのに・・・。でも、いつも弟のことを妄想しながらするなんて、ほんとうは違ったのかもしれない。
自分でも、真のことをどう考えているのかがわからなかった。身体が痺れてくると、いけない、と思いながら弟の事を考えてしまう。ただ、それほどの罪悪感はなく、どちらかというとそう考えてしまうことが、愛おしいような気さえするのだった。
浅い快感が身体から抜けていくと、二葉はベッドから身を起こした。明日の補習の用意くらいしておかないと・・・。
「マコト!そこで何やってんの?」
一葉の大声が廊下から響き渡ったのはその時だった。
なあに・・・?
ただならぬ気配に部屋を出る。廊下の窓からは、満月が顔を覗かせていた。
一葉の部屋の前に立つと、妙な雰囲気が伝わってくる。扉に手をかけるのをやめて、ドアに身を寄せてみた。
「マコト、トランクス脱ぎな。」
信じられないような一葉の一言が部屋の中から聞こえる。そして、衣擦れの音、囁くような声・・・・。真のものらしきうめき・・・。
何、いったい何してるの?
ドアをノックしようと心に決めた時、決定的な一言が聞こえた。
「いいよ、出しても。」
そして、真が短い声を上げる。
何で、どうして・・・。
涙が溢れてくるのがわかった。間違いなく、今この部屋の中で、性的な行為が行われているのだ。
そして、再びベッドのきしむ音。そして、いくつかの会話の後、唾液をすするような音が、静まり返った廊下にまで漏れてくる。
もう、聞きたくない!
そう思った瞬間、真の大きな声が響いた。
「だめだ、出そうだよ!」
その声が、二葉の中の何かに火を付けた。そして、頭を振り上げると、踵を返す。
嫌だ。こんなままじゃ!
目は燃えるような色を帯び、唇は固く結び合わされた。そして、決然としてドアノブに手をかける。が、その瞬間、扉の方が内側から開いた。そこには、腰に手を当てて立ち塞がる黒い下着姿の一葉がいた。部屋の中では、真が下半身をむき出しにしたままベッドの上に倒れ込んでいる。
一葉、なんて格好・・・。それに、マコ君も・・・。
「二葉。そんなとこで何してんの?盗み聞きはよくないんじゃない。」
「か、一葉。なんで・・・。」
思わぬ展開に機先を制されて、言葉につまる。
「ぼやぼやしてると、わたしがマコトを取っちゃうからね。」
その言葉で、一気に沸点まで怒りが上昇した。
「一葉、あんた何言ってるかわかってんの!オトコとやりすぎで脳味噌腐ってんじゃないの。弟を強チンする姉なんて、あんたみたいな淫乱オンナだけよ!」
普段の二葉と余りにギャップのある言葉に、一瞬一葉はひるんだ様に見えたが、仁王立ちしたまま、切り返した。
「馬鹿はあんたの方でしょ。万年妄想オンナ!少女マンガに浸ってんじゃないよ、バーカ。一度オトコに振られたくらいでね、メソメソしてんじゃねえよ。はやんないんだよ、そーいうのは。」
一葉!!言ってはならないことを・・・。
「身体だけの脳味噌筋肉よりずっとマシでしょ。溜まったからって、好きでもない手近なオトコに襲いかかるなんて、サルより悪いわ!」
家の外まで響き渡る声で二葉は叫んだ。
その時、一葉がにやっと笑ったように見えた。
「・・・好きでもない、ねえ・・・。ほんとにそう思ってるのか、二葉。」
「え?」
「わたしたち、双子だよ。それも、一卵性の。外見の性格は違っても、好きになるものが同じなのは、そっちだってわかってるんだろうに。」
・・・そうだ。一葉とわたしは、いっつも同じ物の取り合いになるんだ。ぬいぐるみも、お菓子も、初恋の小学校の先生も同じだった。
「じゃ、じゃあ、まさか本気でマコ君のこと・・・。」
怒りが急速に消え、不安が頭をもたげてくる。
「さ、どうだろうね。とにかく、帰った帰った。いくら姉妹でも、夜中に勝手に部屋に入り込むのを許す義務はないからね。」
「う・・・。」
年期の入った押しの強さに、二葉には返す言葉が見つからなかった。
「ほら、マコト。あんたもだよ。相談が終わったならさっさと自分の部屋に戻る!」
二人のやり取りを呆然と見ていた真も、そそくさと下着をはくと、一葉の背中に隠れるように廊下に出た。
「ご、ごめん、ふーちゃん。」
一瞬目が合った時、小さな声で真は言った。二葉はそっぽを向くと、冷たく言い放った。
「大っ嫌い。」
真は目を逸らすと、とぼとぼと自分の部屋に入っていく。それを横目で見ていると、自分まで泣きたくなってきた。一葉も、何の声をかけるでもなく、ドアをバタンと閉めた。
・・・もう。何よ・・・。
ぐちゃぐちゃになった頭を抱えながら、二葉は自室に戻った。そして、ベッドに突っ伏すると、大声で泣き始めた。
1.
「はあ・・・。」
放課後の校庭を校舎の四階の窓から見下ろしながら、一葉は声に出してため息をついた。
補習がだるいというのは確かにあったが、それより何より、家の雰囲気が気分を滅入らせていた。
・・・悪い思い付きじゃないと思ったんだけどなあ。
あの日の自分の行動を思い返す。
激しい雨の降ったあの日以来、姉弟三人の間はどうもしっくりいっていなかった。朝食も夕食も大概別々だし、たまたま顔を合わせれば会話はほとんどなし。思い付きでギャグをかましてみても、まったく反応がなく、自分が寒くなってしまうほどだ。
椅子に腰掛けて見下ろした校庭では、陸上部とサッカー部が練習を続けていた。
また、跳びたいよなあ。
スカートからすんなり伸び出した足首を見つめる。
一葉は、本来は陸上部の所属で、専門は高跳びだった。ほんとうは今ごろ、競技会に向けて練習の日々に明け暮れていなければならない所だったのだが・・・。
「ウィッス!」
背中の声に振り向くと、背の低い頭の両側をひっつめてお下げ風にしたいたずらっぽい顔があった。
「ナナか。」
プリッとした唇が印象的なコケティッシュな表情の菜奈は一年からの親友だった。
「なにブルーなってんの?らしくもない。」
「ああ、ちょっとな。」
菜奈は一葉の横に椅子を並べると、同じように背もたれ側に肘をかけるように座って校庭を見下ろした。割合背の高い一葉と小さな菜奈が窓際に二つ並んで座ると、どこかユーモラスに見える。
「もしかして、部のことかい?」
「いいや。それはナナも知ってるだろ。」
「だよねえ。あんた、そういうことじゃ落ち込まんものね。」
「まあね・・・。」
お、マコトだ。練習もう上がるんかな。
サッカー部のやっていたミニゲームが終わったようで、向こう側のゴールの方から真らしき人影がゆっくりと歩いてくるのが見える。
「ま、姉としての悩みって奴かねえ。」
「ふうん。」
菜奈も組んだ腕の上に顎をのせると、同じように校庭を見下ろした。
「真君?それとも二葉ちゃん?」
一葉はふーっと息を吐いた。
「・・・両方。」
あれ、マコトの奴、随分長くマネージャーと話しこんでるなあ。
「姉ちゃんはつらいねえ。」
ポンポンと肩を叩くと、菜奈はごそごそと持っていたポーチの中を探った。
「ホイ、どうぞ。」
差し出した手には、小さな双眼鏡が握られていた。
「何、これ?」
「校庭観察用のシークレットアイテム。50倍だよ。」
「なんでこんなもんもってるの、あんたは。」
「へへ、島村君観察用さ。」
「島村って、『南高のナカタ』って、あいつか?」
「そうだよん。」
「物好きな奴。」
「ほらほらそんなことはどうでもいいから、早く見ないと、真君行っちゃうよ。」
「お、おお。」
どれ。
一葉が小さな双眼鏡の接眼レンズに目を当てると、緑色の巨大な物体が飛び込んでくる。
「なんだ、こりゃ。ああ、木の葉か。」
「だめだよ、一葉。倍率落として、全体の状況を確かめながら対象に合わせないと。」
「ほいほい。」
お、見えた見えた。なんか、マコトの奴、冷たいそぶりだな。あさっての方を向いてマネージャーの話聞いてるじゃないか。ん?
一葉の頭の中で何かが引っかかった。
マネージャー、マネージャー・・・、そうだ、江東萌実とかいう二年の子だ。ここのところ、マコトと話すとたまに出てくるサッカー大好き少女。ああ、そうか。
レンズには、マコトの方を見上げて真剣に話し掛けている風のポニーテールの女の子と、半分背中を向けてうつむき加減の真が映っていた。
あ、行っちゃうじゃないか。
真は一瞥もせずに早足で歩み去っていく。取り残された萌実は、しばし呆然とその背中を見送っていた。
ふうん・・・。そういうことか。
双眼鏡から目を離すと、一葉は心の中でうなずいた。
最近マコトが不安定になってたのは、あの娘のせいか。・・・それにしても、なんて遅い春。あいつは、ほんとに今どきのオトコか。
「なんか見えた?」
「うん、まあね。これ、ありがと。役に立つわ。」
「でしょ?」
双眼鏡を受け取ると、菜奈は得意顔で笑った。
それにしても、これはわたしがどうこう心配するような事か?イマイチよくわからないなあ。
「あ、またなんか考えてる。」
「お、ごめ。」
菜奈は、立ち上がってポーチを持つと、即座に言った。
「ね、一葉。今日はカラオケでも行かん?」
「うーん。」
どうしよっかな。ま、いいか。どうせ二葉は遅くなるって言ってたし、マコトには電話して出前でも取ってもらうか。
「わかった。行こう。」
「やりっ!つまんなかったんだよね。一葉、ここんとこ付き合い悪いし。」
「すまん。今日は、一葉さんのビューチフル・ボイス、ノンストップモードで聞かしちゃる。」
「ラッキー。で、かっこいいオトコ、ゲットじゃ。」
う。それはいい。
「いや、それはいい。オトコはお前にまかせる。」
「えーっ、つまんないよ、それじゃあ。一葉、ノリわるいー。」
菜奈は二の句を継ごうとして、何かに気付いたように言葉を飲み込んだ。
「・・・ま、いいか。今日はオンナの花園で行こう!」
はは、やっぱりこいつ、いい奴だな。
「悪いな、菜奈。気遣わせて。」
「なんの事?ささ、決まったなら行こう、行こう。」
「玲子と美知も呼ぶか!?」
「オッケー、オッケー、カムカムエブリバディーじゃ。」
「お前、いつの人間だ?」
ちっと今日は羽目を外すとすっか。
一葉はスポーツバックを肩にかけると、菜奈と共に教室を後にした。
少し飲みすぎたかな・・・。
アルコールの回った身体で玄関の戸を開けると、家の中は電気一つ付いていない暗闇だった。
はあ、よく歌った。いったい、今何時だろ?
腕時計を見ると、時間はもう10時近くになっていた。
それにしても、なんでこんな暗いんだろ。二人とも、もう寝ちゃったってことか?いくらなんでも、早いんじゃ・・・。
途中で着替えた制服をバッグから出して洗濯カゴに入れ、台所と居間を覗いたが、やはり誰もいない。千鳥足で階段に戻り、ゆっくりと上っていく。
やっぱ飲みすぎだ。まったく、菜奈のからみ酒のせいだぞ。
一葉は、二階の廊下の真ん中にある自分の部屋の扉に手をかけた。
え!?
部屋に入って壁の電気スイッチを入れた瞬間、予想外の眺めに言葉を失った。
「マコト!そこで何やってんの?」
奥に置かれたミントグリーンのタンスの一番下の引き出しを開けて、何かを手に持った真がしゃがみこんでいた。
「あ、あ、これは・・・。」
手に持っているのは、明らかにわたしの下着。まったく、中学生でも卒業していそうなことを・・・。
「わたしのショーツとブラでしょ。」
「そ、そうだけど、戻そうと思って・・・。」
「バレばれの嘘はいいから、マコト、ちょっとそこに座りなさい。」
おびえたようにタンスの前で小さくなっていた真は、おとなしく一葉の言葉に従うと、ベッドに腰掛けた。
最近ちっとは男らしい感じになったと思ったのに、こうやってうつむいてると、まだまだ子どもに見える・・・。
父親ゆずりの細く切れ長の目を床に落とし、スポーツ刈りのつむじを一葉の方に向けて真は座っていた。
さて、何て言ってやればいいか・・・。あれ?
その時、一葉の鋭敏な感覚は、廊下で何かが動く気配を察していた。その気配は、なぜかこの部屋の入り口で静まった。それでも、わずかな衣服のこすれる音で、そこにとどまっていることがわかる。
二葉だ・・・。さっきでかい声出しちゃったからな。
はあ・・・、まったくわたしってば、こんな役回りばっかか・・・。
心の中で大きなため息をつくと、神妙な顔で一葉の言葉を待っている真の前に立つ。
「マコト、トランクス脱ぎな。」
「え?」
顔を上げると、真はまじまじと一葉を見つめた。
「下を脱ぐんだって。何度も恥ずかしいこと言わせないの。」
それでも、酔ってなければこんな事言えないかもな・・・。
「で、でも、カズ姉・・・。」
「ああっ、男らしくない。自分で脱がないと無理矢理やるよ!」
「わ、わかったよ。」
観念したようにダークグリーンのトランクスを脱いだ。力なく縮こまったペニスが、再び座った太い足の間に、ふにゃっと乗っかっている。
え、お、大きいじゃんか・・・。
人並み以上のサイズのそれに、ビクッっと腰の奥で何かが反応する。
お、おい。わたしの目的はそういうんじゃないだろ?
努めて冷静になろうとした。けれど、次に出た言葉には少なからず自分自身の欲望がにじんでしまった、一葉は自らそう考えずにはいられなかった。
「溜まってるんでしょ?わたしが気持ちよくさせてあげる。」
そして、真の足の間にしゃがみこんだ。
2.
「鳴瀬!何やってる。左サイドがらあきだぞ!!」
激しいコーチの声が真に飛んだ。このミニゲームでもう何回目なのかわからなかった。
「守備意識!」
わかってる。わかってるんだ。でも、気持ちがついてこない。
ピーッ!
試合終了の笛が鳴った。
終わった・・・。
全身から汗を流しながら歩いてくる真の背中に、腕を組んでベンチに腰掛けた、いかつい体型の監督から声がかかる。
「鳴瀬。」
「はい。」
立ち止まったが、そのまま振り向かずに返事だけを返した。
「お前のポジション、どこかわかってるな。」
「左ウィングっす。」
「わかってるならよし。中学の時はどうかしらんが、今お前はTOPじゃあない。」
「・・・もっと後ろに気を使え、すよね。」
「そうだ。」
わかってるんだ。
もう一度心の中でつぶやいた。水道の所までくると、他の部員と並んで水道の蛇口に口をあてる。少し水を含んだ後、夏の日差しですっかり熱くなった頭に、上から水をかける。
「ふぅーっ。」
息をついて真夏の太陽を仰ぎ見ながら部室の方に歩きかけると、背中に投げつけられるタオル。
「鳴瀬君。」
振り向くと、マネージャーの萌実が白い半袖のトレーナーと、ライトブルーにロゴの入ったひざ上までのショートパンツ姿で立っていた。夏練ならではのフリーな服装に真は目を逸らした。
「どうしたの?ここのところ、なんか集中できてないみたいだけど。」
「そんなことないっすよ。」
「だめだよ、見ればわたしにだってわかるんだから。」
混じりけのない心配が浮かぶ瞳が胸を射た。今、萌実と話すのは真には苦行に近い状況なのだ。
「何か悩み?わたしで助けになるなら、話聞くよ。」
「大丈夫っす。」
「でも、最近、シュート練習もしてないみたいだし・・・。」
やめてくれ。だいたい、こんなに集中できないのは、萌実さんのせいでもあるんだから!
「ねえ、こういう時に力になるのが、わたしの役目なんだし。」
結局、それか。どうせ、この人はサッカーのことしか考えていない。
「鳴瀬、君?」
黙ったままの真に萌実が一歩近づいた瞬間、何かが気持ちの中で切れた。
「・・・放っといてくれ。あんたには関係ないことだ!」
考えていたより遥かに刺のある言葉になってしまう。萌実の表情が凍り付き、真は歩み去った。
「おーっ、夫婦喧嘩かー?」
「いいねえ。」
少し離れた場所から声がかかる。萌実は我に返ると、周りを見まわしながら大声で言った。
「もう、みんな仲間でしょ。ちょっとは心配してあげたら。」
「いいの、いいの。」
一番背の高い、部のキャプテンの市ノ瀬が萌実の方に歩み寄りながら言った。
「熱き青少年の血潮って奴さ。ほっときゃその内収まるよ。」
「熱きオトコのたかまりの間違いじゃないのか、キャプテン。」
「そーかもな。」
「もう、やめなさいよ。」
萌実はうんざりしたように言い放つと、早くも部室から荷物を抱えて出て行く真の背中を心配げに見送っていた。
夜。
部屋の電気もつけないままで、真はベッドに横になっていた。一葉からは「遅くなる」と夕方に連絡があったし、二葉も出前のピザを食べている間、ほとんどうわの空で、会話らしきものは何もなかった。
心の中のもやもやが収まらない。自分一人が置いてきぼりにされたように感じる。何もしていないのに汗が吹き出してくるような感覚がして、身体中をかきむしりたくなる。
いったい、どうしたっていうんだ。
真には自分の心と身体の変調が理解できなかった。
こうしてまんじりと暗がりの中で目を開いていると、身体の中心に意識と血液が集まっていくのがわかる。
軽くペニスを握ると、すでに立ち上がりかけたそれは、強烈に自己主張を始めていた。
いくら奥手の真でも、オナニーを時折はしていないわけではなかった。でもそれは、夢精では収まらない時、機械的にペニスを摩擦して出すだけの単調なものだった。
『おまえ、それマジで言ってるのか?』
一度だけ友達に話した時、即座に返ってきた答えは、「ネタは使わんの?」という言葉だった。
あの時は、そんなもの俺はいらん、と思ったけれど・・・。
この一週間で溜まりきった欲求のはずなのに、ただ触っても反応が乏しい。確かに昨日の夜に夢精したばかりだった。それでも、射精の強い快感を味わいたいという気持ちは増すばかりで止まることを知らなかった。
『おまえだって、姉ちゃんの下着くらい、あさってみたくなったことあるだろ?』
あの時笑い飛ばした言葉が、頭の中で鮮明に蘇る。
で、でも、そんなことは・・・。
先週見た二人の姉の肢体が意識をよぎる。張りのある一葉の乳房と、ほのかに浮き出た乳首、そして、白い二葉の足と腰・・・。
手に握られたペニスがぐっと硬さを増した。
そして、浮かんだ妄想は意志の制御を離れて拡大していく。いつの間にか、二人の姉の身体は萌実のものに置き換わっていた。今日着ていた白いトレーナーをたくし上げると、妖しく微笑む萌実。
『ほら、見て・・・。』
グリーンのスポーツブラが現われ、妄想の中の萌実は、身体を見せ付けるように両手を高く差し上げる。そして、ブラがたくし上げられ、形のよい乳房が・・・。
ダメだ!
強い罪悪感が込み上げてきて、真は股間から手を離した。
自分のイライラにまかせて、あんな言葉を投げつけてしまった上に、こんな事に萌実さんを使うなんて。ったく、どうすればいいって言うんだ。
それでもまったく股間の昂まりは収まらない。それどころか、トランクスの端から狂暴な先を覗かせるほどに反り返って勃起している。
・・・カズ姉なら、許してくれる、よな。
唐突に一葉の顔が思い浮かぶ。
きっとカズ姉なら、下着を見るくらいのこと、分かってくれる。
熱情にまかせた思い付きに身を委ね、暗闇の中で真は立ち上がると、窓からの月明かりだけで光る廊下に出た。Tシャツとトランクス一枚の格好で隣の一葉の部屋のドアを開ける。ほどよく片づけられた部屋には、そこはかとなくミントの香りがした。
ドックン、ドックン、ドックン・・・。
胸ははちきれそうに鼓動していた。奥の窓際に置かれたタンスの引き出しを開ける。
下から一段目、スポーツウエアやTシャツ、靴下が入っている。
二段目、ブラウスやスカート、ポロシャツがきれいに畳まれて入っている。
・・・三段目。
あった。
色とりどりの下着が並んでいた。よく見かけるすっきりしたスポーツタイプのもの。かわいらしい柄入りのもの。そして、手触りがよさそうな綿生地に、花柄のレース・・・・。
真は震える手に一枚のショーツを取った。うす紫に、細かい蝶模様のレースがあしらわれた布地の少ないタイプのものだった。
トランクスの中で限界近くまで怒張するペニス。右手でさわろうとした瞬間、何か小さな声が聞こえた。
「ぁ・・・。」
カズ姉!?
部屋の入り口を振り返ったが、誰もいない。
「あ、あぁ・・・。」
今度ははっきり聞こえた。
隣の部屋。ふーちゃんだ。
少し悩ましげな声に引かれるように、真は一葉の下着を手にしたままで、再び廊下に出た。
「い、あ・・・。」
二葉の部屋の前に立つと、苦しげなうめきのようなものが聞こえる。真の背中を、直感がよぎる。再び高鳴ってくる心臓の鼓動。静かにドアに触れると、閉まり方の甘かった扉は、少しだけ開いて中の様子を垣間見させた。
ふーちゃん!
真にも、二葉が何をしているかわかった。ベッドに横になった二葉は、ベージュのパジャマの胸元と足の間には手を差し込み、身体をくねらせながら言葉にならないうめきを上げている。
ふ、ふーちゃんがオナニー?
真は鈍器で殴られたようなショックを頭に感じた。まさか、いつも清楚で純情なふーちゃんが・・・。
気持ちとは裏腹に、二葉の肢体に最大限の反応をする怒張。息が荒くなって、尿道の奥がジンジンとするのがわかった。
しかし、次の瞬間、二葉のつぶやいた言葉に、真は心と身体が一気に硬直するのを感じた。
「ま、マコくうん・・・。」
え・・・?
耳の錯覚かと思った。しかし、
「い、イイ。マコくん。」
はっきりと呼ばれたそれは、間違いなく自分の名前だった。
ふーちゃんが、俺を・・・?
嵐のように押し寄せる混乱。何をもとに判断すればいいのかわからない。どうして、姉が自分を?
今まで身体を支配していた興奮が急速に冷やされていく。真は、木偶のように廊下に立ち、一葉の下着を握りしめている自分に気付いた。
・・・何やってんだ、俺は。
ふらふらと一葉の部屋に戻る。
でも、何処かでわかってなかったか?ふーちゃんが俺を好きだって・・・。
まとまらぬ思いのまま、手にしたショーツを元に戻そうと、一葉のタンスを開ける。そうする間にも、昔からのことが走馬灯のように意識を過ぎていった。
幼稚園の時、ふーちゃんと結婚しようと約束したこと。二葉をいじめた3年生に年の差もものともせず、けんかで勝ったこと。中学2年になって久しぶりに会った時の驚き。なんてきれいになったんだろう・・・と。
「マコト!そこで何やってんの?」
だから、唐突に電気が点けられ、部屋の入り口で大声が聞こえた時、真には何が起こったかまったく把握できなかった。
「あ、あ、これは・・・。」
今、戻そうと思ってたんだ。
「わたしのショーツとブラでしょ。」
部屋の入り口で腰に手を当てて睨み付けているカズ姉。
「そ、そうだけど、戻そうと思って・・・。」
「バレばれの嘘はいいから、マコト、ちょっとそこに座りなさい。」
嘘じゃあない。だって、今、ふーちゃんが・・・。
「マコト、トランクス脱ぎな。」
「え?」
いったい、何を言ってるんだ?でも、このカズ姉の口調は有無を言わせぬものだ。
「下を脱ぐんだって。何度も恥ずかしいこと言わせないの。」
「で、でも、カズ姉・・・。」
「ああっ、男らしくない。自分で脱がないと無理矢理やるよ!」
「わ、わかったよ。」
確かに、どう怒られてもしょうがないシチュエーションだ。おとなしく従おう。
冷静さの戻ってきた頭で判断すると、おとなしくトランクスを脱いでベッドに座った。
「溜まってるんでしょ?わたしが気持ちよくさせてあげる。」
え?
一葉の口から出た言葉は、予想外のものだった。
「で、でも・・・。」
反論するより先に、力を失っていたペニスが、一葉の柔らかい右手に捕らえられていた。すかさず左手が袋の下を支え、右手がゆるりと上下する。
やぱい、さっきまで・・・。
既にかなりの刺激で限界近くまで勃起していたペニスは、初めて他人に触られる快感で、一気に元のサイズまで膨らんだ。
「・・・カズ姉、まずいよ・・・。」
ベッドの縁で膝をついている一葉は、真の方を見上げた。
「え?もう、出そうなの?」
少し驚いたように一葉は言った。けれど、真には読み取れない微笑みを浮かべると、囁いた。
「いいよ、出して・・・。」
言うと、手の動きを早め、陰嚢を揉みほぐす。大きく露出した頭の先からは、透明な液が漏れて・・・。
一葉の親指がその膨れ上がった亀頭の裏をなぞった瞬間、真は暴発した。
カズ姉の顔にかかっちゃう!
ビュクッ、ビュクッと震えるペニスの先から白い液体が飛び散る。その一部は、一葉の頬のあたりにかかって、トロリと流れ落ちた。
突然の放出感に、真は力をうしなってベッドに倒れた。
「ど、どうしてカズ姉、こんなこと・・・。」
問う間もなく、倒れ込んだ真の足をベッドに乗せると、身体の上にまたがる様になって、一葉は着ていたペイズリー柄のシャツとスカートを素早く脱いだ。服の下から現れた黒い下着が刺激的で、収まる間もなく反応する真の股間。
「も、もういいよ。」
「こっちはそう言ってないみたいだけど。それに、こっちも。」
ペニスを見下ろし、頬に付いた真の精液を指にとると、舌で舐めとる。その表情があまりに扇情的で、真は混乱した。
ほんとに、カズ姉なのか?この人?こんなエッチで・・・、まるで映画の中に出てくる女優みたいだ。
「わたし、はっきりしないのは嫌いなんだ。マコトも、もう大人になる時期だよ。」
ロングボブの髪をかき上げると、腰を折って身体を屈めた。
ま、まさか・・・。
一葉の言葉の意味を考えようとした瞬間、再び硬さを増しつつあった怒張は、生暖かい感覚に包まれた。
そ、そんなことを。
知識としてしか知らなかった状況が、自分のペニスを包み込んでいる。
根元を押さえられ、膨れ上がった先っぽを、舌が舐め上げる。そして、唇が捉えると、ゆるゆると上下する。髪の毛が太股にかかり、やわらかな刺激を与えている。
俺、カズ姉にフェラ、チオされてるのか・・・?
考えた瞬間、暖かい感覚が根元近くまでを支配した。一葉の唇が大きく開いて奥深くまでペニスを飲み込んでいた。そして、唾液の潤滑する音と共に、激しく上下に頭が律動し出す。
気が付くと、真の足をはさむように一葉の二本の白い足がからみつき、ショーツを擦り付けるように動いている。
カズ姉も感じてる・・・?
そんな疑問を差し挟む暇もなかった。やがて根元で止まっていた右手も上下動を始め、左手が再び袋に刺激を与える。また、ペニスの奥から震えるような快感が生じて、到底我慢できそうになかった。
「だめだ、出そうだよ!」
それでも一葉は咥えた剛直を離さない。それどころか、より深く飲み込んでいく。
そして、膨れ上がった先が喉の奥に突き当たった瞬間、二度目の爆発が起きた。今度は、さっきよりずっと長く、腰全体が痺れるように・・・。
真の頭はあまりに強く、そして初めての快感に真っ白になっていた。ただ、解き放たれた精が、一葉の喉の中へ流れ込んでいくのだけがわかった。
「ふぅ。」
波が通り過ぎた後、唇を離した一葉が小さな息をつくのが聞こえた。そして、すっと立ち上がると、なんの前置きもなく、部屋の扉を開けた。
「二葉。そんなとこで何してんの?盗み聞きはよくないんじゃない。」
えっ!?
「か、一葉。なんで・・・。」
下半身をはだけたまま、身体を起こすと、ベージュのパジャマを着た二葉が、胸の前で手を合わせて、呆然と下着姿の一葉を見つめている。
「ぼやぼやしてると、わたしがマコトを取っちゃうからね。」
思いもかけない言葉が一葉の口から発された。
真は呆然として二人の姉の会話の成り行きを見守るしかなかった。
3.
「い、イイ。マコくん。」
ショーツの中で、指先がクリトリスをこすり上げた瞬間、背中に電気が走って、二葉は身体を硬直させた。
・・・また、しちゃった。
潮が引いていくと、けだるさに包まれながら思う。一葉にお風呂で感じさせられて以来、何処かで心のネジが飛んでしまったようだった。一人でぼんやりしていると、身体がなんとなく火照ってくる。そして、お決まりのように自慰行為に耽ってしまうのだ。
わたし、こんなにエッチなはずじゃなかったのに・・・。でも、いつも弟のことを妄想しながらするなんて、ほんとうは違ったのかもしれない。
自分でも、真のことをどう考えているのかがわからなかった。身体が痺れてくると、いけない、と思いながら弟の事を考えてしまう。ただ、それほどの罪悪感はなく、どちらかというとそう考えてしまうことが、愛おしいような気さえするのだった。
浅い快感が身体から抜けていくと、二葉はベッドから身を起こした。明日の補習の用意くらいしておかないと・・・。
「マコト!そこで何やってんの?」
一葉の大声が廊下から響き渡ったのはその時だった。
なあに・・・?
ただならぬ気配に部屋を出る。廊下の窓からは、満月が顔を覗かせていた。
一葉の部屋の前に立つと、妙な雰囲気が伝わってくる。扉に手をかけるのをやめて、ドアに身を寄せてみた。
「マコト、トランクス脱ぎな。」
信じられないような一葉の一言が部屋の中から聞こえる。そして、衣擦れの音、囁くような声・・・・。真のものらしきうめき・・・。
何、いったい何してるの?
ドアをノックしようと心に決めた時、決定的な一言が聞こえた。
「いいよ、出しても。」
そして、真が短い声を上げる。
何で、どうして・・・。
涙が溢れてくるのがわかった。間違いなく、今この部屋の中で、性的な行為が行われているのだ。
そして、再びベッドのきしむ音。そして、いくつかの会話の後、唾液をすするような音が、静まり返った廊下にまで漏れてくる。
もう、聞きたくない!
そう思った瞬間、真の大きな声が響いた。
「だめだ、出そうだよ!」
その声が、二葉の中の何かに火を付けた。そして、頭を振り上げると、踵を返す。
嫌だ。こんなままじゃ!
目は燃えるような色を帯び、唇は固く結び合わされた。そして、決然としてドアノブに手をかける。が、その瞬間、扉の方が内側から開いた。そこには、腰に手を当てて立ち塞がる黒い下着姿の一葉がいた。部屋の中では、真が下半身をむき出しにしたままベッドの上に倒れ込んでいる。
一葉、なんて格好・・・。それに、マコ君も・・・。
「二葉。そんなとこで何してんの?盗み聞きはよくないんじゃない。」
「か、一葉。なんで・・・。」
思わぬ展開に機先を制されて、言葉につまる。
「ぼやぼやしてると、わたしがマコトを取っちゃうからね。」
その言葉で、一気に沸点まで怒りが上昇した。
「一葉、あんた何言ってるかわかってんの!オトコとやりすぎで脳味噌腐ってんじゃないの。弟を強チンする姉なんて、あんたみたいな淫乱オンナだけよ!」
普段の二葉と余りにギャップのある言葉に、一瞬一葉はひるんだ様に見えたが、仁王立ちしたまま、切り返した。
「馬鹿はあんたの方でしょ。万年妄想オンナ!少女マンガに浸ってんじゃないよ、バーカ。一度オトコに振られたくらいでね、メソメソしてんじゃねえよ。はやんないんだよ、そーいうのは。」
一葉!!言ってはならないことを・・・。
「身体だけの脳味噌筋肉よりずっとマシでしょ。溜まったからって、好きでもない手近なオトコに襲いかかるなんて、サルより悪いわ!」
家の外まで響き渡る声で二葉は叫んだ。
その時、一葉がにやっと笑ったように見えた。
「・・・好きでもない、ねえ・・・。ほんとにそう思ってるのか、二葉。」
「え?」
「わたしたち、双子だよ。それも、一卵性の。外見の性格は違っても、好きになるものが同じなのは、そっちだってわかってるんだろうに。」
・・・そうだ。一葉とわたしは、いっつも同じ物の取り合いになるんだ。ぬいぐるみも、お菓子も、初恋の小学校の先生も同じだった。
「じゃ、じゃあ、まさか本気でマコ君のこと・・・。」
怒りが急速に消え、不安が頭をもたげてくる。
「さ、どうだろうね。とにかく、帰った帰った。いくら姉妹でも、夜中に勝手に部屋に入り込むのを許す義務はないからね。」
「う・・・。」
年期の入った押しの強さに、二葉には返す言葉が見つからなかった。
「ほら、マコト。あんたもだよ。相談が終わったならさっさと自分の部屋に戻る!」
二人のやり取りを呆然と見ていた真も、そそくさと下着をはくと、一葉の背中に隠れるように廊下に出た。
「ご、ごめん、ふーちゃん。」
一瞬目が合った時、小さな声で真は言った。二葉はそっぽを向くと、冷たく言い放った。
「大っ嫌い。」
真は目を逸らすと、とぼとぼと自分の部屋に入っていく。それを横目で見ていると、自分まで泣きたくなってきた。一葉も、何の声をかけるでもなく、ドアをバタンと閉めた。
・・・もう。何よ・・・。
ぐちゃぐちゃになった頭を抱えながら、二葉は自室に戻った。そして、ベッドに突っ伏すると、大声で泣き始めた。
コメント