小説(転載) 母と息子淫辱相姦_02
近親相姦小説
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「さあて・・・と」
男は、秀明に向かって言った。
「おまえ、名前は?」
「ひ、秀明・・・です」
「そうか、秀明、おまえもずいぶんタイミングの悪いときに帰ってきたもんだな。だが仕
方がない。こうなったのも運命だと思って、お母さんが俺に犯されるところを見ているが
いい」
「!」
男がこう言うだろうことは、秀明もなんとなく予想していた。手錠まで用意していたこ
とから考えても、男が計画的に、確信犯的に家にやってきたのはまちがいないのだ。
だがそれでも、はっきりと男の口から聞かされるのは、秀明にとって戦慄以外のなにも
のでもなかった。志保も大きく体を震わせ、
「そ、そんな!」
と信じられないような顔で叫んだ。だが男は、そんな志保をジーッと見つめ、
「そんなひどいこと・・・てか? その言葉は、おまえの亭主に言ってやるんだな」
と、奇妙な薄笑いを見せた。
「ど、どういうことなんです!」
志保がさらに叫んだ。男の思わぬ言葉に驚き、怒りも覚えている声だった。
「ど、どうして夫がひどいのですか・・・」
母がむきになるのも当然だった。秀明は、母が父、真一郎のことも深く愛していること
を知っている。そして母は、父が人に憎まれるようなことをする男ではないと信じている
はずだ。もちろん、秀明も信じている。
だから真一郎のことを悪く言われたら、否定を込めて聞き返すのは当然だった。
だが、男はますますニタニタしながら、志保を馬鹿にするかのように見つめかえした。
「まあ、おまえ達にとってはいい親父なんだろうな。よかったな、幸せなことで」
と毒のある言い方をしたあと、男は一瞬だけ顔をゆがめた。が、すぐにもとの薄笑いに
もどって続けた。
「・・・だがな、あいつのせいで俺の家族は崩壊しちまったんだよ」
どうだ、驚いたか、と言いたげな顔だった。
志保と秀明が、ますます信じられないという表情を浮かべるのを見て、
「いいだろう、こうなったらあわてても仕方がない。あとで言ってやろうと思っていたが
今教えてやるぜ。それに、わけもわからずやられるのも、納得がいかねえだろうからな」
そう言って、男はまた薄ら笑い、テーブルをはさんで志保と向き合うように、倒れてい
ないほうの一人がけのソファに腰を下ろした。
秀明も志保も、開き直ったかのように落ちつきを見せはじめた男を、息を飲んで見つめ
ている。
時間はたっぷりある・・・そう言っているような男の余裕が不安っだった。
男は話しはじめた。
要点はこういうことだ。男の名は津本久といい、大学の四年生である。津本の父武久は
五四才で、秀明の父が経営する会社の社員だった。
社員といっても、真一郎の父親の代からの古株で、会社のなかでも高い地位にいた。
営業の実績を買われ、真一郎が社長になる前から営業の責任者をしていたのだという。
しかし三ヶ月ほど前、突然津本の父はクビになってしまった。
実は、真一郎が社長を引き継いだ頃はバブルが弾ける直前で、引き継いだ当初は経営も
順調だったのだが、バブル崩壊後はあいつぐ取引先の倒産、銀行の貸ししぶりなどの影響
で「松田建設器械」もじわじわと経営が苦しくなっていったのである。
そして、今年になって、ついにこのままだと経営が立ち行かなくなるところまできてし
まい、真一郎は会社の幹部達と話し合った結果リストラを行うことを決定したのだ。
誰をやめさせるか、真一郎も幹部達もそうとう悩んだようだが、結局、会社を若返らせ
る目的もあって、定年間近の者と、それに近い者が対象になり、八人の中堅社員の名があ
がった。全員、真一郎の父の代からの社員だった。そのなかに津本の父の名もあった。
彼らは、会社の現状をよく理解しており、幹部達の説得に応じてもめることもなく会社
をやめていったという。
もっとも、真一郎は「会社のためだ・・・すまない、許してくれ・・・」とその八人に
何度も頭を下げたそうだが・・・
武久は、久と、高校二年生になる妹、それから妻の四人家族だった。
この四人を養うため、武久は無理にでも元気を出し、毎日再就職先をさがし歩いたが、
どこも経営は苦しいらしく、五四才の中年を雇ってくれるような会社は皆無といってよか
った。
やがて疲れ果て、再就職の希望もなくした武久は、職さがしにも行かず、毎日朝から酒
を飲むようになってしまった。そうなると後はお決まりのコースである。
すぐに酒なしではいられなくなってしまった武久は、性格も変わり、怒りっぽくなり、
八つ当たりするように妻に暴力を振るうようになってしまった。
むずかしい年頃の妹はその影響であっという間にグレてしまった。そして何よりも、い
まここにいる津本久を驚愕させたのは、その母親の美智子が、父に代わってなんとか自分
が家族を支えようと、風俗店で働きだしたことだ。
「俺は、家族とは別のアパートに住んでいたんだが、気になって何日か実家にもどってい
た。そうしたら、おかしいじゃねえか・・・失業保険でもらえる金なんかたかがしれてい
る。親父はみんな飲んじまう。それなのにお袋はちゃんと金をもってやがるんだ。通帳を
見たら残金もないのによ・・・それで親父に殴られ、急にぐれて茶髪になった妹に悪態を
つかれながら、酒を買ったり、けっこう贅沢な飯をくわせてやっているんだ・・・」
そこまで言ったとき、津本久は無念そうに顔をゆがめた。
「俺はお袋の後をつけた。そうしたら、お袋は昼間からやっているピンクサロンに、裏口
から入っていくじゃねえか。俺は驚いたが客としてなかに入った。そのときの俺の気持ち
がおまえらにわかるか? なかは暗くて、客もかなりいたが、俺にはすぐにわかった。む
こうの席で、四十を過ぎたお袋が、たるんだおっぱいをモロ出しにしながら、どこかの親
父のものをしゃぶっていたんだよ!」
ここまで話したとき、津本の唇がブルブルと震えていた。
秀明にとっても、この話しはショックだった。
ふと、もし自分の母がそんなことになったら・・・と想像してしまった秀明の胸に、言
いようもない感情が込み上げてきた。それは、母がどこか遠くに連れていかれてしまうよ
うな、何とも狂おしいくらいに切ない感情だった。
志保も、かなり衝撃を受けたらしく、こわばった顔で、瞬きもせずに津本を見つめてい
る。
「おれの家族はもうめちゃくちゃさ。それもおまえらの親父が、まじめに会社のために働
きつづけた俺の親父を、ぼろ雑巾をすてるようにクビを切ったからさ。俺はそれが許せな
い。特にお袋を風俗にまで落としたことは絶対にゆるせない・・・しかし、もっと許せな
いのは、そんな目に合いながら、親父が少しも会社を恨んでいないことだよ。ここまで言
えばもうわかるだろう。俺は親父の代わりに復讐してやろうと思ってここに来たのさ」
津本は言葉をくぎり、志保を指さして、
「あんたに、俺のお袋と同じ苦しみを味わったもらおうと思ってな」
どこか、裁判官が刑を宣言するような顔で言った。
「・・・・」
志保は何か言おうと口を開きかけたが、そのまま凍りついたように目を見開くばかりだ
った。
それは秀明も同じだった。津本がどれほど家族を愛していたか、そして、崩壊していく
家庭を目の当たりにして、どれほどの心の痛みと怒りを覚えたか、それは秀明にもわかる
ような気がする。
もし仮に志保がそんなことになって、その場面を見てしまったら、秀明はその場で心臓
が止まってしまうかもしれないと思った。
だが、だからと言って復讐しようなんて恐ろしいことを普通の人間が考えるだろうか。
ましてその方法が強姦だなんて・・・
少なくとも、秀明には考えもつかないことである。
津本は少し自慢げな声で続けた。
「俺はな、今はまともだが、中学から高校のときは何度も警察に世話になるほどグレてい
たのさ。バイクを乗り回して喧嘩三昧。恐喝、強姦なんかお手の物だったぜ。あのまま行
けば、まずどこかの組に入っていたろうな。その俺がまじめになってちゃんと大学に行け
るようになったのは、お袋のおかげなんだよ。親父がなんと言おうと、お袋だけは俺をか
ばってくれていたからなんだ」
いったん言葉をくぎった津本は、こみ上げてきた怒りを抑えるようにスーッ、と息を飲
み、両目を光らせて一気に言った。
「あのお袋を、ピンサロで働かなきゃならなくさせたお前らのオヤジを、俺は絶対に許せ
ない! だから俺は復讐する。ぐれていた頃の、俺流のやり方でな!」
それから津本は、秀明を正面からにらみすえ、
「さっきはカッとなったが・・・ちょうどよかったのかもしれんな・・・おまえにも、俺
と同じ気持ちを味わってもらえるからな・・・」
そう言って、何とも意味深そうな、不気味な笑い顔を作るのだった。
「・・・」
秀明は言葉もでない。どう考えても秀明には逆恨みとしか思えなかった。津本の父、武
久が解雇されたのは会社の方針であり、家庭がめちゃくちゃになったのも、武久がもっと
しっかりしていれば防げたかも知れないことなのだ。
父ひとりのせいであるわけはない。それなのに津本は、悪いのはすべて父だと思い込ん
で復讐をするという。しかも直接父にではなく、妻である志保を犯すというのだ。これが
逆恨みでなくて、なんであろうか。
津本が、母親の哀れな姿を見て、ショックのあまり冷静なものの見方ができなくなって
いるのか、あるいはもともと自分勝手にものを考えるタイプなのか、秀明にはわからなか
ったが、ただ、ひとつだけ言えることがあった。
(この男に理屈は通用しそうにない・・・)
そのことである。志保も秀明と同じことを思ったらしく、さっきは上気していた顔をい
までは真っ青にし、おびえた目で呆然と津本を見つめているばかりだ。驚きのあまり、声
も漏らせなくなっているのだろう。
「さあて、それじゃあ、いよいよ始めようじゃねえか・・・」
津本のその言葉に、志保も秀明も体を震わせるばかりだった・・・
「まだ、おまえの名前を聞いてなかったな」
津本は、志保の体をなめまわすように見つめながら聞いた。
「し、志保・・・です・・・」
美しい顔を蒼白にして震えていた志保が、弱々しい声で答えると、
「よし志保、着ているものを全部脱いで、すっぱだかになるんだ」
「・・・い、いやです」
志保は引きつった声で答えた。
志保だって、秀明と同様に津本が怖いはずだ。だが、それでも志保ははっきりと拒絶の
意思を見せた。たとえ脅かされても、息子の前で裸になるのは志保にとってあまりにも辛
く、恥ずかしいことであるに違いない。
「脱げってんだよ」
「い、いやです・・・・」
そのやりとりを見守りながら、秀明の全身もブルブルと震えていた。心臓は口から飛び
出してしまいそうなほど激しく脈打っている。
さっきから「やめろ!」と叫びたいのに、怖くて声を出せないのだ。そんな自分が情け
なく、くやしくて堪らなかった。
だが、どうしても勇気が出てこない。
と、津本がソファから立ち上がり、秀明に近づいてきた。
「志保、俺を甘く見ないほうがいいぜ。俺はお袋の仕返しをするためならなんだってやる
し、こういうことには慣れているんだぜ」
そう言ったあと、津本は腰をかがめ、秀明の頬をいきなり拳骨で殴りつけた。
ガシッ、という鈍い音とともに自分の顔がゆがみ上がり、そのまま、みるみる泣きそう
になるのが秀明は自分でもわかった。
「なっ、なにをするの、やめてえ!」
志保が、まるで自分が殴られたかのような悲痛な叫び声を噴き上げた。だが津本は、
「やめてほしかったら脱ぐんだな。見なよ、秀明が助けてくれって顔をしているぜ」
と、さらに二発、続けざまに秀明の顔を殴りつけた。秀明は、あまりの痛さと恐ろしさ
に呻き上げるしかなかった。
「やめて! お願いだからもうやめてえ!」
とても見ていられなくなったのだろう。志保は声を震わせて叫んだ。それを受けて津本
は殴る手を止め、志保にニヤリと笑って見せた。
「おとなしく裸になるか?」
「そ、それは・・・」
志保は泣きそうな顔になっていた。追いつめられ、途方にくれた目が悲しげに見開かれ
ている。大事な息子をこれ以上絶対に殴らせたくないが、しかし、その息子の前で裸にな
るのは、母親としてどうしても決心がつかないのだろう。
「なんだ、はっきりしろよ」
と、津本はまた、大きく拳をふり上げた。
秀明はひー、と声をあげて顔をふせた自分が悲しかった。本当は「お母さん、言うこと
をきいちゃだめだ!」と志保に叫んでやりたかった。母が辱められるのをなんとしても阻
止したかった。だが、どうしても声がでないのだ。
と、そのときだ。志保がソファから立ち上がり、
「やめて、もう殴らないで! 言うことを聞きます、裸になりますから!」
と絶叫に近い声で叫んだのだ。秀明はギョッとした顔で志保を見上げた。津本も秀明を
殴るのをやめて、志保を見つめている。
「裸になります。だから、お願いだから秀明を殴らないで・・・」
志保はキッとした顔で、もう一度、自分に言い聞かせるようにゆっくりと言った。
さっきまで怯えていたのが嘘のように、志保はその顔に強い決意の色を宿らせている。
母がこんな顔をするのは初めてだった。本当に母は、息子を助けるために自分を犠牲に
するつもりなのだ。
(ああ・・・お母さん・・・)
志保の悲通な表情を見つめながら、秀明は涙がこぼれそうになってきた。
本当は、自分が何とかしなければならないのに、勇気がなく、何もできない意気地なし
の自分を、逆に母が守ろうとしてくれている・・・
そのことが強烈に秀明の胸を締めつけたのだ。秀明は、母に対して申し訳ない気持ちで
いっぱいになった。だが津本は、
「やっと決心がついたかい。ふん、もっと早く決心してれば、秀明も痛い目にあわずにす
んだのに・・・なあ秀明」
と、志保を小馬鹿にしたようなことを言い、秀明にニタニタと笑って見せるのだ。
(ぼくを助けようと、こんな悲痛な顔をしているお母さんを侮辱するなんて!)
秀明はそれがくやしくて、津本を殺してやりたいとさえ思った。しかし志保は、そんな
ことはどうでもいいらしく、
「は、はい・・・言われたとおりにします。だからお願いです、もう秀明を殴らないって
約束してください・・・・」
と、声を絞りながら、苦渋に満ちた目を津本に向けた。その全身に、言いようのない悲
壮感がただよっていた。
(お、お母さんがこんなに強かったなんて・・・こんなぼくを助けるために、お母さんは
本気で身を投げ出すつもりなんだ・・・)
そう思った秀明の胸に、熱いものがこみあげてきた。
「ふっ、おまえさえ素直にしてれば、もう殴ることもないだろうさ」
それを聞いた志保は、ほーっ、と安堵の溜め息をもらした。そして、目に挑むような強
い光を宿らせながら、津本のつぎの言葉を待った。
「よし、とにかく服を脱げ。息子の前ですっぱだかになるんだ」
津本はソファに戻り、尻を下ろしながら命令した。志保が裸になっていくところを、じ
っくりと楽しむつもりなのだろう。結局なにもできなかった秀明は、情けなさでいっぱい
になりながら、呆然と志保を見上げるしかなかった。
「秀明、ごめんね・・・でも仕方がないの。お母さんは平気だから、心配しないでね」
志保は震える声でそう言ってから、秀明をジッと見つめた。
その顔が、まるで聖母のような母性愛に満ちあふれているのを見て、秀明の胸はまたも
キューと締めつけられた。
同時にまた、秀明は母の深い愛情をかみしめてもいた。
こんな意気地なしの自分を助けるために、みずから身を犠牲にしようとしている母の偉
大な愛情が、秀明を泣きそうにさせている。
志保は秀明から目をそらすと、二人りがけソファと、テーブルの間に立ったまま、その
場でブラウスの前のボタンをはずしはじめた。
テーブルをはさんだ反対側のソファには、タバコを口にくわえた津本が好色そうな顔に
なって見つめており、志保の足元からは右手をソファの脚にくくられ、絨毯の上に下半身
を投げ出した秀明が、不安げな顔で見上げている。
そんななかで志保は、自ら裸になろうとしているのだ。
秀明は、こんなに清楚な母が、これから裸になろうとしている・・・というこの現実が
どうしても信じられない気がした。
これは夢ではないのか、とさえ思てしまうのだ。
だが、そのときだ。そんな締めつけられそうな秀明の胸に、
(でも、もしかしたら、本当の女の裸が見られるかもしれないんだ・・・)
という、期待にも似た思いが突如としてこみ上げてきたのだ。
母であろうと、女には変わりがない。いつも、狂おしいまでに見たい見たいと思ってい
た、写真ではない現実の女の裸が、もしかしたら見られるかもしれない・・・
強制的に脱がされている母がかわいそうでたまらないくせに、秀明はそんな期待感を抱
いてしまったのだ。
実のところ、毎日まじめに受験勉強に打ち込んでいるものの、頭のなかでは、
(ああ、女の人のあそこって、どうなっているんだろう・・・一度でいいから本物を見て
みたい・・・一度でいいからセックスしてみたい・・・)
と、こみ上げる性欲に毎日悶々としている秀明なのである。
ほんの少しの刺激でもすぐに勃起してしまい、一日に数回も自慰をしてしまうこともあ
る。それも十五才という、人生のなかでも最も性欲の強い時期にいるのだから当然のこと
だろう。が、だからといって、母親の裸に期待感をもっていいわけはない。
「さあて・・・と」
男は、秀明に向かって言った。
「おまえ、名前は?」
「ひ、秀明・・・です」
「そうか、秀明、おまえもずいぶんタイミングの悪いときに帰ってきたもんだな。だが仕
方がない。こうなったのも運命だと思って、お母さんが俺に犯されるところを見ているが
いい」
「!」
男がこう言うだろうことは、秀明もなんとなく予想していた。手錠まで用意していたこ
とから考えても、男が計画的に、確信犯的に家にやってきたのはまちがいないのだ。
だがそれでも、はっきりと男の口から聞かされるのは、秀明にとって戦慄以外のなにも
のでもなかった。志保も大きく体を震わせ、
「そ、そんな!」
と信じられないような顔で叫んだ。だが男は、そんな志保をジーッと見つめ、
「そんなひどいこと・・・てか? その言葉は、おまえの亭主に言ってやるんだな」
と、奇妙な薄笑いを見せた。
「ど、どういうことなんです!」
志保がさらに叫んだ。男の思わぬ言葉に驚き、怒りも覚えている声だった。
「ど、どうして夫がひどいのですか・・・」
母がむきになるのも当然だった。秀明は、母が父、真一郎のことも深く愛していること
を知っている。そして母は、父が人に憎まれるようなことをする男ではないと信じている
はずだ。もちろん、秀明も信じている。
だから真一郎のことを悪く言われたら、否定を込めて聞き返すのは当然だった。
だが、男はますますニタニタしながら、志保を馬鹿にするかのように見つめかえした。
「まあ、おまえ達にとってはいい親父なんだろうな。よかったな、幸せなことで」
と毒のある言い方をしたあと、男は一瞬だけ顔をゆがめた。が、すぐにもとの薄笑いに
もどって続けた。
「・・・だがな、あいつのせいで俺の家族は崩壊しちまったんだよ」
どうだ、驚いたか、と言いたげな顔だった。
志保と秀明が、ますます信じられないという表情を浮かべるのを見て、
「いいだろう、こうなったらあわてても仕方がない。あとで言ってやろうと思っていたが
今教えてやるぜ。それに、わけもわからずやられるのも、納得がいかねえだろうからな」
そう言って、男はまた薄ら笑い、テーブルをはさんで志保と向き合うように、倒れてい
ないほうの一人がけのソファに腰を下ろした。
秀明も志保も、開き直ったかのように落ちつきを見せはじめた男を、息を飲んで見つめ
ている。
時間はたっぷりある・・・そう言っているような男の余裕が不安っだった。
男は話しはじめた。
要点はこういうことだ。男の名は津本久といい、大学の四年生である。津本の父武久は
五四才で、秀明の父が経営する会社の社員だった。
社員といっても、真一郎の父親の代からの古株で、会社のなかでも高い地位にいた。
営業の実績を買われ、真一郎が社長になる前から営業の責任者をしていたのだという。
しかし三ヶ月ほど前、突然津本の父はクビになってしまった。
実は、真一郎が社長を引き継いだ頃はバブルが弾ける直前で、引き継いだ当初は経営も
順調だったのだが、バブル崩壊後はあいつぐ取引先の倒産、銀行の貸ししぶりなどの影響
で「松田建設器械」もじわじわと経営が苦しくなっていったのである。
そして、今年になって、ついにこのままだと経営が立ち行かなくなるところまできてし
まい、真一郎は会社の幹部達と話し合った結果リストラを行うことを決定したのだ。
誰をやめさせるか、真一郎も幹部達もそうとう悩んだようだが、結局、会社を若返らせ
る目的もあって、定年間近の者と、それに近い者が対象になり、八人の中堅社員の名があ
がった。全員、真一郎の父の代からの社員だった。そのなかに津本の父の名もあった。
彼らは、会社の現状をよく理解しており、幹部達の説得に応じてもめることもなく会社
をやめていったという。
もっとも、真一郎は「会社のためだ・・・すまない、許してくれ・・・」とその八人に
何度も頭を下げたそうだが・・・
武久は、久と、高校二年生になる妹、それから妻の四人家族だった。
この四人を養うため、武久は無理にでも元気を出し、毎日再就職先をさがし歩いたが、
どこも経営は苦しいらしく、五四才の中年を雇ってくれるような会社は皆無といってよか
った。
やがて疲れ果て、再就職の希望もなくした武久は、職さがしにも行かず、毎日朝から酒
を飲むようになってしまった。そうなると後はお決まりのコースである。
すぐに酒なしではいられなくなってしまった武久は、性格も変わり、怒りっぽくなり、
八つ当たりするように妻に暴力を振るうようになってしまった。
むずかしい年頃の妹はその影響であっという間にグレてしまった。そして何よりも、い
まここにいる津本久を驚愕させたのは、その母親の美智子が、父に代わってなんとか自分
が家族を支えようと、風俗店で働きだしたことだ。
「俺は、家族とは別のアパートに住んでいたんだが、気になって何日か実家にもどってい
た。そうしたら、おかしいじゃねえか・・・失業保険でもらえる金なんかたかがしれてい
る。親父はみんな飲んじまう。それなのにお袋はちゃんと金をもってやがるんだ。通帳を
見たら残金もないのによ・・・それで親父に殴られ、急にぐれて茶髪になった妹に悪態を
つかれながら、酒を買ったり、けっこう贅沢な飯をくわせてやっているんだ・・・」
そこまで言ったとき、津本久は無念そうに顔をゆがめた。
「俺はお袋の後をつけた。そうしたら、お袋は昼間からやっているピンクサロンに、裏口
から入っていくじゃねえか。俺は驚いたが客としてなかに入った。そのときの俺の気持ち
がおまえらにわかるか? なかは暗くて、客もかなりいたが、俺にはすぐにわかった。む
こうの席で、四十を過ぎたお袋が、たるんだおっぱいをモロ出しにしながら、どこかの親
父のものをしゃぶっていたんだよ!」
ここまで話したとき、津本の唇がブルブルと震えていた。
秀明にとっても、この話しはショックだった。
ふと、もし自分の母がそんなことになったら・・・と想像してしまった秀明の胸に、言
いようもない感情が込み上げてきた。それは、母がどこか遠くに連れていかれてしまうよ
うな、何とも狂おしいくらいに切ない感情だった。
志保も、かなり衝撃を受けたらしく、こわばった顔で、瞬きもせずに津本を見つめてい
る。
「おれの家族はもうめちゃくちゃさ。それもおまえらの親父が、まじめに会社のために働
きつづけた俺の親父を、ぼろ雑巾をすてるようにクビを切ったからさ。俺はそれが許せな
い。特にお袋を風俗にまで落としたことは絶対にゆるせない・・・しかし、もっと許せな
いのは、そんな目に合いながら、親父が少しも会社を恨んでいないことだよ。ここまで言
えばもうわかるだろう。俺は親父の代わりに復讐してやろうと思ってここに来たのさ」
津本は言葉をくぎり、志保を指さして、
「あんたに、俺のお袋と同じ苦しみを味わったもらおうと思ってな」
どこか、裁判官が刑を宣言するような顔で言った。
「・・・・」
志保は何か言おうと口を開きかけたが、そのまま凍りついたように目を見開くばかりだ
った。
それは秀明も同じだった。津本がどれほど家族を愛していたか、そして、崩壊していく
家庭を目の当たりにして、どれほどの心の痛みと怒りを覚えたか、それは秀明にもわかる
ような気がする。
もし仮に志保がそんなことになって、その場面を見てしまったら、秀明はその場で心臓
が止まってしまうかもしれないと思った。
だが、だからと言って復讐しようなんて恐ろしいことを普通の人間が考えるだろうか。
ましてその方法が強姦だなんて・・・
少なくとも、秀明には考えもつかないことである。
津本は少し自慢げな声で続けた。
「俺はな、今はまともだが、中学から高校のときは何度も警察に世話になるほどグレてい
たのさ。バイクを乗り回して喧嘩三昧。恐喝、強姦なんかお手の物だったぜ。あのまま行
けば、まずどこかの組に入っていたろうな。その俺がまじめになってちゃんと大学に行け
るようになったのは、お袋のおかげなんだよ。親父がなんと言おうと、お袋だけは俺をか
ばってくれていたからなんだ」
いったん言葉をくぎった津本は、こみ上げてきた怒りを抑えるようにスーッ、と息を飲
み、両目を光らせて一気に言った。
「あのお袋を、ピンサロで働かなきゃならなくさせたお前らのオヤジを、俺は絶対に許せ
ない! だから俺は復讐する。ぐれていた頃の、俺流のやり方でな!」
それから津本は、秀明を正面からにらみすえ、
「さっきはカッとなったが・・・ちょうどよかったのかもしれんな・・・おまえにも、俺
と同じ気持ちを味わってもらえるからな・・・」
そう言って、何とも意味深そうな、不気味な笑い顔を作るのだった。
「・・・」
秀明は言葉もでない。どう考えても秀明には逆恨みとしか思えなかった。津本の父、武
久が解雇されたのは会社の方針であり、家庭がめちゃくちゃになったのも、武久がもっと
しっかりしていれば防げたかも知れないことなのだ。
父ひとりのせいであるわけはない。それなのに津本は、悪いのはすべて父だと思い込ん
で復讐をするという。しかも直接父にではなく、妻である志保を犯すというのだ。これが
逆恨みでなくて、なんであろうか。
津本が、母親の哀れな姿を見て、ショックのあまり冷静なものの見方ができなくなって
いるのか、あるいはもともと自分勝手にものを考えるタイプなのか、秀明にはわからなか
ったが、ただ、ひとつだけ言えることがあった。
(この男に理屈は通用しそうにない・・・)
そのことである。志保も秀明と同じことを思ったらしく、さっきは上気していた顔をい
までは真っ青にし、おびえた目で呆然と津本を見つめているばかりだ。驚きのあまり、声
も漏らせなくなっているのだろう。
「さあて、それじゃあ、いよいよ始めようじゃねえか・・・」
津本のその言葉に、志保も秀明も体を震わせるばかりだった・・・
「まだ、おまえの名前を聞いてなかったな」
津本は、志保の体をなめまわすように見つめながら聞いた。
「し、志保・・・です・・・」
美しい顔を蒼白にして震えていた志保が、弱々しい声で答えると、
「よし志保、着ているものを全部脱いで、すっぱだかになるんだ」
「・・・い、いやです」
志保は引きつった声で答えた。
志保だって、秀明と同様に津本が怖いはずだ。だが、それでも志保ははっきりと拒絶の
意思を見せた。たとえ脅かされても、息子の前で裸になるのは志保にとってあまりにも辛
く、恥ずかしいことであるに違いない。
「脱げってんだよ」
「い、いやです・・・・」
そのやりとりを見守りながら、秀明の全身もブルブルと震えていた。心臓は口から飛び
出してしまいそうなほど激しく脈打っている。
さっきから「やめろ!」と叫びたいのに、怖くて声を出せないのだ。そんな自分が情け
なく、くやしくて堪らなかった。
だが、どうしても勇気が出てこない。
と、津本がソファから立ち上がり、秀明に近づいてきた。
「志保、俺を甘く見ないほうがいいぜ。俺はお袋の仕返しをするためならなんだってやる
し、こういうことには慣れているんだぜ」
そう言ったあと、津本は腰をかがめ、秀明の頬をいきなり拳骨で殴りつけた。
ガシッ、という鈍い音とともに自分の顔がゆがみ上がり、そのまま、みるみる泣きそう
になるのが秀明は自分でもわかった。
「なっ、なにをするの、やめてえ!」
志保が、まるで自分が殴られたかのような悲痛な叫び声を噴き上げた。だが津本は、
「やめてほしかったら脱ぐんだな。見なよ、秀明が助けてくれって顔をしているぜ」
と、さらに二発、続けざまに秀明の顔を殴りつけた。秀明は、あまりの痛さと恐ろしさ
に呻き上げるしかなかった。
「やめて! お願いだからもうやめてえ!」
とても見ていられなくなったのだろう。志保は声を震わせて叫んだ。それを受けて津本
は殴る手を止め、志保にニヤリと笑って見せた。
「おとなしく裸になるか?」
「そ、それは・・・」
志保は泣きそうな顔になっていた。追いつめられ、途方にくれた目が悲しげに見開かれ
ている。大事な息子をこれ以上絶対に殴らせたくないが、しかし、その息子の前で裸にな
るのは、母親としてどうしても決心がつかないのだろう。
「なんだ、はっきりしろよ」
と、津本はまた、大きく拳をふり上げた。
秀明はひー、と声をあげて顔をふせた自分が悲しかった。本当は「お母さん、言うこと
をきいちゃだめだ!」と志保に叫んでやりたかった。母が辱められるのをなんとしても阻
止したかった。だが、どうしても声がでないのだ。
と、そのときだ。志保がソファから立ち上がり、
「やめて、もう殴らないで! 言うことを聞きます、裸になりますから!」
と絶叫に近い声で叫んだのだ。秀明はギョッとした顔で志保を見上げた。津本も秀明を
殴るのをやめて、志保を見つめている。
「裸になります。だから、お願いだから秀明を殴らないで・・・」
志保はキッとした顔で、もう一度、自分に言い聞かせるようにゆっくりと言った。
さっきまで怯えていたのが嘘のように、志保はその顔に強い決意の色を宿らせている。
母がこんな顔をするのは初めてだった。本当に母は、息子を助けるために自分を犠牲に
するつもりなのだ。
(ああ・・・お母さん・・・)
志保の悲通な表情を見つめながら、秀明は涙がこぼれそうになってきた。
本当は、自分が何とかしなければならないのに、勇気がなく、何もできない意気地なし
の自分を、逆に母が守ろうとしてくれている・・・
そのことが強烈に秀明の胸を締めつけたのだ。秀明は、母に対して申し訳ない気持ちで
いっぱいになった。だが津本は、
「やっと決心がついたかい。ふん、もっと早く決心してれば、秀明も痛い目にあわずにす
んだのに・・・なあ秀明」
と、志保を小馬鹿にしたようなことを言い、秀明にニタニタと笑って見せるのだ。
(ぼくを助けようと、こんな悲痛な顔をしているお母さんを侮辱するなんて!)
秀明はそれがくやしくて、津本を殺してやりたいとさえ思った。しかし志保は、そんな
ことはどうでもいいらしく、
「は、はい・・・言われたとおりにします。だからお願いです、もう秀明を殴らないって
約束してください・・・・」
と、声を絞りながら、苦渋に満ちた目を津本に向けた。その全身に、言いようのない悲
壮感がただよっていた。
(お、お母さんがこんなに強かったなんて・・・こんなぼくを助けるために、お母さんは
本気で身を投げ出すつもりなんだ・・・)
そう思った秀明の胸に、熱いものがこみあげてきた。
「ふっ、おまえさえ素直にしてれば、もう殴ることもないだろうさ」
それを聞いた志保は、ほーっ、と安堵の溜め息をもらした。そして、目に挑むような強
い光を宿らせながら、津本のつぎの言葉を待った。
「よし、とにかく服を脱げ。息子の前ですっぱだかになるんだ」
津本はソファに戻り、尻を下ろしながら命令した。志保が裸になっていくところを、じ
っくりと楽しむつもりなのだろう。結局なにもできなかった秀明は、情けなさでいっぱい
になりながら、呆然と志保を見上げるしかなかった。
「秀明、ごめんね・・・でも仕方がないの。お母さんは平気だから、心配しないでね」
志保は震える声でそう言ってから、秀明をジッと見つめた。
その顔が、まるで聖母のような母性愛に満ちあふれているのを見て、秀明の胸はまたも
キューと締めつけられた。
同時にまた、秀明は母の深い愛情をかみしめてもいた。
こんな意気地なしの自分を助けるために、みずから身を犠牲にしようとしている母の偉
大な愛情が、秀明を泣きそうにさせている。
志保は秀明から目をそらすと、二人りがけソファと、テーブルの間に立ったまま、その
場でブラウスの前のボタンをはずしはじめた。
テーブルをはさんだ反対側のソファには、タバコを口にくわえた津本が好色そうな顔に
なって見つめており、志保の足元からは右手をソファの脚にくくられ、絨毯の上に下半身
を投げ出した秀明が、不安げな顔で見上げている。
そんななかで志保は、自ら裸になろうとしているのだ。
秀明は、こんなに清楚な母が、これから裸になろうとしている・・・というこの現実が
どうしても信じられない気がした。
これは夢ではないのか、とさえ思てしまうのだ。
だが、そのときだ。そんな締めつけられそうな秀明の胸に、
(でも、もしかしたら、本当の女の裸が見られるかもしれないんだ・・・)
という、期待にも似た思いが突如としてこみ上げてきたのだ。
母であろうと、女には変わりがない。いつも、狂おしいまでに見たい見たいと思ってい
た、写真ではない現実の女の裸が、もしかしたら見られるかもしれない・・・
強制的に脱がされている母がかわいそうでたまらないくせに、秀明はそんな期待感を抱
いてしまったのだ。
実のところ、毎日まじめに受験勉強に打ち込んでいるものの、頭のなかでは、
(ああ、女の人のあそこって、どうなっているんだろう・・・一度でいいから本物を見て
みたい・・・一度でいいからセックスしてみたい・・・)
と、こみ上げる性欲に毎日悶々としている秀明なのである。
ほんの少しの刺激でもすぐに勃起してしまい、一日に数回も自慰をしてしまうこともあ
る。それも十五才という、人生のなかでも最も性欲の強い時期にいるのだから当然のこと
だろう。が、だからといって、母親の裸に期待感をもっていいわけはない。
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