小説(転載) 針のむしろに咲く花1
近親相姦小説掲載サイト「母親の香り 息子の匂い」は消滅。
冬の夜、僕と母親はよく2人きりでコタツに入る。 僕はテレビで歴史番組を見るのが好きだ。 母はお酒を飲みながら針仕事をしていることが多い。 コタツの中で足が触れると、母は「冷たい足ね」と言って足を絡める。 そして僕の足は次第に母の体温と等しくなり、1つの布団の下で触れあい続ける。 母の体温を感じている僕を気にする様子もなく、母は針仕事を続けている。
テレビを見るとき僕はいつも母の右側に座る。 テレビは母の後ろにあるので、母は常にテレビを見る僕の視界に入る。 母は僕に目をくれることもなく針仕事を続けている。 ときおり僕に話しかけるわけでもなく、 「硬いわねぇ」、 「どこがいいのかしら」、 「もう、邪魔ねぇ」 などと、ひとりごとを言っているが、テレビの音でかき消されてしまう。 このとき父は自室で読書をしていることが多いようである。 父と母が必要以上の会話をしているところを見たことがない。 「おい」と言われれば 「はいはい」と答える主従関係のようである。
母には糸を通した針を舐める癖がある。 舌で針に軽く潤いを与え滑りをよくしているようだった。 右端の口元で針を咥える母の口元の動きから、 舌が針に絡む様子を容易に想像することができた。 母の舌は慣れた扱いで針の先に絡んでいた。 そうしてから生地に針を通すと、一定のリズムで手が小刻みに揺れて時を刻んでゆく。 足から伝わるその母の振動が心地よい。 母が好きなことに没頭して楽しんでいる様子が伝わってくる気がする。 母は大学も出ているし歴史も好きだった。 それに小説なども多く読んでいるように見えた。 しかし、テレビ番組の過度なパフォーマンスが嫌いなようで、 僕が歴史番組を見ていてもその内容に反応することはなかった。 ときおり漏らす声が響く静寂を消すための道具としか考えていないのだろう。
一連の針仕事の作業の中で、母は糸を通した生地をしごく作業を頻繁にする。 ある程度の長さの糸を通すと、しごいて糸を生地に馴染ませる。 先を舐め、手を小刻みに揺らして、しごく。 しごくときだけ母は視線を手元から外して微笑むような表情をする。 手元に集中していた妖艶な目つきが緩む瞬間なのでそう感じるのかもしれない。 それでも僕は、母と目があっても母から話しかけられなければ話をしないことにしている。 母の楽しみを奪ってしまう気がして気が引けてしまうからだ。 集中して針を進める作業に水を差すことはしたくないし、母との間を楽しみたかった。 お互いがお互いの間で自由に楽しむことができる時間である。 母には母の楽しみ方があり、僕には僕の楽しみ方があった。 ときおり目があうと母から、 「恥ずかしいから見ないでよ」、 「照れちゃうでしょ」、 などと緊張をほぐすような言葉があった。 近くにいるのに会話がない親子は妙に恥ずかしいものである。 そんな気まずさを解消する言葉だった。
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