小説(転載) 針のむしろに咲く花2
近親相姦小説掲載サイト「母親の香り 息子の匂い」は消滅。
母は一息つくときお酒を飲む。昼の母には似合わない癖である。 夜の母は昼の母とは違う顔をもっている。 母がお酒を飲むときには、タンブラーを愛用している。 僕が母の日にプレゼントした150ccほどの大きさのグラスだ。 母は5cmほどの太さのグラスを独特の手つきで持つ。 立て気味の親指とそろえた中指と薬指でつまむように持つ。 小指はピンと立てて、人差し指は軽くグラスの淵に添えるようにする。 そして親指の先に口を寄せると、すぼめた唇で音を立てて吸う。 唇は親指の先につくかつかないかの間隔である。 少し猫背になって口からグラスに近寄るしぐさが女を感じさせる。 ときおり人差し指の先でグラスの淵をなぞるようにするしぐさがさらになまめかしい。 お酒をおいしくするおまじないのような不思議な癖である。 人差し指でグラスの淵を短く2往復程度擦ってから、おいしそうにお酒をすする。 「これがおいしいのよねぇ」、 「やめられないのよねぇ」、 などと言い訳のように言いながらすすっている。 僕はこのときの母の無邪気さが好きだ。 お酒を飲んでいるときの母には女の子のような愛らしさがある。 いけないものに手を出してしまった罪悪感を恥じらうような、 夜の母に特有の未熟な色気を感じる。
母親はときおり落ち着かない表情で裁縫箱を体の脇に寄せる。 裁縫箱は母の右側、つまり僕の左側に置かれていて、母は右手で柄を力強く握りしめて引き寄せる。 裁縫箱を引き寄せるときの柄を握る力強さには迫力がある。 僕の手を引き寄せられているような感覚に襲われることもある。 太目の柄を強く握りしめる様子は、芯の強い性格を表していて、 どんなときでも仕切るのは母であるという意思表示のようにも見てとれる。 用意周到な母が裁縫箱を引き寄せるときは、想定外のことがあったサインである。 思うように針仕事が進まなかったので急遽違う道具を探しているのだろう。 興奮気味に僕に指示を出すこともあり、 「これをこの穴に入れて」、 「ここ舐めて濡らしておいて」 のように自分の仕事と同時進行で僕に使命を与える。 母に納得のいく仕事をしてもらえるように努力をするのだが、 針仕事の経験が浅いのでどこまで満足してもらえたのかは疑問である。 あとで「良かった?」と聞いても、 優しい母は「良かったわよ」としか答えてくれない。 永遠の謎である。
母は針仕事の終わりが近づくと体全体でリズムに乗って揺れてくる。 決して大きく揺れるわけではないが、体全体で揺れを堪能しているように見える。 リズミカルな腰の動きは、すり鉢の中のゴマをすりこぎですっているかのようでもある。 肩でリズムをとりながら、腰をくねらせて左回りに回転させる。 回転の速度は一定ではない。速いときもあれば、遅いときもある。 針仕事のリズムにあわせて母の感性でくねくね回る。 その回転は僕にも伝わる。 心地よい興奮が母から伝わってくる。 多少床がギシギシきしむがテレビの音で気にならない。 こんなところでもテレビの音が役に立っている。
母は最後の仕上げにゴム通しを僕に託した。 繕っていたのは母のパジャマのズボンだったようだ。 「ゴムをつけて入れてちょうだい」 と母にせかされて僕は慣れない手つきで急いでゴムを通すと、すぐに出てきた。 母は「そんなに出さなくてもいいのに」と言いながらも、 まんざらではない表情だった。 僕は母の役に立つことができてうれしかった。 母は慣れた手つきでゴムを処理すると、歯で糸を切り口できれいに後処理をしてしまった。 「さあ、遅いからもう寝ましょ」と言うと、母はテレビを消した。 僕もそれにあわせて寝る準備を始める。 母はタンブラーを洗うと父に声をかけて寝室に布団を敷く。 母が寝ると父が母に声をかけることはない。
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