小説(転載) 妻は無罪1
近親相姦小説掲載サイト「母親の香り 息子の匂い」は消滅。
その日、私は会社帰りにとある興信所を訪ねていた。 妻の浮気調査を依頼するためである。 この興信所は会社の同僚から紹介してもらった興信所で、 浮気調査には定評があるそうだ。 同僚はこの興信所に依頼して、妻の浮気を立証し離婚した。 浮気の相手は妻の前のパート先の社員で、かなり長く続いていた関係だったようだ。 たとえ妻の浮気を疑っていても、実際に証拠が出てくると気持ちは複雑なようだ。 離婚の覚悟を決めることと、実際に離婚することはかなり違うということだった。 私はまだ離婚する覚悟さえ決まっていない。 とりあえず、妻が変貌した原因として、 もっとも不安な原因の可能性を少しでも早くつぶしておきたいという気持ちだった。 これでなにもなければ一安心である。 私は妻が浮気をしていないことを願っていたし、 離婚を望んでいるわけでもなかった。
「それではまず5日間、調査をしてみるということで、 始めさせていただきます。」
「よろしくお願いします。」
私は妻を裏切ったような気持ちにもなっていた。 しかし、妻の方が先に裏切っている可能性もあるのだ。 そう言い聞かせながら興信所をあとにした。 夜風がいつもよりも冷たく感じられた。
私と妻が出会ったのは大学の野球部である。 私が2年生になった年に、新1年生になったばかりの妻がマネージャーとして入部してきた。 後から聞いた話だと、最初は野球が大好きな友達に誘われてついて来ただけだったらしい。 確かに妻は野球のことなどなにも知らなかったし、興味もなかったようである。
「先輩!配球について教えてください。」
最初に仲良くなったのは友達の方だった。 当時、控えのキャッチャーだった私は、 練習が終わってからその娘に配球の考え方などを教えることになった。 もちろん部活の活動とはまったく関係のないプライベートな時間にである。 そこになぜかいつも妻が一緒にいた。 妻は友達から半歩下がった位置にいて、上目づかいでじっと私の顔を見つめていた。 妻は美人なので上目づかいでじっと見る目られるとドキッとする。 おそらく野球のことをなにも知らない妻が野球部に歓迎されたのは美人だったからであろう。 しかも背が低いので人形のような風貌である。 フリフリの服を着たらよく似合ったと思う。
「バッターの踏み込む足の場所とタイミングを見てると わかるようになるよ。」
「へぇ、そんなとこ見てるんだ・・・」
妻の友達は本当に野球が大好きだったし、私も野球が好きな女の子に慕われて悪い気はしなかった。 しかし、そんな会話をしながらも気になるのは妻の存在だった。 妻は私と友達とのやりとりをまったく理解できなかっただろう。 なにしろ野球部に入るまで一塁が右にあるのか左にあるのかすら知らなかった普通の女の子である。
「大丈夫?つまらなくない?」
私はときおり妻に声をかけた。 妻とのきっかけが欲しかったのか、単に妻を気遣っていただけだったのかは自分でもわからない。 キャッチャーというポジションは因果なポジションである。 常に視野を広く持っていなければならないし、 会話もしないでバッターの気持ちを読みとらなければならない。
「えっ?・・・あっ!・・・ごめんなさい・・・ 大丈夫です・・・」
妻は今でも最初に謝る。 すべての原因は自分にあると思い込んでいるのだろうか。 それとも妻なりの処世術なのだろうか。 いずれにしても最初に謝られると会話が続かない。
こんな妻との関係が進展したのもこの友達による仲介だった。 この友達がいなければ、私は妻と結婚することはおろか、出会うことすらなかったであろう。
「ほら、ちゃんと言いなよ・・・」
ある日、友達が妻の体を押しながらけしかけた。
「えっ・・・でも・・・」
妻は恥ずかしそうにためらっていた。
「今日言うって約束したじゃん。」
「そうだけど・・・やっぱり言えないよ・・・」
小さな声で攻防が繰り広げられている。 私はただ黙って待つことしかできなかった。 しばらくすると友達の方が我慢できなくなったのか、私に向かって真剣なまなざしで訴えかけてきた。
「先輩はキコのことどう思ってるんですか!」
まるで怒られているような気持になった。
「どうって・・・可愛いんじゃない?」
おそらく野球部の全員がそう答えるだろう。 こんなときは無難な答えしか返せない。 ちなみにキコとは妻のあだ名である。 名前の真紀子からきている。
「ほら、可愛いって言ってるよ。言っちゃいなよ。」
妻は服の裾をいじりながらもぞもぞしている。
「あの・・・つきあってください・・・」
蚊の鳴くような声だった。 今にも泣き出してしまいそうである。
「オレでいいのなら・・・」
私も焦らしに焦らされて覚悟はできていたのだが、 中途半端な答え方しかすることができなかった。 人生で初めてできた彼女である。 これまで野球しかしたことのない男が落ち着いて対応できるはずもなかった。 その夜、初めて2人だけでファミレスに行った。 妻の友達が気を利かせて2人きりにしてくれたのだが、 友達の仲介なしに会話をした経験はほとんどなかった。 そもそも妻がどうして私のことを好きになったのかわからない。 私も勢いに流されて了解してしまったものの、まだ妻とつきあうという実感がない。 どんな話をすればいいのか迷っていたら、妻の方が先に口を開いた。
「ずっと好きでした・・・」
意表を突かれた。
「あ、そう・・・オレも・・・かな?」
妻のことを好きだと思ったことはなかったが、「可愛い娘だな」と思っていたことは事実である。 そんな妻とつきあえることが不本意なわけがなかった。
「ホントですかぁ・・・」
文字通り満面の笑みだった。 このときの妻の笑顔は今でも鮮明に記憶に残っている。
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