小説(転載) 黒部峡谷 1/3
官能小説
一人旅にエロは欠かせない。いつだってどんなときだって出会いとなるのだ。
某家電メーカーで営業部長をしている自称アウトドア系アマチュア写真家の
私、中山和宏(46歳)は先日、愛車の4駆ワゴン車で気ままな2泊3日の一
人旅を楽しんできた。
32歳の時、5歳年下で営業部のOLだった妻、文香と結婚したが、3年間
子供がなかったので、妻は私の趣味に合わせてキャンプや渓流釣りを一緒に楽
しんでくれたが、待望の子供が授かると子供の世話にかかり切りになり、亭主
の私はこの10年ほどほったらかしの放し飼いにされている。
妻から小遣いは毎月それなりに貰い、下請け会社からのリベートを少々懐に
納め、酒もタバコもやるが、タバコは昨今世間様からいやがられるようになっ
たので、飲み会の時だけたまに吸う半休状態、酒はもっぱら会社や下請けの接
待で楽しむことにしているから派手には遊べないものの、年に4~5回は1~
2泊で好きな写真と渓流つりの一人旅が出来る。
私は一人旅に行くとき、旅費や小遣いをせびらないので妻は小言一つ言わず
に笑って送り出してくれる。
(亭主元気で留守が良いと言うのか?干渉されないのでそれは良いんだけれど)
男の一人旅=ロマンチック、かっこいいなどと思われていたのは昔の話で、
今では人生も終盤期の黄昏れ男が放浪するそんな感じでちょいと寂しい・・だ
が、たまには男の一人旅でしか巡りあえることのできない行き当たりばったり
の楽しみに遭遇することもある。
今回は2泊3日で新緑と北アルプスに残る残雪、合掌造りの集落をテーマに
上高地から~岐阜白川郷~富山相倉集落~宇奈月温泉を回る旅、時間があれば
渓流釣りも楽しもうと言う何ともケチで忙しい計画であった。
1日目、横浜の自宅を出たのは午前6時、国道16号はやや渋滞するも八王
子ICから中央道~松本IC~上高地(沢渡)午前11時、マイカー規制のた
め上高地入り口手前の沢渡に駐車して軽く昼食をとってからシャトルバスに乗
り換えて大正池で降車した。
焼岳をバックに大正池や足下に咲き乱れる草花を撮りながら河童橋まで歩く。
河童橋・梓川・残雪の西穂高、奥穂高、明神岳、誰もがカメラを向けシャッ
ターを切りたくなる絶景、ときおりほほにあたる澄んだ冷たい空気を思い切り
都会の空気で汚れた肺を清めるように送り込む。
時計を見ると午後3時、これから明神池まで往復すると高山には着くのが遅
くなるのでバスターミナルからシャトルバスで沢渡に戻り、安房トンネルを抜
け高山の宿に着いたのは午後5時近くであった。
高山では朝市会場まで徒歩3分の宮川沿いの宿に予約しておいた。
夕暮れ時の古き町並みを撮り、翌朝7時から始まった宮川朝市の風景を写真
に納め、やや遅めの朝食後高山を後にして白川郷~越中五箇山相倉集落に向か
った。
どちらも合掌造りの世界遺産ではあるが、どちらかと言えば周囲が田んぼの
相倉集落の方がひなびていて私的には好きである。
白川郷、相倉集落で期待どおりほぼ満足のいく風景をカメラに納めると国道
156号を2泊目になる宇奈月温泉に向って車を走らせ、砺波ICから北陸道
に入り、途中魚津ICで高速を降りた。
宇奈月温泉に行くには黒部ICが一番近いのだが、魚津ICで降りたのには
理由がある。
目的は以前から釣り仲間から聞かされている良型のうぶなイワナのいる〇〇
川で竿を出すためである。
上流に向かって川沿いに3キロほど車を走らせると今までゆったりと流れて
いた川は渓流に変わり、いかにも大物が潜んでいそうな渓相になった。
はやる胸を押さえ大石の周りのよどみに毛針を打つと、いきなり良型のイワ
ナが飛び出してきた。
私は我を忘れたかのようにしばらくは夢中で竿を振り続けた。
キャッチアンドリリースを繰り返しながら上流に向かって歩く。
竿から身体の芯に伝わる小気味よい魚心に一人至福の笑みを浮かべ、しばし
の間満足感にひたった。
一服しながらふと時計を見るともう午後の4時に近い。
本当の釣りは夕方から今からが本番の時間なのだが、もう少し釣りたい・・
そんな後ろ髪引かれる思いを裁ち切り、本日の宿泊地宇奈月温泉に向かった。
予約していた旅館には午後5時過ぎに着いた。
旅館は宇奈月ではまあまあの中級旅館である。
「7階の黒部の間です。お荷物をお持ちします」
「良いんですよ。写真器材とノートパソコンだから重いんですよ」
若い仲居さんに案内され、エレベーターに乗る。
「本日、お客様はラッキーな方です」
「ラッキー?」
「はい、これから最上階の7階の黒部の間にご案内しますが、黒部の間は他の
部屋より広くて部屋からの景色も良く、いつもは特別室の扱いなのですが、今
日はお泊まりのお客様が少ないので黒部の間にお部屋を変えさせていただきま
した」
「特別室?」
「スイートルームではございませんが、当館では良い部屋の一つです。料金は
ご予約のままで、ご夕食はお部屋までお運びいたします」
「本当ですか?レストランでの夕食と聞いていましたので、ラッキーですな」
仲居さんは見た目20代後半、身長160センチぐらい、ちょっと過去を背
負った暗いような感じもするが、制服であろう紺の着物に束ねた黒髪、うなじ
が白く、ほつれ毛がみょうに色っぽくなまめかしくて温泉旅館の仲居さんでは
不釣り合いの感じがするような美人、胸元の名札には鈴木真理と書いてある。
部屋に入って驚いた。
ツインのベッドの寝室が付き12畳ほどの畳の間、窓際の4畳ほどのジュウ
タンにソファー、内風呂、トイレ洗面所、開口部は大きなガラス窓で、遠く黒
部川が見え、外には小さいながらも露天風呂まで付いている。
私は出されたお茶を飲みながら、
「本当に良いんですか・・私がお願いしたのは期間限定のお得な料金と言うこ
とでネットで予約したんですよ」
「はい、五月の連休がおわり、梅雨明けの夏休みまでは団体さんが入らない日
は当館は暇なのです。昨日はバスツアーが入って満室でしたが、今日のお客様
は中山様をお入れして8組20名様だけです」
「何人ほど泊まれるんですか?」
「30室で150名です」
「仲居さんはどのくらい?」
「フロントや板前さんを入れて全員で25名ぐらいです」
「仲居さんは一人何部屋ぐらい担当するんですか?」
「各階に仲居は2~3名ですから満室の場合、多いときは5つのお部屋を担当
します。今日はお客様が少ないので、本日は私がお客様のお部屋を専属で担当
をさせていただきます」
「えっ、じゃあ今日は鈴木さんが私だけの専属ということですか?」
「・・はい・・・」
仲居の真理は胸に付けた名札をさすりながら答えた。
ちょっと色白の顔に赤みが差したのは気のせいだろうか?
私は自分で言うのもなんだが、やや太り気味だが津川雅彦似のちょい悪系の
おやじだと部下のOLが言っていたと部の飲み会の時に聞いたことがある。
したがって、仲居の真理には感じの悪い客には見えていないはずである。
「ご夕食は何時になさいますか?」
「今5時半だから風呂に入ると6時・・6時半にお願いします」
「6時半でございますね。お飲み物は何を・・・・?」
「日本酒を2本、熱燗で・・」
「ではご夕食は6時半、熱燗のお銚子を2本、このお部屋にご用意させていた
だきます・・お風呂はこの部屋に内風呂と露天風呂がございますが、1階の売
店奥にサウナ付きの大浴場と露天風呂がございます。小さいですが貸し切りの
露天風呂もございます・・あっ、そうか、このお部屋には露天風呂があるし、
お客様はお一人ですからから貸し切りは必要ありませんよね。うふふ・・」
そのとき私の脳裏に長年経験して得た中年スケベ男の動物的カンが灯った。
「あっ・・ちょっと待って」
(私好みのいい女・・なんか気を引くようなしゃべり方?・・ここは奮発して
チップでも・・もしかしてチップが大化けるかも・・・・いやー、それはない
だろう・・・だがあの目は・・含み笑いは何?・・)
私は財布から福沢諭吉を取り出すと手渡した。
「これ少ないけれど」
「すみません、当館ではサービス料を頂きますのでチップは頂かない決まりに
なっております」
「まあ、そう堅いことは言わずに・・黙っていればわからない・・私も一度出
したからにはひっこめられないよ」
私は真理の胸元に強引に押し込んだ。
「あっ、すみません、ありがとうございます」
真理はにっこりと笑った。
一階の露天風呂に入って部屋に戻ると真理が料理を並べていた。
「これは当館の名物のイワナのお造り、これは塩焼きです」
「これは養殖のイワナだな」
「えっ、中山様、おわかりになります?お詳しいんですね」
「日本、いや、本州には大きく分けて2種類のイワナがいるんですよ。日光イ
ワナと大和イワナ。この辺の天然イワナは大和イワナで日光はいないからたぶ
ん養殖の日光だと思います」
「へぇー、そうなんだ」
「私はつりと写真が好きなので月に1回ぐらいですが、一泊か2泊でつりと写
真の旅をしているんですよ。昨日は上高地と乗鞍をまわり高山に泊まりました。
今日は合掌造りの白川郷と五箇山の相倉集落の写真を撮ってきました。魚津で
イワナ釣りもしてきましたよ」
「五箇山相倉って?」
「富山県の砺波市から高山に抜ける途中にある合掌造りの集落でね。除雪機械
のない昔は冬になると3~4メートルの雪が積もり陸の孤島呼ばれ、昔からサ
ラサという木製の楽器を手に持ってもって歌う民謡のコキリコ節と日本刀を持
って踊るむぎや節で知られていた割と有名なところなのですが、ちょっとマニ
アックだったかな?・・つい最近、世界遺産になったので全国的に知られるよ
うになったらしい、とてもひなびていて静かで良いところですよ」
「世界遺産?・・・どうぞ」
真理がお酌してくれる。
(2)へつづく・・・
某家電メーカーで営業部長をしている自称アウトドア系アマチュア写真家の
私、中山和宏(46歳)は先日、愛車の4駆ワゴン車で気ままな2泊3日の一
人旅を楽しんできた。
32歳の時、5歳年下で営業部のOLだった妻、文香と結婚したが、3年間
子供がなかったので、妻は私の趣味に合わせてキャンプや渓流釣りを一緒に楽
しんでくれたが、待望の子供が授かると子供の世話にかかり切りになり、亭主
の私はこの10年ほどほったらかしの放し飼いにされている。
妻から小遣いは毎月それなりに貰い、下請け会社からのリベートを少々懐に
納め、酒もタバコもやるが、タバコは昨今世間様からいやがられるようになっ
たので、飲み会の時だけたまに吸う半休状態、酒はもっぱら会社や下請けの接
待で楽しむことにしているから派手には遊べないものの、年に4~5回は1~
2泊で好きな写真と渓流つりの一人旅が出来る。
私は一人旅に行くとき、旅費や小遣いをせびらないので妻は小言一つ言わず
に笑って送り出してくれる。
(亭主元気で留守が良いと言うのか?干渉されないのでそれは良いんだけれど)
男の一人旅=ロマンチック、かっこいいなどと思われていたのは昔の話で、
今では人生も終盤期の黄昏れ男が放浪するそんな感じでちょいと寂しい・・だ
が、たまには男の一人旅でしか巡りあえることのできない行き当たりばったり
の楽しみに遭遇することもある。
今回は2泊3日で新緑と北アルプスに残る残雪、合掌造りの集落をテーマに
上高地から~岐阜白川郷~富山相倉集落~宇奈月温泉を回る旅、時間があれば
渓流釣りも楽しもうと言う何ともケチで忙しい計画であった。
1日目、横浜の自宅を出たのは午前6時、国道16号はやや渋滞するも八王
子ICから中央道~松本IC~上高地(沢渡)午前11時、マイカー規制のた
め上高地入り口手前の沢渡に駐車して軽く昼食をとってからシャトルバスに乗
り換えて大正池で降車した。
焼岳をバックに大正池や足下に咲き乱れる草花を撮りながら河童橋まで歩く。
河童橋・梓川・残雪の西穂高、奥穂高、明神岳、誰もがカメラを向けシャッ
ターを切りたくなる絶景、ときおりほほにあたる澄んだ冷たい空気を思い切り
都会の空気で汚れた肺を清めるように送り込む。
時計を見ると午後3時、これから明神池まで往復すると高山には着くのが遅
くなるのでバスターミナルからシャトルバスで沢渡に戻り、安房トンネルを抜
け高山の宿に着いたのは午後5時近くであった。
高山では朝市会場まで徒歩3分の宮川沿いの宿に予約しておいた。
夕暮れ時の古き町並みを撮り、翌朝7時から始まった宮川朝市の風景を写真
に納め、やや遅めの朝食後高山を後にして白川郷~越中五箇山相倉集落に向か
った。
どちらも合掌造りの世界遺産ではあるが、どちらかと言えば周囲が田んぼの
相倉集落の方がひなびていて私的には好きである。
白川郷、相倉集落で期待どおりほぼ満足のいく風景をカメラに納めると国道
156号を2泊目になる宇奈月温泉に向って車を走らせ、砺波ICから北陸道
に入り、途中魚津ICで高速を降りた。
宇奈月温泉に行くには黒部ICが一番近いのだが、魚津ICで降りたのには
理由がある。
目的は以前から釣り仲間から聞かされている良型のうぶなイワナのいる〇〇
川で竿を出すためである。
上流に向かって川沿いに3キロほど車を走らせると今までゆったりと流れて
いた川は渓流に変わり、いかにも大物が潜んでいそうな渓相になった。
はやる胸を押さえ大石の周りのよどみに毛針を打つと、いきなり良型のイワ
ナが飛び出してきた。
私は我を忘れたかのようにしばらくは夢中で竿を振り続けた。
キャッチアンドリリースを繰り返しながら上流に向かって歩く。
竿から身体の芯に伝わる小気味よい魚心に一人至福の笑みを浮かべ、しばし
の間満足感にひたった。
一服しながらふと時計を見るともう午後の4時に近い。
本当の釣りは夕方から今からが本番の時間なのだが、もう少し釣りたい・・
そんな後ろ髪引かれる思いを裁ち切り、本日の宿泊地宇奈月温泉に向かった。
予約していた旅館には午後5時過ぎに着いた。
旅館は宇奈月ではまあまあの中級旅館である。
「7階の黒部の間です。お荷物をお持ちします」
「良いんですよ。写真器材とノートパソコンだから重いんですよ」
若い仲居さんに案内され、エレベーターに乗る。
「本日、お客様はラッキーな方です」
「ラッキー?」
「はい、これから最上階の7階の黒部の間にご案内しますが、黒部の間は他の
部屋より広くて部屋からの景色も良く、いつもは特別室の扱いなのですが、今
日はお泊まりのお客様が少ないので黒部の間にお部屋を変えさせていただきま
した」
「特別室?」
「スイートルームではございませんが、当館では良い部屋の一つです。料金は
ご予約のままで、ご夕食はお部屋までお運びいたします」
「本当ですか?レストランでの夕食と聞いていましたので、ラッキーですな」
仲居さんは見た目20代後半、身長160センチぐらい、ちょっと過去を背
負った暗いような感じもするが、制服であろう紺の着物に束ねた黒髪、うなじ
が白く、ほつれ毛がみょうに色っぽくなまめかしくて温泉旅館の仲居さんでは
不釣り合いの感じがするような美人、胸元の名札には鈴木真理と書いてある。
部屋に入って驚いた。
ツインのベッドの寝室が付き12畳ほどの畳の間、窓際の4畳ほどのジュウ
タンにソファー、内風呂、トイレ洗面所、開口部は大きなガラス窓で、遠く黒
部川が見え、外には小さいながらも露天風呂まで付いている。
私は出されたお茶を飲みながら、
「本当に良いんですか・・私がお願いしたのは期間限定のお得な料金と言うこ
とでネットで予約したんですよ」
「はい、五月の連休がおわり、梅雨明けの夏休みまでは団体さんが入らない日
は当館は暇なのです。昨日はバスツアーが入って満室でしたが、今日のお客様
は中山様をお入れして8組20名様だけです」
「何人ほど泊まれるんですか?」
「30室で150名です」
「仲居さんはどのくらい?」
「フロントや板前さんを入れて全員で25名ぐらいです」
「仲居さんは一人何部屋ぐらい担当するんですか?」
「各階に仲居は2~3名ですから満室の場合、多いときは5つのお部屋を担当
します。今日はお客様が少ないので、本日は私がお客様のお部屋を専属で担当
をさせていただきます」
「えっ、じゃあ今日は鈴木さんが私だけの専属ということですか?」
「・・はい・・・」
仲居の真理は胸に付けた名札をさすりながら答えた。
ちょっと色白の顔に赤みが差したのは気のせいだろうか?
私は自分で言うのもなんだが、やや太り気味だが津川雅彦似のちょい悪系の
おやじだと部下のOLが言っていたと部の飲み会の時に聞いたことがある。
したがって、仲居の真理には感じの悪い客には見えていないはずである。
「ご夕食は何時になさいますか?」
「今5時半だから風呂に入ると6時・・6時半にお願いします」
「6時半でございますね。お飲み物は何を・・・・?」
「日本酒を2本、熱燗で・・」
「ではご夕食は6時半、熱燗のお銚子を2本、このお部屋にご用意させていた
だきます・・お風呂はこの部屋に内風呂と露天風呂がございますが、1階の売
店奥にサウナ付きの大浴場と露天風呂がございます。小さいですが貸し切りの
露天風呂もございます・・あっ、そうか、このお部屋には露天風呂があるし、
お客様はお一人ですからから貸し切りは必要ありませんよね。うふふ・・」
そのとき私の脳裏に長年経験して得た中年スケベ男の動物的カンが灯った。
「あっ・・ちょっと待って」
(私好みのいい女・・なんか気を引くようなしゃべり方?・・ここは奮発して
チップでも・・もしかしてチップが大化けるかも・・・・いやー、それはない
だろう・・・だがあの目は・・含み笑いは何?・・)
私は財布から福沢諭吉を取り出すと手渡した。
「これ少ないけれど」
「すみません、当館ではサービス料を頂きますのでチップは頂かない決まりに
なっております」
「まあ、そう堅いことは言わずに・・黙っていればわからない・・私も一度出
したからにはひっこめられないよ」
私は真理の胸元に強引に押し込んだ。
「あっ、すみません、ありがとうございます」
真理はにっこりと笑った。
一階の露天風呂に入って部屋に戻ると真理が料理を並べていた。
「これは当館の名物のイワナのお造り、これは塩焼きです」
「これは養殖のイワナだな」
「えっ、中山様、おわかりになります?お詳しいんですね」
「日本、いや、本州には大きく分けて2種類のイワナがいるんですよ。日光イ
ワナと大和イワナ。この辺の天然イワナは大和イワナで日光はいないからたぶ
ん養殖の日光だと思います」
「へぇー、そうなんだ」
「私はつりと写真が好きなので月に1回ぐらいですが、一泊か2泊でつりと写
真の旅をしているんですよ。昨日は上高地と乗鞍をまわり高山に泊まりました。
今日は合掌造りの白川郷と五箇山の相倉集落の写真を撮ってきました。魚津で
イワナ釣りもしてきましたよ」
「五箇山相倉って?」
「富山県の砺波市から高山に抜ける途中にある合掌造りの集落でね。除雪機械
のない昔は冬になると3~4メートルの雪が積もり陸の孤島呼ばれ、昔からサ
ラサという木製の楽器を手に持ってもって歌う民謡のコキリコ節と日本刀を持
って踊るむぎや節で知られていた割と有名なところなのですが、ちょっとマニ
アックだったかな?・・つい最近、世界遺産になったので全国的に知られるよ
うになったらしい、とてもひなびていて静かで良いところですよ」
「世界遺産?・・・どうぞ」
真理がお酌してくれる。
(2)へつづく・・・
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