小説(転載) 綾香とぼく 7/10
官能小説
第7章 再会
運動会に会いに行ったきり、ひとつきほどの間彼女の姿を目にすることはなかっ
た。彼女への想いは募っていき、もう一度彼女と会って話をしてみたいと思った。
以前遊ぶのを断られて以来、彼女とは話していない。彼女がぼくのことをどう思っ
ているのか分からなかった。嫌われているのだろうか。それとも、親に止められて
いるのだろうか。
これ以上彼女に近づかない方がいいのだろうか。傷つけてはしまわないだろうか。
どうしよう。
そうだ。手紙だ。手紙を書いてみようか。彼女の住所は分かっている。どうだろ
う。しかし、手紙ならば両親の目にもつく。いっそ、ご両親にぼくの気持ちを伝え
ようか。いや、だめだ。見知らぬ青年が自分の幼い娘に恋愛感情を抱いていること
ほど気持ち悪いことはない。手紙はあきらめよう。
それから、数日が過ぎた。どうしても彼女にあってみたくなった。散歩に出ると
自然に彼女の家や彼女の通学路の方に行ってしまう。何日もそんなことを繰り返し
ていた。
ある日のことだった。ぼくはルールを破って、白鳩小学校の近くの横断歩道のあ
たりで、彼女を待っていた。いくら待っても彼女は帰ってこないので、「もう家に
帰ったのかな」と思い、最後に白鳩小学校の校門前を一目見てから帰ろうと思った。
いままでも何度か横断歩道で待ってはいたが、学校を見ようと思ったのは今日が初
めてだった。本当に気まぐれの思いつきだった。
小学校近くの曲がり道を曲がると学校前の道路に出る。ぼくがその曲がり角を曲
がり、学校の方を見たとき、友達と楽しく話しながら帰る彼女の姿を見つけた。体
中に電気が走った。
偶然だった。本当に偶然だったのだ。気まぐれでふと学校の方を覗くと、彼女に
会えたのだ。考えてみると、公園で初めて出会って以来、彼女との出会いは偶然の
積み重ねだった。まさに運命的な何かを感じた。
「あっ!立花さん。」
「あ、綾香ちゃん、おひさしぶり。」
本当はもっと喜びを表現したかったが、その場では感覚が麻痺してしまっていた。
「今日はどうしたの?」
ぼくがたずねる。
「学校の帰り。」
当たり前である。余りに彼女との出会いが唐突だったので、混乱してしまって言葉
が出てこない。他にも何か話したと思うのだがよく覚えていない。彼女はとくに嫌
そうな態度をするでもなく、友好的に接してくれた。「嫌われたのではないか」と
いうぼくの考えは、感情の読みすぎだった。半年間悩んで苦しんでいたのが、ばか
らしく思えてきた。
彼女は髪が少し伸びたようだ。肩まで伸びた髪が魅力的だった。運動会の時に姿
を見ることはできたが、会話をするのはすごく久しぶりだった。
彼女と他にふたりの友達と一緒に歩く。ぼくは持っていたキャンディーを3人に
渡した。彼女はぼくとの出会いを友達に話していた。
「この人と会ったときのこと、すごくおもしろいんだよ。」
「えー、綾香ちゃん、なになに?」
友達のひとりが彼女に聞く。
「うふふ、立花さんおぼえてる?」
「ああ、桜の木のところだろ?」
「そうそう。」
「『桜の木の枝をひっぱっちゃだめ』って言うんだよ。きゃはは。」
彼女は自慢げにぼくのことを友達に話している。
「でね、この人のことはお母さんには内緒なの。」
彼女なりにぼくとの関係のことは自覚があるのだろうか。ぼくと綾香ちゃんの不思
議な関係のことを。
彼女はふたりの友達とマンションへ入っていく。彼女は友達と遊ぶようだ。
「ねえ、明日ぼくと遊ばない?」
「どこで?」
「緑山公園で。」
緑山公園とは彼女と初めて出会った公園である。
「うん、いいよ。じゃあ、あした3時ごろね。」
あまりにもあっけなく約束ができた。今まで彼女と会えなかったことを考えると、
あっけなさすぎた。
「春菜ちゃんも一緒に連れて行くから。」
「うん。」
「あ、雨がふったらなしね。」
「分かった。」
春菜ちゃんも一緒だそうだが、できればぼくは彼女とふたりっきりで会いたかった。
雨は降ってほしくない。そんなことで彼女との関係が切れてしまうのはすごく惜し
い。
明日緑山公園で3時。ぼくはその約束を胸に刻みつけた。
運動会に会いに行ったきり、ひとつきほどの間彼女の姿を目にすることはなかっ
た。彼女への想いは募っていき、もう一度彼女と会って話をしてみたいと思った。
以前遊ぶのを断られて以来、彼女とは話していない。彼女がぼくのことをどう思っ
ているのか分からなかった。嫌われているのだろうか。それとも、親に止められて
いるのだろうか。
これ以上彼女に近づかない方がいいのだろうか。傷つけてはしまわないだろうか。
どうしよう。
そうだ。手紙だ。手紙を書いてみようか。彼女の住所は分かっている。どうだろ
う。しかし、手紙ならば両親の目にもつく。いっそ、ご両親にぼくの気持ちを伝え
ようか。いや、だめだ。見知らぬ青年が自分の幼い娘に恋愛感情を抱いていること
ほど気持ち悪いことはない。手紙はあきらめよう。
それから、数日が過ぎた。どうしても彼女にあってみたくなった。散歩に出ると
自然に彼女の家や彼女の通学路の方に行ってしまう。何日もそんなことを繰り返し
ていた。
ある日のことだった。ぼくはルールを破って、白鳩小学校の近くの横断歩道のあ
たりで、彼女を待っていた。いくら待っても彼女は帰ってこないので、「もう家に
帰ったのかな」と思い、最後に白鳩小学校の校門前を一目見てから帰ろうと思った。
いままでも何度か横断歩道で待ってはいたが、学校を見ようと思ったのは今日が初
めてだった。本当に気まぐれの思いつきだった。
小学校近くの曲がり道を曲がると学校前の道路に出る。ぼくがその曲がり角を曲
がり、学校の方を見たとき、友達と楽しく話しながら帰る彼女の姿を見つけた。体
中に電気が走った。
偶然だった。本当に偶然だったのだ。気まぐれでふと学校の方を覗くと、彼女に
会えたのだ。考えてみると、公園で初めて出会って以来、彼女との出会いは偶然の
積み重ねだった。まさに運命的な何かを感じた。
「あっ!立花さん。」
「あ、綾香ちゃん、おひさしぶり。」
本当はもっと喜びを表現したかったが、その場では感覚が麻痺してしまっていた。
「今日はどうしたの?」
ぼくがたずねる。
「学校の帰り。」
当たり前である。余りに彼女との出会いが唐突だったので、混乱してしまって言葉
が出てこない。他にも何か話したと思うのだがよく覚えていない。彼女はとくに嫌
そうな態度をするでもなく、友好的に接してくれた。「嫌われたのではないか」と
いうぼくの考えは、感情の読みすぎだった。半年間悩んで苦しんでいたのが、ばか
らしく思えてきた。
彼女は髪が少し伸びたようだ。肩まで伸びた髪が魅力的だった。運動会の時に姿
を見ることはできたが、会話をするのはすごく久しぶりだった。
彼女と他にふたりの友達と一緒に歩く。ぼくは持っていたキャンディーを3人に
渡した。彼女はぼくとの出会いを友達に話していた。
「この人と会ったときのこと、すごくおもしろいんだよ。」
「えー、綾香ちゃん、なになに?」
友達のひとりが彼女に聞く。
「うふふ、立花さんおぼえてる?」
「ああ、桜の木のところだろ?」
「そうそう。」
「『桜の木の枝をひっぱっちゃだめ』って言うんだよ。きゃはは。」
彼女は自慢げにぼくのことを友達に話している。
「でね、この人のことはお母さんには内緒なの。」
彼女なりにぼくとの関係のことは自覚があるのだろうか。ぼくと綾香ちゃんの不思
議な関係のことを。
彼女はふたりの友達とマンションへ入っていく。彼女は友達と遊ぶようだ。
「ねえ、明日ぼくと遊ばない?」
「どこで?」
「緑山公園で。」
緑山公園とは彼女と初めて出会った公園である。
「うん、いいよ。じゃあ、あした3時ごろね。」
あまりにもあっけなく約束ができた。今まで彼女と会えなかったことを考えると、
あっけなさすぎた。
「春菜ちゃんも一緒に連れて行くから。」
「うん。」
「あ、雨がふったらなしね。」
「分かった。」
春菜ちゃんも一緒だそうだが、できればぼくは彼女とふたりっきりで会いたかった。
雨は降ってほしくない。そんなことで彼女との関係が切れてしまうのはすごく惜し
い。
明日緑山公園で3時。ぼくはその約束を胸に刻みつけた。
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