小説(転載) 綾香とぼく 8/10
官能小説
第8章 約束
3時の約束にぼくは1時から緑山公園にいた。まだ早いと思いながらも、はやる
気持ちを抑えられなかった。ベンチに座って、彼女のことを思い浮かべる。何をし
て遊んで、何を話そう。考えるだけでも楽しくなってきた。
2時間の時が過ぎ、約束の時間になった。ぼくは期待と興奮でどきどきしていた。
一緒にお菓子を食べて、ブランコで遊んで、ベンチに座って話をして。ぐるぐると
楽しいひとときの情景が頭の中をめぐる。
約束の時間を15分ほど過ぎる。彼女は来ない。少し不安になってきた。約束を
忘れているのだろうか。何か事故でもあったのではないだろうか。いや、きっと何
かで遅れているだけだ。
30分過ぎた。明らかに遅すぎる。どうしたんだろう。いや、彼女はきっと来る、
そう自分を言い聞かせた。
45分過ぎたところでぼくはあきらめた。彼女に対する怒りは全くないが、すご
く心配だ。何かあったとしても、ぼくに確認する手段はない。オフィシャルな関係
でないことに少し悲しくなった。ぼくはとぼとぼと公園をあとにした。
数日後、いつものように、緑山公園で彼女を待っていた。彼女の帰りを待つこと
45分。今日は彼女とは会えないかもしれないという不安の中、髪を下ろした彼女
が息を弾ませて帰ってきた。いつ見てもかわいい。夕日の中、彼女の瞳は宝石のよ
うに見えた。
はじめは彼女はうつむいていて、ぼくには気がつかなかった。
「綾香ちゃん。」
声を掛ける。
「なあに?」という表情。
「この前ずっと待ってたんだよ。」
緑山公園の約束のことだ。
「習字があるから、綾香、遊べなかったの。」
「その次の日のことだよ。」
「次の日?」
完全に忘れている。まあ、彼女に何事もなかったので安心した。こどもの記憶力と
いうのはこの程度のものらしい。過剰に心配していたのがばからしく思えた。
公園から彼女の家まで送ってあげた。ふたことみことなんとなく言葉を交わし歩
いた。彼女に対しては、どうしても物事を言い出しにくくなる。どうしても緊張し
てしまう。彼女と一緒にいると、頭が真っ白になる。聞きたいこと、話したいこと
はたくさんある。それが言えない自分にいらだった。
そうしているうちにあっという間に彼女の家についた。
(ばいばい。)
家の人に気付かれるとまずいのか、彼女は口元だけでそう言った。お互い手をあげて
その日は分かれた。
3時の約束にぼくは1時から緑山公園にいた。まだ早いと思いながらも、はやる
気持ちを抑えられなかった。ベンチに座って、彼女のことを思い浮かべる。何をし
て遊んで、何を話そう。考えるだけでも楽しくなってきた。
2時間の時が過ぎ、約束の時間になった。ぼくは期待と興奮でどきどきしていた。
一緒にお菓子を食べて、ブランコで遊んで、ベンチに座って話をして。ぐるぐると
楽しいひとときの情景が頭の中をめぐる。
約束の時間を15分ほど過ぎる。彼女は来ない。少し不安になってきた。約束を
忘れているのだろうか。何か事故でもあったのではないだろうか。いや、きっと何
かで遅れているだけだ。
30分過ぎた。明らかに遅すぎる。どうしたんだろう。いや、彼女はきっと来る、
そう自分を言い聞かせた。
45分過ぎたところでぼくはあきらめた。彼女に対する怒りは全くないが、すご
く心配だ。何かあったとしても、ぼくに確認する手段はない。オフィシャルな関係
でないことに少し悲しくなった。ぼくはとぼとぼと公園をあとにした。
数日後、いつものように、緑山公園で彼女を待っていた。彼女の帰りを待つこと
45分。今日は彼女とは会えないかもしれないという不安の中、髪を下ろした彼女
が息を弾ませて帰ってきた。いつ見てもかわいい。夕日の中、彼女の瞳は宝石のよ
うに見えた。
はじめは彼女はうつむいていて、ぼくには気がつかなかった。
「綾香ちゃん。」
声を掛ける。
「なあに?」という表情。
「この前ずっと待ってたんだよ。」
緑山公園の約束のことだ。
「習字があるから、綾香、遊べなかったの。」
「その次の日のことだよ。」
「次の日?」
完全に忘れている。まあ、彼女に何事もなかったので安心した。こどもの記憶力と
いうのはこの程度のものらしい。過剰に心配していたのがばからしく思えた。
公園から彼女の家まで送ってあげた。ふたことみことなんとなく言葉を交わし歩
いた。彼女に対しては、どうしても物事を言い出しにくくなる。どうしても緊張し
てしまう。彼女と一緒にいると、頭が真っ白になる。聞きたいこと、話したいこと
はたくさんある。それが言えない自分にいらだった。
そうしているうちにあっという間に彼女の家についた。
(ばいばい。)
家の人に気付かれるとまずいのか、彼女は口元だけでそう言った。お互い手をあげて
その日は分かれた。
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