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小説(転載) 盆休み3/6

官能小説
06 /17 2018
「愛子お。ビール買ってきて。」
圭介が残り少なくなったビールの缶を見て、愛子に言った。小遣いをもらった手前、愛子は嫌とは言えず、紫織と一緒にその場をあとにした。
「愛子ちゃんの友達ねえ、圭介のこと好きみたい。」
聡美が圭介に言うと、聡美の言葉を聞いた他の仲間が、奇声をあげて騒ぎ出した。聡美は慌ててそれをたしなめたが、圭介も酔っぱらっていたので、一緒になって騒ぎ出した。
「行けっ、圭介。追いかけろお。」
という仲間の声に、圭介はおっしゃあ、と叫び走り出した。聡美は止めようとしたが、圭介の姿は遠くの方へと行ってしまい、どうすることもできなかった。
 
 愛子たちは、お店で酒やつまみを調達すると、祭りの会場へと戻っていくところだった。
「あれっ、兄貴だ。」
圭介はすでに酔っていた体で走ったため、さらに酔いがまわって足元を少しふらふらさせながら、愛子たちに近づいてくる。
「うーんと、聡美がさあ…、紫織ちゃんがあ…。」
あきらかに酔っぱらった圭介が話そうとすると、愛子は圭介がなぜここに来たのかを悟った。愛子は圭介の言葉を遮り、不思議そうな顔をしている紫織を残して、圭介の腕を引っ張って行った。神社の境内までくると、愛子は圭介の尻を蹴っ飛ばし、
「酔いがさめるまで、家に帰ってくるな。」
そう言い残すと、愛子は買ってきた酒を圭介の仲間のところに置いて、紫織のところまで戻り、そのまま家に帰った。
 
 夜もふけ、盆踊りの音も聞こえなくなったころ、聡美から電話があった。聡美は愛子に、圭介に話したことをわびると、圭介は家に戻ったかどうかを聞いてくる。愛子はたぶん境内にいるだろうから、自分が迎えにいくと行って、電話を切った。
 浴衣からジーパンに着替えた愛子は、心配する紫織を家に残し、境内へ走って行った。   
 案の定、圭介は神社の境内にある石段で眠っていた。愛子は圭介を起こし、近くの自販機でお茶を買って圭介に渡した。圭介はしばらく自分の状況が分からないようだったが、愛子から話を聞き、酔っぱらって紫織に絡まないようにしてくれた愛子に礼を言った。
「兄貴は、紫織のことどう思ってるの?」
「どうって…。可愛いし…いい子だし……嫌いなタイプじゃない。でも、お前の友達だろ?」
圭介の答えに、愛子は大きなため息をつく。
「紫織から好きだってはっきり聞いたわけじゃないからね。兄貴にその気がないなら、口説いたりしないでよ。」
「口説くって、お前…。どうして俺が……。」
愛子に念を押され、圭介はたじろぐ。
「兄貴の元彼女って、全部紫織みたいなタイプだったっけなあ。」
そう言って、圭介の元彼女の名前を次々に挙げていく愛子を、圭介は慌てて止めた。愛子はもう少しここにいるという圭介を残して、家に帰った。
 
 
 次の日、愛子は何事もなかったかのように、また圭介を運転手として遊びに連れて行かせた。圭介に気持ちを知られているとは知らない紫織は、普通 に圭介に接してくる。
 圭介も普通にしていようと思うが、どこか紫織を意識している自分に気づいていた。紫織の仕草が目につき、しばらくそれを眺めてしまう。
 
 
 その夜、連日連れ回された圭介はさすがに疲れて、夕食が済むとすぐに寝てしまった。のどが乾いて目を覚ますと、すでに午前1時をまわっていた。水を飲もうと縁側の角を曲がったとき、居間の前の縁側に座っている紫織を見つけた。紫織は圭介に気づき、振り向いた。
「どうしたの?」
圭介が声をかけると、
「妙に目が冴えちゃって…。」
と紫織は答えた。圭介は、冷蔵庫から缶ビールを取り出して、戻ってくると、紫織に差し出した。圭介は紫織の隣に座り、庭に足を投げ出して、缶 ビールを飲みだした。
「いろいろ、ありがとうございました。」
愛子と一緒に、遊びに連れて行ってくれたことに礼を言うと、圭介は
「また、いつでも遊びにおいで。」
と答えた。紫織が缶ビールの缶を開け、少し飲んだとき、圭介は、散歩でもしようか、と紫織を誘った。
 
 圭介が服を着替え、戻ってくると、紫織もショートパンツとノースリーブのシャツに着替えて待っていた。圭介と紫織は一緒に家の外に出た。
「月が明るいですねえ。」
紫織が空を見上げて言う。見ると、空には月が出ていて、辺りをうっすらと明るく照らしている。
「懐中電灯はいらないな。」
圭介は庭石に懐中電灯を置き、二人は家の前の道を歩き始めた。道路には、二つのうすい人影ができている。家の前に広がる田んぼからは、ウシガエルの鳴き声や、虫の声が聞こえていた。
「この声って、カエルなんですよね?」
紫織にはウシガエルの鳴き声が珍しいらしい。圭介は、紫織をその場に待たせると、かがんで田んぼのあぜ道を静かに歩き始めた。
「おっしゃ。」
圭介がすばやく稲の中に手を入れたかと思うと、黒い塊を両手につかんでいる。そして圭介は紫織のそばまで行き、その塊を紫織に差し出した。
「ぶおっ」
黒い塊から大きな鳴き声が聞こえ、紫織が悲鳴をあげて後ずさりした。
「これがウシガエルだよ。」
気持ちが悪いといって、近寄らない紫織に、圭介は笑いながら
「これ、食えるんだぜ。」
と言いながらウシガエルを田んぼに返した。
 圭介はそばの民家の庭にあった水道で手を洗うと、また紫織に並んで歩き出した。辺りは静かで声がよく響く。圭介は小声で話しながら、紫織を笑わせた。
 
 しばらく行くと神社が見えてきた。境内の石段をのぼり、やしろの前の床に腰掛けると、圭介は愛子の小さい頃の話をし始めた。今とそれほど変わらないやんちゃな愛子の子供時代に、紫織はくすくす笑う。

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eroerojiji

小さい頃からエロいことが好き。そのまま大人になってしまったエロジジイです。