小説(転載) 罠の小鳥~美恵子・28歳~ 1/5
官能小説
罠の小鳥~美恵子・28歳~第一話
コン、コン・・・
「どうぞ」
「失礼します・・・」
支店長室のドアが、恐る恐る開く。そのしぐさに輪をかけて不安げな表情を浮かべた女
子行員が姿を見せた。
壁際の、応客用のソファ。そこには次長も控えていた。ドアを開けて最初に目に入った
のがそれで、淡いピンクの口紅がひかれた口許が、ますます、弱々しく、陰りを帯びる。
「こっちに来なさい」
「は、はい・・・」
支店長が、イスに体を預けたまま、目線を送る。打ち合わせたかのように、次長が立ち
上がり、女子行員の斜め後ろに立つ。そのやや大柄な上司を背にすることで、身を縮こませ
た制服姿が、余計にか細い印象を与える。
手のひらを重ね、ハイヒールのかかとを揃え、デスクの前にたたずんだ、一人の女性。
○○美恵子、28歳。
身長は二人と同じくらいだろうか。きっとヒールを脱げば目の高さくらいになるのだろ
う。後ろでたばねられた髪。控えめにメイクされた顔立ち。けして女性としての色気をまき
散らさない雰囲気は、むしろ仕事にまじめな、優良な部下と見るべきか。
ピンクのスカート。そこから下へと伸びる二本の脚。気になるほどの隙間のない、脚。
気になるほどの肉付きも認められない、脚。黒のヒールが整った二本の輪郭を引き立たせ、
ベージュのストッキングが、滑らかな肌色を清楚に演出する。
スカートと同色のベスト、白いブラウス。その凡庸な制服の色合いを引き締めるかのよ
うなあざやかな赤いリボン。うごめいている。呼吸が乱れるせいだろう。無理もない。勤
務上がりの突然の呼び出し。ブラインドさえ閉ざされた密室に、二人の上司。
「あ、の。支店長、何か・・・」
重苦しい静けさに辛抱できず、美恵子が小さく口を開く。
「・・・君は・・・ウチの銀行が、経営健全化のため、人員整理を、進めていることは、
知っているよね・・・?」
「あ、ハイ・・・」
心持ち、美恵子が目線を下げた。「いやな予感が当たった・・・」そうつぶやいた瞳に、
垂れ下がった前髪が影を落とす。
「君は・・・貸付をやってる□□と仲がいいそうじゃないか?」
「そっ、そんなこと、ありません」
「無理に隠すことはない。行内でも、暗黙ながらの”公認カップル”のようじゃないか。
うわさは耳に入ってくるよ」
「あ、の、違うんです。私たちっ、そういうわけじゃ、」
「まーまー、そう焦らないでいい。私だってひとに聞かされるまで知らなかったんだ。む
しろ、普段そういう態度を見せないだけきちんと仕事をしてくれてるってことなんだろう」
「は、はぁ・・・」
「それに社内恋愛を理由に左遷や解雇の筆頭に挙げるなんてことはないさ。それは古い固
定観念の中での話だ」
「はい・・・」
「・・・君は・・・□□とは、やったのか・・・?」
「えっ・・・」
予想外の質問に、美恵子の目が大きく見開かれる。しかしその直後、急激に頬を赤らめ
足許へと視線を逃がす。
とまどいを受け止め切れない美恵子に、質問は継続された。
「二人とも大人なんだからな、それは当然だろうな。ん?週に何回するんだ?」
「えっ・・・えっ・・・」
「ほら○○クン、支店長の質問に答えなさい」
「次長、で、でも・・・」
「支店長が聞いておられるんだよ。早く答えなさい」
「でも、こんな・・・何の関係が・・・」
「本部の人事に君の名前、紹介してもいいんだよ・・・?」
食い下がる美恵子に支店長が切り札を突きつける。
「うっ・・・」
「さあ、週に、何回、するんだ?」
「・・・・・・」
「ん?」
「そんな・・・しない・・・です・・・」
「そんなことはないだろう?正直に答えなさい」
「本当に・・・しないんです・・・」
「・・・□□と経験がないわけじゃないんだろう?今までどれくらいしたんだ?」
「・・・・・・」
「答えなさい。○○クン」
「・・・いっ・・かい・・・」
「ほ」
「ふ」
「驚きましたね、支店長」
「私が聞いたところでは、君達はもうかれこれ4、5年の付き合いになるということだっ
たんだが?」
「・・・・・・」
「だったが?」
「はっ、は、ハイ、」
「それで一回しか経験がないとは。別に夜の君が娼婦のようでも人事評価は下がら
ないぞ?ん?本当なのか?」
「ほ、ほ、ほんとう、ですぅ・・・」
「大体君は、何人男性経験があるんだ?」
「・・・・・・」
「答えなさいっ、○○クン、」
「っ・・・」
「答えるんだっ」
「・・ひっ、ひとっ・・・ひとり・・・」
「ほっ」
「ふっ」
「・・・・・」
「すっ、すっ、すると、キミは、□□が初めての男だったということかねっ?」
顔中を、まっ赤に染める、美恵子。
「きっ、きっ、キミは、もうつい最近まで、しょっ、処女っ、だったということかね?」
男たちを目の前に、小ぶりな耳たぶや、涼しげなうなじまで、熱く、熱く紅潮していく
美恵子。執拗、かつ威圧的な二人がかりの尋問で、彼女のプライバシーの殻に、確実に、
ひびが入り始めていた。
「支店長・・・」
「くく・・・これは、私たちが期待した以上、だったようだな・・・」
支店長が、ついに、その黒く大きなイスから立ち上がる。
笑顔。ひどく無機的な、それゆえに、その奥に得体の知れない感情のうずまきを想わせ
る笑顔で、デスクを回り込む。
「し、支店長・・・?」
美恵子との距離を、削ってくる。
「最近の女というのはどうもかなわない。若いうちから化粧やアクセサリーで飾りたて
たり、考え方に節操がなかったり、逆に男に対してサバサバと気取ってみたり・・・」
「え、え、ちょ、」
「それに比べて、君は、淑女、そのものだ・・・」
「支店長、」
「いや、その恥じらいの表情は、清楚な少女だよ・・・」
「ハァ、ハァ、かわいいお尻だなァ、」
「やっ!次長っ・・・!」
びくんっ!美恵子のカラダが跳ねた。背後から次長が、スカートのまるみに触れてきた
のだ。
「やだっ、やっ、やめてくださいっ・・・!」
褐色の手のひらと手のひらが、なでまわる。なだらかな曲線を尊重しながら、つかず離
れず、ポリエステルの滑らかな感触を、たいらげていく。うなじで、鼻息、荒ぶっててい
く。
「ははっ、8時間、あのクッションに座り続けた、ぬくもり、ん?仕事上がりの、汗のニ
オイ、両の手から伝わってくるようだよ、ん?美恵子クンっ?」
「次長っ、いやっ、支店長、どうして、」
それなのに、直立の姿勢だけは崩すまいとする美恵子。
まだその脳裏には、最初の支店長のコトバが貼り付いていた。スカートの前で、手と手
を握り締め、上司の”品評”に、必死に耐えている。まるっこい肩が、シャープな背中が、
ゆるやかにくびれた腰が、はかなく左右にゆらめく。残像のように、勤務直後の女の体臭
が、細い吐息とともにたゆたった。
「私たちはね、ずっと、思っていたんだよ。実直で、貞淑で、一途で、そんな、君のよう
な女性をね・・・」
「美恵子くんっ、あぁ美恵子くんっ、」
「私たちの肉棒で、ボロボロに踏みにじりたいってね・・・」
「えっ・・・え、あ・・・え・・・」
肉棒・・・
低い声が、美恵子の鼓膜に、響き渡った。
表情が、また一段と、少女のそれに変貌していく。
幼い頃から今に至るまで、異性と手をつなぐことすら、大きなできごとだった、そんな
美恵子でも、目の前の、怪しくゆるんだ口元から振りかけられた言葉の意味は、わかって
いた。
肉棒・・・肉棒は、いやらしい言葉・・・
美恵子の思考回路は、ただそれだけでダウン寸前に追い込まれていく。津波のような、
羞恥が、止めどなく襲う、か弱い身体を、さらっていく・・・
「おほっ、なかなかプリプリしたお肉だねェ」
「うっ!」
とうとう、次長の指が境界線を侵犯した。もにゅ、もにゅ、もにゅ、曲面の奥に、次々
と、十匹の”イモムシ”が、めりこんでいく。
「次長!やめてくださいっ!」
”虫が湧いた”感覚で、理性を取り返した美恵子。ようやくその両手を使って、汚らし
い魔の手を振り払おうとする。が、
「おっと、そう激昂するな」
「あぁっ、支店長までっ、」
こともなげに、その両手を支店長の左手が取り上げる。澄んだ光沢の黒髪に右手をまわ
し、鼻先で支店長は言葉をつなげる。
「いいか、この銀行から追い出されたくないなら、今夜、私たちを、受け入れるんだ・・」
「やっ、いやっ・・・」
”イモムシ”の半分が、太股に移動を開始する。抵抗できない分、はね上がる悪寒のボ
ルテージ。スカートの裾を、じりじり上へ追いやりながら、5匹がストッキングの上で
激しく踊りだす。
「やっ!いやですっ!こんなっ、こんな、セクハラですっ!」
「あぁっ、美恵子クン、私はね、どうせセクハラするんなら、キミみたいな清楚な女性に
たっぷりセクハラしたかったんだ」
「なっ、次長、こんなの、私、告発しますっ」
「ほほー、自分の”お触り体験”を公表するのと、自分の人生を真っ暗にするのと、キミ
はどっちがいいのかナ?」
「クビになったって、構いませんっ、こんなのひどすぎる、私、このこと言いますっ」
「キミの言い分と私たちの言い分、どっちに信憑性があるんだろうねェ。それに、キミだ
って少し、欲情してきたんじゃないのかね?ん?本当は生まれて初めて男を知ったばかり
で、胸の奥ではウズウズしてるんだろう?」
「いやっ!放してっ、声っ、出しますよ、大声で叫びますよっ?」
「ふン、構わんさ、ここは3階だ。2階の融資のヤツ等には聞こえんさ。稟議書くのに没
頭してるよ」
「助けてっ!助けてぇぇぇ!!」
「ふぅ、困った子だ・・・」
コン、コン・・・
「どうぞ」
「失礼します・・・」
支店長室のドアが、恐る恐る開く。そのしぐさに輪をかけて不安げな表情を浮かべた女
子行員が姿を見せた。
壁際の、応客用のソファ。そこには次長も控えていた。ドアを開けて最初に目に入った
のがそれで、淡いピンクの口紅がひかれた口許が、ますます、弱々しく、陰りを帯びる。
「こっちに来なさい」
「は、はい・・・」
支店長が、イスに体を預けたまま、目線を送る。打ち合わせたかのように、次長が立ち
上がり、女子行員の斜め後ろに立つ。そのやや大柄な上司を背にすることで、身を縮こませ
た制服姿が、余計にか細い印象を与える。
手のひらを重ね、ハイヒールのかかとを揃え、デスクの前にたたずんだ、一人の女性。
○○美恵子、28歳。
身長は二人と同じくらいだろうか。きっとヒールを脱げば目の高さくらいになるのだろ
う。後ろでたばねられた髪。控えめにメイクされた顔立ち。けして女性としての色気をまき
散らさない雰囲気は、むしろ仕事にまじめな、優良な部下と見るべきか。
ピンクのスカート。そこから下へと伸びる二本の脚。気になるほどの隙間のない、脚。
気になるほどの肉付きも認められない、脚。黒のヒールが整った二本の輪郭を引き立たせ、
ベージュのストッキングが、滑らかな肌色を清楚に演出する。
スカートと同色のベスト、白いブラウス。その凡庸な制服の色合いを引き締めるかのよ
うなあざやかな赤いリボン。うごめいている。呼吸が乱れるせいだろう。無理もない。勤
務上がりの突然の呼び出し。ブラインドさえ閉ざされた密室に、二人の上司。
「あ、の。支店長、何か・・・」
重苦しい静けさに辛抱できず、美恵子が小さく口を開く。
「・・・君は・・・ウチの銀行が、経営健全化のため、人員整理を、進めていることは、
知っているよね・・・?」
「あ、ハイ・・・」
心持ち、美恵子が目線を下げた。「いやな予感が当たった・・・」そうつぶやいた瞳に、
垂れ下がった前髪が影を落とす。
「君は・・・貸付をやってる□□と仲がいいそうじゃないか?」
「そっ、そんなこと、ありません」
「無理に隠すことはない。行内でも、暗黙ながらの”公認カップル”のようじゃないか。
うわさは耳に入ってくるよ」
「あ、の、違うんです。私たちっ、そういうわけじゃ、」
「まーまー、そう焦らないでいい。私だってひとに聞かされるまで知らなかったんだ。む
しろ、普段そういう態度を見せないだけきちんと仕事をしてくれてるってことなんだろう」
「は、はぁ・・・」
「それに社内恋愛を理由に左遷や解雇の筆頭に挙げるなんてことはないさ。それは古い固
定観念の中での話だ」
「はい・・・」
「・・・君は・・・□□とは、やったのか・・・?」
「えっ・・・」
予想外の質問に、美恵子の目が大きく見開かれる。しかしその直後、急激に頬を赤らめ
足許へと視線を逃がす。
とまどいを受け止め切れない美恵子に、質問は継続された。
「二人とも大人なんだからな、それは当然だろうな。ん?週に何回するんだ?」
「えっ・・・えっ・・・」
「ほら○○クン、支店長の質問に答えなさい」
「次長、で、でも・・・」
「支店長が聞いておられるんだよ。早く答えなさい」
「でも、こんな・・・何の関係が・・・」
「本部の人事に君の名前、紹介してもいいんだよ・・・?」
食い下がる美恵子に支店長が切り札を突きつける。
「うっ・・・」
「さあ、週に、何回、するんだ?」
「・・・・・・」
「ん?」
「そんな・・・しない・・・です・・・」
「そんなことはないだろう?正直に答えなさい」
「本当に・・・しないんです・・・」
「・・・□□と経験がないわけじゃないんだろう?今までどれくらいしたんだ?」
「・・・・・・」
「答えなさい。○○クン」
「・・・いっ・・かい・・・」
「ほ」
「ふ」
「驚きましたね、支店長」
「私が聞いたところでは、君達はもうかれこれ4、5年の付き合いになるということだっ
たんだが?」
「・・・・・・」
「だったが?」
「はっ、は、ハイ、」
「それで一回しか経験がないとは。別に夜の君が娼婦のようでも人事評価は下がら
ないぞ?ん?本当なのか?」
「ほ、ほ、ほんとう、ですぅ・・・」
「大体君は、何人男性経験があるんだ?」
「・・・・・・」
「答えなさいっ、○○クン、」
「っ・・・」
「答えるんだっ」
「・・ひっ、ひとっ・・・ひとり・・・」
「ほっ」
「ふっ」
「・・・・・」
「すっ、すっ、すると、キミは、□□が初めての男だったということかねっ?」
顔中を、まっ赤に染める、美恵子。
「きっ、きっ、キミは、もうつい最近まで、しょっ、処女っ、だったということかね?」
男たちを目の前に、小ぶりな耳たぶや、涼しげなうなじまで、熱く、熱く紅潮していく
美恵子。執拗、かつ威圧的な二人がかりの尋問で、彼女のプライバシーの殻に、確実に、
ひびが入り始めていた。
「支店長・・・」
「くく・・・これは、私たちが期待した以上、だったようだな・・・」
支店長が、ついに、その黒く大きなイスから立ち上がる。
笑顔。ひどく無機的な、それゆえに、その奥に得体の知れない感情のうずまきを想わせ
る笑顔で、デスクを回り込む。
「し、支店長・・・?」
美恵子との距離を、削ってくる。
「最近の女というのはどうもかなわない。若いうちから化粧やアクセサリーで飾りたて
たり、考え方に節操がなかったり、逆に男に対してサバサバと気取ってみたり・・・」
「え、え、ちょ、」
「それに比べて、君は、淑女、そのものだ・・・」
「支店長、」
「いや、その恥じらいの表情は、清楚な少女だよ・・・」
「ハァ、ハァ、かわいいお尻だなァ、」
「やっ!次長っ・・・!」
びくんっ!美恵子のカラダが跳ねた。背後から次長が、スカートのまるみに触れてきた
のだ。
「やだっ、やっ、やめてくださいっ・・・!」
褐色の手のひらと手のひらが、なでまわる。なだらかな曲線を尊重しながら、つかず離
れず、ポリエステルの滑らかな感触を、たいらげていく。うなじで、鼻息、荒ぶっててい
く。
「ははっ、8時間、あのクッションに座り続けた、ぬくもり、ん?仕事上がりの、汗のニ
オイ、両の手から伝わってくるようだよ、ん?美恵子クンっ?」
「次長っ、いやっ、支店長、どうして、」
それなのに、直立の姿勢だけは崩すまいとする美恵子。
まだその脳裏には、最初の支店長のコトバが貼り付いていた。スカートの前で、手と手
を握り締め、上司の”品評”に、必死に耐えている。まるっこい肩が、シャープな背中が、
ゆるやかにくびれた腰が、はかなく左右にゆらめく。残像のように、勤務直後の女の体臭
が、細い吐息とともにたゆたった。
「私たちはね、ずっと、思っていたんだよ。実直で、貞淑で、一途で、そんな、君のよう
な女性をね・・・」
「美恵子くんっ、あぁ美恵子くんっ、」
「私たちの肉棒で、ボロボロに踏みにじりたいってね・・・」
「えっ・・・え、あ・・・え・・・」
肉棒・・・
低い声が、美恵子の鼓膜に、響き渡った。
表情が、また一段と、少女のそれに変貌していく。
幼い頃から今に至るまで、異性と手をつなぐことすら、大きなできごとだった、そんな
美恵子でも、目の前の、怪しくゆるんだ口元から振りかけられた言葉の意味は、わかって
いた。
肉棒・・・肉棒は、いやらしい言葉・・・
美恵子の思考回路は、ただそれだけでダウン寸前に追い込まれていく。津波のような、
羞恥が、止めどなく襲う、か弱い身体を、さらっていく・・・
「おほっ、なかなかプリプリしたお肉だねェ」
「うっ!」
とうとう、次長の指が境界線を侵犯した。もにゅ、もにゅ、もにゅ、曲面の奥に、次々
と、十匹の”イモムシ”が、めりこんでいく。
「次長!やめてくださいっ!」
”虫が湧いた”感覚で、理性を取り返した美恵子。ようやくその両手を使って、汚らし
い魔の手を振り払おうとする。が、
「おっと、そう激昂するな」
「あぁっ、支店長までっ、」
こともなげに、その両手を支店長の左手が取り上げる。澄んだ光沢の黒髪に右手をまわ
し、鼻先で支店長は言葉をつなげる。
「いいか、この銀行から追い出されたくないなら、今夜、私たちを、受け入れるんだ・・」
「やっ、いやっ・・・」
”イモムシ”の半分が、太股に移動を開始する。抵抗できない分、はね上がる悪寒のボ
ルテージ。スカートの裾を、じりじり上へ追いやりながら、5匹がストッキングの上で
激しく踊りだす。
「やっ!いやですっ!こんなっ、こんな、セクハラですっ!」
「あぁっ、美恵子クン、私はね、どうせセクハラするんなら、キミみたいな清楚な女性に
たっぷりセクハラしたかったんだ」
「なっ、次長、こんなの、私、告発しますっ」
「ほほー、自分の”お触り体験”を公表するのと、自分の人生を真っ暗にするのと、キミ
はどっちがいいのかナ?」
「クビになったって、構いませんっ、こんなのひどすぎる、私、このこと言いますっ」
「キミの言い分と私たちの言い分、どっちに信憑性があるんだろうねェ。それに、キミだ
って少し、欲情してきたんじゃないのかね?ん?本当は生まれて初めて男を知ったばかり
で、胸の奥ではウズウズしてるんだろう?」
「いやっ!放してっ、声っ、出しますよ、大声で叫びますよっ?」
「ふン、構わんさ、ここは3階だ。2階の融資のヤツ等には聞こえんさ。稟議書くのに没
頭してるよ」
「助けてっ!助けてぇぇぇ!!」
「ふぅ、困った子だ・・・」
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