小説(転載) 『誕生日の素敵なプレゼント』 第二部 3/8
近親相姦小説
あれから二十年。間もなく成人に達するところまで成長した息子が目の前に
いた。賢の顔立ちは圭子に瓜二つ。もし道ですれ違ったとしても間違いようが
無い位だった。
「植野くんのお父さんは何をしてるの。」
賢治がそれとなく圭子の現在を探り始めた。
「いえ、僕には父親がいないんです。祖父母の反対で一緒になれなかったと
母が言ってました。」
「お母さんは。」
「母は今、翻訳とか通訳の仕事をしています。」
「英語。」
「いえ、フランス語です。僕が生まれたときはベルギーに住んでいたので。」
「ベルギーね。」
賢治は祝電の発信元がベルギーだったことを思い出した。
「ところで、弥生から聞いたんだけど、二人のデュエット、その内聞かせて
よ。」
「は、はい。喜んで。」
「お母さんは歌、歌わないの。」
「たまに歌うこともあります。嫌いじゃないみたいです。」
「その内、四人でコーラス出来たら楽しいだろうな。」
「ええ。母にも聞いておきます。」
「うん。」
賢治と賢のやり取りを弥生がジッと見つめていた。勘の鋭い弥生は何かに気
付いたようだった。賢と別れた二人が家に戻ろうとすると、弥生が賢治の手を
強く引っ張った。
「ねえ、パパ。今日はこのまま帰りたくない。」
「何だ、急に。」
「まだ九時でしょ。」
弥生が駅とは反対の方角に向かって歩き始めた。
「おい、今日はやめとこう。」
「駄目。」
賢治はどこかで賢と出くわさないか、それが気になって仕方が無かったが、
弥生はお構いなしに裏通りに入っていった。飲屋街を通り過ぎるとその先には
ホテルのネオンが幾つも輝いていた。弥生が何度も後ろを振り返り、人通りが
絶えたのを確認してから一軒のホテルに賢治を引っ張り込んだ。弥生自身も賢
のことが気になっていたらしい。
部屋に入った弥生が無言で服を脱ぎ捨て、煮え切らない賢治を素早く裸にし
てしまった。風呂も使わず強引にむしゃぶりついてきた弥生を賢治が抱きしめ
た。そのまま賢治をベッドに押し倒した弥生が自分の方から強引に一つになっ
てきた。
「ねえ、パパ。どう言うことか聞かせて。」
「え、何の話だ。」
「パパ、賢のこと知ってるんでしょう。」
「いや、会ったのは今日が初めてだよ。」
「嘘。」
「いや、本当だ。正真正銘の初対面さ。」
「でも、何かあるんでしょう。今日のパパ、凄く変だった。」
弥生はその鬱憤を身体で晴らそうとでもするように腰を乱暴に擦り付けて来
た。
「ちょっと待て。こう言うのパパ嫌いだ。話すからジッとしなさい。」
「何もかも話してくれる。」
「パパが知ってる範囲で全部話すよ。」
「うん、ならいいわ。」
弥生の動きが鎮まったところで賢治が重い口を開いた。
「賢は俺の息子だ。多分、間違いないだろう。」
「パパの息子って、私の兄さんって言う意味。」
「うん。母親はママじゃないが。」
賢治が手短に圭子との経緯を話して聞かせた。
「へえ、そんなことがあったんだ。でも、パパ、何でママと結婚したの。子
供まで出来ちゃってたのに。どうしてその圭子さんって人を追い掛けなかった
の。」
「追い掛けたさ。夏休みに休暇取ってヨーロッパまで捜しに行ったんだ。」
「それでも見つからなかったの。」
「うん。結局、圭子の方が会おうとしないんなら諦めるしかないかなって。」
「でもさぁ、一年くらいで簡単に諦められちゃうもん。それともママが美人
だから気が変わったの。」
「タイプは違うけど圭子もママに負けない美人だよ。そうだなあ、二人の若
い頃思い出して比べてみても、今の弥生が一番かな。」
「またまたぁ。娘喜ばしてどうするの。」
口ではそう言いながらも弥生は満更でもない様子だった。少しだけ弥生の機
嫌が直ってきた。
「パパが簡単に圭子さんって人諦めちゃったのは不満だけど、別れてなかっ
たら私は生まれて来なかったのよね。うーん、複雑な気分。」
「簡単に諦めた訳じゃないんだよ。」
「でもさあ、賢のお母さんがその圭子さんだとすると、ちょっと微妙ね。い
ずれ会うことになるでしょ。」
「うん。会わないって訳にも行かないだろう。こうなったら、圭子の両親が
そこまでして、なぜ俺達を強引に引き離したのか、その理由が知りたくなった
よ。」
「パパ、その前にすることがあるんじゃないの。」
「何だ。」
「ママのこと、このまま放っておくの。」
「ああ、そのことか。」
「私、ママの浮気の証拠、しっかり集めておいたよ。パパとこうなってから
すぐに興信所に頼んだの。写真も撮ってあるって。」
「そんなことまでしてたのか。」
「うん。パパ、そろそろ潮時だと思うよ。もう、どうやったって元には戻れ
ないんでしょう。」
「まず無理だな。」
「だったらパパがきれいな内に別れた方がいいと思うよ。」
賢治が苦笑した。
「パパのどこがきれいなんだ。」
賢治が下から腰を突き上げた。弥生が咽の奥でククッと笑った。
「私は別。だって、パパの娘でしょ。」
「余計悪い。」
「そんなこと言わないで。」
賢治が元気を回復したので弥生がまた腰を動かし始めた。さっきと違って落
ち着いた動きに今度は賢治も下から優しく応じた。
「気持ちいい。」
弥生が目を細めて腰を震わせた。
「上になろうか。」
「ううん。このままがいい。何かこうしてるとパパが本当に自分のものだっ
て実感するんだもん。」
「パパはずっと弥生のものさ。弥生は俺のものじゃないけど。」
「駄目、弥生もパパのもの。」
「賢がいるだろう。」
「そうだね。じゃあ、半分だけパパのもの。」
「困った奴だ。」
「パパの方の残り半分はどうするの。」
「そんなの、圭子に会って見なけりゃ分からないさ。」
「パパの方はそれでもいいの。」
「圭子がうんって言えばな。」
「ちょっとは先が見えてきたかな。」
「何だ、先って。」
「ううん、こっちの話し。でも、パパにとっても悪い話じゃないと思うよ。」
弥生が腰を前後にきつく擦り付けて来た。弥生は何があろうとも賢治とのこ
の時間を無くすつもりはないようだった。
翌週、弥生が興信所からの報告書を賢治に見せた。添えられている写真を見
て、賢治は妻の不倫相手が誰なのかを初めて知った。一緒にホテルから出てく
るその男は賢治の旧友、青沼だった。以前は家族ぐるみで行き来したいた時期
もあったのだが、ここ数年、顔を合わせたこともない。恐らく二人がそう言う
関係になったので自然と疎遠になってしまったのだろう。賢治は依頼主の名前
を自分に書き換えさせ、その書類を妻の前に突き付けた。
「もう、お仕舞いにしようじゃないか。」
賢治の言葉に美子が黙ってうなだれた。
「青沼の方も最近カミさんと別れたそうじゃないか。だったら、お前にも受
け皿があることだし、この辺で区切りをつけないか。」
「あなたの方はどうなさるの。」
「さあ、暫くは独りになってゆっくり考えるさ。弥生のこともあるしな。」
「最近、随分弥生と仲がおよろしいのね。」
賢治にはそれが皮肉に聞こえた。
「いい加減に仮面夫婦やめたらって言い出したのは弥生だよ。あいつにもど
うやら恋人が出来たようだし。それに、この調査も最初は弥生が俺の名前で依
頼したんだ。」
「そのようね。弥生もここ暫くで随分女っぽくなったわ。ところで、弥生は
どうするって言ってるの。弥生が私のこと調べた位だから、あなたと一緒って
ことね。」
「その方がお前も身軽でいいだろう。青沼の方にも確か子供が二人いた筈だ
し。」
「三人よ。分かりました。それで、あなたの方の条件は。」
「家は俺と弥生が使わせて貰う。預金はお前が全部持ってっていい。まあ、
大した額じゃないけどな。別に、青沼から慰謝料取ろうなんて気は全く無いよ。
百パーセントお前達が悪いなんて言わないから。」
「随分寛大なのね。もしかして、あなたにもいい人が出来たんじゃないの。」
「そんなのがいたら、とっくに調べてるだろ。」
「ええ。あなたが最近やたら元気なんで調べようかと思ってたくらい。ま、
その辺は今更詮索しようとも思いません。でも、最後に弥生と話をさせて下さ
い。その上で改めてご返事します。」
弥生の返事は当然決まっていた。それを受けて美子が書類に判を押し、全て
が終わった。賢治は約束通り定期預金など全てを解約して美子に渡した。弥生
の学費等これからの出費もそれなりあったが、家のローンが終わっているので
当座の心配は無かった。
(4)へつづく・・・
いた。賢の顔立ちは圭子に瓜二つ。もし道ですれ違ったとしても間違いようが
無い位だった。
「植野くんのお父さんは何をしてるの。」
賢治がそれとなく圭子の現在を探り始めた。
「いえ、僕には父親がいないんです。祖父母の反対で一緒になれなかったと
母が言ってました。」
「お母さんは。」
「母は今、翻訳とか通訳の仕事をしています。」
「英語。」
「いえ、フランス語です。僕が生まれたときはベルギーに住んでいたので。」
「ベルギーね。」
賢治は祝電の発信元がベルギーだったことを思い出した。
「ところで、弥生から聞いたんだけど、二人のデュエット、その内聞かせて
よ。」
「は、はい。喜んで。」
「お母さんは歌、歌わないの。」
「たまに歌うこともあります。嫌いじゃないみたいです。」
「その内、四人でコーラス出来たら楽しいだろうな。」
「ええ。母にも聞いておきます。」
「うん。」
賢治と賢のやり取りを弥生がジッと見つめていた。勘の鋭い弥生は何かに気
付いたようだった。賢と別れた二人が家に戻ろうとすると、弥生が賢治の手を
強く引っ張った。
「ねえ、パパ。今日はこのまま帰りたくない。」
「何だ、急に。」
「まだ九時でしょ。」
弥生が駅とは反対の方角に向かって歩き始めた。
「おい、今日はやめとこう。」
「駄目。」
賢治はどこかで賢と出くわさないか、それが気になって仕方が無かったが、
弥生はお構いなしに裏通りに入っていった。飲屋街を通り過ぎるとその先には
ホテルのネオンが幾つも輝いていた。弥生が何度も後ろを振り返り、人通りが
絶えたのを確認してから一軒のホテルに賢治を引っ張り込んだ。弥生自身も賢
のことが気になっていたらしい。
部屋に入った弥生が無言で服を脱ぎ捨て、煮え切らない賢治を素早く裸にし
てしまった。風呂も使わず強引にむしゃぶりついてきた弥生を賢治が抱きしめ
た。そのまま賢治をベッドに押し倒した弥生が自分の方から強引に一つになっ
てきた。
「ねえ、パパ。どう言うことか聞かせて。」
「え、何の話だ。」
「パパ、賢のこと知ってるんでしょう。」
「いや、会ったのは今日が初めてだよ。」
「嘘。」
「いや、本当だ。正真正銘の初対面さ。」
「でも、何かあるんでしょう。今日のパパ、凄く変だった。」
弥生はその鬱憤を身体で晴らそうとでもするように腰を乱暴に擦り付けて来
た。
「ちょっと待て。こう言うのパパ嫌いだ。話すからジッとしなさい。」
「何もかも話してくれる。」
「パパが知ってる範囲で全部話すよ。」
「うん、ならいいわ。」
弥生の動きが鎮まったところで賢治が重い口を開いた。
「賢は俺の息子だ。多分、間違いないだろう。」
「パパの息子って、私の兄さんって言う意味。」
「うん。母親はママじゃないが。」
賢治が手短に圭子との経緯を話して聞かせた。
「へえ、そんなことがあったんだ。でも、パパ、何でママと結婚したの。子
供まで出来ちゃってたのに。どうしてその圭子さんって人を追い掛けなかった
の。」
「追い掛けたさ。夏休みに休暇取ってヨーロッパまで捜しに行ったんだ。」
「それでも見つからなかったの。」
「うん。結局、圭子の方が会おうとしないんなら諦めるしかないかなって。」
「でもさぁ、一年くらいで簡単に諦められちゃうもん。それともママが美人
だから気が変わったの。」
「タイプは違うけど圭子もママに負けない美人だよ。そうだなあ、二人の若
い頃思い出して比べてみても、今の弥生が一番かな。」
「またまたぁ。娘喜ばしてどうするの。」
口ではそう言いながらも弥生は満更でもない様子だった。少しだけ弥生の機
嫌が直ってきた。
「パパが簡単に圭子さんって人諦めちゃったのは不満だけど、別れてなかっ
たら私は生まれて来なかったのよね。うーん、複雑な気分。」
「簡単に諦めた訳じゃないんだよ。」
「でもさあ、賢のお母さんがその圭子さんだとすると、ちょっと微妙ね。い
ずれ会うことになるでしょ。」
「うん。会わないって訳にも行かないだろう。こうなったら、圭子の両親が
そこまでして、なぜ俺達を強引に引き離したのか、その理由が知りたくなった
よ。」
「パパ、その前にすることがあるんじゃないの。」
「何だ。」
「ママのこと、このまま放っておくの。」
「ああ、そのことか。」
「私、ママの浮気の証拠、しっかり集めておいたよ。パパとこうなってから
すぐに興信所に頼んだの。写真も撮ってあるって。」
「そんなことまでしてたのか。」
「うん。パパ、そろそろ潮時だと思うよ。もう、どうやったって元には戻れ
ないんでしょう。」
「まず無理だな。」
「だったらパパがきれいな内に別れた方がいいと思うよ。」
賢治が苦笑した。
「パパのどこがきれいなんだ。」
賢治が下から腰を突き上げた。弥生が咽の奥でククッと笑った。
「私は別。だって、パパの娘でしょ。」
「余計悪い。」
「そんなこと言わないで。」
賢治が元気を回復したので弥生がまた腰を動かし始めた。さっきと違って落
ち着いた動きに今度は賢治も下から優しく応じた。
「気持ちいい。」
弥生が目を細めて腰を震わせた。
「上になろうか。」
「ううん。このままがいい。何かこうしてるとパパが本当に自分のものだっ
て実感するんだもん。」
「パパはずっと弥生のものさ。弥生は俺のものじゃないけど。」
「駄目、弥生もパパのもの。」
「賢がいるだろう。」
「そうだね。じゃあ、半分だけパパのもの。」
「困った奴だ。」
「パパの方の残り半分はどうするの。」
「そんなの、圭子に会って見なけりゃ分からないさ。」
「パパの方はそれでもいいの。」
「圭子がうんって言えばな。」
「ちょっとは先が見えてきたかな。」
「何だ、先って。」
「ううん、こっちの話し。でも、パパにとっても悪い話じゃないと思うよ。」
弥生が腰を前後にきつく擦り付けて来た。弥生は何があろうとも賢治とのこ
の時間を無くすつもりはないようだった。
翌週、弥生が興信所からの報告書を賢治に見せた。添えられている写真を見
て、賢治は妻の不倫相手が誰なのかを初めて知った。一緒にホテルから出てく
るその男は賢治の旧友、青沼だった。以前は家族ぐるみで行き来したいた時期
もあったのだが、ここ数年、顔を合わせたこともない。恐らく二人がそう言う
関係になったので自然と疎遠になってしまったのだろう。賢治は依頼主の名前
を自分に書き換えさせ、その書類を妻の前に突き付けた。
「もう、お仕舞いにしようじゃないか。」
賢治の言葉に美子が黙ってうなだれた。
「青沼の方も最近カミさんと別れたそうじゃないか。だったら、お前にも受
け皿があることだし、この辺で区切りをつけないか。」
「あなたの方はどうなさるの。」
「さあ、暫くは独りになってゆっくり考えるさ。弥生のこともあるしな。」
「最近、随分弥生と仲がおよろしいのね。」
賢治にはそれが皮肉に聞こえた。
「いい加減に仮面夫婦やめたらって言い出したのは弥生だよ。あいつにもど
うやら恋人が出来たようだし。それに、この調査も最初は弥生が俺の名前で依
頼したんだ。」
「そのようね。弥生もここ暫くで随分女っぽくなったわ。ところで、弥生は
どうするって言ってるの。弥生が私のこと調べた位だから、あなたと一緒って
ことね。」
「その方がお前も身軽でいいだろう。青沼の方にも確か子供が二人いた筈だ
し。」
「三人よ。分かりました。それで、あなたの方の条件は。」
「家は俺と弥生が使わせて貰う。預金はお前が全部持ってっていい。まあ、
大した額じゃないけどな。別に、青沼から慰謝料取ろうなんて気は全く無いよ。
百パーセントお前達が悪いなんて言わないから。」
「随分寛大なのね。もしかして、あなたにもいい人が出来たんじゃないの。」
「そんなのがいたら、とっくに調べてるだろ。」
「ええ。あなたが最近やたら元気なんで調べようかと思ってたくらい。ま、
その辺は今更詮索しようとも思いません。でも、最後に弥生と話をさせて下さ
い。その上で改めてご返事します。」
弥生の返事は当然決まっていた。それを受けて美子が書類に判を押し、全て
が終わった。賢治は約束通り定期預金など全てを解約して美子に渡した。弥生
の学費等これからの出費もそれなりあったが、家のローンが終わっているので
当座の心配は無かった。
(4)へつづく・・・
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