小説(転載) 相姦旅行8/18
近親相姦小説
旅行
三週間後、康三との離婚が成立した姉ちゃんが家に挨拶に来た。おばさんと木村が一緒
だった。
康三は始めのうち離婚に同意しなかったそうだが、弁護士が民事訴訟を起こすと脅しを
掛けたら、康三は急に態度を変えて離婚に同意したそうだ。
慰謝料も請求どおり支払うことを約束させ、一昨日、正式に離婚が成立したという。
一通りの挨拶が済むと旅行の話になった。
「今回はあたしもお供させてもらいたいんですけど、いいですか?」
姉ちゃんも一緒に行きたいらしい。
「ぜひご一緒したいわ。大勢で行ったほうが楽しいですものね。」
来週に迫った旅行の話で女たちは持ちきりだ。
僕は木村の耳に口を寄せて、
「おい、姉ちゃんが一緒に行ったら計画が狂わないか?」
と聞いてみたが、木村は、
「姉ちゃんには今度の計画を話してあるから大丈夫だよ。お前はおばさんとやることだ
け考えてればいいんだ。姉ちゃんもお前のこと応援してくれるってよ。」
と軽く言うが、僕は姉ちゃんともやりたいので、そのことを言うと、
「お前も好きだなあ。向こうに行けば、どこででもできるから、心配いらないよ。それ
より、一晩しか泊まれないんだから、おばさんとやれるようになる方が重要なんじゃ
ないか?まあ、俺に任せておけよ。」
木村はそう言って愉快そうに笑った。
旅行の当日、午前6時に木村たちが迎えに来た。
「おはようございます。木村観光です。お迎えにまいりました。」
木村が陽気な声を掛けてきたので外に出ると、家の前に姉ちゃんのエスティマが停まっ
ていた。運転席から降りてきた姉ちゃんが
「後ろに乗って。」
と言ってスライドドアを開けてくれた。助手席に知らない女の人が乗っている。
「あたしの親友の美由紀ちゃん、一緒に行くことになったの。宜しくね。」
みんなが乗り込むと姉ちゃんが女の人を紹介した。
「大蔵美由紀です。和子さんからお誘いを受けたので、ご一緒させていただくことにな
りました。宜しくお願いします。」
美由紀さんは姉ちゃんの高校時代の同級生で、そう言えば前に一度木村んちで見かけた
ことがあったが、“こんなにきれいな人だったかなあ”と思うほど目鼻立ちの整った美
人だ。姉ちゃんもきれいだけど、“美人”というより“可愛らしい”という方が合って
いる。母ちゃんとおばさんが真ん中の席に座り、僕と木村が一番後ろの席に座った。
大井松田から東名高速に乗った。姉ちゃんは運転が上手で、停まるときもショックを感
じさせない。とろとろ走っている車をすいすい抜き、追い上げてくる車があれば左に避
けて先に行かせるから、安心して乗っていられる。
「母ちゃんより運転うまいな。」と言うと、
「そんなことないよ。普段はすっごくぶっ飛ばすんだぜ。俺なんか何度死にそうな目に
会ったか知れやしないんだから。」
木村がおどけた調子で言う。
「義男、聞こえたわよ。いつも安全運転してるじゃない。」
そんな会話を交わしながら富士宮で東名高速を降りた。
139号線を通って下部に向かった。朝霧高原の近くで動物が道路を横切り、危うく轢き
そうになった。
「あれ、狸じゃない?」
美由紀さんが目ざとく見つけて言った。
野良犬みたいにぼさぼさの毛で、尻尾が大きかったから狸かも知れない。
左から飛び出てきて、右側の草むらに消えて行ったが、かなり速かった。
オームのサティアンがあった九一色村付近は荒涼とした風景で、紅葉も疎らだったが、
本栖湖に近づくにつれて黄色や朱色の紅葉が見られるようになった。
わいわい言いながら本栖湖に着いた。トイレ休憩してから下部に向かい、52号線に出て
甲府に向かった。
身延山か富士五湖に周遊するマイカーなのだろうか、富士川に沿った道は下ってくる車
が結構多い。
甲府南インターから中央高速に乗り、須玉インターで降りる。
ここから瑞垣山に向かう道に入り、曲がりくねった道を小1時間走った。
ラジウムラインなんて名前が付いているが、車がすれ違うのがやっとの道で、瑞垣湖と
いうダム湖を過ぎて更に山道を右に上がって行く。
増富温泉郷の看板が見えてくるあたりで、道の両側が燃えているような紅葉になり、僕
たちの顔も赤く染まったように見える。
途中の待避所で車を止め、みんなで記念写真を撮った。
足元の遥か下に谷川が流れ、対岸の崖の途中から小さな滝が流れ落ちている。息を呑む
ような景色と言うにはオーバーだが、それほど見ごたえのある景観だ。
山側の岩の間からちょろちょろと清水が湧き出していて、傍に柄杓が置かれている。
「冷たくておいしいわ。うちに持って帰りたいくらい。」
おばさんが一口飲んで言ったので、みんな代わる代わる飲んだ。
かなり早いペースで走ってきたのでまだ11時を過ぎたばかりだが、朝が早かったからお
腹が空いてきた。
「姉ちゃん、腹減ったんだけど、昼飯まだ?」
木村がぼやくように言う。僕もお腹が鳴っている。
「もうすぐよ。おいしいバーべキューが待ってるんだから、もう少し我慢して。」
「どこで食べるの?」
おばさんが訊いた。
「不老閣に頼んであるの。さあ、乗って。あと10分くらいだから。」
みんなが乗り込むと姉ちゃんは車をゆっくりスタートさせた。
まるで紅葉のトンネルのようになった山道を、右に左にハンドルを切り、小広く開けた
ところに掛かった橋を渡ると国民温泉地に指定された増富温泉郷で、奥の方の川岸に建
った質素な旅館の前で車が止まった。前に一度木村んちのおじさんに連れてきてもらっ
たことがある。不老閣という旅館だ。
ここの経営者は昔鍼灸師をしていたそうで、ラジウム温泉が身体にいいということでこ
こに旅館を建てたと聞いたことがある。湯治のお客も泊めるそうで、自炊場もあり、僕
たちは、ここの庭でバーベキューをやることになった。
キャンプ場のような雰囲気ではないが、お腹が空いているので文句は言えない。
自炊場の前からは岩を刻んだ階段で川に下りられるようになっていて、何人かの泊り客
が渓流釣りをやっている。声を掛けると、
「ぜんぜん釣れないよ。」
と言った。バーベキューの施設と言っても、コンクリートのU字溝を3個並べただけの
もので、その上に鉄の網を載せるようになっている。古新聞を丸め、薪を並べて火をつ
けたが、製材所から拾ってきたような薪は水分を含んでいて火付きが悪い。
煙ばっかりで一向に火がつかない。何度か火をつけ直し、ようやく火がまわった頃、頭
を手拭で包んだおばさんが野菜や肉を載せた大きなお盆を持ってきた。
「うめえごと、火いついたでねえの。あたしらやっても、うめごとつがねえのよね。」
40歳くらいの健康そうなおばさんは、妙なイントネーションで言った。
もんぺを穿いて、素足にサンダルを突っかけている。
地元の人がやっても火付きが悪いっていうんだから、僕たちはたいしたもんだ。
「尻はでかいけど、おまんこしたくはないな。なんか、臭そう。」
木村が小声で言ったので僕は噴き出してしまった。
「やりがたさ、わがってべけど、火傷しねように、気いつけてね。」
おばさんが戻ってゆくと、
「“やりかた”だってよ。刺激的な言葉だと思わないか?」
木村がまた変なことを言うので、僕は声をたてて笑ってしまったが、母ちゃんとやるこ
とを思って顔が赤くなった。
姉ちゃんたちが焼いてくれる肉や野菜を腹いっぱい食べてから、木村と僕は川に下りて
みた。
奇岩
この辺りの温泉は赤茶けた鉄錆みたいなお湯で、温度が低くてそのままでは長く入って
いられない。沸かさないと入れないので、冷泉とか鉱泉というらしいが、川の淵に熱い
湯が沸いているところがあるという。
「中山、ここだよ。けっこう熱いぜ。」
木村が指し示したところは大きな岩の裂け目のようなところで、岩の前に行っただけで
熱さが感じられるほどだ。裂け目の中は赤錆色になっていて、透明な湯がちょろちょろ
と湧き出している。手を入れたらかなり熱かった。
「こんなに熱い湯が沸いているのに、温泉に使わないのはもったいな。どうしてなんだ
ろう?」
「俺も不思議に思って前に不老閣のおじさんに訊いたことがあるんだ。そしたら、“こ
こは昔から冷泉ということになってるんだからいいんだよ”って言うんだよ。変わっ
てるだろう。でも、最近は考えが変わったみたいでさ、さっきおじさんが言ってたけ
ど、来年あたり湯口を広げて温泉を引き込もうと思ってるんだって。」
「そうすると、来年からは“熱い温泉”に入れるわけか。」
「そういうことらしい。ところでこの岩だけどさ、向こうから見ると、おマンコみたい
に見えるんで、“お目子岩”って言うんだ。」
木村は得意げに言う。
「本当にそんな名前なの?」
僕は少し離れて眺めて見た。たしかに卑猥な形をしている。
岩の露出している部分が花びらのような形をしており、内側が赤っぽく濡れていて外側
の襞のような部分が黒ずんで見える。膣口のように見える湯口から透明な湯がちょろち
ょろと流れ落ちる様は愛液がにじみ出ているようにも見え、下の方の赤黒く変色してい
るところなんか、まるで肛門みたいだ。対岸から見れば、おまんこそっくりに見えるか
も知れない。
「俺が勝手につけた名前だけど、よく似てるだろう?」
「すごく似てるな。写真に撮っておきたいくらいだよ。」
そんな会話をしていると、
「義男、智ちゃん、写真を撮るから、そろそろ上がってきて。」
と姉ちゃんが僕たちを呼ぶ声が聞こえた。
「よし、それじゃあ、そろそろ仕掛けを始めるから、お前は、できるだけおばさんの注
意を俺たちに向けるようにしろよ。」
「わかった。頼むぜ。」
僕たちは岩の階段を上がりながら“計画”の最終打合せをした。
広場には記念撮影用の台が用意され、前列中央に母ちゃんとおばさん、後列右から姉ち
ゃん、木村、僕、美由紀さんの順番に並んだ。これも計画のひとつだ。
姉ちゃんがカメラを調節して自動シャッターのボタンを押し、急いで木村の隣に立った
とき、木村は、おばさんの肩に置いていた左手を、襟の隙間から胸の中に滑らせたのが
見えたので、僕は母の左肩を軽く突付き、母がおばさんの方に顔を向けるように仕向け
た。そのときシャッターが下りる音がしてフラッシュランプがピカッと光った。
「義男ったら、だめじゃない。動いちゃったわよ。もう一度撮るからね。」
姉ちゃんがそう言って再びカメラのアングルを調節し、シャッターボタンを押して戻っ
てきたが、今度はちゃんと撮影できた。
僕たちは荷物をまとめて車に乗り込み、僕たちの宿泊する“岩の湯館”に向けて出発し
た。橋を渡ったところで車を止めてもらい、姉ちゃんからカメラを借りて“おめこ岩”
を撮影した。角度を変えて3枚撮り、再び車に乗り込んですぐに発車した。
川の上流に向かってくねくねとした山道を5分ほど走り、橋を渡って対岸に移ってさら
に5分、瑞垣山への登山道を左に見て急な坂道を登りきると岩の湯館だ。
「さあ着いたわよ。みんな荷物を持って先に行ってて。駐車場に入れてくるから。」
僕たちは荷物を下ろして旅館の玄関に入った。午後1時を少し回ったところだ。
僕はこれまでに5回来ているし、母も2回来ている。木村んちは何回も来ているので、
初めて来たのは美由紀さんだけだ。
「さあさあ、上がってちょうだい。」
おばさんが僕たちを促す。
岩の湯館は元は別の人が経営していたが10年ほど前におばさんの実家が買い取り、人に
任せて運営しているそうだが、おばさんの実家は甲府の大地主だから、お客が来なくて
赤字でもやっていけるという。いつだったか、おばさんの兄さんという人に会ったこと
があるが、そのときおじさんは、
「いやあ、別荘を持ったつもりなら安いもんですよ。こんな山奥だから税金はほとんど
掛からないし、赤字分は本社の経費で落とせますから。」
と言って、楽しそうに笑っていたのを覚えている。僕はそのとき、“金持ちになろう”
と思ったものだ。
(9)へつづく・・・
三週間後、康三との離婚が成立した姉ちゃんが家に挨拶に来た。おばさんと木村が一緒
だった。
康三は始めのうち離婚に同意しなかったそうだが、弁護士が民事訴訟を起こすと脅しを
掛けたら、康三は急に態度を変えて離婚に同意したそうだ。
慰謝料も請求どおり支払うことを約束させ、一昨日、正式に離婚が成立したという。
一通りの挨拶が済むと旅行の話になった。
「今回はあたしもお供させてもらいたいんですけど、いいですか?」
姉ちゃんも一緒に行きたいらしい。
「ぜひご一緒したいわ。大勢で行ったほうが楽しいですものね。」
来週に迫った旅行の話で女たちは持ちきりだ。
僕は木村の耳に口を寄せて、
「おい、姉ちゃんが一緒に行ったら計画が狂わないか?」
と聞いてみたが、木村は、
「姉ちゃんには今度の計画を話してあるから大丈夫だよ。お前はおばさんとやることだ
け考えてればいいんだ。姉ちゃんもお前のこと応援してくれるってよ。」
と軽く言うが、僕は姉ちゃんともやりたいので、そのことを言うと、
「お前も好きだなあ。向こうに行けば、どこででもできるから、心配いらないよ。それ
より、一晩しか泊まれないんだから、おばさんとやれるようになる方が重要なんじゃ
ないか?まあ、俺に任せておけよ。」
木村はそう言って愉快そうに笑った。
旅行の当日、午前6時に木村たちが迎えに来た。
「おはようございます。木村観光です。お迎えにまいりました。」
木村が陽気な声を掛けてきたので外に出ると、家の前に姉ちゃんのエスティマが停まっ
ていた。運転席から降りてきた姉ちゃんが
「後ろに乗って。」
と言ってスライドドアを開けてくれた。助手席に知らない女の人が乗っている。
「あたしの親友の美由紀ちゃん、一緒に行くことになったの。宜しくね。」
みんなが乗り込むと姉ちゃんが女の人を紹介した。
「大蔵美由紀です。和子さんからお誘いを受けたので、ご一緒させていただくことにな
りました。宜しくお願いします。」
美由紀さんは姉ちゃんの高校時代の同級生で、そう言えば前に一度木村んちで見かけた
ことがあったが、“こんなにきれいな人だったかなあ”と思うほど目鼻立ちの整った美
人だ。姉ちゃんもきれいだけど、“美人”というより“可愛らしい”という方が合って
いる。母ちゃんとおばさんが真ん中の席に座り、僕と木村が一番後ろの席に座った。
大井松田から東名高速に乗った。姉ちゃんは運転が上手で、停まるときもショックを感
じさせない。とろとろ走っている車をすいすい抜き、追い上げてくる車があれば左に避
けて先に行かせるから、安心して乗っていられる。
「母ちゃんより運転うまいな。」と言うと、
「そんなことないよ。普段はすっごくぶっ飛ばすんだぜ。俺なんか何度死にそうな目に
会ったか知れやしないんだから。」
木村がおどけた調子で言う。
「義男、聞こえたわよ。いつも安全運転してるじゃない。」
そんな会話を交わしながら富士宮で東名高速を降りた。
139号線を通って下部に向かった。朝霧高原の近くで動物が道路を横切り、危うく轢き
そうになった。
「あれ、狸じゃない?」
美由紀さんが目ざとく見つけて言った。
野良犬みたいにぼさぼさの毛で、尻尾が大きかったから狸かも知れない。
左から飛び出てきて、右側の草むらに消えて行ったが、かなり速かった。
オームのサティアンがあった九一色村付近は荒涼とした風景で、紅葉も疎らだったが、
本栖湖に近づくにつれて黄色や朱色の紅葉が見られるようになった。
わいわい言いながら本栖湖に着いた。トイレ休憩してから下部に向かい、52号線に出て
甲府に向かった。
身延山か富士五湖に周遊するマイカーなのだろうか、富士川に沿った道は下ってくる車
が結構多い。
甲府南インターから中央高速に乗り、須玉インターで降りる。
ここから瑞垣山に向かう道に入り、曲がりくねった道を小1時間走った。
ラジウムラインなんて名前が付いているが、車がすれ違うのがやっとの道で、瑞垣湖と
いうダム湖を過ぎて更に山道を右に上がって行く。
増富温泉郷の看板が見えてくるあたりで、道の両側が燃えているような紅葉になり、僕
たちの顔も赤く染まったように見える。
途中の待避所で車を止め、みんなで記念写真を撮った。
足元の遥か下に谷川が流れ、対岸の崖の途中から小さな滝が流れ落ちている。息を呑む
ような景色と言うにはオーバーだが、それほど見ごたえのある景観だ。
山側の岩の間からちょろちょろと清水が湧き出していて、傍に柄杓が置かれている。
「冷たくておいしいわ。うちに持って帰りたいくらい。」
おばさんが一口飲んで言ったので、みんな代わる代わる飲んだ。
かなり早いペースで走ってきたのでまだ11時を過ぎたばかりだが、朝が早かったからお
腹が空いてきた。
「姉ちゃん、腹減ったんだけど、昼飯まだ?」
木村がぼやくように言う。僕もお腹が鳴っている。
「もうすぐよ。おいしいバーべキューが待ってるんだから、もう少し我慢して。」
「どこで食べるの?」
おばさんが訊いた。
「不老閣に頼んであるの。さあ、乗って。あと10分くらいだから。」
みんなが乗り込むと姉ちゃんは車をゆっくりスタートさせた。
まるで紅葉のトンネルのようになった山道を、右に左にハンドルを切り、小広く開けた
ところに掛かった橋を渡ると国民温泉地に指定された増富温泉郷で、奥の方の川岸に建
った質素な旅館の前で車が止まった。前に一度木村んちのおじさんに連れてきてもらっ
たことがある。不老閣という旅館だ。
ここの経営者は昔鍼灸師をしていたそうで、ラジウム温泉が身体にいいということでこ
こに旅館を建てたと聞いたことがある。湯治のお客も泊めるそうで、自炊場もあり、僕
たちは、ここの庭でバーベキューをやることになった。
キャンプ場のような雰囲気ではないが、お腹が空いているので文句は言えない。
自炊場の前からは岩を刻んだ階段で川に下りられるようになっていて、何人かの泊り客
が渓流釣りをやっている。声を掛けると、
「ぜんぜん釣れないよ。」
と言った。バーベキューの施設と言っても、コンクリートのU字溝を3個並べただけの
もので、その上に鉄の網を載せるようになっている。古新聞を丸め、薪を並べて火をつ
けたが、製材所から拾ってきたような薪は水分を含んでいて火付きが悪い。
煙ばっかりで一向に火がつかない。何度か火をつけ直し、ようやく火がまわった頃、頭
を手拭で包んだおばさんが野菜や肉を載せた大きなお盆を持ってきた。
「うめえごと、火いついたでねえの。あたしらやっても、うめごとつがねえのよね。」
40歳くらいの健康そうなおばさんは、妙なイントネーションで言った。
もんぺを穿いて、素足にサンダルを突っかけている。
地元の人がやっても火付きが悪いっていうんだから、僕たちはたいしたもんだ。
「尻はでかいけど、おまんこしたくはないな。なんか、臭そう。」
木村が小声で言ったので僕は噴き出してしまった。
「やりがたさ、わがってべけど、火傷しねように、気いつけてね。」
おばさんが戻ってゆくと、
「“やりかた”だってよ。刺激的な言葉だと思わないか?」
木村がまた変なことを言うので、僕は声をたてて笑ってしまったが、母ちゃんとやるこ
とを思って顔が赤くなった。
姉ちゃんたちが焼いてくれる肉や野菜を腹いっぱい食べてから、木村と僕は川に下りて
みた。
奇岩
この辺りの温泉は赤茶けた鉄錆みたいなお湯で、温度が低くてそのままでは長く入って
いられない。沸かさないと入れないので、冷泉とか鉱泉というらしいが、川の淵に熱い
湯が沸いているところがあるという。
「中山、ここだよ。けっこう熱いぜ。」
木村が指し示したところは大きな岩の裂け目のようなところで、岩の前に行っただけで
熱さが感じられるほどだ。裂け目の中は赤錆色になっていて、透明な湯がちょろちょろ
と湧き出している。手を入れたらかなり熱かった。
「こんなに熱い湯が沸いているのに、温泉に使わないのはもったいな。どうしてなんだ
ろう?」
「俺も不思議に思って前に不老閣のおじさんに訊いたことがあるんだ。そしたら、“こ
こは昔から冷泉ということになってるんだからいいんだよ”って言うんだよ。変わっ
てるだろう。でも、最近は考えが変わったみたいでさ、さっきおじさんが言ってたけ
ど、来年あたり湯口を広げて温泉を引き込もうと思ってるんだって。」
「そうすると、来年からは“熱い温泉”に入れるわけか。」
「そういうことらしい。ところでこの岩だけどさ、向こうから見ると、おマンコみたい
に見えるんで、“お目子岩”って言うんだ。」
木村は得意げに言う。
「本当にそんな名前なの?」
僕は少し離れて眺めて見た。たしかに卑猥な形をしている。
岩の露出している部分が花びらのような形をしており、内側が赤っぽく濡れていて外側
の襞のような部分が黒ずんで見える。膣口のように見える湯口から透明な湯がちょろち
ょろと流れ落ちる様は愛液がにじみ出ているようにも見え、下の方の赤黒く変色してい
るところなんか、まるで肛門みたいだ。対岸から見れば、おまんこそっくりに見えるか
も知れない。
「俺が勝手につけた名前だけど、よく似てるだろう?」
「すごく似てるな。写真に撮っておきたいくらいだよ。」
そんな会話をしていると、
「義男、智ちゃん、写真を撮るから、そろそろ上がってきて。」
と姉ちゃんが僕たちを呼ぶ声が聞こえた。
「よし、それじゃあ、そろそろ仕掛けを始めるから、お前は、できるだけおばさんの注
意を俺たちに向けるようにしろよ。」
「わかった。頼むぜ。」
僕たちは岩の階段を上がりながら“計画”の最終打合せをした。
広場には記念撮影用の台が用意され、前列中央に母ちゃんとおばさん、後列右から姉ち
ゃん、木村、僕、美由紀さんの順番に並んだ。これも計画のひとつだ。
姉ちゃんがカメラを調節して自動シャッターのボタンを押し、急いで木村の隣に立った
とき、木村は、おばさんの肩に置いていた左手を、襟の隙間から胸の中に滑らせたのが
見えたので、僕は母の左肩を軽く突付き、母がおばさんの方に顔を向けるように仕向け
た。そのときシャッターが下りる音がしてフラッシュランプがピカッと光った。
「義男ったら、だめじゃない。動いちゃったわよ。もう一度撮るからね。」
姉ちゃんがそう言って再びカメラのアングルを調節し、シャッターボタンを押して戻っ
てきたが、今度はちゃんと撮影できた。
僕たちは荷物をまとめて車に乗り込み、僕たちの宿泊する“岩の湯館”に向けて出発し
た。橋を渡ったところで車を止めてもらい、姉ちゃんからカメラを借りて“おめこ岩”
を撮影した。角度を変えて3枚撮り、再び車に乗り込んですぐに発車した。
川の上流に向かってくねくねとした山道を5分ほど走り、橋を渡って対岸に移ってさら
に5分、瑞垣山への登山道を左に見て急な坂道を登りきると岩の湯館だ。
「さあ着いたわよ。みんな荷物を持って先に行ってて。駐車場に入れてくるから。」
僕たちは荷物を下ろして旅館の玄関に入った。午後1時を少し回ったところだ。
僕はこれまでに5回来ているし、母も2回来ている。木村んちは何回も来ているので、
初めて来たのは美由紀さんだけだ。
「さあさあ、上がってちょうだい。」
おばさんが僕たちを促す。
岩の湯館は元は別の人が経営していたが10年ほど前におばさんの実家が買い取り、人に
任せて運営しているそうだが、おばさんの実家は甲府の大地主だから、お客が来なくて
赤字でもやっていけるという。いつだったか、おばさんの兄さんという人に会ったこと
があるが、そのときおじさんは、
「いやあ、別荘を持ったつもりなら安いもんですよ。こんな山奥だから税金はほとんど
掛からないし、赤字分は本社の経費で落とせますから。」
と言って、楽しそうに笑っていたのを覚えている。僕はそのとき、“金持ちになろう”
と思ったものだ。
(9)へつづく・・・
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