小説(転載) 紗枝の長い1日(中編)
近親相姦小説
題名 紗枝の長い1日(中編)
「初めて入ったレストランだったけど、美味しかったな」
満足そうに紗枝に告げる。紗枝が「ここにしよう」と入った洒落た店。
兄妹ふたりだけで外食するのも、初めてだった。
詳しくは訊ねなかったが、紗枝はたぶん彼氏とデートの時に来た事が
あるのだろう。いかにもカップルが好みそうな店だった。
既に外は暗い。兄は、紗枝が急に口数が少なくなった理由を考えていた。
特に気に障る事を話したつもりはないのだが…。
「紗枝、今日は楽しかったよ」
「…」
「ん?さっきから元気ないけど疲れたのか?」
ちらりと一瞬、助手席の紗枝の方を見る。
俯いて、もじもじしている妹の表情は、ハンドルを握る兄からは窺う
事が出来なかった。
「…お兄ちゃん」
顔は下に向けたまま、トーンが低い紗枝。かすれた声で口ごもる。
「あの…ね、ずっと考えていたんだけど…」
「うん?」
「お兄ちゃんに、彼女が出来ない理由を考えてたんだけど…」
紗枝はそんな事を真剣に考えていたのか。可愛い妹だ。紗枝の自分を心配
する気持ちは嬉しいと思うのだが、紗枝が自分に言いにくい程の『理由』
が何なのか気になった。
妹と今日1日一緒に過ごし、紗枝から付き合っている彼氏の話を何度も聞
かされたため、自分に彼女がいない寂しさを改めて思い知った。
心の奥に、かすかに彼氏への『嫉妬心』が生まれたのは事実だ。
紗枝のような思いやりのある女性と交際出来れば嬉しい。
今日は紗枝と楽しい休日を過ごし、妹とはいえ、女性と際どい猥談もして
内心胸が躍った。
「それで?」
「やっぱり…女を知らないって…ことかな。女性の前では緊張して無口に
なったり、怖い顔してると思うよ、お兄ちゃんって」
「うん。だろうな~。俺って女の子に気軽に話せないっていうのか、緊張
しちゃうんだよな」
「でね、お兄ちゃん…提案があるんだけど」
「提案って?」
「うん。問題は、お兄ちゃんが…その…経験していないってことだと思うの。
つまり…女の人を…抱いたことがないっていうことかな」
「!」
兄は正直痛いところを突かれた。だが、そんな事は妹に言われなくても自分
自身よく分かっている。焦っている自分の心を妹に見透かされているようで
居心地が悪い。
同僚の彼女を見て羨ましいといつも思う。女が欲しい。抱いてみたい。
紗枝に(あなたは童貞だから駄目なのよ!)と言われたようで、少々ムッと
する。男としてのプライドを爪で引っ掻かれた気がして無造作な口調になる。
車の運転も、心なしか荒くなった。
「紗枝が言いたい事はわかるけど、じゃあどうすればいいんだ?風俗にでも
行けってのか!」
「お兄ちゃん、怒らないでよ。ちゃんと前向いてて!危ないから」
「…」
「…んで、提案って何だよ!」
「うん…。お兄ちゃんが港に行きたかったのはデートスポットの『下見』が
したいからって。独りではなかなか足が向かないからって。そう言ったよね」
「ああ」
「凄く勇気のいることなんだけど…これから…ホテル…に…下見に行かない?」
「えっ?!」
「提案ってのは、ふたつあるんだけど、まずホテルに行くこと。もうひとつは
後で教えるから」
「ホテルって…お前!、兄妹でそんな所に入れる訳ないだろ!」
「いいじゃない、お兄ちゃん。これは下見なんだから」
「いくらなんでも…」
「なんでまずいの?これってお兄ちゃんのためよ。絶対に独りで行けないとこ
ろだからね。それに、こんな機会って、もう無いと思うけど」
「でも…」
「お兄ちゃんって、たぶん、困ると思うんだけどな~。初めてホテルに入る時
って。どうやって入るのかも知らないでしょ?そういうこと知ってると行動
に余裕が出てくるし、女の子も安心すると思うよ」
「…」
「それにお兄ちゃんだって、部屋の中がどうなってるのか知りたいでしょ?」
「…それは、そうだけど…」
「それともお兄ちゃん、私と何かしようとか思ってるの?」
「ば、馬鹿言うなよ!」
「でしょ!部屋の中でテレビでも見て、すぐ帰るだけだけなんだから、いいじゃ
ない。ね!」
「うん…でも…」
「もう、お兄ちゃん!優柔不断な態度って女に一番嫌われるんだからね!はっ
きりしてよ」
「ああ…分かったよ。分かりました!行くよ」
「そう!そういう態度がもてる男の第一歩になるんだからね!これも覚えてお
いてね。洒落たレストランの後は洒落たホテルってのもデートにはつきもの
なの!」
「あっ、そこの信号右に曲がって!。いい所知ってるから。本当言うと、私も
一度そのホテルに入ってみたかったの!」
紗枝は反芻する。
巧く事が運んだと思っていた。淫らな願望を叶えるために兄についた嘘。
この提案なら、もし兄が断っても自分のプライドは傷つかない。恥ずかしい思
いをしなくて済む。咄嗟に考えた『ホテルに行く理由』は、自分でもなかなか
良く出来た嘘だと思うが、あながち嘘とは呼べないかもしれない。
実の兄妹がホテルに入るなどという、本来なら絶対に許されない行為を正当化
した紗枝。「テレビを見て帰るだけ」と兄に言ったが、それだけで済むはずが
ない。本当は…兄に抱かれるのが目的なのだ。兄の肉体で感じたいのだ。
紗枝の心は、ブレーキを失った車のように兄への妄想に傾斜していった。
明るいネオンと重厚な造りの真新しいホテルが、フロントガラスの先に見えて
きた。「兄妹」という二文字が、異質な物に変わる分水嶺。
奈落へのスタートラインだった。
[終]
[2000/06/08]
「初めて入ったレストランだったけど、美味しかったな」
満足そうに紗枝に告げる。紗枝が「ここにしよう」と入った洒落た店。
兄妹ふたりだけで外食するのも、初めてだった。
詳しくは訊ねなかったが、紗枝はたぶん彼氏とデートの時に来た事が
あるのだろう。いかにもカップルが好みそうな店だった。
既に外は暗い。兄は、紗枝が急に口数が少なくなった理由を考えていた。
特に気に障る事を話したつもりはないのだが…。
「紗枝、今日は楽しかったよ」
「…」
「ん?さっきから元気ないけど疲れたのか?」
ちらりと一瞬、助手席の紗枝の方を見る。
俯いて、もじもじしている妹の表情は、ハンドルを握る兄からは窺う
事が出来なかった。
「…お兄ちゃん」
顔は下に向けたまま、トーンが低い紗枝。かすれた声で口ごもる。
「あの…ね、ずっと考えていたんだけど…」
「うん?」
「お兄ちゃんに、彼女が出来ない理由を考えてたんだけど…」
紗枝はそんな事を真剣に考えていたのか。可愛い妹だ。紗枝の自分を心配
する気持ちは嬉しいと思うのだが、紗枝が自分に言いにくい程の『理由』
が何なのか気になった。
妹と今日1日一緒に過ごし、紗枝から付き合っている彼氏の話を何度も聞
かされたため、自分に彼女がいない寂しさを改めて思い知った。
心の奥に、かすかに彼氏への『嫉妬心』が生まれたのは事実だ。
紗枝のような思いやりのある女性と交際出来れば嬉しい。
今日は紗枝と楽しい休日を過ごし、妹とはいえ、女性と際どい猥談もして
内心胸が躍った。
「それで?」
「やっぱり…女を知らないって…ことかな。女性の前では緊張して無口に
なったり、怖い顔してると思うよ、お兄ちゃんって」
「うん。だろうな~。俺って女の子に気軽に話せないっていうのか、緊張
しちゃうんだよな」
「でね、お兄ちゃん…提案があるんだけど」
「提案って?」
「うん。問題は、お兄ちゃんが…その…経験していないってことだと思うの。
つまり…女の人を…抱いたことがないっていうことかな」
「!」
兄は正直痛いところを突かれた。だが、そんな事は妹に言われなくても自分
自身よく分かっている。焦っている自分の心を妹に見透かされているようで
居心地が悪い。
同僚の彼女を見て羨ましいといつも思う。女が欲しい。抱いてみたい。
紗枝に(あなたは童貞だから駄目なのよ!)と言われたようで、少々ムッと
する。男としてのプライドを爪で引っ掻かれた気がして無造作な口調になる。
車の運転も、心なしか荒くなった。
「紗枝が言いたい事はわかるけど、じゃあどうすればいいんだ?風俗にでも
行けってのか!」
「お兄ちゃん、怒らないでよ。ちゃんと前向いてて!危ないから」
「…」
「…んで、提案って何だよ!」
「うん…。お兄ちゃんが港に行きたかったのはデートスポットの『下見』が
したいからって。独りではなかなか足が向かないからって。そう言ったよね」
「ああ」
「凄く勇気のいることなんだけど…これから…ホテル…に…下見に行かない?」
「えっ?!」
「提案ってのは、ふたつあるんだけど、まずホテルに行くこと。もうひとつは
後で教えるから」
「ホテルって…お前!、兄妹でそんな所に入れる訳ないだろ!」
「いいじゃない、お兄ちゃん。これは下見なんだから」
「いくらなんでも…」
「なんでまずいの?これってお兄ちゃんのためよ。絶対に独りで行けないとこ
ろだからね。それに、こんな機会って、もう無いと思うけど」
「でも…」
「お兄ちゃんって、たぶん、困ると思うんだけどな~。初めてホテルに入る時
って。どうやって入るのかも知らないでしょ?そういうこと知ってると行動
に余裕が出てくるし、女の子も安心すると思うよ」
「…」
「それにお兄ちゃんだって、部屋の中がどうなってるのか知りたいでしょ?」
「…それは、そうだけど…」
「それともお兄ちゃん、私と何かしようとか思ってるの?」
「ば、馬鹿言うなよ!」
「でしょ!部屋の中でテレビでも見て、すぐ帰るだけだけなんだから、いいじゃ
ない。ね!」
「うん…でも…」
「もう、お兄ちゃん!優柔不断な態度って女に一番嫌われるんだからね!はっ
きりしてよ」
「ああ…分かったよ。分かりました!行くよ」
「そう!そういう態度がもてる男の第一歩になるんだからね!これも覚えてお
いてね。洒落たレストランの後は洒落たホテルってのもデートにはつきもの
なの!」
「あっ、そこの信号右に曲がって!。いい所知ってるから。本当言うと、私も
一度そのホテルに入ってみたかったの!」
紗枝は反芻する。
巧く事が運んだと思っていた。淫らな願望を叶えるために兄についた嘘。
この提案なら、もし兄が断っても自分のプライドは傷つかない。恥ずかしい思
いをしなくて済む。咄嗟に考えた『ホテルに行く理由』は、自分でもなかなか
良く出来た嘘だと思うが、あながち嘘とは呼べないかもしれない。
実の兄妹がホテルに入るなどという、本来なら絶対に許されない行為を正当化
した紗枝。「テレビを見て帰るだけ」と兄に言ったが、それだけで済むはずが
ない。本当は…兄に抱かれるのが目的なのだ。兄の肉体で感じたいのだ。
紗枝の心は、ブレーキを失った車のように兄への妄想に傾斜していった。
明るいネオンと重厚な造りの真新しいホテルが、フロントガラスの先に見えて
きた。「兄妹」という二文字が、異質な物に変わる分水嶺。
奈落へのスタートラインだった。
[終]
[2000/06/08]
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