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小説(転載) 女というもの

官能小説
08 /29 2019
女というもの


俺と由実は、大学のサークルで知り合った友達だ。
何故か会ってすぐ意気投合したが、身体の関係に至ることの無い、正真正銘の友達だ。

大学を卒業した今でも、今日みたいに会ってはいろんなことを話している。
それは、互いに付き合っている相手が居ようと居まいとそうしている。
だから俺は、由実のことならなんでも知っているつもりでいた。

*****

「あのね・・・」
適当に酔いがまわってきた頃、由実が顔を斜めにして、俺の顔を覗きこむように話し出した。
ちょっと言いにくそうだが、本当は俺に言いたくて・・・いや告白、あるいは懺悔をしたくてたまらないという表情で。

「私ね・・・二人の人と付き合ってるの」
「え・・・」
俺は驚いた。
少なくても俺の知っている由実は隠し事のできないタイプで、二人の男と上手に付き合うなんてできないと思っていたからだ。

俺は由実に気付かれないよう息を整え、できるだけ冷静に問いただした。
「おまえ・・・そういうことできるタイプじゃないと思ってたけどな・・・どうしたんだよ」
由実は待っていたように、酔って潤んだ目で話し始めた。

*****

私、社内でずーっと片思いしてた人と付き合いはじめたばかりだったの。
ふふふ、このことは悟にも黙ってたの。
告白して「Yes」の返事をもらえたら、悟に報告しようと思ってね。

私、必死で気持ちを伝えたわ。
だって、ずーっと好きだったんだもの・・・
そうして「Yes」の返事をもらった。

でも、そこからだった・・・苦しいのは・・・
私はその人から「好きだ」という言葉すら言ってもらえないまま、付き合いは何週間か続いたの。
私は不安だった。
わかるでしょ?
好きな人の気持ちがつかみきれない・・・
もちろん彼は、会いたいと言えば会ってくれるし、電話をすれば楽しそうに話してくれる・・・
でも・・・昔流行った歌じゃないけど、彼からアプローチがあるということはほとんどなかった。
いつも私から・・・

そんな時出会ったのが、得意先の営業マンの辰見さんっていう人なの。
辰見さんは、私に彼がいることを知っていて、それでもアプローチしてきた。
悟、ちょっと気に入らない顔してる・・・そうよね、彼がいるのを知っててアプローチしてくる男・・・そしてそれになびく女・・・
そう・・・私は辰見さんと・・・最初は寂しさから押し切られる形で寝てしまったの。
もちろん罪悪感はあったけど、辰見さんの、私を強く抱きしめる腕を、どうしても振り解くことができなかった。

そう・・・私は彼がいながら他の男と寝たの。
軽蔑する?
悟、困ってるね・・・こんな話しされて・・・
そう言えば、悟とセックスの話なんてしたことなかったっけ・・・

とにかく、私は人に大きな声では言えない恋を抱え込んでしまった。
いけないって知りながら、強く求めくれる人を離せないでいるのよ・・・
苦しい・・・すごく苦しいの・・・
わかる?悟。
好きな人には誠実でいたいのに、それができない・・・

男から強く求められる、媚薬のような誘惑から逃れることができない・・・
心も、身体も・・・
最低な女だと思われてもいい・・・後で地獄に落ちてもいいの・・・
私は好きな男と、愛してくれる男・・・両方欲しい!両方とも!

*****

由実はそこまで言うと、俺をじっと見つめていた目をそらして、少し涙ぐんだみたいだった。
「由実・・・」
俺は・・・今まで友達だと思っていた由実が、俺の前で鮮やかに女になっていくのを感じた。
これは、もう俺の知っている由実ではない。
"女"という業を背負ったかわいい、憎めない麻薬のような存在になってしまている。

「軽蔑したでしょ?」
由実が再び俺の顔を覗きこみながら言った。
「軽蔑はしてないよ・・・そういうことってあるんじゃないの?」
俺は慌てて当たり障りの無い返事をした。

そんな俺の様子を見て、由実は涙ぐみながら、さらに言葉を重ねた。
「でもね・・・一番辛いのは・・・私が・・・私自身が、罪悪感を感じながらも、辰見さんを絡めとって離さないでいるということなの。
無理やり押し切られたようなポーズを装いながら、彼を捉えて離さないのは私の方なのよ。」

「ごめん・・・悟。私、苦しくて・・・」
由実は涙をぬぐいながら、哀しい笑顔で笑った。
「ごめん・・・ごめんね・・・こんな話し聞かされても困るだけなのに・・・」
「由実・・・」

俺はもう気付いている。
由実が、本人が気付いているかはわからないが、俺をも絡め取ろうとしていることを・・・
愛している男、愛してくれる男・・・そして罪悪感を慰めてくれる男・・・

俺はきっと、今夜由実を帰さないだろう。

潤んだ目の由実がじっと俺を見つめている・・・






あとがき

女というものは、時には無意識のうちに、捕らえた男を離さない為に、なんらかの行動を取っている場合があると思う。
開き直って意識的にできるならばいいのだが、無意識のうちのその行動に気付いた時、女は少なからずショックを受けるものではないだろうか?
そして、それでも男を絡め取ろうと言う本能は消せないのである。

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eroerojiji

小さい頃からエロいことが好き。そのまま大人になってしまったエロジジイです。