小説(転載) 愛は禁断よりも深く 2/5
近親相姦小説
「えっ、再婚?」
鈴菜は、食事の箸を止めて目の前の母を見た。
「再婚というか、復縁ね。お前のお父さんと」
「……」
驚きを隠せないという顔の娘に、母は急でゴメンね、と言いながら。
「お前が生まれる直前に、いろいろあった話はしたよね?」
「う、うん。お父さんの実家……お祖父ちゃんの経営していた会社が、事業失敗で倒産したって」
「そう。お父さんも役員の一人だったから、借金抱えて大変なことになってね……。私に苦労させたくないからって、泣く泣く離婚したのよ」
苦い思い出話であるゆえ、母に気を遣って自分から聞くことはなかったし、父の写真は家に一枚もない。
だから鈴菜は、十八歳になった未だ、父の顔も名前も知らされないまま、現在に至っている。
「成功するか分からないからって言われて、これまで一度も会うことはなかったんだけど……。事業を立て直すことができたら、きっと迎えに来るって約束してくれたの」
復縁するというからには──つまり。
「もしかして」
「ええ。小さな会社だけど、順調に軌道に乗せられたんだって!」
少し前に連絡があり、再プロポーズされたとのことだった。
「そっか。よかったね!」
「これから、うちに来てくれるんだけど、鈴菜もいい?」
「もちろん。ちゃんと挨拶しなきゃ」
(お父さんかぁ……。ちょっと、思い出しちゃうな)
幸せそうな母が、ちょっとうらやましい。
……父の面影を求めたのが最初で、好きになった人がいた。
親子ほど歳の離れた男性だったが、一年ほど交際した。
彼の事情から結婚は叶わないとわかっていたが、お互いの心は本物だった。
(孝幸さんも今頃……。元の奥さんと会っているのかな?)
切なくなるが、自分たちで決めたこと。
あの最後の夜、処女を捧げたことに、今も後悔はない……
「どうしたの、鈴菜?」
「あ、ううん。お父さん、もう来るの?」
「ええ。──あ、メール来てる!」
ウキウキとケータイを手に取った母が幸せそうで。……自分のことで余計な心配をかけないようにしなければと思う。
「……うん。私も頑張ろう」
前を向いて行こう。
そう決めたのだから。
「あら! もうすぐそこまで来ているって。さ、お迎えお迎え♪」
「うん!」
(お父さん、どんな人かなぁ? やさしい人だったら嬉しいな!)
少し無理矢理だけど、明日へ気持ちを切り換える。
──けれど。
「鈴菜。この人が、あなたのお父さんよ」
「!」
玄関で出迎えた姿に、動揺しないのが精いっぱい。
「あ……」
鈴菜は、父と初めて会った。
「え……」
父は、娘と初めて……
──いや。
(鈴菜……)
(孝幸……さ……ん)
二人にとっては、ただ〝あり得ない〟衝撃の瞬間でしかなかったのだ。
鈴菜は、食事の箸を止めて目の前の母を見た。
「再婚というか、復縁ね。お前のお父さんと」
「……」
驚きを隠せないという顔の娘に、母は急でゴメンね、と言いながら。
「お前が生まれる直前に、いろいろあった話はしたよね?」
「う、うん。お父さんの実家……お祖父ちゃんの経営していた会社が、事業失敗で倒産したって」
「そう。お父さんも役員の一人だったから、借金抱えて大変なことになってね……。私に苦労させたくないからって、泣く泣く離婚したのよ」
苦い思い出話であるゆえ、母に気を遣って自分から聞くことはなかったし、父の写真は家に一枚もない。
だから鈴菜は、十八歳になった未だ、父の顔も名前も知らされないまま、現在に至っている。
「成功するか分からないからって言われて、これまで一度も会うことはなかったんだけど……。事業を立て直すことができたら、きっと迎えに来るって約束してくれたの」
復縁するというからには──つまり。
「もしかして」
「ええ。小さな会社だけど、順調に軌道に乗せられたんだって!」
少し前に連絡があり、再プロポーズされたとのことだった。
「そっか。よかったね!」
「これから、うちに来てくれるんだけど、鈴菜もいい?」
「もちろん。ちゃんと挨拶しなきゃ」
(お父さんかぁ……。ちょっと、思い出しちゃうな)
幸せそうな母が、ちょっとうらやましい。
……父の面影を求めたのが最初で、好きになった人がいた。
親子ほど歳の離れた男性だったが、一年ほど交際した。
彼の事情から結婚は叶わないとわかっていたが、お互いの心は本物だった。
(孝幸さんも今頃……。元の奥さんと会っているのかな?)
切なくなるが、自分たちで決めたこと。
あの最後の夜、処女を捧げたことに、今も後悔はない……
「どうしたの、鈴菜?」
「あ、ううん。お父さん、もう来るの?」
「ええ。──あ、メール来てる!」
ウキウキとケータイを手に取った母が幸せそうで。……自分のことで余計な心配をかけないようにしなければと思う。
「……うん。私も頑張ろう」
前を向いて行こう。
そう決めたのだから。
「あら! もうすぐそこまで来ているって。さ、お迎えお迎え♪」
「うん!」
(お父さん、どんな人かなぁ? やさしい人だったら嬉しいな!)
少し無理矢理だけど、明日へ気持ちを切り換える。
──けれど。
「鈴菜。この人が、あなたのお父さんよ」
「!」
玄関で出迎えた姿に、動揺しないのが精いっぱい。
「あ……」
鈴菜は、父と初めて会った。
「え……」
父は、娘と初めて……
──いや。
(鈴菜……)
(孝幸……さ……ん)
二人にとっては、ただ〝あり得ない〟衝撃の瞬間でしかなかったのだ。
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