親子の時間2
妄想その日、悟がやってきてすぐには話し始めました。
「母さん、相談があるんだ。」
「なあに?」
「あのね・・・」
「どうしたの、なにかあったの?」
「いや、母さん、僕、帰ってこようかと思うんだ。」
そいうと悟は私の手を握りしめたのです。私は内心嬉しく思いました。気楽な一人暮らしとはいえ、夜などはやはり怖いものです。
「悟くんがそうしてくれるなら、母さんもうれしいな。」
「ほんと。よかった。」
「会社からは遠くなるけど大丈夫なのかい。」
「あのね、今の会社はやめる。近い所を探していて、隣の駅なんだけど良い会社が見つかったんだ。」
「そうなの。」
「母さんを一人にしておくのは心苦しかったんだ。」
「ありがとう。母さんのことを気にかけてくれていたんだね。」
「当たり前だよ。大好きな母さんなんだ。」
そいうと悟は私を抱きしめてくれたのです。まだ私は悟の本当の気持ちを知りませんでした。私のことを気遣ってくれる優しい息子、そういう目で見ていました。
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