小説(転載) 蒲柳の母4-2
近親相姦小説掲載サイト「母親の香り 息子の匂い」は消滅。
由布の異変が家庭内暴力として露見したのはそれから間もなくのことだった。 リビングにいた幹太は食卓で由布の悲鳴とともに物を投げつける大きな音を聞いた。 慌てて幹太が食卓に向かうと、太一が逃げ出してきた。
「幹太なんとかしろ。オレは知らんぞ。」
太一は詳細を告げずに自分の部屋へと駆け込んだ。 幹太は恐る恐る食卓をのぞいた。
「もう!誰も入ってこないで!」
由布の叫び声とともにお椀が飛んできた。 それでも幹太はひるむことなく部屋に飛び込むと、暴れる由布を両腕で後ろから抱きしめて身動きをとれなくした。
「幹太、なにするのよ!離してよ。離しなさいよ!」
由布は明らかに平常心を失っていた。 太一とどんな会話があったのかなどもうどうでもよかった。 とにかく、この由布をおとなしくさせることが先決だった。 こんな常軌を逸した由布を見るのは幹太も初めてだった。 いつもの愚痴ばかり言っている由布とは明らかに異なる精神状態だった。
「落ち着いてよ。まず、落ち着こうよ。それからだよ。 ね、落ち着いてから話をしようよ。」
「もう誰とも話なんかしないわよ!だから離しなさいよ!」
散々叫んでから幹太の力には勝てないと観念したのか由布が黙った。 黙ってもしばらく息遣いが激しかった。 その間は幹太は由布を強く抱きしめ続けた。
「いつまで押さえつけてるのよ。早く離しなさいって。」
暴れることはなくなった由布だったが、まだ精神的に落ち着いてはないようだった。 言葉の端々に殺気が感じられた。
「まだダメだよ。絶対に暴れないって約束したら離してあげるよ。」
幹太は由布を離すタイミングを失っていた。 少なくとも由布をイスに座らせたいと感じていた。
「わかったわよ。わかったから離しなさい。もう暴れないから。」
由布の声が小さくなり、激しい息遣いもなくなっていた。 幹太の手が緩むとその途端由布は振り返ると幹太の胸を両腕で思い切り殴り始めた。 再び幹太は由布を前から抱きしめた。
「もう暴れないって言っただろ。」
幹太は目の前にある由布の顔に向かって恐ろしい目つきでにらみつけた。 由布と幹太の身長差は20センチ弱である。
「幹太、お母さんのことをなんだと思っているのよ。 そんなことをして許してもらえると思ってるの?」
由布は幹太を見上げて強がった。 由布にとって幹太が由布に逆らうことは許されることではなかった。
「僕だってもう高校生だよ。なにが正しいのかくらいわかる年齢だよ。」
多少冷静さを取り戻した由布は幹太の力強い抱擁に不思議な安心感を覚えていた。
「幹太も大人になったのね。」
ようやく由布が観念したような言葉を吐いた。
「高校生になったら大人が考えることもわかるようになるんだよ。」
幹太は由布に認められたような気がして調子に乗った。
「幹太に大人のなにがわかるって言うのよ。 仕事をして、子育てをして、炊事洗濯をして、大人は高校生いみたいに暇じゃないのよ。」
そう言いながらも由布は幹太の力強い抱擁を忘れることができなかった。 明らかに幹太に抱きしめられて心の乱れが落ち着いた。 なにか想像を超える力で包み込まれているような安心感を感じることができた。 男の力に魅力を感じるのは女の性なのだろうか。 しかし、その事実を正直に認めることができるような由布ではない。
「今度私のことを押さえつけたら絶対に許さないわよ。 高校生になったからって力で事態を収拾しようなんて間違ってるわよ。」
いつもなら素直に従う幹太が珍しく反論した。
「お母さんが暴れなければなにもしないよ。 でも、またお母さんが暴れたら落ち着くまで押さえつけるからね。 そんな家庭内暴力を放っておくことなんてできないよ。 落ち着いたらそれから話しあいをしようよ。 今日のことだってなにも解決してないんだからね。」
由布は今日のことを掘り返されることを嫌った。
「もう今日のことはいいじゃない。これでいいってことにしましょ。 もう普通に話ができてるでしょ。もうお父さんにも話はしないし。」
どうやら太一に由布のプライドを傷つけるようなことを言われたらしい。 それなのに無責任に逃げてしまうあたりが太一らしかった。 家庭に問題が起きても太一が積極的にかかわろうとすることは1度だってなかった。 すべて由布の即断と偏見で決まってきたと言っても過言ではない。 そんな女王様のような、家庭の支配者に逆らうことは誰にも許されなかった。 それをユッコはうまく対応してきたものだと幹太は改めて感心していた。
「今度暴れたら、また押さえつけて止めるからね。 もう暴れないでよ。」
幹太は決意を由布に伝えた。
「わかったわよ。私だって暴れたくて暴れたわけじゃないのよ。 なにか我慢できないことがあると爆発しちゃいそうなのよ。」
由布はこれからも不安があることを告げて場を収めたかった。 しかし、これはまだ始まりにすぎなかった。 由布の心の乱れは日に日に暴力的になってゆき、それを幹太が抱きしめて抑え込むという、 非建設的な家族の関係が続くことになる。 ただ1つ建設的なことがあるとしたら、由布が幹太の抱擁に安心感を思え始めたことだろう。 由布が幹太に抱きしめられるという行為を、 暴力行為に移る前に認めることができれば表面上は問題がなくなることになる。 しかし、由布のプライドがそんなことを簡単に許すとは思えなかった。 こうやって残された家族の修羅場は一段落つくこととなった。
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