小説(転載) 天狗村肉盛りパーティ 2/7
官能小説
その2
ぼくのクラスに健ちゃんという乱暴な子がいました。
その子は腕力が強くて、いつもいばっていました。気にいらない事があるとすぐ人を殴ります。誰もこの子には逆らえませんでした。
でも逆らえないのは、子供だけではありませんでした。
健ちゃんには、学校の先生も、村の大人達さえ逆らえないのです。
何故かといえば、健ちゃんのお父さんはこの村の村長であり、大地主でもあったのです。村の人たちは皆、健ちゃんの家から土地を借りて生活していたのです。
だから健ちゃんのお父さんの権力は、それはそれは強いものだったのです。
息子である健ちゃんに対しても、皆、怒らせないように大人までが気を使ってペコペコしていたのです。
その健ちゃんに、ある時ぼくはケガをさせてしまいました。
あの日、ぼくはいつものように学校が終わったあと、近くの雑木林を歩いていました。バッタを捕まえていたのです。
夏休みはとっくに終わっていたけれど、アブラゼミがうるさいくらいに鳴いていて、もうすぐ秋になろうとはとても信じられませんでした。
遠くで雄大な入道雲がモクモクと膨れ上がり、木漏れ日がチカチカと目に反射します。いつものように境内からはのんびりとした太鼓の音が聞こえていました。
ぼくは草や花を踏み分けて夢中でバッタを捕っていました。
その時です。
木の陰から健ちゃんが子分を二人つれてあらわれたのです。ぼくはハッとして健ちゃんを見ました。健ちゃんはぼくのそばまで来ると、
「おいっ、俺ん家の山で何してるんだ!」
と憎々しい顔で言うのです。
「ここは俺ん家の山なんだぜ。勝手に入ってバッタなんか捕るなよ!」
とても小学二年生とは思えない憎たらしい子でした。ぼくは父から健ちゃんにだけは逆らってはいけない、と言われていたのを思い出し、口惜しかったのですが、
「ごめんなさい」
と謝りました。でも、
「ごめんじゃ済まんね。許してほしかったらチンチン出して見せろよ!」
と健ちゃんは言うのです。ぼくはどうしたらいいかわからなくなって途方に暮れてしまいました。
「早く出せ!」
と健ちゃん達に詰め寄られた時、ぼくは持っていた虫カゴを放り出していちもくさんに逃げ出したのです。
「逃げたぞ、追いかけろ」
大声を出して健ちゃん達は追ってきました。捕まったら袋叩きにされるでしょう。ぼくは恐ろしくて必死に逃げました。木の枝を掻き分け、小川を飛び越え、必死に逃げたのです。
すると、後ろで大きな悲鳴がして威勢よく人の倒れる音がしました。
振り向くと、健ちゃんが草に足を取られて、もんどりうって倒れたところだったのです。
健ちゃんは痛そうに顔を歪めてぼくを睨みつけました。頭から血が出ていました。ぼくは恐ろしくて、夢中で家へ駆け戻りました。
家の中に逃げ込むように戸を開けると、今日に限って父が仕事から早く帰っていました。
ぼくが父と母にさっきの出来事を話すと、二人ともギョッとして青い顔になりました。「おまえは大変なことをしてくれたな、信一!」
と父はぼくを怒鳴りました。
「村長さんの子にケガをさせるなんて・・・わしらはこの村に住めなくなるかも知れないぞ!」
と言ってぼくを殴るのです。
父がぼくを殴るのは初めてでした。それはすごい剣幕で殴りつけられ、ぼくは火がついたように泣き出したのです。
すると母がぼくを庇って父をなだめ、
「あなた、しょうがありません。私が信一と二人で村長さんの家へあやまりに行ってきます」
と言ってくれました。
その時の母の顔が、ぼくにはとても頼もしく見えました。
怒ってお酒を飲み出した父に背を向けて、母は急いでお化粧をし、よそ行きの服に着替えました。
「さあ、信ちゃん行きましょう」
とぼくの手を取った母は子供心にもあでやかに美しく見え、ぼくは自分の置かれている立場も忘れて妙に胸が弾み、自分の母がこんなに綺麗だということを得意に思ったりしたのです。
外に出るといつの間にか夕焼けになっていました。
真っ赤に染まった西の空にカラスが飛んでいます。太鼓の音はあいかわらず鳴り続けていて、いつの間にかピーヒャラピーヒャラと笛の音も混じっていました。
ぼくのクラスに健ちゃんという乱暴な子がいました。
その子は腕力が強くて、いつもいばっていました。気にいらない事があるとすぐ人を殴ります。誰もこの子には逆らえませんでした。
でも逆らえないのは、子供だけではありませんでした。
健ちゃんには、学校の先生も、村の大人達さえ逆らえないのです。
何故かといえば、健ちゃんのお父さんはこの村の村長であり、大地主でもあったのです。村の人たちは皆、健ちゃんの家から土地を借りて生活していたのです。
だから健ちゃんのお父さんの権力は、それはそれは強いものだったのです。
息子である健ちゃんに対しても、皆、怒らせないように大人までが気を使ってペコペコしていたのです。
その健ちゃんに、ある時ぼくはケガをさせてしまいました。
あの日、ぼくはいつものように学校が終わったあと、近くの雑木林を歩いていました。バッタを捕まえていたのです。
夏休みはとっくに終わっていたけれど、アブラゼミがうるさいくらいに鳴いていて、もうすぐ秋になろうとはとても信じられませんでした。
遠くで雄大な入道雲がモクモクと膨れ上がり、木漏れ日がチカチカと目に反射します。いつものように境内からはのんびりとした太鼓の音が聞こえていました。
ぼくは草や花を踏み分けて夢中でバッタを捕っていました。
その時です。
木の陰から健ちゃんが子分を二人つれてあらわれたのです。ぼくはハッとして健ちゃんを見ました。健ちゃんはぼくのそばまで来ると、
「おいっ、俺ん家の山で何してるんだ!」
と憎々しい顔で言うのです。
「ここは俺ん家の山なんだぜ。勝手に入ってバッタなんか捕るなよ!」
とても小学二年生とは思えない憎たらしい子でした。ぼくは父から健ちゃんにだけは逆らってはいけない、と言われていたのを思い出し、口惜しかったのですが、
「ごめんなさい」
と謝りました。でも、
「ごめんじゃ済まんね。許してほしかったらチンチン出して見せろよ!」
と健ちゃんは言うのです。ぼくはどうしたらいいかわからなくなって途方に暮れてしまいました。
「早く出せ!」
と健ちゃん達に詰め寄られた時、ぼくは持っていた虫カゴを放り出していちもくさんに逃げ出したのです。
「逃げたぞ、追いかけろ」
大声を出して健ちゃん達は追ってきました。捕まったら袋叩きにされるでしょう。ぼくは恐ろしくて必死に逃げました。木の枝を掻き分け、小川を飛び越え、必死に逃げたのです。
すると、後ろで大きな悲鳴がして威勢よく人の倒れる音がしました。
振り向くと、健ちゃんが草に足を取られて、もんどりうって倒れたところだったのです。
健ちゃんは痛そうに顔を歪めてぼくを睨みつけました。頭から血が出ていました。ぼくは恐ろしくて、夢中で家へ駆け戻りました。
家の中に逃げ込むように戸を開けると、今日に限って父が仕事から早く帰っていました。
ぼくが父と母にさっきの出来事を話すと、二人ともギョッとして青い顔になりました。「おまえは大変なことをしてくれたな、信一!」
と父はぼくを怒鳴りました。
「村長さんの子にケガをさせるなんて・・・わしらはこの村に住めなくなるかも知れないぞ!」
と言ってぼくを殴るのです。
父がぼくを殴るのは初めてでした。それはすごい剣幕で殴りつけられ、ぼくは火がついたように泣き出したのです。
すると母がぼくを庇って父をなだめ、
「あなた、しょうがありません。私が信一と二人で村長さんの家へあやまりに行ってきます」
と言ってくれました。
その時の母の顔が、ぼくにはとても頼もしく見えました。
怒ってお酒を飲み出した父に背を向けて、母は急いでお化粧をし、よそ行きの服に着替えました。
「さあ、信ちゃん行きましょう」
とぼくの手を取った母は子供心にもあでやかに美しく見え、ぼくは自分の置かれている立場も忘れて妙に胸が弾み、自分の母がこんなに綺麗だということを得意に思ったりしたのです。
外に出るといつの間にか夕焼けになっていました。
真っ赤に染まった西の空にカラスが飛んでいます。太鼓の音はあいかわらず鳴り続けていて、いつの間にかピーヒャラピーヒャラと笛の音も混じっていました。
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