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小説(転載) 白の記憶3

官能小説
09 /18 2019
続きを読みたいが、ここまでしか保存していない。
白の記憶

第三話

検査の結果で新しく分かったこともほとんどなく、私は退院することになった。

「さあ、ここが由美の部屋だ。
 って言うのも変だけどな」
「ここが私の部屋…」
私は部屋の中のものを見てまわる。
「じゃあ、俺は自分の部屋にいるから」
部屋を出ていく前にもう一度振り向って弘さんが言った。
「あっと、俺の部屋は隣だから」
「うん、わかった」

これは学校のノート…
確かに私の字だ…
やっぱりここが私の部屋なのかな。
自分の部屋なのに何があるのか分からないなんて変な感じ。

あ、本がいっぱいある。
これって読んだことあるんだよね…
でも全然覚えてない…

最近記憶がないという状態に慣れて来たような気がする。
だけど、こういう自分の知らない自分に触れると自分は記憶がないんだって実感する。

記憶がないか…
弘さんは自分は私の兄だって言ってたよね…
初めて会ったとき…こういうふうに言うのは変なのかもしれないけど…
なんか懐かしい気がした。
初めて会ったはずなのに、ずっと前から知ってるような不思議な感じ。

やっぱりお兄ちゃんなのかな…
記憶はなくても身体が教えてくれる。
でも頭では理解できない。

お兄ちゃん…
私と弘さんって仲良かったのかな?

あれ?これって…
一冊のノートが引出しの中を見ていた私の目に止まる。
日記?

私はそのノートを読み始めた。
自分という人間の過去が蘇ってくる。
なんだか変な感じ。
自分がしたことのはずなのにひどく客観的に思える。

日記を読み進めていくうちに私はあることに気がついた。
弘さん、すなわちお兄ちゃんについて書いてあることが多い。
もしかして…
私は頭の中で本来あるはずのない仮定を作りだす。
そして、その仮定はすぐに確信へと変わった。

『私はお兄ちゃんのことが好き』

私は弘さんのことが好きだった…
イエ、お兄ちゃんのことが好きだった…
私は…

コンコン
「入るぞ」
「え、あ、うん」
「ん?どうかしたのか?」
「ううん、なんでもない…」

「ま、いいか…夕御飯何がいい?」
「え?弘さん作れるの?」
「ん?ああ、まあね」
「う~ん、私の好きなものって分かる?」

「………」
「ん?どうしたの?」
「いや、口調が変わったなと思って」
「え?あ、ごめんなさい」
「ううん、そっちのほうが自然だよ」
「うん…」

「ああ、分かるよ。
 じゃあ、由美の好きなものね」
「う、うん」

弘さんがいなくなった部屋を再び静寂が支配する。
まともに顔見れないよ~
なんか変に意識しちゃうし…
私どうなっちゃうんだろ…

小説(転載) 白の記憶2

官能小説
09 /18 2019
白の記憶

第二話

由美は検査が終わるまでしばらく入院することになった。
怪我のほうはそんなに酷くないので出歩くことは出来るが、
由美は部屋で本を読んでいることが多いそうだ。

コンコン
「入るぞ」
「は~い」
「なんだまた本読んでるのか?」
「はい…」
「たまには外に出よう」
「外に?」
「外って言っても中庭だけどな」

この頃は少し前までの暑さが嘘のように秋の気配が濃くなっていた。
それでも暑い日はある。
今日は比較的涼しかった。
「どうだ外もたまにはいいものだろ?」
「うん…」
お?少しは打ち解けてくれたかな?

秋の日差しが優しく身体を包み込んでくれる。
日の光を浴びて由美の髪が輝いて見えた。
二人で木々の並ぶ通りを歩く。
それにしてもここの中庭でかいな…

「そこに座らないか?」
俺は木の側にあるベンチを指差す。
「うん」
少しの間の沈黙…
自分からはなかなか話しかけてくれないか…

「どんな本読んでるの?」
「う~ん、この頃は恋愛小説でしょうか?」
「恋愛小説ねえ」
「看護婦さんが買ってきてくれたんです」
「おもしろい?」
「はい」

「そっか」
「弘さんはどんな本を読むんですか?」
「俺?俺はあんまり本を読まないんだ」
「そうですか。残念」

「残念?」
「本貸してもらおうかなって思ったんですけど…}
「それだったら買ってくるよ」
「ええ、いいですよ。悪いですし」
「遠慮なんかしなくていいよ、家族なんだから」
「…じゃあ、お願いします」

「で、どんな本がいい?」
「それは任せます」
「わかった。由美に合いそうな本を選んでくるよ」
「楽しみにしてますね」
「ああ」

いつものように時間が過ぎるのは早い。
ほとんど毎日来てるけど、少しは慣れてくれたかな?
まだ敬語で話してるのが気になるな…
時間を懸けるしかないか…

小説(転載) 白の記憶1

官能小説
09 /18 2019
白の記憶

第一話

医者が言うには、由美は全生活史健忘…いわゆる記憶喪失らしい。
ただ脳が損傷を受けているわけではないので、記憶が戻る可能性はあるそうだ。
そして、自分の名前以外、家族・友人などその他のことはほぼすべての記憶がないらしい。
これはもう少し詳しく検査するそうだ。
できるだけ話しかけてくれとのことだ。

できるだけ話しかけるか…
この前までも由美ならともかく、今の由美にとって
俺は親しげに話しかけてくる男に過ぎない。
由美が俺を受け入れてくれるかどうか…

兄妹という関係がなくなったとき俺達の関係はどうなるのだろう…
由美が妹であることは当然だったし、これからもそうだと思っていた。
もちろん血のつながりから言えば妹であることに変わりはないのだが、
由美がそうは見てくれないだろう。

これ以上いろいろ考えていてもしょうがないので、
俺は由美に会いに行くことにした。

コンコン

「入ってもいいかい?」
「どうぞ…」

以前の由美に比べて少し暗くなったような気がする。
やっぱり記憶がないから不安なのかな?

「気分はどう?」
「特には…
 弘さんはどうですか?」

「弘さん…」
「名前間違ってましたか?」
「いや、間違えてないけど…」

まさか由美に弘さんなんて呼ばれるとは…
俺はベッドの隣にある椅子に腰掛ける。

「一応由美の兄なわけだからそういう他人行儀なのは…」
「そうですよね。
 でも私…」

俺を兄とは思えないか…

「いや、いいよ。
 由美が好きなように呼んでくれれば」
「はい」

いきなり兄として受け入れてくれるはずがないか…

ちょっとした沈黙。
記憶のことはあんまりしつこく聞くなって言ってたな…

「傷はもう大丈夫なの?」
「ええ、もうほとんど直りました。
 あの~、さっきも聞きませんでした?」
「え、ああ、そうだったね…」

再び沈黙。
き、気まずい…

「…私ってどんな人間だったんですか?」

由美がつぶやくように言う。

「え?」
「変ですよね…
 こんなこと聞くのって…」
「イヤ、そんなことはないよ。
 判らないことは何でも聞いてよ」

由美はほっとしたような表情を見せた。

「う~ん…どんな人間だったか…か…
 難しいなあ…」
「………」
「でも…」
「でも?」
「少なくとも俺は由美のこと優しい人間だと思ってるよ」
「………」

「くさい台詞だよね、ハハハ」

俺は笑ってごまかそうとする。

「いえ、うれしかったです」

由美が顔を伏せ気味に言う。
あれ?顔が少し赤いような…

「ところで…」
「は、はい?」
「どうしたんですか?」
「い、いや、なんでもないよ」

他愛もない会話で時間はすぎていく。

「じゃあ、そろそろ帰るよ」
「はい…」
「明日も学校が終わったら来るから」
「さよなら…」
「じゃあ」

小説(転載) 白の記憶0

官能小説
09 /18 2019
掲載サイトは消滅。
白の記憶

プロローグ

既に暗くなっている病院に俺は走り込む

「…すいません…さ、さっき連絡をもらった皆川ですけど…」

息が切れてうまくしゃべれない。

「はい、しばらくお待ち下さい。
 先生、皆川さんが来られました」

俺は医者のいる部屋に案内された。

「両親と妹の様子はどうなんですか?」
「残念ですが…ご両親は亡くなられました…」
「……妹は…」
「妹さんは…命に別状はありません」
「どこにいるんですか?
 会わせて下さい!」
「……そうですね。
 そろそろ目が覚めるでしょうから説明は会ってからということにしましょう。
 こちらへ…」

俺は医者の後について由美のいる部屋へと向かう。

「ここです」

医者の示す部屋の扉を開けた。
真っ白な部屋のベッドに頭に包帯を巻いた少女が寝ている。
俺がベッドに近づくと気配を感じたのか少女は目を開けた。

「由美!大丈夫か?」

由美が俺の方を向く。
そして…

「……あなたはだれ?」

こうして平凡な日常生活は終わりを告げた…

eroerojiji

小さい頃からエロいことが好き。そのまま大人になってしまったエロジジイです。