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小説(転載) 綾香とぼく 4/10

官能小説
08 /23 2015
第4章 失敗

 ぼくたちは彼女達のリードでブランコで遊ぶことになった。
「ねー、はやくはやくー。」
綾香がぼくの手を引き、春菜はぼくを後ろから押した。ブランコのところまで来る
と、ふたりはさっさと腰をかけてしまった。
「おしてー。」
綾香がぼくにねだる。
「はいはい。」
綾香の背中を押す。彼女の背中はすごく小さくて、とても危なっかしい感じがした。
「きゃははは!」
綾香が声をあげて笑った。こどもは無邪気でいい。これは特別な感情がなくても、
普段から思っていることだ。
「春菜ちゃんも押してもらいなよ。」
「わたしはいい。」
春菜は少しうつむきながら、自分でブランコをこいでいた。
「押してあげるよ。」
ぼくは春菜も押してあげた。すこし春菜は緊張しているのか、綾香に比べるとおと
なしい。ふたりの少女を変わるがわる押した。小さくて軽い彼女達の背中を押す。
少女とのふれあいなんてできないと思っていたぼくからすれば、夢のような体験だ
った。
「あはは、らくちーん。」
春菜が言った。彼女の緊張もだいぶほぐれてきた気がする。
「もっと早くしてよー。」
綾香がねだった。
「よーし。」
ぼくは力いっぱい彼女達を押す。片方ずつ交互に彼女達を押した。
「きゃははは!」
「うわーい、はやーい!」
ふたりとも喜んでいるが、さすがにぼくも疲れてきた。腕が重くなってくる。
「ふぅ、この辺で勘弁してよ。」
「あーおもしろかった。」
綾香の笑顔がまぶしかった。

「じゃあ、春菜ちゃん。今度はくつのとばしっこしようよ。」
「いーよー。負けないもんね。」
ぼくはブランコのすぐ近くのベンチで休んでいた。
綾香がブランコをこいで反動をつけ、勢いよく足をあげる。彼女のくつがきれいな
放物線を描いて砂場にぽんと落ちた。
「こんどはわたしね。」
春菜も同じようにくつを飛ばす。綾香に比べるとより高く、より早く飛んでいる。
くつが砂場に落ちた。春菜の方が1mほど遠くに飛ばしていた。
「わたしの勝ちだね。」
「すごいなぁ。春菜ちゃん。」
「じゃあおにいさん、くつとってきて。」
「はいはい。」
ぼくは立ち上がると砂場へ歩いて行き、彼女達のくつを拾った。ふたりのくつは小
さかった。こんな小さな足をしていると思うと、彼女達を守ってあげたいという感
情がわいてきた。そのあともふたりは何度かくつを飛ばして遊んだ。ぼくはその度
に拾いに行かされたが、悪い気はしなかった。

 ふたりがブランコに飽きて今度は滑り台で遊び始めた。体の大きいぼくは、その
滑り台は滑れない。ぼくは脇に立って彼女達を眺めていた。
「ひゅうううう。」
綾香がぼくの前を滑りおりていく。
「あはははは。」
春菜も続いた。
ぼくは滑り台の横でかがんだ。上の方を見上げる。綾香がまた滑り台の上にのぼる。
白いものが見えた。ぼくはたとえようのない幸福感に包まれた。胸の奥から甘酸っ
ぱい間隔が広がってゆく。
「いくよーん。」
綾香がかわいく言った。彼女の薄暗い股間に目を奪われていたぼくは、はっとして
立ち上がった。

 またふたりがブランコの方に移った。今度はぼくも一緒にブランコに乗った。
しばらくこいでいると、綾香が後ろからぼくのヨットパーカーのフードに砂を入れ
るのが分かった。
「こらっ!」
「きゃははははは!」
彼女のあどけない笑顔を見ていると、怒りの感情など沸き上がってこなかった。そ
の笑顔では、どんなことをやっても許してしまえるような気がした。
そのあとも何度もフードに砂や木の葉をいれてくるので、ぼくはお仕置きをしよう
と考えた。ブランコに乗った彼女を後ろからくすぐる。
「きゃははは。」
彼女がもがいてブランコから落ちる。彼女は顔を地面で打った。
(やばい!)
そう思うと同時に、彼女の顔が歪んだ。
「うわーーん!」
彼女は声をあげて泣き出した。ぼくは焦った。どうしていいのか分からない。
「あー、立花が綾香を泣かしたー。」
春菜がぼくを責めた。必死に肩を抱いて彼女をなだめるが、いっこうに泣きやんで
くれない。
「ごめんね、ごめんね。」
ぼくは錯乱状態に陥りながらも、彼女を慰めなくてはいけないという一心でなんと
か自分を保っていた。
「だいじょうぶ?」
春菜が綾香をなだめる。ぼくよりも冷静で、包み込むような感じで。春菜の冷静さ
には自分の無力さを思い知らされた。
自分を責めた。自分を卑下した。ぼくは何をやっているのだろう。彼女を泣かせて
しまってなんてやつなんだろう。全くひどい人間だ。人間失格だ。
うつ的な思考パターンにはまりながらも必死に彼女をなだめる。そのかいあってか、
彼女は落ちつき、「ひっく、ひっく」というしゃっくりをあげていた。
「綾香ちゃんはよく泣くから、いつも学校でわたしがなぐさめてあげるんだよ。」
春菜はえらいなと思った。

 ようやく綾香も落ちつきを取り戻した。しかし機嫌を損ねてしまって、ぼくと口
を聞いてくれない。というよりは、気まずい状況になって、どう話していいのか分
からないというような感じだった。彼女自身はもう怒っていないだろう。
 夕方の5時を過ぎ、春菜が「帰る」と言い出した。もう少し彼女達と過ごしたか
ったが、彼女達が親にしかられると思うと、引き留める訳にはいかなかった。
「じゃあね、またあした。」
春菜が言った。
『ばいばい。』
手を振る綾香の口元が声を出さずにそう言った。

小説(転載) 綾香とぼく 3/10

官能小説
08 /23 2015
第3章 無垢

 ベンチで楽しく過ごしたぼくたちは、植え込みの中に入って草原に直接腰を下ろ
して一緒に話した。暖かい春の日、草原がぼくたちに解放感を与え、緊張を解いて
くれた。
「城山先生って恐いんだよー。」
綾香が横に座って言った。もちろんぼくは「城山先生」は知らない。
「ほんとだよねー。すごく大きな声で怒鳴るんだよね。」
春菜が合わせる。
「ふーん。」
傾聴してみる。こどもはときどきかまってほしくて話をする。熱心に耳を傾けてい
れば、彼女たちも心を開くはずだと考えた。
「石川先生ってやさしいよねー。」
春菜が言う。
「うんうん、綾香、あそこのクラスになりたい。」
彼女達はそばに生えている花を見ながら話していた。
「あ、そうだ。春菜ちゃん、ちょっと耳かして。」
「え、なになに?」
綾香が春菜にこそこそと話しかける。ふたりともにやにやしながらこちらを見てい
る。
「ちょっと待っててね。」
ふたりは少し離れたところへ行って、なにやらごそごそやっていた。ぼくは何をし
てくれるのか楽しみに待っていた。

 しばらくして、綾香が帰ってきた。手にはきれいな花を持っている。
「あげる。」
嬉しい。本当に心からそう思った。知り合いとは社交辞令的につきあうことが多か
ったぼくは、彼女の贈り物は心底喜べた。
「こっちもあげるよ。」
春菜がきれいなはっぱを手にやってきた。綾香はまた走って行き、何かを手にして
帰ってくる。
「ふぅ~。」
綾香はたんぽぽの花を手ですりつぶすと、息を吹き付けて空に飛ばした。
「うふふ。」
綾香がぼくの横にちょこんと座って満面の笑みを浮かべた。至福の喜びだった。本
当に自分がこの喜びを味わってもいいのか、不安にすら思えた。
「おにいさん、女の人みたい。」
「え?」
確かにぼくは男らしいとは思っていなかったが、女性的だと言われたのははじめて
だった。
「だって優しいんだもん。」
綾香がさらりと言った。その無垢なところがとてもかわいく思えた。嬉しかった。
こんなに自分が評価されたのは初めてだった。
 ふと横を見ると、綾香がごそごそやっている。
「はい、プレゼント。」
綾香が手をさしのべた。手の上に何か乗せている。それははっぱと花をつなげて作
った指輪だった。
「ありがとう。」
ぼくはその指輪が長く形を保っていられないことに悲しさすら感じた。永遠に、こ
の指輪が永遠に今日の思い出として残ってくれたら……。ぼくはそんな気持ちでい
っぱいだった。

小説(転載) 綾香とぼく 2/10

官能小説
08 /23 2015
第2章 ベンチで

 昨日の少女達にまた会えるかもしれないという淡い期待を抱いて、今日もその公
園に行った。昨日となんら変わらない風景の中、ぼくは彼女達の温もりを求めて歩
き回った。桜の木のところに行ってみた。彼女達はいない。さあっと、公園の中を
風が吹き抜けた。桜の花が舞い上がる。
(やはり、そううまくいくものでもないか……。)
 ぼくは落胆した。公園の少し高くなったところに、景色がよく見えるベンチがあ
る。ぼくはあの娘達のことをあきらめて、そこに向かってとぼとぼと歩きだした。
ベンチに向かう階段をゆっくりと上がっていったときのことだった。
「あっ。」
 少女のかわいい声が聞こえた。ぼくは耳を疑った。声の聞こえた方を振り向くと、
植え込みの向こう側に昨日の少女がいた。間違いない、彼女だ。彼女と会えた嬉し
さと同時に、自分のことを覚えていてくれたことにも喜びを感じた。
「昨日の子だね。」
 あまりにも急な出来事だったので、ぼくはまともな言葉が出ないでいた。当たり
前のことを言っている自分になにか腹が立った。
「……ねぇ。一緒にジュース飲む?」
ない勇気を振り絞って言った。
「どうして?」
彼女があどけない表情を浮かべて聞き返した。
「いや、ひとりで飲むより、みんなで飲んだ方が楽しいかなって思って。」
「うーん。」
彼女が考え込む。
「ちょっと待ってね、春菜ちゃんに聞いてくる。」
彼女は少し向こうへ走って行った。「春菜」とは友達のことだろう。しばらくする
と彼女が友達を連れて帰ってきた。
「いいよ。いこっ!」
彼女はにこにこした表情で言った。

 公園の中にある自動販売機へ向かってぼくたちは歩きだした。少し離れて、後ろ
から少女ふたりがついてくる。夢のような状況だった。まさか、こんなにうまくい
くとは思ってもみなかった。
 後ろでこそこそと少女達が話していた。ときどきくすくすと笑い声も聞こえる。
何を話しているのだろう。たぶん、ぼくのことについてだ。彼女達はぼくをどう思
っているだろう。変な人だと思っているのだろうか、優しいおにいちゃんだろうか。
時折聞こえる笑い声が、ぼくを馬鹿にしているものではないかと不安にさせた。
 自動販売機につく。
「ふたりで一本にしてね。」
「はーい。」
ふたりが声を合わせて言った。
ぼくがお金をいれる。彼女達はサイダーにし、ぼくは暖かいミルクティーを買った。
「ありがとう。」
ふたりはちゃんとお礼を言った。
3人で座れる場所を探した。手ごろなベンチがあったのでみんなで座る。
ぷしゅ!
ふたりが缶を開けてジュースを飲みだした。
「ねぇ、名前はなんていうの?」
「えーっと、斉藤綾香です。」
はじめに植え込みでぼくに気がついた女の子が言った。
「上島春菜です。」
もうひとりの活発そうな子が言った。ふたりは学校の自己紹介のような口調で名前
を教えてくれた。
「あ、ぼくは立花 光といいます。」
「うふふ。」
ふたりは楽しそうにジュースを交代しながら飲んでいた。
「いくつ?」
「8才だよ。小学校3年生。おにいさんは?」
「19才。」
「ふーん。大きいんだね。」
そんなたあいのないことを話しながら過ごした。このとき飲んだミルクティーが今
まで飲んだ中で一番おいしく感じた。

小説(転載) 綾香とぼく 1/10

官能小説
08 /23 2015
10章に分けなくてもよい分量だが原文のままとする。


第1章 桜の天使


 綾香と出会ったのは桜が舞うある暖かい春の日のことだった。何気なく大きな公
園に散歩に出かけたとき、桜の中でまるで天使のように戯れる彼女を見つけた。彼
女は他にふたりの友達の娘と遊んでいた。ぼくは少し離れたベンチに座り、彼女を
ぼんやり眺めていた。かわいい。彼女と友達になりたい。そんな気持ちでいっぱい
になった。
 声を掛けてみたくなった。どうやって声を掛けよう、なんて言えばいいんだろう。
頭の中で空想の問答がぐるぐるとめぐる。
少女達が桜の木の枝を引っ張って遊びだした。
これだ。
ぼくは意を決して立ち上がると、ゆっくりと少女達に近づいて行った。
緊張で心臓を吐き出しそうになりながらも、思いきって話しかける。
「桜の木の枝をひっぱっちゃだめだよ。」
 少女達は驚いたように顔を見合わせ、そして笑った。こそこそと内緒話をする。
ぼくは自分が何かまずいことでも言ったのかと不安になった。だが、彼女達はぼ
くの言ったことを気にする様子もなく、再び桜の木の枝を引っ張って遊びだした。
「危ないよ。」
桜の木の近くのベンチに座ったぼくは、もう一度声を掛けてみた。今度はとくに驚
く様子もなかったが、何のリアクションもなかった。
(まずったか……。)
不安が広がる。あきらめて、いづらくなったその場を立とうかと考えた。すると、
少女達が笑いながら桜の木の枝についた雨の水滴をぼくにかけてきた。
どうやら友好の表現のようだ。
「うわっ!やめろよ。」
「きゃははははは!」
少女達が黄色い声で笑う。彼女達はぼくの座っているベンチから桜の木の枝を引っ
張ったり、ぼくの前で桜の花を広い集めたりして遊んでいた。
 ぼくは緊張していた。自分の幼い少女へ対する特別な感情の存在を知って以来、
少女と接する初めての機会だからだ。言葉につまった。ただぼくは黙って、横に座
っているしかできなかった。
 ふと、ひとりの少女が時間を聞いてきた。
ぼくが「5時前だよ。」と答えると、少女達は「もう帰らなきゃ。」と言って、
さっさと帰っていってしまった。
ぼくはその場に取り残されて唖然とした。こどもというのはこんなもんなんだろう。
感情の切り替えが早い。そのテンポにぼくはついて行けないでいた。
 でも、ひとときでも少女と一緒に過ごせたことに、ぼくは喜びをかみしめていた。

小説(転載) In bath room -望と佐織-

官能小説
08 /23 2015
最後まで読んで怒らないように。


佐織は震える手でマンションのインターホンを押した。
しばらくすると、ドアが開き、中から彼がいつもの憂いを秘めた表情で表れた。

佐織は優しくて、よく気がきくおとなしい眼鏡の小学5年生の女の子。
クラスの女の子と比べると、物静かで少し大人びた印象があり、
時折見せるその笑顔は、見ている人間にやすらぎを与えた。
そんな彼女にも胸に秘めた男性がいた。
毎朝通学に使う電車の中で、いつも同じ車両に乗る眼鏡の高校生の男性がいつも気になっていた。

彼とはいつも乗る駅も降りる駅も一緒である。
そんなある日、ホームに茶色い財布が落ちているのを見つけた。
(だれのだろう?)
まじめな佐織はその財布を駅員に届けようと思い、財布を拾い上げて中を見てみた。
(え……)
佐織は中身を見て凍り付いた。
憧れの彼の写真が学生証に貼ってあったのだ。
(秋月 望……。望さんっていうんだ)

その日は雨だった。
しかし、佐織は望の財布を駅員に届けようとせず、雨の中をずぶぬれになって彼の住所を頼りに、
彼の家を探し歩いた。
そのうちに、クリーム色の14階建てのマンションを見つけた。
『セゾン滝沢』
間違いない、彼のマンションだ。

「……なに?」
シャツにジーパン、こぎれいな姿の望が佐織に問いかけた。
「あ、あの、財布を拾ったので……。」
佐織は頭が真っ白になって何を言っているのかも分からなかった。
「……入れよ。シャワー貸してやるよ。」
ずぶぬれの佐織を見て望はそう言ったのだろう。
すでに彼は部屋の奥の方に入って行っていた。
「失礼します。」
おそるおそる佐織が玄関に入ると、きちんと片づいたマンションの1室がそこにあった。
「こっちだ。」
望が親指で浴室を指すと、佐織はそちらに歩きだした。
体中濡れているため、歩くたびに床が濡れてしまう。
佐織は罪悪感を感じながらも、つま先立ちで浴室に向かった。
望が浴室を離れると、すっかり濡れて肌に張り付いてしまっている服を一枚一枚脱いだ。
佐織は私立の小学校に通っているので、茶色のかわいいワンピースの制服を着ていた。
靴下を脱いで、ワンピースも脱いだ。
まだ未発達な胸はブラジャーをつけることをためらい、シャツですませていた。
さすがに下着姿になると、望の存在が気になる。
彼は台所の方で電子レンジを触っているようだ。
おそるおそるシャツを脱ぎ、ショーツを脱いで、それを洗濯機に放り込んで、
あわててバスタオルで体を隠した。
浴室を開けると、きれいなユニットバスで佐織は悪い気はしなかった。
(望さんってきれい好きなんだ。)
佐織はそんなことを考えながら、シャワーのコックを開いた。
「あち。」
先にお湯の方を開いたので、少し熱いお湯が出てきた。
水の量を調節して、丁度いい湯加減になったので、足の方から順番に体にお湯をかけた。
(きもちいい……)
シャワーの湯加減にうっとりしていると、ふと、浴室に人が近づく気配を感じた。
(!)
次の瞬間にはもう浴室のドアは開かれ、望が入ってきた。
「きゃ……!」
声にならない声を上げて、佐織は自分の大事な部分を手で隠した。
そして、シャワーを望に向けることによって、少なからず抵抗した。
それを無視して、びしょぬれになりながらも望は強引に佐織を壁ぎわに押しつけた。
「な、な、な、………!」
佐織は何がなんだか分からなかった。
ただ、恥ずかしいと恐いという感情のみが働いていた。
「……俺のこと、好きなんだろう?」
望が佐織の両腕を片腕で引っ張り上げながら、顔を近づけながら言った。
望の眼鏡が曇る。
「……やっ!」
必死で抵抗する佐織だが、男の腕力にはかなわない。
「……俺、眼鏡の娘って好きなんだ。」
そういうと、もう片方の手で、さっき洗濯機のところに置いておいた佐織の眼鏡をかけさせられた。
すぐに、風呂の湯気で眼鏡が曇る。
「……電車でいつも俺のことを見ているの、知ってたよ。」
両腕を身動きできないほど拘束されているのにもかかわらず、それほどの苦痛を佐織は感じなかった。
そういうなり、いきなり望は佐織に唇を重ねてきた。
「んんん……!!」
強引ではあったものの、どこかしら優しさのあるキスだったので、佐織はそれほど抵抗しなかった。
佐織にとってそれはファーストキスだった。
望は佐織の両腕を解放した。
佐織はその場に崩れ、放心していた。
じゃあ、じゃあ、とシャワーの流れる音が浴室に響いていた。
望はシャワーのコックを閉めると、ボディソープとスポンジをとりだした。
「……体、洗ってやるよ。」
ふいに、望の声に反応したかのように、佐織は大切なところを隠した。
「……俺のこと、好きなんだろ?」
曇った眼鏡を拭きながら、再び彼が聞いた。
佐織は「はい、そうです。」と言わんばかりに、真っ赤になった。
黙ったまま、望はスポンジにボディソープをつけて、泡立て始めた。
望は服を着たままで、先ほどの佐織のシャワー攻撃にあっているのでびしょぬれである。
その先を悟った佐織は、
「い、い、いいです。じ、自分で洗えますから。」
と必死に抵抗するが、望の憂いを秘めた笑顔には勝てなかった。

「いたっ!」
佐織が実を縮める。
「いたいです。……もっと優しくして下さい。」
曇った眼鏡を拭きながら、佐織が言った。
「……駄目だよ。ちゃんと洗わないと……。」
望は手を動かすのをやめない。
「そ、そこは、だめです。」
必死に懇願する佐織を尻目に、望は続けた。
「いた、いたい!」
望は眼鏡をかけ直すと、よりいっそう手の動きを激しくした。
「あ、ああ、いた、いたーい。」
佐織は精いっぱいの声を上げて果てた。

「……やっぱり背中はちゃんとあらわなきゃね。」
「はい。」
望が佐織をきれいにシャワーで洗い流して上げた。
「……台所に、ミルク暖めてあるから。」
「ありがとうございます。」
そういうと、バスタオル片手に、眼鏡をかけなおし、佐織は浴室をあとにした。

おわり

eroerojiji

小さい頃からエロいことが好き。そのまま大人になってしまったエロジジイです。