小説(転載) 綾香とぼく 4/10
官能小説
第4章 失敗
ぼくたちは彼女達のリードでブランコで遊ぶことになった。
「ねー、はやくはやくー。」
綾香がぼくの手を引き、春菜はぼくを後ろから押した。ブランコのところまで来る
と、ふたりはさっさと腰をかけてしまった。
「おしてー。」
綾香がぼくにねだる。
「はいはい。」
綾香の背中を押す。彼女の背中はすごく小さくて、とても危なっかしい感じがした。
「きゃははは!」
綾香が声をあげて笑った。こどもは無邪気でいい。これは特別な感情がなくても、
普段から思っていることだ。
「春菜ちゃんも押してもらいなよ。」
「わたしはいい。」
春菜は少しうつむきながら、自分でブランコをこいでいた。
「押してあげるよ。」
ぼくは春菜も押してあげた。すこし春菜は緊張しているのか、綾香に比べるとおと
なしい。ふたりの少女を変わるがわる押した。小さくて軽い彼女達の背中を押す。
少女とのふれあいなんてできないと思っていたぼくからすれば、夢のような体験だ
った。
「あはは、らくちーん。」
春菜が言った。彼女の緊張もだいぶほぐれてきた気がする。
「もっと早くしてよー。」
綾香がねだった。
「よーし。」
ぼくは力いっぱい彼女達を押す。片方ずつ交互に彼女達を押した。
「きゃははは!」
「うわーい、はやーい!」
ふたりとも喜んでいるが、さすがにぼくも疲れてきた。腕が重くなってくる。
「ふぅ、この辺で勘弁してよ。」
「あーおもしろかった。」
綾香の笑顔がまぶしかった。
「じゃあ、春菜ちゃん。今度はくつのとばしっこしようよ。」
「いーよー。負けないもんね。」
ぼくはブランコのすぐ近くのベンチで休んでいた。
綾香がブランコをこいで反動をつけ、勢いよく足をあげる。彼女のくつがきれいな
放物線を描いて砂場にぽんと落ちた。
「こんどはわたしね。」
春菜も同じようにくつを飛ばす。綾香に比べるとより高く、より早く飛んでいる。
くつが砂場に落ちた。春菜の方が1mほど遠くに飛ばしていた。
「わたしの勝ちだね。」
「すごいなぁ。春菜ちゃん。」
「じゃあおにいさん、くつとってきて。」
「はいはい。」
ぼくは立ち上がると砂場へ歩いて行き、彼女達のくつを拾った。ふたりのくつは小
さかった。こんな小さな足をしていると思うと、彼女達を守ってあげたいという感
情がわいてきた。そのあともふたりは何度かくつを飛ばして遊んだ。ぼくはその度
に拾いに行かされたが、悪い気はしなかった。
ふたりがブランコに飽きて今度は滑り台で遊び始めた。体の大きいぼくは、その
滑り台は滑れない。ぼくは脇に立って彼女達を眺めていた。
「ひゅうううう。」
綾香がぼくの前を滑りおりていく。
「あはははは。」
春菜も続いた。
ぼくは滑り台の横でかがんだ。上の方を見上げる。綾香がまた滑り台の上にのぼる。
白いものが見えた。ぼくはたとえようのない幸福感に包まれた。胸の奥から甘酸っ
ぱい間隔が広がってゆく。
「いくよーん。」
綾香がかわいく言った。彼女の薄暗い股間に目を奪われていたぼくは、はっとして
立ち上がった。
またふたりがブランコの方に移った。今度はぼくも一緒にブランコに乗った。
しばらくこいでいると、綾香が後ろからぼくのヨットパーカーのフードに砂を入れ
るのが分かった。
「こらっ!」
「きゃははははは!」
彼女のあどけない笑顔を見ていると、怒りの感情など沸き上がってこなかった。そ
の笑顔では、どんなことをやっても許してしまえるような気がした。
そのあとも何度もフードに砂や木の葉をいれてくるので、ぼくはお仕置きをしよう
と考えた。ブランコに乗った彼女を後ろからくすぐる。
「きゃははは。」
彼女がもがいてブランコから落ちる。彼女は顔を地面で打った。
(やばい!)
そう思うと同時に、彼女の顔が歪んだ。
「うわーーん!」
彼女は声をあげて泣き出した。ぼくは焦った。どうしていいのか分からない。
「あー、立花が綾香を泣かしたー。」
春菜がぼくを責めた。必死に肩を抱いて彼女をなだめるが、いっこうに泣きやんで
くれない。
「ごめんね、ごめんね。」
ぼくは錯乱状態に陥りながらも、彼女を慰めなくてはいけないという一心でなんと
か自分を保っていた。
「だいじょうぶ?」
春菜が綾香をなだめる。ぼくよりも冷静で、包み込むような感じで。春菜の冷静さ
には自分の無力さを思い知らされた。
自分を責めた。自分を卑下した。ぼくは何をやっているのだろう。彼女を泣かせて
しまってなんてやつなんだろう。全くひどい人間だ。人間失格だ。
うつ的な思考パターンにはまりながらも必死に彼女をなだめる。そのかいあってか、
彼女は落ちつき、「ひっく、ひっく」というしゃっくりをあげていた。
「綾香ちゃんはよく泣くから、いつも学校でわたしがなぐさめてあげるんだよ。」
春菜はえらいなと思った。
ようやく綾香も落ちつきを取り戻した。しかし機嫌を損ねてしまって、ぼくと口
を聞いてくれない。というよりは、気まずい状況になって、どう話していいのか分
からないというような感じだった。彼女自身はもう怒っていないだろう。
夕方の5時を過ぎ、春菜が「帰る」と言い出した。もう少し彼女達と過ごしたか
ったが、彼女達が親にしかられると思うと、引き留める訳にはいかなかった。
「じゃあね、またあした。」
春菜が言った。
『ばいばい。』
手を振る綾香の口元が声を出さずにそう言った。
ぼくたちは彼女達のリードでブランコで遊ぶことになった。
「ねー、はやくはやくー。」
綾香がぼくの手を引き、春菜はぼくを後ろから押した。ブランコのところまで来る
と、ふたりはさっさと腰をかけてしまった。
「おしてー。」
綾香がぼくにねだる。
「はいはい。」
綾香の背中を押す。彼女の背中はすごく小さくて、とても危なっかしい感じがした。
「きゃははは!」
綾香が声をあげて笑った。こどもは無邪気でいい。これは特別な感情がなくても、
普段から思っていることだ。
「春菜ちゃんも押してもらいなよ。」
「わたしはいい。」
春菜は少しうつむきながら、自分でブランコをこいでいた。
「押してあげるよ。」
ぼくは春菜も押してあげた。すこし春菜は緊張しているのか、綾香に比べるとおと
なしい。ふたりの少女を変わるがわる押した。小さくて軽い彼女達の背中を押す。
少女とのふれあいなんてできないと思っていたぼくからすれば、夢のような体験だ
った。
「あはは、らくちーん。」
春菜が言った。彼女の緊張もだいぶほぐれてきた気がする。
「もっと早くしてよー。」
綾香がねだった。
「よーし。」
ぼくは力いっぱい彼女達を押す。片方ずつ交互に彼女達を押した。
「きゃははは!」
「うわーい、はやーい!」
ふたりとも喜んでいるが、さすがにぼくも疲れてきた。腕が重くなってくる。
「ふぅ、この辺で勘弁してよ。」
「あーおもしろかった。」
綾香の笑顔がまぶしかった。
「じゃあ、春菜ちゃん。今度はくつのとばしっこしようよ。」
「いーよー。負けないもんね。」
ぼくはブランコのすぐ近くのベンチで休んでいた。
綾香がブランコをこいで反動をつけ、勢いよく足をあげる。彼女のくつがきれいな
放物線を描いて砂場にぽんと落ちた。
「こんどはわたしね。」
春菜も同じようにくつを飛ばす。綾香に比べるとより高く、より早く飛んでいる。
くつが砂場に落ちた。春菜の方が1mほど遠くに飛ばしていた。
「わたしの勝ちだね。」
「すごいなぁ。春菜ちゃん。」
「じゃあおにいさん、くつとってきて。」
「はいはい。」
ぼくは立ち上がると砂場へ歩いて行き、彼女達のくつを拾った。ふたりのくつは小
さかった。こんな小さな足をしていると思うと、彼女達を守ってあげたいという感
情がわいてきた。そのあともふたりは何度かくつを飛ばして遊んだ。ぼくはその度
に拾いに行かされたが、悪い気はしなかった。
ふたりがブランコに飽きて今度は滑り台で遊び始めた。体の大きいぼくは、その
滑り台は滑れない。ぼくは脇に立って彼女達を眺めていた。
「ひゅうううう。」
綾香がぼくの前を滑りおりていく。
「あはははは。」
春菜も続いた。
ぼくは滑り台の横でかがんだ。上の方を見上げる。綾香がまた滑り台の上にのぼる。
白いものが見えた。ぼくはたとえようのない幸福感に包まれた。胸の奥から甘酸っ
ぱい間隔が広がってゆく。
「いくよーん。」
綾香がかわいく言った。彼女の薄暗い股間に目を奪われていたぼくは、はっとして
立ち上がった。
またふたりがブランコの方に移った。今度はぼくも一緒にブランコに乗った。
しばらくこいでいると、綾香が後ろからぼくのヨットパーカーのフードに砂を入れ
るのが分かった。
「こらっ!」
「きゃははははは!」
彼女のあどけない笑顔を見ていると、怒りの感情など沸き上がってこなかった。そ
の笑顔では、どんなことをやっても許してしまえるような気がした。
そのあとも何度もフードに砂や木の葉をいれてくるので、ぼくはお仕置きをしよう
と考えた。ブランコに乗った彼女を後ろからくすぐる。
「きゃははは。」
彼女がもがいてブランコから落ちる。彼女は顔を地面で打った。
(やばい!)
そう思うと同時に、彼女の顔が歪んだ。
「うわーーん!」
彼女は声をあげて泣き出した。ぼくは焦った。どうしていいのか分からない。
「あー、立花が綾香を泣かしたー。」
春菜がぼくを責めた。必死に肩を抱いて彼女をなだめるが、いっこうに泣きやんで
くれない。
「ごめんね、ごめんね。」
ぼくは錯乱状態に陥りながらも、彼女を慰めなくてはいけないという一心でなんと
か自分を保っていた。
「だいじょうぶ?」
春菜が綾香をなだめる。ぼくよりも冷静で、包み込むような感じで。春菜の冷静さ
には自分の無力さを思い知らされた。
自分を責めた。自分を卑下した。ぼくは何をやっているのだろう。彼女を泣かせて
しまってなんてやつなんだろう。全くひどい人間だ。人間失格だ。
うつ的な思考パターンにはまりながらも必死に彼女をなだめる。そのかいあってか、
彼女は落ちつき、「ひっく、ひっく」というしゃっくりをあげていた。
「綾香ちゃんはよく泣くから、いつも学校でわたしがなぐさめてあげるんだよ。」
春菜はえらいなと思った。
ようやく綾香も落ちつきを取り戻した。しかし機嫌を損ねてしまって、ぼくと口
を聞いてくれない。というよりは、気まずい状況になって、どう話していいのか分
からないというような感じだった。彼女自身はもう怒っていないだろう。
夕方の5時を過ぎ、春菜が「帰る」と言い出した。もう少し彼女達と過ごしたか
ったが、彼女達が親にしかられると思うと、引き留める訳にはいかなかった。
「じゃあね、またあした。」
春菜が言った。
『ばいばい。』
手を振る綾香の口元が声を出さずにそう言った。