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小説(転載) 綾香とぼく 10/10

官能小説
08 /23 2015
第10章 別れ

いつもの時間に綾香がやってきたが、少しうつむき加減で落ち込んでいるように見
えた。
「どうしたの?なにか嫌なことでもあった?」
「綾香、ひっこしするの。」
ぼくは一瞬凍り付いた。こんな関係である。のこのこ引っ越し先まで遊びに行くわ
けにはいくまい。事実上の別れであった。引っ越し先を聞いてみると、電車を何回
も乗り継がなければいけないようなところだった。
 ぼくたちはベンチに座った。
「綾香、ひっこしししたくない。お兄ちゃんと会えなくなるのはいや。」
そう言うと綾香は抱きついてきた。ぼくは優しく綾香の頭を撫でてやった。
「会えなくなってもずっと友達だろ?」
「……うん。」
綾香は顔をあげるとぼくの顔をじっと見つめていた。ぼくは綾香の手をとるとぎゅ
っと握った。綾香も握り返した。
「じゃあ、綾香ひっこしの手伝いしなきゃいけないから……。」
「そっか。」
綾香は歩きだしながらも何度も何度もぼくの方を振り返った。ぼくも綾香の背中を
ずっと見つめていた。

ぼくのかわいい綾香。彼女との出会いは偶然の繰り返しだった。今のこの関係も、
神が与えてくれたような感じすらした。息を弾ませて走る綾香。ぼくを見上げて笑
顔を浮かべる綾香。友達と楽しく談笑する綾香。ぼくにとって、彼女の全てが輝い
ていた。そんな彼女と自分との関係が許されるなど、夢にも思っていなかった。

この幸福な時間はぼくは一生涯忘れない。
ありがとう、綾香。
おわり

小説(転載) 綾香とぼく 9/10

官能小説
08 /23 2015
第9章 キャッチボール


 緑山公園で待っていると綾香が友達と一緒に帰ってきた。ぼくは彼女に声を掛け
た。
「あ、立花さんだ。」
いつもと変わらない表情でぼくを迎えてくれる綾香。
「綾香ちゃん、この人だあれ?」
友達の女の子が聞く。
「立花さんっていうの。」
「ふーん。お兄さんいくつ?」
「え、はたちだけど。」
「ねぇ、綾香ちゃん、今度一緒に遊ばない?」
ぼくが綾香を誘った。
「えー、20才が8才と遊ぶのぉ。へんなの。」
友達の娘が言った。確かに変である。だが、ぼくは本気だった。
「じゃあ、これからあそぼっか?」
綾香が提案した。ぼくはいつでも構わない。
「うん、そうしよう。」

綾香がいったん家に帰ってカバンを置くと、住宅街のちょっと広くなった道路の方
に行った。先ほどの娘は帰っていった。彼女とふたりきりになれた。ぼくはどきど
きしていた。
「立花さんお待たせ。」
小学校で使うドッジボールのような赤いボールだった。
「キャッチボールしよっ。」
「ようし。」
彼女が振りかぶって、ボールを投げる。ぼくがぽんと受け取る。ぼくは体を動かす
のは得意ではなかったが、相手はこども、丁度よいレベルだった。ぼくがボールを
山なりにゆっくり投げて返す。ふたりの間を赤いボールがぽんぽんと行き来した。
「もうちょっと強くしてもいいよ。」
「じゃあ、いくよ。」
ぼくは少し手に力をいれて投げた。
「きゃっ!」
ボールが彼女の手に当たって、宙に飛んだ。
「やっぱりもちょっと力抜いて。」
そんなことを言いながら彼女とキャッチボールをした。ぼくは彼女と一緒に時間を
過ごせるだけでも幸せを感じていた。

「お菓子食べよっか。」
ぼくが彼女に言った。
「うん食べる食べる。」
彼女がボールをわきに抱えて、近寄ってきた。ぼくはカバンからチョコレートのス
ナック菓子を取り出して、ふたを開けた。彼女が2、3個お菓子を手にとり口にほ
おばった。ぼくをちらっと見る。そのしぐさがとてもかわいかった。
「あ、これちょうだい。」
彼女がお菓子のおまけのシールをほしがっている。
「いいよ。」
「やった。」
彼女はにっこりと笑うと、シールを受け取った。

「綾香ちゃん、クラスに好きな男の子いる?」
ぼくは話題を変えた。
「いないよ。」
その「いないよ」は本当はいるのに照れていないと言っているのか、本当にいない
のか、ぼくには分からなかった。
「でもね、綾香、男の子に好きって言われたことあるよ。」
「へぇ、すごいね。」
彼女はクラスの男子にも人気があるようでうれしかった。
本当はここで「ぼくは綾香ちゃんのことが好きだ」と伝えたかったが、どうしても
言い出せなかった。

「ねぇ、これからどうしよっか。誰か呼んでくる?」
ぼくはふたりきりで話がしたかったが、彼女がそうしたいのならばそれも悪い気は
しなかった。
「ちょっとまっててね。」
彼女は駆け出し、曲がり角を曲がると姿が見えなくなった。
しばらく待っていると、春菜を連れて綾香は戻ってきた。
3人でボール遊びをして楽しんだ。

あっという間に日が暮れ、あたりが薄暗くなってきた。
そろそろ春菜が帰ると言い出したので、解散することになった。
「またあしたも公園にきてね。じゃあね、ばいばーい。」
綾香はいつものように、笑顔で手を振ってくれた。

小説(転載) 綾香とぼく 8/10

官能小説
08 /23 2015
第8章 約束


 3時の約束にぼくは1時から緑山公園にいた。まだ早いと思いながらも、はやる
気持ちを抑えられなかった。ベンチに座って、彼女のことを思い浮かべる。何をし
て遊んで、何を話そう。考えるだけでも楽しくなってきた。
 2時間の時が過ぎ、約束の時間になった。ぼくは期待と興奮でどきどきしていた。
一緒にお菓子を食べて、ブランコで遊んで、ベンチに座って話をして。ぐるぐると
楽しいひとときの情景が頭の中をめぐる。
 約束の時間を15分ほど過ぎる。彼女は来ない。少し不安になってきた。約束を
忘れているのだろうか。何か事故でもあったのではないだろうか。いや、きっと何
かで遅れているだけだ。
 30分過ぎた。明らかに遅すぎる。どうしたんだろう。いや、彼女はきっと来る、
そう自分を言い聞かせた。
 45分過ぎたところでぼくはあきらめた。彼女に対する怒りは全くないが、すご
く心配だ。何かあったとしても、ぼくに確認する手段はない。オフィシャルな関係
でないことに少し悲しくなった。ぼくはとぼとぼと公園をあとにした。

 数日後、いつものように、緑山公園で彼女を待っていた。彼女の帰りを待つこと
45分。今日は彼女とは会えないかもしれないという不安の中、髪を下ろした彼女
が息を弾ませて帰ってきた。いつ見てもかわいい。夕日の中、彼女の瞳は宝石のよ
うに見えた。
 はじめは彼女はうつむいていて、ぼくには気がつかなかった。
「綾香ちゃん。」
声を掛ける。
「なあに?」という表情。
「この前ずっと待ってたんだよ。」
緑山公園の約束のことだ。
「習字があるから、綾香、遊べなかったの。」
「その次の日のことだよ。」
「次の日?」
完全に忘れている。まあ、彼女に何事もなかったので安心した。こどもの記憶力と
いうのはこの程度のものらしい。過剰に心配していたのがばからしく思えた。

 公園から彼女の家まで送ってあげた。ふたことみことなんとなく言葉を交わし歩
いた。彼女に対しては、どうしても物事を言い出しにくくなる。どうしても緊張し
てしまう。彼女と一緒にいると、頭が真っ白になる。聞きたいこと、話したいこと
はたくさんある。それが言えない自分にいらだった。
 そうしているうちにあっという間に彼女の家についた。
(ばいばい。)
家の人に気付かれるとまずいのか、彼女は口元だけでそう言った。お互い手をあげて
その日は分かれた。

小説(転載) 綾香とぼく 7/10

官能小説
08 /23 2015
第7章 再会

 運動会に会いに行ったきり、ひとつきほどの間彼女の姿を目にすることはなかっ
た。彼女への想いは募っていき、もう一度彼女と会って話をしてみたいと思った。
以前遊ぶのを断られて以来、彼女とは話していない。彼女がぼくのことをどう思っ
ているのか分からなかった。嫌われているのだろうか。それとも、親に止められて
いるのだろうか。
 これ以上彼女に近づかない方がいいのだろうか。傷つけてはしまわないだろうか。
どうしよう。
 そうだ。手紙だ。手紙を書いてみようか。彼女の住所は分かっている。どうだろ
う。しかし、手紙ならば両親の目にもつく。いっそ、ご両親にぼくの気持ちを伝え
ようか。いや、だめだ。見知らぬ青年が自分の幼い娘に恋愛感情を抱いていること
ほど気持ち悪いことはない。手紙はあきらめよう。

 それから、数日が過ぎた。どうしても彼女にあってみたくなった。散歩に出ると
自然に彼女の家や彼女の通学路の方に行ってしまう。何日もそんなことを繰り返し
ていた。

 ある日のことだった。ぼくはルールを破って、白鳩小学校の近くの横断歩道のあ
たりで、彼女を待っていた。いくら待っても彼女は帰ってこないので、「もう家に
帰ったのかな」と思い、最後に白鳩小学校の校門前を一目見てから帰ろうと思った。
いままでも何度か横断歩道で待ってはいたが、学校を見ようと思ったのは今日が初
めてだった。本当に気まぐれの思いつきだった。
 小学校近くの曲がり道を曲がると学校前の道路に出る。ぼくがその曲がり角を曲
がり、学校の方を見たとき、友達と楽しく話しながら帰る彼女の姿を見つけた。体
中に電気が走った。
 偶然だった。本当に偶然だったのだ。気まぐれでふと学校の方を覗くと、彼女に
会えたのだ。考えてみると、公園で初めて出会って以来、彼女との出会いは偶然の
積み重ねだった。まさに運命的な何かを感じた。
「あっ!立花さん。」
「あ、綾香ちゃん、おひさしぶり。」
本当はもっと喜びを表現したかったが、その場では感覚が麻痺してしまっていた。
「今日はどうしたの?」
ぼくがたずねる。
「学校の帰り。」
当たり前である。余りに彼女との出会いが唐突だったので、混乱してしまって言葉
が出てこない。他にも何か話したと思うのだがよく覚えていない。彼女はとくに嫌
そうな態度をするでもなく、友好的に接してくれた。「嫌われたのではないか」と
いうぼくの考えは、感情の読みすぎだった。半年間悩んで苦しんでいたのが、ばか
らしく思えてきた。
 彼女は髪が少し伸びたようだ。肩まで伸びた髪が魅力的だった。運動会の時に姿
を見ることはできたが、会話をするのはすごく久しぶりだった。

 彼女と他にふたりの友達と一緒に歩く。ぼくは持っていたキャンディーを3人に
渡した。彼女はぼくとの出会いを友達に話していた。
「この人と会ったときのこと、すごくおもしろいんだよ。」
「えー、綾香ちゃん、なになに?」
友達のひとりが彼女に聞く。
「うふふ、立花さんおぼえてる?」
「ああ、桜の木のところだろ?」
「そうそう。」
「『桜の木の枝をひっぱっちゃだめ』って言うんだよ。きゃはは。」
彼女は自慢げにぼくのことを友達に話している。
「でね、この人のことはお母さんには内緒なの。」
彼女なりにぼくとの関係のことは自覚があるのだろうか。ぼくと綾香ちゃんの不思
議な関係のことを。

 彼女はふたりの友達とマンションへ入っていく。彼女は友達と遊ぶようだ。
「ねえ、明日ぼくと遊ばない?」
「どこで?」
「緑山公園で。」
緑山公園とは彼女と初めて出会った公園である。
「うん、いいよ。じゃあ、あした3時ごろね。」
あまりにもあっけなく約束ができた。今まで彼女と会えなかったことを考えると、
あっけなさすぎた。
「春菜ちゃんも一緒に連れて行くから。」
「うん。」
「あ、雨がふったらなしね。」
「分かった。」
春菜ちゃんも一緒だそうだが、できればぼくは彼女とふたりっきりで会いたかった。
雨は降ってほしくない。そんなことで彼女との関係が切れてしまうのはすごく惜し
い。
 明日緑山公園で3時。ぼくはその約束を胸に刻みつけた。

小説(転載) 綾香とぼく 6/10

官能小説
08 /23 2015
第6章 運動会

 半年の月日が流れた。しかし、まだぼくの心は彼女に奪われたままだった。何度
も彼女に会いたいと思った。だが、拒絶されるのが恐くてどうしても会いに行けな
かった。また、彼女に苦痛を与えるので、彼女に近づくのはやめようと思った。彼
女の通学路や家には近づかないというルールを作った。何度かはガラスの靴を探し
に公園にも行ってみた。しかし一度も彼女とは会えなかった。
 乾いた味のないような日々だった。毎日同じことの繰り返しで、楽しいと感じる
ものはなかった。いつも彼女のことが忘れられなかった。記憶の中で彼女の笑顔を
繰り返し再生していた。

 ある日、TVの天気予報で「明日はほとんどの小中学校で運動会ですね。」と言
っているのを聞いた。ふと彼女のことを思い出した。会いに行きたい。彼女に近づ
くのを自分で禁じていたぼくは、見るだけなら、見るだけならいいだろうと自分を
言い聞かせた。
 日曜日の朝、ぼくは最近買ったデジタルカメラを持って、彼女の通う白鳩小学校
へ行ってみた。運動会、やっていなかったらどうしよう、教師に注意されたらどう
しよう、と不安になりながらも、彼女を一目見るんだという考えで自分を引っ張っ
て行った。

 白鳩小学校につく。人混みとざわめきから、すぐに運動会が開かれているのが分
かった。全くの部外者が校内に入るわけだから少し気が引けた。しかし、いったん
校内に入ってしまうと他の父兄と同化してしまい、違和感はなくなった。
 彼女を探して歩き回る。ブルマー姿の少女たちに目を奪われながらも、彼女を探
すことは忘れなかった。半年間もブランクがあったので、完全に彼女の顔を思い出
せなかったが、彼女の雰囲気は忘れていなかった。
 午前中をかけて彼女を探したが、見つけられなかった。昼食の休憩をはさんで、
午後も探す。おかしい。いるはずだ。まさか休んでいるのだろうか。半ばあきらめ
ながらも、小学3年生が座っている席を何度も探した。
 日が傾き始めた中、数時間立ちっぱなしの足に痛みを覚え、あきらめようとした
とき、彼女の姿が目に入った。見つけた。嬉しかった。彼女は元気そうだった。い
つもの笑顔を浮かべ、友達と楽しく話していた。声を掛けたかったが、どう声を掛
けていいか分からず、彼女のそばで、その姿を眺めていることしかできなかった。
だが、それだけでもぼくは満足した。

 運動会のプログラムも終わり、校長が終わりの挨拶を始めた。もう、彼女には会
うチャンスがないと悟り、ぼくは白鳩小学校をあとにした。
 半年ぶりに満たされた感じがした。彼女が元気にしていただけでもよかった。

小説(転載) 綾香とぼく 5/10

官能小説
08 /23 2015
第5章 喪失

 次の日、またその公園に行ってみた。息を弾ませてぼくは公園の階段を上がると、
いつものベンチで彼女達を待った。
「またあした。」
そのことばを頼りにぼくは待った。

 どれぐらい待っただろう。1時間は待った。もう時刻は4時を過ぎている。彼女
達は来ない。
どうしたんだろう。不安に包まれる。昨日、ブランコで泣かせてしまったことを怒
っているのだろうか。親にそのことを話して、ぼくと会うのを止められているのだ
ろうか。しかし、考えたところでなにも始まらなかった。
 彼女の名字と住んでいるだいたいの地域から、エンジェルラインを使って彼女の
住所、電話番号は割り出した。事前に彼女の住所も確認済みだ。彼女の家に行こう
か。電話を掛けてみようか。いやだめだ。もしぼくのことを彼女が嫌がっていたら、
それは苦痛でしかない。
 その日はぐるぐると考えたあげく、おとなしく帰ることにした。

 次の日、どうしても綾香に会いたくて、自分を止められず彼女の家の近くに行っ
た。ひっそりとした住宅街。自分の足音が妙に大きく聞こえる。彼女の家だ。白い
二階建ての一戸建て住宅は明かりは消え、じっと黙り込んでいた。
 少し離れた駐車場で、学校からの彼女の帰りを待つ。自分の姿を想像してぞっと
した。
 30分ぐらいしたときだ。彼女の家に誰か来た。遠くからなのでよく分からない
が、自転車に乗ったその娘は綾香ではないように見えた。しばらくすると、彼女の
家からひとりの少女が現れた。綾香?彼女はすでに家に帰っていたのだ。
 ふたりがこちらに向かって歩き出す。ぼくは立ち上がってふたりに近づいていっ
た。
「あ、立花さんだ。」
綾香がぼくに気がついた。
「やあ。」
ぼくはしらじらしくも手をあげて挨拶する。
もうひとりの自転車を押している娘は春菜だった。
「ねぇ、今日ぼくと遊ばない?」
綾香と春菜が顔を見合わせた。
「……今日はだめ。」
綾香が言う。
「どうしても?」
「……うん。」
綾香の態度がぼくに不安感を与えた。まるで親に会うのをやめろと言われたように、
ぼくに対してなにかつきあいにくそうな態度を示している。
(ひょっとして、もうだめかな……。)
そんな感情がこみ上げてきた。
「じゃあ、しょうがないね。ぼくは帰るよ。」
ぼくはふたりに分かれを告げると自宅に向かって歩きだした。
彼女達を振り返ってみる。ふたりの少女がぼくを見つめて、手を振っている。ぼく
もそれに答えた。まるで、本当の分かれのように。

 その夜、ぼくは自宅で泣いた。

eroerojiji

小さい頃からエロいことが好き。そのまま大人になってしまったエロジジイです。