小説(転載) 雨の日の過ごし方(冷凍庫の中のチョコレイト)
官能小説
雨の日の過ごし方(冷凍庫の中のチョコレイト)
彼女には愛する人がいた。
「スナフキン」友達は、彼女・・・聡美の愛する人のことをそう呼んでいた。
彼には放浪癖があった。
遠い異国を、バックパック一つ背負いながら一人で回り、その目に何を映すのか・・・
聡美には理解しがたいことだったが、聡美は彼の、その奔放さにどうしようもなく惹かれ、彼は聡美の暖かさで旅の疲れを癒した。
彼は聡美を愛しているのか・・・
それは誰にも・・・そして彼自信にもわからないことだった。
帰るなら聡美の胸しかない・・・それは彼にとって揺るぎ無い真実だった。
そして、一所にじっとしていられないというのも、例え聡美の笑顔が曇ろうとも、変え難い事実だったのだ。
聡美の家の冷凍庫には、チョコレイトが何ヶ月も入れられた状態になっている。
彼に渡そうと思い買っておいたものだが、彼の帰国が思いの他延びてしまっている。
チョコレイトは冷凍庫の中で冷たさと頑なさを増して行く。
それはあたかも、聡美の心のように・・・
愛する人の温かみを忘れかけた冷たい心と、それを溶かして食べてしまって他の暖かさを受け入れることのできない心。
聡美は冷凍庫を開けるたびに、彼や、彼との関係を思う。
彼は聡美を必要としている。
それは聡美にも痛いほどわかるし、彼の気持ちに応えたいと思う。
でも彼は違う。
彼は必要とはしてくれるけれど、私の気持ちに応えようとはしてくれない・・・
このチョコレイトはもう冷凍庫の中から出して食べてしまわなくてはいけないのではないだろうか・・・
そんなことを思いながら、聡美は無意識に自らの乳房を弄ぶ。
彼の愛撫を思い出しながら・・・
彼は普段もそうだが、聡美を抱くときも寡黙だ。
ただ、その手、その舌は的確に聡美の弱点を突いてくる。
そして、聡美の中に自身をうずめると、時折、吐息を漏らす。
その吐息が、聡美をゾクゾクするほど感じさせる。
ふと見ると、外は雨だ。
(なんだか私の心の中みたいね・・・)
聡美はそんなことを思いながら、軽くため息をつく。
(もう、どのくらい私は一人だったのだろう?)
暗い空と冷蔵庫を交互に見ながら、聡美はそんなことを考えていた。
そうして、取りとめも無い思考の中、彼女はだんだんと熱っぽく自らを愛撫していく。
「ん・・・はぁ・・・あん・・・」
彼女の指はだんだんと湿った花びらへと降りて行く。
充分硬くなった突起を弄ぶと、寂しさと情けなさで自然と涙がこぼれてしまう。
聡美の精神は限界にあるのかもしれなかった。
(私の中をいっぱいにして・・・)
聡美は心の中で叫び続けた。
生身の、触れられる確かな何かが欲しい!
聡美は電話で、彼との共通の友人である浩樹を呼んだ。
もう、それは、押さえ様も無い感情のほとばしりだった。
「浩樹・・・すぐに来て・・お願い!」
受話器から聞こえる涙声の聡美に、浩樹は雨の中、彼女の家に急いだ。
*********************************************************************************************
「聡美・・・」
聡美はドアを開けるとすぐに、浩樹に抱きつき唇を重ねてきた。
「うぅ・・ん・・・聡美!」
浩樹は驚いた。
確かに聡美の孤独感は、浩樹にもわかりすぎるほどわかっていた。
だが、自分にはどうしようもしてやれないことだと思っていた。
それは二人の問題なのだから・・・
しかし、それは聡美の側だけの深刻な問題であって、世界を放浪する「奴」には深刻な問題ではなかったのだ。
聡美の目は追い詰められて濡れながら、じっと浩樹の目を覗きこむ。
「聡美!・・・やめろよ!おまえらしくないだろ!」
浩樹は、いつも自分に、冗談交じりに帰ってこない彼のことを愚痴る聡美の、落ち着いていてしかも明るい笑顔を思い出しながら、抵抗した。
しかし、聡美はドアをすばやく閉めると、「雨の匂いがするね・・・」そう言って、ぞくっとするような女の顔を覗かせた。
そうして、彼の足元に跪くと、股間にジッパーを下げ始めた。
聡美はジッパーを下ろすと、覗いたトランクスの上から、限りなく優しく、その白い小さな手で浩樹の股間を撫で始めた。
浩樹は何故か動くことができず、聡美の手に全てをゆだねていた。
「ふふ・・・浩樹、硬くなってきてる・・・」
聡美は浩樹の反応をゆっくりと楽しみながら、少しづつ愛撫に力を加えて行く。
それは、あたかも牝ライオンが獲物をじっくり嬲りながら食べていくように・・・
ちゅぷ・・ちゅ・・・
聡美は唇の端からきらきら光るよだれを垂らしながら、遂には浩樹の、既に硬くなった肉棒を食らう。
「う・・・やめろ・・・聡美・・・」
例え感じさせられているとは言っても、跳ね除けようと思えば、聡美を跳ね除けることはできる。
しかし、浩樹はあえてそれをしなかった。
聡美の、危うい精神状態が伝わってきたからかも知れなかった。
浩樹は立ったまま聡美の愛撫を受けながら、聡美の髪の毛や顔を優しく撫でてやった。
聡美は甘える猫のようにその手に頬を預ける。
聡美は顕かに形に見える物を欲していた。
自分の愛撫によって漏らされる吐息・・・優しく撫でてくれる大きな手・・・
浩樹は心を決め、聡美を抱き上げると、ベットに寝かした。
「聡美・・・」
浩樹は、聡美に覆い被さりながら、何度もその名を呼んでやった。
「浩樹・・・ごめんね・・・」
その時、初めて本来の聡美が姿を現した。
「浩樹・・・うぅ・・・くっ・・・」
聡美はしゃくりあげるように泣きながら、浩樹を見つめる。
「やめるか?」
浩樹は、聡美に問い掛けた。
ここで止めるのは辛いところだが、聡美の様子を見たら、抱かないほうがいいような気がしてきた。
ここで抱けば、きっとお互いが後悔するような気がしたのだ。
しかし、聡美の反応は違った。
「来て・・・浩樹。私の中を一杯にして・・・めちゃくちゃにして・・・」
そう訴えてきたのだ。
「聡美・・・」
浩樹は、聡美の元に、心に伴って訪れた身体の空虚感をなんとなく理解できるような気がした。
聡美は求めている・・・それは俺でなくてもいいのかもしれない・・・それでも・・・
そう、聡美がこれほど切実に求めているのなら、友達として、応えてやりたい・・・
浩樹は静かに、痛いほど硬くなった肉棒を聡美の花びらに埋めこんだ・・・まるで空虚な世界を、何かで満たしてやるように・・・
「あぁん・・・」
聡美はのけぞりながら、吐息を漏らす。
くちゅ・・・くちゅ・・・
浩樹はゆっくり腰を動かし始める・・・優しく、深く・・・
「ふぅ・・・ん・・・はぁ・・・あぁ・あっ・・あっ・・・」
聡美の息遣いが荒くなる・・・そして、まるで捕まえた獲物を決して逃がさないといったように、浩樹を締め付ける。
「うぅ・・・聡美・・・そんなにしたら・・・」
きゅっ、きゅっ・・・とリズムを取りながら深く沈む肉棒を締め付ける聡美・・・
「聡美・・・聡美・・・うぅ・・・ん・・」
最初は聡美を慰めるつもりだった浩樹も、聡美に翻弄され始めている。
もっと奥までと言わんばかりに、腰を突き出す聡美。
たまらず浩樹は、聡美の足を抱え込み、激しく腰を打ちつけ始めた。
「はぁ・・・ん、ん・・あっ、あっ、あっ、あっ・・・」
聡美の表情が顕かに変わった。
頬はほんのりと上気し、眉根を寄せて快楽に耐えている。
「聡美・・・いいのか?・・ん・・くっ・・」
「いいのぉ・・・浩樹・・・もっと・・・もっと激しく突いて!・・・壊れるくらい・・・浩樹の硬いのでぐちょぐちょにして・・」
「聡美・・・」
二人は何もかも忘れて2匹の獣に成り果てていた。
部屋には雨の音と、二人の性器から溢れ出す淫らな液体が混ざり合うくちゅくちゅという音、そして静かだが激しいあえぎ声だけが響いていた。
*********************************************************************************************
「はぁ・・・はぁ・・・」
すべてが終わった部屋では、余韻にひたる聡美の静かな吐息が聞こえる。
雨はさっきより小降りになっている。
「聡美・・・」
浩樹は聡美の隣に横たわり彼女の柔らかい髪を撫でている。
聡美は窓の外の景色を見つめながら、心地よさそうに浩樹の手に頭をあずける。
「ふふ・・・」
聡美がふいに浩樹の方を向き、「チョコレイト食べない?」と笑顔で聞いた。
「は?」
浩樹は突然の問いに、ちょっと意味がわからないといった表情をしたが、聡美は一糸まとわぬ姿でベッドから立ちあがり、ひんやりと冷えたチョコレイトを持って来た。
どう考えてもバレンタインのチョコレイトらしきものだったが、かなり時期はずれだ。
「何?これ」
浩樹は怪訝そうな顔をして、聡美を見つめる。
聡美は楽しそうにチョコレイトの包みを開けながら、答える。
「これは・・・スナフキンがムーミン谷から帰ってきたら渡そうと思ってたチョコレイト」
そう言って色とりどりのチョコレイトが並ぶ中から一粒頬張る。
「ふふ・・・おいしい・・・こんなにおいしい物を食べずに大事に取っておいたなんて・・・」
「ずいぶんおいしそうだね。」
浩樹も、聡美の晴れ晴れとした表情に楽しげに話しかける。
「とってもね。」
聡美も楽しげだ。
「あ・・・また雨が降ってきたみたい・・・」
ベッドに座り外を見る聡美を後ろから優しく抱きしめながら、浩樹も外を見る。
「きれい・・・」
聡美がぽつりと言った。
「ある意味そうかもね・・・公園の木やなんかの緑は雨にうたれている時が一番いきいき見えるかもね・・・」
浩樹は聡美の耳たぶを唇であまがみしながら、そんなことをつぶやいた。
部屋には雨の音と、暖かい時間が流れている。
彼女には愛する人がいた。
「スナフキン」友達は、彼女・・・聡美の愛する人のことをそう呼んでいた。
彼には放浪癖があった。
遠い異国を、バックパック一つ背負いながら一人で回り、その目に何を映すのか・・・
聡美には理解しがたいことだったが、聡美は彼の、その奔放さにどうしようもなく惹かれ、彼は聡美の暖かさで旅の疲れを癒した。
彼は聡美を愛しているのか・・・
それは誰にも・・・そして彼自信にもわからないことだった。
帰るなら聡美の胸しかない・・・それは彼にとって揺るぎ無い真実だった。
そして、一所にじっとしていられないというのも、例え聡美の笑顔が曇ろうとも、変え難い事実だったのだ。
聡美の家の冷凍庫には、チョコレイトが何ヶ月も入れられた状態になっている。
彼に渡そうと思い買っておいたものだが、彼の帰国が思いの他延びてしまっている。
チョコレイトは冷凍庫の中で冷たさと頑なさを増して行く。
それはあたかも、聡美の心のように・・・
愛する人の温かみを忘れかけた冷たい心と、それを溶かして食べてしまって他の暖かさを受け入れることのできない心。
聡美は冷凍庫を開けるたびに、彼や、彼との関係を思う。
彼は聡美を必要としている。
それは聡美にも痛いほどわかるし、彼の気持ちに応えたいと思う。
でも彼は違う。
彼は必要とはしてくれるけれど、私の気持ちに応えようとはしてくれない・・・
このチョコレイトはもう冷凍庫の中から出して食べてしまわなくてはいけないのではないだろうか・・・
そんなことを思いながら、聡美は無意識に自らの乳房を弄ぶ。
彼の愛撫を思い出しながら・・・
彼は普段もそうだが、聡美を抱くときも寡黙だ。
ただ、その手、その舌は的確に聡美の弱点を突いてくる。
そして、聡美の中に自身をうずめると、時折、吐息を漏らす。
その吐息が、聡美をゾクゾクするほど感じさせる。
ふと見ると、外は雨だ。
(なんだか私の心の中みたいね・・・)
聡美はそんなことを思いながら、軽くため息をつく。
(もう、どのくらい私は一人だったのだろう?)
暗い空と冷蔵庫を交互に見ながら、聡美はそんなことを考えていた。
そうして、取りとめも無い思考の中、彼女はだんだんと熱っぽく自らを愛撫していく。
「ん・・・はぁ・・・あん・・・」
彼女の指はだんだんと湿った花びらへと降りて行く。
充分硬くなった突起を弄ぶと、寂しさと情けなさで自然と涙がこぼれてしまう。
聡美の精神は限界にあるのかもしれなかった。
(私の中をいっぱいにして・・・)
聡美は心の中で叫び続けた。
生身の、触れられる確かな何かが欲しい!
聡美は電話で、彼との共通の友人である浩樹を呼んだ。
もう、それは、押さえ様も無い感情のほとばしりだった。
「浩樹・・・すぐに来て・・お願い!」
受話器から聞こえる涙声の聡美に、浩樹は雨の中、彼女の家に急いだ。
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「聡美・・・」
聡美はドアを開けるとすぐに、浩樹に抱きつき唇を重ねてきた。
「うぅ・・ん・・・聡美!」
浩樹は驚いた。
確かに聡美の孤独感は、浩樹にもわかりすぎるほどわかっていた。
だが、自分にはどうしようもしてやれないことだと思っていた。
それは二人の問題なのだから・・・
しかし、それは聡美の側だけの深刻な問題であって、世界を放浪する「奴」には深刻な問題ではなかったのだ。
聡美の目は追い詰められて濡れながら、じっと浩樹の目を覗きこむ。
「聡美!・・・やめろよ!おまえらしくないだろ!」
浩樹は、いつも自分に、冗談交じりに帰ってこない彼のことを愚痴る聡美の、落ち着いていてしかも明るい笑顔を思い出しながら、抵抗した。
しかし、聡美はドアをすばやく閉めると、「雨の匂いがするね・・・」そう言って、ぞくっとするような女の顔を覗かせた。
そうして、彼の足元に跪くと、股間にジッパーを下げ始めた。
聡美はジッパーを下ろすと、覗いたトランクスの上から、限りなく優しく、その白い小さな手で浩樹の股間を撫で始めた。
浩樹は何故か動くことができず、聡美の手に全てをゆだねていた。
「ふふ・・・浩樹、硬くなってきてる・・・」
聡美は浩樹の反応をゆっくりと楽しみながら、少しづつ愛撫に力を加えて行く。
それは、あたかも牝ライオンが獲物をじっくり嬲りながら食べていくように・・・
ちゅぷ・・ちゅ・・・
聡美は唇の端からきらきら光るよだれを垂らしながら、遂には浩樹の、既に硬くなった肉棒を食らう。
「う・・・やめろ・・・聡美・・・」
例え感じさせられているとは言っても、跳ね除けようと思えば、聡美を跳ね除けることはできる。
しかし、浩樹はあえてそれをしなかった。
聡美の、危うい精神状態が伝わってきたからかも知れなかった。
浩樹は立ったまま聡美の愛撫を受けながら、聡美の髪の毛や顔を優しく撫でてやった。
聡美は甘える猫のようにその手に頬を預ける。
聡美は顕かに形に見える物を欲していた。
自分の愛撫によって漏らされる吐息・・・優しく撫でてくれる大きな手・・・
浩樹は心を決め、聡美を抱き上げると、ベットに寝かした。
「聡美・・・」
浩樹は、聡美に覆い被さりながら、何度もその名を呼んでやった。
「浩樹・・・ごめんね・・・」
その時、初めて本来の聡美が姿を現した。
「浩樹・・・うぅ・・・くっ・・・」
聡美はしゃくりあげるように泣きながら、浩樹を見つめる。
「やめるか?」
浩樹は、聡美に問い掛けた。
ここで止めるのは辛いところだが、聡美の様子を見たら、抱かないほうがいいような気がしてきた。
ここで抱けば、きっとお互いが後悔するような気がしたのだ。
しかし、聡美の反応は違った。
「来て・・・浩樹。私の中を一杯にして・・・めちゃくちゃにして・・・」
そう訴えてきたのだ。
「聡美・・・」
浩樹は、聡美の元に、心に伴って訪れた身体の空虚感をなんとなく理解できるような気がした。
聡美は求めている・・・それは俺でなくてもいいのかもしれない・・・それでも・・・
そう、聡美がこれほど切実に求めているのなら、友達として、応えてやりたい・・・
浩樹は静かに、痛いほど硬くなった肉棒を聡美の花びらに埋めこんだ・・・まるで空虚な世界を、何かで満たしてやるように・・・
「あぁん・・・」
聡美はのけぞりながら、吐息を漏らす。
くちゅ・・・くちゅ・・・
浩樹はゆっくり腰を動かし始める・・・優しく、深く・・・
「ふぅ・・・ん・・・はぁ・・・あぁ・あっ・・あっ・・・」
聡美の息遣いが荒くなる・・・そして、まるで捕まえた獲物を決して逃がさないといったように、浩樹を締め付ける。
「うぅ・・・聡美・・・そんなにしたら・・・」
きゅっ、きゅっ・・・とリズムを取りながら深く沈む肉棒を締め付ける聡美・・・
「聡美・・・聡美・・・うぅ・・・ん・・」
最初は聡美を慰めるつもりだった浩樹も、聡美に翻弄され始めている。
もっと奥までと言わんばかりに、腰を突き出す聡美。
たまらず浩樹は、聡美の足を抱え込み、激しく腰を打ちつけ始めた。
「はぁ・・・ん、ん・・あっ、あっ、あっ、あっ・・・」
聡美の表情が顕かに変わった。
頬はほんのりと上気し、眉根を寄せて快楽に耐えている。
「聡美・・・いいのか?・・ん・・くっ・・」
「いいのぉ・・・浩樹・・・もっと・・・もっと激しく突いて!・・・壊れるくらい・・・浩樹の硬いのでぐちょぐちょにして・・」
「聡美・・・」
二人は何もかも忘れて2匹の獣に成り果てていた。
部屋には雨の音と、二人の性器から溢れ出す淫らな液体が混ざり合うくちゅくちゅという音、そして静かだが激しいあえぎ声だけが響いていた。
*********************************************************************************************
「はぁ・・・はぁ・・・」
すべてが終わった部屋では、余韻にひたる聡美の静かな吐息が聞こえる。
雨はさっきより小降りになっている。
「聡美・・・」
浩樹は聡美の隣に横たわり彼女の柔らかい髪を撫でている。
聡美は窓の外の景色を見つめながら、心地よさそうに浩樹の手に頭をあずける。
「ふふ・・・」
聡美がふいに浩樹の方を向き、「チョコレイト食べない?」と笑顔で聞いた。
「は?」
浩樹は突然の問いに、ちょっと意味がわからないといった表情をしたが、聡美は一糸まとわぬ姿でベッドから立ちあがり、ひんやりと冷えたチョコレイトを持って来た。
どう考えてもバレンタインのチョコレイトらしきものだったが、かなり時期はずれだ。
「何?これ」
浩樹は怪訝そうな顔をして、聡美を見つめる。
聡美は楽しそうにチョコレイトの包みを開けながら、答える。
「これは・・・スナフキンがムーミン谷から帰ってきたら渡そうと思ってたチョコレイト」
そう言って色とりどりのチョコレイトが並ぶ中から一粒頬張る。
「ふふ・・・おいしい・・・こんなにおいしい物を食べずに大事に取っておいたなんて・・・」
「ずいぶんおいしそうだね。」
浩樹も、聡美の晴れ晴れとした表情に楽しげに話しかける。
「とってもね。」
聡美も楽しげだ。
「あ・・・また雨が降ってきたみたい・・・」
ベッドに座り外を見る聡美を後ろから優しく抱きしめながら、浩樹も外を見る。
「きれい・・・」
聡美がぽつりと言った。
「ある意味そうかもね・・・公園の木やなんかの緑は雨にうたれている時が一番いきいき見えるかもね・・・」
浩樹は聡美の耳たぶを唇であまがみしながら、そんなことをつぶやいた。
部屋には雨の音と、暖かい時間が流れている。