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小説(転載) 四枚の扉 3/10

官能小説
04 /25 2015



 札幌市内のビジネスホテル。
 ベッドスタンドの薄暗い灯りの中に、男と女の腰が激しくぶつかる音が響く。

 勇次は女の両脚を肩に掛けた格好で、己の肉茎を女の奥深くに突き込み続けて
いた。
 「イイ!・・・ いいわあァ・・・・ もっと深くぅ・・・!」
 女は勇次の首に両手を廻し、自らも腰を勇次の突き入れるタイミングに合わ
せ、更に奥を突かせようと尻を迫り上げてきた。

 「ああ、最高だ・・・・」
 勇次は額に汗をタップリと滲ませながら、女の肉壁が、己の塊に与える快感に
酔いしれていた。
 「も、もう・・いっちゃうか・・も・・!」
 肉壁の刺激により、一層硬度を増した勇次の肉棒に最奥部を貫かれ、女は息も
絶え絶えの声を挙げた。
 「イッテいいぞ・・・ 俺も・・またイキそうだ!」
 勇次はだらしない程に長持ちしない息子を叱咤するかのように、肉茎の根元に
力を入れて放出を耐えている。
 しかし、女のもたらす膣内の感覚に、もうとっくに我慢は限界に達してい
た・・・。
 「イ・・イ・・クゥゥ・・・・」
 女の肉壁は、女自身の絶頂に呼応するかのごとく、勇次の肉棒を激しく締め付
けてきた。
 「うおぅ・・・ また、これだぁ・・・!」
 勇次はどうにも堪らなくなり、二度目の精液を女の中へと放出した・・・。
 「ああああんん・・  いくううぅぅぅ!!」
 二度目にしては多すぎる液体の迸りを奥深くに感じ、女の気も遠くに引き込ま
れていった・・・。

 カチッ!
 薄暗い部屋にライターの火が灯りを点した。
 勇次は咥えたタバコに火を付けると、そのタバコを、やっと息を整えた女の口
に運んだ。
 女はそのタバコを咥えると、ゆっくりと息を吸い込んだ。
 勇次はもう一本タバコを取りだし、火を付けて息を吸った。
 お互いが吐く煙が、ゆらゆらと天井に向かって漂っていった。
 「喉乾いたでしょ?」
 勇次が頷くと、女はベットを降り、冷蔵庫を開けた。
 チェックインの際に勇次が買っておいた缶ビールが二本、冷蔵室の明かりに反
射していた。
 女はそれを片手で抱えると、一本のプルトップを空け、勇次に手渡した。
 勇次は喉を鳴らしてビールを飲んだ。
 女も同じ様に喉を鳴らしていた。

 「今日会ったばかりなのに、こんな風になってイイのかい?」
 勇次は潤った喉から声を発した。
 「こんなこと、普通ないと思ってたわ・・・ でも、タイミングかしらね」
 「タイミング?」
 「そうね・・タイミング。私が酷い男と別れた時に、あなたがそこに居たって
言うね・・」
 女は上半身に辛うじて掛かったままのシャツをそっと脱ぐと、汗を滲ませた身
体を手の平で摩った。
 「じゃあ俺は、とてもラッキーな男ってことだな・・ 君みたいな素敵な女性
とタイミングが合うなんて」
 勇次は薄い灯りに照らされた女の裸体を眺めながら、本気で思った。
 「私もラッキーかもよ。アナタの様な男に出会えて・・」
 こちらに正面を向けた女の乳房が、微かに揺れた・・。
 「お互いにラッキーか・・ それもイイかもな・・」
 勇次は形良く佇む乳房に手を重ね、やんわりと揉んでみた。
 「あん! また感じちゃうわ・・」
 女は乳房に重ねられた勇次の手を掴むと、そっと下へ降ろした。
 「感じたっていいさ・・ 君の身体が素晴らしいから、触りたくなるのさ」
 「もう、嬉しいこと言ってくれるわね! アナタの身体も素敵よ!」
 女はそう言うと、半分程しか堅さを失っていない勇次の塊をキュッ!と握っ
た。
 勇次も負けじと、一度払われた手を再び女の乳房に重ねると、軽く乳首を摘ん
だ。
 「ああん もう!」
 二人は顔を見合わせて笑った。

 お互いの手の動きが休むこと無く、自然と会話が始まった。
 「君の名前は?」
 「知りたい?・・・」
 「知りたいよ、教えてくれ」
 「純子よ 純粋な子供・・ あん!」
 「歳は?」
 「27よ」
 「こっちの人?」
 「ああ・・・ 違うわ・・ 東京よ」
 「ホントに! 俺と一緒だ」
 「まあ、ビックリね! ビジネスホテルに泊まるくらいだから、出張・・で来
たの?・・あふぅ・・」
 「そうだよ・・・」
 勇次は純子の乳首を摘む指に力を加えた。
 「ああん ズルイわ・・」
 純子は身体をピクリと震わせた。
 「私も・・聞きたいのにぃ・・ああ」
 休みなく摘み続ける勇次の指に、純子のセリフが途切れ途切れになる・・。
 「何が聞きたいの?」
 勇次は身体を起こすと、純子の空いた乳首に舌を這わせた。
 「う・・ん! それじゃあ・・聞け・・ないわ・・ああぁ」
 「じゃあ、もう一度スッキリしてからだ!」
 そう言うと勇次は、純子の身体をベッドに横たえた。
 「アナタ・・・強いのね・・」
 またもや自分の身体を奪おうとする勇次に、純子は甘い声で応えた・・。
 「自分でも不思議だよ。今迄こんな事無かったから・・。きっと君のせいだ
よ・・」
 勇次は純子の脚を開くと、舌を割れ目に這わせて囁いた。
 「あああ! 嬉しいわ・・・・」
 深夜のビジネスホテルの一室に、3度目の男女の絡み音が響いていった・・。

 翌朝、勇次が目を覚ますと、女はベッドに居なかった。
 いつの間に帰ったのだろう・・・勇次が寂しく思ったとき、風呂場から水の流
れる音が聞こえた。
 3度目の交わりを、バックで激しく終了したのち、二人は眠りについた。
 女は身体にタップリと染み渡った、お互いの体液をシャワーで洗い流している
のだろう。
 そんな姿を想像していると、勇次の股間が熱を帯びてきた。
 (おいおい、どうしたんだ、俺のコレは!)
 自分の息子が急に若い頃に戻った感覚に戸惑いながらも、勇次は衝動を押さえ
られないでいた・・・。
 ベッドから降りると、そのまま風呂場へと入って行った・・・。
 数分後、シャワーの音に紛れて、純子の甘い声が朝日の差し込む部屋に染み渡
った・・。

 楽しみは人に時間を忘れさせる・・。
 勇次は時計と睨めっこしながら、大急ぎで支度をしていた。
 純子もドレッサーの前を陣取り、慌ただしく化粧で顔を整えていた。
 「君はいつ東京に戻るの?」
 勇次はネクタイを締めながら聞いた。
 「今日の夜なの。アナタは?」
 「俺は明日の夜だよ」
 髪にブラシを入れながら純子がこちらを向いた・・・。勇次の目と純子の目が
見詰め合った。
 言いたいことはお互い一緒だった・・。
 「また会えるかな?」
 勇次が切り出すと純子は、
 「もちろんよ 私も会いたいわ」
 そう言って立ち上がると、勇次に唇を重ねた・・・。
 携帯番号を交換すると、二人はホテルを出て別の方向へと歩いて行った。

 札幌での業務を全て終え、勇次は帰りの飛行機の中にいた。
 純子との交わりの後、想像以上に札幌での業務が忙しく、冷静に物事を考える
暇が無かった・・。
 改めて考えると、自分はとんでも無い事をしてしまったのではない
か?・・・・・。
 そんな思いが勇次の頭を支配していた。
 初めての浮気・・・静絵を裏切ったこと・・・祐輔の顔・・・。
 色々な事が脳裏をよぎり、勇次は心穏やかでは無かった。
 純子とは東京で会う約束をしたが、やはり会うべきでは無い!・・・。
 そう自分を理解させ、疲れた身体を休める為に眠りに付こうと考えた。
 しかし目を瞑ると、浮んでくるのは静絵や祐輔の顔では無く、純子の艶かしい
裸体と、締め付ける肉の感覚だけだった・・。
 勇次は目を開き、外の景色を見詰めた・・。
 眼下に広がる海を見ながら、一生懸命家族の事を考えた・・・。


(4)へつづく・・・

小説(転載) 四枚の扉 2/10

官能小説
04 /25 2015
エレベータのドアが開き、勇次が乗り込みドアが閉まり掛けた時、そのドアを
手で空けて女が乗り込んできた。
 「えっ!?」
 戸惑う勇次を尻目に、女は
 「何階?」
 と、聞いた。
 「5階ですけど、アナタもここに宿泊してるんですか?」
 勇次の方を振り返った女は、勇次に抱き付いてきた。
 「違うわ・・ でも、イイでしょ? 今日は一人は嫌なの・・・」
 「しかし・・! マズイよ・・・・ こんなの・・・」
 うろたえる勇次を見上げると女は、唇を合わせてきた。
 「うむっ!・・・」
 女の舌が進入してきた・・・。
 勇次は振り解こうと女の肩を掴むと、力と入れた。
 女は勇次の背中に両手を廻すと、ギュウっと身体を密着してきた。
 女の身体からは甘くイイ香りが漂う・・・。
 酒のせいか、勇次の思考がその香りで麻痺する・・・。

 エレベーターが5階へ着き、勇次の部屋に転がり込んだ頃には、勇次は舌を積
極的に女の舌へ絡めていた・・。
 (浮気するのか?・・・ 俺が!)
 今迄浮気をした事が無い勇次は、自分の今の状況を整理しようとした。
 (妻を裏切るのか?・・・ 静絵を・・・)
 静絵の顔が浮んだその時、理性が働きかけた。 
 (やっぱりダメだ! 静絵を裏切れない!)
 そう決断し、女の顔を自分から離そうとした。
 その時、女の手が勇次の股間を弄った!
 「ダメだ!」 
 勇次は力を入れ、女の顔を引き剥がした。
 女の目には涙が溢れていた・・・。
 それを見た勇次は、一瞬たじろいだ・・。
 その隙を逃さず、女の手がズボンのチャックを降ろした。
 そして中に手を刺し入れると、トランクスの中へ指を滑り込ませ、
 直接勇次の塊を摩った・・・・。
 「うあ!」
 思わす声を漏らした勇次の反応に応える様に、塊がグっ!と堅さを帯びてき
た。
 その先端を女の指が滑らかに動く・・。
 勇次の理性は失われつつあった・・。
 女はベルトを器用に外すと、ズボンのボタンを指で弾き、膝元までスルリと脱
がし降ろした。
 そして顔を勇次の顔から離すと、姿勢を低くしていった。
 女の指がトランクスのゴムに掛かり、下へさげた。
 その行為に、失いつつあった勇次の理性が再度甦った。
 「やっぱり駄目だ!」
 そういい、姿勢を低くした女の頭を掴もうとしたとき、己の塊を熱いものが包
んだ。
 「あうっ!・・・」
 女の唇は、しっかりと勇次の塊を捕らえ、舌を絶妙に絡ませてきた。
 「や、やめてくれ・・・」
 急速に襲ってくる快感に、勇次の訴える声も掠れた・・。
 女は勇次の訴えに耳を貸さず、8割程度に膨らんだ塊を、喉奥まで咥え込ん
だ。
 「くうううっ!・・・」
 先端を喉で締めてくる行為に、勇次の理性は殆ど吹き飛んだ!

 じゅじゅじゅる・・ ジュルっ!
 女の口技は絶妙だった・・・・。
 完全に堅く膨らんだ勇次の肉茎を、完璧なまでに刺激してくる・・。
 根元に指を絡めシゴキ、奥まで咥え込んで締め付け、舌を縦横に動かし裏筋全
体を刺激する・・・。
 勇次は今迄味わった事の無い刺激に、我を忘れた。
 勇次をベッドに押し倒した女は、スーツのミニスカートを自分で捲り上げる
と、レースの下着を細い脚からスルリと抜き取り、ベッドへと上がった。
 そして虚ろな目で見上げる勇次に甘い目で応えると、勇次を跨ぎ、ゆっくりと
腰を降ろしてきた。

 ズズズ・・・・
 勇次の肉茎が、女の膣穴に呑み込まれた・・・。
 その感触に、勇次の頭が揺れた。
 女は沈めた腰をゆっくり引き上げると、引き上げた腰をまた、ゆっくりと沈め
た・・・。
 「ああああ・・・・・」
 女の口から吐息が漏れる・・・。
 女は腰を円を描くようにグラインドさせると、入口を締め付け上下運動を交え
た。
 その余りの巧みさに、勇次は男らしからぬ声を挙げた。
 その声が女に火を付けたのか、腰の動きが一層激しさを増し、勇次の肉茎へと
得も言われぬ快感をもたらす・・・。

 完全に女の性技に翻弄された勇次は、女の上着に手を掛けると、ブラウスのボ
タンを荒々しく外した。
 レースの下着とお揃いのブラを強引に押上げると、女の乳房を強く揉んだ。
 「あああああ!  いい・・・・・」
 女は腰の動きを微妙に変化させると、乳房を揉む勇次の手の平の上に、自分の
手を重ねると、強く握った。
 二人の手の平が女の乳房を弄る・・・・。
 自分の上で怪しく悶え声を挙げる女の美しさに、勇次は興奮した。
 女の腰使いは、口での技と同様に巧みだった・・・。
 こんな性技に長けた女を勇次は知らない・・・。
 元々、女性経験が豊富な勇次ではない。
 静絵を入れても数人との経験しかなかった。
 もちろん静絵も、これ程までの女の技をもってやしない。
 どちらかと言えば受身一辺倒の静絵は、勇次の上で怪しく腰を振ることなど、
皆無に等しい・・。

 そんな風に無意識に頭の隅で思いを巡らせていた勇次に、強烈な放出感が沸き
上がった!
 女の絶妙な腰使いに、決して早漏では無い勇次の肉茎は、とても耐えられなく
なっていた。
 「いきそうだ!・・・・」
 女の乳首を指で擦りながらうめく勇次に、女は腰の動きを速めて言った。
 「いいわ!・・ ああ・・・ このまま・・はあ・・ イッて・・」
 そう言うと女は、膣全体を強烈に締め付け、勇次の肉茎をキツク包んだ。
 「うああ・・! いく・・!」
 勇次の塊が、最高潮に堅く膨らんだ!!
 「あああああぁぁぁ・・・ イイぃぃ・・・!」
 「イッテ! ・・・ いってぇぇ・・・ わたしも・・・・い・・く
ぅ・・・」
 女の肉壁がグニュグニュと動き、勇次のクライマックスを促した。
 「あああああっ!」
 勇次の塊の先端から、勢い良く白液が放出された!
 「あああああぁぁぁああァァァ・・・・・!!!」
 締め付ける膣穴の奥が激しく収縮し、勇次の放出物を受けとめた・・。
 女の肉壁は、性を放った勇次の肉茎を尚も締め付けてくる・・・。
 その未知の快感に、勇次は唸った。
 女も背中を大きく反らせたあと、勇次の胸に崩れ落ちてきた。

 ハア・・ハア・・ハア・・・・
 お互いの荒れた息が部屋に木霊する・・。
 勇次は女の顔を上に向けると、唇を重ねた。
 女も自らの舌を勇次に絡ませ、身体を痙攣させた。
 「凄かったよ・・・」
 息を整え勇次が言うと
 「貴方も良かったわ・・・・」 
 と、まだ中に残る勇次の塊を締め付けて言った。
 「うおっ!」
 その感覚に勇次は思わず声をあげる・・・。
 肉茎も、放出したばかりだというのに、何故か微妙に堅さを取り戻した。
 「まだ出来るかしら・・・・」
 女は怪しい笑みで勇次を見た。
 「かもね・・・ 自分でも信じられないけど」
 
 きゅっ・・キュッ! 
 と、締め付けを止めない女の肉壁に、勇次の塊は完全に近い状態に復活してい
た。
 「あああ・・・ 大きくなった・・・」
 塊の復活を膣内で感じた女は、嬉しそうに囁いた・・。
 「責任とってくれよ」
 そう言って肉茎に力を込める勇次は、女と上下体勢を入れ替えると、今度は自
分から、女の奥へと腰を突き入れた。


(3)へつづく・・・

小説(転載) 四枚の扉 1/10

官能小説
04 /25 2015



 勇次は都内一流企業に勤めるサラリーマンである。
 妻の静絵と5年前に結ばれ、3歳になる男の子が一人いる。
 年齢は34歳。静絵は29歳。
 仕事や結婚生活には、何も問題なく、平凡な生活を送っている。
 会社では、課長のポストを与えられ、可も不可もなく、また部下からも慕われ
る、人当たりの良い人間である。

 そんな日々を過ごしていた勇次は、有る日を境に人生を大きく変えていった。

 6月の最初の月曜、勇次は部長に呼ばれ、明日からの札幌支社への急な出張を
命じられた。
 自分のデスクの上には、仕事は山程溜まってはいたが、断われる訳もなく、部
下に簡単は引継ぎを行うと、出張の準備の為その日は早々と会社を後にし帰宅し
た。

 「あら、今日は随分と早いのね!」
 台所で夕食の準備を始めていた妻の静絵は、普段より3時間は早いであろう夫
の帰宅に、少々驚きの声をあげた。
 「明日から急に北海道へ出張になったんだ・・。その準備が有るから今日は早
く帰れたのさ」
 滅多に無い父親の早い帰りに、喜び飛び付いた息子の祐輔を抱きかかえなが
ら、勇次は妻に言った。
 「そうなの・・・それは急よね。急いで夕飯作り終えるから、その間に支度し
たら」
 静絵は冷蔵庫から材料を数品取りだし、いそいそと支度を始めた。
 勇次は書斎へ入ると、出張用の資料やら着替えをバックに適当に詰め込んだ。

 
 夕食の献立は勇次の好物の親子丼だった。
 静絵は常日頃から、勇次の好むものを夕食のテーブルに並べる事が多かった。

 息子の祐輔の事も有るので、子供用の献立も別に作る、マメで愛情に満ちた良
妻であると、勇次は日頃から感じている。

 「主張はどの位なの?」
 静絵は祐輔の口に食べ物を運びながら聞いた。
 「3日の予定だよ」
 「そうなんだ・・3日も居ないなんて寂しいね!」
 息子の祐輔に同意を求める様に、静絵はニコリと祐輔に笑いかけた。
 祐輔は余程お腹が空いていたのか、静絵の言葉には全く反応せず、無邪気に母
の手元の箸を口で追い掛けていた。
 そんな息子の行動が可笑しくて、勇次と静絵は顔を見合わせて微笑んだ。
 
 「行ってくるよ」
 翌朝勇次は、玄関で見送る妻と息子の頬にキスをすると、迎えに来たタクシー
に乗り込み空港へ向かった。
 札幌千歳空港行き、117便。
 勇次を乗せた飛行機は、順調にフライトを続け、約1時間半後、千歳空港へ着
陸した。
 空港から札幌支社へのタクシーの中で、勇次は昨夜の夕食時の事を思い出して
いた。
 息子祐輔の無邪気な笑顔。妻静絵の優しい振舞い・・・。
 結婚してこの5年間、勇次は幸せな生活を送れている事に嬉しくなり、思わず
口元が緩んだ。
 静絵とは7年前、勇次27歳、静絵22歳の時に出会った。
 勇次の勤める会社に、大卒の静絵が入社し、同じ部署で働く事になったのが、
最初の出会いである。
 静絵は入社後すぐに、社内で一番の美人との評判がたった。
 勇次の目からも、スラリとしたスタイルながらも、制服の上からも充分に確認
出来る凹凸を持ち、純和風系の整った顔立ちをした静絵は、皆の評判通り、社内
一だと感じていた。

 当時は勇次には付き合ってる相手が社内におり、静絵にも学生時代からの彼氏
が存在し、お互いに恋愛対象と感じる事はなかった。
 静絵が入社して1年が経ち、その間同じ部署で働く者として頻繁に会話を交わ
し、先輩後輩という関係のみで親近感を深めていた。
 そんな二人の関係が、その年の部署の忘年会で親密になった。
 深酒をしてすっかり酔っ払った静絵を、家が同じ方向だからと勇次がタクシー
に同乗し送る事になり、酔いつぶれて寝てしまった静絵を部屋まで運び入れ、目
を覚ました静絵が失恋したと泣き崩れ、そんな静絵を介抱しているうちに、大人
の二人は自然に結び付いてしまった。
 
 勇次は一晩で静絵に魅了され、付き合っていた彼女と速攻で別れた。
 別れには当然一悶着あったが、勇次は静絵との付き合いを諦める事は全く考え
られず、1年交際した後、静絵と結婚した。
 すぐに可愛い長男が生まれ、家族愛に満たされて生活を送り、現在がある。 
勇次は札幌に来たばかりなのに、早く家に帰りたいと考えていた。 

 札幌支社での初日の業務も完了し、わざわざ本社からいらしてくれたからと、
札幌の社員が設けてくれた酒の席に招待され、勇次は北海道の酒の幸を堪能し、
とても気分が良かった。
 明日も業務があるからと、一次会で早々に解散し、勇次は宿泊するビジネスホ
テルへチェックインした。
 一次会で帰って来た事もあり、まだ時間が早かったので、勇次は良い気分も手
伝ってか、部屋に荷物を置くと地下のラウンジに向かった。

 平日ともあって、ラウンジには一組のカップルが居るだけだった。
 勇次はカウンターに座ると、バーボンのロックを注文した。
 暫くバーボンを堪能していると、最初から居たカップルが喧嘩する声が聞こえ
てきた。
 女は男に詰寄り、文句を言っている。
 男はそれを黙って聞いていたが、おもむろに席を立つと、無言のままラウンジ
を出て行ってしまった。
 一人残された女は、その場で泣いていた・・・。
 5分ほど泣いていただろうか、女はバックからハンカチを取り出すと涙を拭
き、涙で落ち掛けてしまった化粧を直すのか、奥の化粧室へと入って行った。

 暫くして化粧室から戻ってきた女は、勇次の事をチラっと見ると、カウンター
に座った。
 マスターにシンを注文し、タバコに火を付けようとライターをカチカチ鳴らし
た。
 ガスが切れているのか、火は一向に付かない。
 勇次がその様子をチラチラ見ていると、女は勇次の方を向き、火を貸して欲し
いと言った。
 勇次は自分のライターを女に差し出した。
 女は勇次のライターでタバコに火を付けると、スウー・・と吸い込み、暫く息
を止めてから、吐き出した。その息は、少し溜息も混じっている様だった。

 勇次はバーボンのお替わりを注文した。
 すると女は、ハシタナイところをお見せしたからと、こちらに付けてくれとマ
スターに言った。
 そんな事でご馳走にはなれないと勇次が断わると、女は、
 「それなら少し私に付き合ってください」
 と、自分のグラスも持ち上げ、勇次に乾杯の仕草をした。
 「それなら・・」
 勇次は少し躊躇いもしたが、傷付いた女性の気晴らしにでも成ればと付き合う
事にした。

 数杯酌み交わしたのち、お互いに少し打ち解けた事もあり、会話が弾んでき
た。
 女は先程の男の愚痴をいい、勇次はその話を聞きながら、自分なりの意見を言
った。
 「なんだかバカみたいね、私って!」
 女は勇次に笑顔を向けて言った。
 「君は悪くないよ。相手の男が悪いのさ!」
 勇次は慰めの気持ちを込めたつもりで女に言った。
 「そう言ってもらえると救われるなー・・・」
 女の顔が少し輝いた。

 すっかり良い調子でお互い飲んでしまい、勇次が腕時計を見た時は12時だっ
た。
 「そろそろお開きにしましょうか? 少しは気が晴れましたか?」
 勇次は女の方を向いて聞いた。
 「うーん、そうね・・・。少しはね・・・・」
 勇次の顔を見詰めながら女は答えた。
 女の目は、少し潤んでいた・・。また涙がこぼれそうだ。
 勇次はその目に一瞬吸い込まれそうのなった。
 改めてジックリ見た女は、とても妖艶で、魅力的だった。
 勇次は頭を軽く振ると、煩悩を振り払った。
 そしてチェックを済ますと、
 「それでは・・」
 と、女に声を掛けて席を立った。


(2)へつづく・・・

eroerojiji

小さい頃からエロいことが好き。そのまま大人になってしまったエロジジイです。