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沢渡のり子

熟女画像
10 /08 2014
沢渡のり子44歳
つっこみをいれるぐらいなら紹介しなければいいのだが・・・テーブルの上では落ち着かないだろ。

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小説(転載) ADAM4/4

近親相姦小説
10 /08 2014
最終章

父「真紀おはよう」
気まずい重い空気の食卓
父さんはパンを僕はご飯を
粘土みたいに感じられるご飯を食べていた。
もう大分たつのに、父さんとの食事はいつも気まずい。
ときどき帰りが遅くなると心底ほっとする。
この気まずい空気に慣れることはまだない。
これからいつまで続くのだろう。
僕の犯した罪はいつぬぐうことができるのだろうか。
真紀「うん。おはよう。基樹もおはよう」
父「………」
基樹「ああ、おはよう姉さん」
父「基樹、話がある」
基樹「………」
僕はつかんでいた箸をとめ、
父さんの顔を見た。
よりいっそう重たい空気がながれる。
父「お前は高校を卒業したらここをでていけ」
基樹「………」
なんでとは聞けないな。あれだけのことをしたのだから
父「高校まではこの家にいさせてやる。だが、卒業したらすぐに真紀の前から消えろお前はもう家の人間ではない。
  私の息子でもない」
それはねがったりだな。
もしそうなれば
姉さんの弟ではなくなるわけだ。
だとしたら結婚だって戸籍上はできるのかもしれないから。
真紀「いやっ!!いやだよっ!!お父さん!!基樹を追い出さないで!」
姉さんが突然叫んだ。
皿を拭いていた、ふきんをぎゅっとつかんで
背中を向けている父さんの身体をじっとにらんでいる。
基樹「姉さん」
父「しかたがないだろう?お前は襲われたんだぞ?こいつに。大切なものを奪われたんだ。もう兄弟じゃない。他人でしかない」
だからそれがねがったりなんだよっ!!
僕は姉さんと一生添い遂げたいんだから
真紀「だめだよっ!!基樹と離れるなんていやっ!!基樹は基樹は」
父「わがままを言うんじゃないっ!!お前はもっと聞き分けのいいこだろう!!」
真紀「違うよ。真紀は聞き分けよくなんかないよっ!!ただそうすれば皆が受け入れてくれるから。そうしないと不安だから
  ただ父さんとかみんなの言うことをきいていただけだよっ!!でもそれじゃあいけないんだよっ!!ちゃんと自分の意志をもたないと!!
  基樹が教えてくれたんだよっ!!基樹が弟なのに年下なのに、姉の私に教えてくれたんだよっ!!」
父「だからそれがいけないといっているんだっ!!」
父さんがひときわ大きな声をあげる。
僕に対しては結構あったけど、姉さんに対して
こんな大声をあげているのは初めてみた。
きっと実際になかったことなんだろう。
今まで一度も。
父「なぁ?お願いだから、こいつのことは忘れてくれないか?そしてまた、私と一緒に二人で暮らそうそうすることが母さんの願いなんだから。」
母さんのことを出されると弱い。
最後まで死ぬ一瞬のときまで僕らをそして父さんを心配していた。
あの母さんにもはむかうような罪を犯してしまったのだから。
真紀「いやだっ!!絶対にいやだっ!!基樹とは離れないっ!!離れられないっ!!基樹が好きだから愛しているからっ!!」
父「大きな声をだすなっ!!」
結局父さんはどちらが大事なんだろう。
姉さんの身体?僕が陵辱した姉さんの身体?
それとも、世間体?
どっちもか。
父さんは普通のサラリーマンだし
こんなことがばれたら会社にいられなくなるかもしれない。
そうでなくても、会社の同僚に後ろ指をさされるに決まっている。
僕の犯した罪。
なんて重いものだったんだろう。
父「こいつを愛している?お前らは兄弟なんだぞ?なぁ?兄弟なんだ?誰も許してくれない血のつながった兄弟なんだよ」
父さんの力が抜けている。
僕はそれをじっと静かに見ていた。
真紀「私、基樹と寝たよ?基樹にあれから抱かれた」
父「ああ!?」
父さんの顔が驚愕にゆがむ
そうとしかいいようがないくらい
はげしくゆがむ。
真紀「基樹はやさしかったよ?なれていない私にもやさしかった。基樹がもっと好きになった」
父「馬鹿なっ!!なんてことをしたんだっ!!」
ばっちーんっ!!
僕は思わず席をたった。
姉さんが父さんに叩かれた。
姉さんにかけよろうとする。
父「お前は真紀にさわるな!!真紀がよごれるっ!!その汚い手で真紀にふれるなっ!!」
父さんの制止に僕は右手をぐっと握って
こらえた。姉さんが汚れるか
この姉さんが汚れてしまう。
それは耐えられない。
でも二人でなら、どこまでも落ちていける。
その自信はある。
確かに僕の胸にひそんでいる。
真紀「基樹は汚れてなんかいない!!基樹は私にいろんなことを教えてくれた。女の喜びとか快感とかいろんなことを」
父「馬鹿…やめてくれよ。お願いだからやめてくれ。お前達はお前達は兄弟なんだ。血がつながっているんだ」
父さんが脱力してとうとう、座り込んだ。
どさりと音がする。
父さんの大柄な身体が
力をうしなって、両手をぶらんと横にさげて
そして首を下にうなだれている。
真紀「基樹は…うっ!!」
基樹「姉さん?」
父「真紀?」
姉さんは突然、口を手でおおい、眉をしかめてから
洗面所に走っていった。
どうしたんだ?
突然?風邪がまだ完治していないとはいえ
吐き気が襲ってくるほど悪いのか?
だとしたら僕のせいだよな。
あんなことしたんだから。
僕は姉さんの後を追って、洗面所に向かった。
後ろから父さんもついてくる。
真紀「うっうげぇっ!!」
姉さんが洗面所の水を出しっぱなしにして、
うつむいて、吐いている。
基樹「姉さん?まだ風邪が…」
父「真紀…まさか…お前…」
父さんが呆然とした顔をして、どこを見るでもなく
目をさまよわせている。
信じられない事態になっているそんな感じだ。
真紀「うっうっ!!」
父「うそだろ?…お前…うそだろ?…」
基樹「姉さん?」
そこで僕も気がついた。
僕はわざと意識的に最初のころは違っていても
あの時はわざと、コンドーム、つまり避妊具をつけなかった。
たぶん意識的に。
それが僕の最大の罪だ。
つまり姉さんは僕の、実の弟の子供を赤ん坊を妊娠しているってことだ。
歓喜、衝撃、悲しさ、すべての感情が、僕の中をぐるぐると回っていた。
予想されていた事態。
のぞんでいたかもしれない事実。
父「おろしなさいっ!!今すぐおろしにいきなさいっ!!判子はもちろん押す。金だって出すからおろしにいきなさい!
  知り合いの信頼できる病院を知っているから、産婦人科を知っているから、おろしなさいっ!!」
真紀「………」
父「真紀!どうしたんだっ!!何を考えているお前まさかっ!!」
姉さんは少しうつむいていた考え込んでいた
顔を上にあげて、
なにか決心したような表情で父さんをみつめた。
めずらしい、姉さんの強い瞳
真紀「産むよ」
そうとだけつぶやいた。
僕の中にあった感情、歓喜、衝撃、悲しさ、罪悪感
その中の感情で、歓喜が一番まさった瞬間。
父「なにを…いっているんだ?」
真紀「私産むよ?基樹の子供を産むよ?兄弟だってかまわない。きっと幸せにするよ?してみせるよ?」
父「兄弟でできた子供が幸せになれるわけないだろうっ!!」
真紀「わからないじゃない?ねぇ?お父さんわからにでしょう?」
父「不幸になるに決まっている!!世間から指を指されて、嫌われるに決まっている!!」
真紀「そうかもしれない。でもそれでも、基樹と私の子ならかわいいから」
父「お前は狂っているよ。おかしくなっている」
真紀「かもしれないね。基樹によって狂わされたのかもしれない。でも後悔していない」
父「だからっ!!今なら間に合うからっ!!お願いだからおろしてくれ!!なぁおろしてくれよっ!!」
父さんが姉さんにしがみついて、ひざまずいて懇願している。
僕はひきょうかもしれないけど、その様子をじっとみつめていた。
心臓はばくばくなっていたし
目も大きく見開かれていたかもしれない
でも何もいえない。
真紀「だめだよ。私は、基樹の子を産むから」
父「やめてくれ!!そんなのろわれた子を産むのはやめてくれっ!!」
のろわれた子?
そうなのか?
誰からも祝福を受けられない。
のろわれた子を産んでしまうのか?
姉さんは。
産ませてしまうのか?
僕は。
父「だから。だから…」
真紀「ここを出て行くよ。父さんの前から消えるから。基樹と一緒に暮らすから二人で一緒に」
そう言って姉さんは、父さんのしがみついている腕を振り払い
僕の腕をつかんで呆然としている僕の腕をつかんで
そして二階に行った。
父「真紀っ!!」
父さんの叫び声が聞こえる。
それを無視して、僕らは自分の部屋に行った。




それからすぐに、荷物をできる限りの荷物を持って
家を出て行った。
僕が姉さんと僕自身の二人分の荷物を持って
姉さんの後をついていった。
姉さんは、泣いていた。
静かに
けれど激しく泣いていた。
肩をふるわせて
もし僕が、この重たいひどく重たい荷物を持っていなければ
すぐにでもかけよって
そして抱きしめてあげたかった。
震える小さな細い悲しい肩を。










そして、しばらくの時がたった。
僕はあれからすぐに学校をやめ
アルバイトをしている。
朝は、新聞配達
そして昼はガソリンスタンド
夜は、交通整理
急がしかった。
姉さんに、いいや、真紀に会える暇が
なくなってそれがすごく心配でそしてさびしかったけど
小さな僕らには自分自身しか頼れるものがないから
だから一生懸命汗を流した。
安いアパート、風呂もない
トイレは共同
そこで僕らは長い月日を過ごした。
幸せな日々、朝は姉さんの手で起こされ
姉さんの作った弁当を渡され
そしてバイトにあけくれる
海原とは、手紙のやりとりをしている。
今度いつか会うつもりだ。
手紙には、最後の手紙にはこう書かれてあった。

 くやしいけど、つらいけど、お前をあきらめる。
 まだ基樹と、真紀さんを二人を祝福する気には正直なれない。
 けど、お前達には幸せになってほしい
 それが俺のたった一つの願いだから。
 がんばってほしい。
 そして生まれてくる子供を大切に立派に強い人間に育てていってほしい
 』

 そこには黒いしみがついていた。
多分海原の涙の後だ。
僕はそれを何度も見返して
同じように、ただ同じだと感じられるぐらいに
せつない思いをした。
たった一人の僕の親友
陽気で明るい僕のうらやましいとも感じられる親友
彼に会いたい。
そう願った。
真紀の次に、そして生まれてくる赤ん坊の次に
大事な、大切なたった一人の親友に。
それから引っ越して、このアパートに移り住んですぐに
父さんから手紙が来た。
どうして僕らのアパートの住所を知ったのかわからない。
たぶん海原を問いただしたのだろう。
必要のない限りは、海原以外には僕らのアパートの住所を
知らせていなかったから。
そこにはただ一言

  お前達を許したわけじゃない。
  これでどうか、子供を下ろしてくれ


とだけ書かれていた。
父さんのちょっとクセのある。
無骨な文字で。
それと、中絶に必要なだけのお金だけが同封されていた。
僕はそれを送り返した。
『ごめんなさい』
そうとだけ書いた手紙と一緒に
僕は父さんや他の人間の手を借りずにただ僕自身の力だけで
それだけで、真紀と子供をやしなっていきたかったから
無理かもしれないけど
きっといつかそうして幸せになりたかったから
僕の自信を僕自身の自信を強く持ちたいと想っていたから。











真紀「うっはっんっはあっ!!」
姉さんが苦しそうに息を吐く
病院に行って入院するお金のない僕らは
たった二人で、アパートの畳に
布団をしいて
真紀をそこに寝かして
子供を抱きしめるつもりでいた。
真紀「うっはっんんっはあっんっ!くっ」
姉さんの汗を綺麗な水でできるだけ綺麗な水でぬぐって
僕は声をかけた
基樹「真紀苦しいだろうけど、すごく痛いだろうけどがんばって」
僕はふがいない。姉さんが苦しんでいるのに
なんの手助けもできない。
こういうとき男は無力だ。
ただ、見守ることしかできない。
たしか女性の妊婦の子供を産むときの痛みは
男がそれを経験すると、その痛みに耐え切れず
死んでしまうとか聞いたことがある。
大げさかもしれないけど
たぶんそれぐらい激しい痛みなんだろう。
真紀「うっんんっくっくうぅうっんっはぁっ!!」
基樹「真紀、頭がでてきたよっ!!俺と真紀の子供の頭だよっ!!」
姉さんの股の間から
粘膜に混じって子供の頭がでてくる
黒い毛が生えた
小さな頭が
真紀「んんっくっはぁっんんつくうぅつっ!!」
そしてやがて、
首、胸
腹、足
すべてが見えてくる。
ずるっ!
やっと出てきた。
僕はその赤ん坊を抱きかかえて真紀に見えるように
した。
基樹「真紀!僕らの子供だよっ!!赤ちゃんだよっ!!」
真紀「はぁはぁはぁ。男の子?女の子?」
基樹「男だよっ!!小さなおちんちんがついてるよっ!!」
僕は濡れた手で赤ん坊を抱きしめた。
真紀「そう。男の子か…」
姉さんは目をつぶり
静かに息を吐いてはすって吐いてはすっていた。
でもおかしい。
赤ん坊が産声をあげない。
真紀「ねえ?基樹、どうしてその子泣かないの?産声は?」
基樹「わ、わからない。どうしてだ?」
僕は動揺した。
どうして泣かないんだ?
おかしいぞ?
真紀「その、背中を叩いてみて?そしたら泣くかもしれないから」
基樹「ああ」
僕は赤ん坊の背中を叩いた。
何度か力強く
力を加減している余裕はない
一刻も早く
僕と真紀の赤ん坊を泣かせなくては
そうしないと赤ん坊は、泣いてはじめて
それから息をするんだ
だから、泣かせないと
ばんばんっ!!
真紀「やさしくしないとだめだよ?基樹力強いんだから。」
姉さんの忠告が聞こえる。
それでも僕は赤ん坊の背中をたたいた
早く泣いてくれっ!!
一番最初の長男になるお前が
ここで息もできずに死んでしまうなんて
つらすぎるっ!!
これから、苦しい思いをする
つらい思いをする
赤ん坊に酷なことだけど
それでも僕はこの赤ん坊が、
泣いて、そして息をしてくれることを
願った。
赤ん坊「うっ!!うぎゃあああっ!!ほんぎゃああっ!!」
泣いた!!
基樹「ほっ……」
真紀「良かった。ちゃんと息はしている?」
基樹「ああ、しているよ?ちゃんと元気だよ」
僕は赤ん坊の口元に手をあてた。
赤ん坊は小さな弱い息を吐いている。
サルみたいなしわくちゃな顔
この子がこれからどんな姿に成長していくのか
僕と真紀のどちらに似ていくのか
わからないけど
とにかく今は丈夫そうでよかった。
そして僕は、その赤ん坊を真紀の隣に寝かした。
真紀は赤ん坊を見ながら
微笑んでいる。
その小さな手をやさしく握り締めて
ほほえんでいる。
やっぱり女は強いな。
こんなに苦しんだ
あとでも、こんなにやさしく笑えるんだから。










それから僕は、赤ん坊を寝かして
座っている真紀を後ろから抱きしめながら
静かに目を細めていた。
赤ん坊はすやすやと眠っている。
その小さな、お腹が上下に少しだけ揺れているのが
ここからでもわかるぐらいに。
真紀「男の子でよかったね」
真紀がささややくような小さな声でつぶやく
だけど僕の耳にははっきりとそのつぶやきが聞こえた。
この部屋には、この狭いアパートの一室には
僕と真紀そして生まれたばかりの赤ん坊しかいないのだから。
基樹「ああ、そうだね」
真紀「きっと強い子にそだつよ?基樹と同じくらいに強い子に」
それについては自信がないな。
僕は果たして強い人間だといえるのだろうか
欲望を抑えきれずに姉である真紀を襲った僕が
陵辱した僕が強い人間だといえるだろうか。
真紀「なんで?そんな悲しい顔をするの?」
真紀が抱きしめている僕を振り返って
僕の頬を右手でやさしくなでた。
真紀「子供が生まれたんだよ?こういう日は笑っていなくちゃ、ね?」
そうして力弱く微笑んだ。
基樹「そうだね。笑っていなくてはかわいそうだね」
僕もぎこちなく笑った。
ちゃんと笑えているかどうかわからない
でもできるだけやさしく微笑んだ。
基樹「この子供は僕らの赤ん坊は、これからどんなつらい目にあうんだろうな」
真紀「わからないよ。でも普通の子よりはたくさんつらい目にあうのかもしれない」
基樹「ああ」
真紀「でもしかたがないよ。誰だって子供はかわいいものだもん。大抵の人はね。だからできるだけ私達ができるだけ
   この子を守っていこうよ、ね?」
基樹「そうだね。僕のできる限りの力で、真紀とそしてこの赤ん坊を守っていくよ」
真紀「赤ん坊の名前決めないとね」
基樹「ああ、そうだね。男の子だから」
真紀「力とかどうかな?りきって読むの。力強い子になってほしいって意味で」
基樹「力か。いかもしれない。」
真紀「そうだね。でもやさしさも欲しいなぁ」
基樹「力優だめだな。りきゆうなんて名前聞いたこともない」
真紀「うふふっ。そうだね。」
基樹「まぁ、それは後で決めるとして、真紀もう疲れただろう?今はやすみなよ。真紀が眠るまで僕は起きているから」
真紀「うん。そうだね。少し疲れたよ。おやすみ」
基樹「ああ、おやすみ」
真紀の手を相変わらず綺麗な指先を
握り締めながら
僕はしばらく一人でたった一人で、赤ん坊の寝顔を見ていた。
真紀の髪に顔をうずめながら
今はこの瞬間は少なくとも幸せだった。
そして僕は目を閉じた。
遠くで、僕らが一生聞くことのできない、祝福の鐘の音が、からんころんと聞こえた気がした。




終わり。



終わりの始まり。

あれから2年の月日がたった。
海原「よぉ!基樹に真紀さん」
海原は高校を卒業して、大学に進学しているらしい。
あの手紙があってからしばらくして
こちらからも手紙を出し
家にはなかった電話もやっとつなげることができて
海原を家によんだ。
基樹「ああ、海原よくきたな」
海原「まぁな」
真紀「いらっしゃい海原くん。元気にしてた?」
海原「ええ!相変わらずおちゃらけてますよ?今度新しい恋人できたんですよ?」
そう言って、胸元の定期入れから写真を取り出してきた。
その写真を受け取りじっとみる。
可愛い男の子だった。
海原「同い年なんですけど、甘えたで、かわいいんですよ?」
すごい笑顔で、笑いながら、はにかみながら、海原はそう告げた。
基樹「へぇ?なかなか美人じゃないか?」
真紀「…ちょっと基樹に似てる…」
海原「あはははっ。やっぱそう思います?俺こういう顔に弱いんですよね。な?基樹?」
基樹「俺に聞かれてもしらないが」
真紀「そうか。でも幸せそうでよかったよ」
海原「あれからすぐは俺のキャラに似合わず泣いたんですよ?」
海原は軽く右目だけウィンクしてよこした。
基樹「そうなのか?」
海原「まぁなぁ。情けない話だけどなぁ。男が失恋でなくなんてさぁ」
真紀「ううん。そんなことないよ?男の子だってつらいときは泣くよ?ね?基樹?」
基樹「俺に聞かれてもなぁ」
力「ほぎゃあほぎゃああっ!!」
真紀「あ、力くん。どうしたのかなぁ?」
海原「ああ、その子が力っていうんだ?」
海原は力の僕らの子供に近寄り
その小さなまだ小さな手を握ってふらふらと揺らしている。
顔も自然と笑みがあふれているようだ。
やさしい笑みだな。
あのころの海原がときおり見せていて、やさしい笑み。
懐かしい気がした。
とても、とてもだ。
真紀「ええとぉ、言いにくいんだけどぉ海原くん少し後ろ向いていてくれないかなぁ?」
なにかにぴんときた真紀は、海原の顔を見ずにとぼけた顔をして
上をみながらつぶやいた。
その言葉で僕もぴんとくる。
ああなるほどね。
基樹「海原悪いけどそうしてくれないか?」
海原「あ~?まぁいいけどなぁ」
そして海原は胡坐をかいたままくるりと後ろを向いた。
もちろん手を使ってだけど。
真紀は安心したのか、自分の服のボタンをはずし
片方の胸だけを出して力にあげている。
つまり授乳の時間ってことだ。
さすが母親、力の顔をみただけですぐにそれがわかったんだな。
力「(ちゅぱちゅぱちゅぱ)」
力が一生懸命真紀のおっぱいを吸っている。
とても幸せそうな顔で、目を細めて
こっちまで笑顔になるぐらいの幸せそうな顔で。
こいつは少し真紀に似ている。
少し色が黒いところも切れ長の目も。
性格も僕よりも真紀に似ているとうれしいな。
僕みたいに自分の欲求を抑えきれずに誰かを傷つけるような
奴じゃなくて、真紀のようにやさしい人間になって欲しい。
きっと…きっとそうなるさ。
基樹「あははっ。ちょっとうらやましいなぁ」
海原「んだぁ?お前だって真紀さんの乳首吸ってるんだろ?毎日さぁ?」
真紀「ま、毎日じゃないよっ!!それに乳首って…」
基樹「お前の乳首よりはマシさ」
海原「だぁほっ!!ちょっと想像してもうたやないかっ!!」
基樹「あははははっ」
真紀「………うふふ」
海原「ったく気になるなぁ。でもお前達が幸せそうで安心した」
海原は後ろを向きながらやや背中をそらし
僕らにそう言った。
基樹「ん?」
海原「俺もあんなことしたからな。ずっと気になっていたんだ」
基樹「ああ…」
海原「だからな。お前達にはずっとこのまま幸せになってほしい」
基樹「ああ」
真紀「海原君もしあわせになってね。あなたたちは私達と違って結婚できるんだから」
海原「…ええ。どこか外国にでも行ってその前に金もためて。でも真紀さんと基樹だって結婚式ぐらいは…」
真紀「うふふっ。それがね」
基樹「実はな」
僕と真紀は顔を見合わせた。
そして静かに頬笑みあう。
基樹「結婚式あげたんだよ」
海原「あ?」
真紀「教会の中には入らなかったけど、でも教会の前でね。二人だけで」
基樹「指輪、安いの用意してな。」
真紀「交換したんだよ?でも基樹ったら私のサイズ間違えてて」
基樹「少し大きめのやつになってたな」
そしてまた二人で笑いあう。
そのときはもちろん力もいて
力は、乳母車に載せられて
なぜだか笑っていた。
真紀に似て表情がくるくる変わる子だから
お日様に照らされたその顔がとてもかわいかった。
僕らは、僕らの命の結晶である、力に見守られて
そして確かに小さな結婚式をあげたのだ。
真紀「それ今でも持ってるよ?もちろんね」
基樹「ああ、俺だってもちろん持ってるよ」
海原「けっ。そうかよ。ああ、熱いねぇ」
真紀&基樹「「あはははっ」」
それから海原は僕らの家に2時間ほどいて
いろいろなことを話して言った。
海原、真紀、僕の順に話す時間が長かったかな。
海原はときどき大げさに笑い転げたり
照れたりしながら、それでも幸せそうに例の恋人のことを話していた。










海原「すっかり遅くなったな」
基樹「ああ、そうだな」
夕暮れ、それよりも少し過ぎた時間。
僕は海原を送るために彼と一緒に外にでた。
この時間帯は、豆腐売りなんかの笛の音が聞こえてくる時間帯だった。
海原「ふぅ。まぁあてられにきたようなものだな」
基樹「そうか?」
海原「ああ、あれから二年か…」
海原は、道端にある石ころを高く蹴り上げてからそう言った。
基樹「そうなるな」
海原「お前らの、父さんは許してくれているのか?」
父さん僕ら二人は結婚しているのに、確かに結婚しているのに
それでも同じ父をもつ。血のつながった父をもつ。
ときどき噂されている。203号室のあの二人の夫婦は
実は血がつながった兄弟なんだと。
噂好きな主婦達が、そう話しているのを耳にする。
基樹「まだ会っていないな。前に電話したときは会いたくないと言っていた」
海原「そう、か。溝が深いな」
基樹「そうかも、な」
僕は、空を見上げた。
悪くない空だ。
あとで、真紀と力を連れ出して散歩するのもいいかもしれないな。
僕らはよく外に出て散歩をする、なにかするでもなく
金がないから、なにかを買うでもなく。
ただ長々とぽつりぽつりと話をしながら
ときどきぐずる力をあやして
笑う真紀の目をみつめて
ムードが出ればキスなんかもして。
そのときは力の目を僕が手でおおって。
そんなことをしている。
海原「まぁ、これからもいろいろあるだろうけど、な」
基樹「ああ、がんばるよ。これから、力と真紀、そして俺」
海原「力をあわせてか」
基樹「ああ」
海原「がんばっていきまっしょいっ!!ってやつだな」
基樹「ああ?」
海原「いやなんとなくうかんできたフレーズ」
基樹「そうか…」
がんばっていきまっしょいか
本当にそうだな。
うん。
がんばっていきまっしょいっ!!!









本当に終わり。
多分。

小説(転載) ADAM3/4

近親相姦小説
10 /08 2014
 あれから数日後。
 姉さんに彼氏ができた。
 彼氏、つまり恋人…。
 僕は当然、そんなことを祝えない。
 どうして姉さんは、この時期に彼氏なんて作ったんだろうか。
 僕を避けるため?
 ……たぶんそうだろうな。
 もてるから、姉さんはもてるから、だから彼氏を作るのにも苦労はしない。

第三章

「……それじゃあ、行ってくるね」
「ああ」
 土曜日。姉さんは、彼氏と出かけるために家をでる。
 僕がたとえ止めたとしても、姉さんは出かけるんだろう。
 しかたのないことだけど。



「ふぅ」
 どさりとベッドにおちる。
 身体が少しだるい。
 なぜだか知らないけどだるい。
 ゆっくりと眠りに落ちそうになった。
 そんなとき。
「……あ?」
 右手を頭に掲げていた僕は、携帯の鳴る音に気付き、しぶしぶ取り上げた。
 ごくたまに、ワンギリとかしてくるやつがいるから無視しているけど。
 何度も鳴っているから、誰か……友達か誰かだろう。
 そういえば、友達には会っていない。
 もうそろそろ、停学が終るころだけど……。
「はい」
『あ、基樹か?』
「……ああ」
『あ、切らないで聞いてくれないか?』
「………………」
『あのときは、すまなかった』
「いいや」
 海原に、何を責めることができるだろう。
 僕も同じことをしているんだから。
 姉さんに、同じことを。
『……でも、俺は後悔していない』
「………ああ」
『俺は本気だから。俺は本気でお前が好きだから。これだけはわかってくれ。それじゃあ』
 ぷっ!!
 携帯が切れた。
 用件だけ言って、さっさと切るなよ。
「………」
 僕は携帯をベッドの下に放り出し、そのまま目を閉じた。



「ん……?」
 雨が降っている。
 かなりはげしい雨が、ざーざーと降っている。
 僕は身体を起こして、窓に近づいた。
 ざーっ!!
 カーテンを開き、窓から外を覗く。
 姉さんは……傘を持っていただろうか。
 多分持っていないな。
 迎えに行こう。



「……ひどい雨だな」
 傘から顔を覗かして、灰色の空を見上げる。
 僕の心みたいに、ひどい雨だった。
 ざーざーざーざーっ!!
 本当に僕の心みたいだ。
 雨の中、黒い傘をさして、姉さんのピンクの傘を握り締め、とぼとぼと歩いていく。
 運がよかったのかな。
「……! 姉さん?」
「……………………」
 偶然、姉さんに会うことができた。
 でも、なぜか姉さんは、ただひとりで濡れながら、雨に濡れながら歩いていた。
「基樹……」
「姉さん!! 濡れてるじゃないかっ!!」
 僕は走り寄って、姉さんに傘を差し出した。
「ありがとう……」
「いいから姉さん、早く家に入らないとっ!!」
 姉さんの肩を押して、僕は家に急いだ。



 ざーざーざーっ!!
 すごい雨だ。
 やっぱり姉さんを迎えに行ってよかったな。
 しゃーっ!!
 カーテンをしめて、姉さんのほうを振り向く。
「姉さん大丈夫?」
 少し前かがみになって、姉さんの顔を覗き込んだ。
「っ! …………」
 姉さんは、僕を見ずに、体を固くした。
 まだだめか。
 やっぱり、僕におびえているらしいな。
 しかたのないことだけど。
 少し悲しい。
 居間のソファに座って、タオルを頭からかぶっている姉さん。
「……はぁ。とりあえず、上にあがったほうがいいよ?」
「……私、私ね」
「ん?」
 なるべくやさしく聞こえるように努めつつ、返事をする。
 姉さんがなにか話しかけているのだから、やさしく、なるべく。
「私、あの……山内さんのところに行って」
 山内。
 姉さんの彼氏の名前だ。
「それで……そしたら山内さん、いきなりキスしようとしてきて……」
 たどたどしくでも、一生懸命に話している。
「そう」
「で、でも私怖くて、それで、逃げ出してきた……」
「ふぅん」
 目を細める。
 姉さんのタオルも、小刻みに揺れている。
 僕がその場面に出くわしていたら、胸倉ぐらいはつかんでいたかもしれない。
 争いごとの嫌いなやさしい姉さんだから、止めにはいっていたのは確実だ。
 その場にいなくてよかったということか。
「あの……」
「上にあがろう? 立てる?」
「う、うん……、あっ」
 ふらっとして、その場に崩れ落ちそうになる姉さんを、あわてて支えた。
「大丈夫かい?」
「う、うん。少し目まいがする……」
 姉さんのおでこに手をつける。
 少し熱いな。熱があるのかもしれないな。
「姉さん、少し我慢してね」
「え? きゃっ!!」
 姉さんの軽い身体を持ち上げて、腕に抱きかかえる。
 お姫様だっこというやつだ。
 前にふざけたやったときは、姉さんはくすくす笑っていた。
 でも今は、震えているだけだ。
 寒さのせいだけじゃないだろう。
 僕におびえているだけなのかもしれない。
「あ、あの」
「今は黙っててくれないかな? 今も……か」
 そのまま階段下まで運んで、そして姉さんの部屋まで運ぶ
 どさり。
 なるべく刺激を与えないように、ベッドがきしまないように細心の注意を払って、姉さんをベッドに寝かした。
「ん……」
 姉さんが横を向いて、自分の手を見ながら息を吐いている。
 苦しいのかな? 風邪引いているのかもしれない。
「姉さん、少し待っててくれる?」
「うん……」
 姉さんが見送る中で、僕は部屋のドアを閉めて、キッチンに向かった。
 階段を降りながら、とりあえず今必要なものを考えてみる。
「ええと、タオルに、氷枕に、あとは……」
 いろいろ考えながら、洗面所を回り、玄関付近にある納戸を開けた。
「ああ、あった」
 多分ここだと思っていたものが、あった。
 よかった、やっぱり風邪を引いたときは、これがいいよな。
 僕はそれらを持って、なるべく静かに二階へ上がった。
 姉さんが寝ているかもしれないのだから。
「……姉さん?」
 そっとドアを開けて見ると……やっぱり寝ていた。
 右手だけ、頭のすぐそばにおいて、はぁ~はぁ~と息を吐いたり吸ったりしながら、苦しそうに眠っている。
 僕は起こさないように細心の注意をはらいつつ、姉さんに近寄った。
「……すごい汗だな。ええと」
 姉さんはすごく汗をかいていた。タオルで拭かないと。
 僕は水を張った洗面器をベッド横の机の上におき、タオルを入れて絞った。
 なるべく強く絞る。あまり水を残しては意味がないから。
「……拭くよ?」
 眠っているのだから、答えるはずもない。
 ただなんとなく、確認をとりたかっただけだ。
「ん……」
 姉さんが、苦しそうにあごをあげた。
 僕は、姉さんの服のボタンを、一個ずつ外していく。
 だんだんと見えてくる、姉さんの少し色黒の肌。
 とてもきれいだった。
 ブラも外す。
 フロントホックで少してこずったけど、なんとか外すことができたようだ。
「んん……」
「っ!」
 起きたのかとびっくりしたけど、そうでもないらしい。
 そのまま、濡れたタオルを、姉さんの肌に触れさせた。
 姉さんの胸、姉さんの腹、姉さんの乳首すべてを、綺麗に拭いていく。
「ふぅ~……」
 大丈夫だな。これぐらい拭いておけば。
 あとは、下か。
 とりあえず、ズボンだけ脱がしておかなくては。
 チャックを外して、そのまま、それを脱ぎ去った。
 足が出てくる。
 あたりまえだけど。
 綺麗な、細いくびれた足だ。
 まずは右足を拭く。
「ん……はぁ……ぁ」
「! っ…………」
 姉さんが、いろっぽい吐息をはいた。
 つま先も、くるぶしも、太ももも、すべて拭いてあげる。
 まるで、従者にでもなった気分だ。
 左足にとりかかった。
 同じように、つま先、くるぶし、太もも……。
「はぁ……ぁ、ぁ……はぁ……ん……」
 すべてを拭き終わった。
 あとは……。
「……ひっくりかえすと、起きるだろうなぁ」
 僕は姉さんの身体を抱え込んで、姉さんが起きないようにと思いながら、うつぶせにしてみた。
「……ん? あれ……?」
「あ、姉さん。起きちゃった?」
「……! いやっ!! なに? なにしてるの、基樹!?」
「別に。ただ、汗をかいてたから、拭いているだけだよ?」
「な、なんでっ!?」
「しかたないだろう? そのままじゃあ、気持ち悪いんだろうからさぁ」
「っ…………」
 姉さんは、真っ赤になった顔を横に向けたまま、黙って僕の言葉にしたがった。
「じゃあ……拭くよ?」
「…………」
 黙って、コクリとうなずく。
 まず僕は、姉さんの色黒の背中を、タオルで拭いていく。
 天使の骨って言うのかな。背中の上のほうの、二つのでっぱり。
 そこのところが、姉さんの吐息に合わせて、上下に動いている。
 僕は、そこを丹念に拭いた。
 タオルが、汗のつぶのかわりに、水のつぶを作っていく。
「……………………」
 次は、姉さんの腰。同じように、たんねんに拭く。
「んっ」
 くすぐったかったかな?
 聞いてみなくては。
「くすぐったかったかい?」
「ん、ううん。そういうわけじゃないよ」
「そうか……」
 なんだか、姉さんに奉仕しているみたいだ。
 この前見たマンガに、こんなのがあった。
 それは姉さんの持っていた雑誌だったけど、やはり僕らと同じく姉と弟の話で、姉がどうしてか忘れたけれど風邪をひいて、弟が姉の看病をして、汗を拭くって話だった。
 あれをふと思い出した。
 姉さんの従者。そんなのも悪くはない。
「……よしっ、と」
 とりあえず、背中は終った。あとは……とりあえず足から、かな。
「ん……」
 姉さんの太ももから、膝の裏、そして、くるぶしを拭いていく。
 そして次は……。
「姉さん……少しごめんよ」
 そう断ってから、姉さんの履いているパンツの端をつかんで、上にぐっと持ち上げた。
「っ! いやぁっ!!」
「こうしないと、お尻がふけないだろ?」
 姉さんは、右手をお尻にもってきて、抵抗する。
 でも、完全に自分のお尻にさわっているわけじゃないから、邪魔にはならないな。
 そのまま悪いけど、とても恥ずかしいんだろうけど、姉さんのパンツを、下にずりさげた。
「ううっ!」
「ごめんよ。恥ずかしいだろうけど、がまんして。パンツが汗でぐしょぐしょだから」
「う…………」
 姉さんの、とても形のよい、二つの尻が現れてきた。
 僕はそこに、濡れたタオルを伸ばす。
 もちろん、さっきから何度も、水につけて絞っては、姉さんの身体を拭き……を繰り返している。
「んんっ!!」
 姉さんが、濡れたタオルをお尻につけた瞬間に、背中を反らした。
「冷たい?」
「う、うんっ……」
 でも……どうしようもないな。
 このまま放っておいたら、姉さんの熱がひどくなるし。
「…………がまんして」
 そう言って、僕は姉さんのお尻に、再びタオルをつけた。
 形がやや変わるぐらいに、タオルをこすりつける。
 そんなことしてて、お前は平気なのかって?
 ……平気じゃないさ。
 僕は、とてもこらえている。
 自分の理性を総動員しているはずだった。
 だって、目の前に姉さんの、とてもきれいなかわいいお尻があるんだぜ?
 がまんするほうがむずかしいよ。
 でも……やっぱり姉さんを傷つけるのはいやだから。
 あんなことした僕でも、それはとてもいやだから。
 やっぱりがまんするんだ。
「……さぁ、これぐらいでいいよな?」
 お尻を拭きおわって、姉さんの顔をのぞきこんでつぶやいた。
 姉さんは、真っ赤な顔をして、僕の視線から逃げるように、顔を反対向きにして、コクンとうなずいた。
「あ、ありがと。でも、恥ずかしい……」
 消え入るような声で、つぶやくようにそう言って、姉さんは上半身を起こしている。
 膝を少し斜めにして、そこがはっきりと見えないように隠しながら、だ。
「さぁ、このパンツとブラ使って」
 姉さんは、僕が差し出したパンツとブラを、奪うように取ってベッドに置き、でもすぐ、パンツを手に持った。
 僕に下着を差し出されたのも恥ずかしかったんだろうけど、履かずに置いておくのは、もっと恥ずかしいんだろうな。
「んしょっと……」
 姉さんは後ろを向いて、やりにくそうにパンツを履いた。
「大丈夫? 手、ちゃんと動くかな?」
 僕は覗きこむようにして、姉さんの背中に問いかけた。
 ここからだと、ほんの少しだけ、その色黒の胸が見える。
 ほんの少しだから、逆にかわいいって感じがするのは、変なのかな。
「ん……、少しやりにくい」
「そうか。じゃあ、こっち向いて」
 姉さんはもうパンツを履いているから、今回は難なくこちらを向いてくれた。
 でもただ、胸は両腕で隠しているけど。
 顔も、うっすらピンクだ。
 横を向いて、うつむいている。
「僕が、ブラをつけてやる」
「え?」
「やりにくいんだろ? 俺がつけてやるから」
 薄いピンクのブラを手にとって、それをひろげる。
 やっぱり、少し大きいな。
 姉さんに後ろから抱きつき、そしてブラのカップを前に回す。
 これはフロントホックだ。つけられるかな? つけられないと、情けないよな……。
「……っと」
 前に回してきたブラを、そのまま真ん中をつかんで、ホックをつけようと苦戦する。
 それは、なるべく胸にさわらないようにしてるから、でもあった。
「……基樹……」
「ごめんよ。難しいんだ。その……胸に触らないようにすると」
「! う、うん…………」
 姉さんは、さっきよりも若干だけど、顔の赤みが増したみたいだ。
 やっぱり横を向いて、今度は目をぎゅって感じで閉じている。
「……だめだ。むずかしいな」
 出さないようにしていたけど、思わず声に出してしまう。
 そんな感じで、しばらくフロントホックのブラと格闘していたとき、だった。
「……………………っ」
「? ね、姉さん?」
 姉さんが、僕の手を、片手で押さえてきた。
 あいかわらず真っ赤な顔で横を向いてうつむいて。
 でも、目は開けて。
「…………あの……」
「なに?」
 姉さんが口を開く瞬間、その片手が、ぎゅっと強く握られた。
「あの……基樹…………だ……て…………」
 ささやくような、とても聞き取りにくい小さな声だった。
「え? なに?」
 すると、今度は、ハッキリと言った。

「抱いて。私を…………抱いてください」

「……………………いいの?」
「…………ん」
 姉さんがうなづいた。
 どういうことだろう?
 姉さんはいやがって、無理やり僕に蹂躙されたのに……なぜ?
 どうして自分から、僕を求めてくるんだろう。
 抱いてってのは、抱きしめるのとは違うよな。
 これは……求めているのか? SEXを。
 その意味が、素直に伝わってこない。
 そんな僕に、姉さんは、
「……なに考えてるの? やっぱりいやなの?」
 とても不安そうな顔をして、僕をちろりと見た。
「い、いや違うよ。姉さんが……いやでなければ」
「い、いやじゃない……」
 これも聞き取りにくかったけど、僕の、僕の耳だけには、スッと入り込んだ。
「……………………」
 僕は、ぎしりと鳴るベッドに腰掛けた。
 姉さんが、切なそうなうるんだ瞳で、僕を見上げる。
 僕のほうが少し身長が高いから、どうしてもそうなる。
「…………姉さん……………………」
 まず、前のときはできなかった、キスをする。
「んんっ、むっ、んっ」
「んんむっ、んんっんんっ」
「むぅんんっんんっ」
 ちゅぱちゅぱと音がしている。
 静かな外から、かすかな雨の音がする。
 その中で僕らは、第一の接触をした。
 前にはできなかった。
 姉さんのとてもセクシーな唇。
 それが、僕の唇と重なりあっている。
「んんっ……むぅんんっ、んんっ」
 ちゅぱちゅぱちゅぱ
「んんっ、んんっんんっんっ」
 ちゅぱちゅぱちゅぱ
 僕は、しばらくディープキスを繰り返した。
 それから、そのまま姉さんの色黒の胸に、手を伸ばした。



「んっんっ……」
 姉さんが、キスをしながら、腰をよじらせている。
 右胸をできるだけやさしく、そして姉さんが満足してくれるように。
 力を込めて、思いも込めて、形を変えつつある右胸を、もんでいた。
「んんっ!!」
 先端にある乳首を、指でこりこりといじくる。
 押しつぶしたり、ひしゃげさせたり。
 今、僕の指の中に、姉さんの乳首が支配されている。
 これは男にとって、最上の喜びだろう。
 こんなに綺麗な姉さんを、僕ひとりのものに。
 ……少なくとも、今この瞬間だけ、僕ひとりのものにしている。
 胸のうちに、ひそかな歓喜の感情が沸いてきていた。
「しゃぶるけど、いい?」
「う、うん……」
 姉さんは、顔を真っ赤にして、うなずいた。
 言葉どおりに、姉さんの右胸をしゃぶる。
 左の胸は、乳首を人さし指でこねくりまわしながら、他の指で乳房全体をこねまわす。
「んんっ、あっ!!」
 舌で、乳首を弾く。
 何度も繰り返し弾く。
 乳首は、もうぴんぴんになっていて。
 たぶん痛いんじゃないかってくらいに、固くなっている。
「感じてる?」
「いやぁっ!!」
 姉さんは首を振ってから、顔を隠すように、腕を頭の前に置いている。
「そんなに恥ずかしがることないよ? 俺と姉さんしか、ここにはいないんだよ?」
「んんっ! んっ、だ、だから恥ずかしいっ……んんっ! だよっ……あっんんっ!」
 姉さんはそう言って、僕の頭を、乳首を吸っている頭を抱きしめてきた。
 非力な腕が、震える腕が、僕を強く乳首に押し当てていることが、かえって自分の快感を呼び覚ましていることに、彼女は気付いているのだろうか。
 むしろ、無意識な行動なんだろうな。
「……なめるよ?」
 答えを待たずに、舌でべろべろとなめる。
 僕の唾液が、姉さんのお椀型の胸に、てかてかとついている。
 そろそろ……下を触ってもいいだろうか。
 僕はさりげなく、姉さんのそこに手をのばした。
「んんっ……あっ!!」
 瞬間、僕の頭を抱きしめる腕の力が強くなる。
 僕は、姉さんのそこの谷間を、丹念に指でこすった。
 少しだけ愛液がしみてくる。
 姉さんの愛液。
 僕はそれがついた人さし指を、姉さんの口に運んだ。
「なめて?」
「……んっ、ちゅっ、んっ、んんっ……ちゅぷっ」
 僕の人差し指を、丹念にしゃぶっている。
 ちゅぷちゅぱといやらしい音が、辺りに小さく響いていた。
 その間に、僕は左手で、少しやりずらいけど、なおも姉さんのそこの谷間をこすりつけた。
 指を何度も往復させる。
 何度も何度も。
 痛くならないように、ゆっくりと、じわじわと快感がやってくるように。
 ゆっくりと。
 姉さんの薄い毛が指にからみつくけど、かまわずに往復させた。
「んんっ! んんっ、んっ……あっ」
 姉さんは腰をよじらせて、快感の波に、たぶんじわじわする快感の波に耐えている。
「……そろそろいいかな? 指、入れるよ?」
 姉さんがしゃぶるのをやめた右手の、人差し指と中指で、一旦そこを広げてから。
 ねちゃという音が聞こえてきそうなほどに、いっぱいに広げてから。
「い、いやぁっ! んんっ! あっ!!」
 そして、人差し指を、じゅぷっと入れた。
「んっんんっ!!」
 やっぱり、まだきついな。
 毛もからみついてくるし。
 それでもかまわずに、指を出し入れしていた。
 じゅくじゅくじゅく。
 かぎ状にして、漫画や小説、果てはインターネットからかき集めた知識を総動員して、僕は姉さんをよがらせるのに必死だった。
「んんつ! あっあっ! あんっ! んっ……ひゃっ! んっんんんっ!!」
 姉さんの腰が、ゆっくりと、たぶん無意識に、右へ左へと、揺れ動いている。
 その動きは、上にいる僕からもわかるほどエッチで、なまめかしい匂いがした。
「んんっ……あんっ! んっ、んんっんんっ」
「ここ? 気持ちいいかな?」
 姉さんの中をさぐっていて、ざらざらしたところにぶちあたった。
 ここは確か……。
「んあっ!! はぁんっ!!」
 そうだ。ここが一番気持ちいいところ。穴の中で、一番気持ちいいところだ。
 ふぅん。ここなんだ。
「そう。気持ちいいんだ?」
 僕はクスッと意地悪く、これは意識的にわざと、意地悪く笑った。
 姉さんの被虐心を、少しでもくすぐられるように。
「んっ、そ、そんなこと……っんん! っな、ないっ……んんっ!!」
「本当かな? ここを、こんなに濡らしているのにかい?」
 また笑う。
 楽しくもあり、せつなくもあるんだ。
 今の僕の心は。
 だって自分の手の中で、こんなに綺麗な自分の姉さんが、腰をよじらせて踊っているんだぜ?
 これは最高だろ?
「んんっ! あっ、あっ、あんっ! んんっ」
 姉さんが喉を上にあげて、喘ぎ声をあげる。
 じゅくじゅくじゅぽじゅぽという音と、そして姉さんの喘ぎ声で充満した室内。
 ざーざーという耳障りな、今この状況では耳障りな雨の音を、かき消してくれる。
 最高の音楽。
「んんっ! あんっ! んんっ……んっ! あっ、あひゃっんっ!!」
 僕の背中に、爪をたててくる。
 あまり伸びていない。校則をきちんと守る姉さんの爪が。
「そろそろ……いいかな?」
 僕は、姉さんのそこに、自分のものをあてがった。
「んっ…………」
 そして、ずぶりと挿入させた。
「んあぁっ!!」
 姉さんがひときわ大きく腰をよじらせ、浮き立たせた。
「あっ、あっ、あっ、あっ、んんっ、ひゃっうっ、あんっ!!」
 姉さんのそこにぶち当たるぐらいに強く、そして激しく腰を打ちつけた。
「んんっ、あっ、あっ、んっ、んんっ、ひゃっ、んんっ、くっ!!」
 ぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅりっ!!
 すごい音がする。
「んっ、あっ、んんっ、ああんっ、んっ、ひゃっ、んんっ、んんっ、あっ、あっ、あっ、ん!」
「気持ちいいかい?」
「うっ……ん! んっ、あっ! あっ、あっ! あんっ! んんっ、あ……ひゃっ! んんーっ!」
 かよわい腕の力で、僕の胸を押さえながら、快楽の波に耐えている。
 ここは快楽の部屋。
 まさにそのものだった。
 ずっと、こうしていたかったのに。
 終わりが、来てしまった。
「うっ!」
「うぁああああああああっ!!」
 姉さんは大声をあげて、僕といっしょにイッタ。
 ……どうしてなんだろう、男って。
 さっきまでの幸福感が……罪悪感になった。
 姉さんが……いけないんだ。
 僕を、知らぬ間に誘惑するから。
 だから僕は、それに応じた。
 僕の手をとって、抱いてとせがむから、だから僕はそれに応じた。
 ただそれだけ。
 僕は必死に、罪悪を正当化した。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
「ふぅ……、ふぅ……、ふぅ……」
「はぁ、ぁぁ…………」
「ふぅー…………」
 まだ脈打つそれを、引っこ抜いた。
「あっ!!」
 ぬぽっと音がする。
 しなりとして出てくる自分のそれ。
 精液が飛び出ていた。
 姉さんの愛液と入り交じって……。



「はぁ……、はぁ……」
 姉さんは、自分の両胸を両腕で隠しながら、息を整えている。
 僕のほうは。もう平気だ。
 あれだけひとりで喘いでいたのだから、当然だろう。
「…………はぁぁ」
「気持ちよかった?」
「! …………ん」
 静かに、一度だけうなづく姉さん。
 かわいいなぁ。
 恥らう仕草、とてもいいんだよ? 姉さん。
 僕は、姉さんを上からぎゅっと抱きしめた。
 姉さんの上に、直接のしかからないように。
 両肘をついて、姉さんをこのまま僕の腕の中にしまってしまうぐらいに、深く姉さんを抱きしめた。
「……基樹」
「なに?」
「ありがとう…………」
「は? なにがだよ?」
「……ううん。別に、なんでもない。ただ、そんな気持ちが……しただけ…………」
「姉さん? なに泣いてるんだい? 泣くほどのことじゃないだろう?」
「うん。でも、なんでだろうね?」
 姉さんは涙を流していた。
 僕らは、なんだかおかしくなって、顔を見合わせて笑いあった。
 そして、姉さんの涙を、人さし指でぬぐった。
「あの、ね? 基樹」
「なんだい?」
 やさしく頬笑みながら、たずねた。
 さっきは意地悪したけど、今はもう終っているから、やさしくしてあげたい。
 そう思った。
「あの。基樹の、それ……」
「ああ、これかい?」
 姉さんは、僕の指差したものから、ぱっと視線を反らす。
 女の姉さんには、恥ずかしいものだよな。
 つい最近まで処女だったんだから、あたりまえか。
 僕が陵辱したために失われた、処女膜。
 それもすべて、僕のものだ。
 誰のものでもない。僕だけのもの。
 姉さんは、今確かに、僕だけのものだ。
「あの……基樹が……もしよければ、なんだけど……」
「ん?」
「その……基樹のそこを……しゃぶってもいいかな?」
「え?!」
「だめ……かな?」
 首を傾げて、真っ赤な顔で僕を見つめてくる。
 かわいい仕草だ。
 僕はこうなるずっと以前に、この表情を見て、姉さんをきつく抱きしめたくなる衝動に駆られたことがあった。
 誰にも負けないその表情。
 とても魅力的なその表情。
「……いいかな?」
「あ、ああ。たのむよ」
 僕は、両膝で立ち上がった。
 姉さんがしゃぶりやすいように。
 初めての姉さんでも、わかりやすくなるように。



 姉さんは、おそるおそるといった感じで、片手を僕のそこに伸ばした。
「うっ……」
 姉さんが触っているからこそ、相手が姉さんだからこそ、触られるだけで、ぎゅっとくる。
「く、口に含んでもいいのかな?」
 僕の顔を見上げて、上目づかいにたずねてくる。
「ああ、いいよ。うれしいよ」
「う、うん」
 真っ赤な顔をして、そしてそっと口を開いて、赤い舌を出して、僕のそこを口に含もうとしている。
 赤い舌が、とてもエロティックだった。
「んむっ……」
「う、く…………」
 姉さんの口内の感触が、僕に伝わってくる。
 暖かい口の温度すべてが、僕に伝わってくる。
「んむ……ん、んぅ……んちゅ……」
「んっ……んあっ!!」
「ふん……む……むふぅ…………」
 いやらしい音が、静かだった室内に再び響いていく。
 初めてでぎこちないけど、だからこそ気持ちが伝わってくる。
 姉さんからの、初めての愛撫。
 決してうまくはない。だけど一生懸命な姉さんの愛撫。
「は……ぅむん……は、ふぉ……んむ……」
「んっ、ん……くっ!!」
 ちゅぽっ!!
 ふいに、姉さんは口を離した。
「……気持ちいいのかな?」
 少し不安そうな顔。
 僕自身が、何度も聞いた質問。
「あ、ああ……」
 こんなに恥ずかしい質問だったんだな。
 姉さんも恥ずかしかったんだろうな。
 少しかわいそうだったかな。
「気持ちいいんだ……。じゃあ、一生懸命やるね?」
「ああ」
「ふふ……、んむ。……ん、んん、んぅ…………」
 姉さんの頭が前後する。
 僕は、その頭を抑えたくなる衝動を、ぐっとこらえた。
 だってそうしたら、姉さんの喉の奥まで、深く含んでしまうことになるだろう?
 それは苦しいだろうから、できない。
 せっかく僕のものを含んでくれているんだから。
 そんなことは、できないさ。
「んんっ、んんっ!!」
 姉さんが、自分の胸にそろそろと手を伸ばして、右胸をもみだしている。
 少し物足りなくなっているのかな?
「姉さん……だめだよ。それは僕のものなんだから、僕だけがさわっていいんだよ」
 少し調子に乗って、そう問いかける。
 姉さんは困った顔をして、僕のものを口から外して、上を見上げた。
「基樹のものなの? ……真紀の胸だよ?」
 首を傾げる仕草が、やっぱりかわいい。
「そうだね。でも、僕のものでもあるんだよ? だから姉さんは、今はこらえてよ」
「……いじわる」
 そう言って姉さんは、再び僕のものを口に含む。
 そして、また姉さんの手が、じわじわと自身の胸に伸びているけど、その場で手をぐっと握って、こらえているようだ。
「そうだ。姉さん、自分の下のそこ……触ったことあるかい?」
 僕のものから口をはずして、姉さんは首を横に振った。
「ないよ。そんなこと、いやだもん」
「姉さんのそこは素敵だよ? 自分でさわってみなよ?」
 姉さんは、少し考えてから、
「…………うん」
 僕の命令に従ってくれた。
 そろそろと、自分の股の間に手を伸ばしていく。
「……んんっ!」
「濡れている?」
「うん。やだな。濡れてるよ」
「そう? さっきの残りがあるんだよ、きっとさ」
「そう、かもしれない……」
 姉さんはそう言いながら、すごく遠慮がちに、自分のそこを触っている。
 僕がさわってた時みたいに、ちゅぷちゅぷという音さえ聞こえてこない。
 それぐらい遠慮がちに。
「んっ……、自分の……んっ! ここを触ったのなんて……っん! は、初めてだよぉ……」
「そう? 姉さんらしいね」
「んっ、んっ……変な……形だね」
「そんなことないさ。みんなそんなものだよ」
「皆? みんなって……」
「ああ、ただ雑誌で見ただけだけどね。あとは友達のAVとかさ」
「そ、そう……なんだ。私も……あるよ。アダルトビデオ……一度だけ……見たこと……」
「へぇ?」
 これは驚いたな。
 姉さんがアダルトビデオを?
 まさか自分から借りたわけじゃないだろうけど。
 どういうことだろう。
「友達の……結構進んでいる子が……んっ! んんっ、あっ、ん!! ……借りていたのを見、見て……ん!」
 自分のそこを触りながら、一生懸命にそう答えた。
 顔を赤くしながら。
 喘ぎながら。
 そのころ、ようやくちゅぷちゅぷという小さな音が聞こえてくる。
 そういえば、風邪を引いていると、SEXの感度がますらしい。
 男はわからないけど、女性の場合は、感度がますらしい。
 弱っているからなのかもしれない。
 なにかの漫画に書いてあったはずだ。
「そう……。全部見たの? 最後まで?」
「いやになって……見なかった。なんだか……あ! ……気持ち悪いから……」
「そう? でも、愛する人間同士なら、して当たり前だろ?」
「ちがうよっ!! んんっ、あっ! ああいうのは……っん! ア、アダルトビデオの二人は……っああ! お金のために……っん! すっ、するんだよっ!?」
「そうだね。そうかもしれない」
「だから、なんだかいやだった。失礼かもしれないけど……んんっ! いや……んっ! だった……ああ! あんっ! あっ、あっ、あんっ!」
 ちゅくちゅくという音が大きくなっている。
 そろそろ僕のものを入れようかと思う。
 でもその前に、前にAVで見たことのあるやつ、やってみようかな。



「姉さん。ちょっといいかな?」
「ん、んんっ……え?」
 キョトンとした姉さんの頭に、そっとタオルを巻いた。
 目隠し。
 たいした刺激にはならないだろうけど、ちょっとした興奮剤にはなるかもしれない。
「い、いやだよ。これじゃ基樹が見えない。感じられないよっ」
「いいんだよ。姉さんは、僕のものだけを感じてくれれば」
「だ、けど……」
「さぁ、後ろを向いて」
 姉さんは、それでも僕の命令に言葉に、しぶしぶと従い、後ろを向く。
 姉さんのそこを、初めてハッキリ、じっくりと見ることができた。
 やっぱり濡れている。
 ぐじゅぐじゅになっている。
 丁度いいな。これなら。
 姉さんのそこを、ゆっくりとなでるように、手でおおった。
「んんっ!」
 姉さんの腰が前にうごく。
 四つんばいの状態で、目隠しをされた状態で、姉さんの腰が前に動いている。
 そこを少しだけグラインドさせてから、僕は自分のものの根元をつかんだ。
 姉さんを満足させてやれればいいんだけどなぁ。
「じゃあ、いいかな? いくよ?」
「う、うん」
 早くもうつむいて、顔を自分の手の間に入るぐらいにしている。
「いくよ……」
 最初はゆっくり。
 そして完全に根元まで入ったら、やさしく、激しく、出し入れを繰り返した。
「んあっ! んっ、あんっ、ひゃっ、んんっ、んっ、くっ、うっ、んんっ、あんっ、あひゃ、っんん、んあっ!!」
 姉さんの腰が、僕の動きにあわせて前後する。
「んんっ、あっ、んんっ、んんっ、ひゃあんっ、んんっ、んんぁっ、んっ、あっ、あんっ、あっ、あっ、あっ、あっあっ、あっ!!」
 腰を振りながら、どうにかして快感の波にのまれるのを抑えている。
「姉さん、いいんだよ? 僕を感じて! 僕の気持ちをすべて姉さんにあげるから!」
「んっ、こわいっ!! こわいよっ!! 基樹っ!! どこに……んんつ! あっ、んっ……いるのっ?! 基樹ぃ!! どこにいるのぉっ?!」
「ここだよ! 姉さんここにいるよ! 大丈夫だよ!」
「んんっ! あっ、んっ、んっ! む、胸! 胸を、触ってください! 安心するから……んっあんっ!!」
「いいよ! こうだね! ほら……ああ、柔らかいよ!」
「ああっ! 基樹ぃ、基樹ぃっ!」
 姉さんの要望どおりに胸をつかんで、さらに激しく腰を動かす。
 僕の限界もここまでだ。
 そろそろイキそうだ。
「んんっ、あっ! んんっ、あんっ、ひゃっ! んっ……んんんんっ!!」
「姉さんイクよ!」
「わた、私も……あ、ああだめぇああ……んああっ! ああああああああああああああっ!!」
 姉さんが先にイッた。
「くっ! あ、ぅああ!」
 後を追うように、僕も自分の精を放つ。
 姉さんの中に。
 姉さんの、温かくて、やさしくて、締めつけるそこに。
「熱っ……あ、あああ、流れて……んん、んんんっ…………」
「あ……ああ……姉……さ…………」
 体中のなにもかもが、姉さんの中に流れていく感覚だった。
「……っは! はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
「大丈夫? 姉さん?」
「う、ん。大丈夫だよ。はぁ、はぁ、はぁあ……」
 ゆっくりと息を整える姉さん。
「はぁ~、はぁ~……」
 コテンと裸のまま横たわって、眉をしかめて、息を苦しそうに吐いている。
 姉さんの、下のそこからは、僕の精液が流れ出してくる。
 今の僕らのように混ざり合った。
 姉さんの愛液、僕の精液。
 じゅるじゅると流れ出していく。



 僕は、姉さんの横に、同じように横たわった。
「はぁ、はぁ……! い、いや! だめだよ。基樹……」
 いやがられても、僕は姉さんの胸をやさしくもむのを、やめたくない。
 こうしていると、安心するんだよ、姉さん。
「んっ……ん、あんっ! だ、だめだったらぁ。真紀、もうだめぇ……」
「こうしているだけだから。これだけだから……」
 姉さんの乳首を、こりこりといじくる。
 ただそれだけ。
 それ以上のことはできない。
 姉さんは風邪を引いているんだから。
「ん……う…………」
「…………」
 気持ちが収まって、僕は姉さんの身体に毛布をかけた。
 寒くなって、これ以上風邪がひどくならないように。
 その上から、また抱きしめた。
 後ろから抱きしめながら、ざーざーという雨の音をずっと聞いていた。



 姉さんの寝息が聞こえるまで、ずっと……。



つづく

小説(転載) ADAM2/4

近親相姦小説
10 /08 2014
 次の日。
 海原が、俺の家に来た。
 でかくて黒い旅行用のバックをもって、もう片手を、陽気に軽くあげて。
「おいっすぅ!」
「ああ、よくきたな。なんだやっぱり泊まる気なのか?」
「もちろん」
 と、そこへ姉さんもやってきた。
 夕飯の用意をしていたから、エプロンで両手を拭きながら。
「あ、海原くん、いらっしゃい。あれ? 海原君ひとりだけ? 他の子も来るって、基樹から聞いてたんだけどなぁ」
「ああ、他のやつらは用事があるとか言ってて。俺だけっす」
「そうなの。まぁじゃあ、あがってよ」
「おいっすぅ」
 海原は、スリッパも履かずにあがった。どうでもいいことだけど。
「今日はゲーム持ってきたんだぜ? “おぼっちゃまくんのすごろくゲーム”だな」
「ああ?」
「お前がたのんでたやつだろ?」
 きょとんとして俺に尋ねてくる。俺が頼んだのは……。
「“キングオブファイターズ98”だろ?」
「あ?」
「たしかそうだぞ?」
「あ、ああ。そかそか。まぁ、こっちもおもしろいんだ。いいだろ?」
「ああ、なんとなく想像つくし、いいけどな」

第二章

「それじゃ、ごゆっくりね」
 姉さんは、俺の部屋に、紅茶の入ったカップを置いた。
「あとでケーキ持ってくるから、待っててね」
「ああ、そうですか? やっぱり手作りですかぁ?」
「そう。ブルーベリータルトなんだけどね。ケーキとは違うのかなぁ?」
「俺らにそういうことわからないんだから、いいっすよ? うまければなんでも。真紀さんの作ったケーキは、まずいことないし」
「そうだな。姉さんのケーキは確かにうまいよ」
 俺もうなずく。たしかに、小さいころから、ケーキもクッキーもタルトも、全部うまい。……ときどきこげてたりもするけど、でもやっぱりうまいから。
 料理本を覗きながら、一生懸命ケーキと格闘する姉さんを見るのは、とても楽しいし。

「んじゃあ、まぁいっぱい。お前も飲めよ?」
 姉さんがおぼんを持って去っていってから、海原が口を開いた。
 右手で持った紅茶のカップに口をつけながら、左手を俺のほうにひらひらと振ってくる。
 俺も紅茶を飲んだ。
 なにも入ってないシンプルなものだが、少しハーブの香りがする。
 ハーブの紅茶苦手なんだけど、海原は結構好きなんだよな。
 まぁ、お客優先か。姉さんらしい。
「んじゃあまぁ、ゲームすっかぁ。例の“おぼっちゃまくんの恋愛シュミレーションゲーム”」
「さっきは、“おぼっちゃまくんのすごろくゲーム”と言っていなかったか?」
「ああ、そそ」
「いい加減なやつ」
「それも俺のひとつの特徴ということで。ではでは」
 海原が、ファミコンのソフトを差し込むところに、ガチャッとオレンジ色のカセットを差し込んだ。
 俺の部屋には、ファミコンとプレイステーション、それにセガサターンがある。
 プレイステーション2も買うつもりでいる。
 まあ、いいんだけど。
「おっ。始まったぜぇ?」
 それからしばらく、ゲームで遊んだ。



「ふぅ」
「まぁ、難しくはぜんぜんないし。それなりにおもしろかったな」
「ギャグ満載だったからなぁ。腹抱えて笑うほどじゃねぇけどなぁ」
 と言いつつ、へらへら笑っている。何が楽しいんだか、こいつはいつも笑っている。
 たいてい、なにがおかしいのかも分からずに笑っている。
 そういうやつだ。
 それが逆にうらやましい。
 なんてことを思ってたら、海原が、ポツリと言った。
「……お前の姉さん、相変わらず美人だよなぁ」
「んだ? とつぜん」
 あたりまえだよ。突然、顔のつくりが変わることなんて、整形でもしない限り、あまりないだろ?
「お前の気持ちもわかるよ」
「ああ?」
「お前、ときどき真紀さんのこと、せつなそうな目で見てる。自分で気がついてないだろ?」
「……べつに」
「まぁいいんだけどなぁ。見てる俺のほうがせつなくなるのは、気がついてないんだろうなぁ」
「なんでお前がせつなくなるんだ?」
「なんでだと思う?」
「さぁ?」
 海原が、いきなり俺のほうに、四つんばいになって近づいてきた。
 俺は顔をひっこめもせずに、目をそらそうともせずに、そのまま答える。
 ん? なんだ? なんかだんだん、手の先が?
「お前さぁ、綺麗な髪してるよなぁ?」
 お前の顔のほうが綺麗だよ。
 と思ったが、男同士でほめあうのも変な話だから、やめておいた。
「なぁ? ちょっと、ゴム外してくれねぇ?」
「なんで? まぁいいけど」
 俺は、自分の髪に着けている、黒いゴムをはずした。
 姉さんは、よく俺のそのままにしている髪を手にとって、櫛でときながら、ピンクのゴムを楽しそうに取り出すけど、それはかんべんしてくれと言っている。
 男のくせにピンクのゴムじゃあ、また女と間違えられる。
 俺は小さいころから、女と間違えられていた。
 声もあまり低いほうじゃないし、顔のつくりも男性的ではなく、どちらかというと女性的だからだ。
「やっぱ綺麗だな」
 そうつぶやきながら、海原は、右手で俺の髪をさらさらとすくってはすべりおち、すくってはすべりおちを繰り返している。
「お前……なんか気持ちわるいぞ?」
「そういうこと言うなよ」
「なにマジな顔してんだ? これぐらい…」
 やばいな。なんでだ?
 だんだん、手のひらからひじのあたりまで、しびれが来ている。
 これは、なにが原因しているんだ?
「なぁ。お前が真紀さんを見ているのと同じくらい……いやそれ以上に、俺がお前のこと見てたの、知ってたか? 気付いてたか?」
「あ?」
「お前は気付いてないだろうけど。俺はお前に会ったときから……俺は!」
 だんっ!!
「なにするっ!!」
 海原が、俺のことを押し倒してきた。
 机の上でひっくりかえった紅茶のカップから、茶色い液体がこぼれおちている。
「お前のこと、マジで」
「やめろっ!! なにしやがるっ!!」
 海原が、俺の首根っこに噛みついてきた。
「っ!」
「真紀さんになんか負けないくらいに!」
「やめっ!! ろっ!!」
 海原は、俺の首根っこと、そして腰に手を回し、俺の身体を、いわゆるお姫様抱っこしながら、ベッドに放り投げた。
 どさっ!!
 ベッドがきしんだ。ゆらゆらする。
 そして今度は、俺の上にのっかってきた。
「重い……、やめ……ろ」
 舌が回らなくなってくる。しゃべるのが、とてもおっくうになってくる。
 ただ頭だけ、なんでだ?どうしてだ?ってフルに回転しているだけだった。
 なんでだ、海原。
 なんで、いきなりこんなことをするんだ?
 してくるんだ?
「お前のそのうるんだ目が、すごくたまらないんだ!」
「やめっ!!」
 海原は、俺のTシャツを、まくってくる。
 そして俺の……乳首をなめてくる。
「やっぱピンクなんだな」
「くっ」
「やっぱお前は、どんなになってもお前だよ。綺麗なままだよ。俺とは違って」
「お……前が……これを……やめれば……綺麗な……ままだ……」
「違うね。俺は汚れてる。お前を想ってオナニーだってしてるんだから」
 気持ち悪い。
 海原には悪いけど、気持ちが悪い。
 男が男を想ってオナニーする?
 そんなこと聞いたこともない。

「んっ」
「んあっ!!んんむっ」

 海原が、俺にキスをした。
 深くむさぼるような、舌を入れたキスを。
「んんっむぅんんっ」
「んっ!! んむっんっ」
「っむぅっんっむぅんっ」
「むぅんんっんんっ」
「むぅんっ……ぷはぁっ」
 糸を引いている。
 ……昔、男のごつい先輩に校舎裏に呼び出されて、無理やりキスされたときよりはマシだけど。
 でも、それでも、背中がぞわぞわする。
 俺の体の機能は、すべてうしなわれたようになって、ただ寝転ぶことしかできない。
 いやだっ!! いやだっ!!
 このまま、海原になにをされてしまうんだよっ!!
「やめろっ!! ……やめて…………くれよ……海原ぁ……」
「だんだん効いてきたみたいだな。薬」
「あ? ……くっ」
 海原が、俺の両手を上にもちあげて、俺の身体をまさぐりながら、話しかけてくる。
「薬だよ。お前のために用意した。お前を襲う計画をたてたその次の日に、さっそく買った」
「く……すり……?」
「ああ。しびれてるんだろ、身体中がさぁ。これでお前は、なにをされても抵抗できないわけだな」
「ふ、ざける……なよ」
「ふざけてない」
 海原がまた、俺の右乳首をむさぼってくる。
 よだれがつく。
 べとべとになった乳首が、気持ちが悪い。
「やめ……」
 舌がびりびりして、言葉が……。
「下、脱がすからな」
「っ!」
 海原が、俺のズボンを脱がした。
「……ブリーフか。お前らしいよ」
 なにが俺らしいのか、わからない。
 そのブリーフも、脱がされた。
 そして……。ど、どこを見て……。
「っ!」
「きつそうだな。濡らさねぇと」
「や……!」
 俺の脚を開かせて、ぐちゅぐちゅとなめている!
 汚い汚い汚い汚い!
「これぐらいでいいだろ?」
「し……!」
 知るかっ!と言いたかったのだが、声にならない。
「じゃあ、いれるからな」
「ぐっぐぐぐうっ!!」
 カエルみたいな声が出る。

 痛いっ!! 痛いっ!! いたいっ!!
 血がでる!!

「やっぱりきついな。痛いか?」
「あ……!」
 あたりまえだっ!! ふざけるなっ!!
「でも、がまんしろよ? お前は、俺のものなんだからな」
「い……!」
 いつからそんなことになってるんだよっ!!
 やめろっやめろっやめろっやめろっやめろっ!!
「……動くぞ」
 ぎしっぎしっぎしっ
 俺の腰も動く。こいつの腰も動く。ベッドがきしむ。
 ひどく痛い! ひどく痛いんだよっ!!
 頼むからやめてくれよ、海原ぁ!!
「どうだ?」
「ふ……!」
 ふざけるな!! どうだ?じゃねえっ!!
「はぁ、はぁ……くっ!」
「うぁああああっ!!」
 気持ち悪い白い液体が、俺の全部にこびりつきそうだ。

 俺は汚れた。
 この親友の腕の中で、ヨゴレタ。



「じゃあもう一度だな」
「やめ……!」
 やめろっ!! やめてくれよっ!! なぁっ!!
 いたいんだよっ!! きもちわるいんだよっ!!
 なぁ! 海原!!
「まずは抜かないとな」
 ぬぽっ!!
「うっ!!」
 抜いてから、海原はまた俺の脚を持ち上げて、相変わらずしびれたままの足を持ち上げて、俺の血にまみれているそこを、丹念にぺちゃぺちゃとなめてくる。
「……血の味か」
「やめ……!」
 やめろっ!!
 そう叫びたいのに、舌がしびれて声にならねぇっ!!
「じゃもう一度」
 海原が、俺の脚をおろして、今度は足を広げて、中にいれようとしてくる。

 とんとんとん

「………!」
「っ!!」
『基樹、海原君。ケーキできたけど? 食べるよねぇ?』
 ノックの音に続いて、ね、姉さんの声が。
 だ、だめだっ!
「ああ、どうぞ。今とりこんでるんですけど、あなたに、ぜひ見せたいものがあるんですよ」
「く……るな……っ!!」
 くそぉおっ! 声にならねぇっ!
 やめろ! ドアを開けるな! 開けないでくれぇぇっ!
『? じゃ、おとりこみ中のところ、失礼しまぁす。なんちゃっ……』


 がちゃーんっ!!


 ケーキを載せたおぼんが落ちた。

 俺の心も沈みこむ。

 どこか、闇のどこかに。
 ずっと奥まで沈みこんでいく。


「どうですか? 実の弟の襲われている姿は?」
 海原が、なんの表情も無い顔で、姉さんに言っている。
 姉さんの顔は……見れない。
「な、なにしてる……の?」
「俺のものにしてるんですよ。基樹を、俺のものにね」
「ふっ、ふざけないでっ!! ふざけないでよっ!! 基樹! 基樹を放してよっ!!」
「いやですね。誰に頼まれたって、いやですね」
「やめてよっ!! なに考えてるのよっ!! 基樹はあなたの親友でしょ!!」
「親友じゃなくて、恋人ですよ? たった今から、そうなりました」
「恋人? 無理やりこんなことして、なにが恋人なのよっ!!」
「俺のものだって言ったでしょ?」
「ちがうっ!! 基樹は誰のものでもないわっ!! 基樹は基樹自身のものでしかないでしょっ!!」
「ええ、あなたのものでもない? ……気がついてなかったんですか?」
 な……に!?

「こいつ……基樹が、どんな想いであなた……真紀さんを見ていたか」

 やめっ!!
 ろっ!!
 それだけはっ!! 今それだけは言わないでくれよっ!!
 いくらでもお前の好きにしていいから!
 俺の身体なんてくれてやるからっ!!
「え?」
「気がついてない。……かわいそうな基樹」
「っ!!」
 海原が、俺の中にいれたままの状態で、俺の髪をなでてくる。
「ど……どういうこと? どういうことなの?」
「いいですよ。あなたは、永遠に気がつかないままで」
「ちょ……基樹?」
「出て行ってくれませんか? これから俺は、こいつを犯しつくすつもりなんだから」
「やめてっ!! やめなさいっ!!」
 ばっちーんっ!!
 海原の頬を、姉さんが思いっきりたたいた。
 姉さんが泣きながら、海原の頬を思いっきり叩いている。
「……ふっ」
 海原は鼻で笑って、俺の上からやっと降りた。
「わかりましたよ。今回は、これまでにしときますよ」
「あたりまえでしょっ!! 今回は、じゃないわ! もう二度と家に来ないでよっ!!」
「それは無理ですね。約束できませんから」
「二度とこないでっ!!」
 こんなにも姉さんが叫んでいるのに、海原は平然としている。
「じゃあな、基樹」
「っ!」
 身体がびくっと震えた。
 しかし海原は、そのまま部屋を出ていった。
 後には、俺と姉さんだけ。
「……………………」
「基樹!! 基樹ぃ!!」
 姉さんが僕に近づいてくる。
 見ないでほしい。
 こんな俺を見ないでほしい。
 こんなに汚れた俺なんか!!
「……かわいそう、基樹……」
「っ!」
 姉さんは、俺の……腹をなでてくれた。
 綺麗で繊細な指が、俺の腹をやさしくなでている。
「もう怖くないからね? もう大丈夫だからね?」
「……………………」
「基樹? どうしてなにも話さないの? 基樹?」
「うっ……あ…………」
「基樹?」
「あ……」
 よだれしかでてこなかった。
 しゃべろうとしても、舌がしびれて、ちゃんとしゃべれない。
「基樹? ……しゃべれないの?」
「あっ……うう……」
「そう……………………」
 姉さんが、悲しそうな顔で、俺を見ていた。
 俺の腹をさすりながら。
 ずっと飽きもせず、さすり続けながら。






 夜が明けた。
 いつもどおりみたいな朝日だ。
「あ、基樹。もう大丈夫なの? 学校行けるの?」
 二階から降りると、姉さんがエプロンをしたままで、俺に話しかけてきた。
 とても心配そうな顔だ。
「ああ。もう大丈夫だよ」
 やっぱりまだ、股間が痛いけど、それでも耐えられないほどじゃないから。
「よかったぁ。じゃあ、ご飯食べようか」
「ああ」
 今日は、父さんは早めに出かけている。月曜日は、いつも会議があるからだ。
 当然姉さんも、弁当をつくるために、早起きをすることになる。
「姉さん。今日は僕が皿洗おうか?」
「え? ……いいよ。私が洗うから」
「でも姉さん、制服にも着替えてないじゃないか」
「うん……。でも」
「いいから僕に洗わせてよ? 洗いたいんだからさ」
「わかった。じゃあ、お願い」
 そう言い残して、姉さんは二階の自分の部屋に向かった。
「……ふぅ」
 ため息をひとつついてから、皿を洗い始める。
 まだ股間が痛いな。
 くそっ!!



「ねぇ、基樹。今度、水族館行こうか?」
「あ?」
「水族館だよ。隣町にあるでしょ?」
 姉さんが、首を傾けながら確認してくる。
「ああ、あったな。いいかも」
「でしょ?! じゃあ、今度行こうねっ!!」
「ああ……あ?!」
 驚いた。
 姉さんが、ご機嫌な顔で、俺の腕をとったからだ。
「や、やめろよ。人が見てるだろ?」
「いいじゃない。姉弟なら、これぐらいしてもあたりまえだよ」
「年頃の姉弟が、こんなことしねぇよ」
「照れ屋だなぁ。基樹は」
「うるさい。いいから離れてよ」
「わかったわかった」
 姉さんが、俺の腕から手を離す。
 すこし残念だけど、自分から言った言葉だし。
 それから俺らは、通学路をのんびりと歩きながら、なにとはなしにおしゃべりをした。
 おしゃべりと言っても、話しているのは姉さんばかりで、僕はあいまいにうなずいたりするだけだった。



「……おはよう。……!」
 教室に着くと、海原が珍しく先に来ていた。
 目を合わさずに、俺はそのまま通り過ぎた。
 そんな俺に、腹が立つほど元気に、美奈子が声をかけてきた。
「おはようっ!! 基樹!!」
「ああ……」
「今日も真紀さんと登校なわけ?」
「まぁな」
 海原の視線を感じながら、俺は適当な言葉を返した。
 毎回同じこと聞いてくるなよ。うざいやつ。
「そ、仲がいいこと」
「ああ、そう」
 そっけなく対応していると、今度は大石のバカだ。
 相変わらず、俺の腰をじろじろ見ながら、ふざけたことを言ってきやがった。
「おおいっ!!プリンプリンッ!!」
「……あほか、お前」
「んだよ! つれねぇなぁ」
「邪魔だ、どけ」
「おおっ、こえ。なんだよ? 生理かぁ?」
「……お前最低」
「大石最低」
 美奈子が同調して言うと、大石は口元にこぶしを寄せて、気味悪く体をよじってみせた。
「いやんっ!!」
「「ばぁか」」
 美奈子とそろってそう言ってから、俺はそのまま自分の机に向かい。
 そして静かに目をつぶった。



 退屈な授業。
 これで窓際だったら、少しはマシかもしれないけど、俺の席は真ん中あたりだから、どうにもならない。
 楽しんでいるのは、教壇の先生くらいだろうに。
「であるからだなぁ。この公式によって、ここがこうなるわけだ」
(……ほれ)
(おおっ!)
 ん? 二、三人の男どもが、なにかコソコソ盛り上がっている。
 俺は退屈な目で、そいつらのことをのぞき見た。
 雑誌だな、あれは。しかも表紙から見るに、エロいやつであることは間違いない。
 なにをやっているんだか。
(へへへっ、たまらねぇなぁ)
(おい、俺にもみせろよ!)
(ちょっと待てって、あ、やべっ)
(あ、バカドジっ!!)
 俺の後ろにいたやつが、雑誌を落とした。
 後ろを軽く振り返り、それを見てみた。
「……!!」
 かっとなって、目を見開いた。
 その雑誌には、女の裸が載っていて、その顔には……。

 姉さんの笑顔の写真が、切り抜いて貼り付けてあった。

「そういうわけでこの答えは……あ? おい石川? どうした? なにやって……」
 ばっちーんっ!!
「イテェッ!」
「ふざけるなっ!!」
 俺は、雑誌を落とした男を、殴りつけていた。
 止めようもなく、反射的に。
「な、なにしやがるっ!!」
「なにしやがるだと?! てめぇっ!!」
 俺が殴ったそいつは、口の端から血を流しながら、俺をにらんでくる。
 まだ殴られ足りないらしいな。俺はそいつを、さらにぼこぼこにした。
「おら!おらっ!!おらっ!!」
 ありったけの拳で、殴りつけるだけ殴りつけた。
「よ、よさんか石川!! 授業中だぞ!!」
 先生が止めに入る。
 がたいの良い先生でも、完全にキレた俺を止めるのは容易ではないらしい。
 ただ、殴りにくくなったのは事実だ。
「石川! いいかげんにせんかっ!!」
「っ! はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
 少しだけ正常に戻り、俺は手を止めて、殴っていた相手を見た。
「くっ……ひっく……」
 ……泣いてるのかよ。
 ざまぁみろ。ふざけるな。
 姉さんをバカにするから、こういうことになるんだ。
「……シスコン馬鹿」
 気のせいみたいな美奈子の言葉が、俺の背中に届いた。
 騒然とする教室をまとめてから、先生は言った。
 とても冷たく。
「あとで職員室に来い、石川」



「あ、基樹」
「あ? 姉さん?」
 職員室の前で、俺のことを待っていたかのように立っていた。
「姉さんも呼ばれたの?」
「……………………」
 少し背伸びをして、俺の頬をなぞってくる。
「なに?」
「怪我はしてないんだね? よかった」
 よくはないよ。人をなぐったんだから。
 でも、悪いとも思っていない。
「ああ、来たか石川。ま、中に入れ」
 先生が来て、職員室のドアを開けた。
 姉さんも、一緒に入った。



 俺たちを立たせておいて、先生は自分の席で、なぜか偉そうにふんぞりかえった。
「……話はわかっているな」
「はい」
「お前がやったことは、やりすぎだ。わかるな?」
「はい」
「怒りたい気持ちもわかるが、何も殴ることはないだろう?」
「…………」
 もう、適当な返事ができなかった。
 殴らなきゃわからないんだ、あんなヤツら……。
「ごめんなさいっ!!」
「! ね、姉さん!」
 姉さんがあやまるなんて!
 やめろよ! 少なくとも、姉さんがあやまるべきことじゃないんだよっ!!
「いや、まぁ君があやまることではないんだがな」
「ですが……やはり姉ですから……」
「む……ま、弟想いで結構なことだ。……で? その弟本人は、反省しているのか?」
「僕は……」
 あやまってくれた姉さんには申し訳ないけど……。
「悪いことしたとは、思っていません」
「……どうして、そう思うんだ?」
「あんなことしてるやつ、許せませんから」
「ふぅ~……。だけどなぁ、石川よ」
「……………………」
「ほら、それだ」
「え?」
「お前のその目だよ」
「…………?」
「お前のその冷たい視線が、相手を怒らせているんだよ。わからないのか?」
 俺の冷たい視線? 相手を怒らせている?
 どういうことだ?
「お前、人を馬鹿にしているんだろ? な?」
「……別に」
「いいかげんにしろっ!!」
 なんだコイツ。突然キレたりして。
 向かいの席の教師にたしなめられて、どうにか落ち着いたようだが。
「……怒鳴ったりして悪かったな。……だがな。お前、もう少しどうにかならないのか?」
「どうにか?」
「もう少し、周りに心を開けと言っているんだ」
「……………………」
「お前は確かにモテるし、運動だってできる。授業だってめったにサボらない。成績も良い。それは認めるんだぞ?」
「……はい」
「もっと笑え。もっと元気になれ。そうしないと、お前はこれから、ずっとそのままだぞ」
「はい」
 別にかまわない。
 人間なんて、めったなことじゃあ変わらない。
 笑えとか、元気にとか、そんなことぐらいで……変われるものかよっ!!
 そんな俺の気持ちに、先生はとどめを刺した。

「……とりあえず、停学処分が決まった。しばらくは自宅で反省するんだな」

「っ!!」
「停学……基樹が、ですか?」
 信じられないといった顔でたずねた姉さんに、先生はウムとうなずいた。
「相手は病院送りだぞ? むしろ、停学で済んだことに驚いてほしいくらいだ」
「……………………」
「そういうわけだから、君も呼んだんだ。後で、石川……あー、弟に、相手へ謝罪させるように」
 冗談じゃない! そんな屈辱的なことできるもんかっ!!
「わかりました! 申し訳ありませんでしたっ!!」
「!!」
 だから! 姉さんが謝らないでよっ!!
 頭をさげないでくれよっ!!
 姉さんは悪くないんだよっ!!
 悪いとすればこの俺だし、なにより、あいつらのほうなんだからさぁっ!!



 それから、姉さんに引っ張られる形で、俺はヤツが運び込まれた病院に行った。
 ちょうど処置を終え(大げさに包帯で巻かれていた)、母親らしき女と同伴で、待合所で会計待ちをしていた。
 他の患者が大勢いるその場所で。
 姉さんは、土下座した。
 ヤツよりも、母親のほうが怒っていた。
 どんなに姉さんが床に頭をこすりつけても。
 平気でその姿をなじって。
 それでも姉さんは、屈辱的な格好をし続けて。
 泣き声で、許してくださいと繰り返した。
 でも、許してくれないで。
 呆れ返ってから、ご両親とじっくり話すなんて言った。
 母親のいない俺と姉さんに向かって、ご両親、と。
 それから、ありありと軽べつした態度を見せながら、去っていった。
 姉さんは、ゆっくりと立ち上がって。
 必死になって怒りの爆発を抑えている俺に……。

「帰ろう、基樹」

 微笑んだんだ! 俺のせいでイヤな思いをしたのに!
 くそっ! くそぉっ!






 夕飯時……は、少し過ぎていた。
「あ、基樹。もうすぐご飯できるからね」
 姉さんが、台所で包丁を使いながら、俺に話しかけてきた。
「ああ。そう」
「今夜もおいしいよぉ。楽しみにしててね。ふんふん~♪」
「……………………」
 機嫌がいいわけない。
 努めて、俺に対して明るく振舞っているんだろう。
「あ、そうだ。そのお皿、出してくれない?」
「あ? ああ」
 キッチンの椅子に座って、いつものように姉さんを見つめていた俺は、姉さんが指差した皿を取り出した。
「そう、それ。ありがとう」
 姉さんが振り返って、笑みを浮かべている。
 俺のの大好きな、輝くような笑顔を。
「……………………」

 悲しいよ。
 こんなに好きなのに、許されないなんて。
 こんなに近くにいるのに、そんなに遠くにいるなんて。
 名前で呼びたいのに、姉さんと言わなくちゃならないなんて。
 悲しいよ。
 近づけないまま、汚されて、けなされて、理解されないままの、俺が。
 もう……たくさんだ!

「……どうかしたの? 怖いよ? 基樹の顔」
「っ!!」
 ぎゅっ!!
「な、なに? どうしたの基樹?!」
 俺は、姉さんを後ろから抱きしめていた。
 力強く、息が切れるぐらいに力強く。
 身体が意志に反して、勝手に動いている。
「ちょ、ちょっと……い、いやだなぁ、はは」
 最初は驚いた姉さんだったけど、冗談だと思ったらしい。
「ふざけちゃダメよ、基樹」
「姉さん、俺……」
「うん? なにかなぁ? どうしたのぉ?」
「俺、姉さんのことが……」
「ん?」
 姉さんが振り返って、俺を見つめた。
 俺は……姉さんの首筋に、顔をうずめた。
「ん!」
 くすぐったそうに、少し顔をうつむかせている。
「姉さん!!」
「や、やだっ! なにするの! なんのつもりなの、基樹!」
 いやがってる姉さんの、エプロンの端に、手を差し入れた。
「や、やめっ!! あ、あぶない……」
 ふと姉さんは、手に持っていたままだった包丁を気にして、そっと台所にのせた。
 無防備になった、姉さんの胸。
「きゃ! ちょ、ちょっと! いやだってばぁっ!!」
 姉さんの制止の声も聞かずに、俺はそのまま、姉さんの胸を服ごしからもみしだく。
「んっ!! んんっ!!」
「姉さんっ!! 姉さんっ!!」
「やめっ!! んんっ!!」
 僕はさらに、姉さんの着ている服のボタンを、後ろから抱きしめたまま、はずしていく。
 ぷちぷちと音がしていく。
「やめてよっ!! 怖いよっ!! 基樹やめてよっ!! やめてぇっ!!」
 途中までボタンをはずしたところで、思いっきり、服を引き裂いた。
「いやぁあっ!!」
 姉さんの、少し色黒の、胸。
 ブラを上にずらして、そのまま、やわらかい胸の感触を楽しむ。
「んんっんっあっんっんんっんんっはぁっ」
 やわらかく変形していく胸。
 夢にまで見た、やわらかい感触。
 今それが、俺の手の平にある。
「いやあっんんっんんっはぁんっ」
 乳首をこりこりと指でいじくる。
 本当は口に含んでもて遊びたいけど、でもそれはできない。
 片手だけのつらい体勢だから、それはできない。
「んっはっんっんんっ」
 姉さんの腰が動いてきた。
 興奮しているから、ではないだろう。
 ただ俺から逃れよう、逃げようと、必死なのだ。
「いやっ!! いやっ!!」
 姉さんのスカートを捲り上げて、そのままパンツ越しに、土手に沿ってなであげた。
「っ!!」
 姉さんの身体が、俺の腕の中ではねあがる。
 少し濡れている。

 ――もっと濡らさなければ。まだ俺のものは入らないだろう――

「いやぁっ!! お願いだから、お願いだから、ゆるしてよっ!!」
 パンツを左手で脱がしていく。
 右手は、姉さんの手首を掴むことに必死だから。
 だから、左手だけで、ぬがしていく。
 ぐちゅり。
 姉さんの薄い毛ごしに、ぐちゅりとした感触がつたわってきた。
 もう大分濡れているようだ。
「き、気持ち悪い!!気持ち悪いよぉ!!」
 姉さんが首を振っている。
 俺はかまわずに、姉さんのうなじに舌をはわせ、そして、土手をいじくりまわした。
 指を濡らして。
「んっんんっんんんっあっあっあっあんっ!!」
「姉さん。感じてるんだね?」
「かんじてなんかっ……んっ! あっんっ……いないっ……んんっ……よっ、んんっ!!」
「感じてるよ? もっと声聞かせてよ。姉さんの声、もっと」
「んんっんんっんんっんんっ」
 姉さんは、声をこらえている。
 俺は姉さんの口をこじ開け、愛液で濡れた俺の指で、姉さんの口内を蹂躙した。
 これから姉さんのそこを蹂躙するように。
「ふぁっ!! んんつっふあぁっ」
 腰をよじらせて、快感にたえている。
 たえないでほしい。もっと感じてよっ!!
「んんっふあっんんっ」
 ちゅぱちゅぱっと音がする。
 姉さんの口内を蹂躙した後、俺は姉さんのそこに後ろから抱きしめながら、指をさしいれた。
 じゅくじゅくじゅくじゅくじゅく!!
 音がする。
「んんっあっんっはぁんっんんっ!!」
「姉さんっ!!!」
 指がきつい。
 これで、俺のものが入るのだろうか?
 わからない。
 やってみなければわからない。
 何もかもが初めてで、うまくできないでいる。
 かき回してみる。
 そのまま指で、できるだけ大きくかきまわしてみる。
「んっあんっはぁんっんっあっあっあっんんっ!!」


「……真紀」


「! ……んんっああっんっ……ま、真紀って……よばないでっ……んんっ!!」
「真紀、真紀、真紀真紀真紀」
「んんっあっあっあっあっあっんっ!!」
 そのまま俺は、左手でジッパーを下ろして、姉さんのそこに差し入れた。
「ぐっ…くっうっ!!」
 とてもきつかった。
 姉さんの太ももにはもちろん、俺のふとももにも、液体……姉さんの愛液が流れてくる。
「真紀ぃ!!」
 そのまま、痛いだろうけどそのまま、腰を動かした。
「いっ、痛いっ!! いたいよっ!! 基樹やめてよっ!!」
「やめられないよ! いまさらだろ?」
「いやだっ!! いやだっ!! あんっ!! くっ、私達はっ、んんっ」
「そうだよ? 兄弟だよ? でも、だからなに? だから愛し合ったらいけないわけ?」
「あたりまえっ……んんっ! あんっあっあっあっあっ!!」
 姉さんの腰が動く。
 俺の動きに合わせて。
 ゆさゆさと揺られている。
「血、っ血がつながっている……んだよっ!! あっあっあっあっ!! んんっ、だめだよっ!!」
「なにが? 血がつながっているから、何がいけないんだよっ!!」

「んっあっあっあんっあああああああああああああっ!!!」

 姉さんが、イッた。
 夢にまで見た、姉さんの大きな喘ぎ声だ。
 そして俺も。
「うっ……!」
 俺も、出した。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
「は……ぁぁ、はぁ……」
「……姉さん」
 ぬぽっ!!
「うぁっ!!」
 姉さんのそこから、自分のものを抜いた。こんな音がするんだな。
 俺は、姉さんの両手首を後ろに回し、背中に回してからかがみこんだ。
 ツライ体勢だけど、しかたがない。
 そのまま、姉さんのそこをなめる。
 血がいっぱい出ている。
 かなり痛かったことが予想できる。
 でも……姉さんは処女だったわけだ。
 だれにも犯されていない領域を、俺が初めて犯したことになる。
「! い、いやぁっ!!」
 俺は、ぺちゃぺちゃとそこをなめた。
 綺麗に、できるだけ綺麗になるように。
「んっあんっんんっふぁっんっ」
 なめるそこから、愛液があふれてくる。
 でも俺はかまわずに、そこをなめていた。
 ずっと。



「…………………………………………」
 姉さんは、床にぺたんと座り込んだ。
 どこを見るでもなく、ただ呆然と視線をさまよわせながら、息を整えている。
 はだけた白いシャツを直さずに。
 少し色黒のお尻をさらしたまま、乱れたスカートを直す余裕もなく。
「……姉さん」
「っ!!」
 姉さんがびくつく。
 俺の声で。
「……姉さん。黙って聞いていてくれないかな?」
「……………………」
 姉さんの頬に、涙が流れ出している。
 やっと出た涙。
 俺は、なぜだか安心していた。
 少しだけ安心していた。
 人は、本当に悲しいと、涙が出なくなるっていう話を、どこかで聞いたことがあったから。
 だから、少しだけ安心していた。
「……俺は、姉さんのこと、姉だと思っていない」
「……………………」
「俺にとって姉さんは……ひとりの女だから。セックスの対象としてしか見れない、ひとりの女だから」
「……………………」
「俺は、姉さんを、本気で愛している。それだけは、わかってほしいんだ」
「……………………」
 姉さんは、うつむいて、嗚咽している。
「……なぁ」
「…………ひっく……ひっく……、ぐすっ」
 静かな台所に、姉さんのすすり泣く声と、俺の告白が、溶け込んでいく。
 この家で暮らす、もうひとりの存在なんか、完全に忘れていた。

 がちゃりっ!!

 ドアが開いた。
「!」
「っ!!」
 父さんだ。
「……お帰り、父さん」
「ただいま……あ?」
「いやあっ!!いやぁっっ!!」
 ギョッとする父さんと、必死で遅すぎた身繕いをする姉さん。
 姉さんが、震える手でスカートを戻したところで、父さんは怒鳴った。
「な、なにしてるんだ!?」
「やめてっ!! 見ないでよっ!! いやぁあっ!!」
「お前! 真紀!! どうしたんだっ!!」
 父さんが、姉さんに走り寄っている。
「近寄らないでっ!! さわらないでっ!! お願いだから、ちかよらないでっ!!」
「も、基樹!! お前どうしたんだっ!! 真紀になにかしたのかっ!!」
「……ああ。したよ」
「い、いったいなにをっ?! なにを真紀にしたんだっ!! ああっ!?」
「姉さんを犯したんだよ。姉さんを俺の、俺だけのものにしたんだよ」
「ふざけるなっ!!」
 ぼっかーんっ!!
 殴られた。
「なにを考えているんだっ!! お前達は姉弟なんだぞっ!!」
 そういえば、父さんに殴られたのは、これが初めてだったな。
 俺は、父さんに似て、力が強い。だから当然、父さんも、力が強いわけだ。
「……ふざけてないよ。俺は本気だから。本気で、姉さんを愛しているから」
「お前っ!! お前らは姉弟なんだぞっ!! 実の、血がつながっている姉弟なんだぞっ!! 世間にどうやって……」
「世間は関係ないだろ? これは、俺と姉さんの問題なんだから」
「ふざけるなっ!!」
「ふざけてないって言っただろっ!!」
 負けずに度なり返した。

「本気で、本気で姉さんのこと、愛してるんだよっ!!」

 俺は、父さんをにらみつけた。
 にらみつけていた。
「やめてよっ!! 喧嘩しないでよっ!!」
 悲痛な、姉さんの叫び声だった。






 次の日、姉さんは学校を休んだ。






 夜が明けた。
 いつもどおりみたいな朝日だ。
 二階から、姉さんの降りてくる足音が聞こえてくる。
 たんたんたん……
 響いてくる。
 静かで重苦しい、父さんと俺だけの空間に、姉さんが降りてくる。
「……おはよう、真紀」
「……おはよう、姉さん」
 しらじらしい感じだ。
 だけど、これ以外、なにも思いつかない。
「お、おはよう。父さん、基樹」
「ああ……」
「ご、ご飯作らないとね」
 台所に向かおうとした姉さんを、心配そうな顔の父さんが、止めた。
「無理をするなよ? 今日も休むか?」
「でも、行かないと……」
「うむ……」



 それから俺は、姉さんを玄関まで送ってから、自分の部屋に向かった。
 今日は俺が、学校には行きたくない。



 後悔している。
 ただ。
 でも。
 やっぱり。
 俺は、何度生まれかわっていたとしても。
 姉さんを愛しただろうし。
 それに。



 姉さんを犯していただろう。



つづく

小説(転載) ADAM1/4

近親相姦小説
10 /08 2014
姉と弟、年上の女性しかも身近な存在だからなにもないわけがない。


僕がおろかになることを、あなたは許してくれるだろうか。

ごめんね。

僕は許していなかったんだ。

いつだって手が届く場所にいて、いつだって手を伸ばせずにいた僕を。

第一章

僕には、好きな人がいる。
 僕の1歳年上で、かわいい声と、少し色黒だけど、スタイルの良い体つき。
 抱きしめたくなるような腰まわりに、細くて本当に細くて、そして綺麗な指先。
 どうしても抱きしめたくて、この腕の中に抱きしめてみたくなって。
 それで、料理をしている彼女の背中に、手を回そうとしたこともある。
 けれど、やっぱりできずにいるうちに、気配に気がついてしまったのか、彼女はこちらを向いた。
 微笑んでいた。
 僕は真っ赤になって、首を振って、そのまま自分の部屋に戻った。

 僕の好きな人。

 それは僕の――実の姉だった。



「おはよう、基樹(もとき)」
「ああ、おはよう姉さん」
「昨日は眠れた? まぁ、基樹のことだから、眠れたわよね?」
 今日も姉さんの笑顔は、誰よりも輝いて見える。
 僕にとっては、最上級のごほうびだった。
「パンとごはん、どっちにする?」
「ああ、俺はパンにするよ」
 僕は、心の中では僕だけど、少なくとも姉さんの前では、俺と言っている。
 かっこつけてるつもりはないけど、でも、やっぱりかっこつけてるのかもしれないな。
「……父さん、新聞はしまってくれないかしら?」
「ああ、そうだな」
 食卓で、隣にいた父さんが、パンをかじりながら、新聞をしまう。
 汚い話だけど、父さんはトイレでも新聞を読む。毎日新聞を読むことを日課としている僕にとって、その後で同じ新聞を読むのは少し気がひけるけど、でもやっぱり読むこともある。
 蛇足だったかな。
「基樹。それにしても、髪切らないの? いつも思うんだけど」
「あ、ああ」
 姉さんが、僕の長くなってひとつにまとめた髪を、なでてくる。
 少しどきどきして、緊張する。
「さらさらしてて、すごく好きだけどね、基樹の髪」
 そう言って、微笑んでる。
 僕の平らな胸が、少し苦しくなった。
 姉さんは……こんなこと考えるのも失礼だけど、姉さんは、胸が大きいほうだ。
 見たことは、一度だけある。
 お風呂で、間違えて、本当に間違えて見たことがある。
 そのとき姉さんは、丁度お風呂から出るところで、裸でドアに手をかけて濡れた体のままたっていた。
 僕はすぐに目をそらしたけど、どうしてもその身体を見ようとしてしまうので、大変だったのを覚えている。
「ああ、ありがとう」
「私も、もっと髪伸ばそうかなぁ」
「姉さんは、そのままでいいんじゃないかな?」
「そう?」
 再び微笑んでくれた姉さんは、台所にもどっていった。
 機嫌がよさそうに、鼻歌も歌っている。姉さんは、あまり歌がうまいほうじゃないけど。

 僕達の家族には、母親がいない。
 母親は、僕が小さいころに、死んでしまった。
 ある病気で、姉さんがぼくの肩に手をおいてみつめる前で、死んでしまった。
 父さんはすごく肩を震わせながら、涙をこらえてたけど、やっぱり泣いていた。
 姉さんは、嗚咽しながら激しく泣いてたけど、でも僕はただ、それを見ていただけだった。
 悲しいというより、人の死が不思議だった。
 あとから悲しくなったけど。
 それで、葬式のときに、少し泣いた。
 姉さんは、弔問客に頭をさげながら、膝に両手をぎゅって押し付けて、涙を流していた。

「ああ、そうだ姉さん。今度、友達呼ぶつもりなんだけど」
「お友達? 海原(かいばら)くん?」
「ああ、それと、あと何人かなんだけどさ」
「もちろん良いわよ? 泊まり?」
「ああ、そうなるかもしれない」
 と、姉さんとの会話に、父さんが割り込んできた。
「あまりはしゃぎすぎるなよ。隣近所に迷惑がかかるからな」
「ああ、分かってる」
 あいまいにうなずきながら、僕は姉さんの揺れるエプロンのひもと、そして腰、それとお尻を見ていた。
 話している間も見つめていた。目が離せなかった。
 姉さんは、やっぱり鼻歌を歌いながら、包丁でにんじんをとんとん切っている。
 今日の弁当かな。
 僕は、姉さんを思い浮かべて、オナニーをしたことがある。
 一度だけ見た、シャワーで濡れた、全裸の姉さん。
 その姿のまま、ベッドで僕に抱いているシーンを想像して…。
 最低だと思う。
 けど、今もときどきしている。
 エロ本を読むときよりも、姉さんを思い浮かべたほうが、興奮するのだ。
「……基樹?」
「! あ、ああ。なに、姉さん」
「ほら、できたよ」
 想像の中の乱れた顔が、いつもの大好きな笑顔にクロスフェードした。
 姉さんは、右手に菜ばしを持って、弁当を見下ろしている。
「ほぉ。今日はハンバーグか」
 父さんがのぞきこむと、姉さんは少し得意げな顔でうなずいた。
 以前、姉さんのいたずらで、その弁当のごはんの上に、ピンクのハート型のでんぷんをちりばめたことがある。
 学校でフタを開けて初めて気づき、恥ずかしくて隠して食べてたけど、でも海原に見つかって、少しからかわれた。
 姉さんは、ウィンナーを入れるときは、必ずたこの形にする。こだわっているみたいだ。
 それも少し恥ずかしいけど、でんぷんのハートよりはマシだ。
「それじゃ、お父さんもうそろそろ時間だから、会社いかないと」
「ああ、そうだなぁ。でもその前に、トイレいかんとなぁ」
「お父さん……トイレ長いんだもの。私も入りたいんだけど」
 どきりとした。
 一瞬、姉さんのトイレしている姿を想像してしまい、あわてて頭をかいた。
「それからお父さん、新聞はだめだからね。他に読む人がいるんだから」
 父さんは、新聞をやっぱり握っていたけど、仕方ないという感じで、机の上にぱさりと置いた。
「まったくもう」
 姉さんは少し笑いながら、腰に両手をあてていた。
 その抱きしめたらおれてしまいそうな細い腰に。
 また見つめてしまいそうになって、僕はさりげなく腕時計に目を逃がした。
「ああ、そろそろ時間だな」
「そうだね。じゃあ、私もいくよ」
「あ、ああ」
 毎日のように、僕と姉さんは、一緒に登校している。
 恥ずかしいけど、友達にひやかされることもあるけど、やっぱりうれしいから、拒否できないでいる。
「じゃあ」
「そうだね」
 姉さんは、淡いピンクのエプロンをはずして椅子にかけ、かばんを持った。
 僕のかばんは、教室の机に入れてあるから薄いのだが、姉さんは毎日勉強するから、厚くて重い。
 まるで僕の心のように、厚くて重い。
「じゃあお父さん、私達いくね?」
「ああ。いってらっしゃい」
 父さんが、トイレの中で、くぐもった声で答える。
 僕らは玄関のドアを開けて、いつもの通学路を進んだ。

「暑いね。やっぱり今日も」
「ああ、もうすぐセミのでるころだね」
「覚えてる? 基樹ったら小さいころ、私にセミつきだしてきて、驚かせたんだよ?」
「ああ、覚えてる」
 あのころは、まだ恋心とは違って、姉さんを慕っていたから。
 だからなのか、僕は姉さんに、自分のとってきたセミを、じーじーうるさくなくセミをつきだして、おもしろがっていた。
「あのときは、かなりおどろいたなぁ。でも基樹は、最近そういうことしないよねぇ?」
 少し強く吹いた風にひらめくスカートを片手で抑えて、もう片方の手では、なびくさらさらの髪を押さえて、小首をかしげている。
「あ、ああ。俺も成長したのかな」
「そうだね。あのころの、ちっちゃな男の子じゃないんだもんね」
「あたりまえだろ。俺だって成長するよ」
「それはそうよね。でも基樹、基樹はどうして、勉強もしないのに、そんなに成績がいいんだろ?」
 姉さんの話は、ときどきころころと変わる。
 頭に浮かんできた疑問を、すぐに口にだす癖があることを、僕は知っている。
 もちろん父さんだって、姉さんの他の友達だって、そんなこと知っているんだろうけど、できれば、気づいているのは僕だけであってほしいとも思っている。
 自分だけが、姉さんの秘密を……。
「基樹? どうしたの? 考え事?」
 姉さんが、僕の顔を、身体を少しかがめて、のぞきこんできた。
 やっぱり、少しどきどきする。
 やさしい風が吹いてきて、僕と姉さんの髪をふわりとゆらす。
「あ、ああ。少しね」
「基樹は考え事するの好きだよね。いつもなにか考えている。そういうところが、他の男の子より大人なんだね」
「どうかな」
 僕は、肩をすくめた。
 僕が大人なのか?
 確かに、ときどきごくたまに、他のやつらが、子供じみて見えるときもあるけど。
 僕の親友、海原ひとみは、違う。
 あいつは、かなり大人だ。
 いつもおどけたようなやつだけど――大人だ。
「でも、風があるだけマシだよね」
 歩道橋の階段を登りながら、太陽のてりつける上をあおぎみて、片手を額にかざしている。
「そうだね」
 暑いから、風があるほうがまだ涼しい、と言ったのだろう。
 僕は、姉さんの言葉はすべて理解したかったし、それに、すべての言葉に返事をすることにしている。
 姉さんは、とりとめもないおしゃべりが好きだから。



 ばさばさばさっ!!
 毎日のように、下駄箱から出てくる、何通かの手紙。
 こっちは、ため息しか出せない。
 この手紙をくれた人たちには悪いけど、ため息しか出せない。
 それを拾って、ひどいかもしれないけど、近くのゴミ箱に捨てた。
 姉さん以外の人間に、こんな手紙をもらってもうれしくない……はっきり言って、うざったいだけだから。
 僕は、女の子がほとんどだけど、男からも手紙をもらったことがある。
 僕のなにがいいんだかわからないけど、そういうことがある。
 校舎裏に呼び出されて、付き合ってくれと言われたときは、正直気持ち悪かったけど
 しかたがないから、付き合えないとだけ言って断った。

 教室に入れば入るで、うざったいことが待ち受けている。
「おはようっ!! 基樹っ!!」
「ああ、おはよう」
 級友の美奈子は、さっそくといった感じで、僕の髪をなでてきた。
 こいつは、なにかというと、僕の髪をなでてくる。
「あいかわらず、さらさらじゃない?」
「どうかな」
「ったく、あいかわらず無愛想だね」
「ああ、悪いけど俺、早く机につきたいんだけど」
「あ、そうっ!! じゃあね。ああ、それと、今日もお姉さんと一緒に登校したわけ?」
「それじゃあ」
 僕はそれだけいって、美奈子の隣を通り抜けた。
 何人かの女子や男子に挨拶をして、席に着く。
「石川(いしかわ)ーっ!!」
「……………………」
「なんだよ? また無愛想なやつだな」
 同じく級友の大石(おおいし)が、後ろから僕に抱き付いてきた。
 こいつは大抵僕が登校してきたときに、抱きついてくる。
 なんなんだこいつは。理解不能だ。
 こいつは女好きだから、なんども他の女子に抱きついては、ビンタくらわされたり、すけべとか怒鳴られたりしている。
 僕にはできないし、したいとも思わない。
 姉さんは別だが、他の子には興味がない。
 こいつは、それでもこりずに、にやにや笑いながら「あいつのスリーサイズは……」とか楽しそうに話している。
 僕は、姉さんのスリーサイズも体重も身長も、すべて知っている。
 心の中だけでも、自分の心の中だけでも、姉さんを自分のものにしたいから、姉さんに関することはすべて知っていたいのだ。
「お前、男にしては、ほせぇ腰してるよなぁ? なんで学ラン着てんのに、腰がひきしまってるんだぁ? お前実は女? 女だったら、一度お願いしてぇんだけど」
「違うに決まってるだろ。あほか、お前」
「そうだよなぁ。一緒に便所行ったことあるもんなぁ」
 僕は、こいつの話を聞き流しながら、かばんを机横のつるしにかけた。
「……そういえば大石、今日は海原はどうしたんだ?」
「ああ、遅刻じゃねぇのか? あいつ、大抵遅刻するから」
「ああ、そうか」
「んじゃあなぁ」
 大石がいなくなってからしばらくして、担任がやってきた。
 やっぱり海原は遅刻か。
 またへらへらしながら、頭掻きながら教室のドアを開けて、ごめんごめって中に入ってくるんだろうな。
 にくめないのは当然だろう?
 海原も顔がきれいだから、もてる。
 特に、年下の女の子にもてる。
 だけど、僕と同じように、恋人をつくらない。
 誰か好きなやつでもいるのだろうか。これはプライベートなことだから、聞いたこともないけど。
 担任が教壇に着くと、ざわついていた教室は、静かになった。
 ときおり、女の子の少し耳障りな話し声が聞こえるけど、それもまぁ気にしなければたいしたことはない。
 姉さんのおしゃべり好きにはつきあうけど、他の女の子のおしゃべりは、ときどきうざったく感じる。
 男は目的を持った話をするらしいけど、女は、目的なしに話すらしい。
 どこかの本に書いてあった。
「それじゃあ…」
 担任がそう口を開いたちょうどそのとき、がらがらがらっ!と、静かだった教室に、すこし下品な音が響いた。
 皆いっせいに、後ろを振り向く。
「すんませーんっ! 遅刻しましたぁ」
 やっぱり海原だった。へらへらした笑みをうかべて、片手で空気をつつくようなしぐさをして、頭を軽く何度もさげている。
「またか海原。本当にお前は、遅刻魔だし宿題は忘れるし……」
「すんませーんっ!!」
 今度は頭を掻いている。
 クラスメートの失笑も買っている。
 僕だったらすごく恥ずかしいのに、海原は別に気にした様子がない。
 そういうとこ、大物だと思う。
「いいから座れ。授業が始められんだろ」
「はーいっ!! あ、わるいね。ちょっと椅子ひいてくれる?」
 海原は、自分の席にむかって歩いていった。
 そして、退屈な授業が始まる。
 たぶん学級委員ぐらいのものだろう。
 この教室の中で、授業を退屈だと思わないやつなんて。



 こつんっ……。
「ん?」
 僕の頭に、なにかが軽く当たった。
 後ろを振り返ると、二席ほど後ろの席の海原が、遅刻したときと同じように手を突き出して、何度か振りながら、笑顔を送っていた。
 僕は、床に落ちた、丸まった紙を、手を伸ばして拾い、机に両肘をついて開いた。

『今日弁当忘れたんだけどさ。基樹の弁当わけてくんない? 俺、今金ねぇんだよ。な? 頼むよ?』

 文末には、海原のニコちゃんマークが付いていた。
 ちょっとため息をつく。
 本当は、姉さんの作った弁当を、他のやつに食べられるのはいやだけど、海原が困っているんなら、わけるしかないだろう?
 僕は『了解』とだけ手紙に書いて、海原に投げ返した。
 丸まった紙は、弧を描いて、海原の額に見事命中した。
 海原はおおげさに、ぶつかった瞬間に頭をひいたけど、それも海原らしいしぐさだった。



 昼休み。
 僕は、自分の机で、弁当を広げた。
 海原は、短いほうの机の端に、椅子をくっつけて、へらへらと笑顔を浮かべながら、僕が弁当を広げるのを待っている。
「悪いな。基樹」
「いや。別にかまわないよ」
「そかそか」
 本当は少しかまうけど、海原を目の前にして、そんなこと愚痴っても意味がないだろう。
 僕は、包みの青いハンカチの結び目を解き、フタを開けた。
 フタには、少しの米粒が付いている。
「おおっ!あいかわらず、真紀(まき)さんの弁当は、うまそうだなぁ」
 おおげさに、声をあげる。こいつは、動作が大抵おおげさだ。
「ああ、まぁな。姉さんは、料理つくるのうまいから」
 料理がうまい理由は、海原も知っていた。
「そういえば、真紀さんは毎日飯作ってんだよなぁ。大変だよなぁ。基樹とおやじさんのぶんだろ? 毎朝早く起きて、そんで、三人分の弁当作ってかぁ。感謝しろよ? 俺が言うことじゃねぇけど」
「ああ、そのつもりだよ。だから、嫌いなものでも全部食べてる」
「お前、嫌いなもの多いもんなぁ。」
「海原だって、肉が嫌いだろ?」
「まぁな。あれは食えないな。いくらかわいい女の子の頼みでも、基樹の頼みでも、あれは食えない」
「頼まねぇよ、そんなこと。海原のイヤなこと頼んで、どうするんだ?」
「やっぱ、お前はクールで無愛想だけど、やさしいよなぁ」
「普通だろ? クールで無愛想は、あたってるけどな」
「まぁなぁ」
「なぁに? 二人でひとつのお弁当」
 美奈子だ。また来たか。
「ああ、別にいいだろ?」
「いいけどさぁ。真紀さんのお弁当なわけだ」
「まぁな」
「ふぅん。真紀さん、料理うまいわね」
 そういえば、こいつはクッキングクラブだったな。何度か自分が作ったというクッキーなんかを渡されて、一応口には入れた。
 でも、姉さんの作ったクッキーのほうが、数倍うまい。
 シスコンとは違う。本気で好きなのは、確かだから。

 からからから。
 海原とは違い、静かに扉を開ける音が響いた。
 今は昼休みで、皆食べるのに夢中だから、振り返ったのは、僕ら三人を含めた数人だけだ。

 姉さんだった。

 僕は立ち上がり、姉さんを見つめた。
 姉さんは、すぐ近くに座っていた女の子に、頼み込んでいる。
「あ、悪いんだけど、基樹よんでくれる? 石川基樹くん」
 ドアから少し離れているとはいえ、直接僕を呼べばいいのに。
 大声をだすタイプじゃないからな。姉さんは。
「石川くーん。お姉さん、来たよぉ?」
 なんでこの子は、僕の姉さんのことを知っているんだろうか。
 大石や海原と話しているのを、聞かれたのかも知れないな。
 僕は弁当をそのままにして、机から離れた。
 さっきより、多くの視線を感じる。
 姉さんも、ほとんど皆に見られている。
 別にぼくの勝手な心の中だけの姉さんだから、それはしかたがないけど、でも気分はよくない。
 戸口に近づいて、開かれたドアに手を置いて顔を少しさげると、姉さんは少し顔を紅潮させ、僕を見上げた。
「あ、あのね」
 二人の身長差はほとんどわずかだけど、少しだけ僕のほうが高い。
 昔は姉さんのほうが高くて、僕は頭をなでられたりして喜んだこともあったけど、でも今は僕のほうが背が高い。
 僕は、姉さんの前ではあまりしたくない不機嫌な顔を浮かべて、姉さんを見つめて口を開いた。
「ここには来ないでくれって言っただろ?」
「あ、ご、ごめん。でも、ちょっと頼みごとがあって」
 姉さんが罪悪感を抱いた顔をしたので、僕も同じように、罪悪感で胸を少しだけだけど痛めた。
「別に、どうしてもならかまわないけど、なるべくなら来ないでほしいんだけど」
 あわてて言葉を捜してしゃべった。
 早く否定しなくては、と心の中で少しひやひやする。
「あ、あのねぇ。えと」
「どうしたの?」
 クラスメートの視線を感じる。
「うんと、辞書貸してくれないかな?」
「辞書?」
「うん。赤いやつあるでしょ? 私と一緒に買ったやつ」
「ああ……」
 雨の日の6月、僕は姉さんと本屋に行った。
 学校帰りに一緒になることはめったにないけど、そこで僕は、姉さんと一緒の辞書を買った。
 でも、姉さんが忘れ物をするのはめずらしい。
 姉さんは毎日忘れ物がないか確認するタイプだったし、宿題だって、夜中までかかっても、すべてちゃんとやってくる。
 僕が、遅いからもう寝たらと言っても、もう少しがんばりたいと言うのが大抵だった。
 姉さんはがんばり屋だから、少し休んでほしいんだけど。
「わかった。少し待ってて」
「うん。ごめんね」
いいや」
 教室に視線を移すと、すぐに視線をはずすやつや、にやにやしているやつらの顔が目に入った。
 でも気にしないようにして、自分の机――海原と、ああ、まだいたのか美奈子――に戻った。
「真紀さん、忘れ物? うっかりものなのね」
「めずらしくねぇかぁ? 真紀さん、しっかりしてるのに」
 さっそく、なんか言ってくる。
「あれで少しドジなところがあるから、自分では気をつけているつもりなんだろうけど」
「さっすがだな。よく見てるよ」
「別に」
 そうとだけ答えて、自分の机をあさり、辞書をみつけて、再びクラスメートの視線を受けながら、姉さんの元に寄った。
「シスコン」
 美奈子のつぶやきが耳に入った。
 シスコンとは違う。本気の恋なのだから。叶わないかもしれない恋なのだから。
「あ、ありがとう基樹。助かったよ」
「ああ、これからは気をつけなよ」
 最後のは余計だったかな。
 まぁ一度口にしてしまった言葉は取り消せないから、しかたがない。
「えへへ。うん」
 かわいく笑ってる。
 くそっ。他のやつのいる前で笑うなよ。
 僕だけに、その笑顔を見せてよ。
 そうしてくれれば、なんだってするのに。

 姉さんは、去っていった。
 スカートを翻しながら、急いだ様子で。
 僕が振り返ると、とたんに誰かの、ひゅーという口笛が届いた。
 そいつのことを軽くにらみ、そいつが肩をすくめて縮みこむのを目の端にとめながら、僕は机に戻った。



 体育。
 別に嫌いじゃない。身体を動かすのは好きだから、むしろ授業の中で、一番好きなんだろう。
 今日は鉄棒だった。
 身長より大分高めの、まっすぐ伸びた鉄棒。
 先に二十回、懸垂をやらされた。
 できなかったやつは、まだ端にある鉄棒にしがみついて、うんうんうなっている。
 僕と海原は、一番に終えることができた。
「そんじゃあ次は、石川な」
「はい」
 体育教師に呼ばれた僕は立ち上がり、砂を払ってから、鉄棒に近づいた。
 ……視線を感じる。
 いつもそうだ。
 体育をしているとき、短パンになっているときは、こうした視線を感じるときがある。
 学ランを着ているときも、ときどきそうだけど、体育のときは特に感じる。
 くそっ!!
 僕なんか見て、なにが楽しいんだ。
「あの腰がいいよな……」
「それとあの太ももなぁ……」
 男子生徒のヒソヒソ声が聞こえ、にらみつけようかと一瞬思ったけど、でも今は鉄棒をつかむのが先だから、やめておいた。
 ジャンプして鉄棒をつかみ、くるりと一回転した。
 それから何回か回転し、ころあいを見計らって、着地する。
 まばらな拍手。
「よし、じゃあ、次は飯岡な」
 体育教師の声を背中に聞きながら、僕は自分の場所に戻って、体育すわりをした。
 海原が、軽くピースサインをしてきたので、うなづいておいた。



 放課後。
 これで、退屈な授業からも解放される。
 かばんは、朝来たときと同じで、うすっぺらい。
 いつものことだ。
「ああ、んじゃあ帰ろうぜぇ? 基樹」
「ああ」
 海原とは、毎回のように一緒に帰っている。
 僕はテニス部だけど、気がすすまないので、ほとんど行っていない。
 海原は、熱心にバレーボール部ではげんでいて、ときどき体育館を通ったときに見かけるけど、とても真剣な顔をしてアタックを打ちこんでいる。
 そういうところが、後輩に慕われるんだろう。
「それじゃあ皆様さようなら~!」
 海原が、残っている何人かに手を振って、陽気に口を開いている。
 僕もそれにならって、少しだけ口を開いた。
「さよなら」
 何人かが、手を振えすのを見てから、僕らは廊下を二人で歩いた。
 ときおり何人かが、こちらを見て話しているのが見えたけど、僕は無視していたし、海原は鼻歌を歌って通り過ぎていく。
 しかし、偶然に出くわしてしまった担任は、無視するわけにはいかなかった。
「海原に石川。今から帰りか? 部活はどうした?」
「今日はないんすよぉ」
「ああ、そうか。まぁ大石はともかく……石川。お前の部活態度は、少しひどくないか?」
「別に」
「部の先生が、ぐちっていたんだぞ? お前があまり部にこないと」
「あとであやまっておきますってさ。なぁ? 基樹」
「あ、ああ」
 僕が口を開く前に、海原がフォローしてくれた。
 こういうところが気がまわる。
 初対面ですぐに、なぜか意気投合したのを覚えている。
 僕とはタイプが違って陽気で明るいはずなのに、なぜか息があった。



「あ、基樹に、海原くん!!」
 夕方の赤い日差しがさす、通学路を歩いていると、姉さんが、走って近寄ってきた。
 かばんを片手にもって、風になびく髪をおさえながら。
「ああ、真紀さん」
「姉さん」
「今、帰り? ちょうどよかった。私も帰るところなんだぁ」
 姉さんは、はぁはぁと息を切らしながら、笑顔で口を開いた。
「奇遇っすねぇ。めずらしいんじゃないすかぁ?」
「いつもこうだといいんだけどねぇ。私もクッキング部があるから……まぁ、火曜日しかやってないけどね」
 やっぱり笑顔で答える。
 たとえ海原でも、姉さんの笑顔をうけるのは、少しむっとする。
 少しだけ、だけど。
「じゃあ真紀さん、帰りましょうかぁ?」
「ああ」
 割り込んで、僕が返事をしてやった。
 それから、とりとめのない、僕にとっては楽しいおしゃべりをしながら。
 日に染まる通学路を歩いていた。
「……あ、そうだ。これから、ゲーセンいきませんか?」
 海原が、誰ともなく提案する。
 顔は笑顔で、少しだけ、良いことを思いついたという表情で。
 まぁ敬語なわけだから、たぶん姉さんに向かって言っているんだろうけど。
「え? でもまだ制服だし、下校の途中だよ?」
「いいじゃないっすかぁ、ね? 真紀さん。基樹もいくだろ?」
「ああ、俺は別にかまわないけど」
「じゃあ決定!! いいっすか? 真紀さん」
「うん。それはいいけど、でも、とりあえず服を着替えてからにしようよ?」
「そうっすね。そうしますか。んじゃあ、ゲーセン前に待ちあわせということで」
「ああ」
「うん!」
 いつのまにか、僕達三人は、ゲーセンにいくことになった。



 ゲーセン内。
 ぴこぴことうるさい音が鳴り響く、たばこ臭い人ごみをとおりぬけていく。
 僕と海原は、ときおり学校帰りとか土曜や日曜にくることがあるけど、姉さんは、もしかしたら初めてなのかもしれない。
 きょろきょろしながら、少し不安そうな顔をして、僕らのあとをついてくる。
 片手は口にあてて、もう片方は僕の服のすそをつかんで。
 僕らは、まずUFOキャッチャーに向かった。
 これなら見ているだけでも結構楽しいし、ゲーセンに慣れていない姉さんでも、楽しくなるんじゃないかと思ったのだ。
 ピンクの枠の、四角い筐体・UFOキャッチャーの、プラスティック製のガラスに手をつきながら、僕は姉さんに百円玉を渡しながら、提案した。
「ほら姉さん。姉さんが、まずやってみなよ」
「え? で、でも私、やったことないし、二人が先にやったほうが」
「そうっすねぇ。じゃあ俺が先に」
 ちょっと失敗した。
 そうだよな。先に経験者がやっているのを見てからやったほうが、やりやすいか。
 少し後悔した。気がきかなかった。
 よく美奈子にも、基樹は鈍感だと言われる。
 海原は、百円玉をいれて、レバーを操作した。
「真紀さん、どれがいいっすかぁ? 俺得意だから、とれると思いますよ?」
「あ、ありがとう。それじゃあ……あのブーさんがいいなぁ」
 姉さんは、熊のプーも好きだから、何個かぬいぐるみを部屋に飾っている。
 子供っぽいかなと、テレながら赤い顔をしていたけど。
 女の子の部屋は、あまり行ったことないけど、こんなものなんだと思うんだけどな。
 そのとき姉さんは、その熊のプーを抱きしめていて。
 変形した熊の黄色い顔と、姉さんの照れた顔が、妙に印象に残っている。
「……ぁっ、だめかぁ」
 また、大分考え事をしていたようだった。
 気がつくと、海原が隣で、残念そうな顔をしてつぶやいていた。
「残念だったねぇ」
「そうっすねぇ。真紀さんにプレゼントしたかったのになぁ」
「いいよ。気にしないで」
「でもプーさん好きなんでしょ? そうだ、基樹やれよ」
「あ、ああ」
 そうだな。姉さんの喜ぶ顔は、すごく見たい。
 僕もレバーを操作した。もちろんその前に百円玉を入れて。
「よく狙えよ?」
「ああ」
「あ、とれるかなぁっ!!」
 なんとか、レバーを細かく操作して、目的の姉さんが欲しいといっていた、熊のプーを狙った。
 そして。
「やったぜ!!」
「きゃっ!! すごいすごい!!」
「……ああ」
 二人が喜んでいる中で、一人だけさめているのも変だけど、僕はあまり感情を表にださないで、どうしてだか無意識に抑えてしまう癖がある。
 これは、担任や他の教師にも言われたことがあるけど、すでに身についている癖だから、直すのは難しい。
 とにかく僕は、見事姉さんの欲しがっていた、熊のプーを手に入れた。
「はい。姉さん」
 少し照れくさかったけど、ぬいぐるみを軽くつかんで、姉さんに手渡した。
 姉さんは笑顔をうかべて、そのぬいぐるみを腕にひきよせた。
「ありがとうっ!!! うれしいよっ!! 基樹っ!!」
「いいなぁ。そのプーのやろう。俺も、真紀さんに抱きしめてもらいたい。なぁ? 基樹?」
「お、俺は別に」
 抱きしめてもらえたら、うれしいのは確かだけど。



 やっぱりうるさい。さわがしいというより、うるさいというほうがあっているゲームセンター内で、僕達は、今度は格闘ゲームに挑戦することにした。
 姉さんは、やっぱりゲーセンは初めての体験らしく、格闘ゲームのこともよく知らないらしい。
 前に何度か、僕の持っているプレステやセガサターンで一緒に遊んだこともあるし、父さんを交えたりして、見学していたこともある。
 なんだか、自分だけがゲームに集中するのがはずかしくて、少し背中がぞわぞわした。
「じゃあ姉さん、ここに座りなよ」
 そう言って、姉さんの肩を、なるべくやさしく触った。まだ、姉さんの肩を触るときは、少しどきどきする。
「う、うん。じゃあ」
 さっき一度、僕と海原の対戦を見ていた姉さんは、今度はすんなりと、小さくて丸いゲームセンター独特の椅子に座った。
「わかると思うけど、ここに金いれてから、このボタンを押して、それからこのレバーと四つのボタンで操作して」
「う、うん。できるかなぁ。どきどきするなぁ」
「そんなにおおげさなものでもないよ」
 自然と笑みがでる。
「ほんじゃあ、OKっすかぁ? まず俺が先にスタートさせますよぉ?」
 向こう側の対戦台にいた海原がスタートボタンを押すと、じゃらーーんっ!!と鳴った。
「あっ、始まったみたいだね」
「ああ、それじゃあ、姉さんも金いれて」
「うん」
 姉さんはかがみこんで、金をいれる細い入り口に、ちゃりんと50円玉をいれた。
 余談になるけど、ここのゲームセンターでは、ほとんどの格闘ゲームやパズルゲームや麻雀ゲームが、50円でできる。それがこの混雑の原因でもあるけど、長所と欠点というやつだろうか。
「それじゃあ、このスタートボタン押して」
「うん」
 姉さんが、スタートボタンを押して、それから対戦が始まった。
「うぁっ、うぁうぁっ!!」
 姉さんが、あせっている。やっぱりかわいいけど、少しおもしろい。
「な、なになになに? どこを押せば、なにがでるの?」
「これが、パンチ、これがキック。レバーを半分だけまわしたあとに、このボタンを押せば、技がでるんだよ?」
「わ、わかった」
 姉さんは一生懸命な様子で、俺の言ったとおりの操作をしている。
 小指が立っていて、姉さんらしい。
 それに、手がほとんど平たく開かれていて、ぱちぱちって感じにボタンが押される音が、小さく聞こえる。
「う、うーん!?」
 やっぱり、始めての人間にはむずかしいか。
 俺だって、海原に初めてここにつれてこられたときは、かなりの音にちょっとびくついたし、対戦ゲームも全試合負けていた。
 その後くやしくて、何度かここに来た。おかげで常連になって、店員ともときどき話をしたりする。

 ……まただ。

 これだけうるさくて、たばこくさい不快でもあるこの場所が、こうして人のゲームを観戦していると、ときどき対戦している人物と自分だけの世界に入り込むときがある。
 うるさく鳴り響くゲームの音が、小さく聞こえ出して、そして二人だけの世界をつくりだす。
 こんなときが、ゲームセンターに限らず、ときどき起こる。
 おおげさでもなんでもなく、そういうときが、確かにあるのだった。
 このときは、姉さんのガッカリした声のおかげで、我に返ったけど。
「あ。うーん……」
「やっりぃ! とりあえず俺と真紀さんの勝負は、俺のかちっ!!」
「あははっ。やっぱりね」
「なによぉっ!! 基樹、笑うことないでしょっ!!」
「いいじゃないか。負けて当然なんだからさぁ。初心者なんだから。僕だって、最初は負けっぱなしだったんだぞ?」
「ふぅん。だめよぉ、あんまり学校帰りにここに来たら。ちゃんと服を着替えなさいっ!! まだ学生なんだからっ!!」
「へいへい」
 肩をすくめておどけつつ、そう答えておいた。
 まぁ心得ておきます。
「んじゃあ、今度は基樹と俺の対戦なぁ!!」
 海原が、彼独特の大声をはりあげて、ゲーセンの対戦台から顔を出した。



「ねぇねぇ、彼女かわいいねぇ?」
「え?」
「ここでなにしてるの? 彼氏と来てるわけぇ?」
「ち、違います。弟と」
「へぇえ? そう、じゃあそいつと俺らが戦って、勝ったら俺らと遊ぼうよ?」
「い、いえ結構ですから」
「いいじゃんいいじゃん? 遊ぼうぜぇ? きっと楽しいよぉ」
 ゲームセンターの階段のところで休んでいる姉さんに、ジュースを持ってきたところで、知らない男二人にナンパされているところを見つけた。
 海原は、ギルティギアに夢中だ。
「はぁ~……」
 ため息がでる。時折こういう場面を見かけるけど、姉さんは顔がかわいいからな。
 スタイルもいいし。
「ちょっと、あんたら」
「あ、基樹」
「あ、基樹ぃ?」
「女みてぇな名前だなぁ?ってか、あんた女かぁ」
 こんな男どもの声に、貸す耳はない。
「行こう。ジュース買ってきたから。姉さんはオレンジジュースだよね」
「あ、う、うん。」
 三つのジュースを、なんとか右手に持ち替えて、姉さんの手をとった。
 姉さんが、少し強めに、俺の手を握り返してくる。
「ちょっとちょっとぉ、だめじゃん? 俺ら今、この子と話してるんだからぁ」
「そうだぜ? 君も美人だし、俺らといっしょに遊ぼうかぁ?」
「…………」
 さて、どうやっておっぱらおうか。
 殴るのは、俺の気持ち的に、そういう気分じゃないし。
 かといって、言葉で通じるだろうか。
 こいつらに。
「おーい。なにしてんだぁ?」
「あ、海原くん」
 姉さんが、俺に手をとられながら、海原のほうを見た。
 その目が、助けてくれと言っている。
 ……俺だけじゃあ、力になれないってのか?
「どうしたんすか。……なんだ? お前ら」
「……こいつは男だな。顔は綺麗だが、男だ」
「んだな。じゃあ、こいつが弟か」
 どうでもいいことを話しあっている。
「ふぅん、そういうことか。お前ら。ナンパってやつか」
 男どもは、海原を姉さんの弟と、決めつけてしまった。
「弟くん。悪いんだけど、あんたの姉さん貸してくんない? ついでに、このべっぴんさんの子もさぁ?」
「悪いようにはしないから。必ず喘させてやるからさぁ……」

 ばっしーんっ!!

 狭い階段下だったけど、僕は思わず殴りつけていた。
 この男の「喘ぐ」ってところで、がまんができなくなっていた。
「な、なにしやがる」
「最低やろう! 自分のちんぽでもしゃぶってろ!」
「てっめぇえっ!!」
 殴ったほうとは別の男が、俺の胸倉をつかんでくる。
 俺は、そいつをにらみつけた。
 鼻と鼻がくっつくぐらいに、顔が近づく。こいつの口臭が鼻について、気分が悪い。
 とても悪い。
「んだよっ!! その目はよぉっ!!」
「……やめておけよ。基樹は、力強いんだからよぉ?」
 せっかく海原がそう言ったのに、男はまだ口臭を俺にかけ続ける。
「はなせ」
「うらああっ!!」
 ばっしーんっ!!
 殴りかかってきた。
 身体がふっとぶ。
 対戦台に、背中からぶつかる。
 殴られるより、そっちの背中のほうが痛かった。
「も、基樹っ!!!」
 駆け寄ろうとした姉さんを手でさえぎってから、俺はまた男をにらみつけた。
「……お前みたいなやつを、最低やろうっていうんだな」
「ああ、そりゃ納得。ナイスな発言だな。基樹」
 海原がニヤニヤうなずくと、男はますます頭に血をのぼらせたらしい。
「てめぇっ!!」
 対戦台に倒れこんだままの俺の胸倉を、またつかみかかってきて、右手を頭の上高くまであげてきている。
 俺は、相手の目をじっと見つめた。
 今日一番怖い顔になるようにと。
 そこへ、よく知った乱暴な声が割り込んできた。
「おらおら、やめろ。ここで喧嘩するな。お前ら警察よぶぞっ!!」
「あ、タカさん」
 店員で、よく話もするタカさんに、海原は軽く頭を下げた。
 タカさんは、俺と違ってがたいもいいから、大抵の相手はびびるだろう。
「ほら、お前らでてけよ!!」
「……ちっ」
「もう二度とこねぇよっ! こんなところっ!!」
「ああ、そうしてくれ」
 男たち二人は、捨て台詞をはきながら出ていった。
 汚いつばを、俺の顔に吹きつけてから。
「だ……大丈夫? 基樹ぃ……」
 姉さんが、スカートのポケットからピンクのハンカチを出してきて、俺の顔についた、汚いつばをぬぐいとってくれる。
 海原もしゃがみこんで、俺を気づかっている。
 そんな俺達を見下ろすようにして、タカさんは言った。
「悪いが……お前らも、ここにはもう来ないでくれないか?」
「ええ? だって、あいつらが先に真紀さんをナンパしてきたんだぜ?」
「とにかく、ここでもめごとはご法度なんだ。さぁ、帰れ」
「はい。すいませんでした」
「も、基樹……あ~あ。これで、遊び場がひとつ減ったか」
「……さぁ、帰ろう基樹。背中、大丈夫かな?」
 やっぱり姉さんは、俺のことを良く見てくれているようだ。
 俺が、殴られた頬よりも、背中のほうを痛いと感じていることが、わかっているらしい。
 ……俺、か。僕は、いつの間にか、自分を「俺」と呼んでいたんだな。



「ごめん、二人とも。俺のせいだな」
「んにゃあ。あいつらがバカなだけで、基樹のせいじゃねぇよ。お前は、愛する真紀さんを守っただけだろ?」
 愛する。ね。
 あたってはいる。
「基樹、あとで背中みせてね? あざになってないといいんだけど」
「あ、ああ。ちょっとそれは」
「はずかしいっすよぉ? 年頃の男子としては、姉さんでも、いや、姉さんに背中みせるのは」
「そうかなぁ。でも、シップぐらいは貼るんだよ?」
「ああ、そうしとく。あとで自分でやるよ」
「俺がやってやろうかぁ? ひさしぶりに、二人で風呂にでもはいろうぜぇ? 銭湯にさぁ?」
「ふふっ……いいね」
 二人でって海原は言ったのに、なぜか姉さんまで、話にのってきた。
「よっしゃ、これから銭湯いくかぁ? 三人でさぁ? 金はあるんだし、タオルとか、一通り銭湯にもそろっているだろうから。よぉ? どうだ?」
「うーん。そうだねぇ。基樹もほこりっぽくなってるし。たばこの灰が、肩にもかかってるし」
「ああ、俺はべつに」
「んじゃあ、いこうぜぇん」
 海原は頭に両手を置いて、姉さんは手を唇にもっていって、僕はまだ痛んでいる背中をさすって。
 三人は、暗くなった道路を歩いて、銭湯に向かった。



「けっこう近くにあったなぁ」
 海原がズボンを脱ぎながら、言ってくる。
「ああ、そうだな。安いし、丁度いいな」
 僕も、短パンを脱ぎながら、返事をした。
「そんじゃあ、行くか。なんてったって、今からでも楽しみなのは、風呂上りのコーヒー牛乳だなぁ」
「俺はフルーツ牛乳だな。姉さんは、ただの牛乳」
「ああ、そ。良く把握してるわけだ」
「ま、まぁな。いっしょに暮らしてるわけだしな」
 別にこれぐらいはなぁ。姉さんは、毎朝一杯の牛乳を飲むのが好きらしいし。
「……ん?」
 海原が、俺の顔をじっと見つめていた。
「どうした?」
「いいやぁ。別に」
「ふぅん……」
 服を脱ぎ追えた僕達は、湯船につかった。
「っつ……」
「やっぱ、痛むのか?」
 湯船の中、海原は、おやじのように頭にタオルを置いている。
 僕はただ、湯船につかっているだけだ。
 海原が、俺の背中を手でさすってくる。
 やっぱり、ついさっきのことだから、背中は痛い。
 顔は、全然はれてもいないけどな。
「……おまえって、本当に肌白いよなぁ?」
「海原のほうが白いだろ? なに言ってるんだよ」
「そのかわり、俺の顔には、ほくろがたくさん。美の化身の俺にとっての、唯一の悩みだな」
「ははははっ。あほ」
「へへへっ」
 ばかな冗談で、なんだか痛みを忘れかけた、そのときだった。

「ねぇ~! 基樹ー、海原くーん!!」

 ばしゃっ!!
 姉さんの、壁越しのくぐもった声が聞こえてきて、あわてて湯船に入り込む。
 なにも別に、姉さんが俺らの前にいるわけでもないんだけど。
 反射的にだ。
「はぁい? なんすかぁ?」
「ね、姉さん。男湯なんかに話かけるなよっ!!」
 俺にしては、めずらしく声をあらげた。
 顔があつくなる。たぶん真っ赤になっているはずだ。
「あのさぁ! そっちにセッケンあるかなぁ?」
「ああ、あるっすよぉ。投げますかぁ?」
「うん。お願い」
 海原が、セッケンをつかんで、何のテレもなく女湯に投げ入れた。
 ぽーんっ
「あ、きたきた。ありがとうっ!!」
「いいえーっ!! ……なぁなぁ、基樹くん?」
 海原が、俺の裸の肩に、がしっと手をまわしてきた。
「な、なんだ?」
 基樹クン? めずらしいな。
「真紀さんは、今ドコを洗っていらっさるのでしょうかぁ? 1.胸、おおっ? 2.背中、んー? 3.肩、うーむ?」
「し、知るわけないだろっ!!」
「よっしゃ、質問コーナーっ!! 真紀さぁんっ!!」
 なっ!
「なぁにぃ!?」
 わぁ!
 呼びかける海原も海原だが、答える姉さんも姉さんだ。しかも、あんなに声をはりあげて。
 やめてほしいんだが。男湯中の視線をあつめているのがわからないのかよ、この二人は。まったくもうっ!!
「今、真紀さんは、どこを洗っているんですかぁっ!!」
「え?」
「1.そのうるわしい顔、2.その透き通るようなちと色黒のお腹、3.そのくるおしいほどせつない、足! どれっすかぁ?」
「え、えと、答えるべきなのかなぁ? これはぁ」
「ええ、ぜひっ!! 基樹が、どうしても聞きたいとダダをこねつつ、足を振っているわけでして」
「こねてねぇっ!! 足なんか振ってねぇっ!!」
「え、えとぉ。正解は……お腹ですけど」
「おおっ!? あそ……」
 ぼかっ!!
 海原の頭を、軽くこずいた。
 海原のへらへら笑いが、斜めにかしげる。
「……わりぃわりぃ。ふざけすぎたな、俺も」
「も、じゃねえ! お前しかふざけてないだろっ!! それに姉さんも、そんなこと答えるな!! ばかっ!!」
「ひっどいなぁ。基樹が聞きたいっていうから、答えたんだよぉ?」
「俺は聞きたいわけじゃないっ!!」
「ふふふっ」
「ふふふっ」
「二人そろって、気持ちわるい笑い方すんなっ!!」
「そ、それはひどいよぉ、基樹ぃ~。私、“うふふ”ってなりそうだったのを、こらえたんだよぉ?」
「ち、ちがうっ!! 海原のことだよっ!!」
「へえへえ。わぁったよ」
 乱れっぱなしの僕を見て、すっかり気が済んだのか、海原は素直になっていた。
「ったく!!」



「ったく、はずかしいやつらだよ」
 俺は、まだぶつぶつ言いながら、買っておいた下着に足をとおした。
「まぁなぁ。それは認める。だが、お前の姉さんは、はずかしくないなぁ」
「今回はわからん」
「ふははははっ!!」
 笑いごとじゃないって。
「ったく……。それじゃあ牛乳買って、出るか」
 僕は、アイス入れのような冷蔵庫から、牛乳を二本とりだした。
 俺はフルーツ牛乳を、海原にはコーヒー牛乳を。
 なんだか懐かしい。よくプール行った帰りのそば屋でこれを食べたりしていたものだった。
「よっしゃっ! いっきのみぃ~」
 海原は、お決まりのポーズのごとく、腰に片手をあてて、ごくごくと飲み干している。
 俺も、同じように、腰に片手をあてて、飲み干してから、わずかのお金を払って、男湯から出た。
 姉さんが、待っていた。
「あ、姉さん。先に出てたんだ?」
「あ、うん」
「真紀さん、牛乳は飲んだんでしょ? 当然ですよねぇ」
「あ、飲んでない」
「そうなの?」
「うん。女湯混んでたし、だから飲んでない」
「それはいけねぇや。銭湯に牛乳は、必須でしょう?」
「そうなの?」
「そっすよぉ? 飲まないと、のどから血をはくらしいっすよ?」
「え? うそでしょ? いやだなぁ」
「うそに決まってるだろう……」
「そらそうだっ!! うっははははっはっ!!」
 ったく。何度「ったく」って言えばいいんだよ。
「♪浴衣のきみぃはすすきのぉかんざぁしぃ、ひょっとことぉどんぐりしばいてぇ……」
 ぜんぜん歌詞が違うのは、気のせいじゃないはずだ。
 姉さんもくすくす笑っている。
 ひょっとことどんぐりを、どうやってしばけるんだ?
「海原くんは、あいかわらずおもしろいねぇ?」
 むっとする。
 少しだけどむっとした。
「へへへっ!! これがおいらの特徴っすからねぇ」
 海原は相変わらず、頭の上に器用にタオルを載せながら笑ってる。もちろんへらへら笑いだった。
 これで下駄でもはけば、ちょうどいいんだろうけどな。



つづく

eroerojiji

小さい頃からエロいことが好き。そのまま大人になってしまったエロジジイです。