母の山荘の夏……
「お久しぶり、母さん」
夕子は十年ぶりの我が子の訪問に驚いた。信州の山荘に1人静かに住んでいる夕子に訪問する人間は少ない。まして離婚した夫が養育している幸平がたずねてくれるなんて、淡い夢でしかなかった。それが目の前に小柄で華奢で、大人しげな幸平が立っている。
「迷惑……だったかな」
玄関で硬直している母親に、心配げに少年は聞いた。母親の返答次第では、すぐにでも帰ってしまいそうだ。再会に感激していた夕子は、少年をまるで逃がさないように力いっぱい抱きしめた。
「ううん、幸平が来てくれてすごくうれしいわ。もう、会えないと思っていたもの」
そこまで言うと、涙が止まらなかった。5才で手放した我が子とは年に数回の手紙のやり取りだけの関係だったが、愛おしさが薄れるはずがない。喜んでくれる母親に幸平もうれしかった。同じ身長の母親を抱きしめると、柔らかい乳房が胸でつぶれる。甘い、花のような香りがする。思わず背中に腕をまわしてきつく抱きしめる。
夕子も成長期の少年の匂いをかぎながら体を押しつける。うれしくてうれしくて身体が震えるほどだ。聞きたいことがたくさんあったが、夕子は長旅で疲れている幸平を入浴させ、その間に早めの昼食の支度を始めた。だれかのための食事を準備するなど何年ぶりか。その喜びにハミングしてしまう。ただ心配なのはかつての夫がこのことを知っているかどうかだ。幸平がだまって家を飛び出してきたのなら、夕子の元に行ったと思うはずだ。返せと言ってくるだろうし、押し掛けてくるかもしれない。
それでもいいの、と思った。短い時間でもあの子との時間が取り戻せるなら、十分ではないか。疲れているはずの幸平は、旺盛な食欲を見せて夕子を感心させた。少年の食欲に今さらながら、夕子は歓喜を押さえられない。
それでも聞かねばいけないことがあることを大人の分別がささやく。
「ね、幸平、父さんには言ってあるの?母さんは来てくれてうれしいけど、父さんが心配するといけないでしょ?」
「……父さんには話してあるよ」
少年は言葉少なであった。言いたくないのならいいのよ、と優しく母親は息子の手に手を重ねた。うん、と幸平はうれしそうにうなづくと、身の回りの話を始めた。学校のこと、友人のこと、最近始めたという水彩画の話は夕子をさらに喜ばせた。夕子は画家として身を立てているのだ。
「夏休み一杯いたいんだ、父さんにもそう言ってあるんだ」
夢のような時間が始まった。木漏れ日のなか、2人は画材を手にして並んで森の中を歩いた。山々や湖畔、青空をキャンバスに描く。夕子は息子の画才に息をのんだ。15才の中学生でこれだけの水彩画をかけられる人間はまずいない。親ばかね、と自嘲するものの、やはり幸平の絵にはぬきんでたものがあった。自分が技術を教えるとそれを瞬く間に身につけてしまう。
少年の白い手を取って筆を動かすと、彼が顔を赤くしている。
「どうしたの、気分でも悪いの?」
少年は視線を地面に落とす。
「ううん、母さん、きれいだから」
「あらうれしいわね。こんなおばさんでもほめられるとうれしいのよ」
軽く受け流しながら、夕子はまんざらでもない。息子であれ、異性に賞賛されてうれしくないはずがないし、35才の夕子は1人静かに暮らしているせいか、30才に見える若々しさを保っている。化粧などしたこともない。
イタズラ心で幸平と顔を近づけると、ますます顔を赤くしている。気が付くと自分も激しく動悸し、紅潮している。自分と同じ色白の息子はなかなかかわいいし、手取り足取り密着して絵を教えていると、抱きしめたくなる感情が高まってくる。
「そ、そろそろお昼にしましょう」
自分の感情を押さえるように立ち上がると、夕子はビニールシートを広げてサンドイッチをランチボックスから出す。じっと、崇拝するような目でそれを幸平が眺めていた。
「どうしたの幸平?きゃっ!」
いきなりだった。幸平が母親にのし掛かると抱きしめたまま、青い芝の上に転がった。夕子の青いオーバーをたくし上げると、白いブラジャーに手を突っ込み胸を握りしめる。
「母さん、母さんっ、母さん!」
一心不乱の幸平は母の胸を求めた。夕子は困惑しながら抵抗しない。10年間、我が子を放置していた自分に何が言えよう。それに甘い感慨があった。成長した1人息子に乳房を求められて、正直うれしかった。
ほとんど襲いかかってくるような幸平だったが、下着を押し上げて乳房をつかむと、静かになった。両手で左右の豊かな乳房をもみ上げながら、乳首を口に含む。
「ひゃあっ、幸平ぃ!」
夕子は乳房から走ったあまりの快感に芝の上でのけぞった。両手で息子の頭部をつかむとわが身に押しつける。
「いいのよ、幸平、いっぱい吸ってぇ!おっぱい吸ってえ」
幸平は遠慮なく母の胸をもてあそんだ。そして口で吸い、舐め、軽くかんだ。
「くう!あう、あん、ああ、ひいっく!ひいいいいい!。幸平、すごい、吸っておっぱいっ。母さんのおっぱい吸って!あああ!幸平、大好きっ」
突然の快感に夕子は全身をふるわせた。夫と別れてから独り身を貫いたゆえ、久しぶりの愛撫だった。ましてや、わが子が求めてくるのだ。と、急に幸平が乳房から口を離すと両手でそれを握りながら、ブルブルと震え出す。
「……母さん!」
少年の手の力強さに夕子は苦痛を感じたが、いまやそれさえ快感だった。が、息子の様子に気がついた。幸平は急に静かになると、両手で母親の頭を抱きながら荒い息づかいをしている。夕子も大人の女であった、息子が射精したのだと分かると、優しい手つきでズボンをおろす。むっとした精液の匂いを嗅い。パンツをおろすと白濁した液体があふれ、ピンク色の男性の性器があった。それを取り出したハンカチで拭う。幸平が赤ん坊のころ、おむつを取り替えたのを漠然と思い出しながら。
「たくさん出したのね幸平。幸平も、もう大人なのね、母さんうれしいわ」
細い指先がふれると、肉棒がびくりと動く。かいがいしく、夕子は息子の濡れた股間をぬぐい続けた。
昼食を始めても幸平は黙りだった。夕子が何事もなかったように饒舌にこの山々の話や絵画を語っても、口を閉ざしたままうなづくだけ。かまわず夕子は話し続けた。
日が沈む頃、山荘に2人は帰ってきた。さりげなく夕子が入浴をすすめると、幸平は何も言わずに浴室へ向かった。
「これでいいのよ、これで」
些細な出来事だった。夕子は今日のことを性欲と愛欲が重なってしまった、不幸な事故で済ませるつもりだ。実際夕子に被害者意識などない。それどころか。
幸平の姿がなくなると、夕子は急いでポケットからぐちゃぐちゃに濡れたハンカチを取り出していた。幸平の精液に漬かったハンカチ。夕子はそれを顔に押しあてて匂いを嗅いでいた。息子の匂い。あっというまに全身があつくなる。膝が震えて立っていられなくなると、倒れるようにクッションに座り込んだ。実子の精液に欲情するなど犬畜生のようだも思うものの、秘裂からは熱い蜜がだらだらとあふれてくる。昼間の時も、股間が濡れているのに冷たくなってから気がついた。小用のふりをして木陰でぬぐったけれど、それでは間に合わないほど蜜があふれていた。
……すごい、幸平のにおい、精液、いい匂いなのっ。
とうとうハンカチを口に入れてしまう。苦いがどこか甘い味が広がる。
……幸平の精液、飲んじゃった。おいしいのよ、幸平っ。
左手でスカートをめくってパンティをもどかしげにおろす。秘裂をなぞりながら、ハンカチで顔中をぬらした。
……あああん!幸平の精液、すごいっ。逝くっ、逝っちゃう!
もう声を出すことが我慢できなかった。山荘に響きわたるような声。
「幸平大好き!いいわっ、いいのっ。逝くっ、逝っちゃう、逝く逝く逝くー!気持ちいいのー!」
夕食もやはり、幸平は無言だった。夕子は彼の気を引こうと一生懸命しゃべったのだが。
就寝時間。思えば挑発するような格好でうろついていたのだ。夏場夕子は、寝間着がわりに素肌の上にシャツを着る習慣があった。一人暮らしだから気を使わなかったのだが、息子が来てからも彼女は下着も着ずにシャツ一枚の姿で同じ部屋で寝ていた。その上、夕子の寝室はこの10年間、彼女1人が使ってきた女の体臭が染み込んだ世界だ。
一方、夕子の心のどこかで5才のまま、幸平を扱っていた。ダブルベッドで一緒に寝るのもそうかもしれない。昨夜までは楽しいおしゃべりをしながら寝たものだが、今晩は今までとは2人とも違っていた。言わなくても意識しあっている。
一度は一緒にベッドに腰掛けたものの、幸平は居心地を悪そうにしている。
「母さん。僕、リビングで寝るよ」
元気なくそう言う幸平の手を、とっさに夕子は握りしめていた。
「幸平、一緒にねましょう」
「母さん、僕このままだと」
「幸平、何か悪いことしたの?母さんはそう思ってないわ、何が悪いの、子供が母親のおっぱい吸って、何が悪いの。母さんうれしかったのよ」
夕子は自分の言葉に陶酔した。彼女はもう、異常をそうだとは考えられなくなっている。幼い子供を教え諭すよう、優しく言いつのる。
「ああ、やっぱり幸平は自分の子供なんだなぁ、て思ったくらいよ。幸せだと思ったわ。ね、幸平。幸平は悪くなにのよ。それに……」
さすがに口ごもりながら、夕子はシャツのボタンを全て外す。乳房もへこんだ腹部も細長いへそも、小さな秘丘も、大切な茂みもわが子の前にさらけ出した。
自分はとてつもない罪を犯そうとしている、我が身を我が子に与えようとしていると思うと恐ろしくてしょうがない。だが倒錯した愛情は強まるばかり。感情を吐き出すように夕子は言った。
「これからは毎晩、母さんのおっぱい吸いながら寝ていいのよ。ううん、母さんからお願いしたいのよ、母さんのおっぱい吸ってぇ!」
10年分の思いのぶつけようがなかった。夕子も器用な人間ではなかったし、離婚もそれが原因かも知れないが、ここで息子まで失うことに耐えられない。もし、今日寝床を分ければ永遠にこの子を失ってしまう、という危機感があった。
夕子の握る手が強く握り返された。
「母さん、いいんだね、母さん!」
「い、いいのよ幸平、母さん、幸平のこと大好きなのよっ。母さんの体いっぱいさわって!」
言ってしまうと二人は暖かい感情が満ちてくるのがわかった。
2人は絡み合いながらベッドに沈んだ。熱心に幸平は母親の身体をいじくった。性欲と興味本位と愛情が混ざり合って、胸をまさぐる。包むように揉み、吸った。
「幸平、すごく母さん気持ちいいわ、おっぱい気持ちいいっ。いいっ、はうう!あひい!すごいいいいぃ、幸平、気持ちいいわ、素敵よ、幸平っ」
快感におぼれる母親は一層、幸平を大胆にした。夕子の真っ白な乳房をさまざまな形にもてあそぶ。胸をこねくり回されて夕子の性感が高まっていく。寂しい独り寝の年月を埋めてしまうほどの快楽に、秘裂は蜜をあふれさせていた。山地の夜とはいえ夏である、夕子は全身から滝のように汗を流し、その匂いが空気に溶けこんだ。体臭と汗の匂い、乳房の味に母の嬌声が重なって、幸平は手も触れていない肉棒が、激しく硬直していくのを感じた。乳房の谷間に舌を這わせ、母の汗の味を堪能する。
もうろうとしていた夕子は、息子が自分の汗を舐め取っていることに気がつくと、ひっと息をのむ。乳房をいじられるのとは違う恥ずかしさだった。
「だめ、母さんの汗なんか舐めちゃだめ!」
「どうして、すごくおいしいんだよ。少ししょっぱいけれど」
夕子は目がくらみそうな光景から怯えるようにして顔をそむける。
「……ああ、汚いわ、汗はだめよ」
「母さんの汗なんだ、綺麗だよ、いい匂いもするんだ」
「いやっ、幸平っ匂いなんかかいじゃ嫌っ!」
ますます汗を流す母の女体を、幸平はいじりながら必死に匂いを嗅いでいた。
「やっぱり母さんの匂いだ、素敵な匂いだよ」
噴き出す汗が、シャワーを浴びたように夕子の全身を濡らす。肌の香りと絡み合いなながらむせ返るようだ。
「だめ、母さんだめになっちゃう、匂いなんかかいじゃだめ。ひい、ひいいい!」
がくがくと痙攣するように身体をふるわせる夕子。快感が精神を超越してしまい、身体が言うことをきかない。いとおしい息子が、自分の身体の汗を舐めとり、いい匂いだという。言いようのない幸福感に包まれ、夕子の女性としての機能だけが反応する。嫌らしい声だけは出すまいと下唇を噛みながら、夕子はしびれきった全身をふるわせる。
「ひ!あひいいいいいいぃ!くっひい!きぃぃぃぃー!ふああああんっ、いいいいいい!」
「いい匂いだ、母さんっ」
純真無垢な少年は、ただ、懐かしい母の匂いと味を求めて体中の汗を舐める。
「言わないでぇ、お願い幸平、匂いなんて言わないで!」
懸命の母の叫びに、幸平は夕子の汗に濡れた顔を上げると、優しく母の目を見つめた。
「母さん、母さんの匂いはすごく素敵な匂いなんだ、懐かしい、いい匂いなんだよ」
幸平の瞳を見返したとき、夕子は子宮のうずきが一瞬で限界を越えた。
「逝くっ!母さん、逝く逝く逝くーっ!母さん逝っちゃうー!」
ぴゅぴゅっ。熱い蜜が秘裂から間欠泉のように吹き出し、ベッドを濡らす。幸平も絶頂を迎えた母の姿に、勝手に肉棒が射精していくのを感じた。
「母さん、ぼくも出ちゃうっ」
「幸平、母さんを抱きしめて、い、いっしょにー!あ?あ、ああああーーーー!」
母子は手足を絡ませながら同時に絶頂を極めた。精根尽き果てたように、ベッドに横たわる夕子の乳房を、幸平は握りしめた。途方もなく柔らかい肉の芸術品がつぶれる。いたいほどの快感。夕子は悲鳴を上げ、幸平に許しを請うた。
「待って幸平。少し休ませてぇ。母さんおかしくなるっ!」
「ごめんね母さん、僕、我慢できないよ」
「そ、そんなにしたら、あ、ああーーーーー!あううんっ、い、いい、いいいい!」
無理矢理快感を高められる夕子はあっけなく絶頂を極め、またしても潮を噴いた。
だが幸平は絶頂し、全身が性器になったように敏感になった母の肉体を求め続ける。
手の愛撫と、舌や口であちこち攻められると、あっけなく夕子は3度目の絶頂を迎えた。後は息もたえだえになりながら、何回も何回も息子に攻められて潮を噴いた。噴くたびに魂の一部が消し飛ぶような、凄まじい快感。
「う、うぐぐぐうー!ひぎぎっ!ひ、ひひいいいいぃ!ひーーーひーーー!」
けだもののようなうめき声を上げながら夕子はまた絶頂を極めた。幸平が右手の白い細工物のような指を一本一本、舌を這わせている。片手で母の美乳をもてあそびながら。
「おいしいよ。母さんの指」
「ひーーー。恥ずかしいの、母さん、恥ずかしくて変になるう!あ、ああああーーー!いいいいいいいーーーー!変になる、変になっちゃうのよっ」
もう夕子の許容量を越える快感が押し寄せていた。
「かわいいよ、母さんすごくかわいいよ!」
母親の真っ赤な顔を見ながら、幸平もまた射精した。息子の吠えた一言が、夕子にさらなる快感を呼ぶ。口元からよだれを垂らせながら、意思のない目を漂わせる。
「くふっ、はん、はああああーーーー!あひいいーーーーーー!だめーっだめになるぅー!幸平、幸平っ!」
大きくブリッジするように、夕子は嫌がりながら絶頂した。立て続けの絶頂に夕子のどこかが壊れてしまうほどだった。どっと射精された幸平の精液がさらに白い母の肌を濡らした。
朝日が昇る頃、夕子は深い眠りから醒めた。何か腕に重みを感じると、幸平を胸にかき抱いたまま、眠っていたのだ。しかも我が子は母の乳房をくわえたまま。
むっと2人の汗や愛液がひどく匂う。匂いに昨夜の情事を思いだし、かっと夕子は顔を赤く染める。われながらあられもない姿を実子に見せてしまった。身が縮むほど恥ずかしいのだが、幸平との一生の思いでが出来たと思えばいい。
一緒に生活すると言ってもそれはこの夏の間だけ。ほんの一時の営みだからこそ、全身全霊で息子を愛したい。愛されたい。その一念が夕子の行為をすべて正当化する。
結局去られてしまうという夕子の孤独さが、幸平の肉をも渇望してしまう。少年の肌の体液を濡れたタオルでぬぐっていると、寝息の中にも感じているらしい声を出す。夕子はまた欲情している自分を見つけてしまった。そっと幸平の肌に舌を這わせる。ふたりの入り交じった体液を舐めると、形容しがたい味がする。芳醇な味と香りが充満していた。
……綺麗にするだけ、綺麗にしてあげているだけなのよ
自分を騙しながら、少年の全身をくまなく舐め上げた。足の指先から胸、額や耳、もちろん股間も。
「おはよう。幸平」
キッチンで挨拶した夕子は明るく息子を迎え、幸平も気恥ずかしさを隠しながら、「う、うん」と答える。目覚めると全身が母の唾液にくるまれていたのだ。甘い匂いに激しく肉棒を硬くさせる。母はキッチンにいっていたので、思わず自分の体についた母の唾液を舐めとった。思わずつぶやいてしまう。
「ああ……おいしいよ、お母さん」
二人は暗黙の了解で昨夜のことは口に出さず、朝食を済ませると昨日と同じ屋外の場所へと出かけた。積極的に夕子は幸平に手足をからませながら、絵の手ほどきをした。だが薄い夏服での接触が少年を興奮させないはずがない、一段落すると幸平は母親にのし掛かった。夕子はふざけるように芝の上に転がると、たわわに実った乳房をむき出しにして息子に差し出す。
「あ、あああん、幸平、ウンン、あっ、あっ……。こ、幸平ぃ~」
夕子は最初から甘い声でよがりまくった。幸平も遠慮なく左右の白い果実のような乳房をもみあげ、甘く香る乳首を吸う。
「い、いいわー!幸平、あ……はあぁぁっ!ひいいいいいー、ひぃ、ひいいいいぃぃぃっ!ひゃぁあああーーー!」
夕子の嬌声は静かな森で小鳥のさずりに混じっていった。
息子の愛撫に満足した夕子は、手をつないで家路についた。やはり、汚れてしまった息子を浴室に行かせると、習慣でポストをのぞき込む。たまに知人の手紙があり、なによりも我が子の手紙を楽しみにしていたものだ。一人苦笑する。
……あの頃と比べれば、今は幸せそのものね
一通の手紙がはいっており差出人は別れた夫だった。幸平のことね、と思うと急いで開封した。
『久しぶりだ、元気にやっているか。この手紙がついたころには幸平が君の元を訪れているだろう。きっと暖かく迎えてくれていると思うが、一つ伝えねばいけないことがある』
引き渡せと言うのだろう、と暗雲が心の中にたれ込めたが、夕子の予想ははずれた。
『幸平がどうしても行くというのだ、私が止める権利はない。彼の人生なのだから』
その先は夕子の想像を絶していた。
『幸平は病に犯されている。医師は今年の夏を越すことはありえない、と断定した』
夕子の手紙をもつ白い指先が震えている。
『そのことを幸平に正直に教えた。残りの短い余生を有意義に使ってもらうために、残酷にもたった一月の命しかないのだと、私は宣告したのだ。だが幸平は泣きもせず怒りもせず、黙って受け入れた。丸々二日間、全く食事をとらない状態が続いたが、明るい顔で私に言うのだ、「母さんと残りの時間を過ごしたい」と。幸平は私や祖母や友人でもなく、君と暮らしたい、と言ったのだ。
あと何日の命かは神のみ知るところだが、君が幸平と幸せな日々を過ごすことを祈っている。
最後に手紙でこのようなことを伝える意気地のない私を、どうか許してほしい』
手紙を読み終えたとき、夕子は放心していた。
あまりにも残酷だった。愛らしい少年、豊かな画才。広がって行くであろう未来がすべて否定されたのだから。事実を受け入れられない夕子は、よろめきながら手紙をテーブルにたたきつけた。すると、幸平のもってきた錠剤入りの瓶が揺れた。幸平はビタミン剤だと言っていたが。別れた夫は少なくとも嘘をつくような人ではない。
幸福な時間がもう残り少ないことを、今年の夏は2人にとって最後になることを夕子は知らされた。
昨日とうってかわって幸平が楽しげに話しかける。夕子は相づちをうつので精一杯だった。ベッドに入ってからも同じ状態だった。楽しげな幸平を夕子は黙って眺めていた。全裸でベッドに入る親子だが、鏡でそれを見た夕子は神々しい、と思う。
幸せになる、という名前の幸平。だが、あまりにも残酷な現実ではないか。いまこうして笑っている姿も、秋が来る頃には影も残っていない。夏が過ぎれば幸平は、二度と微笑んでくれない。
どうしようもなく寂しくなった夕子は幸平の髪をなで始めた。思春期の活発な少年の匂いが胸にせまる。幸平は最後に自分を選んだのに、自分はなにもしてやれないではないか。
「幸平、今日ね、父さんから手紙がきてたの」
聡明な幸平はそれだけですべてを察し、笑みをこわばらせた。だが、すぐに笑みを見せた。
「そう、どんな手紙だった?」
もう我慢できない夕子は、ぼろぼろと涙をこぼし始めた。
「幸平の病気のことが書いてあったわ、急に母さんに会いに来てくれた理由もあったわ」
「うん。黙っててごめんね、母さんが悲しむのを分かっていて、言い出せなかったんだ」
「いいのよ、それは。ただ母さんが何も出来なくて済まないの。長い間ほったらかしだったのに、幸平が来てくれて、それで、母さん、すごくうれしいのに……」
嗚咽混じりで夕子はなにもしゃべれなくなった。幸平は落ち着き払って、母親を抱きかかえて背中をなでる。
「離れて暮らしていて寂しかったけど、今はこう思うんだ。離れていたから、ずっと好きになれたんだ」
夕子は涙に濡れた顔を上げ、息子の顔を間近で見た。
「母さんと再会したとき、好きになっちゃった。女の人をこんなに好きになったのは初めてなんだ、話したい、触れあいたい、一緒にいたい、て思ったのは初めてなんだ。き、きっと初恋なんじゃない、かな……」
真剣な表情で、幸平は夕子の目を見つめた。
「キ、キスしていい?」
言葉が心にとどいたとき、夕子は唇を息子に寄せていた。そういえばあれだけ激しい情事をしながらキスはしていないのだ。唇を不器用そうにあてがう母子。長くあわせているが、そっと離す。
「母さん、好きなんだ」
息子の告白に、夕子は全身が火照った。これからの行為が畜生のようなことでも、地獄に堕ちても、息子に愛されたいと痛切に感じた。
「母さんも幸平が大好き。ね、母さんの恋人になってくれる?ううん、お嫁さんにしてくれる?母さん幸平だけのものになりたいの……」
「……か、母さん」
夕子は白い四肢をベッドに投げ出した。
「幸平の好きにしていいのよ、母さんは幸平のお嫁さんなんだから」
幸平は言葉ではなく行為で母親に応じた。口づけしながら乱暴に乳房をいじる。夕子はじっとしていながらも舌だけは幸平の口内に入れた。とまどっている幸平の舌と絡ませ、その唾液をすする。幸平も夢中になって舌を絡ませて母の唾液を飲んだ。唾液の糸を引きながら口を離すと、腋に舌をすすめて母の肉体を味わった。両手でボリュームのある熟女の肉体を存分に感じる。
「う、ううん。いいわよ、幸平。もっとしてぇっ。あ、ああ、んんんんん!」
子犬のように顔を舐められると夕子は予想以上に感じてしまった。もう全身が性感帯と化している。が、幸平は全身を愛撫するだけでそれ以上はしてこない。愛し合うすべを、年上の女として夕子は幸平を導かねば。
「幸平、ちょっと見てて」
夕子は上半身を上げると両膝を開いて、ひそかな場所を息子に披露する。
「こ、ここが、女の一番大切なところよ、よく見て」
幸平は蜜があふれている秘裂を見つけると、宝物のような視線で母の体を眺めた。
「きれいだ」
口から正直な感想がもれると、一層夕子は感じた。夫との初夜以上に心がときめく。
「そうよ、男の人を迎えるんだから、綺麗じゃないとね。さ、さわっていいのよ。なめてもいいのよ……。あ、ひううううん!ひ、ひいいいいいいっー!」
幸平がいきなり舌を入れたのだ。母のもっとも柔らかい肉体を思いっきり舐め上げる。舌が暴れると、しどしどに蜜で秘裂が濡れてきた。母の匂いもただよい、幸平は夢中になって舐めていた。
「ヒイイイイイイ!いいい!いひいいいいぃぃー!いい、いい!」
肉芽も秘裂もめちゃくちゃに舐めまくられ、体が溶けるような快感だった。息子に舐められる母親は、仰け反って鳴くしかない。そして、強烈な愛撫の嵐を中断させた幸平がつぶやいた。
「僕はここから生まれたんだね」
言われたとたん、背徳の意識が夕子にわき起こった。
「きいいいいいいいっ、ひいいん!逝くッ、母さん逝っちゃう!逝く逝く逝く逝くー!逝くっ夕子逝っちゃうー!」
ベッドで全身をのけぞらせて痙攣させる母の香る肉体を、呆然と幸平は眺めていた。夕子がベッドに沈み、手足を時々痙攣させていると幸平はまた母の秘裂に口づけした。
「ああ!だめっ、感じちゃう!」
涙を流し、口から一筋のよだれを垂れ流しながら夕子はもだえ始めた。
「ま、まってっ!感じちゃう、感じすぎちゃうのよっ!?あひっ、あひっ、あひぅ!」 息子の愛撫は止まらない。
「嫌ぁ!イヤ、イヤイヤイヤ!イヤッアッヒイー!ひいいいー!」
乳房を揺すりながら、両手で幸平の頭をおのれの股間に押しつける。母親。その乱れぶりに一層息子の愛撫にも拍車がかかる。
「ひいいいっ、逝く、逝っちゃう!母さん、また逝っちゃうっ、気持ちよくて、逝っちゃうー。うー、ひいいいー、いい、逝くう、逝っちゃう!」
ひときわ大きく白い女体をのけぞらせる母。極限まで大きくなった自分の肉棒を押さえながら、幸平は顔を上げた。顔中蜜まみれにしながら、母の額に口づけする。
「かわいいよ、母さん」
その純真な心が紡ぎ出す言葉にも夕子は感動する。絶頂の余韻にひたりながら、少しでも股間を広げようとする。
「母さん?」
「きて、幸平。母さんの中に来て」
慈愛に満ちた声に幸平も緊張した面もちでうなづき、緊張しながら肉棒を母の秘裂に合わせた。いよいよ貫かれると思うと、秘裂がとろけるように熱い。
「母さんいくよ」
「来て、母さん、幸平がほしいのよ」
全裸の美女に言われれば、それが実母でも欲情してしまうのが男だ。幸平はまして15才の少年である。勢いよくペニスをつっこむ。
「くっ」
「ひいいいん!!」
雄と雌の鳴き声が重なった。蜜まみれの膣はやすやすと幸平を受け入れた。幸平の硬直を暖かく柔らかく受け入れ、包み込んだ。あまりの感動と心地よさに、幸平は声もよく出ない。震えながら、愛する人を呼ぶ。
「か……あ……さ……ん……」
ああん、と夕子は悶えた。我が子の肉体のなんと熱く硬く、鋭いことか。女体の奥までひと突きで、その先端が届いている。
「幸平、幸平のおっきい、立派よ。母さん気持ちいい」
「母さん!」
幸平は激しく腰を使い始めた。
「は、はひいい!け、きけええっ」
奇妙な鳴き声を上げながら、母親も息子の肉棒に応えて腰をふる。15年前に出産したわが子が、大きくなって還ってきたのだ。
「ひいいいいい、ひいいいいいい、ひいいいいいーーー!」
「母さん、母さん!」
母さんと呼ばれるたびに、肉棒で突かれるのと同じほどの快感が、夕子を覆う。
「いい、いいいいいっ!夕子、いいいのっイイノ!」
息子の意外とたくましい体にしがみつくとどん欲なほど、その一撃一撃を感じた。堅い先端が子宮にとどく。自分をはぐくんだ子宮をペニスで突く。幸平は夕子との一体感に酔った。母親は乱れながら自分にしがみついてくる。秘裂からはどんどん蜜がもれ、全身から流れる汗が甘い果実のような匂いを発する。
「愛しているよ、母さん!」
それだけを言うと、一心不乱に幸平はペニスで母親の内部をかき回した。死を予感させるほどの快感に、夕子は肉体が自分どおりに動かない、とおぼろげに思う。勝手に体が息子に応じて腰をぶつけ合う。汗で肌をぬらし、口から流れるよだれは胸を伝ってへそに達している。愛し愛されて母子は激しく求め合った。
「ひいいいい、あひいっ!ひいいい、きいいいいい!こ、こうへい、こーへーえぃ!」 「母さん、母さん!」
母さんと呼ばれると夕子の背徳感が深まっていった。もうどうしようもなく、夕子はメスになっていった。むしゃぶるように息子の唇を奪う。自分の蜜の味がするが、それよりも息子の唾液や体温がいとおしくて仕方ない。
「ム、ムフウウウー!んん、んんー!」
舌を絡め合い、両手両足で息子にしがみつく。
「ああ、愛して!もっと母さんを愛して!母さんいいのっ」
幸平は自分の限界を感じた。
「母さん、僕、でちゃう!で、でちゃうー!」
「出していいの幸平!母さんの中に一杯出してーーー」
ドピュ、ドピュピュピュドピュドピュドピュ!
「ひいいいいいいいいいーーーーーっ!い、逝くう!逝く逝くーーーー!」
白濁した息子の精をたっぷりと体内で受け止め、夕子は人生最高の絶頂に達した。
「は、はあ、はあ、はあ」
口を大きく開いて呼吸する夕子。全身が重い。
「母さん」
「こ、幸平」
夕子は幸平の顔を両手でなでながら、絶頂の余韻に浸っていた。夫に抱かれてもこれだけ感じたことはない。軽い口づけを繰り返し、母は息子の、息子は母の愛を確かめ合う。破ってしまった禁のなんと甘いことか。もう互いなしではいられない存在となってしまった。
口づけを中断すると、幸平はいつものように母親に微笑む。母も微笑もうとすると、奇声を発した。
「ひゃあ」
まだまだ、いや、一層硬く大きくなった少年の肉体が、母の肉を責めたのだ。
「あ、幸平?こ、こう、こうへひゃんっ」
喋ろうとしても、息子は微笑みながら母の子宮を突く。
「ひゃあ!ひひゃああ!」
「まだたくさん愛し合えるよ、母さん」
「ひん、で、出来るの幸平?」
「母さんがかわいいから」
言い終える前にぐちゅっという音と母の声があがった。
「あ゛、ああ゛ーーーー」
思いの限りを放ったはずの息子は、腰を振るって母親を突き上げる。白い乳房がたぷんたぷんと大きく揺れる。突く。突き上げる。叩きつける。かき回す。
「あ、あひーーーーーーーー!ひーー、ひーー、ひーー、ひーー、ひーー、す、すご、いっ!!か、母さん、また逝っちゃいそう!」
息子の肉棒に翻弄される母親は鳴いた。
「く!ぼ、僕は、たくさん母さんを、気持ちよくさせたい、んだ!」
「ひぃ、か、感じすぎちゃう!母さん、あ、ひぃ、くう、い、逝くーーー!」
ぴゅぴゅ。母は息子の下腹部へ潮を噴き上げた。
「ぼ、僕も!」
熱い流れが夕子の体を内側から灼く。それは代償に、自身のすべてを捧げてかまわないほどの絶頂。一旦逝った夕子はひとたまりもなく、またしても逝ってしまう。しかも逝くごとに絶頂は深く大きくなっていった。
「ひーーーーーーー!い、逝くう、逝っちゃう、逝っちゃう……!」
「ま、まだだよ母さん!」
白い精を吐き出したばかりの肉棒を、母の体内へまた送り続ける幸平。
「ひ、ひいい!ひいーーーーいいい!ひ、ひぃぃぃぃ!!」
一心不乱に幸平は腰を振るい続ける。
「ひぃ!逝く、また逝っちゃう!!とまらないわっ、母さん、逝っちゃうううううう!」
夕子はあっけなく潮を噴く。今夜、四回目の絶頂、しかも四回つづけて潮を噴いた。それでもなお幸平は、愛し合うことをやめない。それが自分の存在意義だというように。すべてを息子にゆだねきった夕子の体も応じた。
「逝っくう!逝く!逝く逝く逝くーーーー!」
「ひい、ひ、ひいいいいぃぃ!た、たまんないっ、ま、また逝っちゃうっ」
「だめえ!母さん、だめになっちゃうううーーー!」
女の蜜が幾重にもかけられて、二人の結合した部分は、臭いほどになっていた。そんな匂いが母子の肉欲を深めていく。瞳からは涙を、口の両端からは涎を流しながら、夕子は鳴きまくった。
「だ、だ、だめぇ!また逝っちゃううーーーーー!ああっ、中からかきまわさないでぇ、母さんの体ぁ!あひい、逝く逝く逝くう!(ぴゅぴゅ)……ひ、ひいいっ、きいいいいい!あはぁあ!す、すご、へ、変になっちゃうわ!幸平、こーへーいー!(ぴゅぴゅ)……こんなに、感じちゃうなんて、母さんもうだめ。え。そんな、まだ、ひ、ひいいっひいーー!ま、ま、つ、て!待ってぇ、母さんこれ以上すると、頭おかしくなっちゃう!だめぇ、そんなに動いたら、ひ、ひい!母さん、ひい、また逝っちゃう、逝くう!?、逝っちゃう?逝っちゃうのよおう!(ぴゅぴゅ)……ひ、ひいいいい!ひい、ひっひい!あひぃ。無理よぉ、これ以上、ひい、無理、よひい!母さん壊れちゃう、壊れちゃうーーーー!(ぴゅぴゅ)……ま、だぁ!いやあ、幸平、お願い、少し、ひ、休ませ、休ませて、ひぃ、やす、ひいい!ま、でぇええーーーーー!(ぴゅぴゅぴゅぴゅぴゅ)」
母が逝くたびに、幸平も少し遅れて射精し、また母を逝かせる。夕子はただただ逝きまくった。朝日が昇る頃、幸平はどろどろの汗だくになった夕子の顔を手の甲でぬぐう。
あえいでいるだけの母の唇をゆっくりと奪い、舌で口中をなめ回す。舌を絡め合う。
唾液の糸をひきながら、口づけをとくと、夕子はぼんやりとした表情で息子を見上げた。
発狂する寸前だと思った。情死するかとも思った。あと一度でも交わっていたら、きっと耐えられなかったろうと思う。それだけに快感と余韻は深いが。けだるい中、幸平の頭髪をなでてやる。
「か、母さんの中、幸平でいっぱいになっちゃったわ……」
「うん、ぼくも気持ちよかった。母さん、かわいいから」
ああん、と甘い感傷に浸りながら、夕子は、少し休みましょうね、と言うとしたが
「でも今日は一日中こうしてようね。もっと母さんがほしい」
「え?」
「一晩で母さん20回ほど逝ったけど、一日中愛してあげるからね」
「……え……」
「きっと倍くらいは逝かせてあげるよ。母さんのもっとかわいい姿を見たいんだ」
くい、と肉棒を動かすと、ひい!と夕子が鳴く。
「ふふ、母さんもまだ大丈夫なんだね。これなら三倍くらいいけそうだね」
……ま、まって!
夕子が言う前に、幸平の腰が動き出す。あえなく、夕子はよがり鳴く。
「ひ、ひいいい!こ、幸平ぃ幸平!」
……休ませて、せめて少しだけで休ませて。母さん本当におかしくなる!こ、怖いの!
「すごいよ、母さん。急に母さんの肉が僕のチンポに絡み合ってきた。すっごく気持ちいいよ。僕、もっとがんばれるよ。大好きだよ母さん」
ひい、ひいい、と夕子は鳴くだけ。腰を振り両手で母の胸を揉みまくる少年。それに感じるしかない母親。
「こうしてずっと可愛がってあげるよ母さん。うれしいでしょ?僕もだよ。幸せだな。残りの夏、ずーーと愛してあげるよ母さん」
「ひーーーーーー!ひーーーーー!」
「ね、母さん。もしも、この世に生まれ変わりがあるのなら、来世でも、きっと僕のお母さんになってね。きっとだよ、また、僕を産んでね。そうしたらこうやって、おちんちんで、たくさん気持ちよくしてあげるよ。そして僕と結婚しよう母さん」
「ひい、ひいっ!逝くう!逝く逝くいっじゃうーーー!あひい、逝くう!逝くう!ひぃ、くふぅ!ひいいいぃぃぃぃーーー!逝くー!おわあああぁーーーーー!ひいい、ひいいいい!逝っちゃう!逝っちゃうわ!母さん幸平に抱かれて逝っちゃうわ!産んだ息子に抱かれて逝っちゃうのよ?き、気持ちいいいいいい!気持ちいい!気持ちいい!いい!い、逝く!逝く!あああああああーーーーー!」
また夕子は潮を噴いた。これまでになく盛大に。逝きっぱなしになり、口から涎と泡を噴きながら。全身がけいれんして幸平をはじきそうになり、息子は母親の肢体に必死になってしがみついた。それでも母の体内を突き上げる。
「あひぃ……母さん壊れちゃう……!」
その夏の夕子の最後の人らしい言葉だった。
夏は終わった。ひまわりはしおれ、陽光も弱まり、セミはもう鳴かない。郊外の墓地では少年の埋葬が一件行われ、残暑のなか二人の青年が受付を取り仕切っている。『急なことだったな』『ああ、なんとか八月を乗りこったって話だ、』
喪服を着た女性が音も立てず、受付の前を通り過ぎていった。
「……主は与え、奪いたまう。……その御心に魂をゆだね……聖霊の御名において……アーメン」
神父の祈りが終わり、小さめの棺が墓穴にゆっくりとおろされる。上から花が手向けられると、葬儀屋が土をかぶせ始める。最後のお別れだと、参列者の涙を誘う。同級生の幾人かは泣きじゃくっている。ただ、女性は一人泣いていなかった。
参列者が全員帰ってしまっても、女性一人は残っていた。しゃがみ込み墓標をなで、立ち上がると、微笑を浮かべながら同じ手で夕子は自分の腹部をなでる。
「大丈夫よ、幸平、もう一度母さんが産んでみせるからね」
夕子の生理は夏が終わる頃から止まっていた。
END